説明

医療用ガウン

【課題】ガウンとマスクカバーが一体に形成されるように構成し、飛散した血液や体液が身体及び鼻や口から浸入するのを確実に防止し、手術用品の準備や管理を容易にし、しかも安価なガウンとする。
【解決手段】身頃2,3,4と両袖5,6とからなり、この身頃にその外側から着用者の身体を締め付けるための一対の帯片16,17を設けてなる医療用ガウンにおいて、前記身頃の襟7の前部分に矩形状のマスク部9を付設し、マスク部9の左右両側を折り曲げた折り曲部21,22内に伸縮性を有するゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し一体に接着し、マスク部9のゴム部材接着部分をゴム部材による伸縮力によりギャザー状にし、マスク部9の上側端には着用者にマスク部を装着するための紐体20を設けてなる医療用ガウン1とした。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、医療用ガウンに関し、詳しくは、身頃の襟の前部分にマスクカバーを付設した医療用ガウンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のガウンの一例として、図4に示すガウンが実用に供されている。図4はガウンをその前側からみた外面斜視図である。ガウン31は、中央身頃32と、両側身頃33,34と、両袖35,36とから構成されており、背側閉じ合せ型に属する。さらに、ガウン31は、襟37にその閉じ合せを保つための互いに係合するテーブルファスナー38,39と、一対の内側帯片40,41と、一対の外側帯片42,43とを有している。
そして、外科医が両腕を両袖35,36に通し、ガウン31を身体に巻き付け、襟37のテーブルファスナー38,39を係合させると共に、内側帯片40,41を結び、次いで外側帯片42,43を背側で結び、ガウン31を着用するようになっている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、上述したようなガウンを着用して手術を行う場合には、手術中、患者の血液や体液が飛散して、鼻や口から細菌感染するのを防止するため、ガウン以外に必ずマスクを着用しなければならない。しかしながら、これだけでは十分ではなく、マスクの上に更にマスクカバーを装着する場合があるが、ガウンとマスクカバーを用意せねばならず、それぞれ個別に準備や管理する必要があり、手間がかかり面倒であるという問題があった。
また、従来のように外科医がガウンとマスクを着用した場合には、頸部はカバーされず露出された状態にあり、手術中、患者の血液や体液が飛散して頸部に付着する虞もある。
【0004】
そこで、本考案は、ガウンとマスクカバーが一体に形成されるように構成し、以て上述した課題を解決した医療用ガウンを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上述事情に鑑みてなされたものであって、身頃と両袖とからなり、この身頃にその外側から着用者の身体を締め付けるための一対の帯片を設けてなる医療用ガウンにおいて、前記身頃の襟の前部分に矩形状のマスク部を付設し、このマスク部の左右両側を折り曲げた折り曲部内に伸縮性を有するゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し一体に接着し、マスク部のゴム部材接着部分をゴム部材による伸縮力によりギャザー状にし、マスク部の上側端には着用者にマスク部を装着するための紐体を設けてなることを特徴とする医療用ガウンとした。
また、前記マスク部の折り曲部内に前記ゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し超音波により一体に溶着してなることを特徴とする医療用ガウンとした。
また、前記身頃、前記両袖及び前記マスク部の素材は撥水性を有する不織布であることを特徴とする医療用ガウンとした。
【0006】
【考案の実施の形態】
以下、図面に沿って、本考案による医療用ガウンの一実施例を説明する。
図1は本考案による医療用ガウン1をその前側からみた外面斜視図であり、同図に示すように、医療用ガウン1は、中央身頃2、両側身頃3,4、両袖5,6、襟7及びマスク部9から形成されている。この襟7には、両端10a,10bを互いに結合可能な紐10が付設されると共に、閉じ合わせを保つために互いに係合するテーブルファスナー11,12が設けられている。更に、中央身頃2及び両側見頃3,4の腰レベル部位には一対の内側帯片14,15と一対の外側帯片16,17とが設けられている。
【0007】
そして、一方の内側帯片14はその一端を側身頃3の一側縁の内面に、かつ、他方の内側帯片15はその一端を側身頃4と中央身頃2との境界線近傍の内面にそれぞれ連結してある。また、一方の外側帯片16はその一端を中央身頃2と側身頃4との境界線近傍の外面に、かつ、他方の外側帯片17はその一端を側身頃4の一側縁の外面にそれぞれ連結してある。内外側帯片14,15,16,17の連結位置はいずれも腰レベルである。
【0008】
また、図2はマスク部分を裏側からみた裏面斜視図であり、同図に示すように、マスク部9の上縁には両端20a,20bを互いに結合可能なマスク部用紐20が付設されている。
また、マスク部9の左右両側は内側に折れ曲げられて折り曲部21,22が形成され、この折り曲部21,22内には、例えばゴム23,23が伸長された状態でサンドイッチ状に挟持されて接着テープ(図示せず)等を用いて一体に接着され、接着後、伸長を解除すると、ゴム23,23の伸縮力により収縮し、折り曲部21,22に多数の襞21a,21a,…,22a,22a,…が形成されるようになっている。そして、この多数の襞21a,21a,…,22a,22a,…から左右ギャザー部24,25が構成される。
更に、マスク部9の下縁9aは中央身頃2の襟7の前部分に縫合されている。
【0009】
また、前記医療用ガウン1は撥水性と撥アルコール性を有する不織布から製作され、中央身頃2と両側身頃3,4は一体で形成され、中央身頃2及び両側身頃3,4と両袖5,6との接合、中央身頃2とマスク部9との接合は、縫合等の適宜手段でなすことができる。こうした医療用ガウン1は、その製造者側において、完全な滅菌処理を施し、着用し易いように折り畳み包装して、需要者に供給される。
【0010】
本実施例は以上のような構成よりなるので、図1及び図3に示すように、図示せぬマスクを装着した外科医が両腕を両袖5,6に通し、医療用ガウン1を身体に巻き付け、襟7のテーブルファスナー11,12を係合させ、紐10の両端部10a,10bを結ぶと共に、内側帯片14,15を結び、外側帯片16,17を背側で結び、次いで、マスク部用紐20の両端部20a,20bを後頭部側で結び、医療用ガウン1を着用する。
その際、マスク部9の左右ギャザー部24,25を、ゴム23,23の伸縮力によりマスクを装着した着用者の顔の形に合わせて伸縮させ、マスク部9をマスクに密着させる。
【0011】
従って、ゴム23,23をマスク部9の折り曲部21,22内にサンドイッチ状に一体に貼着したので、ゴムをマスク部の両側に縫い付けた場合のように、縫い目からマスクを介して鼻や口へ血液や体液等が浸入することはない。
また、ゴム23,23の伸縮力により、マスク部9の左右ギャザー部24,25をマスクを装着した着用者の顔の形に合わせて伸縮させるので、マスク部9をマスクに確実に密着させることができる。
また、マスク部9は中央身頃2と一体となっているので、着用者の頸部に飛散した血液や体液等が付着することはない。
また、医療用ガウン1は撥水性と撥アルコール性を有する不織布であるので、細菌感染を防止し、飛散した血液や体液等の浸入を確実に防ぐことができる。
【0012】
なお、上述実施例では、ゴム23,23をマスク部9の折り曲部21,22内に伸長状態でサンドイッチ状に挟持し接着テープ等を用いて一体に接着したが、これに限らず、超音波等を用いて一体に溶着してもよい。
また、上述実施例では、マスク部用紐を用いたが、これに限らず弾性を有するゴム紐等を用いてもよいことは勿論である。
【0013】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によれば、ゴム部材をマスク部の左右両側の折り曲部内にサンドイッチ状に一体に接着したので、ゴム部材をマスク部の両側に縫い付けた場合のように、縫い目からマスクを介して鼻や口へ血液や体液等が浸入することはない。
また、ゴム部材の伸縮力により、マスク部の左右ギャザー部分をマスクを装着した着用者の顔の形に合わせて伸縮させるので、マスク部をマスクに確実に密着させることができ、鼻及び口に血液や体液等が浸入するのを確実に防止することができる。
また、マスク部は身頃と一体となっているので、着用者の頸部に、飛散した血液や体液等が付着することはなく、頸部を安全に保護することができる。
また、マスク部の折り曲部内にゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し超音波により一体に溶着したので、ゴム部材を縫合することなく、簡単かつ確実にマスク部に取付けることができ、ギャザー部分の強度の向上を図ることができる。
また、マスク部が身頃と一体となった医療用ガウンのため、ガウンとマスクカバーを別々に用意する必要がなく、一体ものとして取り扱えばよく、準備や管理が容易である。
また、医療用ガウンは撥水性と撥アルコール性を有する不織布であるので、細菌感染を防止し、しかも水、薬液、血液等をはじき、その浸入を防ぐことができると共に、極めて安価であり、使い捨て用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による医療用ガウンをその前側からみた外面斜視図である。
【図2】本考案による医療用ガウンのマスク部分をその裏側からみた裏面斜視図である。
【図3】本考案による医療用ガウンを外科医が着用した状態を示す斜視図である。
【図4】従来の医療用ガウンをその前側からみた外面斜視図である。
【符号の説明】
1 医療用ガウン
2 中央身頃
3,4 側身頃
5,6 袖
7 襟
9 マスク部
14,15 内側帯片
16,17 外側帯片
20 マスク部用紐
20a,20b マスク部用紐の端部
21,22 折り曲部
23 ゴム
21a,22a 襞
24,25 ギャザー部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 身頃と両袖とからなり、この身頃にその外側から着用者の身体を締め付けるための一対の帯片を設けてなる医療用ガウンにおいて、前記身頃の襟の前部分に矩形状のマスク部を付設し、このマスク部の左右両側を折り曲げた折り曲部内に伸縮性を有するゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し一体に接着し、マスク部のゴム部材接着部分をゴム部材による伸縮力によりギャザー状にし、マスク部の上側端には着用者にマスク部を装着するための紐体を設けてなることを特徴とする医療用ガウン。
【請求項2】 前記マスク部の折り曲部内に前記ゴム部材を伸長状態でサンドイッチ状に挟持し超音波により一体に溶着してなることを特徴とする請求項1記載の医療用ガウン。
【請求項3】 前記身頃、前記両袖及び前記マスク部の素材は撥水性を有する不織布であることを特徴とする請求項1又は2記載の医療用ガウン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【登録番号】第3036973号
【登録日】平成9年(1997)2月19日
【発行日】平成9年(1997)5月6日
【考案の名称】医療用ガウン
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−10397
【出願日】平成8年(1996)10月17日
【出願人】(591089800)日本メディカルプロダクツ株式会社 (4)