説明

化粧板の製造方法

【課題】コスト的に安価なチップボードを木質基材として用い、床材、扉板、壁板等の内装材として使用可能な木質系の化粧板を、簡単な工程で製造できる方法を提供する。
【解決手段】チップボード1の表面から水3を含ませた後、表面を乾燥させて表面に凹凸部4を生ぜしめ、しかる後、表面に着色塗装することを特徴とする表面凹凸模様を有する化粧板の製造方法。チップボード1の表面から水3を含ませた後、表面含水率を10%以下に乾燥することが好ましい。さらに、チップボード1の表面から界面活性剤を0.5〜2%添加した水3を含ませることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は化粧板の製造方法に関するものであり、詳しくは、表面にエンボス調の凹凸部を有し、床材、扉板、壁板等として使用できる化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅分野において、特に、マンション等の内装の洋風化が進み、上記した床材、扉板、壁板等として表面に各種の模様がデザインされた化粧板がしばしば用いられている。例えば、床材として、表面が木目調に化粧された木質系のボードを用いて床面をフローリングすることで、掃除等の手入れが容易となり、また、シックハウス症候群の一因とされるダニの発生が抑制されるなどの利点があるため、近年、急速にその需要が拡大している。
【0003】
従来、上記木質ボードの基材としては合板の使用が一般的であったが、合板の原料となる種々の広葉樹、針葉樹、その他ラワン等の南洋材も品薄となり、価格が高騰している状況下において、上記合板に替えて、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボードや配向性ストランドボード(OSB)などのチップボード等の種々の木質ボードを基材として用いることが行われている。
【0004】
例えば、特開平8−318596号公報には、MDF(中密度繊維板)層に予め表面に凹凸模様を形成しておき、その表面に凹凸模様が形成された中密度繊維板層を木質板状物からなる芯材の片面に積層して複合板を形成し、この複合板の表裏両面に化粧シートがラッピングされた化粧パネルが開示されている。
【0005】
そして、中密度繊維板、合板、およびパーティクルボードからなる群から選ばれたいずれか一種の組織で構成された上記芯材自体には、凹凸模様を施すための加工が直接されることなく、また、中密度繊維板層は凹凸の高低差より若干厚いものであるため、芯材の片面の状態に柔軟に対応して積層できるため、芯材の密度分布はバランスがとれた状態で保たれると、その効果が記載されている。したがって、表面に凹凸模様を形成した中密度繊維板層と芯材とからなる複合板の表裏両面に化粧シートをラッピングしても、反りにくいものとなるとの効果も述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−318596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記公報に記載の技術においては、凹凸の高低差より若干厚く構成された中密度繊維板層に、予め、押し出し成形したり、プレス成形したり、削ったりする等、表面に凹凸模様を形成する工程が必要となり、また、機械的に模様を付けるため、ランダム性に劣り、必ずしもデザイン性に優れた化粧パネルが得られるとは言いがたい。
【0008】
他方、木質基材の表面に体質顔料中に粗い粒子を含む塗料を塗布して表面に凹凸模様を形成する方法も提案されているが、粗い粒子が混在することにより塗膜強度が低下して化粧パネルの表面の劣化が進み易いという問題がある。
【0009】
本願発明は上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、コスト的に安価なチップボードを木質基材として用い、床材、扉板、壁板等の内装材として使用可能な表面に凹凸模様を有する木質系の化粧板を、簡単な工程で製造できる方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る表面凹凸模様を有する化粧板の製造方法は、チップボードの表面から水を含ませた後、表面を乾燥させて表面に凹凸部を生ぜしめ、しかる後、表面に着色塗装することを特徴としている。
【0011】
上記化粧板の基板を構成するチップボードとしては、製材工場で廃棄される材木屑や樹皮、小径丸太や解体工事現場で廃棄される建築廃材等を機械的に粉砕してチップ状とし、合成樹脂接着剤と共に圧縮成形して板材に成形して得られるものである。
【0012】
上記したように、チップボードは、チップ状の細かな木材片の集合体であるため、各チップの大きさや形態が異なり、また、繊維方向やチップの樹種の差異によって、チップボードの表面から水を含ませたとき、個々のチップの膨潤度が異なり、表面層にランダムな凹凸部が生じる。そして、膨潤後、乾燥して水分を飛ばすことにより、表面には種々の形態の凹凸部がランダムに残されて表面化粧される。
【0013】
例えば、チップボードの一つである配向性ストランドボード(OSB)を用いたとき、長さ、厚さ共に大きく粉砕された木片(ストランド)が繊維方向を直交状態に配置して接着加工され、配向性ストランドボードの表面がランダムな粗面となっている。そのため、コルク模様調の表面層に水を含ませたとき、膨潤して大柄な凹凸部が立体的に現出し、乾燥後、表面の凹凸部を含めて着色塗装することにより、大柄凹凸模様のデザイン性に優れたエンボス調の化粧板を得ることができる。
【0014】
乾燥後に凹凸部を含めたチップボード表面を着色する方法としては、特に限定されず、公知の塗装方法が適用される。例えば、水性樹脂、着色顔料、及び体質顔料を混合することによって水性着色塗料を調製し、チップボードの表面をゴム製ロールコーター等を用いて塗装する。
【0015】
水性樹脂としては、水分散性樹脂や水溶性樹脂を使用することができる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような水分散性樹脂や水溶性樹脂は、塗膜形成後に架橋反応を生じる性質を有するものであってもよい。このような架橋反応性を有することにより、耐水性、密着性等の塗膜物性を高めることができる。
【0016】
上記水分散性樹脂や水溶性樹脂に、化粧材の用途に応じて所望の色に着色するための顔料を混合して塗装する。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黄色酸化鉄、チタンイエロー、アルミニウム顔料、パール顔料等をあげることができる。これらを混合、調色し、所望の着色顔料として用いる。
【0017】
通常、上記着色顔料には体質顔料を添加して用いる。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0018】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の化粧板の製造方法において、チップボードの表面から水を含ませた後、表面含水率を10%以下に乾燥することを特徴としている。
【0019】
チップボードの表面から水を含ませる方法としては、例えば、チップボード表面にスプレー塗装機を用いて水を散布する方法があげられる。上記スプレー法のみならず、ゴム製ロールコーターを用いてチップボードの表面に水を塗布する方法、あるいは、フローコーターを用いて水を塗布してもよい。
【0020】
上記水を含ませることによって、凹凸部が生じたチップボードの表面は、その含水率が10%以下となるように乾燥することが好ましい。通常、水分のみを緩やかに逃散させる自然乾燥法が、チップの膨潤によって形成された凹凸部をそのままの形態で表面に残すことができるため好ましい。しかしながら、表面含水率が10%以下となるように、乾燥炉等で加熱乾燥してもよい。
【0021】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項1または請求項2に記載の化粧板の製造方法において、チップボードの表面から界面活性剤を0.5〜2%添加した水を含ませることを特徴としている。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が用いられる。
【発明の効果】
【0022】
本願請求項1記載の発明にかかる化粧板の製造方法においては、チップボードの表面から水を含ませるため、チップボードを構成する個々のチップの大きさや形態、また、繊維方向やチップの樹種によって、吸水度に差が生じ、チップボードの表面を構成する各チップの膨潤度がランダムとなり凹凸部が現出する。
【0023】
そして、表面を乾燥させた後も凹凸部が残るため、表面を立体感のあるエンボス調に仕上げることができる。そのため、従来の平滑な化粧板の与える冷たい感覚とは異なって、該凹凸部によって手触り感や歩行感が向上し、該化粧板を床板として用いたとき、足裏へ心地よい刺激を与えることができる。
【0024】
さらに、安価なチップを原料としてチップボードを形成するため、コスト的に有利に製造できるとともに、木材資源をリサイクル使用することにより、自然環境への負荷を軽減させることができる。
【0025】
本願請求項2記載の発明にかかる化粧板の製造方法においては、チップボードの表面から水を含ませた後、自然乾燥等によって表面含水率を10%以下に乾燥するため、表面着色塗料、例えば、水性着色塗料によって着色仕上げを行う場合、着色塗料の吸い込み性が向上し、良好な塗装性が得られる。
【0026】
本願請求項3記載の発明にかかる化粧板の製造方法においては、チップボードの表面から界面活性剤を0.5〜2%添加した水を含ませることにより、水の表面張力が低下して濡れ性が向上し、表面近辺の個々のチップが容易に膨潤して立体感のある凹凸部を形成し、チップボードの表面をランダムなエンボス調に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)はチップボードの表面から水を含ませる本願発明の化粧板の製造方法の最初の工程を模式的に示す部分断面説明図、(b)はチップボードの表面に水を含浸させて形成させた凹凸部を自然乾燥して得られた本願発明に係る化粧板を示す部分断面図、(c)は凹凸部を含むチップボードの表面を着色塗料で塗装した状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明にかかる化粧板の製造方法の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、チップボードの表面から水を含ませる本願発明の化粧板の製造方法の最初の工程を模式的に示す部分断面説明図である。
【0029】
図1(a)において、チップボード1としては、ストランド状に粉砕されたチップ2を繊維方向を直交状態に配置するとともに、熱硬化性接着剤を用いて圧熱下にボード体(板材)に形成された配向性ストランドボード(OSB)が用いられている。上記熱硬化性接着剤としては、イソシアナート系、フェノール系、ユリヤ系、メラミン系等の各種熱硬化性接着剤から適宜選択して用いられる。
【0030】
図1(a)に示すように、ストランド状の各チップ2は、大きさや形態が異なり、また、繊維方向やチップ2の樹種が異なるため、それらが露出したチップボード1の表面はコルク模様調となっている。この場合、チップ2の露出が充分でないときはチップボード1の表面を研磨し、チップ2の露出を充分にする。本願発明の方法においては、まず、スプレー塗装機、ロールコーター、フローコーター等によって、チップボード1の表面に水3を散布または塗布して表面から水3を浸透させる。
【0031】
このとき、チップボード1に含ませる水3の量は、0.5〜5g/尺×尺とされる。さらに、水3にアルキルエーテル硫酸エステル塩系等の界面活性剤を0.5〜2%添加して用いることが好ましい。上記界面活性剤を添加することにより、水3の表面張力は低下して濡れ性が向上し、チップボード1の表面から水3が浸透し易くなり、各々のチップ2は容易に水分を吸収する。そして表面近辺を構成する各チップ2は膨潤して表面は立体感のある凹凸状となり、かくして、チップボード1の表面をランダムなエンボス調に仕上げることができる。
【0032】
図1(b)は、上記のようにしてチップボード1の表面に水3を含浸させて形成させた凹凸部4を自然乾燥して得られた本願発明に係る化粧板Aを示す部分断面図である。ここで、表面の乾燥度は含水率が10%以下となるように調整される。このとき、必要に応じて乾燥炉等を用いて水分を飛ばしてもよい。また、水性着色塗料を用いる場合は、表面の乾燥度は含水率が8%以下となるように調整することが望ましい。
【0033】
上記化粧板Aを、例えば、床材として用いるのであれば、オーク材調、ナラ材調、ヒノキ材調等の所望の色に塗装する。塗装方法は、例えば、ゴム製ロールコーター等を用いる公知の方法により行う。着色塗料としては、前記した水分散性樹脂や水溶性樹脂を主構成成分とする水性着色塗料が用いられる。ここで、上記化粧板Aは含水率が10%以下となるように乾燥されているため、水性着色塗料の吸い込みがよく、良好な塗装性が得られる。
【0034】
図1(c)は、上記凹凸部4を含むチップボード1の表面を着色塗料5で塗装した状態を示す部分断面図である。チップボード1の表面が凹凸部4を含めて表面塗装され、ランダムなエンボス調の着色化粧板Bを得ることができる。
【0035】
なお、上記した実施形態は、チップボードとして、配向性ストランドボード(OSB)を用いた場合について述べたが、パーティクルボードを用いてもよい。さらに、他の種類のチップボードを用いてもよく、このように本願発明に係る化粧板の製造方法は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0036】
A 本願発明にかかる化粧板
B 本願発明にかかる着色化粧板
1 チップボード
2 チップ
3 水
4 凹凸部
5 着色塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップボードの表面から水を含ませた後、表面を乾燥させて表面に凹凸部を生ぜしめ、しかる後、表面に着色塗装することを特徴とする表面凹凸模様を有する化粧板の製造方法。
【請求項2】
チップボードの表面から水を含ませた後、表面含水率を10%以下に乾燥することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項3】
チップボードの表面から界面活性剤を0.5〜2%添加した水を含ませることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の化粧板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−25537(P2011−25537A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173849(P2009−173849)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】