説明

医療外科用チューブ組立体

気管切開チューブ組立体はフランジ部2を有し、このフランジ構成部2は前記組立体のシャフト(1)に沿って移動可能であり、また異なる位置にロック可能とする。フランジ部は、皮膚に対して表面のほぼ全体で接触する可撓性適合面(26)を備えるゲル充填部材(22)を有する。このフランジ部は開孔(28)を有し、この開孔(28)には組立体を患者の首に固定するのに使用するテープを通すことができる。ゲル充填部材(122)は、既存のチューブ組立体に対して個別に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を通り体内へ延びるよう構成したチューブ状のシャフト、およびシャフトに取り付けるフランジ部を有し、また患者の外側皮膚表面に接触し得る表面を有する、種類の医療外科用チューブ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
気管切開チューブのような医療外科用チューブには、一般的にはチューブを患者の体に固定するためのフランジを設ける。気管切開チューブの場合、チューブを気管切開部に挿管する首の表面近傍にフランジを位置決めし、テープをフランジ内の開口に通して首の周りに固定する。気管切開チューブを長期間にわたり装着することがあり、この場合、気管切開部周りで首のデリケートな皮膚上にフランジが接触することにより、不快感および炎症を引き起こすことがある。これは、特に新規の手術開口に生じる問題である。
【0003】
同様の問題を抱える、フランジを有する他の医療外科用チューブもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第08/003929号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6631718号明細書
【特許文献3】米国特許第4649913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は代替的な医療外科用チューブ組立体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、皮膚接触面を皮膚に接触するゲル充填部材により設ける構成としたことを特徴とする、上述した種類の医療外科用チューブ組立体を提供する。
好適には、ゲル充填部材は、皮膚に対してほぼ全体で接触する表面を付与する。フランジ部は外側フランジを有し、またゲル充填部材(122)を前記外側フランジと皮膚表面との間に配置する。ゲル充填部材は、外側フランジとは個別のコンポーネントとして設ける構成とすることができる。代案として、フランジ部を、ゲル状物質を有し、かつ皮膚に適合可能な皮膚対向面を有するフランジにより設ける構成とすることができる。適合可能な皮膚接触面を、可撓性プラスチック材料の薄い壁面により設けることができる。フランジは、複数のゲル充填部材を有する構成とすることができる。フランジ部は、外側フランジを有し、ゲル充填部材は患者の皮膚表面に接触し得る表面を有し、またガス充填部材(331)を、前記外側フランジと前記ゲル充填部材との間に配置する構成とすることができる。好適には、ガス充填部材を膨張可能な構成とする。
【0007】
本発明の他の態様によれば、気管切開開口部から気管内に突入するよう構成したチューブ状のシャフト、および前記シャフトに取り付け、シャフト側とは反対側で側方に突出するフランジ部を有する気管切開用のチューブ組立体を提供する。そのフランジ部は、患者の首の外側皮膚表面に接触し得る皮膚接触面を設け、かつ患者の首に組立体を固定するために使用するテープを受け入れる開孔を設けるものとし、その皮膚接触面を、皮膚表面に接触し得るゲル充填部材に設ける構成とする。
【0008】
前記ゲルは、シリコーン材料またはヒドロゲルとすることができる。前記フランジ部は、シャフトに沿って移動可能とすることができる。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、開口部から体内に突入するよう構成したチューブ状のシャフト、およびシャフトに取り付け、かつ皮膚対向表面を有するフランジを有する種類のチューブ組立体用のゲル充填コンポーネントを提供し、このゲル充填コンポーネントは、フランジの皮膚対向表面と患者の皮膚との間に配置するようにシャフトに沿って摺動可能とし、またゲル充填コンポーネントは、使用にあたり、患者の皮膚に接触するよう構成した適合面を生ずる構成とする。
以下に添付図面につき、本発明による気管切開チューブ組立体における例示な幾つかの異なる実施形態で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】チューブ組立体の第1実施形態の、装置側端部の側方から見た立面図である。
【図2】図1の組立体装置側端部の斜視図である。
【図3】装置側端部における組立体の端面図である。
【図4】図3の線IV−IV線上の、組立体のフランジにおける断面図である。
【図5】フランジ組立体がプラスチックフランジ、およびこのプラスチックフランジと首表面との間に位置する個別のゲル充填フランジを有する、代替的な組立体の装置側端部の側方から見た立面図である。
【図6】図5のフランジ部におけるゲル充填フランジの、斜視図である。
【図7】第3実施形態における気管切開チューブ組立体の斜視図である。
【図8】第4実施形態における気管切開チューブ組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1から図4につき説明すると、チューブ状のシャフト1およびこのシャフトに取り付けられたフランジ部2を有する気管切開チューブ組立体の第1実施形態における、装置側端部を示す。シャフト1は、全体的に普通のものであり、プラスチック材料により押し出し成形または型成形し、またその全長にわたって適切な解剖学的形状に沿って湾曲させる。シャフトの患者側端部(図示せず)には、普通の膨張可能な封止カフを設ける、または付加物のないものにすることができる。シャフト1の装置側端部10は、シャフト端部に結合した普通の種類のルアーテーパー付き継手11で終端させる。フランジ組立体2はシャフト1に沿って移動可能とし、任意の所望位置にロック可能にするが、代替的な実施例ではシャフトに対して所定位置に固定したフランジを有するものとすることもできる。図示の実施形態におけるフランジ組立体2は、好適には特許文献1(国際公開第08/003929号)に記載の種類の後部ロッククランプ20を有する。このクランプ20は回転可能なアーム21を有し、このアーム21が図2および図3に示す状態に下方に旋回し、クランプに作用してシャフト1の外側を掴むようにする。このクランプ20は、前方のコンポーネント22の後面に取り付け、この前方コンポーネント22は、中心ディスク25から外方に突出する2個の細長いウィング23および24を有する。ウィング付きコンポーネント22は、図4に最も明確に示すように、ゲル材料27の充填剤を包囲する、ポリウレタンまたはウレタンのような比較的薄い可撓性プラスチック材料からなる外壁26を有する。ゲル材料27は普通の任意な医用ゲル、例えばレスピロニクス(Respironics)社製のコンフォートゲル(ComfortGel)、シリコーンもしくはハイドロゲル、または特許文献2(米国特許第6631718号)に記載された種類のゲルとすることができる。外壁26の薄い特性およびゲル充填剤27により、フランジのウィング23および24は、可撓性、適合性および柔軟性が高くなる。フランジのウィング23および24は、それぞれの外方端部近傍に開孔28を有し、その開孔にテープまたは同様のものを通して、患者の首周りの所定位置にチューブ組立体を固定する。使用にあたり、気管切開開口部周りの皮膚にはウィング付きコンポーネント22の前面29が接触し、フランジの柔軟な特性により、フランジが確実に解剖学的構造に密接に適合し、圧迫を均等に分散し、良好なフィットを生じ、患者に優れた着け心地よさをもたらす。
【0012】
フランジ自体をゲル充填材料で形成する代わりに、本発明は、普通の気管切開チューブを図5および図6に示すようにして、変更できる。この実施形態においては、中心ディスク125および2個のウィング123および124を有するゲル充填コンポーネント122を個別コンポーネントとして設け、この個別コンポーネントをシャフト101上で摺動させ、普通の中実プラスチックによる外側フランジ130の前面上の所定位置に移動できる。このようにして、フランジと患者の皮膚との間に適合するクッションとしてゲル充填コンポーネントが機能し、適合可能な皮膚接触面126を提供する。
【0013】
これら実施形態では双方ともに、患者の皮膚表面との全体的な接触はゲル充填コンポーネントによる。
【0014】
図7に、気管切開部用のフランジ222が中実のプラスチック材料とするが、その内部に皮膚表面に接触し得るゲル充填領域を有する、第3の実施形態を示す。図示のようにこの実施形態において、各ウィング223および224は、それぞれを貫通する円形の2個の開孔226を有し、これら開孔226内にそれぞれゲル充填剤を包囲する可撓性プラスチック壁を有するクッションの形態とした円形のインサート227を収容する。クッション227はそれぞれ、ウィング223および224の前面および後面を越えてわずかに突出し、したがって、フランジと皮膚との接触の大部分がゲル充填クッションを介して行われる。
【0015】
図8に示す第4の実施形態は、図5および図6の実施形態と同様であるが、外側のプラスチック製フランジ330がその前方に対向する表面上に膨張可能な空気袋331、およびこの空気袋の前面側にゲル充填フランジ332を設けた点で異なる。空気袋331は所望通りに膨張または収縮させ、患者の解剖学的構造に最適フィットさせることができる。膨張可能な空気袋331は、特許文献3(米国特許第4649913号)に記載の構成と同様とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部から体内に突入するよう構成したチューブ状のシャフト(1)、および前記シャフト(1)に取り付け、患者の外側皮膚表面に接触し得る皮膚接触面(26,126,226)を有するフランジ部(2,122,222)を備える、医療外科用のチューブ組立体であって、前記皮膚接触面(26,126,226)を、皮膚に接触するゲル充填部材(22,122,227,332)により設ける構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブ組立体において、前記ゲル充填部材(22,122,227,332)は、皮膚に全体で接触する表面を付与する構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチューブ組立体において、前記フランジ部は、外側フランジ(130)を有し、また前記ゲル充填部材(122)を前記外側フランジ130と皮膚表面との間に配置する構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のチューブ組立体において、前記ゲル充填部材(122)を、前記外側フランジ130とは別個のコンポーネントとして設ける構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項5】
請求項1または2に記載のチューブ組立体において、前記フランジ部を、ゲル状物質を有し、かつ皮膚に対向して適合可能な皮膚対向面(26)を有するフランジ(22)により設ける構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項6】
請求項5に記載のチューブ組立体において、前記適合可能な皮膚接触面を、可撓性プラスチック材料の薄い壁(26)によって設ける構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載のチューブ組立体において、前記フランジ(222)は、複数のゲル充填部材(227)を有する構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載のチューブ組立体において、前記フランジ部は外側フランジ(330)を有し、前記ゲル充填部材(332)は患者の皮膚表面に接触し得る表面を有し、また前記ガス充填部材(331)を、前記外側フランジ(330)と前記ゲル充填部材(332)との間に配置する構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のチューブ組立体において、前記ガス充填部材(331)を、膨張可能な構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項10】
気管切開開口部から気管内に突入するよう構成したチューブ状のシャフト(1)、および前記シャフトに取り付け、前記シャフト側とは反対側で側方に突出するフランジ部(2,122,222)を有する気管切開用のチューブ組立体であって、前記フランジ部(2,122,222)は、患者の首の外側皮膚表面に接触し得る皮膚接触面(26,126,226)を有し、かつ患者の首に組立体を確実に固定するために使用するテープを受け入れる開孔(28)を設けるものとし、前記皮膚接触面(26,126,226)を、皮膚表面に接触し得るゲル充填部材(22,122,227,332)に設ける構成としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項に記載のチューブ組立体において、前記ゲルをシリコーン材料またはヒドロゲルとしたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の組立体において、前記フランジ部(2)を、シャフト(1)に沿って移動可能としたことを特徴とする、チューブ組立体。
【請求項13】
開口部から体内に突入するよう構成したチューブ状のシャフト(101)、および前記シャフト(101)に取り付け、かつ皮膚対向表面を有するフランジ(130)を有する種類のチューブ組立体用のゲル充填コンポーネント(122)において、前記ゲル充填コンポーネント(122)は、前記フランジ(130)の皮膚対向表面と患者の皮膚との間に配置するようにシャフト(101)に沿って摺動可能とし、また、前記ゲル充填コンポーネント(122)は、使用にあたり、患者の皮膚に接触するよう構成した適合面(126)を生ずる構成としたことを特徴とする、ゲル充填コンポーネント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−528695(P2010−528695A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509882(P2010−509882)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001743
【国際公開番号】WO2008/145965
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC