説明

医療外科デバイス

気管チューブ(40)または喉頭マスクは、長さ1mm〜5mmの密集した繊維(25)を設けたブラシ状材料(44,24)で被覆した表面を持つ封止カフ(41,2)を有する。ブラシ状材料(44,24)の表面は、表面を接着剤で被覆し、かつ繊維(25)を引き寄せる静電気の電荷を用いて接着剤に接着することで設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療外科デバイスに関する。
【0002】
本発明は、とくに、ただしこれに限定するものではないが、カフ付き医療チューブ、例えば気管チューブおよび喉頭マスク気道に関する。
【背景技術】
【0003】
気道デバイスには、患者側端部に近接させて封止カフを設けることがよくあり、この封止カフを使用して気管または咽頭でチューブ外側を封止し、これにより、ガスをチューブの内孔にそってのみ流すことができるようにする。カフによって生ずる封止が効果的であり、かつ患者の組織を傷つけないことが重要である。不十分な封止は、分泌物がカフを越えて漏出し、また呼吸器系の下方部位に流下する。このような肺に入り込む分泌物は、人工呼吸器関連の肺炎を引き起こす恐れがあると考えられている。このことは、カフにより生ずる封止は、ガス漏れを確実になくす点で重要でもあり、これはすなわち、ガス漏れが換気効率を減少させ、また麻酔ガスの外気への流出を引き起こす恐れがあるからである。カフ周囲における漏れの考えられる原因の1つとしては、カフと患者組織との間における流路となり得る、カフ材料における縦方向ひだがある。
【0004】
気管チューブの気管に対する封止または界面を改善する、多くの異なるカフ形状が提案されてきた。また、カフおよび表面形成部における多くの異なる形状が、カフの材料、コーティングまたは厚さに関しての変更とともに、封止の効果を高める試みとして、提案されてきた。喉頭マスクにおいても、効果的な封止を形成することは困難である。デバイスと身体組織との界面を良好にする必要性がある、他の医療外科デバイスも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来に代わる医療外科デバイスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、医療外科のデバイスを提供し、このデバイスは、デバイスを少なくとも部分的に被覆するブラシ状材料を設けた表面を有するものとしたことを特徴とする。
【0007】
デバイスは、封止カフを有し、ブラシ状材料の表面がカフを少なくとも部分的に被覆する。このデバイスは、気道デバイス、例えば気管チューブまたは喉頭マスクとすることができる。ブラシ状材料は、好適には、約1mm〜5mmの長さを有する密集した繊維で形成する。ブラシ状材料の表面は、表面を接着剤で被覆し、かつ繊維を接着剤で被覆した表面に接着することで、設けることができる。静電気の電荷を印加して、繊維を接着剤で被覆した表面に引き寄せることができる。
【0008】
本発明の他の態様によれば、気道チューブおよびこの気道チューブの一方の端部近傍に封止カフを有する気道デバイス提供し、この気道デバイスは、少なくともカフがブラシ状材料の封止面を有するものとしたことを特徴とする。
本発明による喉頭マスクおよび気管内チューブの双方を、例示として、添付図面につき以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】マスクの一部断面とする側面図である。
【図2】カフ付き気管内チューブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1において、喉頭マスクは、気道チューブ1およびチューブの患者側端部3に取り付けた封止マスクまたはカフ2を備える。
【0011】
気道チューブ1は、従来型とし、プラスチック材料を押出成形または型成形し、全長に沿って湾曲させたものである。好適には、チューブ1は、柔軟であるが、正確な挿管および配置を行うのに十分な合成を有する。代案として、チューブは、薄い壁で大きな可撓性を有するものとすることができ、かつ螺旋状のワイヤ等を用いて補強することができる。この場合、チューブの内孔に沿って挿入するイントロデューサ(挿管子)を用いて、挿管にあたり付加的剛性を付与することができる。
【0012】
封止カフ2は、チューブ1の端部に取り付けた別個の構成部材とするが、チューブと一体的に形成することもできる。封止カフ2は、咽頭領域の解剖学的形状に合致する形状にし、かつ一般に中空の卵形にする。カフ2の内部は、開孔20で開口し、気管の上方端部とカフの内側、ひいては気道チューブ1の患者側端部3、との間に連通を生ずる。カフの壁21をプラスチック材料とし、形状を保つのに十分な剛性を有するが、咽頭領域においてより大きな解剖学的構造の表面に合致するよう曲げることができる。この点において、膨張可能かつ環状構造を有する既存の喉頭マスクカフとは異なる。カフ2の内面22は滑らかにし、外面23をブラシ状材料24で被覆する。用語「ブラシ状材料」は、一般に外面23から外方に突出する、密集した、柔らかく、短い繊維または軟毛25が形成するビロードまたはモールスキンの質感を有するカバー材料を意味する。好適には、ブラシ状材料24の丈は、約1mm〜5mmとする。カフ2に対するこのブラシ状表面24は、壁21の下側における基板材料よりも順応性が良く、解剖学的により小さな構造に対して容易に適合する。ブラシ状材料24の密度は、それ自体十分高く、低圧での液体の流れに抵抗するが、接触領域周りの圧力降下に伴い若干の気体漏出を可能にする。しかし、軟毛25間の隙間を充填するのに効果的なゲル、ペースト等の稠密流動体または半流動体物質によりブラシ状材料24を被覆することで、封止の効果を向上することができる。
【0013】
カフを気道チューブ1に取り付ける前後どちらにおいても、コーティングとしてカフ2の外面23にブラシ状材料24を塗布することができる。このことは、カフ2を接着剤で被覆し、かつ静電気の電荷を用いて接着剤で被覆した表面に短い繊維25を引き寄せることで、達成することができる。代案として、カフ2は、予め形成したブラシ表面を有するストック材料から形成することができる。
【0014】
喉頭マスクにおける封止カフは、気道チューブの患者側端部に卵形の取り付け部材の片側に取り付ける、従来の膨張可能で環状の種類とすることもできる。少なくとも膨張可能なカフの露出表面には、ブラシ状材料を設け、アセンブリの患者側端部における他の部位にわたり延在させることもできる。
【0015】
図2に示す気管内挿管チューブ40のようなカフ付き気管チューブにおいても、ブラシ状材料を用いることができる。このチューブ40において、患者側端部43の直ぐ後方で膨張可能封止カフ41がチューブ42を包囲し、上述のようなブラシ状材料44がカフの露出表面を被覆する。
【0016】
本発明のブラシ状材料は、シーリングカフ上での使用に限定するものではなく、患者組織との界面を形成するよう構成し、緊密接触が重要となる医療外科デバイスの任意の表面にも適用できる幅広い用途を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療外科用のデバイスであって、前記デバイス(1,40)は、前記デバイスを少なくとも部分的に被覆するブラシ状材料(24,44)を設けた表面(23)を有するものとしたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の医療外科デバイスにおいて、前記デバイス(1,40)は封止カフ(2,41)を有し、かつブラシ状材料(24,44)の表面が前記カフ(2,41)を少なくとも部分的に被覆したことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療外科デバイスにおいて、前記デバイスは、気道デバイス(1,40)としたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の医療外科デバイスにおいて、前記デバイスは、気管チューブ(40)としたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項5】
請求項3に記載の医療外科デバイスにおいて、前記デバイスは、喉頭マスク(1)としたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療外科デバイスにおいて、前記ブラシ状材料(22,44)を、約1mm〜5mmの長さを有する密集した繊維(25)で形成したことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療外科デバイスにおいて、ブラシ状材料(24,44)の前記表面は、前記表面を接着剤で被覆し、かつ繊維(25)を前記接着剤で被覆した表面に接着することで、設けるようにしたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の医療外科デバイスにおいて、静電気の電荷を印加して、前記繊維(25)を前記接着剤で被覆した表面に引き寄せたことを特徴とする医療外科デバイス。
【請求項9】
気道チューブ(1,40)およびこの気道チューブの一方の端部近傍に封止カフ(2,41)を有する気道デバイスにおいて、少なくとも前記封止カフ(2,41)がブラシ状材料(24,44)の封止面を有するものとしたことを特徴とする気道デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516367(P2010−516367A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546805(P2009−546805)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000105
【国際公開番号】WO2008/090311
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC