説明

医療機器用気密端子および医療機器

【課題】複数のリードピン間、あるいはリードピンと外装部材との間における放電が起こりにくい医療機器用気密端子および医療機器を提供すること。
【解決手段】電気信号を中継する少なくとも1つの信号用リードピン21,22と、この電気信号よりも高電圧且つ大電流な電力を中継する少なくとも1つの電力用リードピン23と、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23を保持する絶縁部材24と、絶縁部材24が内部に収容され信号用リードピン21,22および電力用リードピン23と絶縁された導体からなる外装部材25と、を備え、絶縁部材24は、電力用リードピン23と外装部材25との間の最短距離が、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の最短距離よりも長くなるように信号用リードピン21,22および電力用リードピン23を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器用気密端子およびこれを備える医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、体内に留置されて疾病の治療や予防に使用される様々な医療機器が知られている。このような医療機器の例として、生体組織に電気信号や電気刺激を与えることで検査や治療等を行うものがある。当該電気信号や電気刺激は、医療機器本体内に設けられた信号発生部で発せられ、体内に留置された電極等にリード(導線)等を介して送られる。信号発生部とリードとの間には、本体の内外の気密あるいは水密を維持しつつ当該電気信号や電気刺激を中継する目的で、気密端子が配置されることが多い。
【0003】
医療機器に使用される気密端子の例として、特許文献1には、絶縁体を貫通するグラウンドピンと、絶縁体を貫通する複数のリードピン(リード線)とを有するマルチピン(多極)タイプの医療機器用気密端子(フィードスルー)が記載されている。特許文献1に記載の医療機器用気密端子において、グラウンドピンは、グラウンドピンおよびリードピンが内部に配置された金属製の外装部材(フェルール)に直接ロウ付けされている。この医療機器用気密端子によれば、医療装置内の重要な電気信号を、電磁妨害波から回避することができるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−40585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の医療機器用気密端子に設けられた複数のリードピンの1つに高電圧且つ大電流の電力を供給すると、高電圧且つ大電流の電力が供給されたリードピンと他のリードピンとの間、あるいは高電圧且つ大電流の電力が供給されたリードピンと外装部材との間で放電(スパーク)が起こるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は複数のリードピン間、あるいはリードピンと外装部材との間における放電が起こりにくい医療機器用気密端子および医療機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の医療機器用気密端子は、電気信号を中継する少なくとも1つの信号用リードピンと、前記電気信号よりも高電圧且つ大電流な電力を中継する少なくとも1つの電力用リードピンと、前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンを保持する絶縁部材と、前記絶縁部材が内部に収容され前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンと絶縁された導体からなる外装部材と、を備え、前記絶縁部材は、前記電力用リードピンと前記外装部材との間の最短距離が、前記信号用リードピンと前記外装部材との間の最短距離よりも長くなるように前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンを保持していることを特徴とする医療機器用気密端子である。
【0008】
また、前記外装部材は、円筒の内面状の内周面が形成された外装本体を有し、前記電力用リードピンは、前記外装本体の中心軸と同軸上に中心軸を有する略円柱状に形成されていることが好ましい。
【0009】
また、前記信号用リードピン、前記電力用リードピン、および前記外装部材は、生体適合性を有する金属材料からなることが好ましい。
【0010】
また、前記信号用リードピンと前記外装部材との間の沿面距離は、前記信号用リードピンと前記外装部材との間の直線距離よりも長いことが好ましい。
【0011】
また、前記電力用リードピンと前記外装部材との間の沿面距離は、前記電力用リードピンと前記外装部材との間の直線距離よりも長いことが好ましい。
【0012】
本発明の医療機器は、体内に配置され、リードを通じて体内組織に対して電気的刺激を与える植込み型の医療機器であって、体内に配置され、前記電気的刺激を与えるための駆動波形を生成する制御回路、および前記制御回路を駆動するための電源が設けられた中空の筐体と、前記筐体に固定され、前記リードを接続可能なコネクタユニットと、前記筐体内の前記制御回路と前記コネクタユニットとを前記筐体内の気密を維持して接続する本発明の医療機器用気密端子と、を備える医療機器である。
【0013】
また、前記制御回路は、前記体内組織が発する電位を検出する電位検出部と、前記電位検出部が検出した電位に基づいて前記電気信号の制御波形を生成して出力する第一出力部と、前記電位検出部が検出した電位に基づいて前記電力を出力する第二出力部と、を有し、前記電位検出部および前記第一出力部は前記信号用リードピンに電気的に接続され、前記第二出力部は前記電力用リードピンに電気的に接続されていることが好ましい。
【0014】
また、前記医療機器は、ペーシング機能を有する植込み型除細動器であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の医療機器用気密端子および医療機器によれば、複数のリードピン間、あるいはリードピンとフェルールとの間における放電が起こりにくい医療機器用気密端子および医療機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の医療機器用気密端子を備える医療機器の構成を示す斜視図である。
【図2】同医療機器の概略構成を示すブロック図である。
【図3】同医療機器の一部の構成を示す斜視図である。
【図4】同医療機器用気密端子を示す平面図である。
【図5】同医療機器用気密端子を示す半断面図である。
【図6】同医療機器用気密端子の変形例の構成を示す半断面図である。
【図7】同医療機器用気密端子の他の変形例の構成を示す図で、(A)は半断面図、(B)は平面図である。
【図8】同医療機器用気密端子の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の医療機器用気密端子20およびこれを備える医療機器1について説明する。図1は、本実施形態の医療機器用気密端子20を備える医療機器1の構成を示す斜視図である
医療機器1は、ペーシング機能を有する植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator, ICD)である。
図1に示すように、医療機器1は、ペーシングおよび除細動のための電気エネルギーを発生する本体2と、本体2に固定されたコネクタユニット13と、心臓100に取り付けられるペーシングリード30および除細動電極40とを備えている。
【0018】
本体2は、中空に形成された筐体3を有し、筐体3の内部には、電源としての電池4、および体内の組織に電気的刺激を与えるための駆動波形を生成する制御回路5が設けられている。
筐体3は、生体適合性が高い材料によって形成されている。具体的には、筐体3の材料としては、チタンやタンタル、ステンレス鋼、あるいはこれらの合金を挙げることができる。また、本実施形態では、筐体3は導体からなり、医療機器1の制御回路5のグラウンド電位と同電位となるように制御回路5と電気的に接続されている。
【0019】
図2は、医療機器1の概略構成を示すブロック図である。
図1および図2に示すように、筐体3の内部に設けられた制御回路5は、電位検出部6、判定回路7、出力部8、および切替手段12を備える。
電位検出部6は、ペーシングリード30の先端に設けられた電位センサー33と電気的に接続されており、電位センサー33によって検出された電位の変化が入力されるようになっている。また、電位検出部6は、電位センサー33によって検出された電位の変化を心電図として記憶するようになっている。なお、電位検出部6は、体外に設けられたモニター装置50との間で無線通信を行って心電図を出力するようになっていてもよい。
【0020】
判定回路7は、電位検出部6に入力された心電図を参照し、心臓100が正常な拍動を保っているか否かを判定するものである。判定回路7は、電位検出部6において一定時間以上電位変化が検出されなかった場合には心臓100の拍動が停止していると判定し、心臓100自身のペースメーカー(洞房結節)による正常な活動電位とは異なる電位変化が検出された場合には心室細動が生じていると判定する。判定回路7は、心臓100の拍動が停止している場合には出力部8へペーシング開始信号を出力し、心室細動が生じていると判定した場合には出力部8へ除細動開始信号を出力するようになっている。
【0021】
出力部8は、ペーシングのための電気信号の制御波形を生成して電気信号を出力するための第一出力部9と、除細動のための電力を出力するための第二出力部10とを備える。出力部8は、第一出力部9と第二出力部10との動作を排他制御により切り替えて駆動するようになっている。
第一出力部9は、判定回路7から出力されたペーシング開始信号を受け付け、ペーシング信号を出力する。ペーシング信号は、外部からの信号によって心臓100を拍動させるために電圧、電流、および周期が予め設定された電気信号である。
【0022】
第二出力部10は、電気エネルギーを蓄えるコンデンサ11を有している。第二出力部10は、判定回路7から出力された除細動開始信号を受け付けてコンデンサ11に電力を蓄え、満充電になった後に高電圧大電流の電力を出力するようになっている。コンデンサ11から出力される電圧は、除細動を行うために必要な電圧に調整されている。本実施形態では、コンデンサ11から出力される電圧が数百ボルト程度になるように設定されている。また、第二出力部10は、電位検出部6が検出した電位変化を参照して、電力の出力タイミングを心室の拍動と同期させるようになっている。
【0023】
切替手段12は、第二出力部10が電力を出力するときに、後述する各信号用リードピン21,22と筐体3とを導通させ、各信号用リードピン21,22を接地させるための手段である。切替手段12は、第二出力部10によって駆動されるようになっている。
【0024】
図3は、医療機器1の一部の構成を分解して示す斜視図である。図4は、医療機器用気密端子20を示す平面図である。図5は、医療機器用気密端子20を示す半断面図である。
図1および図3に示すように、筐体3には、コネクタユニット13に向けられた面に貫通孔3aが形成されており、貫通孔3aは、医療機器用気密端子20によって塞がれている。
【0025】
医療機器用気密端子20は、筐体3内の制御回路5とコネクタユニット13とを電気的に接続するための端子である。
図4および図5に示すように、医療機器用気密端子20は、2つの信号用リードピン21,22と、1つの電力用リードピン23と、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23を保持する絶縁部材24と、絶縁部材24が内部に収容された外装部材25とを備える。
【0026】
2つの信号用リードピン21,22は、それぞれ円柱状に形成されており、一端21a,22aが筐体3の内部に配置され、他端21b,22Bが筐体3の外部でコネクタユニット13の内部に配置されている。2つの信号用リードピン21,22のうちの一方は、筐体3内の制御回路5からコネクタユニット13へペーシング信号を中継するためのものである。2つの信号用リードピン21,22のうちの他方は、後述するペーシングリード30の電位センサー33からの信号をコネクタユニット13から制御回路5へ中継するためのものである。
図3に示すように、2つの信号用リードピン21,22は、それらの一端21a,22aが制御回路5の電位検出部6と第一出力部9とにそれぞれ配線によって接続されている。各信号用リードピン21,22と配線との接続方法としては、たとえば半田付けや溶接などを採用することができる。
【0027】
図3ないし図5に示すように、電力用リードピン23は、円柱状に形成されており、一端23aが筐体3の内部に配置され、他端23bが筐体3の外部でコネクタユニット13の内部に配置されている。電力用リードピン23は、筐体3内の制御回路5からコネクタユニット13へと、コンデンサ11からの上記電力を中継するためのものであり、一端が制御回路5の第二出力部10に配線によって接続されている。
【0028】
各信号用リードピン21,22および電力用リードピン23の材質は、生体適合性を有する材質であることが好ましい。たとえば、各信号用リードピン21,22および電力用リードピン23の材料として、チタンやタンタル、白金、あるいはステンレス鋼などを採用することができる。
【0029】
図3および図4に示すように、絶縁部材24は、円柱形状の外形形状を有し、中心軸線Oと同軸をなす第一貫通孔24aと、第一貫通孔24aと平行に設けられた2つの第二貫通孔24b,24cとが形成されている。絶縁部材24は、絶縁性を有する材料によって形成されている。たとえば、絶縁部材24の材料として樹脂やガラス、あるいはセラミックスなどを採用することができる。
第一貫通孔24aには、電力用リードピン23が挿通されている。第一貫通孔24aに挿通された電力用リードピン23は、その両端がともに突出された状態で絶縁部材24に固定されている。
各第二貫通孔24b,24cは、第一貫通孔24aを間に挟むように互いに離間して設けられている。各第二貫通孔24b,24cには、2つの信号用リードピン21,22がそれぞれ挿通されている。第二貫通孔24b,24cに挿通された信号用リードピン21,22は、その両端がともに突出された状態で絶縁部材24に固定されている。
【0030】
外装部材25は、円筒の内面状の内周面が形成された外装本体25aと、外装本体25aの径方向外側へ向かって広がるフランジ部25bとを有する。外装部材25の材質としては、生体適合性を有する金属材料を採用することができる。このような金属材料としては、筐体3の材料と同様に、たとえばチタンやタンタル、白金などの金属や、Ti−6Al−4Vやコバール、ステンレス鋼などの合金を採用することができる。
【0031】
外装本体25aの内周面は、絶縁部材24の外周面と密着している。これにより、外装本体25aと絶縁部材24との間は気密および水密が確保されている。外装部材25と絶縁部材24とは、圧入や接着などの方法によって固定されている。また、詳細は後述するが、外装本体25aの内周面と、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23とは、絶縁部材24によって絶縁された位置関係になっている。
本実施形態では、外装本体25aの外周面は円柱面状である。本実施形態では、筐体3に形成された貫通孔3aは、外装本体25aが通過可能であり、かつフランジ部25bが通過不能である大きさの円形の開口となるように、外装部材25の形状に合わせて形成されている。
【0032】
フランジ部25bは、筐体3の貫通孔3aの開口の周縁に接触可能であり、筐体3と溶接等により固定されている。本実施形態では、外装部材25は筐体3の外側から貫通孔3aに差し込まれており、フランジ部25bは、筐体3の外表面に接している。
【0033】
次に、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23と、外装部材25との位置関係について説明する。
図4および図5に示すように、外装部材25内に設けられた絶縁部材24は、電力用リードピン23と外装部材25との間の最短距離a1が最大となるように、電力用リードピン23を保持している。本実施形態では、外装本体25aの内周面が円筒の内面状であるので、電力用リードピン23は外装本体25aの中心軸線Oと同軸に配置されている。
【0034】
また、絶縁部材24は、電力用リードピン23と外装部材25との間の最短距離a1が、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の最短距離(たとえば図4、図5に示す最短距離c1)よりも長くなるように、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23を保持している。
本実施形態では、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22との最短距離b1は、外装部材25と信号用リードピン21,22との最短距離c1と等しい。また、図5に示すように、本実施形態では、電力用リードピン23と外装部材25との間の最短距離a1、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22との最短距離b1、および外装部材25と信号用リードピン21,22との最短距離c1は、それぞれ絶縁部材24の外面に沿って測った沿面距離と等しい。
【0035】
図1および図3に示すように、コネクタユニット13は、各信号用リードピン21,22の他端にそれぞれ接続され、ペーシングリード30に形成された後述する2極プラグ31を受入れる信号用アダプタ14と、電力用リードピン23の他端に接続され、除細動用リードに形成された後述するプラグを受入れる電力用アダプタ15とを、カバー16内に有する。
【0036】
なお、本実施形態の医療機器1は、出力部8、医療機器用気密端子20、信号用アダプタ14および電力用アダプタ15からなる出力系統を2系統有している(図1参照)。各出力系統は互いに独立して動作することができるようになっている。本明細書では片方の出力系統のみについて説明するが、他方の出力系統についてもその構成、作用、および効果は同様である。
【0037】
図1に示すように、ペーシングリード30は、信号用アダプタ14に差し込み接続可能な2極プラグ31と、2極プラグ31のそれぞれの端子に一端が固定された2本の導線が絶縁皮膜で覆われた被覆線32と、被覆線32の他端に固定された電位センサー33およびペーシング電極34とを有する。
本実施形態では、2極プラグ31が信号用アダプタ14に接続されたときには、電位センサー33は電位検出部6に電気的に接続され、ペーシング電極34は制御回路5の第一出力部9に電気的に接続されるようになっている(図2参照)。
【0038】
除細動電極40は、同一の構造を有する第一電極41および第二電極42と、第一電極41と第二電極42とにそれぞれ接続された導線を有する除細動リード43とを備える。
図1に示すように、第一電極41は、右室側の心嚢膜上に設置され、第二電極42は、第一電極41と心臓100を挟んで対向する(図1参照。)ように、左室側の心嚢膜上に設置される。
【0039】
除細動リード43は、第一電極41および第二電極42に接続された導線が絶縁性の被覆材によって被覆された被覆線44と、第一電極41および第二電極42が接続された側の端と反対側の端において導線に接続され電力用アダプタ15に差し込み接続可能な単極プラグ45を有している。除細動リード43の単極プラグ45が電力用アダプタ15に接続されたときには、第一電極41および第二電極42は、制御回路5の第二出力部10に電気的に接続されるようになっている。
【0040】
除細動リード43は、電気的な絶縁を保って本体2から第一電極41および第二電極42に電気エネルギーを伝達できるものであれば、その構成は特に限定されない。
【0041】
以上に説明した構成の医療機器用気密端子20および医療機器1の作用について説明する。
医療機器1の使用時には、図1に示すように、第一電極41、第二電極42、ペーシング電極34、および電位センサー33は患者の心臓100に取り付けられ、本体2は患者の胸部、上腹部、あるいは腋下などの皮下に取り付けられる。
【0042】
医療機器1の動作時には、制御回路5の電位検出部6(図2参照)は、電位センサー33からの電位変化の信号を受け付けて記憶する。また、制御回路5の判定回路7は、患者の心臓100において頻脈あるいは徐脈などの異常が生じた場合にこれらの異常を判定する。さらに、判定回路7による判定に基づいて、第一出力部9はペーシング信号をペーシング電極34へ出力する。
また、患者の心臓100において心室細動が生じた場合には、心室細動が生じていることを判定回路7が判定し、判定回路7による判定に基づいて、第二出力部10がコンデンサ11に電力を供給する。さらに、第二出力部10は、コンデンサ11が満充電となった後、切替手段12によって信号用リードピン21,22を接地し、コンデンサ11からの電力を、電力用リードピン23を通じて第一電極41および第二電極42へ出力する。
【0043】
図4および図5に示すように、電力用リードピン23は、外装本体25aの中心軸線Oと同軸に配置されている。このため、電力用リードピン23と外装本体25aの内周面との沿面距離(最短距離a1)は、外装本体25aの内部に電力用リードピン23を配置した場合に内周面からの沿面距離(最短距離a1)が最大となる配置になっている。その結果、電力用リードピン23と外装本体25aとの位置関係は、電力用リードピン23と外装本体25aとの間において、最も放電が起こりにくい位置関係となっている。
【0044】
一方、信号用リードピン21,22と外装本体25aの内周面との沿面距離(最短距離b1)は、電力用リードピン23と外装本体25aとの間の沿面距離(最短距離a1)よりは短いが、信号用リードピン21,22を通じて供給されるペーシング信号によっては外装本体25aとの間で放電が起こらない距離になっている。
また、信号用リードピン21,22と電力用リードピン23との間の沿面距離(最短距離c1)は、信号用リードピン21,22と外装本体25aとの間の沿面距離(最短距離b1)と同等の距離となっている。このため、信号用リードピン21,22から電力用リードピン23への放電は起こらない。
【0045】
また、切替手段12によって信号用リードピン21,22をグラウンドに接地し、その後電力用リードピン23に電力を出力するので、万が一信号用リードピン21,22と電力用リードピン23との間で放電が起こっても、電位センサー33や制御回路5に高電圧が印加される可能性を抑えることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の医療機器用気密端子20および医療機器1によれば、外装部材25の内部において外装部材25との最短距離が最も長くなる位置に電力用リードピン23が配置されているので、外装部材25と電力用リードピン23との間で放電が起こりにくい。
【0047】
さらに、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22のうち、より高電圧且つ大電流の電力を供給するための電力用リードピン23が、外装部材25との最短距離が最も長くなる位置に配置されているので、高電圧や大電流の導通であっても放電が起こりにくい状態を保持しつつ、医療機器用気密端子20をより小型にすることができる。
【0048】
(変形例1)
次に、上述の実施形態の変形例1の医療機器用気密端子20Aについて図6を参照して説明する。図6は、本変形例の医療機器用気密端子20Aの構成を示す半断面図である。
図6に示すように、本変形例の医療機器用気密端子20Aは、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23と外装部材25との間の沿面距離が、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の直線距離よりも長い点において、上述の医療機器用気密端子20と構成が異なっている。
【0049】
医療機器用気密端子20Aは、外装本体25aの中心軸線O方向に沿った長さが上述の絶縁部材24よりも長い絶縁部材24Aを有する。絶縁部材24Aは、外装本体25aの中心軸線O方向の両端から内部へそれぞれ挿入された第一絶縁部材24A1と第二絶縁部材24A2とが外装本体25aの内部で互いに密着固定されて形成されている。
本変形例では、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の沿面距離は、絶縁部材24Aの外面に沿って、上述の最短距離c1よりも長い距離c2+c3、あるいは距離c2+c4となっている。また、電力用リードピン23と外装部材25との間の沿面距離は、上述の直線距離a1よりも長い距離a2にさらに距離c3あるいは距離c4を足した距離となっている。このため、絶縁部材24Aを有する本変形例の医療機器用気密端子20Aは、上述の医療機器用気密端子20よりもさらに放電が起こりにくくなっている。
【0050】
(変形例2)
次に、上述の実施形態の変形例2の医療機器用気密端子20Bについて図7(A)および図7(B)を参照して説明する。図7は、本変形例の医療機器用気密端子20Bの構成を示す図で、(A)は平面図、(B)は半断面図である。
図7(A)および図7(B)に示すように、本変形例の医療機器用気密端子20Bは、信号用リードピン21,22および電力用リードピン23と外装部材25との間の沿面距離が、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の直線距離よりも長い点において、上述の医療機器用気密端子20と構成が異なっている。
【0051】
医療機器用気密端子20Bは、外装本体25aの中心軸線O方向に沿った長さが上述の絶縁部材24よりも長い絶縁部材24Bを有する。絶縁部材24Bは、上述の絶縁部材24Aとは異なり、1部材からなる。外装本体25aの中心軸線O方向に測った絶縁部材24Bの寸法は、外装本体25aを中心軸線O方向に測った寸法よりも大きい。すなわち、絶縁部材24Bは、外装本体25aの軸方向の両方向へそれぞれ外装部材25の内部から突出している。絶縁部材24Bの外周面において、外装部材25の中心軸線O方向における両端は、端へ行くに従って縮径するテーパー形状になっている。また、絶縁部材24Bの中心軸線O方向の両端において、信号用リードピン21,22よりも電力用リードピン23に近い部分は、外周面のテーパー形状とは逆向きのテーパー形状になっている。
【0052】
本変形例では、絶縁部材24Bに形成されたテーパー形状によって、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の沿面距離は、上述の絶縁部材24の場合における直線距離c1よりも長い距離c5となっている。また、絶縁部材24Bに形成されたテーパー形状によって、電力用リードピン23と外装部材25との間の沿面距離は、上述の絶縁部材24の場合における直線距離a1よりも長い距離a3+a4となっている。このため、絶縁部材24Bを有する本変形例の医療機器用気密端子20Bは、上述の医療機器用気密端子20よりもさらに放電が起こりにくくなっている。
【0053】
また、本変形例では、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22との間の沿面距離が、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22との間の直線距離よりも長い。このため、電力用リードピン23と信号用リードピン21,22との間の放電が、上述の医療機器用気密端子20よりもさらに起こりにくくなっている。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
たとえば、上述の実施形態では、医療機器1の例として、ICDを例に挙げて説明したが、医療機器1はICDには限られない。たとえば、心室再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)に使用される両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(Cardiac Resynchronization Therapy Defibrillator, CRT-D)に対しても同様の医療機器用気密端子20を設けることができ、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
また、上述の実施形態では、医療機器1の例として、心室細動に対して除細動を行う構成を例示したが、これに限られるものではなく、心房細動に対して除細動を行う医療機器1においても同様の効果を奏する。
【0056】
また、電力用リードピン23へ高電圧大電流の電気が通電されることによって信号用リードピン21,22との間で放電が起こった場合には信号用リードピン21,22を通じて検出される電位変化にノイズが生じることとなるが、このノイズを差し引くノイズキャンセル回路を制御回路5に設けることによって、ノイズによる電位変化の検出不良を抑えることができる。
【0057】
また、上述の実施形態および各変形例では、信号用リードピン21,22が2つ設けられている例を示したが、信号用リードピンは、1つであってもよく、また、2つより多くてもよい。図8は、医療機器用気密端子の他の構成例を示す平面図である。たとえば図8に示すように、信号用リードピンを3つ設ける場合には、中心軸線O方向に見たときに中心軸線O回りに120°置きに信号用リードピンを3つ配置(図8に符号X1,X2,およびX3で示す。)することにより、各信号用リードピンX1,X2,X3の間隔を離し、放電を抑えることができる。
また、図8に示すように、電力用リードピン23と各信号用リードピンX1,X2,X3との間の最短距離は、各信号用リードピンX1,X2,X3と外装部材25との間の最短距離よりも長くなっていてもよい。これにより、外装部材25の大きさに上限がある場合に、電力用リードピン23と各信号用リードピンX1,X2,X3との間で放電が起こる可能性を低減することができる。なお、この場合においても、各信号用リードピンX1,X2,X3は、外装部材25との間で放電が起こらない程度の間隔を空けて配置されていることが好ましい。
また、電力用リードピン23は2つ以上設けられていてもよい。
【0058】
また、本発明において、外装部材25の形状は特に限定されるものではなく、円筒の内面状の内周面を有する形状以外であっても構わない。この場合、外装部材25の内部に配置された絶縁部材24は、電力用リードピン23と外装部材25との間の最短距離が、信号用リードピン21,22と外装部材25との間の最短距離よりも長くなるように信号用リードピン21,22および電力用リードピン23を保持していることが好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 医療機器
3 筐体
4 電池(電源)
5 制御回路
6 電位検出部
9 第一出力部
10 第二出力部
12 切替手段
13 コネクタユニット
20、20A、20B 医療機器用気密端子
21、22 信号用リードピン
23 電力用リードピン
24、24A、24B 絶縁部材
25 外装部材
25a 外装本体
25b フランジ部
30 ペーシングリード(リード)
43 除細動リード(リード)
a1、b1、c1 最短距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を中継する少なくとも1つの信号用リードピンと、
前記電気信号よりも高電圧且つ大電流な電力を中継する少なくとも1つの電力用リードピンと、
前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンを保持する絶縁部材と、
前記絶縁部材が内部に収容され前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンと絶縁された導体からなる外装部材と、
を備え、
前記絶縁部材は、前記電力用リードピンと前記外装部材との間の最短距離が、前記信号用リードピンと前記外装部材との間の最短距離よりも長くなるように前記信号用リードピンおよび前記電力用リードピンを保持していることを特徴とする医療機器用気密端子。
【請求項2】
前記外装部材は、円筒の内面状の内周面が形成された外装本体を有し、
前記電力用リードピンは、前記外装本体の中心軸と同軸上に中心軸を有する略円柱状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の医療機器用気密端子。
【請求項3】
前記信号用リードピン、前記電力用リードピン、および前記外装部材は、生体適合性を有する金属材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の医療機器用気密端子。
【請求項4】
前記信号用リードピンと前記外装部材との間の沿面距離は、前記信号用リードピンと前記外装部材との間の直線距離よりも長いことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器用気密端子。
【請求項5】
前記電力用リードピンと前記外装部材との間の沿面距離は、前記電力用リードピンと前記外装部材との間の直線距離よりも長いことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器用気密端子。
【請求項6】
体内に配置され、リードを通じて体内組織に対して電気的刺激を与える植込み型の医療機器であって、
体内に配置され、前記電気的刺激を与えるための駆動波形を生成する制御回路、および前記制御回路を駆動するための電源が設けられた中空の筐体と、
前記筐体に固定され、前記リードを接続可能なコネクタユニットと、
前記筐体内の前記制御回路と前記コネクタユニットとを前記筐体内の気密を維持して接続する請求項1から5のいずれか一項に記載の医療機器用気密端子と、
を備える医療機器。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記体内組織が発する電位を検出する電位検出部と、
前記電位検出部が検出した電位に基づいて前記電気信号の制御波形を生成して出力する第一出力部と、
前記電位検出部が検出した電位に基づいて前記電力を出力する第二出力部と、
を有し、
前記電位検出部および前記第一出力部は前記信号用リードピンに電気的に接続され、
前記第二出力部は前記電力用リードピンに電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記医療機器は、ペーシング機能を有する植込み型除細動器であることを特徴とする請求項6または7に記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90732(P2012−90732A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239931(P2010−239931)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】