説明

医療ライン用バルブコネクタ

【課題】従来公知のバルブコネクタの欠点を克服すること。
【解決手段】医療用輸液ライン用のバルブコネクタであって、入口端4及び出口端24を備えた外側の管状本体1と、内側の中空スパイク2と、中間の密封部材3と、を備えている。密封部材3は、プレ・スリット38を備えたヘッド35と、弾性中空要素36と、を具備している。中空要素36には、中空スパイク2と接触する流体密封部材47、48と、弾性のスラスト手段と、が形成されている。スラスト手段は、弾性ヘッド35を閉じた状態に維持する傾向を有している。弾性スラスト手段は、概ね横方向の環状の壁45を通じて密封部材3の弾性中空要素36に連結された、基部37を備えている。壁45は、弾性ヘッド35が軸方向に閉じた状態から開いた状態へと移動する間に、基部37と中空スパイク2の円錐状面29を有する部分との間に画定された、環状のチャンバー50内で、曲がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療ライン、例えば、導入器によって流体輸液物質を導入するための輸液用のラインに用いるバルブコネクタ、典型的には、例えばニードルレスシリンジのルア・コネクタ又はルア・ロックコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのバルブコネクタは、例えば、米国特許第5242342号、第5676346号、第6706022号、第5700248号、及び第6682509号により、知られている。
【0003】
特に、米国特許第5700248号及び第6682509号は、請求項1のプリアンブルのバルブコネクタについて記述しているが、それにおいては、キャビティと、液体の導入器と係合するために設けられた入口端と、出口端と、を有する、管状本体が、設けられている。中空スパイクが、管状本体のキャビティ内に軸方向にセットされており、管状本体の入口端と向かい合い且つこれからある軸方向距離だけ離してセットされた、閉じた先端を、有している。中空スパイクは、管状本体の出口端と連絡しており、管状本体のキャビティと連絡するための、上述の閉じた先端からある距離だけ離してセットされた、少なくとも1つの側孔を、有している。コネクタは、更に、弾性の密封部材を具備しており、それは、プレ・スリットを有する弾性ヘッドを有し、そのヘッドは、通常は、管状本体の入口端内に閉じられた状態(又は解除された状態)にセットされ、その状態においては、プレ・スリットは閉じている。弾性ヘッドは、導入器が管状本体の入口端内に挿入されると、その結果として、中空スパイクの閉じた先端に向かってこの先端と相互作用するように軸方向に移動し、弾性的に変形された開いた形状(作動された状態)を取るが、この状態においては、プレ・スリットは開く。バルブコネクタの密封部材は、更に、ヘッドに連結された弾性中空要素を含み、それは、管状本体と中空スパイクとの間にセットされ、中空スパイクと接触する密封手段を有するが、これによって、ヘッドが変形されていない閉じた状態にセットされるとき、上述の少なくとも1つの側孔は、管状本体のキャビティから隔離される。弾性中空要素は、弾性スラスト手段を含み、それは、密封部材のヘッドを上述の閉じた状態に維持する傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイプのバルブコネクタは、これらの使用がしばしばこれらを利用する患者の生存に対して決定的に重要な意味を持つので、一連の基本的な要件を満たさなければならない。
【0005】
第1に、密封部材のヘッドによって実行されるところの、管状本体の入口端を閉じることは、バルブコネクタを繰り返し開たり再び閉じたりした後であっても、完全な抗菌バリアを確保するように、実質的に流体密封でなければならない。
【0006】
第2に、導入器をそれぞれ挿入したり抜き出したりする瞬間にコネクタの入口端と出口端との間の連絡を開いたり再び閉じたりするという動作は、信頼性及び反復性が非常に高いことを要求され、バルブコネクタに接続された患者に対する深刻なリスクに結び付くような誤動作の危険が少しでもあってはならない。そのために、バルブコネクタの動く機械的部材の数は、可能な限り少なくなければならない。
【0007】
第3に、コネクタは、使用の際にそれらの内部において生成されることがある過剰圧を効果的にサポートできなければならず、更に、閉じた状態(又は解除された状態)においては、効果的な流体密封性を正及び負の圧力において保障できなければならない。
【0008】
最後に、上記バルブコネクタは、入口端の所で、典型的には殺菌剤に浸けられた綿棒を用いて、簡単に洗浄及び殺菌できなければならない。
【0009】
上述の米国特許第5700248号及び第6682509号から知られているバルブコネクタの場合は、導入器の係合時に中空スパイクの1つ又は複数の側孔を通じて管状本体の入口端と出口端との間の連絡を開くことは、中空スパイクの先端が弾性ヘッドのプレ・スリットを通過した後に実行される。例えば、(本出願人の名前で出願された)WO−2005/011799号及びWO−2006/013433号から知られている他の実施形態においては、中空スパイクの閉じた先端は、逆に、プレ・スリットを通過することなく、密封部材のヘッドを上述の開いた状態にさせるような形状にされている。
【0010】
全ての上記の知られている解決手段においては、密封部材の弾性中空要素の弾性スラスト手段は、典型的には、それを軸方向に圧縮するとコンサーティーナのそれのような収縮を生じる波状の又はふいご状の壁、又は、波状ではないがいずれにしても軸方向に収縮するような壁、を有している。弾性中空要素がこのように軸方向に圧縮又は収縮すると、密封部材の弾性ヘッドは、中空スパイクに沿って、対応する密封手段が管状本体のキャビティと中空スパイクの1つ又は複数の側孔との間の、すなわち管状本体の入口端と出口端との間の、連絡を開くまで、スライドする。
【0011】
上述の公知の解決手段は、欠点が無いわけではない。すなわち、幾つかのケースにおいては、導入器がコネクタから取り外された後に密封部材が閉じた状態を回復するときの、信頼性及び反復性に関して、欠点があり、他の幾つかのケースにおいては、上述のように再び閉じられた後のコネクタ内の正又は負の圧力の永続性に関して、欠点がある。更に、密封部材の弾性スラスト手段の形態のために、上記公知のコネクタの本体は、通常は、かなり長い軸方向の延長部を有するが、これはむしろ回避することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、上述の欠点を克服することである。この目的は、基本的には、密封部材の弾性スラスト手段が弾性中空要素の基部を備えているという事実によって、達成される。この基部は、概ね円筒状の軸方向の壁を有し、上記スパイクからある径方向の距離だけ離してセットされ、それによって、上記スパイクとの間に、環状のチャンバーを形成している。上記基部は、上記弾性中空要素に、概ね横方向の環状の壁を通じて、連結され、その壁は、弾性ヘッドが閉じた状態から開いた状態へと軸方向に移動される間に、上記環状のチャンバー内で曲がる。
【0013】
都合の良いことに、上記概ね横方向の壁は、引張応力による変形を受けながら曲がる。
【0014】
この解決手段の考え方のおかげで、本発明のバルブコネクタによれば、信頼性の程度が向上され、密封部材が繰り返し開かれた後でも閉じた状態に速やかに戻ることが保障され、コネクタ全体の軸方向の寸法がかなり低減される。バルブコネクタは、最小の部品数で構成されており、このため、比較的簡単に安価な方法で製造することができ、そして更に、後に明らかにされる更なる複数の解決手段のおかげで、開いた状態と閉じた状態との間の移行段階の際に、その内部に過剰の又は負の圧力が発生するのを実質的に無くすことができる。
【0015】
一実施形態においては、本発明のコネクタの管状本体には、有利に、管状の側Y字形コネクタが形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を、添付の図面を参照して詳細に説明するが、図面は、単に非限定的な実施形態を示すだけである。
【0017】
本発明の医療輸液ライン用のバルブコネクタの第1実施形態は、図1〜19に示されるように、基本的には、3つの要素、すなわち、外側の管状本体1と、管状本体1のキャビティ内に軸方向にセットされた、内側の中空スパイク2と、弾性密封部材3と、を備えている。典型的には、管状本体1及び中空スパイク2は、硬質成型プラスチック材から作られており、密封部材3は、弾性材、例えば、シリコーンゴムから作られている。
【0018】
図13〜15に詳細に示されているように、管状本体1は、流体用の導入器の雄のルア・ロック接続部材に概ね従来の方法で係合するための、雌のルア・ロック接続部材のように形成された、入口端4を、有している。雄のルア・ロック接続部材は、例えば、ニードルレスシリンジによって構成されており、ニードルレスシリンジの一部分が、図3、11において、全体としてSで示されている。入口端4は、概ね円筒状の中間部分5に接続され、それに拡幅された最終部分6が続くが、これも概ね円筒状である。
【0019】
入口端4の内側面は、頭位円筒部7を有する。頭位円筒部7には、一連の軸方向チャネル8が形成されており、円錐台9の形状を有する部分へと、半曲している。中間部分5の内側面は、最終部分6に向かって、連続して、第1の円筒状部分10、円錐台形状を有する部分11、第2の円筒状部分12、円錐台形状を有する部分13、第3の円筒状部分14、円錐台形状を有する部分15、及び、拡大された終端部分6の内側に面し且つ環状に配置された正面軸方向突出部17に終端する、第4の円筒状部分16を、有している。この拡大された終端部分6の内側面には、径方向に突出し且つ環状に配置された軸方向突出部18が、形成され、その自由端によって、符号27で示される環状の肩部が画定されている。その機能については、後の説明で明らかにされる。
【0020】
管状本体1のキャビティは、全体として符号19で示されている。
【0021】
中空スパイク2は、図16においてより詳細に示されているように、全体として符号20で示される基部を有している。基部20の外側には、保持リング21が形成されている。基部20の内側は、雄のルア・ロック接続部材のような形状にされている。基部20は、幾分円錐形の外側面を有する中央の管状軸部22と、内側にネジ山が形成された外側シェル23と、を有している。接続部材22、23は、全体として符号24で示された、バルブコネクタ1の出口端を、画定している。
【0022】
基部20には、管状本体1の拡幅された終端部分6の自由端のエッジと連結するための、図3〜12に示されるように取り付けられた、より大きな直径の、第1の環状フランジ25と、より小さな直径の環状フランジ26と、が形成されており、それらの機能については後に明らかにされる。上記環状フランジ26からは、一体化された状態で、管状ポスト28が、好ましくは、しかし必須ではないが、軸部22と同軸で、且つ、これと連通して、分岐している。ポスト28は、コネクタの出口端24に向かって広がる円錐状の面内の初期部分29と、これに続く、例えば軸方向に細長くされたスロットの形式での1つ2つ又はそれ以上の側孔31が形成された円筒状部分30と、を具備している。円筒状部分30は、その自由端の所に、(図3〜12において、よりはっきりと見える)管状本体1の入口端4に面しており且つそれから軸方向にある距離だけ離して置かれた、閉じた先端32を、有している。閉じた先端32からは、ある角距離だけ離してセットされ且つ環状に配置された径・軸方向突出部33が、突出しており、これによって、それらの間に、流れの軸・径方向チャネル34が画定されている。突出部33の入口端4に面する終端面は、好ましくは、平面又は少し丸くされている。
【0023】
閉じた先端32の下側には、円錐状の環状面32aが形成されている。
【0024】
密封部材3が、図17〜19により詳細に示されている。これは、1つの部品であり、弾性ヘッド35と、弾性中空要素36と、弾性基部37と、を備えている。密封部材3の概ねの形状、特にその外側の形状は、管状本体1のキャビティ19の形状と実質的に一致しており、密封部材3はキャビティ19内に収容される。したがって、弾性ヘッド35は、図3、4に示されるように、径方向に少し遊びがあるように、すなわち、ヘッド35が殆ど変形されない閉じた状態において殆ど支障なく、それを収容できるように、入口端4の内側面7と相補的な円筒状の外側面を有している。
【0025】
ヘッド35を貫通するように、プレ・スリットすなわち軸方向のノッチ38が形成されている。それは、入口端4内の弾性ヘッド35が閉じている変形していない状態においては、ヘッド35の弾性の結果として、締められた状態に維持されている。この状態においては、バルブコネクタの内部と外部との間に抗菌保護バリアが形成され、同時に、通常のように殺菌剤に浸された綿棒によって洗浄を効果的に行う可能性が保証される。
【0026】
ヘッド35は、管状本体1の円錐状面9と相補的な、円錐台形状を有する部分39を、通じて、弾性中空要素36に接続している。弾性中空要素36の外側面は、第1の円筒状部分40を有しており、それは、円錐台形状を有する部分42を通じて、第2の円筒状部分41へと半曲されている。第2の円筒状部分41は、円錐台形状を有する部分43及びそれに続く円筒状部分44を通じて、弾性基部37へと半曲されている。これらの部分40、42、41、43、44は、管状本体1の内側面の部分10、11、12、13、14〜16のそれらと相補的な形状を有している。
【0027】
弾性基部37は、概ね円筒状の形状を有しており、その外径は、管状本体1の終端部分6の内側の環状に配置された軸方向突出部18によって画定されたそれと、実質的に一致している。弾性基部37は、概ね横方向の壁45を通じて弾性中空要素36の円筒状部分44へと半曲されているが、この壁45は、図17〜19に示された密封部材3が変形されていない状態においては、円錐台形状を有している。
【0028】
弾性基部37は、弾性ヘッド35とは反対の側において、外側環状フランジ46に終端しており、それによって、弾性基部37は、把持され、そして、図3〜12に示された方法で、それぞれ中空スパイク2の基部25の環状の肩部26と管状本体1の終端部分6の環状の肩部27との間で、軸方向に液体密封の方法で封鎖されている。
【0029】
弾性基部37及び横方向の壁45は、好ましくは、密封部材3の他の部分のそれより、概ね小さな壁厚を有している。
【0030】
内部においては、密封部材3には、第1の環状突出部47と第2の環状突出部48とが形成されており、これらは、互いに軸方向にある距離だけ離れるようにセットされており、それぞれ、後に明らかにされるような様式で、第1の流体密封部材と第2の流体密封部材とを画定するように設計されている。
【0031】
本発明のバルブコネクタが組み立てられた状態においては、管状本体1は、既に述べられたように、中空スパイク2の基部20の環状フランジ25に対応する位置で、円筒状部分5内に同軸方向に延在する管状ポスト28と共に、中空スパイク2に固定されている。密封部材3が、管状本体1内に収容され、弾性ヘッド35が、前に明らかにされた方法で、入口端4内にセットされ、弾性中空要素36が、円筒状部分5内に、中空スパイク2の管状ポスト28を包囲するように収容され、弾性基部37が、管状本体1の終端部分6内に収容される。既に述べられたように、弾性基部37の環状の端部フランジ46は、それぞれ、中空スパイク2の肩部26と管状本体1の肩部27との間で軸方向に締め付けられ、上記弾性基部の壁は、環状に配置された軸方向肋材18に寄りかかっている。横方向の壁45は、環状に配置された正面突出部17に隣接しており、このため、概ね平面となるように、すなわち(図3、4に示された)径方向状態となるように、弾性的に少し変形される。密封部材3の第1の内側流体密封部材47は、弾性中空要素36の外側円筒面40、41と中空本体1の相補的な内側円筒面10、12との間の相互作用のおかげで、中空スパイク2の先端32の円錐状面32aに対して、流体密封に接触するようにセットされ、他方、第2の流体密封部材48は、弾性中空要素36の外側円筒面44と中空本体1の相補的な内側円筒面14との間の相互作用のおかげで、円錐状部分29の、より小さな直径の領域に対して、流体密封に接触するようにセットされる。密封部材3の弾性中空要素36及び弾性ヘッド35は、通常は、管状本体1内において少し軸方向に予圧された状態に保たれ、中空スパイク2の側孔31は、コネクタの入口端4に対して密封的に隔離され、入口端4と出口端24との連絡は、こうして閉ざされている。
【0032】
一方における弾性基部37及び壁35と、他方における中空スパイク2の円錐台形状を有する部分29と、の間には、こうして環状のチャンバー50が画定される。これは、中空スパイク2の基部20内に形成された1つ以上の通路51を通じて、バルブコネクタの外部と連絡する。
【0033】
環状のチャンバー50が通路51を通じて外部と連絡するので、この内部の圧力は明らかに大気圧となる。
【0034】
上述した状態は、バルブコネクタが流体密封に閉じている状態に相当する。
【0035】
ニードルレスシリンジすなわち導入器Sの端部が、弾性ヘッド35に対して正面に置かれ、そして、図3、4に示された方法で入口コネクタ4内に挿入されると、弾性ヘッド35は、密封部材3の弾性的変形のために、特に環状のチャンバー50内での弾性基部37の壁45の撓みのために、コネクタの内側に向かって軸方向に押される。
【0036】
導入器Sの挿入を続けると、壁45は、環状のチャンバー50内で撓みを受け続け、それぞれ、図5、6、図7、8、及び図9、10に示されるように、引張応力に起因して段階的に変形を受ける。ここでは、導入器Sは図解を単純化するために省かれている。
【0037】
壁45の引張応力に起因する撓みの結果として、弾性基部37は、圧縮され、図19で全体として符号45aで示された、壁45へと半曲する領域において、図7、8、図9、10、及び図11、12に概略的に示されるように、環状のチャンバー50の内側に向かって「巻き上がる」傾向がある。
【0038】
そして、密封部材3の弾性ヘッド35及び弾性中空要素36は、第1の流体密封部材47が先端32の円錐状面32aから離れる方向に移動するが第2の流体密封部材48が円錐状部分29に沿って流体密封を保ちながらスライドするように、管状本体1内を中空スパイク2の管状ポスト28に沿って、徐々にスライドする。
【0039】
同時に、中空スパイク2の突出部33が、内側から、弾性ヘッド35と相互作用し始め、それは(図9、10)弾性的に変形された形状、すなわち径方向に外側に向かって拡張された形状を、取り始め、結果としてプレ・スリット38を開き始める。
【0040】
導入器Sの挿入が完了すると(図11、12)、プレ・スリット38は完全に開かれるが、第1の流体密封部材47は、中空スパイク2の側孔31の下側へと移動する。第2の流体密封部材48は、中空スパイク2の円錐状部分29の、より大きな直径の領域まで、滑るように移動し、そして、壁45は、環状のチャンバー50内において完全に撓んで、拡がった状態となる。こうしてバルブコネクタは開いた状態となり、結果として、入口端4(したがって導入器S)は、プレ・スリット38、軸・径方向チャネル34、側孔31、管状ポスト28、及び軸部22を通じて、出口端24と連絡する。
【0041】
導入器Sが入口端4から引き抜かれると、壁45と密封部材3との弾性の戻りが一体となって、バルブコネクタの閉じた形状を速やかに回復させる。この状態においては、弾性ヘッド35は、入口端4内において変形されていない状態へと戻り、プレ・スリット38を再び閉じ、そして、側孔31は、流体密封部材47、48によって再び隔離される。
【0042】
図20〜26は、本発明のバルブコネクタの一変形例を示している。この変形例においては、既に上述したものと同一又は類似する部分は、同一の参照符号で示されている。バルブコネクタの管状本体1は、管状の側Y字形コネクタ55を備えている。側コネクタ55は、管状本体1の円筒状の終端部分6と一体的に形成されており、実質的には管状スパイク2の基部20の高さに形成されている。基部20には、周方向の溝56が形成されており、この溝56は、外側で、円筒状の終端部分6の壁によって流体密封的に閉じられており、基部20は、この変形例においては、上述した実施形態のそれより少し大きな軸方向の延長部分を有している。溝56は、こうして環状のチャンバーを画定し、一方においては、孔57を通じて側コネクタ55と連絡し、他方においては、1つ以上の径方向の通路58を通じて、スパイク2のキャビティ及び軸部22と、すなわちコネクタの出口端24と、連絡している。
【0043】
Y字形コネクタ55を有するバルブコネクタの動作は、図3〜12を参照しながら上述したのと、全く同一である。
【0044】
上述した実施形態の両方において、本発明のバルブコネクタは、類似する公知のバルブコネクタと比較して、一連の重要な長所を有する。すなわち、密封部材が繰り返して開かれた後でも、閉じた状態に速やかに戻るという点で、信頼性の程度が向上されている。また、全体としての軸方向の寸法がかなり低減されている。また、最小の部品数で組み立てられており、そのため、比較的簡単且つ安価な方法で製造することができる。また、開いた状態と閉じた状態との間の移行の段階で、バルブコネクタの内部に過剰の圧力又は負の圧力が発生するのを実質的に無くすことを保証できる。
【0045】
勿論、構成及び実施形態の細部は、次の請求の範囲において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、ここに説明し図解したものに対して、広範囲に渡って、変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の医療ライン用バルブコネクタの略斜視図である。
【図2】バルブコネクタの立面図である。
【図3】第1状態のバルブコネクタの軸方向断面略図である。
【図4】図3のそれと類似する図であるが、90度だけ回転された図である。
【図5】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図3に類似した図である。
【図6】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図4に類似した図である。
【図7】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図3に類似した図である。
【図8】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図4に類似した図である。
【図9】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図3に類似した図である。
【図10】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図4に類似した図である。
【図11】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図3に類似した図である。
【図12】異なる動作状態のバルブコネクタを示す、図4に類似した図である。
【図13】バルブコネクタの第1要素の軸方向断面図である。
【図14】図13の要素の下方からの斜視図である。
【図15】図13の要素の下方からの平面図である。
【図16】管状コネクタの第2要素の斜視図である。
【図17】管状コネクタの第3要素の斜視図である。
【図18】図17の要素の立面図である。
【図19】図18の要素の軸方向断面図である。
【図20】本発明のバルブコネクタの一変形例の立面図である。
【図21】図20の変形例の軸方向断面図である。
【図22】図21の変形例の斜視図である。
【図23】図20〜22のバルブコネクタの第2要素の上方からの斜視図である。
【図24】図23の要素の下方からの斜視図である。
【図25】図23、24の第2要素の軸方向断面図である。
【図26】図20〜22のバルブコネクタの第1要素の下方からの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の導入器(S)を介する輸液のための、医療ライン用バルブコネクタであって、
管状本体(1)と、中空スパイク(2)と、密封部材(3)と、を備えており、
管状本体(1)が、キャビティ(19)と、導入器(S)と係合するよう設けられた入口端(4)と、出口端(24)と、を有しており、
中空スパイク(2)が、管状本体(1)のキャビティ内に軸方向にセットされており、管状本体(1)の入口端(4)に面し且つそれから軸方向にある距離だけ離してセットされた、閉じた先端(32)を有しており、出口端(24)と連絡しており、管状本体(1)のキャビティ(19)と連絡するための、閉じた先端(32)からある距離だけ離してセットされた、少なくとも1つの側孔(31)を有しており、
密封部材(3)が、弾性ヘッド(35)と弾性中空要素(36)とを具備しており、
弾性ヘッド(35)が、プレ・スリット(38)を有しており、通常は管状本体(1)の入口端(4)内に閉じられた状態でセットされており、この閉じられた状態においてプレ・スリット(38)は閉じており、弾性ヘッド(35)は、閉じた先端(32)と相互作用してプレ・スリット(38)が弾性的に変形された開いた状態を取るために、導入器(S)の入口端(4)内への挿入の結果として中空スパイク(2)の閉じた先端(32)に対して軸方向に移動可能であり、
弾性中空要素(36)が、上記ヘッド(35)に連結されており、管状本体(1)と中空スパイク(2)との間にセットされており、上記ヘッド(35)が上記変形されていない閉じた状態にセットされている時に少なくとも1つの側孔(31)を管状本体(1)のキャビティから隔離するための、中空スパイク(2)と接触する密封手段(47、48)を有しており、上記ヘッド(35)を上記閉じた状態に維持する傾向を有する弾性スラスト手段(36、45)を具備しており、
弾性スラスト手段は、密封部材(3)の基部(37)を備えており、
基部(37)は、概ね円筒状の軸方向の壁を有しており、中空スパイク(2)との間に環状のチャンバー(50)を画定するよう、中空スパイク(2)からある径方向の距離だけ離してセットされており、概ね横方向の環状の壁(45)を通じて弾性中空要素(36)に連結されており、弾性ヘッド(35)が上記閉じた状態から上記開いた状態へと軸方向に移動する間に環状のチャンバー(50)内で曲がるようになっていることを特徴とするバルブコネクタ。
【請求項2】
概ね横方向の壁(45)が、引張応力による変形を受けながら曲がることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項3】
密封部材(3)の弾性中空要素(36)の密封手段が、第1の内側環状突出部(47)と第2の内側環状突出部(48)とを備えており、これらは、互いに軸方向に、ある距離だけ離して、セットされており、且つ、弾性ヘッド(35)の上記閉じた状態において中空スパイク(2)の少なくとも1つの側孔(31)に対して反対側に配置されていることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項4】
第1の環状突出部(47)が、弾性ヘッド(35)が上記のように閉じている状態においては、中空スパイク(2)の上記閉じた先端(32)の近傍に形成された、円錐状面(32a)内において、環状の突出部に対して流体密封に接触するように保たれていることを特徴とする、請求項3記載のバルブコネクタ。
【請求項5】
第2の内側環状突出部(48)が、中空スパイク(2)の円錐状面(29)内の部分に対して流体密封的に滑るよう接触するようにセットされており、内側に環状のチャンバー(50)を画定しており、コネクタの出口端(24)に向かって拡がっていることを特徴とする、請求項3記載のバルブコネクタ。
【請求項6】
環状のチャンバー(50)が、コネクタの外部と連絡していることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項7】
密封部材(3)の弾性スラスト手段の基部(37)が、管状本体(1)と中空スパイク(2)の基部(20)との間で、軸方向に封鎖されていることを特徴とする、請求項5記載のバルブコネクタ。
【請求項8】
密封部材(3)の弾性ヘッド(35)が、上記閉じた状態においては、管状本体(1)の入口端(4)内において実質的に支障なくセットされていることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項9】
管状本体(1)の入口端(4)が、軸方向のチャネル(8)が形成された内壁(7)を、有していることを特徴とする、請求項8記載のバルブコネクタ。
【請求項10】
密封部材(3)の弾性中空要素(36)が、外側壁を有しており、この外側壁が、円錐台形状を有する部分によって互いに接続された円筒状面(40、41、44)を有する軸方向の部分を有しており、管状本体(1)が、弾性中空要素(36)に対応する領域において、相補的な形状の内側面を有していることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項11】
密封部材(3)の概ね横方向の環状の壁(45)が、弾性中空要素(36)のそれより実質的に小さな厚さを有していることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項12】
密封部材(3)の基部(37)が、基部(37)に向かって径方向に突出し且つ環状に配置された軸方向突出部(18)が形成された、管状本体(1)の拡幅された円筒状部分内に、収容されていることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項13】
管状本体(1)の拡幅された上記円筒状部分(6)に、密封部材(3)の概ね横方向の環状の壁(45)に向かって前面にて突出し且つ環状に配置された、軸方向突出部(17)が、形成されていることを特徴とする、請求項12記載のバルブコネクタ。
【請求項14】
中空スパイク(2)の閉じた先端(32)が、プレ・スリット(38)を通過することなく密封部材(3)の弾性ヘッド(35)を上記開いた状態にさせるような、形状にされていることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項15】
中空スパイク(2)の閉じた先端(32)が、互いにある角距離だけ離れてセットされ、且つ、管状本体(1)の入口端(4)に面する流れのチャネル(34)を画定する、複数の軸方向の突出部(33)を有していることを特徴とする、請求項14記載のバルブコネクタ。
【請求項16】
出口端(24)が、中空スパイク(2)と一体的に形成された雄のルア・ロック接続要素(22、23)からなっていることを特徴とする、請求項1記載のバルブコネクタ。
【請求項17】
管状本体(1)に、管状の側Y字形コネクタ(55)が形成されている、請求項1〜16のいずれか1つに記載のバルブコネクタ。
【請求項18】
管状のY字形コネクタ(55)が、環状のチャンバー(56)を通じてコネクタの出口端(24)と連絡しており、チャンバー(56)は、少なくとも1つの側孔(31)の下流において中空スパイク(2)の内側と連絡していることを特徴とする、請求項17記載のバルブコネクタ。
【請求項19】
環状のチャンバーが、管状本体(1)によって外側で閉じられた、中空スパイク(2)の拡大部分(20)の円周の溝(56)によって、形成されており、拡大部分(20)の少なくとも1つの径方向の通路を通じて、コネクタの出口端(24)に接続されていることを特徴とする、請求項18記載のバルブコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−264030(P2008−264030A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−107262(P2007−107262)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(507028619)インドゥストリー・ボルラ・ソシエタ・ペル・アチオニ (10)
【氏名又は名称原語表記】Industrie Borla S.p.A.
【Fターム(参考)】