医療器具植え込み装置
【課題】生体内に医療器具を植え込む際に、医療器具に接続されたリードが植え込み装置に絡みつかないようにすること。
【解決手段】植え込み装置11は、生体内に植え込まれるリード2と、リード2の一端が接続され、生体内に植え込まれる医療器具1と、医療器具に接続され、リード2が巻回された状態でリード2を保持するリード保持部材3と、外周面にガイドを有し、リード保持部材3を生体内に植え込む回転部13と、リード2の一部を固定するリード固定部14bと、回転部13のガイドと嵌合する挿通部14aとを有し、回転部13が挿通された状態で回転部13を支持する支持部14と、を備える。
【解決手段】植え込み装置11は、生体内に植え込まれるリード2と、リード2の一端が接続され、生体内に植え込まれる医療器具1と、医療器具に接続され、リード2が巻回された状態でリード2を保持するリード保持部材3と、外周面にガイドを有し、リード保持部材3を生体内に植え込む回転部13と、リード2の一部を固定するリード固定部14bと、回転部13のガイドと嵌合する挿通部14aとを有し、回転部13が挿通された状態で回転部13を支持する支持部14と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具を生体内に安全に植え込むことを可能とする医療器具植え込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、痛み治療において、薬物療法、神経ブロック療法、外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を挙げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リード(以下、「リード」と略称する。)を体外の刺激装置に接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度を調べる。この期間においては医療器具として用いられる電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込み(以下、「本植え込み」という。)が実施される。
【0004】
電気刺激装置の本植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置されたリードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれるリードが皮下トンネルを通って腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
ところで、トライアル期間中や本植え込み後において、患者の体の動きに伴ってリードが引っ張られ、刺激電極の位置が植え込み当初の位置からずれる、という問題があった。刺激電極の位置がずれると、十分な疼痛緩和の効果が得られなかったり、痛みとは関係ない部位に刺激が感じられたりして、患者にしびれ等の不快を与えてしまう。そのため、リードの植え込みを再度行わなければならない場合があった。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献1では、パルスジェネレータに接続されたリードの先端に電極を設けたシステムが開示されている。このシステムでは、長さの余ったリード部分をスプールに巻きつけ、スプールも一緒に患者の体内に植え込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特開第2008−0058876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リードの先端部に電極を設けた上述のような装置においては、患者の体内に装置を植え込むにあたり、リードの長さを調節する必要がある。これは、体の大きさには個人差があり、また、患部の位置も人によって異なるためである。
しかし、それぞれの場合に合わせて、リードの長さが異なる装置を用意するのはコストが高くなる。このため、ある所定の長さ以上のリードを用い、体の大きい患者や、患部の位置が遠い場合でもリードの長さが足りるようにしておくことが行われている。
【0009】
ただし、この場合には、例えば体の小さな患者に対してはリードの長さが余ることになる。上記の特許文献1では、余った分のリードをスプールに巻きつけた後、スプールも体内に植え込んでいる。
ところが、この方法では余ったリードの処理を行うことができるが、スプールにリードを巻きつけるという作業が必要になる。また、装置の埋め込み時には、装置を植え込むための孔が患者に切開されており、患者の負担を軽減するためにも作業を容易にし、短時間で埋め込みを終えることが必要である。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、リードの処理を確実に行いながら、生体内に医療器具を植え込むようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の医療器具植え込み装置は、生体内に植え込まれるリードと、リードの一端が接続され、生体内に植え込まれる医療器具と、医療器具に接続され、リードが巻回された状態でリードを保持するリード保持部材と、外周面にガイドを有し、リード保持部材を生体内に植え込む回転部と、リードの一部を固定するリード固定部と、回転部のガイドと嵌合する挿通部とを有し、回転部が挿通された状態で回転部を支持する支持部と、を備える。
特に、支持部に対して軸方向において相対的に回転し、回転部が回転した角度に応じたリード保持部材に巻き回しされているリード長さ分だけ医療器具の植え込み方向に移動することによってリード保持部材及び医療器具を生体内に植え込み、リード保持部材からリードが剥がれる剥離点が植え込み方向に移動するものである。
【0012】
本発明により、支持部及び回転部が回転部の周方向において互いに逆に回転し、支持部に対して移動する回転部の植え込み方向の移動距離と、支持部に対する回転部の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さとを同じ長さとすることができる。
また、植え込み方向に対するリードの巻回し方向は、植え込み時の回転部の回転方向とは逆であり、支持部の回転方向と同じ向きとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医療器具を生体に植え込む際には、リード保持部材に巻回されたリードを引き出しながら、随時リードの長さ調整を行うことができる。このとき、支持部及び回転部が回転部の周方向において互いに逆に回転し、回転部の植え込み方向の移動距離と、支持部に対する回転部の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さとを同じ長さとすることにより、リード保持部材からほどけるリードがリード保持部材及び回転部に絡みにくくなり、医療器具の植え込みを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る植え込み装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る回転部と支持部との構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る医療用装置の回路構成を示すブロック図である。
【図5】硬膜外針を脊髄硬膜外腔に穿刺した状態と、リードにスタイレットを挿入した状態を示す説明図である。
【図6】生体に切開口を設ける状態を示す説明図である。
【図7】シースに本体部及びリード保持部材を押し込み、医療用装置を生体内に収納し終えた状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1〜第3の実施の形態に係る医療用装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
説明は以下の順で行う。
1.第1の実施の形態(回転部が回転することによって、リード保持部材及び医療器具を生体に植え込む例)
1−1.医療用装置の構成
1−2.植え込み装置の構成
1−3.医療用装置の回路構成
1−4.医療用装置の植え込み方法
1−5.第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例
2.第2の実施形態(回転部が押し込まれると、支持部が回転する例)
3.第3の実施形態(回転部が押し込まれて回転する第2の回転部によって支持部が回転する例)
4.医療用装置の変形例
【0016】
[1.第1の実施形態(回転部が回転することによって、リード保持部材及び医療器具を生体に植え込む例)]
[1−1.医療用装置の構成]
図1は、第1の実施の形態による医療用装置10の構成を示す概略斜視図である。
本実施の形態による医療用装置10は、例えば電源等が内蔵される医療器具1と、医療器具1に接続され、生体内に植え込まれる長尺状のリード2と、医療器具1に連続して設けられ、リード2が巻回されるリード保持部材3と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。
【0017】
まず、リード2について説明する。
リード2は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材として、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材によって、長尺状の円筒形に形成されている。このリード2には、インターフェース部4と医療器具1とを接続する配線が設けられている。
【0018】
リード2の先端部には、例えば生体や外部の周辺機器との間で、信号の伝達が行われるインターフェース部4が設けられている。このインターフェース部4には、例えば脊髄への電気刺激を与えるために、生体内の神経及び/又は筋肉を刺激する刺激電極7が配設される。また、後述するように、外部のコントローラ等から送信される電磁波を受信し、電源を充電するためのコイルが設けられていてもよい。また他にも、光ファイバや蛍光ゲルを用いた光学センサや、グルコースオキシダーゼ酵素電極法等を用いた電極センサ等のセンサ等を設けてもよい。
【0019】
したがって、インターフェース部4は、外部に対して信号を発信または受信するものであれば特に限定するものではない。例えば、刺激電極7のように、生体に信号を発する発信部でもよいし、生体からの信号を受信するセンサでもよい。また外部機器からの信号を受信する受信部でもよいし、外部機器との双方向通信を行うアンテナ部でもよい。
【0020】
なお、インターフェース部4として刺激電極7を配設する場合には、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(例えば、プラチナ90%/イリジウム10%合金)等の素材を用い、中空の略円筒状に刺激電極7を形成する。また、刺激電極7の外径は、リード2の外径とほぼ等しく形成されることが望ましい。
【0021】
また、リード2の内部には、スタイレット35(図5Bを参照。)が挿入されるスタイレット用ルーメン6が設けられている。このスタイレット用ルーメン6は、リード2の軸方向に形成された筒孔形状をしており、このスタイレット用ルーメン6に、スタイレット35が挿入される。したがって、スタイレット用ルーメン6の直径は、スタイレット35の直径とほぼ等しいか、もしくはそれより大きく設定される。
【0022】
スタイレット35をスタイレット用ルーメン6に挿入することにより、たわみやすいリード2を略直線状に支持することができ、インターフェース部4を生体内の目標の位置にまで容易に導入できる。なお、リード2の外径は、例えば、脊髄の神経を刺激する際には、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔に植え込まれることになるので、約1〜3mmであることが好ましい。
【0023】
リード2において、インターフェース部4が設けられた側とは反対側の基端(リード2の一端)は、医療器具1に接続されている。医療器具1は、例えば円柱形状としており、内部に電源や、インターフェース部4の制御回路等が内蔵されて、生体内に植え込まれる。
また、医療器具1には、リード保持部材3が接続されている。リード保持部材3は、例えば円柱状の芯部材3aと、芯部材3aに連続して設けられた先端部3bとを有しており、芯部材3aにリード2が巻回された状態でリード2を保持する。リード保持部材3は、その軸を医療器具1の軸と一致させて医療器具1に接続されているため、医療器具1とリード保持部材3が一体とされる。
【0024】
リード保持部材3の表面のうち、リード保持部材3の側面(芯部材3a部分)には接着層が設けられており、この接着層の粘着力により、芯部材3aに巻回されたリード2の基端側の一部がリード保持部材3に固定されている。リード2を損傷なくリード保持部材3に巻回するために、リード保持部材3の側面は曲面とされることが好ましいが、断面が多角形となる平面の組み合わせでもよい。なお、リード保持部材3の中心軸からリード保持部材3に巻き付けられるリード2の中心までの長さを”r”とする。
また、リード2はその全長をリード保持部材3に巻回せず、インターフェース部4側の先端から連続する非巻回部2aにおいて、リード保持部材3から離間した状態としている。
【0025】
また、リード保持部材3の外径は、医療器具1の外径よりも小さく設定されることが好ましい。特に、リード2が巻回された状態において、リード2も含めたリード保持部材3の外径が、医療器具1の外径と等しい、もしくはそれよりも小さくなることが好ましい。これにより、医療器具1及びリード保持部材3を、引っ掛かり無く円滑に生体内に挿入することができる。
【0026】
また、回転部13(後述する図2を参照。)がリード保持部材3の先端部3bに接する箇所には、十字の溝13bが切られている。溝13bに勘合する突起が先端部3bに形成されることにより、回転部13の回転力がリード保持部材3に確実に伝わるようにしている。
【0027】
このように、本実施の形態による医療用装置10は、リード2がリード保持部材3に巻回されることにより保持されている。このため、例えば医療用装置10を生体内に植え込む際には、必要とされる長さ分だけリード2をリード保持部材3から剥がすことにより、適宜状況に応じてリード2の長さを調整することができる。
また、リード保持部材3から剥がされずに残ったリード2は、リード保持部材3及び医療器具1と一緒にそのまま生体内に植え込むことが可能である。したがって、従来のように長さの余ったリードをわざわざ巻回し、纏めるといった作業を必要とせず、作業の簡易化を図ることができる。
【0028】
特に、リード2は接着層によってリード保持部材3に固定されている。このため、植え込み手術中や、リード2の長さを伸ばす際にリード2が必要以上にリード保持部材3から解けるのを防止でき、安定した作業を行える。また、少しずつ必要な長さだけリード2をリード保持部材3から剥がしながら、リード2の導入を行えるので、生体内への導入が行われていないリード部分が邪魔にならない。
【0029】
リード保持部材3の側面に設けられる接着層は、解けない程度にリード2をリード保持部材3の側面に保持できればよく、手でリード2を容易に剥がせる粘着力とされる。例えば、リード2とリード保持部材3の接着強さ(剥離接着強さ)が0.5N以上2.0N以下とすることが好ましい。なお、ここでの剥離接着強さは、リード保持部材3の側面におけるリード2の接線方向に対して、90度の角度で引き剥がす際の強さとする。なお、接着強さとして、剥離接着強さを示したが、リード保持部材3を生体内へ挿入する際の挿入抵抗(せん断力)に耐えられる程度のせん断接着強さ等も接着強さとして含まれる。すなわち、「接着強さ」とは、リード2をリード保持部材3に保持する上での保持力を指す。
【0030】
接着層としては、樹脂等の接着剤を用いてもよいし、他に両面テープを用いることも可能である。特に、チオール基を有する化合物を主成分とする接着剤を用いることが好適である。チオール基を有する化合物を主成分とした接着剤では、チオール基を有する化合物であれば良く、例えば、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、トルエン−3,4−ジチオール、1,5−ジメルカプトナフタレン、4,4’−ビフェニルジチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−ベンゼントリチオール、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、トリアジントリチオール、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ならびにそれらの誘導体および重合体からなる群より選択される少なくとも一種からなる接着剤を用いることができる。
また、チオール化合物を接着層としてリード保持部材3の側面に固定する方法としては、チオール化合物を含む溶液を表面に塗布・乾燥する方法、チオール化合物をイオン化ガスプラズマ照射、紫外線照射、電子線照射、真空蒸着あるいは加熱処理等により担持する方法などが挙げられる。
また、リード2の材料としてポリウレタンを用いる場合、ポリウレタンは接着強度が大きくなりやすいため、シリコーン等の接着されにくい材料によってリード2の表面を被覆することが好ましい。
また、リード2の表面に親水性ポリマー層などの潤滑層を設けることも可能である。
【0031】
なお、リード保持部材3の先端部3bは略平面に形成されている。ただし、後述する回転部13(図2を参照。)の一端が先端部3bに接してリード保持部材3に回転力を加えるため、リード保持部材3の端部と先端部3bには、凹凸の溝や突起等により互いに嵌合している。このようにリード保持部材3の端部と先端部3bには、互いに嵌合するために必要とされる周知な形状を用いることができる。
【0032】
また、本実施形態では、リード2においてインターフェース部4からリード保持部材3までの間、すなわち、非巻回部2aにおいて、その側面にスタイレット挿入部5が設けられる。スタイレット挿入部5には、スタイレット用ルーメン6に連通するスタイレット挿入孔5aが設けられ、このスタイレット挿入孔5aからリード2の先端方向(インターフェース部4側)へと延びるようにスタイレット35(図5Bを参照。)が挿入される。
【0033】
従来は、スタイレット用ルーメンは、本体側の基端までリードを貫通し、リードの基端側からスタイレット35が挿入されていた。しかし、本実施の形態では、リード2の基端が医療器具1に接続されており、スタイレット35を挿入するための孔を設けることができない。また、リード2の基端側にスタイレット35を挿入するための孔を設けても、リード2はリード保持部材3に巻回されているため、スタイレット35を挿入するのが困難である。このため、本実施形態では、リード2の非巻回部2aにスタイレット挿入部5を設け、リード2が巻回されたか否かに関わらず、容易にスタイレット35を挿入するようにしている。
【0034】
[1−2.植え込み装置の構成]
次に、本実施の形態による植え込み装置11の構成について図2と図3を参照して説明する。
図2は、第1の実施の形態による植え込み装置11の構成を示す概略斜視図である。
図3は、第1の実施の形態による回転部13と支持部14との構成を示す概略斜視図である。
【0035】
植え込み装置11は、上述した医療用装置10を含めて、医療器具1を生体に植え込む医療器具植え込み装置として用いられる。図2に示すように、植え込み装置11は、医療器具1、リード2、リード保持部材3に加えて、外周面にガイドを有し、周方向に回転することによって、医療器具1およびリード保持部材3を生体内に植え込む回転部13と、回転部13が挿通された状態で回転部13を支持する支持部14と、医師が回転部13を回転させるために用いるハンドル12とを備える。回転部13の一端はリード保持部材3の先端部3b(図1を参照。)に接続され、他端はハンドル12の中心部分に接続される。回転部13は、直線の棒状に形成されており、回転部13の外周面には溝状の凹部であるガイド13aが所定ピッチで形成される。なお、このガイド13aは、凸部で形成されていてもよい。
【0036】
支持部14は、回転部13とリード2の一部を移動可能に支持する。図3に示すように、支持部14の中心部分には、回転部13が挿通される挿通部14aが形成されており、挿通部14aの内周面には、回転部13の外周面に形成したガイド13aに嵌合する凸部である突起が形成されている。そして、医師がハンドル12を回転操作することにより、支持部14及び回転部13が回転部13の軸方向において相対的に回転する。このとき、支持部14に対する回転部13の回転した角度に応じたリード保持部材3に巻き回されているリード2の長さ分だけ回転部13が植え込み方向へ移動することにより、リード保持部材3からリード2が解かれながら回転部13の移動距離だけ医療器具1及びリード保持部材3が生体内に植え込まれる。
【0037】
また、支持部14は、リード2の一部を固定するリード固定部14bによって、リード2を支持する。リード固定部14bには、スリットが形成されており、このスリットがリード2の一部を挟んで、リード2を保持固定する。このため、医療器具1及びリード保持部材3を生体内に植え込んだ後は、リード固定部14bからリード2を容易に外すことができる。
【0038】
リード固定部14bの内周面はリード2の挿通に支障がない程度に摩擦力が小さいが、リード保持部材3に巻回されるリード2に適度な張力を加えることにより、リード保持部材3からリード2を解くことができる。なお、本実施の形態では、支持部14の一部にスリットを設けて、このスリットを、リード2を挟み込む挟み込み部として用いることによりリード2を支持する構成としたが、支持部14にリード2の直径に合わせて形成した貫通孔をリード固定部14bとして用い、この貫通孔にリード2を通してリード2を保持固定する構成としてもよい。
【0039】
上述したように、回転部13の外周面に形成されるガイド13aのピッチは、リード保持部材3の周長さに等しくしてある。なお、リード保持部材3の周長さは、リード保持部材3の半径に、リード保持部材3に巻回される最外周のリード2の半径を加えた値を半径とする円の円周として求められる。さらに、本実施の形態では、リード保持部材3を円柱形状としているが、これに限らずリード保持部材3の形状は、楕円柱形状等のように回転の角度によって、または円錐形状等のように植え込みの距離によって、リード保持部材3から剥がれるリード2の長さが変わる形状でもよく、この場合、ガイド13aのピッチはリード保持部材3から剥がれるリード2の長さの変化に応じて不定間隔で形成される。
【0040】
ここで、リード保持部材3からリード2が解ける部分を剥離点2bとして表す。上述したように、回転部13は、支持部14に対する回転部13の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さ分だけ植え込み方向に移動し、リード保持部材3及び医療器具1を生体内に植え込む。そして、リード保持部材3は、回転部13の回転と同じ回転部の軸方向に回転しており、回転部13が植え込み方向に移動する長さだけ、リード保持部材3の剥離点2bからリード2が解ける。このため、リード保持部材3及び医療器具1が生体内に植え込まれるのに合わせて、リード保持部材3からリード2が剥がれる剥離点2bが目印15の線上に示す植え込み方向に移動する。このように、剥離点2bは、リード保持部材3の側面を回らないため、剥離点2bの周方向の位置はリード保持部材3上で変わらない。これにより、リード2の張力を保ったまま必要な長さだけリード2をリード保持部材3から解くことができ、余分なリード2が回転部13に絡みつくことがない。
【0041】
[1−3.医療用装置の回路構成]
次に、本実施の形態による医療用装置10の回路構成について説明する。ここでは、インターフェース部4として、脊髄への電気刺激を与える刺激電極7を用いた場合の構成を例示する。
【0042】
図4は、本実施形態による医療用装置10に設けられる回路として、神経刺激回路8の構成を示すブロック図である。
刺激電極7に接続され、刺激電極7に刺激信号を印加する電極制御回路として用いられる神経刺激回路8は、充電池21と、コイル部22と、充電部23と、通信部24と、制御部25と、刺激パラメータ設定部26と、発振部27と、電極構成設定部28と、スイッチ部29とを備える。
【0043】
充電池21は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。図4に図示はしていないが、この充電池21は、蓄積している電力を、神経刺激回路8を構成する各ブロックに供給する。
【0044】
コイル部22は、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部22は、充電池21の充電を行う場合、図示しない体外のコントローラから送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部22から発生する交流電流が充電部23に出力される。また、コイル部22は、図示しない体外のコントローラから送信される、所定の情報が載せられた電磁波を受信し、受信した電磁波がコイル部22から通信部24に出力される。
【0045】
充電部23は、整流回路を内蔵し、コイル部22から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池21の充電を行う。
【0046】
通信部24は、コイル部22が受信した電磁波を復調し、電磁波に載せられている情報を取り出す。そして、取り出した情報を、制御部25を介して刺激パラメータ設定部26および電極構成設定部28に出力する。刺激パラメータ設定部26に出力される情報は、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報(以下、「刺激パラメータ」という。)であり、電極構成設定部28に出力される情報は、電極構成に関する情報(以下、「電極構成情報」という。)である。
【0047】
電気的刺激信号の刺激強度は、電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定される。刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。また、電極構成情報は、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極7(インターフェース部4)をスイッチ部29に選択させる情報とを含む信号である。
【0048】
刺激パラメータ設定部26は、通信部24から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部27で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
【0049】
発振部27は、刺激パラメータ設定部26から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部29に出力する。
【0050】
また、電極構成設定部28は、通信部24から入力される電極構成情報に基づいて、発振部27で発生した電気的刺激信号を出力する刺激電極7を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部26から出力される刺激強度変更信号は発振部27に出力され、電極構成設定部28から出力される電極構成選択信号はスイッチ部29に出力される。
【0051】
スイッチ部29は、電極構成設定部28から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部27から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極7を決定する。なお、制御部25は、例えばマイクロコンピュータ等であり、神経刺激回路8の各ブロックを制御する。
【0052】
なお、神経刺激回路8を構成するこれらの各部位は、医療器具1に限らず、リード保持部材3内に内蔵させてもよい。これにより、医療器具1を小型化することが可能となり、医療用装置10を生体内に容易に植え込むことができる。
【0053】
また、ここではインターフェース部4として、脊髄を刺激する刺激電極7を用いる例を挙げた。他にもインターフェース部4として例えば生体内のアナライトを検出する検出部を配設してもよい。この場合には、検出部によって受信されたアナライト信号を処理する処理回路が、例えば医療器具1またはリード保持部材3の内部に内蔵される。
【0054】
また、他にも、血糖値を測定するための電極をインターフェース部4として配設してもよい。この場合には、少なくとも3個以上の電極が設けられ、そのうちの2個の電極が作用極、対極として選択され、用いられる。
この時、医療用装置10に設けられる回路構成としては、例えば、電源と、電源からの電圧を変更し、変更後の電圧を電極に印加する電圧変更回路と、血液中のブドウ糖量に応じて生じた電流を計測する電流測定部と、計測された電流値を基に、血糖値を算出する制御部等が挙げられる。
【0055】
[1−4.医療用装置の植え込み方法]
次に、この医療用装置10を生体内に植え込む手順について、図5〜図7を参照して以下に説明する。なお、ここではインターフェース部4として、脊髄を刺激する刺激電極7を用いた場合について例示する。
【0056】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、抵抗消失法(硬膜外針の末端に接続したシリンジ空気圧の消失で脊髄硬膜外腔への到達を確認する方法)用い、図5Aに示すように、患者の背中側から、ピールアウェイ・シース付き硬膜外針(以下、「硬膜外針32」と呼ぶ。)を患者の皮膚31に穿刺し、X線透視で硬膜外針先端が脊髄硬膜外腔内にあることを確認する。
この硬膜外針32が脊髄硬膜外腔33に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から脊椎における3椎体以上低位が選ばれる。そして硬膜外針32を穿刺した後、ピールアウェイ・シース(以下「シース34」と呼ぶ)を残して、シース34内の内針を抜去する。
【0057】
次に、図5Bに示すように、医療用装置10のリード2に設けられたスタイレット挿入孔5aからスタイレット35を挿入し、スタイレット用ルーメン6内にスタイレット35を挿入する。これによりリード2が支持され、目標とする部位へのリード2の導入を補助できる。
【0058】
そして、スタイレット35が挿入されたリード2の先端部をシース34に通し、リード2を脊髄硬膜外腔33に挿入する。続いて医師は、X線透視下で、さらに軸方向に押すことにより、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を目標とする刺激部位の近くに誘導する。
【0059】
インターフェース部4が目標とする部位の近辺に到達すると、インターフェース部4の位置を少しずつ移動させながら、不図示の体外のコントローラを操作して神経刺激を行う。このとき、医療用装置10では、医師の操作に基づいて、所定の強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号がインターフェース部4に出力されることにより、神経刺激が行われる。医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適なインターフェース部4の位置を決定する。
【0060】
インターフェース部4の位置が決定すると、図5及び図6に示すように、スタイレット用ルーメン6(図1を参照。)からスタイレット35を抜去する。そして、シース34と皮膚31との接点を中心に、メス36を用いて皮膚31を約3cm切開する。これにより切開口36aが形成される。その後、シース34を裂いて撤去する。また、不図示のピールアウェイ・シース付トンネラーを切開口36aから側腹部に向けて挿入し、その先端を医療器具1の目的とする留置部位まで進めた後、ピールアウェイ・シースを残してトンネラーを抜去する。
【0061】
そして、図7Aに示すように、切開口36aにあるピールアウェイ・シースによって形成された皮下トンネル入口37から、植え込み装置11を用いてリード保持部材3及び医療器具1を生体内の側腹部に向けて押し込む。この際に、回転部13と支持部14が回転しないように手で保持しながら切開口36aに支持部14が接触するまで押し込んだ後、支持部14が回転しないように手で保持して回転部13を回転させることが好ましい。支持部14を回転させることも可能であるが、この場合、ピールアウェイ・シースの中をリード2が回転することになるので、ピールアウェイ・シースの内壁とリード2が擦れて抵抗が大きくなる。一方、支持部14を固定して回転部13を回転させた場合には、ピールアウェイ・シースの中をリード2が回転することなくリード保持部材3からリード2が剥がれるので、抵抗が小さくなる。なお、リード2の表面に親水性高分子層が設けられている場合、押し込む際の抵抗を低減することができる。
【0062】
なお、背中は、例えば患者が椅子に座る時等に、外部と接触する機会が多いため、背中側に医療器具1やリード保持部材3を収納すると患者が違和感を覚えやすい。また、筋肉量も多いので、背筋が硬直することによっても患者に違和感を与えてしまう。このため、医療器具1やリード保持部材3は、外部との接触機会が少なく、また筋肉量の少ない側腹部に収納することが好ましい。医療器具1及びリード保持部材3を側腹部に押し込んだ後、植え込み装置11を皮下トンネル入口37から抜去する。そして、リード固定部14bのスリットに挟み込まれているリード2を取り外し、続いて、ピールアウェイ・シースを引き裂いて撤去する。
【0063】
次に、図7Bに示すように、リード2を全て皮下内に収める。そして、切開口36aに露出しているリード2を皮下の組織に縫いつけた(不図示)後、切開部を縫合する。これにより、医療用装置10は、生体内に固定された状態で留置される。
この時、本実施形態による医療用装置10では、リード2の余った部分は初めからリード保持部材3に巻回された状態となっているので、リード2の余分な部分を束ねたりする等の作業を行うことなく、容易に生体内に収納することが可能である。
【0064】
以上説明した第1の実施の形態に係る植え込み装置11によれば、支持部14に対する回転部13の植え込み方向の移動距離と、支持部14に対する回転部13の回転角度分のリード保持部材3に巻回されているリード2の長さが同じ長さとすることにより、剥離点2bとリード固定部14bとの間に張られるリード2の張力を保つことができる。また、回転部13によって回転されながら生体に植え込まれるリード保持部材3と支持部14は互いに逆方向に回転しており、リード2が回転部13に巻き付かない。このため、意図しないリード2の巻付きにより回転部13に凹凸ができ、生体によってリード2が傷つくことを防げる。
【0065】
[1−5.第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例]
次に、本発明の第1の実施形態に係る植え込み装置11の変形例を、図8を参照して説明する。図8に示す植え込み装置40,45と植え込み装置11の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置40,45の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0066】
図8は、植え込み装置40の全体を示す斜視図である。図8Aは、回転部41に形成された中空に押圧部42が押し込まれる例を示し、図8Bは、ハンドル46を押し込むことによって回転部13を回転させる例を示す。
【0067】
図8Aに示す植え込み装置40は、植え込み装置11と同様に、医療器具1を生体内に植え込むために用いられる。この植え込み装置40は、周方向に回転する回転部41と、回転部41の中空部分に向けて回転部41を押し込む押圧部42と、押圧部42に設けられるハンドル43を備える。また、植え込み装置40は、不図示の医療器具1、リード2、リード保持部材3に加えて、回転部41の回転を支持する支持部14(図2を参照。)を備える。
【0068】
回転部41の外周面には、回転する回転部41を植え込み方向に移動させるガイド41aが形成される。そして、回転部41は、中空とされる一端を開口端とし、他端を閉口端に形成してあり、この他端にリード保持部材3の先端部3bが接触する。このため、医師の処置により、回転部41の開口端から閉口端に向けて植え込み方向に回転部41を押し込む押圧部42が回転部41の中空に挿入されると、不図示の支持部14によって回転部41が回転しながら植え込み方向に移動する。このように、回転部41が周方向に回転するが、支持部14は回転しないため、上述した第1の実施の形態に係る植え込み装置11と同様に、リード2が回転部41に絡みつくことなく、医療器具1及びリード保持部材3を生体内に植え込むことができる。
【0069】
図8Bに示す植え込み装置45は、第1の実施の形態に係る回転部13を押し当てる凹部46a(第2の挿通部)が形成されるハンドル46を備える。凹部46aは、回転部13の端部に嵌合する。そして、ハンドル46は、回転部13を植え込み方向に押圧する押圧部として用いられる。上述したように、リード保持部材3の先端部3b(図1を参照。)には、十字の溝13bが切られており、回転部13の押圧力がリード保持部材3に確実に伝わるようにしてある。このため、回転部13がハンドル46の凹部46aに押し当てられ、ハンドル46が植え込み方向に回転部13を押圧することにより、回転部13が周方向に回転してリード保持部材3を生体内に植え込むことができる。
【0070】
[2.第2の実施形態(回転部が押し込まれると、支持部が回転する例)]
次に、本発明の第2の実施形態に係る植え込み装置50の構成例を、図9を参照して説明する。本実施形態に係る植え込み装置50の構成と、第1の実施形態に係る植え込み装置11との構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置50の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0071】
植え込み装置50は、回転部53を支持する支持部51(第1の支持部)と、支持部51の回転を植え込み方向に設けられた軸受け52aで支持する支持部52(第2の支持部)と、支持部51の縁と支持部52の軸受け52aの間に設けられ、摩擦を低減する摺動部材としてのベアリング52bとを備える。本実施の形態では、回転部53が押し込まれることにより、支持部51が回転するものとしている。支持部51にはリード2を保持固定する貫通孔によってリード固定部51bが形成されている。なお、支持部51は、公知の分割方法によって少なくとも二つの部分に分割可能である。そして、分割された一部におけるリード固定部51bに該当する箇所にリード2をはめ込んだ後、これら二つの部分を接着等することによって円状の支持部51を形成することができる。
【0072】
植え込み装置50は、医師が回転部53を植え込み方向に押し込むことにより、支持部51を回転させるものであり、リード保持部材3及び医療器具1は回転せずに生体内に植え込まれる。このとき、支持部51が回転するが、支持部52はベアリング52bにより回転していない。そして、回転部53が植え込み方向に移動するにつれて、支持部51が周方向に回転し、リード保持部材3が回転部53に追随して回転し、支持部51が回転する周方向と同じ周方向に、リード保持部材3が保持するリード2の剥離点2bが移動する。
【0073】
なお、第1の実施の形態に係る支持部14のように回転せず、さらには支持部51に厚みがあると、第1の実施の形態に係る回転部13のように直線の棒状に形成した部材でなければ挿通部14aを挿通できない。しかし、医療器具1を生体部分へ植え込んでいく経路が曲面となる場合があり、回転部53を植え込み方向に折り曲げ可能とした上で、挿通部51aに回転部53を挿通したいという要望があった。このため、回転部53は回転させず支持部51を回転可能とし、さらに支持部51は、第1の実施の形態に係る支持部14より植え込み方向の厚みを薄くしてある。支持部51の植え込み方向の厚みを薄くすることにより、回転部53が挿通される支持部51をスムーズに回転させ、回転部53の回転力をリード保持部材3に直接伝えず、植え込み方向への押圧力だけを伝える構成とすることで、曲面部分を有する生体内に確実に医療器具1を植え込むことを可能としている。
【0074】
以上説明した第2の実施の形態に係る植え込み装置50は、回転部53を回転させずに生体内に押し込むことで、支持部52に支持される支持部51が回転する。このとき、リード固定部51bが回転することにより、剥離点2bが周方向に回転し、リード2の張力を保ったままリード保持部材3からリード2を解くことができる。また、支持部51の厚みを薄くしたことにより、回転部53が曲がっていても、生体内の任意の位置にリード保持部材3及び医療器具1を生体に植え込みやすくなる。
【0075】
[3.第3の実施形態(回転部が押し込まれて回転する第2の回転部によって支持部が回転する例)]
次に、本発明の第3の実施形態に係る植え込み装置60の構成例を、図10を参照して説明する。本実施形態に係る植え込み装置60の構成と、第1の実施形態に係る植え込み装置11との構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置60の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0076】
図10は、植え込み装置60の全体を示す斜視図である。図10Aは、挿通部64aにラック形状とされる回転部65が挿通されていない例を示し、図10Bは、押し込み方向から視認した場合における支持部64の構成例を示し、図10Cは、挿通部64aに回転部65が挿通された例を示す。また、図10Dは、植え込み装置60の変形例を示す。
【0077】
植え込み装置60は、片面に櫛歯が設けられたラック形状とされるガイド66により、歯車61を時計回りに回転させる回転部65と、回転部65の櫛歯に合致する形状とされた歯車61と、歯車61の櫛歯に合致する傘歯車形状とされる回転部62とを備える。なお、ガイド66、歯車61および回転部62の歯車比は、リード保持部材3の周長さ分だけガイド66が移動すると支持部64が1回転するように形成されている。
【0078】
ここで、支持部64の中心軸から支持部64及び回転部62の接する位置までの長さを”R”とし、上述したようにリード保持部材3の中心軸からリード保持部材3に巻き付けられるリード2の中心までの長さを”r”とする(図1を参照。)。リード保持部材3が1回転するときに解かれるリード2の長さ”2πr”を、回転部65が植え込み方向に進む距離とした場合、支持部64は、1回転する必要がある。このことから、ガイド66と溝64cのギア比は、2πr:2πRより、r:Rとして求められる。このため、”r”と”R”の比がガイド66のピッチ比となっている。
【0079】
回転部62の縁には櫛歯が形成されており、支持部64の溝64cに形成される円状の櫛歯に合致している。また、支持部64は、リード2の一部を支持するリード固定部64bと、上述した溝64cと、回転部65の周方向に支持部64をなめらかに回転させる摺動部材としてのベアリング64dと、ベアリング64dを格納する格納部64eとを備える。支持部64は、リード2の一部を固定するリード固定部64bによって、リード2を支持する。支持部64の直径は30〜50mm程度とされ、回転部65の直径は10mm程度とされる。
【0080】
図10A〜図10Cでは、植え込み方向に移動する回転部65のガイド66に従って回転し、支持部64を回転部65の周方向に回転させる第2の回転部として、歯車61と回転部62を用いた例を示している。回転部65は、折り曲げ可能としてあるため、生体内に医療器具1を植え込む際に、生体内の曲面に合わせて折り曲げながらリード保持部材3と医療器具1を押し込むことができる。
【0081】
ここで、回転部65が矢印に示す押し込み方向に押し込まれると、歯車61は時計回りに回転し、回転部62は上面から見て反時計回りに回転する。そして、図10Bに示すように支持部64は押込み方向に対して反時計回りに回転する。このため、回転部65の押し込みを行うだけで支持部64によって支持されるリード2は反時計回りに回転する。このとき、リード保持部材3は回転せずに、リード保持部材3に巻き付けられたリード2の剥離点2bが反時計回りに回転してリード2が張力を保ったまま解かれる。
【0082】
なお、図10Dに示す植え込み装置70は、植え込み装置60から歯車61を取り除いた構成としてあり、回転部62だけを上述した第2の回転部として用いた例を示している。このため、回転部65が植え込み方向に移動すると回転する回転部62の縁部により、支持部64を回転部65の周方向に回転させることができる。
そして、ガイド66と嵌合する回転部62は、図10AおよびCでは紙面手前側の歯とガイド66が嵌合しているが、図10Dでは紙面奥側の歯とガイド66が嵌合している。
【0083】
また、上述した第2及び第3の実施の形態に示した摺動部材としての軸受けには、水や油等の流体軸受けや、磁力を使った磁気軸受けを用いてもよい。また、空気を用いた空気軸受け等の各種の軸受けを用いることも可能である。
【0084】
[4.医療用装置の変形例]
図11は、第1〜第3の実施の形態に係る医療用装置の変形例を示す。図11Aは、筒状のリード保持部材を用いる例を示し、図11Bは、扁平形状をした芯部材によりリード保持部材を構成する例を示し、図11Cは、インターフェース部として外部機器からの信号を受信するコイルを設ける例を示す。なお、第1の実施の形態(図1参照)に係る医療用装置10と共通する部位については同一符号を付し、重複した説明を避ける。また、各変形例の回路構成も、第1の実施の形態(図4参照)において示したものと同様であってよい。
【0085】
図11Aに示す医療用装置85のリード保持部材86は、軸方向に筒孔が設けられた筒状部材によって構成されている。リード保持部材86の端部は医療器具1に接続され、医療器具1とリード保持部材86が一体とされている。なお、医療器具1とリード保持部材86を別体に構成してもよい。
【0086】
リード2は、リード保持部材86の内壁面に沿って巻回される。リード保持部材86の内壁面には第1の実施の形態に示したものと同様の接着層が配設されており、この接着層によってリード2がリード保持部材86の内壁面に固定される。
【0087】
リード保持部材86のインターフェース部4側の端部には、内壁面から突出するフランジ部87が設けられている。このフランジ部87には、切欠き部88が設けられており、リード2は、この切欠き部88を通してリード保持部材86の内部から引き出される。
これにより、リード保持部材86に対するリード2の引き出し位置が固定され、リード2の長さを伸ばす際の扱いを容易にできる。
【0088】
このように、医療用装置85においても、リード2はリード保持部材86に巻回された状態で予め固定されている。また、リード2は接着層によってリード保持部材86に固定されている。このため、リード2を引くことにより、リード2をリード保持部材86から剥がし、リード2の長さを随時調整しながら医療用装置の植え込みを行うことが可能である。また、リード2の長さの余った部分は、リード保持部材86に巻回されたままの状態となるので、リード2の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。
【0089】
図11Bに示す医療用装置90は、医療器具1と、医療器具1に接続されたリード2と、リード2が巻きつけられるリード保持部材91と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。リード保持部材91は、例えば軸方向に扁平な円柱形状をした芯部材92と、芯部材92の軸方向の両端にそれぞれ設けられた第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bと、芯部材92の内部に配設された軸部94を備える。
【0090】
芯部材92は、第1の鍔部93a及び第2の鍔部93b側に向かって径が大きくなり、軸方向中心部において径が最も小さくなる円柱形状をしている。芯部材92の側面は曲面に形成されており、この側面にリード2が巻回されている。
また、芯部材92の側面には、第1の実施の形態において示したものと同様の接着層が設けられ、この接着層によりリード2が芯部材92の側面に固定される。
【0091】
芯部材92の軸方向両端には、第1の鍔部93aと第2の鍔部93bがそれぞれ配設されている。第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bにより、芯部材92の側面上においてリード2が巻回される領域が規定される。
【0092】
また、芯部材92には軸方向に延びる空隙が設けられており、この空隙内に医療器具1が収容されている。例えば医療器具1と芯部材92が固定されている。また、医療器具1には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔の内部に軸部94が収容されている。軸部94は、その両端が第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bに固定される。すなわち、芯部材92及び医療器具1は、第1の鍔部93a及び第2の鍔部93b及び軸部94に対して、軸部94を中心に回動自在に固定されている。
【0093】
したがって、医療用装置90では、例えば第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bを片方の手で掴み、もう片方の手でリードを引っ張ることにより芯部材92及び医療器具1が回転する。そしてこの回転に伴ってリード2が芯部材92の側面から剥がされることにより、リード2の長さを調整することができる。
【0094】
このように、医療用装置90においても、リード2はリード保持部材91に巻回された状態で予め固定されている。また、リード2は接着層によってリード保持部材91に固定されている。このため、リード2の長さを随時調整しながら医療用装置90の植え込みを行うことが可能である。
また、リード2の長さの余った部分は、リード保持部材91に巻回されたままの状態となっているので、リード2の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。
【0095】
また、芯部材92を扁平な薄型の形状に形成している。このため、例えば皮膚表面が平面に近く、大きな表面積を有する生体の部位に植え込むことにより、患者が感じる違和感を低減することができる。なお、芯部材92と軸部94を固定し、芯部材92と軸部94が第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bに対して回動する構成としてもよいし、軸部94を設けずに、芯部材92が回転しない構成にしてもよい。また、軸部94と医療器具1を一体化してもよい。
【0096】
なお、上述した各実施の形態に係る医療用装置がリードに設けるインターフェース部は、例えば生体に信号を送信するものや、生体からの信号を受信するもの、また外部機器に対して信号を受信または送信するもの、またはこれらのいずれか複数を行うもの等を用いることができる。ここでは、外部機器からの信号を受信するインターフェース部を設ける場合について例示する。
【0097】
図11Cに示す医療用装置95は、医療器具1と、医療器具1に接続されたリード2と、リード2が巻回されるリード保持部材3と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。
また、医療器具1に接続された第2のリード96と、第2のリード96が巻回される第2のリード保持部材99と、第2のリード96の先端に設けられた第2のインターフェース部97を備える。
【0098】
また、医療器具1において、リード保持部材3が設けられた面とは反対側の面には、第2のリード保持部材99が設けられている。図11Cには、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99が医療器具1と一体とした図が記載されているが、それぞれを医療器具1とは別体に設けてもよい。
【0099】
また、この第2のリード保持部材99には、先端部に第2のインターフェース部97が設けられた第2のリード96が巻回される。第2のリード96及び第2のリード保持部材99の構成は、リード2及びリード保持部材3と同様である。ただし、第2のリード96の側面にはスタイレット挿入部98が設けられており、スタイレット挿入孔98aよりスタイレットが挿入される。また、医療用装置95は、第1の実施の形態(図4参照)において示した神経刺激回路8と同様の回路を備える。
【0100】
第2のインターフェース部97には、対外のコントローラ等から発信される充電用の電磁波を受信するコイル部22(図4参照)が配設される。このように、コイル部22を第2のリード96に配設することによって、コイル部22を医療器具1から離れた別の位置に植え込むことができる。
【0101】
コントローラ等の外部機器から受信する電磁波によって充電池21(図4参照)の充電を行う場合には、十分な電磁波パワーが得られる距離までコントローラをコイル部22に近接させる必要がある。しかし、コイル部22が医療器具1の内部に内蔵されていると、例えば医療器具1が背中付近に植え込まれた場合には、患者が自分でコントローラをコイル部22に近接させるのが困難な場合がある。また、患者が無理なく手を動かすことのできる範囲は、患者の容態や年齢等によって異なる。
【0102】
これに対して、第2のリード96に設ける第2のインターフェース部97として、コイル部22を配設している。このため、コイル部22を医療器具1から離して配置することができる。したがって、患者が無理な姿勢をすることなく、コントローラを近接させることが可能な箇所を選択し、その位置に第2のインターフェース部97を植え込むことで、患者本人が容易に充電作業を行うことができる。
【0103】
また、リード2及び第2のリード96は、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99にそれぞれ巻回されている。このため、リード2及び第2のリード96の長さを随時調整しながら医療用装置95の植え込みを行うことが可能である。
また、リード2及び第2のリード96の長さの余った部分は、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99に巻回されたままの状態となるので、リード2及び第2のリード96の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。その他の効果についても、第1の実施の形態と同様である。
【0104】
なお、医療用装置95の回路(例えば図4参照)を構成するコイル部22以外の各部位は、医療器具1及びリード保持部材3及び第2のリード保持部材99のいずれに内蔵させてもよく、適宜選択してよい。
【0105】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1…医療器具、2…リード、2a…非巻回部、2b…剥離点、3…リード保持部材、3a…芯部材、3b…先端部、4…インターフェース部、5…スタイレット挿入部、5a…スタイレット挿入孔、6…スタイレット用ルーメン、7…刺激電極、8…神経刺激回路、10…医療用装置、11…植え込み装置、12…ハンドル、13…回転部、13b…溝、14…支持部、14a…挿通部、14b…リード固定部、21…充電池、22…コイル部、23…充電部、24…通信部、25…制御部、26…刺激パラメータ設定部、27…発振部、28…電極構成設定部、29…スイッチ部、40,50,60,85,90,95…植え込み装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具を生体内に安全に植え込むことを可能とする医療器具植え込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、痛み治療において、薬物療法、神経ブロック療法、外科的療法に効果を示さない場合や、副作用などによりその治療が継続できない場合に、神経を電気刺激することにより痛みを緩和する電気刺激療法が効果を挙げている。電気刺激療法の1つである脊髄電気刺激療法は、脊髄を介して脳へ伝播する痛みを緩和するために、脊髄を電気刺激する刺激療法である。
【0003】
脊髄電気刺激療法では、通常、電気刺激による疼痛緩和の有効性を確かめるために、24時間から数週間のトライアル期間が設けられる。トライアル期間では、一般的に、背中側から穿刺して脊髄を覆う脊髄硬膜の外側にある硬膜外腔に刺激電極を留置した後、この刺激電極が含まれる電極リード(以下、「リード」と略称する。)を体外の刺激装置に接続して様々な刺激パターンの下で疼痛緩和の程度を調べる。この期間においては医療器具として用いられる電気刺激装置の植え込みは行われていない。このトライアル期間において所定の効果が認められた場合にのみ、電気刺激装置の植え込み(以下、「本植え込み」という。)が実施される。
【0004】
電気刺激装置の本植え込みを行う場合には、トライアル期間に留置されたリードが抜去された後、再び硬膜外腔に新たな刺激電極が留置され、この刺激電極が含まれるリードが皮下トンネルを通って腰部や腹部、あるいは胸部に導かれる。そして、リードが電気刺激装置と接続されて皮下に植え込まれる。
【0005】
ところで、トライアル期間中や本植え込み後において、患者の体の動きに伴ってリードが引っ張られ、刺激電極の位置が植え込み当初の位置からずれる、という問題があった。刺激電極の位置がずれると、十分な疼痛緩和の効果が得られなかったり、痛みとは関係ない部位に刺激が感じられたりして、患者にしびれ等の不快を与えてしまう。そのため、リードの植え込みを再度行わなければならない場合があった。
【0006】
この問題を解決するために、特許文献1では、パルスジェネレータに接続されたリードの先端に電極を設けたシステムが開示されている。このシステムでは、長さの余ったリード部分をスプールに巻きつけ、スプールも一緒に患者の体内に植え込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特開第2008−0058876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
リードの先端部に電極を設けた上述のような装置においては、患者の体内に装置を植え込むにあたり、リードの長さを調節する必要がある。これは、体の大きさには個人差があり、また、患部の位置も人によって異なるためである。
しかし、それぞれの場合に合わせて、リードの長さが異なる装置を用意するのはコストが高くなる。このため、ある所定の長さ以上のリードを用い、体の大きい患者や、患部の位置が遠い場合でもリードの長さが足りるようにしておくことが行われている。
【0009】
ただし、この場合には、例えば体の小さな患者に対してはリードの長さが余ることになる。上記の特許文献1では、余った分のリードをスプールに巻きつけた後、スプールも体内に植え込んでいる。
ところが、この方法では余ったリードの処理を行うことができるが、スプールにリードを巻きつけるという作業が必要になる。また、装置の埋め込み時には、装置を植え込むための孔が患者に切開されており、患者の負担を軽減するためにも作業を容易にし、短時間で埋め込みを終えることが必要である。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、リードの処理を確実に行いながら、生体内に医療器具を植え込むようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の医療器具植え込み装置は、生体内に植え込まれるリードと、リードの一端が接続され、生体内に植え込まれる医療器具と、医療器具に接続され、リードが巻回された状態でリードを保持するリード保持部材と、外周面にガイドを有し、リード保持部材を生体内に植え込む回転部と、リードの一部を固定するリード固定部と、回転部のガイドと嵌合する挿通部とを有し、回転部が挿通された状態で回転部を支持する支持部と、を備える。
特に、支持部に対して軸方向において相対的に回転し、回転部が回転した角度に応じたリード保持部材に巻き回しされているリード長さ分だけ医療器具の植え込み方向に移動することによってリード保持部材及び医療器具を生体内に植え込み、リード保持部材からリードが剥がれる剥離点が植え込み方向に移動するものである。
【0012】
本発明により、支持部及び回転部が回転部の周方向において互いに逆に回転し、支持部に対して移動する回転部の植え込み方向の移動距離と、支持部に対する回転部の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さとを同じ長さとすることができる。
また、植え込み方向に対するリードの巻回し方向は、植え込み時の回転部の回転方向とは逆であり、支持部の回転方向と同じ向きとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医療器具を生体に植え込む際には、リード保持部材に巻回されたリードを引き出しながら、随時リードの長さ調整を行うことができる。このとき、支持部及び回転部が回転部の周方向において互いに逆に回転し、回転部の植え込み方向の移動距離と、支持部に対する回転部の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さとを同じ長さとすることにより、リード保持部材からほどけるリードがリード保持部材及び回転部に絡みにくくなり、医療器具の植え込みを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る植え込み装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る回転部と支持部との構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る医療用装置の回路構成を示すブロック図である。
【図5】硬膜外針を脊髄硬膜外腔に穿刺した状態と、リードにスタイレットを挿入した状態を示す説明図である。
【図6】生体に切開口を設ける状態を示す説明図である。
【図7】シースに本体部及びリード保持部材を押し込み、医療用装置を生体内に収納し終えた状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る医療用装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1〜第3の実施の形態に係る医療用装置の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
説明は以下の順で行う。
1.第1の実施の形態(回転部が回転することによって、リード保持部材及び医療器具を生体に植え込む例)
1−1.医療用装置の構成
1−2.植え込み装置の構成
1−3.医療用装置の回路構成
1−4.医療用装置の植え込み方法
1−5.第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例
2.第2の実施形態(回転部が押し込まれると、支持部が回転する例)
3.第3の実施形態(回転部が押し込まれて回転する第2の回転部によって支持部が回転する例)
4.医療用装置の変形例
【0016】
[1.第1の実施形態(回転部が回転することによって、リード保持部材及び医療器具を生体に植え込む例)]
[1−1.医療用装置の構成]
図1は、第1の実施の形態による医療用装置10の構成を示す概略斜視図である。
本実施の形態による医療用装置10は、例えば電源等が内蔵される医療器具1と、医療器具1に接続され、生体内に植え込まれる長尺状のリード2と、医療器具1に連続して設けられ、リード2が巻回されるリード保持部材3と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。
【0017】
まず、リード2について説明する。
リード2は、柔軟性があって、かつ生体適合性がある素材として、例えばシリコーンやポリウレタン等の樹脂素材によって、長尺状の円筒形に形成されている。このリード2には、インターフェース部4と医療器具1とを接続する配線が設けられている。
【0018】
リード2の先端部には、例えば生体や外部の周辺機器との間で、信号の伝達が行われるインターフェース部4が設けられている。このインターフェース部4には、例えば脊髄への電気刺激を与えるために、生体内の神経及び/又は筋肉を刺激する刺激電極7が配設される。また、後述するように、外部のコントローラ等から送信される電磁波を受信し、電源を充電するためのコイルが設けられていてもよい。また他にも、光ファイバや蛍光ゲルを用いた光学センサや、グルコースオキシダーゼ酵素電極法等を用いた電極センサ等のセンサ等を設けてもよい。
【0019】
したがって、インターフェース部4は、外部に対して信号を発信または受信するものであれば特に限定するものではない。例えば、刺激電極7のように、生体に信号を発する発信部でもよいし、生体からの信号を受信するセンサでもよい。また外部機器からの信号を受信する受信部でもよいし、外部機器との双方向通信を行うアンテナ部でもよい。
【0020】
なお、インターフェース部4として刺激電極7を配設する場合には、導電性があって生体適合性がある素材、例えばプラチナやプラチナ合金(例えば、プラチナ90%/イリジウム10%合金)等の素材を用い、中空の略円筒状に刺激電極7を形成する。また、刺激電極7の外径は、リード2の外径とほぼ等しく形成されることが望ましい。
【0021】
また、リード2の内部には、スタイレット35(図5Bを参照。)が挿入されるスタイレット用ルーメン6が設けられている。このスタイレット用ルーメン6は、リード2の軸方向に形成された筒孔形状をしており、このスタイレット用ルーメン6に、スタイレット35が挿入される。したがって、スタイレット用ルーメン6の直径は、スタイレット35の直径とほぼ等しいか、もしくはそれより大きく設定される。
【0022】
スタイレット35をスタイレット用ルーメン6に挿入することにより、たわみやすいリード2を略直線状に支持することができ、インターフェース部4を生体内の目標の位置にまで容易に導入できる。なお、リード2の外径は、例えば、脊髄の神経を刺激する際には、脊髄硬膜と脊柱背側との距離が約5mmの硬膜外腔に植え込まれることになるので、約1〜3mmであることが好ましい。
【0023】
リード2において、インターフェース部4が設けられた側とは反対側の基端(リード2の一端)は、医療器具1に接続されている。医療器具1は、例えば円柱形状としており、内部に電源や、インターフェース部4の制御回路等が内蔵されて、生体内に植え込まれる。
また、医療器具1には、リード保持部材3が接続されている。リード保持部材3は、例えば円柱状の芯部材3aと、芯部材3aに連続して設けられた先端部3bとを有しており、芯部材3aにリード2が巻回された状態でリード2を保持する。リード保持部材3は、その軸を医療器具1の軸と一致させて医療器具1に接続されているため、医療器具1とリード保持部材3が一体とされる。
【0024】
リード保持部材3の表面のうち、リード保持部材3の側面(芯部材3a部分)には接着層が設けられており、この接着層の粘着力により、芯部材3aに巻回されたリード2の基端側の一部がリード保持部材3に固定されている。リード2を損傷なくリード保持部材3に巻回するために、リード保持部材3の側面は曲面とされることが好ましいが、断面が多角形となる平面の組み合わせでもよい。なお、リード保持部材3の中心軸からリード保持部材3に巻き付けられるリード2の中心までの長さを”r”とする。
また、リード2はその全長をリード保持部材3に巻回せず、インターフェース部4側の先端から連続する非巻回部2aにおいて、リード保持部材3から離間した状態としている。
【0025】
また、リード保持部材3の外径は、医療器具1の外径よりも小さく設定されることが好ましい。特に、リード2が巻回された状態において、リード2も含めたリード保持部材3の外径が、医療器具1の外径と等しい、もしくはそれよりも小さくなることが好ましい。これにより、医療器具1及びリード保持部材3を、引っ掛かり無く円滑に生体内に挿入することができる。
【0026】
また、回転部13(後述する図2を参照。)がリード保持部材3の先端部3bに接する箇所には、十字の溝13bが切られている。溝13bに勘合する突起が先端部3bに形成されることにより、回転部13の回転力がリード保持部材3に確実に伝わるようにしている。
【0027】
このように、本実施の形態による医療用装置10は、リード2がリード保持部材3に巻回されることにより保持されている。このため、例えば医療用装置10を生体内に植え込む際には、必要とされる長さ分だけリード2をリード保持部材3から剥がすことにより、適宜状況に応じてリード2の長さを調整することができる。
また、リード保持部材3から剥がされずに残ったリード2は、リード保持部材3及び医療器具1と一緒にそのまま生体内に植え込むことが可能である。したがって、従来のように長さの余ったリードをわざわざ巻回し、纏めるといった作業を必要とせず、作業の簡易化を図ることができる。
【0028】
特に、リード2は接着層によってリード保持部材3に固定されている。このため、植え込み手術中や、リード2の長さを伸ばす際にリード2が必要以上にリード保持部材3から解けるのを防止でき、安定した作業を行える。また、少しずつ必要な長さだけリード2をリード保持部材3から剥がしながら、リード2の導入を行えるので、生体内への導入が行われていないリード部分が邪魔にならない。
【0029】
リード保持部材3の側面に設けられる接着層は、解けない程度にリード2をリード保持部材3の側面に保持できればよく、手でリード2を容易に剥がせる粘着力とされる。例えば、リード2とリード保持部材3の接着強さ(剥離接着強さ)が0.5N以上2.0N以下とすることが好ましい。なお、ここでの剥離接着強さは、リード保持部材3の側面におけるリード2の接線方向に対して、90度の角度で引き剥がす際の強さとする。なお、接着強さとして、剥離接着強さを示したが、リード保持部材3を生体内へ挿入する際の挿入抵抗(せん断力)に耐えられる程度のせん断接着強さ等も接着強さとして含まれる。すなわち、「接着強さ」とは、リード2をリード保持部材3に保持する上での保持力を指す。
【0030】
接着層としては、樹脂等の接着剤を用いてもよいし、他に両面テープを用いることも可能である。特に、チオール基を有する化合物を主成分とする接着剤を用いることが好適である。チオール基を有する化合物を主成分とした接着剤では、チオール基を有する化合物であれば良く、例えば、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、トルエン−3,4−ジチオール、1,5−ジメルカプトナフタレン、4,4’−ビフェニルジチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−ベンゼントリチオール、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)、トリアジントリチオール、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ならびにそれらの誘導体および重合体からなる群より選択される少なくとも一種からなる接着剤を用いることができる。
また、チオール化合物を接着層としてリード保持部材3の側面に固定する方法としては、チオール化合物を含む溶液を表面に塗布・乾燥する方法、チオール化合物をイオン化ガスプラズマ照射、紫外線照射、電子線照射、真空蒸着あるいは加熱処理等により担持する方法などが挙げられる。
また、リード2の材料としてポリウレタンを用いる場合、ポリウレタンは接着強度が大きくなりやすいため、シリコーン等の接着されにくい材料によってリード2の表面を被覆することが好ましい。
また、リード2の表面に親水性ポリマー層などの潤滑層を設けることも可能である。
【0031】
なお、リード保持部材3の先端部3bは略平面に形成されている。ただし、後述する回転部13(図2を参照。)の一端が先端部3bに接してリード保持部材3に回転力を加えるため、リード保持部材3の端部と先端部3bには、凹凸の溝や突起等により互いに嵌合している。このようにリード保持部材3の端部と先端部3bには、互いに嵌合するために必要とされる周知な形状を用いることができる。
【0032】
また、本実施形態では、リード2においてインターフェース部4からリード保持部材3までの間、すなわち、非巻回部2aにおいて、その側面にスタイレット挿入部5が設けられる。スタイレット挿入部5には、スタイレット用ルーメン6に連通するスタイレット挿入孔5aが設けられ、このスタイレット挿入孔5aからリード2の先端方向(インターフェース部4側)へと延びるようにスタイレット35(図5Bを参照。)が挿入される。
【0033】
従来は、スタイレット用ルーメンは、本体側の基端までリードを貫通し、リードの基端側からスタイレット35が挿入されていた。しかし、本実施の形態では、リード2の基端が医療器具1に接続されており、スタイレット35を挿入するための孔を設けることができない。また、リード2の基端側にスタイレット35を挿入するための孔を設けても、リード2はリード保持部材3に巻回されているため、スタイレット35を挿入するのが困難である。このため、本実施形態では、リード2の非巻回部2aにスタイレット挿入部5を設け、リード2が巻回されたか否かに関わらず、容易にスタイレット35を挿入するようにしている。
【0034】
[1−2.植え込み装置の構成]
次に、本実施の形態による植え込み装置11の構成について図2と図3を参照して説明する。
図2は、第1の実施の形態による植え込み装置11の構成を示す概略斜視図である。
図3は、第1の実施の形態による回転部13と支持部14との構成を示す概略斜視図である。
【0035】
植え込み装置11は、上述した医療用装置10を含めて、医療器具1を生体に植え込む医療器具植え込み装置として用いられる。図2に示すように、植え込み装置11は、医療器具1、リード2、リード保持部材3に加えて、外周面にガイドを有し、周方向に回転することによって、医療器具1およびリード保持部材3を生体内に植え込む回転部13と、回転部13が挿通された状態で回転部13を支持する支持部14と、医師が回転部13を回転させるために用いるハンドル12とを備える。回転部13の一端はリード保持部材3の先端部3b(図1を参照。)に接続され、他端はハンドル12の中心部分に接続される。回転部13は、直線の棒状に形成されており、回転部13の外周面には溝状の凹部であるガイド13aが所定ピッチで形成される。なお、このガイド13aは、凸部で形成されていてもよい。
【0036】
支持部14は、回転部13とリード2の一部を移動可能に支持する。図3に示すように、支持部14の中心部分には、回転部13が挿通される挿通部14aが形成されており、挿通部14aの内周面には、回転部13の外周面に形成したガイド13aに嵌合する凸部である突起が形成されている。そして、医師がハンドル12を回転操作することにより、支持部14及び回転部13が回転部13の軸方向において相対的に回転する。このとき、支持部14に対する回転部13の回転した角度に応じたリード保持部材3に巻き回されているリード2の長さ分だけ回転部13が植え込み方向へ移動することにより、リード保持部材3からリード2が解かれながら回転部13の移動距離だけ医療器具1及びリード保持部材3が生体内に植え込まれる。
【0037】
また、支持部14は、リード2の一部を固定するリード固定部14bによって、リード2を支持する。リード固定部14bには、スリットが形成されており、このスリットがリード2の一部を挟んで、リード2を保持固定する。このため、医療器具1及びリード保持部材3を生体内に植え込んだ後は、リード固定部14bからリード2を容易に外すことができる。
【0038】
リード固定部14bの内周面はリード2の挿通に支障がない程度に摩擦力が小さいが、リード保持部材3に巻回されるリード2に適度な張力を加えることにより、リード保持部材3からリード2を解くことができる。なお、本実施の形態では、支持部14の一部にスリットを設けて、このスリットを、リード2を挟み込む挟み込み部として用いることによりリード2を支持する構成としたが、支持部14にリード2の直径に合わせて形成した貫通孔をリード固定部14bとして用い、この貫通孔にリード2を通してリード2を保持固定する構成としてもよい。
【0039】
上述したように、回転部13の外周面に形成されるガイド13aのピッチは、リード保持部材3の周長さに等しくしてある。なお、リード保持部材3の周長さは、リード保持部材3の半径に、リード保持部材3に巻回される最外周のリード2の半径を加えた値を半径とする円の円周として求められる。さらに、本実施の形態では、リード保持部材3を円柱形状としているが、これに限らずリード保持部材3の形状は、楕円柱形状等のように回転の角度によって、または円錐形状等のように植え込みの距離によって、リード保持部材3から剥がれるリード2の長さが変わる形状でもよく、この場合、ガイド13aのピッチはリード保持部材3から剥がれるリード2の長さの変化に応じて不定間隔で形成される。
【0040】
ここで、リード保持部材3からリード2が解ける部分を剥離点2bとして表す。上述したように、回転部13は、支持部14に対する回転部13の回転角度分のリード保持部材に巻回されているリードの長さ分だけ植え込み方向に移動し、リード保持部材3及び医療器具1を生体内に植え込む。そして、リード保持部材3は、回転部13の回転と同じ回転部の軸方向に回転しており、回転部13が植え込み方向に移動する長さだけ、リード保持部材3の剥離点2bからリード2が解ける。このため、リード保持部材3及び医療器具1が生体内に植え込まれるのに合わせて、リード保持部材3からリード2が剥がれる剥離点2bが目印15の線上に示す植え込み方向に移動する。このように、剥離点2bは、リード保持部材3の側面を回らないため、剥離点2bの周方向の位置はリード保持部材3上で変わらない。これにより、リード2の張力を保ったまま必要な長さだけリード2をリード保持部材3から解くことができ、余分なリード2が回転部13に絡みつくことがない。
【0041】
[1−3.医療用装置の回路構成]
次に、本実施の形態による医療用装置10の回路構成について説明する。ここでは、インターフェース部4として、脊髄への電気刺激を与える刺激電極7を用いた場合の構成を例示する。
【0042】
図4は、本実施形態による医療用装置10に設けられる回路として、神経刺激回路8の構成を示すブロック図である。
刺激電極7に接続され、刺激電極7に刺激信号を印加する電極制御回路として用いられる神経刺激回路8は、充電池21と、コイル部22と、充電部23と、通信部24と、制御部25と、刺激パラメータ設定部26と、発振部27と、電極構成設定部28と、スイッチ部29とを備える。
【0043】
充電池21は、例えばリチウムイオン電池等の充電可能な電池である。図4に図示はしていないが、この充電池21は、蓄積している電力を、神経刺激回路8を構成する各ブロックに供給する。
【0044】
コイル部22は、例えばコイルとコンデンサで構成される共振回路である。コイル部22は、充電池21の充電を行う場合、図示しない体外のコントローラから送信される充電用の電磁波を受信する。そして、この受信に伴ってコイル部22から発生する交流電流が充電部23に出力される。また、コイル部22は、図示しない体外のコントローラから送信される、所定の情報が載せられた電磁波を受信し、受信した電磁波がコイル部22から通信部24に出力される。
【0045】
充電部23は、整流回路を内蔵し、コイル部22から出力された交流電流を直流電流に変換して電力を取得する。そして、取得した電力で充電池21の充電を行う。
【0046】
通信部24は、コイル部22が受信した電磁波を復調し、電磁波に載せられている情報を取り出す。そして、取り出した情報を、制御部25を介して刺激パラメータ設定部26および電極構成設定部28に出力する。刺激パラメータ設定部26に出力される情報は、電気的刺激信号の刺激強度に関する情報(以下、「刺激パラメータ」という。)であり、電極構成設定部28に出力される情報は、電極構成に関する情報(以下、「電極構成情報」という。)である。
【0047】
電気的刺激信号の刺激強度は、電気的刺激信号のパルス電圧、パルス電流、パルス幅あるいは周波数により決定される。刺激パラメータはこれらパルス電圧等の値を示す信号である。また、電極構成情報は、電気的刺激信号の極性を変更するための情報と、電気的刺激信号を出力する刺激電極7(インターフェース部4)をスイッチ部29に選択させる情報とを含む信号である。
【0048】
刺激パラメータ設定部26は、通信部24から入力される刺激パラメータに基づいて、発振部27で発生する電気的刺激信号の刺激強度を変更するための刺激強度変更信号を生成する。
【0049】
発振部27は、刺激パラメータ設定部26から入力される刺激強度変更信号に基づいて、電気的刺激信号を生成してスイッチ部29に出力する。
【0050】
また、電極構成設定部28は、通信部24から入力される電極構成情報に基づいて、発振部27で発生した電気的刺激信号を出力する刺激電極7を選択するための電極構成選択信号を生成する。なお、刺激パラメータ設定部26から出力される刺激強度変更信号は発振部27に出力され、電極構成設定部28から出力される電極構成選択信号はスイッチ部29に出力される。
【0051】
スイッチ部29は、電極構成設定部28から入力される電極構成選択信号に基づいて、発振部27から入力される電気的刺激信号を出力する刺激電極7を決定する。なお、制御部25は、例えばマイクロコンピュータ等であり、神経刺激回路8の各ブロックを制御する。
【0052】
なお、神経刺激回路8を構成するこれらの各部位は、医療器具1に限らず、リード保持部材3内に内蔵させてもよい。これにより、医療器具1を小型化することが可能となり、医療用装置10を生体内に容易に植え込むことができる。
【0053】
また、ここではインターフェース部4として、脊髄を刺激する刺激電極7を用いる例を挙げた。他にもインターフェース部4として例えば生体内のアナライトを検出する検出部を配設してもよい。この場合には、検出部によって受信されたアナライト信号を処理する処理回路が、例えば医療器具1またはリード保持部材3の内部に内蔵される。
【0054】
また、他にも、血糖値を測定するための電極をインターフェース部4として配設してもよい。この場合には、少なくとも3個以上の電極が設けられ、そのうちの2個の電極が作用極、対極として選択され、用いられる。
この時、医療用装置10に設けられる回路構成としては、例えば、電源と、電源からの電圧を変更し、変更後の電圧を電極に印加する電圧変更回路と、血液中のブドウ糖量に応じて生じた電流を計測する電流測定部と、計測された電流値を基に、血糖値を算出する制御部等が挙げられる。
【0055】
[1−4.医療用装置の植え込み方法]
次に、この医療用装置10を生体内に植え込む手順について、図5〜図7を参照して以下に説明する。なお、ここではインターフェース部4として、脊髄を刺激する刺激電極7を用いた場合について例示する。
【0056】
まず、医師は、患者の痛みの分布状況に基づき、予め目標とする脊髄の刺激部位を決定する。そして、抵抗消失法(硬膜外針の末端に接続したシリンジ空気圧の消失で脊髄硬膜外腔への到達を確認する方法)用い、図5Aに示すように、患者の背中側から、ピールアウェイ・シース付き硬膜外針(以下、「硬膜外針32」と呼ぶ。)を患者の皮膚31に穿刺し、X線透視で硬膜外針先端が脊髄硬膜外腔内にあることを確認する。
この硬膜外針32が脊髄硬膜外腔33に挿入される位置は、一般的に、目標とする刺激部位から脊椎における3椎体以上低位が選ばれる。そして硬膜外針32を穿刺した後、ピールアウェイ・シース(以下「シース34」と呼ぶ)を残して、シース34内の内針を抜去する。
【0057】
次に、図5Bに示すように、医療用装置10のリード2に設けられたスタイレット挿入孔5aからスタイレット35を挿入し、スタイレット用ルーメン6内にスタイレット35を挿入する。これによりリード2が支持され、目標とする部位へのリード2の導入を補助できる。
【0058】
そして、スタイレット35が挿入されたリード2の先端部をシース34に通し、リード2を脊髄硬膜外腔33に挿入する。続いて医師は、X線透視下で、さらに軸方向に押すことにより、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を目標とする刺激部位の近くに誘導する。
【0059】
インターフェース部4が目標とする部位の近辺に到達すると、インターフェース部4の位置を少しずつ移動させながら、不図示の体外のコントローラを操作して神経刺激を行う。このとき、医療用装置10では、医師の操作に基づいて、所定の強度の電気的刺激信号が生成され、生成された電気的刺激信号がインターフェース部4に出力されることにより、神経刺激が行われる。医師は、患者の神経刺激に対する反応を聞きながら、最適なインターフェース部4の位置を決定する。
【0060】
インターフェース部4の位置が決定すると、図5及び図6に示すように、スタイレット用ルーメン6(図1を参照。)からスタイレット35を抜去する。そして、シース34と皮膚31との接点を中心に、メス36を用いて皮膚31を約3cm切開する。これにより切開口36aが形成される。その後、シース34を裂いて撤去する。また、不図示のピールアウェイ・シース付トンネラーを切開口36aから側腹部に向けて挿入し、その先端を医療器具1の目的とする留置部位まで進めた後、ピールアウェイ・シースを残してトンネラーを抜去する。
【0061】
そして、図7Aに示すように、切開口36aにあるピールアウェイ・シースによって形成された皮下トンネル入口37から、植え込み装置11を用いてリード保持部材3及び医療器具1を生体内の側腹部に向けて押し込む。この際に、回転部13と支持部14が回転しないように手で保持しながら切開口36aに支持部14が接触するまで押し込んだ後、支持部14が回転しないように手で保持して回転部13を回転させることが好ましい。支持部14を回転させることも可能であるが、この場合、ピールアウェイ・シースの中をリード2が回転することになるので、ピールアウェイ・シースの内壁とリード2が擦れて抵抗が大きくなる。一方、支持部14を固定して回転部13を回転させた場合には、ピールアウェイ・シースの中をリード2が回転することなくリード保持部材3からリード2が剥がれるので、抵抗が小さくなる。なお、リード2の表面に親水性高分子層が設けられている場合、押し込む際の抵抗を低減することができる。
【0062】
なお、背中は、例えば患者が椅子に座る時等に、外部と接触する機会が多いため、背中側に医療器具1やリード保持部材3を収納すると患者が違和感を覚えやすい。また、筋肉量も多いので、背筋が硬直することによっても患者に違和感を与えてしまう。このため、医療器具1やリード保持部材3は、外部との接触機会が少なく、また筋肉量の少ない側腹部に収納することが好ましい。医療器具1及びリード保持部材3を側腹部に押し込んだ後、植え込み装置11を皮下トンネル入口37から抜去する。そして、リード固定部14bのスリットに挟み込まれているリード2を取り外し、続いて、ピールアウェイ・シースを引き裂いて撤去する。
【0063】
次に、図7Bに示すように、リード2を全て皮下内に収める。そして、切開口36aに露出しているリード2を皮下の組織に縫いつけた(不図示)後、切開部を縫合する。これにより、医療用装置10は、生体内に固定された状態で留置される。
この時、本実施形態による医療用装置10では、リード2の余った部分は初めからリード保持部材3に巻回された状態となっているので、リード2の余分な部分を束ねたりする等の作業を行うことなく、容易に生体内に収納することが可能である。
【0064】
以上説明した第1の実施の形態に係る植え込み装置11によれば、支持部14に対する回転部13の植え込み方向の移動距離と、支持部14に対する回転部13の回転角度分のリード保持部材3に巻回されているリード2の長さが同じ長さとすることにより、剥離点2bとリード固定部14bとの間に張られるリード2の張力を保つことができる。また、回転部13によって回転されながら生体に植え込まれるリード保持部材3と支持部14は互いに逆方向に回転しており、リード2が回転部13に巻き付かない。このため、意図しないリード2の巻付きにより回転部13に凹凸ができ、生体によってリード2が傷つくことを防げる。
【0065】
[1−5.第1の実施の形態に係る植え込み装置の変形例]
次に、本発明の第1の実施形態に係る植え込み装置11の変形例を、図8を参照して説明する。図8に示す植え込み装置40,45と植え込み装置11の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置40,45の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0066】
図8は、植え込み装置40の全体を示す斜視図である。図8Aは、回転部41に形成された中空に押圧部42が押し込まれる例を示し、図8Bは、ハンドル46を押し込むことによって回転部13を回転させる例を示す。
【0067】
図8Aに示す植え込み装置40は、植え込み装置11と同様に、医療器具1を生体内に植え込むために用いられる。この植え込み装置40は、周方向に回転する回転部41と、回転部41の中空部分に向けて回転部41を押し込む押圧部42と、押圧部42に設けられるハンドル43を備える。また、植え込み装置40は、不図示の医療器具1、リード2、リード保持部材3に加えて、回転部41の回転を支持する支持部14(図2を参照。)を備える。
【0068】
回転部41の外周面には、回転する回転部41を植え込み方向に移動させるガイド41aが形成される。そして、回転部41は、中空とされる一端を開口端とし、他端を閉口端に形成してあり、この他端にリード保持部材3の先端部3bが接触する。このため、医師の処置により、回転部41の開口端から閉口端に向けて植え込み方向に回転部41を押し込む押圧部42が回転部41の中空に挿入されると、不図示の支持部14によって回転部41が回転しながら植え込み方向に移動する。このように、回転部41が周方向に回転するが、支持部14は回転しないため、上述した第1の実施の形態に係る植え込み装置11と同様に、リード2が回転部41に絡みつくことなく、医療器具1及びリード保持部材3を生体内に植え込むことができる。
【0069】
図8Bに示す植え込み装置45は、第1の実施の形態に係る回転部13を押し当てる凹部46a(第2の挿通部)が形成されるハンドル46を備える。凹部46aは、回転部13の端部に嵌合する。そして、ハンドル46は、回転部13を植え込み方向に押圧する押圧部として用いられる。上述したように、リード保持部材3の先端部3b(図1を参照。)には、十字の溝13bが切られており、回転部13の押圧力がリード保持部材3に確実に伝わるようにしてある。このため、回転部13がハンドル46の凹部46aに押し当てられ、ハンドル46が植え込み方向に回転部13を押圧することにより、回転部13が周方向に回転してリード保持部材3を生体内に植え込むことができる。
【0070】
[2.第2の実施形態(回転部が押し込まれると、支持部が回転する例)]
次に、本発明の第2の実施形態に係る植え込み装置50の構成例を、図9を参照して説明する。本実施形態に係る植え込み装置50の構成と、第1の実施形態に係る植え込み装置11との構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置50の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0071】
植え込み装置50は、回転部53を支持する支持部51(第1の支持部)と、支持部51の回転を植え込み方向に設けられた軸受け52aで支持する支持部52(第2の支持部)と、支持部51の縁と支持部52の軸受け52aの間に設けられ、摩擦を低減する摺動部材としてのベアリング52bとを備える。本実施の形態では、回転部53が押し込まれることにより、支持部51が回転するものとしている。支持部51にはリード2を保持固定する貫通孔によってリード固定部51bが形成されている。なお、支持部51は、公知の分割方法によって少なくとも二つの部分に分割可能である。そして、分割された一部におけるリード固定部51bに該当する箇所にリード2をはめ込んだ後、これら二つの部分を接着等することによって円状の支持部51を形成することができる。
【0072】
植え込み装置50は、医師が回転部53を植え込み方向に押し込むことにより、支持部51を回転させるものであり、リード保持部材3及び医療器具1は回転せずに生体内に植え込まれる。このとき、支持部51が回転するが、支持部52はベアリング52bにより回転していない。そして、回転部53が植え込み方向に移動するにつれて、支持部51が周方向に回転し、リード保持部材3が回転部53に追随して回転し、支持部51が回転する周方向と同じ周方向に、リード保持部材3が保持するリード2の剥離点2bが移動する。
【0073】
なお、第1の実施の形態に係る支持部14のように回転せず、さらには支持部51に厚みがあると、第1の実施の形態に係る回転部13のように直線の棒状に形成した部材でなければ挿通部14aを挿通できない。しかし、医療器具1を生体部分へ植え込んでいく経路が曲面となる場合があり、回転部53を植え込み方向に折り曲げ可能とした上で、挿通部51aに回転部53を挿通したいという要望があった。このため、回転部53は回転させず支持部51を回転可能とし、さらに支持部51は、第1の実施の形態に係る支持部14より植え込み方向の厚みを薄くしてある。支持部51の植え込み方向の厚みを薄くすることにより、回転部53が挿通される支持部51をスムーズに回転させ、回転部53の回転力をリード保持部材3に直接伝えず、植え込み方向への押圧力だけを伝える構成とすることで、曲面部分を有する生体内に確実に医療器具1を植え込むことを可能としている。
【0074】
以上説明した第2の実施の形態に係る植え込み装置50は、回転部53を回転させずに生体内に押し込むことで、支持部52に支持される支持部51が回転する。このとき、リード固定部51bが回転することにより、剥離点2bが周方向に回転し、リード2の張力を保ったままリード保持部材3からリード2を解くことができる。また、支持部51の厚みを薄くしたことにより、回転部53が曲がっていても、生体内の任意の位置にリード保持部材3及び医療器具1を生体に植え込みやすくなる。
【0075】
[3.第3の実施形態(回転部が押し込まれて回転する第2の回転部によって支持部が回転する例)]
次に、本発明の第3の実施形態に係る植え込み装置60の構成例を、図10を参照して説明する。本実施形態に係る植え込み装置60の構成と、第1の実施形態に係る植え込み装置11との構成の共通部分については同一符号を付して、説明を省略する。また、植え込み装置60の植え込み手順は、図1に示した植え込み装置11の植え込み手順と同じであるので、植え込み手順の説明も省略する。
【0076】
図10は、植え込み装置60の全体を示す斜視図である。図10Aは、挿通部64aにラック形状とされる回転部65が挿通されていない例を示し、図10Bは、押し込み方向から視認した場合における支持部64の構成例を示し、図10Cは、挿通部64aに回転部65が挿通された例を示す。また、図10Dは、植え込み装置60の変形例を示す。
【0077】
植え込み装置60は、片面に櫛歯が設けられたラック形状とされるガイド66により、歯車61を時計回りに回転させる回転部65と、回転部65の櫛歯に合致する形状とされた歯車61と、歯車61の櫛歯に合致する傘歯車形状とされる回転部62とを備える。なお、ガイド66、歯車61および回転部62の歯車比は、リード保持部材3の周長さ分だけガイド66が移動すると支持部64が1回転するように形成されている。
【0078】
ここで、支持部64の中心軸から支持部64及び回転部62の接する位置までの長さを”R”とし、上述したようにリード保持部材3の中心軸からリード保持部材3に巻き付けられるリード2の中心までの長さを”r”とする(図1を参照。)。リード保持部材3が1回転するときに解かれるリード2の長さ”2πr”を、回転部65が植え込み方向に進む距離とした場合、支持部64は、1回転する必要がある。このことから、ガイド66と溝64cのギア比は、2πr:2πRより、r:Rとして求められる。このため、”r”と”R”の比がガイド66のピッチ比となっている。
【0079】
回転部62の縁には櫛歯が形成されており、支持部64の溝64cに形成される円状の櫛歯に合致している。また、支持部64は、リード2の一部を支持するリード固定部64bと、上述した溝64cと、回転部65の周方向に支持部64をなめらかに回転させる摺動部材としてのベアリング64dと、ベアリング64dを格納する格納部64eとを備える。支持部64は、リード2の一部を固定するリード固定部64bによって、リード2を支持する。支持部64の直径は30〜50mm程度とされ、回転部65の直径は10mm程度とされる。
【0080】
図10A〜図10Cでは、植え込み方向に移動する回転部65のガイド66に従って回転し、支持部64を回転部65の周方向に回転させる第2の回転部として、歯車61と回転部62を用いた例を示している。回転部65は、折り曲げ可能としてあるため、生体内に医療器具1を植え込む際に、生体内の曲面に合わせて折り曲げながらリード保持部材3と医療器具1を押し込むことができる。
【0081】
ここで、回転部65が矢印に示す押し込み方向に押し込まれると、歯車61は時計回りに回転し、回転部62は上面から見て反時計回りに回転する。そして、図10Bに示すように支持部64は押込み方向に対して反時計回りに回転する。このため、回転部65の押し込みを行うだけで支持部64によって支持されるリード2は反時計回りに回転する。このとき、リード保持部材3は回転せずに、リード保持部材3に巻き付けられたリード2の剥離点2bが反時計回りに回転してリード2が張力を保ったまま解かれる。
【0082】
なお、図10Dに示す植え込み装置70は、植え込み装置60から歯車61を取り除いた構成としてあり、回転部62だけを上述した第2の回転部として用いた例を示している。このため、回転部65が植え込み方向に移動すると回転する回転部62の縁部により、支持部64を回転部65の周方向に回転させることができる。
そして、ガイド66と嵌合する回転部62は、図10AおよびCでは紙面手前側の歯とガイド66が嵌合しているが、図10Dでは紙面奥側の歯とガイド66が嵌合している。
【0083】
また、上述した第2及び第3の実施の形態に示した摺動部材としての軸受けには、水や油等の流体軸受けや、磁力を使った磁気軸受けを用いてもよい。また、空気を用いた空気軸受け等の各種の軸受けを用いることも可能である。
【0084】
[4.医療用装置の変形例]
図11は、第1〜第3の実施の形態に係る医療用装置の変形例を示す。図11Aは、筒状のリード保持部材を用いる例を示し、図11Bは、扁平形状をした芯部材によりリード保持部材を構成する例を示し、図11Cは、インターフェース部として外部機器からの信号を受信するコイルを設ける例を示す。なお、第1の実施の形態(図1参照)に係る医療用装置10と共通する部位については同一符号を付し、重複した説明を避ける。また、各変形例の回路構成も、第1の実施の形態(図4参照)において示したものと同様であってよい。
【0085】
図11Aに示す医療用装置85のリード保持部材86は、軸方向に筒孔が設けられた筒状部材によって構成されている。リード保持部材86の端部は医療器具1に接続され、医療器具1とリード保持部材86が一体とされている。なお、医療器具1とリード保持部材86を別体に構成してもよい。
【0086】
リード2は、リード保持部材86の内壁面に沿って巻回される。リード保持部材86の内壁面には第1の実施の形態に示したものと同様の接着層が配設されており、この接着層によってリード2がリード保持部材86の内壁面に固定される。
【0087】
リード保持部材86のインターフェース部4側の端部には、内壁面から突出するフランジ部87が設けられている。このフランジ部87には、切欠き部88が設けられており、リード2は、この切欠き部88を通してリード保持部材86の内部から引き出される。
これにより、リード保持部材86に対するリード2の引き出し位置が固定され、リード2の長さを伸ばす際の扱いを容易にできる。
【0088】
このように、医療用装置85においても、リード2はリード保持部材86に巻回された状態で予め固定されている。また、リード2は接着層によってリード保持部材86に固定されている。このため、リード2を引くことにより、リード2をリード保持部材86から剥がし、リード2の長さを随時調整しながら医療用装置の植え込みを行うことが可能である。また、リード2の長さの余った部分は、リード保持部材86に巻回されたままの状態となるので、リード2の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。
【0089】
図11Bに示す医療用装置90は、医療器具1と、医療器具1に接続されたリード2と、リード2が巻きつけられるリード保持部材91と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。リード保持部材91は、例えば軸方向に扁平な円柱形状をした芯部材92と、芯部材92の軸方向の両端にそれぞれ設けられた第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bと、芯部材92の内部に配設された軸部94を備える。
【0090】
芯部材92は、第1の鍔部93a及び第2の鍔部93b側に向かって径が大きくなり、軸方向中心部において径が最も小さくなる円柱形状をしている。芯部材92の側面は曲面に形成されており、この側面にリード2が巻回されている。
また、芯部材92の側面には、第1の実施の形態において示したものと同様の接着層が設けられ、この接着層によりリード2が芯部材92の側面に固定される。
【0091】
芯部材92の軸方向両端には、第1の鍔部93aと第2の鍔部93bがそれぞれ配設されている。第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bにより、芯部材92の側面上においてリード2が巻回される領域が規定される。
【0092】
また、芯部材92には軸方向に延びる空隙が設けられており、この空隙内に医療器具1が収容されている。例えば医療器具1と芯部材92が固定されている。また、医療器具1には、軸方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔の内部に軸部94が収容されている。軸部94は、その両端が第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bに固定される。すなわち、芯部材92及び医療器具1は、第1の鍔部93a及び第2の鍔部93b及び軸部94に対して、軸部94を中心に回動自在に固定されている。
【0093】
したがって、医療用装置90では、例えば第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bを片方の手で掴み、もう片方の手でリードを引っ張ることにより芯部材92及び医療器具1が回転する。そしてこの回転に伴ってリード2が芯部材92の側面から剥がされることにより、リード2の長さを調整することができる。
【0094】
このように、医療用装置90においても、リード2はリード保持部材91に巻回された状態で予め固定されている。また、リード2は接着層によってリード保持部材91に固定されている。このため、リード2の長さを随時調整しながら医療用装置90の植え込みを行うことが可能である。
また、リード2の長さの余った部分は、リード保持部材91に巻回されたままの状態となっているので、リード2の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。
【0095】
また、芯部材92を扁平な薄型の形状に形成している。このため、例えば皮膚表面が平面に近く、大きな表面積を有する生体の部位に植え込むことにより、患者が感じる違和感を低減することができる。なお、芯部材92と軸部94を固定し、芯部材92と軸部94が第1の鍔部93a及び第2の鍔部93bに対して回動する構成としてもよいし、軸部94を設けずに、芯部材92が回転しない構成にしてもよい。また、軸部94と医療器具1を一体化してもよい。
【0096】
なお、上述した各実施の形態に係る医療用装置がリードに設けるインターフェース部は、例えば生体に信号を送信するものや、生体からの信号を受信するもの、また外部機器に対して信号を受信または送信するもの、またはこれらのいずれか複数を行うもの等を用いることができる。ここでは、外部機器からの信号を受信するインターフェース部を設ける場合について例示する。
【0097】
図11Cに示す医療用装置95は、医療器具1と、医療器具1に接続されたリード2と、リード2が巻回されるリード保持部材3と、リード2の先端に設けられたインターフェース部4を備える。
また、医療器具1に接続された第2のリード96と、第2のリード96が巻回される第2のリード保持部材99と、第2のリード96の先端に設けられた第2のインターフェース部97を備える。
【0098】
また、医療器具1において、リード保持部材3が設けられた面とは反対側の面には、第2のリード保持部材99が設けられている。図11Cには、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99が医療器具1と一体とした図が記載されているが、それぞれを医療器具1とは別体に設けてもよい。
【0099】
また、この第2のリード保持部材99には、先端部に第2のインターフェース部97が設けられた第2のリード96が巻回される。第2のリード96及び第2のリード保持部材99の構成は、リード2及びリード保持部材3と同様である。ただし、第2のリード96の側面にはスタイレット挿入部98が設けられており、スタイレット挿入孔98aよりスタイレットが挿入される。また、医療用装置95は、第1の実施の形態(図4参照)において示した神経刺激回路8と同様の回路を備える。
【0100】
第2のインターフェース部97には、対外のコントローラ等から発信される充電用の電磁波を受信するコイル部22(図4参照)が配設される。このように、コイル部22を第2のリード96に配設することによって、コイル部22を医療器具1から離れた別の位置に植え込むことができる。
【0101】
コントローラ等の外部機器から受信する電磁波によって充電池21(図4参照)の充電を行う場合には、十分な電磁波パワーが得られる距離までコントローラをコイル部22に近接させる必要がある。しかし、コイル部22が医療器具1の内部に内蔵されていると、例えば医療器具1が背中付近に植え込まれた場合には、患者が自分でコントローラをコイル部22に近接させるのが困難な場合がある。また、患者が無理なく手を動かすことのできる範囲は、患者の容態や年齢等によって異なる。
【0102】
これに対して、第2のリード96に設ける第2のインターフェース部97として、コイル部22を配設している。このため、コイル部22を医療器具1から離して配置することができる。したがって、患者が無理な姿勢をすることなく、コントローラを近接させることが可能な箇所を選択し、その位置に第2のインターフェース部97を植え込むことで、患者本人が容易に充電作業を行うことができる。
【0103】
また、リード2及び第2のリード96は、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99にそれぞれ巻回されている。このため、リード2及び第2のリード96の長さを随時調整しながら医療用装置95の植え込みを行うことが可能である。
また、リード2及び第2のリード96の長さの余った部分は、リード保持部材3及び第2のリード保持部材99に巻回されたままの状態となるので、リード2及び第2のリード96の全長を生体内に収納する作業を簡易化できる。その他の効果についても、第1の実施の形態と同様である。
【0104】
なお、医療用装置95の回路(例えば図4参照)を構成するコイル部22以外の各部位は、医療器具1及びリード保持部材3及び第2のリード保持部材99のいずれに内蔵させてもよく、適宜選択してよい。
【0105】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
1…医療器具、2…リード、2a…非巻回部、2b…剥離点、3…リード保持部材、3a…芯部材、3b…先端部、4…インターフェース部、5…スタイレット挿入部、5a…スタイレット挿入孔、6…スタイレット用ルーメン、7…刺激電極、8…神経刺激回路、10…医療用装置、11…植え込み装置、12…ハンドル、13…回転部、13b…溝、14…支持部、14a…挿通部、14b…リード固定部、21…充電池、22…コイル部、23…充電部、24…通信部、25…制御部、26…刺激パラメータ設定部、27…発振部、28…電極構成設定部、29…スイッチ部、40,50,60,85,90,95…植え込み装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に植え込まれるリードと、
前記リードの一端が接続され、前記生体内に植え込まれる医療器具と、
前記医療器具に接続され、前記リードが巻回された状態で前記リードを保持するリード保持部材と、
外周面にガイドを有し、前記リード保持部材を生体内に植え込む回転部と、
前記リードの一部を固定するリード固定部と、前記回転部のガイドと嵌合する挿通部とを有し、前記回転部が挿通された状態で前記回転部を支持する支持部と、を備える、
医療器具植え込み装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記支持部に対して軸方向において相対的に回転し、前記回転部が回転した角度に応じたリード保持部材に巻き回しされているリード長さ分だけ前記医療器具の植え込み方向に移動することによって前記リード保持部材及び前記医療器具を生体内に植え込み、前記リード保持部材から前記リードが剥がれる剥離点が前記植え込み方向に移動する
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項3】
前記ガイドのピッチは、前記リード保持部材の周長さに等しくしてある
請求項1又は2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項4】
前記リード保持部材の周長さは、前記リード保持部材の半径に、前記リード保持部材に巻回される最外周の前記リードの半径を加えて求められる
請求項1〜3のいずれかに記載の医療器具植え込み装置。
【請求項5】
前記支持部を前記医療器具の植え込み方向に設けられた軸受けで支持する第2の支持部を備え、
前記回転部が前記植え込み方向に移動することによって、前記支持部が前記回転部の周方向に回転し、前記リード保持部材が前記回転部に追随して回転し、前記リード保持部材から前記リードが剥がれる剥離点が移動する
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項6】
さらに、前記植え込み方向に移動する前記回転部の前記ガイドに従って回転し、前記支持部を前記回転部の周方向に回転させる第2の回転部を備える
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項7】
前記支持部の中心軸から前記支持部及び前記第2の回転部の接する位置までの長さと、前記リード保持部材の中心軸から前記リード保持部材に巻き付けられる前記リードの中心までの長さの比がガイドのピッチ比となっている
請求項6に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項8】
中空とされる前記回転部の一端が開口端であり、他端が閉口端であって、前記他端に前記リード保持部材が接触する場合に、
前記開口端から前記閉口端に向けて前記植え込み方向に前記回転部を押し込む押圧部が前記回転部の中空に挿入されることにより、前記回転部が前記植え込み方向に移動し、前記支持部が周方向に回転する
請求項2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項9】
さらに、前記ガイドに嵌合される第2の挿通部を有する押圧部を備え、
回転部が前記押圧部に挿入され、前記押圧部が前記植え込み方向に前記回転部を押圧することにより、前記回転部が前記回転部の周方向に回転して前記リード保持部材を生体内に植え込む
請求項2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項10】
前記リードは、前記リード保持部材の表面に形成される接着層により固定され、
前記リード固定部及び前記リードの前記剥離点の相対的な位置を変えないまま、前記リード保持部材から前記リードが剥離する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項11】
前記リードは、一端に生体内の神経及び/又は筋肉を刺激する刺激電極を有し、
前記医療器具は、前記刺激電極に接続され、前記刺激電極に刺激信号を印加する電極制御回路を有する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項1】
生体内に植え込まれるリードと、
前記リードの一端が接続され、前記生体内に植え込まれる医療器具と、
前記医療器具に接続され、前記リードが巻回された状態で前記リードを保持するリード保持部材と、
外周面にガイドを有し、前記リード保持部材を生体内に植え込む回転部と、
前記リードの一部を固定するリード固定部と、前記回転部のガイドと嵌合する挿通部とを有し、前記回転部が挿通された状態で前記回転部を支持する支持部と、を備える、
医療器具植え込み装置。
【請求項2】
前記回転部は、前記支持部に対して軸方向において相対的に回転し、前記回転部が回転した角度に応じたリード保持部材に巻き回しされているリード長さ分だけ前記医療器具の植え込み方向に移動することによって前記リード保持部材及び前記医療器具を生体内に植え込み、前記リード保持部材から前記リードが剥がれる剥離点が前記植え込み方向に移動する
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項3】
前記ガイドのピッチは、前記リード保持部材の周長さに等しくしてある
請求項1又は2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項4】
前記リード保持部材の周長さは、前記リード保持部材の半径に、前記リード保持部材に巻回される最外周の前記リードの半径を加えて求められる
請求項1〜3のいずれかに記載の医療器具植え込み装置。
【請求項5】
前記支持部を前記医療器具の植え込み方向に設けられた軸受けで支持する第2の支持部を備え、
前記回転部が前記植え込み方向に移動することによって、前記支持部が前記回転部の周方向に回転し、前記リード保持部材が前記回転部に追随して回転し、前記リード保持部材から前記リードが剥がれる剥離点が移動する
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項6】
さらに、前記植え込み方向に移動する前記回転部の前記ガイドに従って回転し、前記支持部を前記回転部の周方向に回転させる第2の回転部を備える
請求項1に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項7】
前記支持部の中心軸から前記支持部及び前記第2の回転部の接する位置までの長さと、前記リード保持部材の中心軸から前記リード保持部材に巻き付けられる前記リードの中心までの長さの比がガイドのピッチ比となっている
請求項6に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項8】
中空とされる前記回転部の一端が開口端であり、他端が閉口端であって、前記他端に前記リード保持部材が接触する場合に、
前記開口端から前記閉口端に向けて前記植え込み方向に前記回転部を押し込む押圧部が前記回転部の中空に挿入されることにより、前記回転部が前記植え込み方向に移動し、前記支持部が周方向に回転する
請求項2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項9】
さらに、前記ガイドに嵌合される第2の挿通部を有する押圧部を備え、
回転部が前記押圧部に挿入され、前記押圧部が前記植え込み方向に前記回転部を押圧することにより、前記回転部が前記回転部の周方向に回転して前記リード保持部材を生体内に植え込む
請求項2に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項10】
前記リードは、前記リード保持部材の表面に形成される接着層により固定され、
前記リード固定部及び前記リードの前記剥離点の相対的な位置を変えないまま、前記リード保持部材から前記リードが剥離する
請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療器具植え込み装置。
【請求項11】
前記リードは、一端に生体内の神経及び/又は筋肉を刺激する刺激電極を有し、
前記医療器具は、前記刺激電極に接続され、前記刺激電極に刺激信号を印加する電極制御回路を有する
請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療器具植え込み装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−70880(P2013−70880A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213225(P2011−213225)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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