医療機器用天板
【課題】患者が載置され、大きな曲げモーメントが作用した場合において、優れた強度をもつ医療機器用天板を提供する。
【解決手段】コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキン40a、40bの厚みtS(mm)と、下面スキン30の厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板。
【解決手段】コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキン40a、40bの厚みtS(mm)と、下面スキン30の厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強度に優れ、X線診断装置等に好適な医療機器用天板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置や、CTスキャナに用いられる医療機器用天板は、その上に載置される患者の体重を支えるために十分な強度、剛性を備えるとともに、撮影画像を鮮明にするためにX線透過性に優れた硬質のプラスチックからなるコアと繊維強化プラスチック (FRP)製のスキンとのサンドイッチ構造として構成されたものが多く用いられている。
【0003】
天板は、X線診断装置やCTスキャナ内で患者を任意の位置に固定して撮影する必要があるため、足元側を本体に固定した片持ち状態で使用されることが多い。天板の十分な曲げ強度を得るために、使用材料の検討や、コアやスキンの厚み増大などの検討が行われている。しかしながら、コアやスキン厚みの増大は、コストアップだけではなくX線透過性の悪化につながるため、単純に厚みを増大するのではなく、より最適にコアやスキン厚みや材料配置を設計することが求められている。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1では曲げモーメントが作用する時に、天板が凸側(引張側)となる上面スキンを高い引張り強度を有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成し、凹側(圧縮側)となる下面スキンを高い圧縮強度を有するCFRPで構成する事が提案されている。また、特許文献2では複数のFRP層からなるスキン層において、曲げモーメントが作用した時に、引張側となる上面スキン層の最もコア側に位置するFRP層の材料に、そのFRP層の外側に隣接するFRP層よりも圧縮強度の高い材料を配置し、逆に圧縮側となる下面スキン層では最もコア側に位置するFRP層の材料に、そのFRP層の外側に隣接するFRP層よりも引張強度の大きい材料を配置する事が提案されている。
【0005】
このような天板に対し、特許文献3にあるような天板では、天板支持部となる根元側のX線透過範囲外側にフレームが取り付けられている。かかる構成の天板においては、上記片持ち曲げとなる天板とは異なり、フレームの取り付け部界面で応力集中が発生するため、前述の提案構成ではこの問題点を解決することが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−62208号公報
【特許文献2】特開2004−216021号公報
【特許文献3】特開平7−265301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の天板の上述した問題点に鑑みてされたもので、X線透過範囲外側にフレームが取り付けられた天板において、優れた強度をもつ医療機器用天板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明では、コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキンの厚みtS(mm)と、下面スキンの厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板が提供される。
【0009】
また、前記補強部が、前記側面スキンと前記フレームとが接する部位を含むように設けられることが好ましい。
【0010】
さらにまた、前記補強部に少なくとも1層の繊維強化プラスチック(FRP)を含むことも好ましい。ここで、前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して30度〜60度および/または−30度〜−60度に配向する層を含むことができる。また、前記補強部に含まれるFRPとしてを、医療機器用天板の長手方向に対して70度〜110度に配向する層を含むこともできる。
【0011】
さらに、前記FRPは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を少なくとも含むことも好ましい。
【0012】
また、前記補強部は、別工程で成形された前記FRPを前記側面スキンに接合してなることが好ましい。
【0013】
上記いずれかの場合において、前記補強部に少なくとも1層の金属板を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、2つの側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、側面スキンの厚みtSと下面スキン厚みtLとがtS>tLの関係にある補強部を少なくとも一方の側面スキンに設けることによって、曲げモーメントが作用した時にフレームの取り付け部界面に集中する応力を効果的に低減することが出来、天板の強度を向上させる効果がある。
【0015】
また、側面スキンとフレームが接する部位を含む一部分にのみ補強部を設けることによっても同様の効果が得られ、長手方向全域に補強部を設ける場合に比べ、材料コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における天板の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図3】本発明における天板の側面図であり、(a)は図1の右側から見た側面図、(b)は図1の左側から見た側面図である。
【図4】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す天板の斜視図である。
【図6】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図5のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図5のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図7】本発明における補強部の構成を示す概略図である。
【図8】本発明における補強部の他の構成を示す概略図である。
【図9】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の斜視図である。
【図10】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の断面図であり、(a)は図9のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図9のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図11】本発明における他の実施態様に係る概略形状を示す天板の斜視図である。
【図12】本発明における他の実施態様に係る概略形状を示す天板の断面図であり、(a)は図11のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図11のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図13】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の側面図である。
【図14】本発明の実施例における強度評価の条件を示した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明における天板の概略斜視図、図2(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、図2(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。図1、図2に示すように、天板1は、コア10とこのコア10を包囲するように被着させた、上面スキン20、下面スキン30、側面スキン40a、40bからなるサンドイッチ構造を有している。また、この天板1の左右側部には、外方に突出する状態でフレーム50が天板長手方向に沿って接着層60を介して取り付けられている。
【0019】
天板1の断面は、患者が横臥した際に十分にX線透過幅を確保しつつ、軽量化を両立させる点から、台形や矩形とする場合が多い。また、上面スキン20は、図2に示すような平板状のもの以外に、患者の姿勢を安定な状態に保つために凹形の曲面状としてもよい。さらに、上面スキン20だけでなく、コア10全体の断面形状が三日月形状の断面を有していてもよい。
【0020】
天板1の大きさは、用途等にもよるが、横臥した状態の患者がX線透過範囲に入るように、身長方向に2000mm以上、幅方向に200mm〜500mm、厚みは30mm〜70mm程度が一般的に用いられる。
【0021】
上記のような天板1は、例えば、コアに強化繊維を巻き付け、加熱、加圧してコアとスキンとを一体成形したり、コアの上下面に強化繊維のプリプレグを配し、同様に一体成形したりすることができる。また、別途成形したスキンとコアを貼り合わせてもよい。
【0022】
コア10は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、アクリルフォーム、ポリメタクリルイミドフォーム、酢酸セルロースフォーム、エポキシフォーム、フェノールフォームなどのプラスチック発泡体を用いることができる。これらのプラスチック発泡体は、X線透過性を確保するために高剛性・高強度の要求値を満足する範囲内で可能な限り低密度であることが好ましく、中でも安価で均一な物性が確保できるアクリルフォームが好適に用いられる。
【0023】
スキンは、FRP層を含んでいる事が好ましく、厚みは用途、天板の大きさや用いる強化繊維の種類、特性、形態等にもよるが通常、1〜8mm程度である。スキンの表面は塗装されている場合もあり、FRP層を形成しているマトリクス樹脂そのものが表面である場合もある。
【0024】
FRP層は、強化繊維とマトリクス樹脂を含んで構成される。強化繊維としては、炭素繊維(黒鉛繊維を含む)、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の少なくとも1種を用いることができるが、高強度、高弾性率のものが得られ、しかもX線透過性に優れている炭素繊維を用いることが好ましい。なお、これらの強化繊維は、平織、朱子織、綾織、すだれ織などの織物や、ストランドなどの形態で用いられる。
【0025】
マトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる事が出来る。なかでも、炭素繊維との接着性や成形性を考慮すると、エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
図3(a)は、図1に示す天板1の側面スキン40a側から見た側面図、図3(b)は図1の天板1の側面スキン40b側から見た側面図である。天板1において、曲げモーメントが負荷された場合、図3に示す側面スキン40a、40bの外方に取り付けられたフレーム50の取り付け部境界X及びYに応力集中が発生する。そこで、十分な強度を確保するため、図2に示すように側面スキン40a、40bの少なくとも一方の厚みtSが下面スキン30の厚みtLに対して、tS>tLの関係を有することが本発明では重要である。
【0027】
側面スキン40a、40bは、下面スキン30と異なった厚みや積層構成であってよいが、連結部分が完全に不連続である場合、前記連結部分の強度が著しく低くなってしまう恐れがある。したがって、側面スキン40a、40bと下面スキン30の少なくとも1層は連続になっていることが好ましい。
【0028】
フレーム50は、図2(b)に示すように接着層60を介して取り付けられており、例えばアルミ合金を押し出し成形して構成されたものが好適に用いられる。フレーム50の取り付けに用いる接着剤は、曲げモーメント作用時に図3に示す境界X及びYで発生する応力を吸収させるために弾性接着剤を使用することが好ましい。弾性接着剤は、剥離強度が高く、弾性に富み、かつ伸びの大きい接着剤であり、通常引張弾性率は1GPa〜20GPaで、破壊伸びは1〜50%程度のものである。また、取り付け範囲について、図2(b)では側面スキン40a、40bの途中までになっているが、側面スキン40a、40bの下端部まで広げることも可能である。
【0029】
図4は、図2に示す本発明の別の実施形態である。図4(a)(b)は、図2(a)(b)に示す側面スキン40a、40bと下面スキン30を一つの連続な下面スキン31とし、側面に補強部100を天板長手方向全域に配した態様を示したものである。
【0030】
図5〜6は、図1、2、4に示す本発明の別の実施形態である。図5は、別の実施形態を示す斜視図、図6(a)は図5のa−a’ 線に沿う断面図、図6(b)は図5のb−b’ 線に沿う断面図である。なお、図5に示すb−b’ 線は、70で示す補強範囲を含んでいるものとする。図5〜6に示す形態では、補強部100を長手方向全域ではなく、図5に示すように、図3に示すフレーム50の取り付け部境界X及びYを含む一部分を補強範囲70としている。また本形態においては、補強部100を長手方向全域ではなく一部分に配置するため、長手方向全域に配置する場合に比べ、材料コストを抑えることが出来る。
【0031】
また、図5〜6示す形態では、コア10の形状を変えずに補強部100を配置してしまうと、図5に示す補強範囲70の表面には段差ができてしまうことになり、この段差によってフレーム60の取り付け精度、あるいは意匠性などが低下する問題が発生するおそれがある。このような段差をなくすために、あらかじめ補強部100を配置する範囲のコア10を、補強部100の厚み分削っておくことが好ましい。補強部100は、樹脂が硬化していない状態で配置し、加熱・硬化して一体成形したり、あらかじめ別工程で成形したFRP硬化板や金属板を配置し、同様に一体成形したりすること等が可能である。
【0032】
また、図5〜6に示す形態において、側面スキン40a、40bと下面スキン30の少なくとも1層は連続になっていることが好ましく、より好ましくは側面スキン40a、40bと下面スキン30が同じ構成で連続していることである。
【0033】
図3に示すフレーム50の取り付け部境界X及びYでは、曲げモーメントが作用すると、天板長手方向の引張り・圧縮、天板厚み方向の引張り・圧縮、せん断のいずれか、あるいは組み合わせの大きな応力が発生する。したがって、補強部100は設計の自由度が高いFRPを少なくとも1層含んでいることが好ましい。さらに、少なくとも1層の金属プレートを含むことも可能である。また、図4、6に示す補強部100はコア10側に配置されているが、下面スキン31の外側や層間にも配置することが可能である。
【0034】
図7、8に補強部100に含まれるFRPの積層例101,102を示す。補強部100に含まれるFRPとして、図3に示す境界X及びYにおいて、せん断応力が大きくなる場合には、図7に示すように、天板の長手方向(0度方向)に対して101b、101cのような30度〜60度、又は−30度〜−60度の範囲、より好ましくは40度〜50度又は−40度〜−50度の範囲、さらに好ましくは±45度方向に配向させた層を少なくとも1層含んでいることが好ましい。
【0035】
また、図3に示す境界X及びYにおいて、天板の厚み方向の引張・圧縮応力が大きくなる場合には、図8に示すように、天板の長手方向(0度方向)に対して102b、102cのような70度〜110度の範囲、より好ましくは80度〜100度の範囲、さらに好ましくは90度方向に配向させた層を少なくとも1層含んでいることが好ましい。このように境界X及びYに発生する応力によって、補強部100に含まれるFRPの積層厚みや配向角度の割合を変えて配置することが可能である。
【0036】
補強部100に含まれるFRPは、平織、朱子織、綾織、すだれ織などの織物基材や繊維を一方向に揃えたプリプレグシートなどで構成される。前記FRPは高強度のものが得られ、積層枚数を少なくできることなどからCFRPであることが好ましい。
【実施例】
【0037】
有限要素法を用いて本発明の効果を確認した。図9、図10は実施例1の概略図、図11,12は実施例2の概略図を示している。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0038】
図9〜12に示す天板2の全長は3000mm、幅は500mm、厚みは35mmとし、断面形状は台形で、コア11は弾性率0.07GPaのアクリルフォームとし、コア11の周りを上面スキン21と下面スキン32と側面スキン41aと41bで包囲されたサンドイッチ構造とした。
【0039】
スキン層は全て同じ構成とし、天板長手方向を0度として0度方向弾性率80GPa、90度方向弾性率24GPa、0度方向引張強度0.57GPa、0度方向圧縮強度0.91GPa、90度方向引張強度0.16GPa、90度方向圧縮強度0.3GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.65mmの朱子織クロス2層、0度方向弾性率140GPa、90度方向弾性率8.4GPa、0度方向引張強度1.9GPa、0度方向圧縮強度1.5GPa、90度方向引張強度0.07GPa、90度方向圧縮強度0.24GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.65mmのすだれ織クロス1層で構成した。
【0040】
側面スキン41a、42bの外側のフレーム51は、天板2の根元から長手方向に沿って1900mm位置まで取り付けられ、弾性率69.0GPaのアルミ合金とした。また、側面スキン41a、41bとフレーム51間の接着層61は厚みを0.9mmとし、接着剤の弾性率を2.0GPaとした。
【0041】
図9、10に示す実施例1では、補強部110を長手方向全域に設けた。一方、図11、12に示す実施例2では、長手方向の一部分に設けた。長手方向の一部分に補強部110を設ける一例を図13に例示した。図13(a)は天板2の側面スキン41a側から見た側面図、図13(b)は天板2の側面スキン41b側から見た側面図である。実施例2では、図13で示すフレーム51の取り付け境界X’、及びY’を中心に長手方向200mmの範囲、すなわち、天板2先端から1,000〜1,200mmの範囲(根元から1,800〜2,000mmの範囲)に配置した。なお、補強部110はFRP製で、以下に示す構成とした。
【0042】
<補強部構成>
0度(90度)方向弾性率5.4GPa、引張強度0.5GPa、圧縮強度0.7GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.36mmの平織クロスを天板2の長手方向に対して0度(90度)方向に4層、+45度方向2層、−45度方向に2層積層した。
【0043】
天板2の側面スキン41a側から見た側面図である図14に強度評価の荷重拘束条件を示した。強度評価は、図14の中の200で示したフレーム61の根元から200mm〜700mm範囲を固定し、201で示す、天板の先端から850mm位置に剛性条件の約4倍に相当する8.5kNの集中荷重を負荷して実施した。
【0044】
(1)実施例1
上記構成の補強部110を長手方向全域のコア側に配置した場合について、有限要素法を用いて強度解析を実施した。
【0045】
(2)実施例2
上記構成の補強部110を側面スキン41とフレーム61の接する境界点Yを含む長手方向200mmの範囲に配置した場合について、強度解析を実施した。
【0046】
(3)比較例1
図9〜12に示す実施例において、補強部110がない場合について、有限要素法を用いて強度解析を実施した。
【0047】
強度解析より各要素における応力値を求め、(1)式から複合材料の破壊指標であるTsai−wu値ηを算出した。
η=F1σ11+F2σ22+F11σ112+F22σ222+F66σ122+2F12σ11σ22 (1)
σ11は天板長手方向の応力、σ22は天板長手直交方向の応力、σ12は面内せん断応力である。
また(1)式中の各係数は(2)〜(7)式で定義される。
F1=1/Xt+1/Xc (2)
F2=1/Yt+1/Yc (3)
F11=−1/XtXc (4)
F22=−1/YtYc (5)
F66=1/S2 (6)
F12=f(F11F22)1/2 (7)
Xtは天板長手方向の引張強度、Xcは天板長手直交方向の圧縮強度、Ytは天板長手直交方向の引張強度、Ycは天板長手直交方向の圧縮強度、Sは面内せん断強度である。fは−1<f<1の値でf=−0.5として計算した。Tsai−wu値η≧1で破壊すると判断し、最大Tsai−wu値の逆数を安全率と定義して結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の結果のとおり、比較例1に対して、実施例1で約97%、実施例2で約86%安全率が向上し、補強部110の効果を確認できた。
また、実施例1と実施例2で同程度の効果が得られており、材料コストを抑えることが出来る点で、実施例2の形態がより有効であることが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
1: 天板
10、11:コア
20、21:上面スキン
30、31、32:下面スキン
40a、41a:側面スキン(右)
40b、41b:側面スキン(左)
50:フレーム
60:接着層
100、110:補強部
【技術分野】
【0001】
本発明は強度に優れ、X線診断装置等に好適な医療機器用天板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置や、CTスキャナに用いられる医療機器用天板は、その上に載置される患者の体重を支えるために十分な強度、剛性を備えるとともに、撮影画像を鮮明にするためにX線透過性に優れた硬質のプラスチックからなるコアと繊維強化プラスチック (FRP)製のスキンとのサンドイッチ構造として構成されたものが多く用いられている。
【0003】
天板は、X線診断装置やCTスキャナ内で患者を任意の位置に固定して撮影する必要があるため、足元側を本体に固定した片持ち状態で使用されることが多い。天板の十分な曲げ強度を得るために、使用材料の検討や、コアやスキンの厚み増大などの検討が行われている。しかしながら、コアやスキン厚みの増大は、コストアップだけではなくX線透過性の悪化につながるため、単純に厚みを増大するのではなく、より最適にコアやスキン厚みや材料配置を設計することが求められている。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1では曲げモーメントが作用する時に、天板が凸側(引張側)となる上面スキンを高い引張り強度を有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で構成し、凹側(圧縮側)となる下面スキンを高い圧縮強度を有するCFRPで構成する事が提案されている。また、特許文献2では複数のFRP層からなるスキン層において、曲げモーメントが作用した時に、引張側となる上面スキン層の最もコア側に位置するFRP層の材料に、そのFRP層の外側に隣接するFRP層よりも圧縮強度の高い材料を配置し、逆に圧縮側となる下面スキン層では最もコア側に位置するFRP層の材料に、そのFRP層の外側に隣接するFRP層よりも引張強度の大きい材料を配置する事が提案されている。
【0005】
このような天板に対し、特許文献3にあるような天板では、天板支持部となる根元側のX線透過範囲外側にフレームが取り付けられている。かかる構成の天板においては、上記片持ち曲げとなる天板とは異なり、フレームの取り付け部界面で応力集中が発生するため、前述の提案構成ではこの問題点を解決することが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−62208号公報
【特許文献2】特開2004−216021号公報
【特許文献3】特開平7−265301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の天板の上述した問題点に鑑みてされたもので、X線透過範囲外側にフレームが取り付けられた天板において、優れた強度をもつ医療機器用天板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明では、コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキンの厚みtS(mm)と、下面スキンの厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板が提供される。
【0009】
また、前記補強部が、前記側面スキンと前記フレームとが接する部位を含むように設けられることが好ましい。
【0010】
さらにまた、前記補強部に少なくとも1層の繊維強化プラスチック(FRP)を含むことも好ましい。ここで、前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して30度〜60度および/または−30度〜−60度に配向する層を含むことができる。また、前記補強部に含まれるFRPとしてを、医療機器用天板の長手方向に対して70度〜110度に配向する層を含むこともできる。
【0011】
さらに、前記FRPは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を少なくとも含むことも好ましい。
【0012】
また、前記補強部は、別工程で成形された前記FRPを前記側面スキンに接合してなることが好ましい。
【0013】
上記いずれかの場合において、前記補強部に少なくとも1層の金属板を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、2つの側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、側面スキンの厚みtSと下面スキン厚みtLとがtS>tLの関係にある補強部を少なくとも一方の側面スキンに設けることによって、曲げモーメントが作用した時にフレームの取り付け部界面に集中する応力を効果的に低減することが出来、天板の強度を向上させる効果がある。
【0015】
また、側面スキンとフレームが接する部位を含む一部分にのみ補強部を設けることによっても同様の効果が得られ、長手方向全域に補強部を設ける場合に比べ、材料コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における天板の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図3】本発明における天板の側面図であり、(a)は図1の右側から見た側面図、(b)は図1の左側から見た側面図である。
【図4】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す天板の斜視図である。
【図6】本発明における天板の長手方向に直交する断面形状のうち、(a)は図5のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図5のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図7】本発明における補強部の構成を示す概略図である。
【図8】本発明における補強部の他の構成を示す概略図である。
【図9】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の斜視図である。
【図10】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の断面図であり、(a)は図9のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図9のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図11】本発明における他の実施態様に係る概略形状を示す天板の斜視図である。
【図12】本発明における他の実施態様に係る概略形状を示す天板の断面図であり、(a)は図11のa−a’ 線に沿う断面図、(b)は図11のb−b’ 線に沿う断面図である。
【図13】本発明における実施態様に係る概略形状を示す天板の側面図である。
【図14】本発明の実施例における強度評価の条件を示した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明における天板の概略斜視図、図2(a)は図1のa−a’ 線に沿う断面図、図2(b)は図1のb−b’ 線に沿う断面図である。図1、図2に示すように、天板1は、コア10とこのコア10を包囲するように被着させた、上面スキン20、下面スキン30、側面スキン40a、40bからなるサンドイッチ構造を有している。また、この天板1の左右側部には、外方に突出する状態でフレーム50が天板長手方向に沿って接着層60を介して取り付けられている。
【0019】
天板1の断面は、患者が横臥した際に十分にX線透過幅を確保しつつ、軽量化を両立させる点から、台形や矩形とする場合が多い。また、上面スキン20は、図2に示すような平板状のもの以外に、患者の姿勢を安定な状態に保つために凹形の曲面状としてもよい。さらに、上面スキン20だけでなく、コア10全体の断面形状が三日月形状の断面を有していてもよい。
【0020】
天板1の大きさは、用途等にもよるが、横臥した状態の患者がX線透過範囲に入るように、身長方向に2000mm以上、幅方向に200mm〜500mm、厚みは30mm〜70mm程度が一般的に用いられる。
【0021】
上記のような天板1は、例えば、コアに強化繊維を巻き付け、加熱、加圧してコアとスキンとを一体成形したり、コアの上下面に強化繊維のプリプレグを配し、同様に一体成形したりすることができる。また、別途成形したスキンとコアを貼り合わせてもよい。
【0022】
コア10は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、アクリルフォーム、ポリメタクリルイミドフォーム、酢酸セルロースフォーム、エポキシフォーム、フェノールフォームなどのプラスチック発泡体を用いることができる。これらのプラスチック発泡体は、X線透過性を確保するために高剛性・高強度の要求値を満足する範囲内で可能な限り低密度であることが好ましく、中でも安価で均一な物性が確保できるアクリルフォームが好適に用いられる。
【0023】
スキンは、FRP層を含んでいる事が好ましく、厚みは用途、天板の大きさや用いる強化繊維の種類、特性、形態等にもよるが通常、1〜8mm程度である。スキンの表面は塗装されている場合もあり、FRP層を形成しているマトリクス樹脂そのものが表面である場合もある。
【0024】
FRP層は、強化繊維とマトリクス樹脂を含んで構成される。強化繊維としては、炭素繊維(黒鉛繊維を含む)、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維等の少なくとも1種を用いることができるが、高強度、高弾性率のものが得られ、しかもX線透過性に優れている炭素繊維を用いることが好ましい。なお、これらの強化繊維は、平織、朱子織、綾織、すだれ織などの織物や、ストランドなどの形態で用いられる。
【0025】
マトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や、ABS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いる事が出来る。なかでも、炭素繊維との接着性や成形性を考慮すると、エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
図3(a)は、図1に示す天板1の側面スキン40a側から見た側面図、図3(b)は図1の天板1の側面スキン40b側から見た側面図である。天板1において、曲げモーメントが負荷された場合、図3に示す側面スキン40a、40bの外方に取り付けられたフレーム50の取り付け部境界X及びYに応力集中が発生する。そこで、十分な強度を確保するため、図2に示すように側面スキン40a、40bの少なくとも一方の厚みtSが下面スキン30の厚みtLに対して、tS>tLの関係を有することが本発明では重要である。
【0027】
側面スキン40a、40bは、下面スキン30と異なった厚みや積層構成であってよいが、連結部分が完全に不連続である場合、前記連結部分の強度が著しく低くなってしまう恐れがある。したがって、側面スキン40a、40bと下面スキン30の少なくとも1層は連続になっていることが好ましい。
【0028】
フレーム50は、図2(b)に示すように接着層60を介して取り付けられており、例えばアルミ合金を押し出し成形して構成されたものが好適に用いられる。フレーム50の取り付けに用いる接着剤は、曲げモーメント作用時に図3に示す境界X及びYで発生する応力を吸収させるために弾性接着剤を使用することが好ましい。弾性接着剤は、剥離強度が高く、弾性に富み、かつ伸びの大きい接着剤であり、通常引張弾性率は1GPa〜20GPaで、破壊伸びは1〜50%程度のものである。また、取り付け範囲について、図2(b)では側面スキン40a、40bの途中までになっているが、側面スキン40a、40bの下端部まで広げることも可能である。
【0029】
図4は、図2に示す本発明の別の実施形態である。図4(a)(b)は、図2(a)(b)に示す側面スキン40a、40bと下面スキン30を一つの連続な下面スキン31とし、側面に補強部100を天板長手方向全域に配した態様を示したものである。
【0030】
図5〜6は、図1、2、4に示す本発明の別の実施形態である。図5は、別の実施形態を示す斜視図、図6(a)は図5のa−a’ 線に沿う断面図、図6(b)は図5のb−b’ 線に沿う断面図である。なお、図5に示すb−b’ 線は、70で示す補強範囲を含んでいるものとする。図5〜6に示す形態では、補強部100を長手方向全域ではなく、図5に示すように、図3に示すフレーム50の取り付け部境界X及びYを含む一部分を補強範囲70としている。また本形態においては、補強部100を長手方向全域ではなく一部分に配置するため、長手方向全域に配置する場合に比べ、材料コストを抑えることが出来る。
【0031】
また、図5〜6示す形態では、コア10の形状を変えずに補強部100を配置してしまうと、図5に示す補強範囲70の表面には段差ができてしまうことになり、この段差によってフレーム60の取り付け精度、あるいは意匠性などが低下する問題が発生するおそれがある。このような段差をなくすために、あらかじめ補強部100を配置する範囲のコア10を、補強部100の厚み分削っておくことが好ましい。補強部100は、樹脂が硬化していない状態で配置し、加熱・硬化して一体成形したり、あらかじめ別工程で成形したFRP硬化板や金属板を配置し、同様に一体成形したりすること等が可能である。
【0032】
また、図5〜6に示す形態において、側面スキン40a、40bと下面スキン30の少なくとも1層は連続になっていることが好ましく、より好ましくは側面スキン40a、40bと下面スキン30が同じ構成で連続していることである。
【0033】
図3に示すフレーム50の取り付け部境界X及びYでは、曲げモーメントが作用すると、天板長手方向の引張り・圧縮、天板厚み方向の引張り・圧縮、せん断のいずれか、あるいは組み合わせの大きな応力が発生する。したがって、補強部100は設計の自由度が高いFRPを少なくとも1層含んでいることが好ましい。さらに、少なくとも1層の金属プレートを含むことも可能である。また、図4、6に示す補強部100はコア10側に配置されているが、下面スキン31の外側や層間にも配置することが可能である。
【0034】
図7、8に補強部100に含まれるFRPの積層例101,102を示す。補強部100に含まれるFRPとして、図3に示す境界X及びYにおいて、せん断応力が大きくなる場合には、図7に示すように、天板の長手方向(0度方向)に対して101b、101cのような30度〜60度、又は−30度〜−60度の範囲、より好ましくは40度〜50度又は−40度〜−50度の範囲、さらに好ましくは±45度方向に配向させた層を少なくとも1層含んでいることが好ましい。
【0035】
また、図3に示す境界X及びYにおいて、天板の厚み方向の引張・圧縮応力が大きくなる場合には、図8に示すように、天板の長手方向(0度方向)に対して102b、102cのような70度〜110度の範囲、より好ましくは80度〜100度の範囲、さらに好ましくは90度方向に配向させた層を少なくとも1層含んでいることが好ましい。このように境界X及びYに発生する応力によって、補強部100に含まれるFRPの積層厚みや配向角度の割合を変えて配置することが可能である。
【0036】
補強部100に含まれるFRPは、平織、朱子織、綾織、すだれ織などの織物基材や繊維を一方向に揃えたプリプレグシートなどで構成される。前記FRPは高強度のものが得られ、積層枚数を少なくできることなどからCFRPであることが好ましい。
【実施例】
【0037】
有限要素法を用いて本発明の効果を確認した。図9、図10は実施例1の概略図、図11,12は実施例2の概略図を示している。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0038】
図9〜12に示す天板2の全長は3000mm、幅は500mm、厚みは35mmとし、断面形状は台形で、コア11は弾性率0.07GPaのアクリルフォームとし、コア11の周りを上面スキン21と下面スキン32と側面スキン41aと41bで包囲されたサンドイッチ構造とした。
【0039】
スキン層は全て同じ構成とし、天板長手方向を0度として0度方向弾性率80GPa、90度方向弾性率24GPa、0度方向引張強度0.57GPa、0度方向圧縮強度0.91GPa、90度方向引張強度0.16GPa、90度方向圧縮強度0.3GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.65mmの朱子織クロス2層、0度方向弾性率140GPa、90度方向弾性率8.4GPa、0度方向引張強度1.9GPa、0度方向圧縮強度1.5GPa、90度方向引張強度0.07GPa、90度方向圧縮強度0.24GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.65mmのすだれ織クロス1層で構成した。
【0040】
側面スキン41a、42bの外側のフレーム51は、天板2の根元から長手方向に沿って1900mm位置まで取り付けられ、弾性率69.0GPaのアルミ合金とした。また、側面スキン41a、41bとフレーム51間の接着層61は厚みを0.9mmとし、接着剤の弾性率を2.0GPaとした。
【0041】
図9、10に示す実施例1では、補強部110を長手方向全域に設けた。一方、図11、12に示す実施例2では、長手方向の一部分に設けた。長手方向の一部分に補強部110を設ける一例を図13に例示した。図13(a)は天板2の側面スキン41a側から見た側面図、図13(b)は天板2の側面スキン41b側から見た側面図である。実施例2では、図13で示すフレーム51の取り付け境界X’、及びY’を中心に長手方向200mmの範囲、すなわち、天板2先端から1,000〜1,200mmの範囲(根元から1,800〜2,000mmの範囲)に配置した。なお、補強部110はFRP製で、以下に示す構成とした。
【0042】
<補強部構成>
0度(90度)方向弾性率5.4GPa、引張強度0.5GPa、圧縮強度0.7GPa、せん断強度0.1GPa、厚み0.36mmの平織クロスを天板2の長手方向に対して0度(90度)方向に4層、+45度方向2層、−45度方向に2層積層した。
【0043】
天板2の側面スキン41a側から見た側面図である図14に強度評価の荷重拘束条件を示した。強度評価は、図14の中の200で示したフレーム61の根元から200mm〜700mm範囲を固定し、201で示す、天板の先端から850mm位置に剛性条件の約4倍に相当する8.5kNの集中荷重を負荷して実施した。
【0044】
(1)実施例1
上記構成の補強部110を長手方向全域のコア側に配置した場合について、有限要素法を用いて強度解析を実施した。
【0045】
(2)実施例2
上記構成の補強部110を側面スキン41とフレーム61の接する境界点Yを含む長手方向200mmの範囲に配置した場合について、強度解析を実施した。
【0046】
(3)比較例1
図9〜12に示す実施例において、補強部110がない場合について、有限要素法を用いて強度解析を実施した。
【0047】
強度解析より各要素における応力値を求め、(1)式から複合材料の破壊指標であるTsai−wu値ηを算出した。
η=F1σ11+F2σ22+F11σ112+F22σ222+F66σ122+2F12σ11σ22 (1)
σ11は天板長手方向の応力、σ22は天板長手直交方向の応力、σ12は面内せん断応力である。
また(1)式中の各係数は(2)〜(7)式で定義される。
F1=1/Xt+1/Xc (2)
F2=1/Yt+1/Yc (3)
F11=−1/XtXc (4)
F22=−1/YtYc (5)
F66=1/S2 (6)
F12=f(F11F22)1/2 (7)
Xtは天板長手方向の引張強度、Xcは天板長手直交方向の圧縮強度、Ytは天板長手直交方向の引張強度、Ycは天板長手直交方向の圧縮強度、Sは面内せん断強度である。fは−1<f<1の値でf=−0.5として計算した。Tsai−wu値η≧1で破壊すると判断し、最大Tsai−wu値の逆数を安全率と定義して結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の結果のとおり、比較例1に対して、実施例1で約97%、実施例2で約86%安全率が向上し、補強部110の効果を確認できた。
また、実施例1と実施例2で同程度の効果が得られており、材料コストを抑えることが出来る点で、実施例2の形態がより有効であることが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
1: 天板
10、11:コア
20、21:上面スキン
30、31、32:下面スキン
40a、41a:側面スキン(右)
40b、41b:側面スキン(左)
50:フレーム
60:接着層
100、110:補強部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキンの厚みtS(mm)と、下面スキンの厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板。
【請求項2】
前記補強部が、前記側面スキンと前記フレームとが接する部位を含むように設けられることを特徴とする請求項1に記載の医療機器用天板。
【請求項3】
前記補強部に少なくとも1層の繊維強化プラスチック(FRP)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の医療機器用天板。
【請求項4】
前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して30度〜60度および/または−30度〜−60度に配向する層を含むことを特徴とする請求項3に記載の医療機器用天板。
【請求項5】
前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して70度〜110度に配向する層を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の医療機器用天板。
【請求項6】
前記FRPは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を少なくとも含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の医療機器用天板。
【請求項7】
前記補強部は、別工程で成形された前記FRPを前記側面スキンに接合してなることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の医療機器用天板。
【請求項8】
前記補強部に少なくとも1層の金属板を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の医療機器用天板。
【請求項1】
コアの外周を少なくとも2つの側面スキンと下面スキンとで被着させ、少なくとも一方の前記側面スキンの外側にフレームが取り付けられた医療機器用天板において、該側面スキンの少なくとも一部に、側面スキンの厚みtS(mm)と、下面スキンの厚みtL(mm)とがtS>tLの関係にある補強部を有することを特徴とする医療機器用天板。
【請求項2】
前記補強部が、前記側面スキンと前記フレームとが接する部位を含むように設けられることを特徴とする請求項1に記載の医療機器用天板。
【請求項3】
前記補強部に少なくとも1層の繊維強化プラスチック(FRP)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の医療機器用天板。
【請求項4】
前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して30度〜60度および/または−30度〜−60度に配向する層を含むことを特徴とする請求項3に記載の医療機器用天板。
【請求項5】
前記補強部に含まれるFRPとして、医療機器用天板の長手方向に対して70度〜110度に配向する層を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の医療機器用天板。
【請求項6】
前記FRPは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を少なくとも含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の医療機器用天板。
【請求項7】
前記補強部は、別工程で成形された前記FRPを前記側面スキンに接合してなることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の医療機器用天板。
【請求項8】
前記補強部に少なくとも1層の金属板を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の医療機器用天板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−192122(P2012−192122A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60156(P2011−60156)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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