説明

医療器具

【課題】生体内組織の第1内管の先端部が挿入された部位の内圧を上昇させずに、容易かつ確実に、第1内管を生体内組織膜に保持することができる医療器具を提供すること。
【解決手段】医療器具1は、外管カバー7と、外管カバー7の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された外管6と、外管6の内腔に挿入された第2内管5と、第2内管5の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された第1内管4と、第1内管4の内腔に、着脱自在に挿入され、先端に鋭利な針先を有する穿刺針3と、外管6の先端部に設置され、複数の線状体91で構成された第1拡張部材9と、ループ状をなす線状体101で構成された第2拡張部材10と、第1内管4および外管6を移動操作する操作部2とを有している。各線状体91の先端部は、第1内管4の先端部に固定され、基端部は、第2内管5の先端部に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は、子宮内膜やそれに類似した組織が子宮内腔や子宮体部以外の骨盤内で増殖する疾患であり、女性の10人に1人がかかる。子宮内膜症による月経困難症や過多月経などの症状は、QOLを著しく低下させる。
【0003】
この子宮内膜症のうち、卵巣に子宮内膜症の病変が発生する卵巣チョコレート嚢胞は、多くみられる疾患であり、その卵巣チョコレート嚢胞(嚢胞)等の低侵襲な治療として、アルコール固定術がある。アルコール固定術では、腹腔鏡下または膣式超音波下において中空の穿刺針を卵巣チョコレート嚢胞に穿刺し、穿刺針を介して、その嚢胞内の内容物を吸引し、洗浄した後に、純度の高いエチルアルコール等のアルコールを注入し、10〜15分程度、そのアルコールを留置する。これにより、嚢胞内面にある子宮内膜細胞がアルコールによって固定される。そして、最後に、穿刺針を介して、アルコールを除去し、生理食塩水で洗浄して終了する。これにより、嚢胞を形成していた部分は退縮し、固定された子宮内膜細胞は増殖することがない。特に、経膣的に穿刺針を穿刺して行うアルコール固定術では、低侵襲であり優れている。
【0004】
しかしながら、前記穿刺針を用いたアルコール固定術では、医療従事者は、嚢胞内にアルコールを注入した後、10〜15分もの間、穿刺針が嚢胞から抜けないようにその穿刺針を把持している必要があり、非常に苦痛である。また、穿刺針が嚢胞から抜けてしまう虞もあり、穿刺針が嚢胞から抜けてしまうと、アルコールが嚢胞の穿刺部から腹腔内へ漏れ、これにより腹腔内で癒着が生じてしまう等の問題がある。
【0005】
そこで、穿刺針が嚢胞から抜けないようにした医療器具として、穿刺針に1対のバルーンを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。この医療器具では、嚢胞内面と卵巣の外面との間の壁部で構成された生体内組織膜を1対のバルーンで挟み、これにより穿刺針を卵巣に保持するよう構成されている。
【0006】
しかしながら、前記従来の医療器具では、嚢胞内でのバルーンの拡張により、嚢胞の内圧が上昇し、嚢胞が破裂する虞がある。また、拡張したバルーンが嚢胞内面と接触するので、そのバルーンが接触している部位にはアルコールが触れず、その部位の子宮内膜細胞をアルコールによって固定することができない虞がある。また、バルーンを拡張、収縮する操作も手間がかかるという欠点がある。特に、経膣的に穿刺して用いる満足できる医療器具はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−110905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生体内組織の第1内管の先端部が挿入された部位の内圧を上昇させずに、容易かつ確実に、第1内管を生体内組織膜に保持することができる医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 外管カバーと、
前記外管カバーの内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された外管と、
前記外管の内腔に挿入された第2内管と、
前記第2内管の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された第1内管と、
先端部が前記第1内管の先端部に接続され、基端部が前記第2内管の先端部に接続された複数の第1の線状体を有し、前記第2内管に対する前記第1内管の移動により、前記第1の線状体の先端部と基端部との間の途中の部位が前記第1内管の外周面に接近した第1の状態と、前記途中の部位が前記第1内管の外周面から離間した第2の状態とを採り得る第1拡張部材と、
前記外管の先端部に設置され、前記外管カバーに対する前記外管の移動により、前記外管カバーの内腔に収納された収納状態と、前記外管カバーの先端から突出し、前記外管の軸に対して垂直な方向に拡張した拡張状態とを採り得、前記第1拡張部材よりも基端側に配置された第2拡張部材とを備えることを特徴とする医療器具。
【0010】
(2) 前記第2拡張部材は、ループ状をなす第2の線状体で構成されている上記(1)に記載の医療器具。
【0011】
(3) 前記第1内管と前記第2内管とがその軸回りに相対的に回動自在に設置されており、
前記第1内管と前記第2内管とがその軸回りに相対的に回動することにより、前記第1拡張部材は、前記第2の状態のとき、網状をなすよう構成されている上記(1)または(2)に記載の医療器具。
【0012】
(4) 前記第1内管の先端部に、該第1内管の内腔に連通する側孔を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療器具。
【0013】
(5) 前記側孔は、前記第1の線状体の先端部が固定された前記第1内管の第1の固定部と、前記第1の線状体の基端部が固定された前記第2内管の第2の固定部との間で、かつ、前記第1拡張部材が前記第2の状態のとき、前記第2内管の先端よりも先端側に位置するように配置されている上記(4)に記載の医療器具。
【0014】
(6) 当該医療器具の基端側に設けられ、前記外管および前記第1内管を移動操作する移動操作手段を有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療器具。
【0015】
(7) 前記移動操作手段は、操作部本体と、
前記操作部本体に対し、前記外管の軸方向に移動可能に設置され、前記外管が連結された外管操作部材と、
前記操作部本体に対し、前記第1内管の軸方向に移動可能に設置され、前記第1内管が連結された第1内管操作部材とを有する上記(6)に記載の医療器具。
【0016】
(8) 前記移動操作手段は、前記第1内管操作部材を基端方向に付勢する第1の付勢手段を有し、該第1の付勢手段の付勢力により、前記第1内管操作部材が基端方向に移動することにより、前記第1拡張部材が前記第2の状態になるよう構成されている上記(7)に記載の医療器具。
【0017】
(9) 前記移動操作手段は、前記外管操作部材を先端方向に付勢する第2の付勢手段を有し、該第2の付勢手段の付勢力により、前記外管操作部材が先端方向に移動することにより、前記第2拡張部材が前記拡張状態になるよう構成されている上記(7)または(8)に記載の医療器具。
【0018】
(10) 前記第1内管の内腔に、着脱自在に挿入され、先端に鋭利な針先を有する穿刺針を備える上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の医療器具。
【0019】
(11) 前記第1内管は、その先端に鋭利な針先を有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の医療器具。
【0020】
(12) 当該医療器具は、経膣的に患部に挿入されるものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の医療器具。
【0021】
(13) 前記第1拡張部材は、前記第2の状態で生体内組織膜の一方の面に当接し、前記第2拡張部材は、前記拡張状態で前記生体内組織膜の他方の面に当接し、前記第1拡張部材とで前記生体内組織膜を挟むよう構成されている上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の医療器具。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1拡張部材が複数の第1の線状体で構成されているので、生体内組織の第1内管の先端部が挿入された部位の内圧を上昇させずに、容易かつ確実に、第1内管を生体内組織膜に保持することができる。
【0023】
例えば、本発明を卵巣チョコレート嚢胞を治療するアルコール固定術において用いた場合は、嚢胞の内圧を上昇させずに、容易かつ確実に、第1内管を卵巣に保持することができる。また、嚢胞内にアルコールを注入した際、その嚢胞内面全体に、確実にアルコールを接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の医療器具の第1実施形態を示す側面図および平面図である。
【図2】図1に示す医療器具の断面図である。
【図3】図1に示す医療器具の第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図および斜視図である。
【図4】図1に示す医療器具の断面図である。
【図5】図1に示す医療器具の断面図である。
【図6】図1に示す医療器具の断面図である。
【図7】本発明の医療器具の第2実施形態における第1内管および第2内管の先端部を示す断面図である。
【図8】本発明の医療器具の第3実施形態における第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図である。
【図9】本発明の医療器具の第4実施形態における第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図である。
【図10】図9に示す第1内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図である。
【図11】本発明の医療器具の第5実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の医療器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療器具の第1実施形態を示す図であって、図1(a)は、側面図、図1(b)は、平面図である。図2は、図1に示す医療器具の断面図である。図3は、図1に示す医療器具の第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す図であって、図3(a)は、第1拡張部材の縮小状態を示す側面図、図3(b)は、第1拡張部材の拡張状態を示す斜視図である。図4、図5および図6は、図1に示す医療器具の断面図である。
【0026】
なお、以下では、図1、図2、図3(a)、図4〜図11中の左側を「先端」、右側を「基端(後端)」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0027】
図1〜図6に示す医療器具1は、経膣的に生体内の患部に挿入して使用する装置である。本実施形態では、代表的に、医療器具1を経膣的に卵巣チョコレート嚢胞(以下、単に「嚢胞」とも言う)に穿刺してアルコール固定術を行う際に用いる場合について説明する。なお、医療器具1は、経膣とは異なる方法で生体内の患部に挿入して使用する装置にも適用できることは、言うまでもない。
【0028】
図1〜図3に示すように、医療器具1は、外管カバー7と、外管カバー7の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された外管6と、外管6の内腔に挿入された第2内管5と、第2内管5の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された第1内管4と、第1内管4の内腔に、着脱自在に挿入され、先端に鋭利な針先を有する穿刺針3と、第1拡張部材9と、第2拡張部材10と、第1内管4および外管6を移動操作する操作部(移動操作手段)2とを有している。なお、本実施形態では、外管カバー7、外管6、第2内管5、第1内管4および穿刺針3は、それぞれ、直線状をなしているが、これに限定されないことは、言うまでもない。また、外管カバー7、外管6、第2内管5、第1内管4および穿刺針3の軸は、すべて同一であるので、以下では、外管カバー7、外管6、第2内管5、第1内管4および穿刺針3の軸を、単に「軸」とも言う。
【0029】
以下、医療器具1の各構成要素について順次説明する。
穿刺針3は、先端に鋭利な針先を有するとともに、その先端部に刃面が形成されている。また、穿刺針3の基端部には、ハブ11が設けられている。このハブ11は、第1内管4の基端部に設けられた後述するハブ12に、着脱自在に接続されている。これにより、穿刺針3と第1内管4とは、一体的に軸方向に移動する。
【0030】
また、穿刺針3の針先は、図1および図2に示す初期状態において、第1内管4、第2内管5、外管6および外管カバー7のいずれの先端よりも先端側に位置している。これにより、卵巣等の生体内組織を確実に穿刺することができる。なお、医療器具1は、初期状態で保管される。
【0031】
また、穿刺針3は、第1内管4に対して、その軸方向に移動可能に設置されている。これにより、ハブ11をハブ12から取り外し、穿刺針3を第1内管4に対して基端方向に移動させることにより、穿刺針3を第1内管4から抜去することができる。
【0032】
この穿刺針3は、中空針でもよく、また、中実針でもよいが、図示の構成では、中実針である。また、穿刺針3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料等が挙げられる。
【0033】
第1内管4の内腔は、例えば、液体等の流動体を移送するルーメン、すなわち、卵巣の嚢胞内に液体を注入する際や、嚢胞内からその内容物や液体を吸引する際の液体の流路として機能する。すなわち、第1内管4の先端開口から液体の注入や吸引を行う。
【0034】
この第1内管4の基端部には、ハブ12が設けられている。このハブ12には、穿刺針3を第1内管4から抜去した後、図示しない送液回路等のコネクタが、着脱自在に接続される。
【0035】
また、第1内管4の先端は、医療器具1の初期状態において、穿刺針3の針先よりも基端側に位置している。
【0036】
また、第1内管4と第2内管5とは、その軸回りに相対的に回動自在に設置されている。本実施形態では、第2内管5が、操作部2の後述するケーシング8に対して軸回りに回動可能に設置され、第1内管4は、ケーシング8に対して軸回りに回動不能に設置されている。すなわち、第2内管5の基端部には、円板状をなす第2内管支持部14が設けられており、この第2内管支持部14は、ケーシング8に対して、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能に設置されている。また、第2内管5の先端は、医療器具1の初期状態において、第1内管4の先端よりも基端側に位置している。
【0037】
また、外管6の先端は、医療器具1の初期状態において、第2内管5の先端よりも基端側に位置している。
【0038】
また、外管カバー7の先端は、医療器具1の初期状態において、外管6の先端よりも基端側に位置している。
【0039】
前記穿刺針3、第1内管4、第2内管5、外管6および外管カバー7のうちの最も外径が大きい部材ある外管カバー7の外径は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、0.5〜5.0mm程度であることが好ましく、0.8〜2.0mm程度であることがより好ましい。
【0040】
また、前記第1内管4、第2内管5、外管6および外管カバー7の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、硬質の各種樹脂材料、各種金属材料等が挙げられる。
【0041】
第1拡張部材9は、複数の線状体(第1の線状体)91で構成されている。各線状体91は、それぞれ、適度な剛性および弾性を有している。また、各線状体91は、それぞれ、先端部が第1内管4の先端部の外周面に接続され、基端部が第2内管5の先端部の外周面に接続されている。本実施形態では、各線状体91の先端部および基端部は、それぞれ、例えば、融着、接着剤による接着等により、第1内管4の先端部の外周面および第2内管5の先端部の外周面に固定されている。これにより、第1拡張部材9は、第2内管5に対する第1内管4の移動により、各線状体91の先端部と基端部との間の途中の部位が第1内管4の外周面に接近した第1の状態と、前記途中の部位が第1内管4の外周面から離間した第2の状態とを採り得る。
【0042】
また、本実施形態では、第1の状態では、各線状体91は、軸と平行な直線状をなしており、第1拡張部材9は、第1内管4の軸方向に伸び、第1内管4の軸に対して垂直な方向に縮小した形状をなしている。以下、第1の状態を縮小状態とも言う。また、本実施形態では、第2の状態では、各線状体91は、外側に向って凸となるように湾曲した形状をなしており、第1拡張部材9は、第1内管4の軸方向に縮み、第1内管4の軸に対して垂直な方向に拡張した形状をなしている。以下、第2の状態を拡張状態とも言う。また、第1拡張部材9は、拡張状態において網目状をなしている。
【0043】
第1拡張部材9が拡張状態において網目状になる理由は、第2内管支持部14が操作部2のケーシング8に対して軸回りに回動自在に設置されているので、第1内管4を第2内管5に対して基端方向に移動させると、各線状体91の弾性力により、第2内管5が第1内管4に対して軸回りに回動し、これにより、各線状体91の先端部と基端部とが第1内管4および第2内管5の周方向にずれるためである。
【0044】
医療器具1の初期状態においては、第1拡張部材9は、縮小状態となっている。これにより、第1拡張部材9に形状癖が付くことを防止することができる。そして、第1内管4を第2内管5に対して基端方向に移動させると、各線状体91の先端部と基端部との間の軸方向の距離が小さくなり、第1拡張部材9は、拡張状態となる。また、拡張状態から、第1内管4を第2内管5に対して先端方向に移動させると、各線状体91の先端部と基端部との間の軸方向の距離が大きくなり、第1拡張部材9は、縮小状態となる。このようにして、第1拡張部材9を容易かつ確実に、縮小状態と拡張状態とにすることができる。
【0045】
なお、第2内管支持部14は、ケーシング8に対して固定的に設置されていてもよい。この場合は、第1拡張部材9は、拡張状態において網目状にならない。
【0046】
また、線状体91の本数は、複数であれば特に限定されないが、1〜100本程度であることが好ましく、20〜60本程度であることがより好ましい。
【0047】
また、線状体91の長さは、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、5〜40mm程度であることが好ましく、7〜15mm程度であることがより好ましい。
【0048】
また、線状体91の外径は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、0.05〜0.5mm程度であることが好ましく、0.05〜0.2mm程度であることがより好ましい。
【0049】
また、第1拡張部材9が拡張状態のとき、線状体91の頂部92の第1内管4の外周面からの離間距離は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、1〜20mm程度であることが好ましく、3〜10mm程度であることがより好ましい。
【0050】
また、線状体91の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金、Ni−Al系合金、Cu−Zn系合金等の超弾性合金等の各種金属材料や、比較的高剛性の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、第1拡張部材9は、超音波で検出でき、医療器具1の先端部の位置を示す超音波マーカーを兼ねることが好ましい。これにより、例えば、経膣超音波プローブを用い、得られた画像を見て、医療器具1の先端部の位置を確認しつつ穿刺操作等の各操作を行うことができる。なお、第1拡張部材9の各線状体91を金属材料で構成することにより、その線状体91が超音波マーカーとして機能するが、例えば、各線状体91の表面に複数の微小な凹凸を形成することにより、超音波でより確実に検出できるようになる。
【0052】
ここで、前記第1内管4の先端部には、その内腔に連通する2つの側孔41が形成されている。各側孔41は、軸方向から見たとき、軸を介して互いに対向するように配置されている。また、各側孔41は、第1の線状体91の先端部が固定された第1内管4の第1の固定部42と、第1の線状体91の基端部が固定された第2内管5の第2の固定部51との間で、かつ、第1拡張部材9が拡張状態のとき、第2内管5の先端よりも先端側に位置するように配置されている。これにより、第1内管4の先端開口が嚢胞内面等で塞がれてしまったときでも、その側孔41から液体の注入や吸引を行うことができる。また、側孔41は、第1拡張部材9の内側に位置するので、側孔41が嚢胞内面等で塞がれてしまうことを防止することができる。
【0053】
なお、側孔41の数は、図示の構成では、2つであるが、これに限らず、1つでもよく、また、3つ以上でもよい。但し、側孔41の数は、複数が好ましい。
【0054】
第2拡張部材10は、外管6の先端部に設置され、ループ状をなす線状体(第2の線状体)101で構成されている。線状体101は、適度な剛性および弾性を有している。また、図示の構成では、線状体101の両端部が、それぞれ、外管6の先端部の外周面に固定されている。これにより、第2拡張部材10は、外管カバー7に対する外管6の移動により、外管カバー7の内腔に収納された収納状態と、外管カバー7の先端から突出し、外管6の軸に対して垂直な方向に拡張した拡張状態とを採り得る。第2拡張部材10は、収納状態のとき、外管6の軸方向に伸び、外管6の軸に対して垂直な方向に縮小した形状をなしている。なお、線状体101は、外管6の先端部の外周面以外の部位、例えば、外管6の先端部の内周面、先端面等に固定されていてもよい。
【0055】
医療器具1の初期状態においては、第2拡張部材10は、拡張状態となっている。これにより、第2拡張部材10に形状癖が付くことを防止することができる。そして、外管6を外管カバー7に対して基端方向に移動させると、第2拡張部材10は、外管カバー7の内腔に収納され、収納状態となる。また、この収納状態から、外管6を外管カバー7に対して先端方向に移動させると、第2拡張部材10は、外管カバー7の先端から突出し、拡張状態となる。
【0056】
また、第2拡張部材10の外管カバー7の先端から突出した状態での長さL(図2参照)は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、2〜20mm程度であることが好ましく、5〜10mm程度であることがより好ましい。
【0057】
また、線状体101の外径は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、0.05〜0.5mm程度であることが好ましく、0.05〜0.2mm程度であることがより好ましい。
【0058】
また、線状体101の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した線状体91の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【0059】
なお、線状体101の本数は、図示の構成では、1本であるが、これに限らず、複数であってもよい。
【0060】
ここで、前記第1拡張部材9は、それが拡張状態のとき、嚢胞内面と卵巣の外面との間の壁部で構成された生体内組織膜の一方の面である内側面、すなわち嚢胞内面に当接し、この第2拡張部材10は、それが拡張状態のとき、前記生体内組織膜の他方の面である外側面、すなわち卵巣の外面に当接し、第1拡張部材9とで前記生体内組織膜を挟むようになっている。これにより、医療器具1の先端部、すなわち、第1内管4は、その先端部において前記生体内組織膜、すなわち卵巣に保持される。
【0061】
また、外管6は、第1内管4および第2内管5とは独立に軸方向に移動するようになっており、第1内管4を卵巣に保持する際は、外管6を第1内管4、第2内管5および外管カバー7に対して軸方向に移動させる。これにより、第1拡張部材9と第2拡張部材10とで生体内組織膜が挟まれる。これによって、生体内組織膜の厚さ等によらず、第1拡張部材9と第2拡張部材10とで確実にその生体内組織膜を挟むことができ、第1内管4を確実に卵巣に保持することができる。
【0062】
また、嚢胞内に配置される第1拡張部材9は、複数の第1の線状体91で構成されているので、その第1拡張部材9を拡張状態にしても嚢胞の内圧を上昇させることがなく、安全である。そして、嚢胞内にアルコールを注入した際、その嚢胞内面全体に、確実にアルコールを接触させることができる。
【0063】
操作部2は、医療器具1の基端側、すなわち、穿刺針3、第1内管4、第2内管5、外管6および外管カバー7の基端側に設置されている。
【0064】
この操作部2は、ケーシング(操作部本体)8と、第1内管4が連結された第1内管操作部材13と、外管6が連結された外管操作部材15と、バネ圧縮部材16と、第1内管操作部材13を基端方向に付勢する第1の付勢手段であるコイルバネ(第1のバネ)18と、外管操作部材15を基端方向に付勢する第2の付勢手段であるコイルバネ(第2のバネ)17とを有している。
【0065】
ケーシング8の全体形状は、長手形状、図示の構成では筒状で、その先端部が先細りした形状をなしている。ケーシング8の長手方向と、軸方向とは、一致している。
【0066】
このケーシング8の先端部には、外管カバー7の基端部が固定されている。すなわち、外管カバー7の基端部は、ケーシング8の先端開口81に挿入され、そのケーシング8の先端開口81に臨む縁部に固定されている。
【0067】
また、ケーシング8は、その中央部に、ケーシング8内の空間を先端側と基端側とに仕切る仕切り部82を有している。この仕切り部82は、中空になっており、仕切り部82の先端開口81に対応する位置には、その仕切り部82内の空間に連通し、仕切り部82を軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。第2内管5の基端部は、仕切り部82の貫通孔に挿入され、第2内管支持部14は、仕切り部82内の空間に、ケーシング8に対して、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能に設置されている。これにより、第2内管5は、ケーシング8に対して、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能となる。また、穿刺針3および第1内管4は、仕切り部82の貫通孔を挿通している。
【0068】
また、外管操作部材15は、ケーシング8の仕切り部82よりも先端側に、そのケーシング8に対して、軸回りには回動できず、軸方向に移動可能に設置されている。
【0069】
外管操作部材15は、図2中上側に位置し、軸方向に延在する突出片151と、図2中下側に位置し、軸方向に延在する突出片152と、先端側に位置し、突出片151と突出片152とを連結する連結部153とを有している。また、突出片151の中央部の上部には、上方に向って突出するようにレバー154が形成されている。また、突出片151の基端部の上部には、上方に向って突出する突起155が形成されている。
【0070】
一方、ケーシング8の仕切り部82よりも先端側の部位の上部には、そのケーシング8の壁部を貫通し、軸方向に長い長孔83および孔部84が形成されている。長孔83と孔部84とは、軸方に沿って配置され、孔部84は、長孔83よりも基端側に位置している。
【0071】
外管操作部材15の突出片151は、ケーシング8内の上面に当接し、突出片152は、ケーシング8内の下面に当接している。
【0072】
また、医療器具1の初期状態においては、レバー154および突起155は、長孔83に挿入されており、レバー154は、長孔83の先端側の内面に当接し、長孔83よりも上方に突出し、また、突起155は、長孔83の基端側の内面に当接している。これにより、外管操作部材15のケーシング8に対する軸方向の位置が規制される。
【0073】
また、外管操作部材15の連結部153の先端開口81に対応する部位には、開口156が形成されており、外管6の基端部は、開口156に挿入され、その連結部153の開口156に臨む縁部に固定されている。
【0074】
また、第1内管操作部材13は、ケーシング8の仕切り部82よりも基端側に、そのケーシング8に対して、軸回りには回動できず、軸方向に移動可能に設置されている。
【0075】
第1内管操作部材13は、図2中上側に位置し、軸方向に延在する突出片131と、図2中下側に位置し、軸方向に延在する突出片132と、基端側に位置し、突出片131と突出片132とを連結する連結部133とを有している。連結部133は、突出片131の基端部よりも上方に向って突出し、また、突出片132の基端部よりも下方に向って突出している。また、突出片131の中央部の上部には、上方に向って突出するようにレバー134が形成されている。また、突出片131の先端部の上部には、上方に向って突出する突起135が形成されている。
【0076】
一方、ケーシング8の仕切り部82よりも基端側の部位の上部には、そのケーシング8の壁部を貫通し、軸方向に長い長孔85および孔部86が形成されている。長孔85と孔部86とは、軸方に沿って配置され、孔部86は、長孔85よりも先端側に位置している。
【0077】
第1内管操作部材13の突出片131は、ケーシング8内の上面に当接し、突出片132は、ケーシング8内の下面に当接している。
【0078】
また、医療器具1の初期状態においては、レバー134は、長孔85に挿入されており、長孔85の先端側の内面に当接し、長孔85よりも上方に突出し、また、突起135は、孔部86に挿入されており、その孔部86の内面に係合している。これにより、第1内管操作部材13のケーシング8に対する軸方向の位置が規制される。また、突起135が孔部86の内面に係合することにより、第1内管操作部材13のケーシング8に対する基端方向への移動が阻止される。
【0079】
また、第1内管操作部材13の連結部133の先端開口81に対応する部位には、開口136が形成されており、第1内管4は、開口136を挿通し、第1内管4の基端部は、その連結部133の開口136に臨む縁部に固定されている。
【0080】
また、連結部133には、1対の開口137が形成されている。軸方向から見たとき、各開口137は、開口136を介して互いに対向するように配置されている。また、各開口137は、上下方向に並んでいる。
【0081】
また、バネ圧縮部材16は、第1内管操作部材13の基端側、すなわち連結部133に、その第1内管操作部材13に対して、軸方向に移動可能に設置されている。
【0082】
バネ圧縮部材16は、図2中上側に位置し、軸方向に延在する突出片161と、図2中下側に位置し、軸方向に延在する突出片162と、基端側に位置し、突出片161と突出片162とを連結する連結部163とを有している。
【0083】
また、突出片161の先端部は、L字状をなしており、その先端部には、下方に向って突出し、第1内管操作部材13の連結部133に係合し得る突起164が形成されている。また、突出片162の先端部は、L字状をなしており、その先端部には、上方に向って突出し、連結部133に係合し得る突起165が形成されている。
【0084】
また、バネ圧縮部材16の連結部163の先端開口81に対応する部位には、開口166が形成されており、第1内管4および穿刺針3は、開口166を挿通している。
【0085】
また、連結部163には、先端方向に向って突出するように、1対の棒状部167が形成されている。軸方向から見たとき、各棒状部167は、開口166を介して互いに対向するように配置されている。また、各棒状部167は、上下方向に並んでいる。すなわち、各棒状部167は、各開口137に対応する位置に配置され、各開口を挿通している。
【0086】
また、各棒状部167の先端側には、各棒状部167を連結する連結部168が形成されている。この連結部168により、バネ圧縮部材16が第1内管操作部材13から離脱してしまうことを防止することができる。
【0087】
また、連結部168の先端開口81に対応する部位には、開口169が形成されており、第1内管4および穿刺針3は、開口169を挿通している。
【0088】
また、コイルバネ17は、ケーシング8の仕切り部82よりも先端側に設置されている。このコイルバネ17の先端部は、外管操作部材15の連結部153に固定され、基端部は、仕切り部82に固定されている。
【0089】
また、コイルバネ18は、ケーシング8の仕切り部82よりも基端側に設置されている。このコイルバネ18の先端部は、仕切り部82に固定され、基端部は、バネ圧縮部材16の連結部168に固定されている。
【0090】
医療器具1の初期状態においては、コイルバネ17および18は、それぞれ、外力が付与されていない自然状態、または自然状態よりも若干収縮した状態になっている。
【0091】
次に、卵巣チョコレート嚢胞に対してアルコール固定術を行う際の医療器具1の使用時の手順の一例および医療器具1の作用を説明する。
【0092】
まず、図2に示す初期状態の医療器具1におけるレバー154を、図4(a)に示すように、コイルバネ17の付勢力に抗して基端方向に移動させる。これにより、外管操作部材15が基端方向に移動し、コイルバネ17が収縮し、突起155は、孔部84に挿入され、その孔部84の内面に係合する。また、外管6が外管カバー7に対して基端方向に移動し、第2拡張部材10が、外管カバー7の内腔に収納され、収納状態となる。なお、突起155が孔部84の内面に係合することにより、外管操作部材15のケーシング8に対する先端方向への移動が阻止される。
【0093】
また、バネ圧縮部材16を、コイルバネ18の付勢力に抗して先端方向に移動させる。これにより、コイルバネ18が収縮し、また、突起164、165は、第1内管操作部材13の連結部133に係合し、バネ圧縮部材16と第1内管操作部材13とが一体化する。
【0094】
次に、医療器具1の穿刺針3を経膣的に卵巣チョコレート嚢胞に穿刺する。この穿刺操作は、経膣超音波プローブを用い、得られた画像を見て、医療器具1の先端部の位置、すなわち、超音波マーカーでもある第1拡張部材9の位置を確認しつつ、少なくともその第1拡張部材9が嚢胞内に挿入されるまで行う。
【0095】
次に、穿刺針3を第1内管4から抜去する。
次に、図4(b)に示すように、レバー134を下方に押圧する。これにより、突起135と孔部86との係合が解除され、第1内管操作部材13および第1内管4は、コイルバネ18の付勢力により、基端方向に移動し、各線状体91の先端部と基端部との間の軸方向の距離が小さくなり、第1拡張部材9は、拡張状態となる。
【0096】
次に、ケーシング8を把持し、そのケーシング8を基端方向に引っ張り、第1拡張部材9を嚢胞内面に当接させる。
【0097】
次に、図5(a)に示すように、レバー154を下方に押圧する。これにより、突起155と孔部84との係合が解除され、外管操作部材15および外管6は、コイルバネ17の付勢力により、先端方向に移動し、第2拡張部材10が外管カバー7の先端から先端方向に突出して拡張状態となり、卵巣の外面に押し付けられ、その第2拡張部材10と第1拡張部材9とで生体内組織膜を挟み込む。これによって、第1内管4の先端部は、嚢胞内面と卵巣の外面との間の壁部で構成された生体内組織膜、すなわち卵巣に保持される。
【0098】
次に、図示しない送液回路のコネクタを第1内管4のハブ12に接続する。そして、第1内管4を介して、嚢胞内の内容物を吸引する。この場合、生理食塩水を嚢胞内に注入し、その生理食塩水とともに嚢胞内の内容物を吸引する操作を何度か行う。
【0099】
次に、第1内管4を介して、嚢胞内に純度の高いエチルアルコール等のアルコールを注入し、10〜15分程度、そのアルコールを留置する。これにより、嚢胞内面にある子宮内膜細胞がアルコールによって固定される。
【0100】
次に、第1内管4を介して、アルコールを吸引し、その後、嚢胞内を洗浄する。この場合、生理食塩水を嚢胞内に注入し、その生理食塩水を吸引する操作を何度か行う。
【0101】
次に、図5(b)に示すように、レバー154を、コイルバネ17の付勢力に抗して基端方向に移動させる。これにより、外管操作部材15が基端方向に移動し、コイルバネ17が収縮し、突起155は、孔部84に挿入され、その孔部84の内面に係合する。また、外管6が外管カバー7に対して基端方向に移動し、第2拡張部材10が、外管カバー7の内腔に収納され、収納状態となる。なお、突起155が孔部84の内面に係合することにより、外管操作部材15のケーシング8に対する先端方向への移動が阻止される。
【0102】
次に、図6に示すように、レバー134を、コイルバネ18の付勢力に抗して先端方向に移動させる。これにより、第1内管操作部材13が先端方向に移動し、コイルバネ18が収縮し、突起135は、孔部86に挿入され、その孔部86の内面に係合する。また、第1内管4が第2内管5に対し先端方向に移動し、各線状体91の先端部と基端部との間の軸方向の距離が大きくなり、第1拡張部材9は、縮小状態となる。なお、突起135が孔部86の内面に係合することにより、第1内管操作部材13のケーシング8に対する基端方向への移動が阻止される。
【0103】
次に、ケーシング8を把持し、そのケーシング8を基端方向に引っ張り、医療器具1を抜去する。
【0104】
以上説明したように、この医療器具1によれば、嚢胞の内圧を上昇させずに、第1拡張部材9を拡張状態にし、その第1拡張部材9と第2拡張部材10とで、生体内組織膜を挟み、第1内管を卵巣に保持することができる。このため、嚢胞の破裂の問題がなく、安全であり、また、医療従事者の負担を軽減することができる。
【0105】
また、嚢胞内にアルコールを注入した際、その嚢胞内面全体に、確実にアルコールを接触させることができる。
【0106】
また、操作部2のレバー134、154等の操作により、容易かつ迅速に、手技を行うことができる。
【0107】
なお、本実施形態では、第1拡張部材9が超音波マーカーを兼ねているが、これに限らず、他の部位に超音波マーカーを設けてもよい。その具体例としては、例えば、穿刺針3の先端部に超音波マーカーを設ける。この超音波マーカーとしては、例えば、複数の微小な凹凸等が挙げられる。すなわち、金属材料で構成された穿刺針3の表面に複数の微小な凹凸を形成することにより、その凹凸が形成された部位を超音波で検出できる。
【0108】
<第2実施形態>
図7は、本発明の医療器具の第2実施形態における第1内管および第2内管の先端部を示す断面図である。なお、図7では、第1拡張部材9は図示されていない。
【0109】
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0110】
図7に示すように、第2実施形態の医療器具1では、第1内管4が穿刺針を兼ねている。すなわち、第1内管4は、その先端に鋭利な針先を有している。これにより、第1実施形態における穿刺針3を省略することができ、これによって、部品点数を削減でき、構造を簡素化することができる。
【0111】
<第3実施形態>
図8は、本発明の医療器具の第3実施形態における第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図である。なお、図8では、理解を容易にするため、医療器具、特に線状体の軸方向を短縮し、線状体の太さ方向、すなわち幅方向を誇張して模式的に図示している。
【0112】
以下、第3実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0113】
図8に示すように、第3実施形態の医療器具1では、第1拡張部材9、すなわち複数の線状体91と、第2内管5とが、一体的に形成されている。
【0114】
この第2内管5および各線状体91を製造するには、第2内管5および各線状体91の母材として管体(図示せず)を用意し、その管体の先端部を、図8に示すように各線状体91が形成されるように切断する。これにより、第2内管5と、第2内管5の先端に接続された各線状体91とが得られる。
【0115】
各線状体91の先端部は、第1実施形態と同様に、第1内管4の先端部の外周面に固定される。
【0116】
<第4実施形態>
図9は、本発明の医療器具の第4実施形態における第1内管および第2内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図、図10は、図9に示す第1内管の先端部と、第1拡張部材とを示す側面図である。なお、図9および図10では、理解を容易にするため、医療器具、特に線状体の軸方向を短縮し、線状体の太さ方向、すなわち幅方向を誇張して模式的に図示している。
【0117】
以下、第4実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0118】
図9および図10に示すように、第4実施形態の医療器具1では、第1拡張部材9、すなわち複数の線状体91と、第1内管4とが、一体的に形成されている。
【0119】
この第1内管4および各線状体91を製造するには、第1内管4および各線状体91の母材として管体(図示せず)を用意し、その管体の先端部を、図10に示すように各線状体91が形成されるように切断する。これにより、第1内管4と、第1内管4の先端部に接続された各線状体91とが得られる。
【0120】
各線状体91の基端部は、第1実施形態と同様に、第2内管5の先端部の外周面に固定される。
【0121】
<第5実施形態>
図11は、本発明の医療器具の第5実施形態を示す断面図である。
【0122】
以下、第5実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0123】
図11に示すように、第5実施形態の医療器具1では、第1内管4が、操作部2のケーシング8に対して軸回りに回動可能に設置され、第2内管5は、ケーシング8に対して軸回りに回動不能に設置されている。すなわち、第1内管4は、第1内管操作部材13に、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能に連結されている。
【0124】
具体的には、第1内管操作部材13の連結部133の中央部には、開口136に連通する空間が形成されている。また、第1内管4の基端部には、筒状をなす第1内管支持部19が設けられている。この第1内管支持部19は、前記連結部133内の空間に、第1内管操作部材13に対して、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能に設置されている。これにより、第1内管4は、第1内管操作部材13に対して、軸方向には移動できず、軸回りには回動可能となる。
【0125】
また、第2内管支持部14は、省略されており、第2内管5の基端部は、仕切り部82の貫通孔に挿入され、その仕切り部82の貫通孔に臨む縁部に固定されている。
【0126】
以上、本発明の医療器具を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0127】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成を組み合わせたものであってもよい。
【0128】
また、前記実施形態では、第2拡張部材は、第2の線状体で構成されているが、本発明では、第2拡張部材は、これに限らず、例えば、バルーン等で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 医療器具
2 操作部
3 穿刺針
4 第1内管
41 側孔
42 第1の固定部
5 第2内管
51 第2の固定部
6 外管
7 外管カバー
8 ケーシング
81 先端開口
82 仕切り部
83、85 長孔
84、86 孔部
9 第1拡張部材
91 線状体
92 頂部
10 第2拡張部材
101 線状体
11、12 ハブ
13 第1内管操作部材
131、132 突出片
133 連結部
134 レバー
135 突起
136、137 開口
14 第2内管支持部
15 外管操作部材
151、152 突出片
153 連結部
154 レバー
155 突起
156 開口
16 バネ圧縮部材
161、162 突出片
163 連結部
164、165 突起
166、169 開口
167 棒状部
168 連結部
17、18 コイルバネ
19 第1内管支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管カバーと、
前記外管カバーの内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された外管と、
前記外管の内腔に挿入された第2内管と、
前記第2内管の内腔に、その軸方向に移動可能に挿入された第1内管と、
先端部が前記第1内管の先端部に接続され、基端部が前記第2内管の先端部に接続された複数の第1の線状体を有し、前記第2内管に対する前記第1内管の移動により、前記第1の線状体の先端部と基端部との間の途中の部位が前記第1内管の外周面に接近した第1の状態と、前記途中の部位が前記第1内管の外周面から離間した第2の状態とを採り得る第1拡張部材と、
前記外管の先端部に設置され、前記外管カバーに対する前記外管の移動により、前記外管カバーの内腔に収納された収納状態と、前記外管カバーの先端から突出し、前記外管の軸に対して垂直な方向に拡張した拡張状態とを採り得、前記第1拡張部材よりも基端側に配置された第2拡張部材とを備えることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記第2拡張部材は、ループ状をなす第2の線状体で構成されている請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記第1内管と前記第2内管とがその軸回りに相対的に回動自在に設置されており、
前記第1内管と前記第2内管とがその軸回りに相対的に回動することにより、前記第1拡張部材は、前記第2の状態のとき、網状をなすよう構成されている請求項1または2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記第1内管の先端部に、該第1内管の内腔に連通する側孔を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の医療器具。
【請求項5】
前記側孔は、前記第1の線状体の先端部が固定された前記第1内管の第1の固定部と、前記第1の線状体の基端部が固定された前記第2内管の第2の固定部との間で、かつ、前記第1拡張部材が前記第2の状態のとき、前記第2内管の先端よりも先端側に位置するように配置されている請求項4に記載の医療器具。
【請求項6】
当該医療器具の基端側に設けられ、前記外管および前記第1内管を移動操作する移動操作手段を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の医療器具。
【請求項7】
前記移動操作手段は、操作部本体と、
前記操作部本体に対し、前記外管の軸方向に移動可能に設置され、前記外管が連結された外管操作部材と、
前記操作部本体に対し、前記第1内管の軸方向に移動可能に設置され、前記第1内管が連結された第1内管操作部材とを有する請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記移動操作手段は、前記第1内管操作部材を基端方向に付勢する第1の付勢手段を有し、該第1の付勢手段の付勢力により、前記第1内管操作部材が基端方向に移動することにより、前記第1拡張部材が前記第2の状態になるよう構成されている請求項7に記載の医療器具。
【請求項9】
前記移動操作手段は、前記外管操作部材を先端方向に付勢する第2の付勢手段を有し、該第2の付勢手段の付勢力により、前記外管操作部材が先端方向に移動することにより、前記第2拡張部材が前記拡張状態になるよう構成されている請求項7または8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記第1内管の内腔に、着脱自在に挿入され、先端に鋭利な針先を有する穿刺針を備える請求項1ないし9のいずれかに記載の医療器具。
【請求項11】
前記第1内管は、その先端に鋭利な針先を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の医療器具。
【請求項12】
当該医療器具は、経膣的に患部に挿入されるものである請求項1ないし11のいずれかに記載の医療器具。
【請求項13】
前記第1拡張部材は、前記第2の状態で生体内組織膜の一方の面に当接し、前記第2拡張部材は、前記拡張状態で前記生体内組織膜の他方の面に当接し、前記第1拡張部材とで前記生体内組織膜を挟むよう構成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の医療器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−115328(P2012−115328A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265584(P2010−265584)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】