説明

化粧用ブラシの製造方法

【課題】例えばマスカラブラシに用いた場合に繊細な睫毛を1本ごとにさばくことができ、また、剛毛感のない化粧用ブラシを簡易かつ安価に製造することができる化粧用ブラシの製造方法を提供する。
【解決手段】金型10には、化粧用ブラシを成形するためのキャビテイ12が形成される。繊維状ブリッスル材料を縦糸14aとし、縦糸14aを横糸14bで編みこんで網目状に形成したシート材14の複数の縦糸14aの一部がキャビテイ部12aに進入するように位置決めしてシート材14を第二の金型半体10bの分割面Fに接するように配置する。金型10を型締めして成形した後、金型10を型開きして、成形品を取り出し、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料14aの不要部分をトリミングして繊維状ブリッスルが配列されたブラシ部と、ブラシ部と一体的に形成された柄部からなる化粧用ブラシが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用ブラシの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用ブラシは、使用対象である身体の部位によって種々のものがあり、そのうちの1つとして、マスカラを睫毛に塗布するために用いるマスカラブラシがある。
【0003】
従来のマスカラブラシとして、例えば軸に塗布部としての多数の溝や櫛歯を形成したものが広く用いられている。
しかしながら、このようなマスカラブラシは、マスカラを睫毛に塗布するうえでは十分な機能を果たせるものであっても、繊細な睫毛を1本ごとにさばくうえでは必ずしも十分ではない。
【0004】
これに対して、軸の外周にブリッスル(ブラシ毛)を植設し、あるいはまた軸とブリッスルを一体成形したマスカラブラシも用いられている(例えば特許文献1参照)。
このようなマスカラブラシは、上記の溝や櫛歯を形成したものと比べると、睫毛をさばく機能を一定程度果たせるものと思われる。
【特許文献1】特開2004−159823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブリッスルを植設したマスカラブラシは、製造する際の工程数が多く、製造コストも高くなることは明らかである。また、繊細な睫毛を1本ごとにより確実にさばくことができるように、ブリッスルとして繊維を用い、さらに複数のブリッスルを1本ごとに離間して植設しようとすると、製造時の取り扱いが煩雑になり、また、さらなる製造コストの上昇につながる等の不具合もある。
これに対して、軸とブリッスルを一体成形したマスカラブラシは、上記のブリッスルを植設したマスカラブラシに比べて、製造方法が簡易で製造コストも低くなるが、樹脂材料を用いて成形する場合、ブリッスルを細く形成するには限界がある。このため、繊細な睫毛を1本ごとにさばくうえでは依然として必ずしも十分ではなく、また、剛毛感が強いという欠点もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、例えばマスカラブラシに用いた場合に繊細な睫毛を1本ごとにさばくことができ、また、剛毛感のない化粧用ブラシを簡易かつ安価に製造することができる化粧用ブラシの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、
柄部と該柄部に延出するブラシ部とを備えたブラシ本体の少なくとも該ブラシ部を成形するキャビテイを有する金型を構成する第一および第二の金型半体を開いて、複数の繊維状ブリッスル材料が所定間隔離間して並列に配置された1枚のシート材のそれぞれの繊維状ブリッスル材料の一部がキャビテイの軸成形箇所に進入するように位置決めして該シート材を該第一および第二の金型半体の間に配置するシート材配置工程と、
該金型を型締めした後、キャビテイに樹脂を充填して成形する成形工程と、
該金型を型開きして成形品を該金型から取り出した後、鋳ぐるまれていない該繊維状ブリッスル材料の不要部分をトリミングして繊維状ブリッスルが配列された該ブラシ部を得る製品取得工程と、
を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記シート材配置工程において、前記金型が前記第一および第二の金型半体の間に1または2以上の中間金型半体を備え、該中間金型半体と前記第一および第二の金型半体の分割面の間および隣り合う該中間金型半体の分割面の間に、それぞれシート材を配置することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記シート材配置工程において、前記シート材として前記繊維状ブリッスル材料を縦糸とし該縦糸を横糸で編みこんで網目状に形成した材料を用い、
前記製品取得工程において、該横糸を除去することを特徴する。
【0010】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記シート材配置工程において、前記シート材として前記複数の繊維状ブリッスル材料の一端部が相互に固着された材料を用いることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記シート材配置工程において、前記シート材配置工程において、前記シート材として前記繊維状ブリッスル材料を縦糸とし、該縦糸のみからなる縦糸部と、該縦糸を横糸で編みこんで網目状に形成した網目部とが交互に形成された材料を用い、該縦糸部を前記金型内に位置決めすることを特徴とする。
また、このとき、好ましくは、上記それぞれのシート材がロール状に形成され、成形が完了する都度、順次、前記金型に送り込んで用いることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、使用する前記繊維状ブリッスル材料が、ポリアミド系繊維またはポリエステル系繊維であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記繊維状ブリッスル材料の繊維径が0.05mm〜1mmであり、隣り合う前記繊維状ブリッスル材料の隙間が0.05〜3mmであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、好ましくは、前記金型のキャビテイが、ブラシ部となる部分の前記繊維状ブリッスルが配列される部位とはほぼ反対側の部位に、該ブラシ部の長手方向と直交する方向に延出して設けられ、長手方向に複数配列される溝部を成形する形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、繊維状ブリッスル材料を用い、インサート成形法により化粧用ブラシ本体のブラシ部と繊維状ブリッスルを一体成形するため、例えばマスカラブラシに用いた場合に、繊細な睫毛を1本ごとにさばくことができ、また、剛毛感のない化粧用ブラシを簡易な方法で安価に製造することができる。
また、本発明に係る化粧用ブラシの製造方法は、成形時に複数の溝部を成形するため、得られる溝部を塗布用とすることで、1本の化粧用ブラシで塗布とさばきの両方を好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0017】
本実施の形態に係る化粧用ブラシの製造方法は、柄部に延出するブラシ部に繊維状ブリッスルが配列された化粧用ブラシを得る方法である。ここで、繊維状ブリッスルとは、繊維のように細い糸状の材料で形成したブリッスルをいう。
このような化粧用ブラシは、例えばマスカラブラシに用いた場合に、繊細な睫毛を1本ごとにさばくことができ、また、剛毛感がない。
【0018】
以下、本実施の形態に係る化粧用ブラシの製造方法について説明する。
本実施の形態に係る化粧用ブラシの製造方法は、インサート成形方法により、複数の繊維状ブリッスル材料をインサート品として、金型内に配置した後、化粧用ブラシのブラシ部となる樹脂材料でインサート品の一部を樹脂材料で包んで固化させて、言い換えれば、鋳ぐるんで、化粧用ブラシを得る方法である。
すなわち、本実施の形態に係る化粧用ブラシの製造方法は、柄部と柄部に延出するブラシ部とを備えたブラシ本体の少なくともブラシ部を成形するキャビテイを有する金型を構成する第一および第二の金型半体を開いて、複数の繊維状ブリッスル材料が所定間隔離間して並列に配置された1枚のシート材のそれぞれの繊維状ブリッスル材料の一部がキャビテイの軸成形箇所に進入するように位置決めしてシート材を第一および第二の金型半体の間に配置するシート材配置工程と、
金型を型締めした後、キャビテイに樹脂を充填して成形する成形工程と、
金型を型開きして成形品を該金型から取り出した後、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料の不要部分をトリミングして繊維状ブリッスルが配列されたブラシ部を得る製品取得工程と、
を有する。
柄部とブラシ部を一体成形しない場合は、繊維状ブリッスルが配列されたブラシ部を、別体として作製した柄部に適宜の方法で接合することにより、化粧用ブラシを得る。
【0019】
本実施の形態に係る化粧用ブラシの製造方法について、複数の例を挙げて、工程ごとに、図を参照してさらに詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図1〜図4を参照して説明する。なお、本実施の形態の第一の例で用いる、金型、成形法、成形用樹脂、シート材料等は、後述する他の実施の形態例についても同様に適用できるため、説明を繰り返さない。
【0021】
本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、図1に示すように、第一の金型半体10aおよび第二の金型半体10bが上下方向に分割される、立て型の金型10を用いる。ただし、これに代えて、2つの金型半体が水平方向に分割される、横型の金型を用いてもよい。また、成形方法は、射出成形法を用いるが、これに限定するものではなく、例えば圧縮成形法等の他の成形方法を用いてもよい。
【0022】
第一の金型半体10aおよび第二の金型半体10bには、それぞれ分割面を挟んで対称形の、化粧用ブラシのブラシ部を成形するためのキャビテイ部12a、12aと、柄部を成形するためのキャビテイ部12b、12bからなるキャビテイ12が形成される(図1では、第一の金型半体10aのキャビテイは現れない。)。
【0023】
化粧用ブラシのブラシ部および柄部を成形するための樹脂材料は、適宜のものを用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂やPBT(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等を用いることができる。ただし、成形時に、以下に説明するシート材が熱変形し、あるいは熱による品質劣化を生じることを避ける観点からは、金型を加熱することが必要な熱硬化性樹脂よりは熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
インサート品である繊維状ブリッスル材料は、適宜の繊維、例えば樹脂繊維を用いることができ、例えば、ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維等を用いることができる。この繊維状ブリッスル材料を縦糸14aとし、縦糸14aを横糸14bで編みこんで網目状に形成したシート材14を用いる。ここで、縦糸および横糸は、いわゆる織物を構成する長さ方向(縦方向)の糸とその糸と交差する幅方向の糸を限定的に指すのではなく、単に、網目を構成する交差する2方向の糸をいう。他のシート材の例についても同様である。
このようなシート材料14は、所望の繊維径を有する繊維状ブリッスル材料が所望の隙間を持って配列された形態のものを容易に得ることができる。縦糸14aは、好ましくは径(繊維径)Dが0.05〜1mm、より好ましくは0.1mm〜0.25mmである。また、隣り合う縦糸(繊維状ブリッスル材料)14aの隙間Cが好ましくは0.05〜3mmである。
【0025】
まず、シート材配置工程では、図1に示すように、金型10を開いて、シート材14の複数の縦糸(繊維状ブリッスル材料)14aの一部がキャビテイ部12aに進入するように位置決めしてシート材14を第一の金型半体10aと第二の金型半体10bの間に配置する。例えば、図1では、固定型である第二の金型半体10bの分割面Fに接するように配置する。この例では、シート材14は、長尺の(巻物)ロール状に形成されており、図示しない送り出しロールに原反が巻回される。そして、シート材14は、送りロール16a、16bによって、成形が完了する都度、順次、金型10に送り込んで用いられる(図2参照)。したがって、ここでは、シート材14はロール状にエンドレスに設けられた縦糸14aをキャビテイ部12aの長手方向と交差する方向に配置するため、金型10の適宜の位置にシート材14を配置することで、確実に縦糸14aの一部(一端)がキャビテイ部12aに進入する。なお、この場合、図1中左側に位置するシート材14の先端部を右側に引き込んで(図1中、矢印Xで示す。)、キャビテイ部12aに位置決めしてもよい。このようなシート材14の位置決め方法としては、例えば、シート材14にマーカーを設けてそのマーカーを検知する方法、シート材14の送り量をカウンターで計測して、調整する方法等の適宜の方法を用いることができる。
【0026】
つぎに、成形工程では、金型10を型締めした後、キャビテイ12に樹脂を充填して成形する(図2参照)。このときの成形条件は、樹脂の種類、金型の種類および成形方法に応じて適宜設定される。
【0027】
つぎに、製品取得工程では、金型10を型開きして、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料(縦糸と同じ参照番号を付す。)14aを一定の幅残した状態で、シート材14を原反から切り離す。そして、成形品18を金型10から取り出した後(図3参照)、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料14aの不要部分をトリミングして繊維状ブリッスル19が配列されたブラシ部20と、ブラシ部20と一体的に形成された柄部22からなる化粧用ブラシ24が得られる(図4参照)。
繊維状ブリッスル材料14aの不要部分のトリミングは、図3中、ブラシ部20の繊維状ブリッスル19が形成される側P1とその反対側P2の両方について行う。反対側P2については、適宜の方法により、例えば、カッターを用いて繊維状ブリッスル材料14aを完全に除去する。また、反対側P2のシート部分を除去した後あるいは除去せずに残した状態でこの部位を加熱溶融処理してもよく、あるいはまた、この部位を覆うカバーを設けてもよい。一方、繊維状ブリッスル19が形成される側P1については、適宜の方法により、横糸14bのみを除去し、さらに、必要に応じて繊維状ブリッスル材料14aの長さ寸法を調整する。横糸14bを除去する方法としては、例えば回転ブラシ等の適宜の冶具を用いて、横糸14bを解糸してもよく、また、PVA(ポリビニルアルコール)等の水溶性繊維で形成した横糸14bを水洗により、除去してもよい。
なお、シート材14の先端部を右側に引き込んで(図1中、矢印Xで示す。)、キャビテイ部12aに位置決めした状態で成形する場合は、反対側P2のトリミングは不要となる。
【0028】
本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、所望の繊維径および繊維の配列状態の繊維状ブリッスルを有する化粧用ブラシを簡易で安価に製造することができ、例えばマスカラブラシに用いた場合に、繊細な睫毛を1本ごとにさばくことができ、また、剛毛感がない。
【0029】
つぎに、本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図5〜図8を参照して説明する。なお、本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0030】
使用する金型26は、ブラシ部を成形するためのキャビテイ28、28を有する第一の金型半体26aおよび第二の金型半体26bで構成される。
まず、シート材配置工程では、ロール状のシート材14は、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と異なり、キャビテイ28a、28aの長手方向に沿って縦糸(繊維状ブリッスル材料)14aを配置する。
【0031】
つぎに、成形工程では、金型26を型締めした後、キャビテイ28に樹脂を充填して成形する(図6参照)。
【0032】
つぎに、製品取得工程では、金型10を型開きして、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料(縦糸と同じ参照番号を付す。)14aを一定の幅残した状態で、シート材14を原反から切り離す。そして、成形品30を金型26から取り出した後(図7参照)、鋳ぐるまれていない繊維状ブリッスル材料14aの不要部分をトリミングして繊維状ブリッスル19が配列されたブラシ部20が得られる。さらに、ブラシ部20を、適宜の方法により形成した柄部22に、適宜の方法で接合することにより、化粧用ブラシ24が得られる(図8参照)。
この場合、ブラシ部20の繊維状ブリッスル19が形成される側にのみはみ出した状態となっている繊維状ブリッスル材料14aのみを本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と同様の方法によりトリミングすればよい。
【0033】
本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0034】
つぎに、本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図10を参照して説明する。なお、本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0035】
本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法で用いるのと同様の金型を使用する。シート材配置工程で、1つの化粧用ブラシに繊維状ブリッスルを設けるのに必要な寸法に裁断したシート材のピース15を第二の金型半体10bの分割面に配置する点のみが本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と異なる。
【0036】
本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、ピース15(繊維状ブリッスル材料14a)がブラシ部の繊維状ブリッスルが形成される側にのみはみ出した状態で、ブラシ部と柄部が一体となった成形品を得ることができる。
【0037】
つぎに、本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図11を参照して説明する。なお、本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0038】
本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法で用いるのと同様の金型を使用する。シート材配置工程で、繊維状ブリッスル材料を縦糸14aとし、縦糸のみからなる縦糸部32と、縦糸14aを横糸14bで編みこんで網目状に形成した網目部32とが交互に形成されたロール状シート材(材料)34を用い、成形が完了する都度、順次、前記金型に送り込んで縦糸部を金型内に位置決めして用いる点のみが本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と異なる。このとき、縦糸部32の両側に網目部32が形成されたシート材のピースを用いてもよい。
【0039】
本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、成形後にトリミングを行う際に、横糸14bを除去する必要がない。
【0040】
つぎに、本実施の形態の第五の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図12を参照して説明する。なお、本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0041】
本実施の形態の第五の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法で用いるのと同様の金型を使用する。シート材配置工程で、繊維状ブリッスル材料(縦糸)14aの一端部を、横糸で編みこみ、あるいは、粘着剤で粘着し、あるいはまた、加熱融着して固化して固着部35を形成したロール状シート材36を用い、成形が完了する都度、順次、前記金型に送り込んで縦糸部を金型内に位置決めして用いる点のみが本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法と異なる。
【0042】
本実施の形態の第五の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、シート材のロスが少く、また、横糸を除去する必要がない。
なお、ロール状シート材36は、本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法のように、ピースに分割して用いてもよい。また、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法に用いるシート材14に替えて用いることもできる。
【0043】
つぎに、本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図13および図14を参照して説明する。なお、本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0044】
本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、金型38が第一金型半体10aおよび第二の金型半体10bの間に中間金型半体38aを備える点が、本実施の形態の第一の例の金型10と異なる。そして、シート材配置工程では、図13に示すように、中間金型半体38aと第一金型半体10aおよび第二の金型半体10bの分割面の間にそれぞれシート材14を配置する。
得られる化粧用ブラシ40のブラシ部42には、図14に示すように、所定離間した複数の繊維状ブリッスル44が2列配列される。
【0045】
本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、塗布とさばきの双方を好適に行うことができる化粧用ブラシが得られる。
なお、中間金型半体38aは2以上設けてもよい。また、金型38は、本実施の形態の第一の例以外の他の例についても適用できる。
【0046】
つぎに、本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法について、図15および図16を参照して説明する。なお、本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法において、本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法と重複する説明は省略する。
【0047】
本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法は、図15に示すように、金型の第一金型半体48a(図15には現れない。)および第二の金型半体48bのブラシ部を成形するキャビテイ50、50が、繊維状ブリッスルが配列される部位とはほぼ反対側の部位に、ブラシ部の長手方向と直交する方向に延出して設けられ、長手方向に複数配列される溝部を成形するための複数の突起52が所定間隔で設けられている点が、本実施の形態の第二の例の金型26と異なる。
得られる化粧用ブラシ54のブラシ部56には、複数の繊維状ブリッスル58が配列される部位とはほぼ反対側の部位に複数の溝部60が配列される。
【0048】
本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法によれば、溝部60と繊維状ブリッスル58を使い分けることで、塗布とさばきの双方を好適に行うことができる化粧用ブラシが得られる。
なお、溝部は、本実施の形態の第二の例以外の他の例についても適用できる。
【0049】
以上説明した本実施の形態の各例に係る化粧用ブラシの製造方法は、マスカラブラシ以外の他の化粧用ブラシを製造する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、金型にシート材料を配置する状態を示す金型の概略分解斜視図である。
【図2】本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置した金型を閉じるときの状態を示す、金型の図1中II−II線上断面図である。
【図3】本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、金型から取り出した成形品の斜視図である。
【図4】本実施の形態の第一の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、完成した化粧用ブラシの斜視図である。
【図5】本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、金型にシート材料を配置する状態を示す金型の概略分解斜視図である。
【図6】本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置した金型を閉じるときの状態を示す、金型の図5中VI−VI線上断面図である。
【図7】本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、金型から取り出した成形品の斜視図である。
【図8】本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、完成した化粧用ブラシのブラシ部の斜視図である。
【図9】本実施の形態の第二の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、完成した化粧用ブラシの斜視図である。
【図10】本実施の形態の第三の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置する状態を示す第二の金型半体の平面図である。
【図11】本実施の形態の第四の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置する状態を示す第二の金型半体の平面図である。
【図12】本実施の形態の第五の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置する状態を示す第二の金型半体の平面図である。
【図13】本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置した金型を閉じるときの状態を示す、金型の断面図である。
【図14】本実施の形態の第六の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、完成した化粧用ブラシの斜視図である。
【図15】本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、シート材料を配置する状態を示す第二の金型半体の平面図である。
【図16】本実施の形態の第七の例に係る化粧用ブラシの製造方法を説明するためのものであり、完成した化粧用ブラシの斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
10、26、38 金型
10a、10b、26a、26b、48a、48b 金型半体
12、28、50 キャビテイ
12a、12b キャビテイ部
14、34、36 シート材
14a 縦糸
14b 横糸
15 ピース
16a、16b 送りロール
18、30 成形品
19、44、58 繊維状ブリッスル
20、42、56 ブラシ部
22 柄部
24、40、54 化粧用ブラシ
30 網目部
32 縦糸部
35 固着部
38a 中間金型半体
60 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部と該柄部に延出するブラシ部とを備えたブラシ本体の少なくとも該ブラシ部を成形するキャビテイを有する金型を構成する第一および第二の金型半体を開いて、複数の繊維状ブリッスル材料が所定間隔離間して並列に配置された1枚のシート材のそれぞれの繊維状ブリッスル材料の一部がキャビテイの軸成形箇所に進入するように位置決めして該シート材を該第一および第二の金型半体の間に配置するシート材配置工程と、
該金型を型締めした後、キャビテイに樹脂を充填して成形する成形工程と、
該金型を型開きして成形品を該金型から取り出した後、鋳ぐるまれていない該繊維状ブリッスル材料の不要部分をトリミングして繊維状ブリッスルが配列された該ブラシ部を得る製品取得工程と、
を有することを特徴とする化粧用ブラシの製造方法。
【請求項2】
前記シート材配置工程において、前記金型が前記第一および第二の金型半体の間に1または2以上の中間金型半体を備え、該中間金型半体と前記第一および第二の金型半体の分割面の間および隣り合う該中間金型半体の分割面の間に、それぞれシート材を配置することを特徴とする請求項1記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項3】
前記シート材配置工程において、前記シート材として前記繊維状ブリッスル材料を縦糸とし該縦糸を横糸で編みこんで網目状に形成した材料を用い、
前記製品取得工程において、該横糸を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項4】
前記シート材配置工程において、前記シート材として前記複数の繊維状ブリッスル材料の一端部が相互に固着された材料を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項5】
前記シート材配置工程において、前記シート材として前記繊維状ブリッスル材料を縦糸とし、該縦糸のみからなる縦糸部と、該縦糸を横糸で編みこんで網目状に形成した網目部とが交互に形成された材料を用い、該縦糸部を前記金型内に位置決めすることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項6】
前記シート材がロール状に形成され、成形が完了する都度、順次、前記金型に送り込んで用いることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項7】
前記繊維状ブリッスル材料が、ポリアミド系繊維またはポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項8】
前記繊維状ブリッスル材料の繊維径が0.05mm〜1mmであり、隣り合う前記繊維状ブリッスル材料の隙間が0.05〜3mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧用ブラシの製造方法。
【請求項9】
前記金型のキャビテイが、ブラシ部となる部分の前記繊維状ブリッスルが配列される部位とはほぼ反対側の部位に、該ブラシ部の長手方向と直交する方向に延出して設けられ、長手方向に複数配列される溝部を成形する形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧用ブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−154819(P2008−154819A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347407(P2006−347407)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】