説明

化粧造作部材の製造方法

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、外観に優れる化粧造作部材を、連続的に生産性よく製造する方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、基材に反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に突板を載置し、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)で、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締し、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ホットメルト接着剤を用いて基材と突板とを接着する化粧造作部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床材、壁材及び天井材等には、美観性の観点から、木材、合板、パーチクルボード、MDF等の基材に、化粧紙、塩ビシート、突板等の化粧材を接着して得られる化粧造作部材が使用されている。なかでも、基材に突板を接着した化粧造作部材は、高級感を有することからその需要が高まっている。
【0003】
突板は、天然木を薄くスライスしたものであり、大気中の温度及び湿度条件によっては、しわが生じやすく、力を加えた場合にひび割れしやすいものである。したがって、かかる突板を基材に貼着して化粧造作部材を製造する場合、基材に化粧紙等を貼着する方法と同様の方法で、連続的に化粧造作部材を製造することができない。
【0004】
従来の、突板と基材とを接着し化粧造作部材を製造する方法としては、例えば基材に酢酸ビニル樹脂等を含有する水性接着剤を塗布し、次いで突板を重ねたものを、フラットプレス法で圧締し、化粧造作部材をバッチ生産する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、フラットプレス法とは、接着剤を塗布した基材に突板を重ねたものを、バッチ式で加熱・加圧し、基材と突板とを接着する方法である。
【0005】
しかし、突板を貼着した化粧造作部材の需要が高まるなかで、特許文献1に記載の方法では、かかる化粧造作部材を連続的に大量生産することが困難である。また、接着後の化粧造作部材の表面には、塗装や切削等の加工が施される場合が多いが、水性接着剤は、初期接着性が十分でなく、最終硬化するまでに長時間を有する為、突板と基材とが十分に接着する前に前記加工を施すと、突板が剥離する場合がある。前記加工時の突板の剥離を防止するためには、前記圧締後の化粧造作部材を、堆積プレス等を用いて、再度、圧締した状態で養生させる必要があるが、かかる工程には、約1〜2日程度を要する場合が多い為、化粧造作部材の生産性の点で問題である。
【0006】
また、予め加熱処理と冷却処理とを交互に繰り返し行った突板を、ホットメルト型接着剤で合板に貼り合わせる、床材の製造方法によれば、床材表面のひび割れを抑制でき、また、前記方法では、初期接着性に優れるホットメルト型接着剤を使用していることから、突板表面に切削等の加工を施す前の、堆積プレス等による養生期間を短縮又は省略することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかし、特許文献2に記載の方法もまた、バッチ式のフラットホットプレス法によるものであり、化粧造作部材の生産性の点で問題である。また、前記方法では、得られる床材表面のひび割れ等を防止するために、予め突板に加熱処理と冷却処理とを施すという煩雑な作業をする必要があり、作業性の観点からも問題である。
【0008】
【特許文献1】特開2003−147309号公報
【特許文献2】特開2004−216811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、外観に優れる化粧造作部材を、連続的に生産性よく製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、化粧造作部材の生産性及び化粧造作部材を製造する際の作業性を向上させるために、各種検討を行い、化粧造作部材を製造する際に使用する接着剤としては、初期接着性に優れる反応性ホットメルト接着剤を使用することを検討した。また、突板と基材との圧締する方法としては、ロールプレス法やベルトプレス法を使用することを検討した。
【0011】
その結果、突板と基材とを連続的に接着することが可能となり、化粧造作部材の生産性を向上させることができた。
【0012】
しかし、前記方法で得られた化粧造作部材の表面には、突板由来のしわやひび割れが発生してしまうという問題が生じた。かかる問題を解決するためには、特許文献2に記載のように突板の前処理が必要となり、作業性を改善できるには至らなかった。
【0013】
そこで、発明者等は、基材と突板とを貼着及び圧締する際の温度及び圧力に着目し検討を進め、プレスロール等を特定の温度及び圧力に調整することで、前記問題を解決し、且つ、外観に優れた化粧造作部材を連続的に生産できることを見出した。
【0014】
即ち、本発明は、基材に反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に突板を載置し、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)で、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締することで、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法に関するものである。
【0015】
また、本発明は、基材に反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に突板を載置し、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した1対のプレスベルト(III)で、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締することで、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、煩雑な作業を伴わずとも外観に優れる化粧造作部材を製造でき、且つ、かかる化粧造作部材の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
はじめに、本発明で使用する基材及び突板について説明する。
【0018】
本発明で使用できる基材は、床材、壁材、天井材等として一般的に使用できるものであり、例えば木材、合板、パーチクルボード、MDF等の木質基材、ベークライト、アクリル、PET、ABS、FRP、塩ビ等の樹脂からなる基材、ステンレス、鋼板等の金属基材、珪酸カルシウム板、スレート板、石膏ボード等の窯業系基材及びこれらの複合基材等が挙げられる。
【0019】
本発明で使用できる突板とは、楢、椛、オーク、栓等の天然木を、約0.15mm〜1.2mm程度に薄く削りだしたものである。前記突板としては、天然木をスライスしたものに不織布やフィルムを裏打ちしたものも使用することができる。また、積層した木材を積層面から90°方向にスライスして得られる人工突板を使用することができる。
【0020】
次に、本発明で使用する反応性ホットメルト接着剤について説明する。
【0021】
本発明で使用する反応性ホットメルト接着剤は、常温では固体で、加熱すると溶融して液状又は粘稠状態となるホットメルト性を有し、且つ、硬化する際に架橋性を有する接着剤である。
【0022】
前記反応性ホットメルト接着剤は、溶融状態の樹脂が冷却する際の、樹脂の凝集力により、優れた初期強度を発現することができる。また、前記反応性ホットメルト接着剤は、硬化する際に架橋反応するため、最終接着強度に優れ、その結果、耐熱性及び耐水性に優れた接着層を形成できる。
【0023】
また、従来の酢酸ビニル系ホットメルト接着剤やポリアミド系ホットメルト接着剤を使用する場合、これらを溶融状態とするためには、約180℃にする必要があり、基材が樹脂製のものである場合には、熱により基材が損傷するという問題があった。しかし、前記反応性ホットメルト接着剤は、約100〜130℃と比較的低温で溶融状態となるため、前記基材や突板の熱による悪影響を最小限に抑制することができる。
【0024】
本発明で使用できる反応性ホットメルト接着剤としては、例えば、反応性官能基としてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含んでなる湿気硬化型反応性ホットメルト接着剤、反応性官能基としてアルコキシシリル基を有するウレタンプレポリマーを含んでなるシラン架橋型反応性ホットメルト接着剤、紫外線や電子線で反応する官能基を有する化合物を含んでなる紫外線硬化型反応性ホットメルト接着剤や電子線硬化型反応性ホットメルト接着剤等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0025】
前記反応性ホットメルト接着剤のなかでも、初期接着性、常態接着性、硬化後の耐熱性等に優れるウレタン系反応性ホットメルト接着剤を使用することが好ましい。
【0026】
前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤として使用できるものは、例えば分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーや、分子末端にアルコキシシリル基を有するウレタンプレポリマー等を含有するものが挙げられる。なお、一般に、ウレタンプレポリマーとは、比較的低分子量のものが多いが、当業者においては、数万の数平均分子量を有するものもウレタンプレポリマーと称されており、本発明においても、数万の数平均分子量を有するウレタンプレポリマーを含むものである。
【0027】
なかでも、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、前記イソシアネート基が突板中に含まれる水分(湿気)と反応することから、常態接着性及び硬化後の耐熱性等に特に優れた化粧造作部材を製造することができるため好ましい。
【0028】
前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、例えばポリオールとポリイソシアネートとを反応させることで製造することができる。
【0029】
前記ポリオールとして使用できるものは、例えば分子内に2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられ、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、多価アルコール及びこれらの共重合物等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用することができる。
【0030】
前記ポリイソシアネートとして使用できるものは、例えば分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート、及びこれらのカルボジイミド変性体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用することができる。
【0031】
前記ポリイソシアネートのうち、加熱時の蒸気圧が比較的低い4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4−MDI)等を使用することが、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリイソシアネートの揮発を抑制できることから好ましい。
【0032】
前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、前記ポリイソシアネートの有するイソシアネート基と前記ポリオールの有する水酸基との当量比が、1より大きい条件下で、前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとを周知慣用の方法で反応させることで製造することができる。
【0033】
前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤中における前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー及び前記分子末端にアルコキシシリル基を有するウレタンプレポリマーの重量割合は、初期接着性、常態接着性、硬化後の耐熱性等の観点から30〜100重量%の範囲内であることが好ましい。
【0034】
前記ウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合は、1.5〜3.5重量%の範囲内であることが好ましい。かかる範囲であれば、本発明で使用するウレタン系反応性ホットメルト接着剤の溶融粘度が適度な範囲となり、良好な塗工適性が得られ、且つ、初期凝集力及び初期接着強度に優れたウレタン系反応性ホットメルト接着剤を得ることができる。
【0035】
前記反応性ホットメルト接着剤は、前記基材表面に塗布する際の塗工性及び前記基材と前記突板との接着性等の観点から、125℃において、6,000〜40,000mPa・sの溶融粘度を有することが好ましい。
【0036】
前記反応性ホットメルト接着剤は、前記基材表面に塗布する際の塗工性の観点から、例えば100〜130℃の溶融温度を有することが好ましい。
【0037】
以上のように、本発明において前記反応性ホットメルト接着剤を使用すれば、硬化反応が早く進行するため、圧締後の化粧造作部材を、長期間養生する必要しなくても、耐熱性及び耐水性に優れた接着剤層を形成でき、前記基材と前記突板とを接着することができる。
【0038】
次に、前記反応性ホットメルト接着剤を用いて、前記基材と前記突板とを接着し、化粧造作部材を製造する方法について説明する。
【0039】
本発明は、前記反応性ホットメルト接着剤を塗布した前記基材表面に、前記突板を重ね、次いで、50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)又は1対のプレスベルト(III)で、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締することで、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法である。
【0040】
前記反応性ホットメルト接着剤を前記基材に塗布する方法としては、各種方法が挙げられるが、ロールコーターで塗布する方法が好ましい。ロールコーターによれば、前記基材がロールコーターと接触した場合のみ、前記基材上に前記反応性ホットメルト接着剤を塗布することができ、ロールコーターが前記基材から離れることで、塗布を停止することができる。したがって、ロールコーターによる前記反応性ホットメルト接着剤の塗布方法は、基材がシートの巻物の様に連続したものでなく、一定の間隔を空けて間欠投入される様な板状のものである場合に適した塗布方法である。また、前記ロールコーターによる塗布方法は、スプレーやダイコーターによる塗布方法と異なり、基材の幅方向のサイズが変更した場合に、装置の設定を変更することなく塗布することができる。
【0041】
前記ロールコーターのロールは、前記反応性ホットメルト接着剤が溶融する温度以上に調整されている必要があり、その温度は、使用する反応性ホットメルト接着剤により異なるが、例えば100〜130℃である。前記反応性ホットメルト接着剤の塗布量は、接着性とコスト等の観点から、50〜200g/mが好ましい。前記ロールコーターの温度及び前記反応性ホットメルト接着剤の基材への塗布量が、かかる範囲内であれば、前記基材に塗布された前記反応性ホットメルト接着剤が適度な粘着性を発現でき、その結果、良好な初期接着性及び常態接着性を発現することができる。
【0042】
次に、前記反応性ホットメルト接着剤を塗布した基材の塗布面に、前記突板を重ね、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着する工程について説明する。
【0043】
前記突板が載置された基材は、例えば複数のベルトやロール等からなるベースラインにより、50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)の間に搬送される。搬送された、前記突板が載置された基材には、前記1対のプレスロール(I)の間を通過する際に加熱及び弱い圧力が加えられる。その際、前記突板と前記基材との間の前記反応性ホットメルト接着剤が流動性を発現し、その結果、前記突板と前記基材とを貼着することができる。
【0044】
このとき、前記1対のプレスロール(I)の温度は、突板のひび割れや、しわの発生を抑制する観点から50〜120℃である。前記1対のプレスロール(I)の温度が50℃未満であると、前記反応性ホットメルト接着剤が十分な流動性を有する程溶融しないため、前記突板に対する濡れ性が不十分となり、前記基材上に前記突板を十分に貼着することができない。また、かかる温度が120℃を超えると、前記反応性ホットメルト接着剤が粘着性を発現しにくく、前記基材上に前記突板を十分に貼着することができないという問題がある。
【0045】
前記1対のプレスロール(I)で、前記基材と前記突板とを貼着する際の前記1対のプレスロール(I)による圧力は、0.5MPa以下である。かかる圧力が0.5MPaを超えると、突板のひび割れや、しわが発生し、得られる化粧造作部材の外観不良を引き起こすという問題がある。
【0046】
前記プレスロール(I)は、例えば鉄などの金属や、ナイロンなどの硬質樹脂、ゴム等からなるものを使用できるが、前記突板と接する側のプレスロールは、突板のひび割れやしわを抑制する観点から鉄又はナイロンからなるものであることが好ましい。
【0047】
次に、前記1対のプレスロール(I)で貼着された前記基材と前記突板とを、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)又はプレスベルト(III)で、1〜30MPaの圧力で圧締する工程について説明する。
【0048】
前記1対のプレスロール(I)により貼着した前記突板と前記基材からなるものは、例えば複数のベルトやロール等からなるベースラインにより、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)の間に搬送され、前記少なくとも1対のプレスロール(II)の間を通過する際に、1〜30MPaの圧力が加えられることで圧締される。
【0049】
前記少なくとも1対のプレスロール(II)は、2対以上のプレスロール(II)であることが、前記突板と前記基材とを十分に圧締でき、前記突板の剥離を防止できる観点から好ましい。
【0050】
前記1対のプレスロール(II)により前記突板と前記基材とを圧締する工程は、前記基材と前記突板とを接着剤層を介して完全に接着させる為のものである。このとき、前記1対のプレスロール(II)により前記突板と前記基材とに加えられる圧力は、1〜30MPaの範囲である。かかる圧力が1MPa未満であると、前記基材や前記突板と、前記反応性ホットメルト接着剤からなる接着層との接点が少なくなり、十分な常態接着強度を発現することができない。また、かかる圧力が30MPaを超えると、前記基材や前記突板に損傷を与えるという問題がある。したがって、前記1対のプレスロール(II)による圧力は、10〜20MPaの範囲内であることが好ましい。
【0051】
前記1対のプレスロール(II)は、40℃以下の温度に調整されているものである。前記1対のプレスロール(II)の温度が40℃以上であると、前記反応性ホットメルト接着剤に、前記基材から前記突板が剥離するのを抑制できるレベルの初期凝集力を発現させることができない。したがって、前記プレスロール(II)は、常温程度であることが好ましい。
【0052】
前記1対のプレスロール(II)は、例えば鉄などの金属や、ナイロンなどの硬質樹脂、ゴム等からなるものを使用することができる。
【0053】
また、前記基材と前記突板とを圧締する際には、前記1対のプレスロール(II)の代わりに、40℃以下に調整した1対のプレスベルト(III)を使用することができる。
【0054】
前記1対のプレスロール(I)により貼着した前記突板と前記基材とからなるものは、例えば、複数のベルトやロール等からなるベースラインにより、40℃以下に調整した1対のプレスベルト(III)の間に搬送され、前記1対のプレスベルト(III)の間を通過する際に、1〜30MPaの圧力を加えられることで圧締される。
【0055】
前記1対のプレスベルト(III)は、例えばスチール、ゴム、皮等からなるであり、複数のロールにより回転するものである。
【0056】
前記1対のプレスベルト(III)は、前記1対のプレスロール(II)と同様に、40℃以下の温度に調整されたものである。また、前記1対のプレスベルト(III)により前記突板と前記基材とに加えられる圧力もまた、1〜30MPaの範囲内であり、10〜20MPaの範囲内であることが好ましい。
【0057】
前記1対のプレスロール(II)又は前記1対のプレスベルト(III)で圧締して得られた化粧造作部材は、その表面に塗装や切削等の加工を施すことができる。本発明で得られた化粧造作部材は、水性接着剤を用いて化粧造作部材を製造した場合のように、切削等の加工を施す前に1〜2日間も養生させる必要が無く、前記突板と前記基材とを、前記方法で圧締した後、常温、常湿度下で、わずか1〜2時間養生させるだけで、前記塗装や切削等の加工を施すことができ、かかる加工時に、前記基材と前記突板とが剥離することを抑制できる。
【0058】
本発明の製造方法によれば、前記基材と前記突板とを連続的に接着することができ、従来のバッチ式のフラットホットプレス法で突板と基材とを接着する場合と比較して、得られる化粧造作部材の生産性を著しく向上させることができる。また、本発明の製造方法によって得られる化粧造作部材は、突板のひび割れやしわのない、良好な外観を有するものである。
【0059】
本発明の製造方法で得られた化粧造作部材は、突板のひび割れやしわがなく、外観の優れたものであるから、例えば床、天井、壁などの化粧造作部材として使用することができる。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0061】
<外観>
圧締した直後の化粧造作部材を目視で観察し、その外観を評価した。
【0062】
外観の判定基準
○:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわがない。
△:一部に、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
×:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
【0063】
<機械的後加工性>
圧締した直後の化粧造作部材に、パネルソーで溝を切削する加工を施し、加工後に突板の剥離や割れが生じるか否かを目視で判定した。
【0064】
機械的後加工性の判定基準
○:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわがない。
△:一部に、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
×:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
【0065】
<熱的後加工性>
圧締した後、20℃で相対湿度60%の雰囲気下で1時間養生した化粧造作部材を、80℃の雰囲気下で2時間放置した。放置後の化粧造作部材に、パネルソーで溝を切削する加工を施し、加工後に突板の剥離や割れが生じるか否かを目視で判定した。
【0066】
熱的後加工性の判定基準
○:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわがない。
△:一部に、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
×:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
【0067】
<耐熱性>
20℃で相対湿度60%の雰囲気下で72時間静置し、接着剤層が完全に硬化した化粧造作部材を、80℃の雰囲気下で192時間放置した。放置後の化粧造作部材において、突板の剥離や割れが生じたか否かを目視で判定した。
【0068】
耐熱性の判定基準
○:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわがない。
△:一部に、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
×:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
【0069】
<耐水性>
20℃で相対湿度60%の雰囲気下で72時間静置し、接着剤層が完全に硬化した化粧造作部材を、70℃の温水中に2時間浸漬した。次いで、浸漬後の化粧造作部材を60℃に調整した乾燥機で3時間乾燥した後の化粧造作部材において、突板の剥離や割れが生じたか否かを目視で判定した。
【0070】
耐水性の判定基準
○:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわがない。
△:一部に、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
×:全体に渡って、突板の剥がれ、割れ及びしわが見られる。
【0071】
(製造例1)反応性ホットメルト接着剤の調製
2リットル4ツ口フラスコに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール190重量部と、1,12−ドデカン二酸/1,6−ヘキサンジオール由来の水酸基当量質量1750の脂肪族ポリエステルポリオール380重量部と、アジピン酸/1,6−ヘキサンジオール由来の水酸基当量質量2000の脂肪族ポリエステルポリオール200重量部と、エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソフタル酸/テレフタル酸由来の水酸基当量質量1500の芳香族系ポリエステルポリオール380重量部とを混合し、減圧下100℃で加熱して、2リットル4ツ口フラスコ中に含まれる水分が0.05重量%になるまで脱水した。
【0072】
次いで、それらを70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート226重量部を加え、120℃まで昇温し、生成するウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の重量割合が一定となるまで3時間反応し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(数平均分子量1622)を得た。
【0073】
得られた分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、添加剤として2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル(商品名:U−CAT 660M、サンアプロ社製)1重量部を加えて均一に攪拌することで、前記ウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合が2.3重量%で、コーンプレート粘度計(ICI型、20Pコーン)を用いて測定した125℃における溶融粘度が11000mPa・sである反応性ホットメルト接着剤を得た。なお、前記イソシアネート基含有量は、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに過剰のアミンを添加し、イソシアネート基反応させた後、残ったアミンを塩酸で滴定することで、前記ウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合を求めた。
【0074】
(製造例2)反応性ホットメルト接着剤の調製
2リットル4ツ口フラスコに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール190重量部と、1,12−ドデカン二酸/1,6−ヘキサンジオール由来の水酸基当量質量1750の脂肪族ポリエステルポリオール380重量部と、アジピン酸/1,6−ヘキサンジオール由来の水酸基当量質量2000の脂肪族ポリエステルポリオール200重量部と、エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/イソフタル酸/テレフタル酸由来の水酸基当量質量1500の芳香族系ポリエステルポリオール380重量部とを混合し、減圧下100℃で加熱して、2リットル4ツ口フラスコ中に含まれる水分が0.05重量%になるまで脱水した。
【0075】
次いで、それらを70℃に冷却後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート180重量部を加え、120℃まで昇温し、生成するウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の重量割合が一定となるまで3時間反応し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(数平均分子量2897)を得た。
【0076】
得られた分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、添加剤として2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル(商品名:U−CAT 660M、サンアプロ社製)1重量部を加えて均一に攪拌することで、前記ウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合が1.3重量%で、コーンプレート粘度計(ICI型、20Pコーン)を用いて測定した125℃における溶融粘度が18000mPa・sである反応性ホットメルト接着剤を得た。なお、前記イソシアネート基含有量は、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに過剰のアミンを添加し、イソシアネート基反応させた後、残ったアミンを塩酸で滴定することで、前記ウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合を求めた。
【0077】
(実施例1)
基材として、厚さ12mm、幅300mm、長さ1800mmの合板(図1に記載の基材1)を用い、突板として、厚さ0.3mm、幅310mm、長さ1820mmのナラ材(図1に記載の突板3)を用いた。
【0078】
図2に記載の温度調節が可能なロール4からなるロールコーター(松下工業(株)製、DTW−420、ロールの表面温度120℃、プレスロールの回転速度20m/分)を用いて、図2に記載の前記基材1に、製造例1で得られた反応性ホットメルト接着剤を120g/m塗布した。次に、反応性ホットメルト接着剤の塗布面に、直ちに突板3を載置し、図2に記載の80℃に調整した鉄製の第1のプレスロール5で、0.3MPaの圧力で、前記基材と前記突板とを貼着した。次いで、図2に記載の20℃に調整した金属製の第2のプレスロール6を用いて、10MPaの圧力で、前記基材と前記突板とを圧締し、化粧造作部材を製造した。
【0079】
(実施例2)
基材として、厚さ12mm、幅300mm、長さ1800mmの合板(図1に記載の基材1)を用い、突板として、厚さ0.3mm、幅310mm、長さ1820mmのナラ材(図1に記載の突板3)を用いた。
【0080】
図3に記載の温度調節が可能なロール4からなるロールコーター(松下工業(株)製、DTW−420、プレスロールの表面温度120℃、プレスロールの回転速度20m/分)を用いて、図3に記載の基材1上に、製造例1で得られた反応性ホットメルト接着剤を120g/m塗布した。次に、反応性ホットメルト接着剤の塗布面に、直ちに突板を載置し、図3に記載の80℃に調整した鉄製の第1のプレスロール5を用いて、0.3MPaの圧力で、前記基材と前記突板とを貼着した。次いで、図3に記載の20℃に調整したプレスベルト8を用いて、10MPaの圧力で、前記基材と前記突板とを圧締し、化粧造作部材を製造した。
【0081】
(実施例3)
前記基材と前記突板とを圧締する際のプレスロールの温度及び圧力を第1表に記載の温度及び圧力に変更した以外は、実施例1と同様の方法で化粧造作部材を製造した。
【0082】
(実施例4)
前記基材と前記突板とを圧締する際のプレスロールの温度及び圧力を第1表に記載の温度及び圧力に変更し、製造例1で得られた反応性ホットメルト接着剤の代わりに製造例2で得られた反応性ホットメルト接着剤を使用する以外は、実施例1と同様の方法で化粧造作部材を製造した。
【0083】
(比較例1〜2)
前記基材と前記突板とを圧締する際のプレスロールの温度及び圧力を第1表に記載の温度及び圧力に変更した以外は、実施例1と同様の方法で化粧造作部材を製造した。
【0084】
(比較例3)
前記基材1上に製造例1で得られた反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に前記突板3を重ね、1平方センチメートルあたり10kgの圧力、70℃の温度で、1分間フラットプレスし、化粧造作部材を製造した。
【0085】
比較例3に記載のフラットプレス法によれば、化粧造作部材を1分あたり1枚製造できるのに対し、実施例1に記載の方法によれば、化粧造作部材を1分あたり5枚製造することができ、且つ、得られる化粧造作部材は、各種評価に優れるものである、以下、第1表に各種評価結果を示す。
【0086】
【表1】

【0087】
※基材の周囲の一部に実用上問題にならない程度の僅かな皺が入る
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】化粧造作部材の断面図を示す。
【図2】化粧造作部材をロールプレス法で製造する工程の概略図を示す。
【図3】化粧造作部材をベルトプレス法で製造する工程の概略図を示す。
【符号の説明】
【0089】
1 基材
2 反応性ホットメルト接着剤からなる接着層
3 突板
4 ロールコーター用ロール
5 第1のプレスロール
6 第2のプレスロール
7 前記基材1等を搬送する為のベースライン
8 プレスベルト
9 プレスベルト回転用のロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に突板を載置し、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した少なくとも1対のプレスロール(II)を用いて、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締することで、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法。
【請求項2】
基材に反応性ホットメルト接着剤を塗布し、その塗布面に突板を載置し、次いで50〜120℃に調整した1対のプレスロール(I)を用いて、0.5MPa以下の圧力で前記基材と前記突板とを貼着し、次いで、40℃以下に調整した1対のプレスベルト(III)を用いて、1〜30MPaの圧力で前記基材と前記突板とを圧締することで、前記基材と前記突板とを接着する化粧造作部材の製造方法。
【請求項3】
前記1対のプレスロール(I)のうち、前記突板に接する側のプレスロールが、金属又はナイロンからなるものである請求項1又は2に記載の化粧造作部材の製造方法。
【請求項4】
前記反応性ホットメルト接着剤が、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有してなり、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー中におけるイソシアネート基の重量割合が1.5〜3.5重量%である、請求項1又は2に記載の化粧造作部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−103226(P2006−103226A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294830(P2004−294830)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】