説明

医学教育用腹部診察シュミレータ

【課題】漢方医学の腹診訓練に用いる新規な漢方医学用腹部検診模型及び新規な漢方医学用腹部診察シュミレータの提供。
【解決手段】漢方医学の腹診の際に病状が発現れている部位を、「剣状突起上部付近から臍下約30cmまでの腹部の状態が異なる平均の人体」とし、腹部に診られる腹証を、(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)、(2) 腹皮攣急(ふくひれんきゅう)、(3)心下痞鞭(しんかひこう)、(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)、(5)小腹不仁(しょうふくふじん)、(6)心下部振水音皮とし、(イ)人工皮革、(ロ)パイル生地、(ハ)木綿生地、ジャージ、(ニ)ポリウレタン又は天然ゴム、(ホ)可塑性ポリエステル系樹脂及び(ヘ)中綿により構成した漢方医学用腹部検診模型とし、
これに圧力センサーのデータ処理手段を設置した漢方医学用腹部診察シュミレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方医学診療用腹部検診模型及び漢方医学診療用腹部診察シュミレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療教育過程の臨床教育内容の充実及び高度な医療に取り組むために医師の訓練及び再訓練が積極的に行われている。この訓練では、訓練或いは再訓練される医師が実際の患者により診察をさせるということはできない。そこで、人体モデルなどのモデルによって、診察の仕方を会得することが必要となり、そのための人体モデルが開発されている。
【0003】
血流などの状態を実感するためには、以下の人体モデルが既に開発されている。
米国特許第3662076号明細書では、疾患に伴う心拍音を同期して発生する音響装置を有しする人体モデルを提供している。十分な配慮がなされて完成されたものと考えられるが、人体モデルが的確に人体の状態を表わしていないこと、装置が大きく、複雑であり、実用的でないとされる。
特開昭63−38978号は、正常及び異常両方の種々の心臓血管の状態、これらに関連した生理学的状態の臨床に用いられる訓練装置である。同じく、十分な配慮がなされて完成されたものと考えられるが、人体モデルが複雑な人体の状態を的確に表わしていないとされる。
特許2990602号は、表面にスキン層を設けた発泡体からなる生体検診用模型において、チューブ内に空気を供給する脈動動作装置を備えた生体検診用模型である。同じく、十分な配慮がなされて完成されたものと考えられるが、人体モデルが複雑な人体の状態を的確に表わしていないとされる。
上記の人体モデルでは血流などに着目して、血流に影響を与える諸因子を調べ、相互の関係を調べ、それらに基づいて人体の血流の状態を再構成して、再構成される状態から診断行為の訓練が行われることとなる。複雑な人体について、血流に影響を与える諸因子を調べ、相互の関係を調べ、それらに基づいて人体の血流の状態を再構成することは、困難なことであり、限界が生ずることはやむをえないことである。
【0004】
診断では、聴診、触診、視診等の診断が採用されるが、これらについても人体モデルの開発が進められている。この場合においても、診断の研修に患者の診察を行うことは、前記同様に不可能である。以下の特許が知られている。
触診の際の前記人体モデルに加えられる前記触診手技の圧迫力を測定する触診訓練用装置も開発されている(特許第3725887号)。
この発明では、人体モデルは健常な状態にあるのか、病気の状態にあるのかということの区別はなされておらず、専ら、この発明では医師がどの程度の力で診察時に患者を押すかということを把握しようとするものである。この装置を用いて研修する医師は健康な人の場合の人体モデルにより、患者に対してどの程度の力で押すかを知ることができるにすぎない。
【0005】
漢方医学では、患者から身体所見を得ることが重視される。臨床では、この所見を得ることが基本となる。漢方医学では、日本で独自に発達してきた腹部の触診である「腹診」が行われる。腹診は、患者の腹部を医師が触診し、腹証という腹部所見を得る方法である。医師は腹証の所見から漢方医学的病態解析、治療すべき漢方薬剤を決定する。漢方医学では現代医学とは相違して、全身状態としての虚、実を診ること、特定の腹証を把握することで生薬や処方の決定の指針となる(非特許文献1から3)。
これに対して、現代医学では腹部内蔵臓器の形状や腫瘍などを触診、筋性防御、圧痛点の反応を確かめ、この結果ら更に医用機器を用いて観察し、病巣の部分を特定し、病名が定まり、対処方針が決定される。
このように漢方医学と現代医学では触診の内容及び触診を行うことの目的そのものが相違する。
【0006】
漢方医学で腹診を行う際には、患者を仰臥位にし、下肢は伸展し、両手も身体の両側で伸展させ、腹部に力が加わらないように十分にリラックスさせるようにする。下肢を伸展させることで患者の腹部には緊張が生じる。
この腹部を医師の手指により軽くあるいは強く圧迫し、このとき捉えられる医師に伝わる手の感覚や、患者の圧迫に対する反応などにより、腹証という独特の腹部所見を得ることができる。腹診では患者の病状により示される腹部の状態であり、仮に人体モデルを作製しようとするのであれば、これを如何にして再現するかということが重要となる。
【0007】
漢方医学の腹診の所見を得る腹診訓練のための人体モデルを作成することの重要性は理解されつつあるようであるが、複雑な病状に応じて人体モデルをどのように作製すればよいのかということさえ、把握されておらず、この分野ではこれらの点については、手付かずの状態にあった。又、人体モデルにより、その腹診の操作について何らかの手段で適切に行われていることを示すことができれば、それを用いて腹部の触診時に加えられる適切な力及び患者から伝わる手の感覚、患者の圧迫に対する反応を把握できるであろうし、その結果を何らかの手段で出力することにより、可変型腹部シミュレーターを完成することができると考えられる。
このようなことから、漢方医学の腹診の人体モデルを作製すること及び腹診の操作が適切に行われていることを示す可変型腹部シミュレーターの開発が切望されている。
【特許文献1】米国特許第36620976号明細書
【特許文献2】特開昭63−38978号公報
【特許文献3】特許2990602号
【特許文献4】特許第3725887号
【非特許文献1】花輪壽彦,伊藤剛,村主明彦.入門漢方医学(日本東洋医学会学術教育委員会編).日本東洋医学会,東京,2002;68-81
【非特許文献2】寺澤捷年.症例から学ぶ和漢診療学.医学書院,東京,1998;188-198
【非特許文献3】大塚敬節.漢方医学.創元社,大阪,1956;101-107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、漢方医学の腹診訓練に用いる新規な漢方医学用腹部検診模型及び新規な漢方医学用腹部診察シュミレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意前記課題について研究した。
(a)漢方医学における腹診の際に病状が発現れている部位を、「剣状突起上部付近から臍下約30cmまでの腹部の状態が異なる平均の人体」とし、腹部に診られる腹証を、以下の6種類の典型的な腹証、具体的には、(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)、(2) 腹皮攣急(ふくひれんきゅう)、(3)心下痞鞭(しんかひこう)、(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)、(5)小腹不仁(しょうふくふじん)、(6)心下部振水音皮とした。
(b)これらの各腹証に対して、漢方医学的に重要な基本的腹部所見を得る場合には、腹証の状態が示す硬さ、又は、はり具合に注目する。そして、基本的な部位に対して特定の材料を用いて腹部模型を形成し、腹部模型の硬さを経験の豊かな医師である発明者らが患者の状態を試行錯誤により実際の腹証で示される硬さと同じとなるように調節し、場合によっては前記の材料を加工し、又更に適切な材料を付加して、腹部模型を作製し、漢方医学用腹部検診模型としたものである。
(c)その結果、腹証の状態が示す硬さ、又は、はり具合について、同様の状態を示している腹部模型を得ることができることを見出した。そして、この腹部模型を用いて、漢方医学の腹診では、患者の腹部の緊張が生じている部分に対応して、腹診として手指などにより力を与えるべき部位に、この腹部を医師の手指により軽くあるいは強く圧迫し、このとき捉えられる医師に伝わる手の感覚や、患者の圧迫に対する反応などについて、経験の豊かな医師が漢方医学用腹部検診模型に試みたところ、腹診の際に得られる結果と近い状態であることを把握することができた。この結果、本発明者らによる漢方医学用腹部検診模型を完成させることができた。
(d)さらに、得られた漢方医学用腹部検診模型に新たに試作したものを含む圧力センサーを、力を測定しようとする漢方医学用腹部検診模型の部位に設置して、医師が漢方医学用腹部検診模型の部位に、医師の手指により軽くあるいは強く圧迫すると、前記圧力センサーは作用して音又は光を出力すること、又測定データを処理して出力すること、又、経験の豊かな医師による予め測定しておいた結果と対比して結果を出力することができることを見出して、漢方医学診療用腹部診察シュミレータを完成させた。
【0010】
漢方医学用腹部検診模型について説明を付け加えると以下の通りである。
漢方医学用腹部検診模型は、病状が発現れている腹証の部位を、「剣状突起上部付近から臍下約30cmまでの腹部の状態が異なる平均の人体」とした。
この部位に含まれる人体の器官として、(イ)表皮、(ロ)皮下組織、(ハ)膜、(ニ)筋、(ホ)肋骨及び(ヘ)腹腔内臓器を選択し、これを特定の材料により置き換えて、前記の6種類の典型的な腹証、具体的には、(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)、(2) 腹皮攣急(ふくひれんきゅう)、(3)心下痞鞭(しんかひこう)、(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)、(5)小腹不仁(しょうふくふじん)、(6)心下部振水音皮が示す、腹証の状態が示す硬さ、又は、はり具合を再現する。
前記(イ)の表皮については人工皮革、前記(ロ)の皮下組織についてはパイル生地、前記(ハ)の膜については木綿生地、前記(ニ)の筋についてはポリウレタン又は天然ゴム、前記(ホ)の肋骨は可塑性ポリエステル系樹脂、前記(ヘ)の腹腔内臓器は中綿の素材を用いる。そして、腹証の症状が現れている部分について場合によって更に前記材料に特定の加工を施したり、他のものを加えたりする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により得られる漢方医学用腹部検診模型を用いて、腹証の状態が示す硬さ、又は、はり具合を理解することができ、漢方医学の腹診において、患者の腹部には緊張が生じており、この腹部を医師の手指により軽くあるいは強く圧迫し、このとき捉えられる医師に伝わる手の感覚や、患者の圧迫に対する反応などについて、実際に試みたところ、腹診の際に得られる結果と近い状態であることを把握することができる。
得られた漢方医学用腹部検診模型に新たに試作したものを含む圧力センサーを、力を測定しようとする漢方医学用腹部検診模型の部位に設置して、医師が漢方医学用腹部検診模型の部位に、医師の手指により軽くあるいは強く圧迫すると、前記圧力センサーは作用して音又は光を出力すること、又測定データを処理して出力すること、又、経験の豊かな医師による予め測定しておいた結果と対比して結果を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
漢方医学の腹診に用いる新規な漢方医学診療用腹部検診模型は、剣状突起上部付近から臍下約30cmまでの腹部の状態が異なる平均の人体につき、以下の6種類の典型的な腹証を表現するモデルにより構成される。
(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)、(2) 腹皮攣急(ふくひれんきゅう)、(3)心下痞鞭(しんかひこう)、(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)、(5)小腹不仁(しょうふくふじん)、(6)心下部振水音皮。
上記のモデルは、腹診の際の人体に表れている典型的な腹証を表現するモデルである。腹診を行うときには、患者を仰臥位にし、下肢は伸展し、両手も身体の両側で伸展させ、腹部に力が加わらないように十分にリラックスさせるようにする。下肢を伸展させることにより、患者の腹部には緊張が生じており、この腹部を医師の手首により軽く、或いは強く圧迫し、このとき捉えられる医師に伝わる手の感覚や、患者の圧迫に対応する反応により腹証という独特の腹部所見を上記のモデルは表現している。
前記6種類の典型的な腹証の状態は図1から6に示すとおりである。
【0013】
本発明者らの研究によれば、健康の人の腹部の各組織が示す硬さ、又は、はり具合は、以下の材料により再現することができる。
表皮(1)については、人工皮革により再現する。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、又はジャージにより再現する。
筋組織(4)については、ポリウレタン又は天然ゴムにより再現する。
肋骨(5)については、可塑性ポリエステル系樹脂により再現する。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する。
これに対して以下に述べる6つの症状については、症状の態様にあわせて前記材料を更に加工すること、場合によってはさらに材料を付加することが行われる。
【0014】
(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)の症状のモデルについて
図1の上図は、胸脇苦満の症状を示している。
図1の下図は、胸脇苦満の症状のモデルを示している。
胸脇苦満は右側或いは左側の季肋部(図1の点線部分)に重圧感があることを患者が自覚し、医師がこの部位に抵抗を蝕知、医師が肋骨弓下内側に指をいれると、患者が痛みや重圧感を感じるという所見に対応するものである(図1の上図)。この部位には鈍痛や圧迫感を伴い抵抗圧痛を生じる。
胸脇苦満については外見の所見は、人の腹部の各組織から構成されている状態であり、胸脇苦満を診たときに、人の力を作用させた結果、季肋部に重圧感を感じさせる力で押し付けることが必要とされる。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。人工皮革には塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、又はジャージにより再現する。
筋組織(4)については、ポリウレタン、又は天然ゴム(ラテックス)により再現する。
肋骨(5)については、可塑性のあるポリエステル系樹脂により再現する。
腹腔内臓器(6)については、中綿をつめて再現する。
左右の季肋部の押したときの抵抗として、これは抵抗の部位に一致して、表層からパイル生地,天然ゴム,ポリウレタン綿,ポリウレタンの多層構造としている。
【0015】
(2)腹皮攣急(ふくひれんきゅう)の症状のモデルについて
図2の上図は、腹皮攣急(ふくひれんきゅう)の症状を示している。
図2の下図は、腹皮攣急(ふくひれんきゅう)の症状のモデルを示している。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、ジャージにより再現する。
筋膜として天然ゴム(ラテックス)(7)により被覆している。
筋組織(4)については、ポリウレタン又は天然ゴムにより再現する。腹直筋の部位にみられる筋緊張を表現するためにポリウレタン又は天然ゴムを硬めにし、山形の筋を設けてある。
肋骨(5)については、可塑性のポリエステル系樹脂により再現する。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する(裏面にあり図には出ていない)。
腹皮攣急(ふくひれんきゅう)では、患者の腹直筋の部位に見られる筋緊張を、医師が皮下に蝕知することができるようにする。これは腹直筋が過度の緊張状態にあることを示すもので、交感神経の過緊張の蓄積や身体の虚弱、疲労の兆候と考えられている。
患者の腹直筋の部位にみられる筋緊張を、医師が皮下に触知することである。これは腹直筋が過緊張状態にあるもので、交感神経の過緊張の蓄積や、身体の虚弱,疲労の徴候と考えられている。このモデルでは、腹直筋の緊張を再現するために、腹直筋に相当する部位は天然ゴムで被覆し、その表層はパイル生地、ポリエステルの層としている。
【0016】
(3)心下痞鞭(しんかひこう)の症状のモデルについて
図3の上図は、心下痞鞭(しんかひこう)の症状を示している。
図3の下図は、心下痞鞭(しんかひこう)の症状のモデルを示している。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。)。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。特に、皮下の抵抗部位に一致してポリエステルを使用している。又、パイル生地に硬めのポリエステルを併せて使用している。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、ジャージにより再現する。
筋組織(4)については、ポリウレタン、天然ゴムにより再現する。
肋骨(5)については、可塑性ポリエステル系樹脂により再現する。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する。
心下痞鞭(しんかひこう)は、心窩(か)部につかえ感の存在を患者が自覚し,医師がこの部位に抵抗を触知し、この部分を圧迫すると患者が圧痛を訴える所見である。
心下痞鞭(しんかひこう)の症状のモデルは、心下痞鞭(しんかひこう)の抵抗として表現するため、皮下の抵抗部位に一致してポリエステルシート(8)を使用している。皮下組織であるパイル生地に硬めのポリエステルを併せて使用している。
【0017】
(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)の症状のモデルについて
図4の上図は、小腹硬満の症状を示している。
図4の下図は、小腹硬満の症状のモデルを示している。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地に皮下組織であるパイル生地に硬めのポリエステルを併せて使用している。図の裏面に存在している。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、ジャージにより再現する。図4では(2)の裏側に存在している。
筋組織(4)については、ポリウレタン、天然ゴムにより再現する。図4では(2)及び(3)の裏側に存在している((3)は表示せず)。
肋骨(5)については、特殊ポリエステル系樹脂により再現する。図4では(2)及び(3)裏側に存在している((3)は表示せず)。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する。図4では図の裏側に存在している((3)は表示せず)。
小腹硬満は、患者の下腹部に見られる馬蹄形の膨隆で、験者がこの部分に抵抗を蝕知し、回盲部、S字結腸部を医師の指頭により圧迫すると、患者が圧痛を訴える所見である。
下腹部に見られる馬蹄形の抵抗として表現するため皮下の抵抗の部位に一致して硬めなポリエステルシート(9)を用いている図の(2)及び(3)裏側に存在している((3)は表示せず)。皮下組織であるパイル生地に硬めのポリエステルシートを併せて使用している。
【0018】
(5)小腹不仁(しょうふくふじん)の症状のモデルについて
図5の上図は、小腹不仁の症状を示している。
図5の下図は、小腹不仁の症状のモデルを示している。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。
小腹不仁の下腹部正中部(10)において、下腹部の感覚を表現するために柔らかい中綿を使用している((2)の裏側)。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、ジャージにより再現する。((2)の裏側に存在している。)
筋組織(4)については、ポリウレタン、天然ゴムにより再現する。(2)及び(3)の裏側に存在している((3)は表示せず)。
肋骨(5)については、可塑性ポリエステル系樹脂により再現する。(2)及び(3)の裏側に存在している((3)は表示せず)。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する。(2)及び(3)の裏側に存在している((3)は表示せず)。
小腹不仁は、患者が下腹部の知覚低下を感じたり、患者の下腹部正中で験者がこの部分を圧迫すると、抵抗の減弱を蝕知する所見である。五臓の考え方による病態解析から加齢性変化による腎虚の所見といわれる。
【0019】
(6)心下部振水音の症状のモデルについて
図6の上図は、心下部振水音の症状を示している。
図6の下図は、心下部振水音の症状モデルを示している。
表皮(1)については、人工皮革により再現する(表皮は最表面にあり、この図では表皮がはがされた状態を示している。)。塩化ビニルやポリエステルのシートを用いる。これにより以下の組織の構造体を覆う。
皮下組織(2)についてはパイル生地により再現する。
腹膜、筋膜(3)については、木綿生地、ジャージにより再現する。
筋組織(4)については、ポリウレタン、天然ゴムにより再現する。
肋骨(5)については、可塑性ポリエステル系樹脂により再現する(図示せず)。
腹腔内臓器(6)については、中綿により再現する。
心下部振水音は、患者の心 部を医師の指頭によりスナップをきかせて叩打することにより聴かれる水分の揺れる音である。気血水理論による病態解析から水滞を示す。
このモデルでは水分の揺れる音を検知して症状を判断する。押す圧力については検知しない。
心下部振水音を再現するために柔らかい腹部を形成する。その内部の部位に20mlの水を含む100mlのゴム風船(11)を内部に設置し、腹証モデルを適切に叩打することにより、水分の揺れる音を再現する。
【0020】
圧力センサーの設置について
前記漢方医学診療用腹部検診模型を用いて、腹証の症状が示す腹証の状態が示す硬さ、又は、はり具合について状態を観察し、硬さ及び張り具合により生ずる患者の腹部の緊張が生じている部分に対応して、腹診として手指などにより力を与えるべき部位に、医師の手指により軽くあるいは強く圧迫する力が適切であるかどうかを判断することが必要となる。適切であるかどうかを判断するために、どの程度の力で押しているかどうかを知るうえで圧力センサーを利用できる。具体的には、医師の手指により軽くあるいは強く圧迫する力がかけられた漢方医学診療用腹部検診模型の部分の内側の部分に圧力センサーが設置される。圧力センサーは前記漢方医学診療用腹部検診模型の前記皮膚(1)の下と皮下組織(2)の間に設置することが有効である。腹膜、筋膜(3)や筋組織(4)の部分に設置することができるが、圧力を測定する上からは、抗力が弱くなり、十分でない場合がありえる。
【0021】
圧力センサーとしては公知のものを使用できる。
漢方医学診療用腹部検診模型の腹診に対応する部分に力が作用したときに、それに応じて作用する圧力センサーが設けられている漢方医学診療用腹部診察シュミレータは以下の通りである。
圧力センサ1は、全体がフィルム状の薄型の長手形状を呈し、先端に圧迫力に応じて電気量の変化を検出するセンサ部を有している(圧力センサーとしては、ニッタ株式会社製のボタンセンサー商品名A201−1、A201−25、A201−100などを用いることができる。)。このセンサーに電源3(9V)及び出力装置2(音声出力の場合であればスピーカ−、光出力の場合であれば豆電球などの発光手段)を接続する(図7)。
圧力センサー1から得られる信号により、その結果が出力装置2により結果が出力される。
【0022】
前記圧力センサー1の出力を増幅手段4により増幅し、パソコンなど出力表示手段5に結果を出力することもできる(図8)(前記圧力センサーとしては、ニッタ株式会社製のボタンセンサー商品名A201−1、A201−25、A201−100などを用いることができる。また、前記アンプに、同社のオプションアンプボックスに接続して電圧に変換して出力し、パソコンに接続して出力することができる。)
【0023】
前記腹診に対応する部分に力が作用したときに、適切な力が作用したことを判断する圧力センサーが設けられている漢方医学診療用腹部診察シュミレータは以下の通りである。
圧力センサーとして、以下のセンサーを採用することができる(図9)。
圧力センサー9には、2枚の導電性ゴムの間に、力がかけられたときに圧縮可能な円筒状のプラスチック又はゴム(この場合に導電性のプラスチック又はゴムは除く)を固定しておいいたものを用いる。二枚の導電性ゴムの部分に力が加わると、二枚の円筒状部分は圧縮されて両者は接触し通電状態となる。その結果、出力装置2により圧力センサーに特定の力が加わった状態を示す結果を出力する(電源3は9V。出力装置は、音声出力の場合であればスピーカ−、光出力の場合であれば豆電球などの発光手段)。
導電性ゴムは、公知のものを採用できるが、例えば、鬼怒川ゴム工業株式会社製S60(材質シリコーン、硬度(JIS・A)60、厚み(mm)0.5から2.0(体積固有値10Ω・cm))を使用することができる。この場合には加わる力を特定の範囲に限定して利用することができる。
【0024】
腹診に対応する部分に力が作用したときに、記憶部に記憶されている経験の豊かな医師による予め測定しておいた結果が模範データを取り出して、比較して、適切な範囲にあるかどうかを判断し、結果を記録し、その結果を出力する漢方医学診療用腹部診察シュミレータの構造は以下の通りである。
前記圧力センサー1からの出力を増幅手段(アンプ)4により増幅し、送出されるセンサ信号Sを、コンピュータ本体A内で読込可能な形式に変換して受付けるインターフェイス7を介して記録部8に送る。
記憶部9には、又、経験の豊かな医師による予め測定しておいた結果が模範データとして記憶されている。このデータを取り出して、比較部10において圧力センサー1から記録データと比較する。結果を記録部11に送り、その結果を出力手段12を経て出力する。
又、結果を記憶部9に送り結果を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】胸脇苦満(きょうきょうくまん)の症状を示す(上図)。又、下図は胸脇苦満の症状の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図2】腹皮攣急(ふくひれんきゅう)の症状を示す(上図)。又、下図は腹皮腹皮攣急の症状の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図3】心下痞鞭(しんかひこう)の症状を示す(上図)。又、下図は心下痞鞭(しんかひこう)の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図4】小腹硬満(しょうふくこうまん)の症状を示す(上図)。又、下図は小腹硬満の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図5】小腹不仁(しょうふくふじん)の症状を示す(上図)。又、下図は小腹不仁の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図6】心下部振水音の症状を示す(上図)。又、下図は心下部振水音の漢方医学診療用腹部検診模型を示している。
【図7】圧力センサーを用いた漢方医学診療用腹部診察シュミレータの1例を示している。
【図8】圧力センサーを用いた漢方医学診療用腹部診察シュミレータの他の1例を示している。
【図9】圧力センサーを用いた漢方医学診療用腹部診察シュミレータの1例を示している。
【図10】圧力センサーを用いた漢方医学診療用腹部診察シュミレータの1例を示している。
【符号の説明】
【0026】
(1):表皮
(2):皮下組織
(3):腹膜、筋膜
(4):筋組織
(5):肋骨
(6):腹腔内臓器
(7):天然ゴム(ラテックス)
(8):ポリエステルシート
(9):ポリエステルシート
(10):下腹部正中部
(11):ゴム風船
1:圧力センサー
2:出力手段
3:電源
4:増幅手段
5:出力表示手段
6:導電性ゴムを用いた圧力センサー
7:インターフェイス
8:記録部8に送る。
9:記憶部
10:比較部
11:記録部
12:出力手段
A:コンピュター本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方医学に用いられる腹証の症状を示すことを特徴とする漢方医学診療用腹部検診模型。
【請求項2】
前記腹証の症状が(1)胸脇苦満(きょうきょうくまん)、(2) 腹皮攣急(ふくひれんきゅう)、(3)心下痞鞭(しんかひこう)、(4)小腹硬満(しょうふくこうまん)、(5)小腹不仁(しょうふくふじん)、(6)心下部振水音皮であることを特徴とする請求項1記載の漢方医学診療用腹部検診模型。
【請求項3】
前記腹証の症状が、表皮、皮下組織、膜、筋、肋骨及び腹腔内臓器によりモデル化したものであり、各々(イ)人工皮革、(ロ)パイル生地、(ハ)木綿生地、ジャージ、(ニ)ポリウレタン又は天然ゴム、(ホ)可塑性ポリエステル系樹脂及び(ヘ)中綿により構成したことを特徴とする請求項2記載の漢方医学診療用腹部検診模型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の漢方医学診療用腹部検診模型の腹診に対応する部分に力が作用したときに、それに応じて作用する圧力センサーが設けられていることを特徴とする漢方医学診療用腹部診察シュミレータ。
【請求項5】
前記腹診に対応する部分に力が作用したときに、適切な力が作用したことを判断する圧力センサーが設けられていることを特徴とする漢方医学診療用腹部診察シュミレータ。
【請求項6】
前記腹診に対応する部分に力が作用したときに、記憶部に記憶されている経験の豊かな医師による予め測定しておいた結果が模範データを取り出して、比較して、適切な範囲にあるかどうかを判断し、結果を記録し、その結果を出力することを特徴とする請求項4記載の漢方医学診療用腹部診察シュミレータ。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−286416(P2007−286416A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114556(P2006−114556)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】