説明

医療用吸着剤

【課題】毒素物質の吸着性能が高く吸着速度も速い医療用球形吸着炭の提供。
【解決手段】粒状フェノール系樹脂を原料とし、全酸性基量が0.16meq/g以下、窒素雰囲気下100℃から900℃まで加熱した時の重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療用吸着剤。経口投与用腎疾患または肝疾患治療薬として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DL−β−アミノイソ酪酸、インドキシル硫酸やインドール酢酸などの毒素物質(Toxin)の吸着性能が高い医療用吸着炭に関する。より詳しくは、活性炭表面の全官能基、特に全酸性基がこれまでのこの種の経口投与用吸着剤として知られていたものに比して遙かに少なく、そのために消化管内や血液中のDL−β−アミノイソ酪酸、インドキシル硫酸やインドール酢酸などの毒素物質の吸着性能が高い活性炭からなる医療用吸着剤およびその用途に関する。
【0002】
本発明の医療用吸着剤は、消化酵素等の体内の有益成分の吸着が少なく、DL−β−アミノイソ酪酸、インドキシル硫酸やインドール酢酸などの毒素物質の吸着性能が高いという選択吸着特性を有し、且つ毒素物質の吸着速度も速く、したがって従来の経口投与用吸着剤と比較してより改善された医療用吸着剤である。
【背景技術】
【0003】
腎機能や肝機能が低下した患者らは、それらの臓器機能障害に伴って、血液中等の体内に有害な物質が蓄積し、その結果として尿毒症や意識障害等の脳症をひきおこす。そしてこれらの患者数は年々増加する傾向を辿っている。そこで、これら機能障害をきたした臓器に代わって、毒素物質を体外へ除去する機能をもつ人工腎臓などの臓器代用機器あるいは治療薬の開発が重要となっている。
【0004】
現在、人工腎臓としては、血液透析による毒素物質の除去方式が最も普及している。しかしながら、このような血液透析型人工腎臓は特殊な装置であるため、安全管理上から専門技術者の手を必要とし、また血液の体外取出しによる患者の肉体的、精神的及び経済的負担が高いなどの欠点を有していて、必ずしも満足すべきものではない。
また、血液透析型人工腎臓に用いられる吸着剤は、通常充てんカラム、吸着容器、一定の体積をもった装置、設備に充てんして使用されるから、単位重量あたりの吸着性能が高いだけでなく、単位体積あたりの吸着性能が高いことが必要である。
【0005】
これまでにも、石油ピッチを賦活してなる、細孔半径100〜75000オングストロームの細孔容積が0.1〜1.0mL/gである吸着剤およびその製造方法が提案されている(特許文献1)が、実施例として示された吸着剤は、直径80オングストローム(8nm)以下の細孔の容積が0.70〜0.75mL/g、直径37.5〜75000オングストローム(3.75〜7500nm)の細孔の容積が0.20〜0.23mL/gと言った、直径が小さな細孔に富んだ吸着剤だけである。しかも細孔容積の数的限定における臨界的意義も明らかではない。
【0006】
また、石油ピッチを原料とした、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満である吸着剤が提案されている(特許文献2)が、この吸着剤も直径が小さな細孔に富んだ吸着剤であり、しかも平衡吸着状態での被吸着物質の選択性について言及されているのみある。
フェノール樹脂を原料とした、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.04mL/gまたは0.06mL/gの吸着剤が記載された文献(特許文献3)もあるが、ここに記載された吸着剤も直径が小さな細孔に富んだ吸着剤であり、吸着剤について平衡吸着状態での被吸着物質の選択性が言及されているだけである。
さらに、細孔直径20〜1000nmの細孔の細孔総容積が、0.04mL/g以下である活性炭が記載されている(特許文献4)。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−11611号公報
【特許文献2】特開2002−308785号公報
【特許文献3】WO2004/039381A1公報
【特許文献4】特開2004−244414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの公知特許文献には、賦活後の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理して球状活性炭表面に官能基を導入することによって得られた表面改質球状活性炭が、前記の選択吸着性が顕著に発現されることになると記載されており、また一般にもそのように信じられていた。
【0009】
本発明者らが、特許文献4の記載に従って、水蒸気賦活後の活性炭を酸化処理及び還元処理に付して表面改質処理を施したものと処理前の酸性基量の少ない活性炭と吸着能を比較してみると、酸化処理及び還元処理を実施したものは、処理前のものより吸着性能、選択性のいずれにおいても殆ど改善は見られず、むしろ性能が低下する例が多く見られた。
【0010】
活性炭は炭素からなるものであるから、それ自身の粒子表面は無極性、すなわち疎水性である。しかしながら製造工程における諸条件、特に雰囲気により炭素の表面が酸素や高温の水などによって酸化されるので、活性炭表面にはフェノール性水酸基やカルボキシル基などの多種の親水性の含酸素表面官能基が生成する。この表面官能基には酸性基、中性基があるが、特に酸性基の生成が多い。これらの含酸素表面官能基の生成によって活性炭の表面の極性が高まると、表面は水との結合力が強くなり、水が共存する系においてはまず水が吸着される。その結果活性炭表面と尿毒物質などの疎水性被吸着物質との結合力は低下して、活性炭による尿毒物質の吸着量が低下するものと考えられる。すなわち活性炭の細孔表面積や細孔容積が全く同じで、pHも同じである場合には表面官能基量、特に表面酸性基量が多いほど水の共存下における尿毒物質の吸着量は低下する傾向にあることが判明した。
【0011】
活性炭表面は、酸化剤や還元剤で処理することによって表面官能基を増加、変化させることができると言われている。しかし、表面官能基や酸性基の生成をいかにして抑制し、また一旦生成した表面官能基や酸性基をいかに減少させるかということは難しい課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明者らは、表面官能基、特に表面酸性基は、活性炭の賦活後活性炭を酸素を含む雰囲気と接触させることにより、その表面が酸化されて生成するのではないかと考え、活性炭の水蒸気賦活後高温を保ったまま種々の雰囲気下に置くことにより、表面官能基、特に表面酸性基量がどのように変化するかについて種々検討を加えた結果、二酸化炭素ガス雰囲気下に保持した場合に、表面官能基量、特に酸性基量の少ない活性炭が得られることが分かった。
【0013】
さらに研究を重ねた結果、水蒸気賦活後、賦活温度下に活性炭を酸素濃度2%以下の二酸化炭素ガス雰囲気下に暫時保持したのち100℃以下になるまで比較的ゆっくり冷却することにより酸性基の生成を抑制し、全酸性基量が0.16meq/g以下という極めて酸性基量の少ない活性炭を得ることに成功した。その結果として、窒素雰囲気下100℃から900℃まで加熱することによる重量減少率が2%以下という、全官能基量の極めて少ない活性炭が得られることも判明した。
【0014】
また、水蒸気賦活後に通常の冷却を行った活性炭を、二酸化炭素ガス雰囲気下で一旦700〜1200℃、好ましくは800〜1100℃に加熱して、10分〜2時間ほど二酸化炭素ガス雰囲気下に保持した後100℃まで冷却しても同様の効果のあることが分かった。
【0015】
なお、特許文献3に記載されたフェノール樹脂を原料とする表面改質球状活性炭は、賦活した球状活性炭を酸化処理及び還元処理することにより、全酸性基量が0.67〜0.72meq/gのものを得ているのに対し、本発明の吸着剤は全酸性基量が0.07〜0.16meq/gと際立って少なく、両者は著しい対照を見せている。
【0016】
そしてこのようにして得られた本発明の活性炭からなる吸着剤の吸着性能を測定したところ、驚くべきことに従来の経口投与用吸着剤よりも遙かに優れた吸着性能を有する事を知った。すなわち、本発明者は、全酸性基量が0.16meq/g以下で、窒素雰囲気下100℃から900℃に加熱した場合の重量減少率が2%以下の活性炭からなる吸着剤が、DL−β−アミノイソ酪酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、インドキシル硫酸、インドール酢酸、トリグリシンその他の生体内の尿毒症誘発物質の吸着性に優れており、しかも有益物質である消化酵素(例えば、α−アミラーゼ、ペプシン、トリプシン、リパーゼなど)等に対する吸着性が少ないということを見出したのである。これらの知見を基に更に検討を重ね、本発明を完成したのである。
【0017】
即ち、本発明は、
(1)
粒状フェノール系樹脂を原料とし、全酸性基量が0.16meq/g以下、900℃加熱重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療用吸着剤、
(2)
粒状フェノール系樹脂を不活性ガス雰囲気下300〜800℃で炭化し、700〜1200℃で水蒸気賦活を行い、雰囲気を酸素濃度2%以下の二酸化炭素ガスに代えて、700〜1200℃で暫時保持した後100℃以下になるまで冷却することにより得られる、全酸性基量が0.16meq/g以下、900℃加熱重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療用吸着剤、
(3)
(1)又は(2)記載の医療用吸着剤を有効成分として含有する経口投与用腎疾患または肝疾患の治療又は予防剤、
である。
【0018】
本発明の医療用吸着剤である活性炭は、粒状フェノール樹脂粒子を炭素源として用いており、その製法は、フェノール樹脂を用いる従来の活性炭の製造方法と賦活に到るまでの工程はほぼ同様である。
【0019】
出発材料として用いる前記のフェノール樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、若しくはレゾール型アルキルフェノール樹脂を挙げることができる。
【0020】
本発明に用いられるフェノール樹脂は、粒状であればどのようなものでもよいが、球形のものが好ましい。球形とは、必ずしも真球状のものを意味するのではなく、炭化、賦活して活性炭にした場合、服用時に違和感のない程度に丸みを帯びているものであればよく、たとえば球に近い楕円体や多少変形した球形のものであってもよい。
【0021】
また、この粒状フェノール樹脂は、300〜950℃での不活性ガス中での熱処理、700〜1200℃での水蒸気賦活処理、賦活温度での二酸化炭素ガス処理において、変形、割れ、欠けといった粒子の形状変化を来たさないものがよい。酸化処理などのいわゆる不融化処理により、粒子の形状変化を来たさないようにしたものもよい。
粒子の平均粒子径は、通常0.1〜2.0mm、好ましくは0.1〜1.5mm程度のものである。
【0022】
これらのフェノール樹脂は、熱処理による炭素化収率が高いものが望ましい。炭素化収率が低いと、活性炭としての強度が弱くなる。また、不必要な細孔が形成されるため、活性炭の嵩密度が低下して、体積あたりの比表面積が低下するので、投与体積が増加し、経口投与が困難になるという問題を引き起こす。従って、フェノール樹脂の炭素化収率は高いほど好ましく、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で室温から800℃へ10℃/分の速度で昇温した際の収率が40重量%以上のものが好ましく、45重量%以上のものが更に好ましい。
【0023】
本発明は、まず粒状フェノール系樹脂を、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、初期温度300℃から到達温度900℃へ、好ましくは初期温度450℃から到達温度800℃へ10分〜3時間、好ましくは30分〜2時間程度で昇温させて炭素質材料を得ることができる。
【0024】
この熱処理により、樹脂の熱分解が起こる。その際、炉の入口温度、出口温度や熱処理時間を調節することにより得られる炭素質材料の性状を制御することができ、ひいては賦活後の活性炭の細孔分布や細孔容積を制御することができる。
【0025】
ついで、得られた炭素質材料を定法により、700〜1200℃、好ましくは800〜1100℃、さらに好ましくは900〜1000℃で水蒸気賦活をする。賦活時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜20時間、さらに好ましくは3〜15時間である。活性炭の水蒸気賦活は、反応の種類からいえば酸化反応に属し、細孔の生成と共に表面には前述した官能基が生成する。
【0026】
本発明の医療用吸着剤として用いる活性炭は、BET比表面積が800〜2000m/g、好ましくは900〜1700m/g、さらに好ましくは1000〜1400m/gのものである。BET比表面積が800m/gより小さい活性炭は、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。BET比表面積の上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、2000m/g以下であることが好ましい。比表面積は、主として賦活時間と賦活温度により調節することができる。
【0027】
また、本発明の医療用吸着剤として用いる活性炭においては、優れた選択吸着性を得る観点から、その細孔直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、であるものが用いられ、好ましくは0.1〜0.8mL/g、より好ましくは0.1〜0.6mL/gのものである。
【0028】
これらの比表面積や細孔容積を有する活性炭は、たとえば以下のような方法により得ることができる。
外熱回転レトルトの入口側温度を300〜700℃、好ましくは450℃〜650℃に、出口側温度を700〜950℃、好ましくは800〜900℃にそれぞれ制御し、粒状の樹脂を供給して滞留時間10分〜3時間、好ましくは30分〜2時間で炭化し炭素質材料を得る。望みの細孔分布、細孔容積を有する活性炭を得るためには、レトルト入口側温度、出口温度、および滞留時間を調節する。一般に熱処理によるガスの発生が激しいほど、賦活後マクロ孔に富んだ活性炭が得られる。
得られた炭素質材料を、回分式回転炉を用いて温度700〜1200℃、好ましくは800〜1100℃、さらに好ましくは900〜1000℃で、水蒸気分圧100%の条件で炭素質材料からの賦活品収率が80%〜30%になるように時間を調整しながら賦活する。
【0029】
賦活終了後、活性炭を酸素濃度2%以下、好ましくは1.0%以下、更に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは実質上無酸素の二酸化炭素ガス雰囲気中、700〜1200℃、好ましくは800〜1100℃、さらに好ましくは900〜1000℃で暫時保持する。暫時とは、処理活性炭の量、温度、雰囲気により異なってくるが、通常10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間、より好ましくは、20分〜40分間である。たとえば、賦活後炉内の雰囲気を二酸化炭素ガスと置換し、ほぼ賦活温度を保ちながら20分から40分保持した後、活性炭を二酸化炭素ガス置換した冷却容器内に排出して冷却する(図1参照)。この処理により、賦活後活性炭表面の酸化を防止しつつ、また生成している酸性基を還元除去して、酸性基量、官能基量が極めて少ない本発明の活性炭を得ることができる。
この二酸化炭素ガス雰囲気下の工程は、全工程を通常1〜24時間、好ましくは2〜20時間、さらに好ましくは3〜15時間かけて、賦活化温度から100℃又はそれ以下の温度まで、好ましくは常温(25℃)まで冷却することにより行われる。
このようにして全酸性基量が0.16meq/g以下、900℃加熱重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療吸着剤を得ることができる。
【0030】
水蒸気賦活後に導入する二酸化炭素ガスは、濃度が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上で、残りは窒素ガスなどの不活性ガスであってもよいが、二酸化炭素濃度は高い方が望ましい。すなわち、実質100%の二酸化炭素ガスが好ましい。
【0031】
本発明の医療用着剤として用いる活性炭は、その平均粒子径が0.1〜1.5mmである。活性炭の平均粒子径が0.1mm未満になると、活性炭の外表面積が増加し、消化酵素等の有益物質の吸着が起こり易くなるので好ましくない。また、平均粒子径が1.5mmを越えると、活性炭の内部への毒性物質の拡散距離が増加し、吸着速度が低下するので好ましくない。平均粒子径は、好ましくは0.1〜1.0mm、更に好ましくは0.1〜0.8mmである。
賦活、二酸化炭素ガス冷却後の活性炭の平均粒子径が上記の範囲から外れる場合は、篩い分け操作によって上記の範囲に調整して医療用吸着剤として使用することができる。
【0032】
本発明の吸着剤は、表面官能基量が極めて少ないことを特徴とするものであり、窒素気流下、100℃から900℃までの加熱による重量減少率が2%以下と極めて低い値を示す。この値は、さらに好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.2%以下である。
【0033】
本発明の医療用吸着剤として用いる活性炭は、全酸性基量が0.16meq/g以下である。全酸性基が0.16meq/g以下であると、前記の選択吸着特性が向上し、特に前記の有毒物質の吸着能が高くなるので好ましい。全酸性基が0.12meq/g以下であるとより好ましく、0.10meq/g以下であることさらに好ましい。
【0034】
活性炭吸着剤の全塩基性基量ということを問題とする文献もあるが、その場合の塩基性基量というのは、粉砕した活性炭で消費された塩酸の量からその価を算出したに過ぎないものであり、その値が大きいことが直ちに活性炭表面に塩基性を示す基が多く生成しているということを示すものではない。その意味で本発明に用いる前記活性炭の全塩基性基量はどの様なものでも良い。
【0035】
本発明による経口投与用吸着剤として用いる活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基量、及び900℃加熱重量減少率は、以下の方法によって測定する。
【0036】
(1)平均粒子径
活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
【0037】
(2)BET法比表面積
−196℃で活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測定する。
窒素の相対圧力をp、その時の吸着量をv(cm/g STP)とし、BETプロットを行う。すなわち、縦軸にp/(v(1−p))、横軸にpを取り、pが0.02〜0.1の範囲でプロットし、そのときの傾きb(単位=g/cm)、及び切片c(単位=g/cm)から、比表面積S(単位=m/g)は下記の式により求められる。
S=MA×(6.02×1023)/22414×1018×(b+c)
ここで、MAは窒素分子の断面積で0.162nmを用いた。
【0038】
(3)直径0.0075〜15μmの細孔容積
水銀ポロシメーター(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用い活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径22μmに相当する圧力(0.06MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)まで活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。例えば、本発明における細孔直径0.0075〜15μmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.085MPaから169MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
【0039】
(4)全酸性基
0.05mol/L 水酸化ナトリウム溶液50mL中に、目開き0.075mmの篩を90%以上が通過するように粉砕した試料(105℃4時間乾燥)1gを添加し、48時間振とうした後、試料をろ別し、中和滴定した。
操作条件:
(i)50mL又は100mLの分液漏斗使用
(ii)室温20℃、上下往復(振幅30mm)毎分250回
(iii)孔径0.2μmのメンブランフィルター使用して減圧ろ過した。ろ液の初液10mLを捨て、その後のろ液を正確に20mLとり滴定した。空試験として、試料を入れずに同様の操作を行った。
(iv)中和滴定は0.05mol/L 塩酸溶液使用(指示薬:ブロモチモールブルー試液)
(v)計算式:試験検体1gあたりの水酸化ナトリウム消費量(meq/g)に換算した。
全酸性基(meq/g)=0.05×F×T×50/20×1/W
F:ファクター(HCl) T:滴定量(mL) W:検体秤取量(g)
【0040】
(5)900℃加熱重量減少率
900℃加熱重量減少率(%)は、熱分析装置(例えば、Seiko Instrument社製「SSC/5200」)を用いて活性炭を窒素気流下、100℃から900℃まで昇温することにより生ずる加熱減量を測定して%で示したものである。
まず、試料である活性炭を正確に秤量して試料容器に入れ、200mL/分の窒素気流下で室温から100℃へ10℃/分で昇温し、100℃で15分維持して秤量する。次いで、10℃/分で900℃まで昇温し、15分維持して秤量する。
900℃加熱重量減少率は次式で求める。
900℃加熱重量減少率=(900℃における減量−100℃における減量)/(試料量−100℃における減量)×100
【0041】
本発明の医療用吸着剤は経口投与することにより、腎疾患または肝疾患を治療又は予防することができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
【0042】
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
【0043】
従って、本発明による医療用吸着剤を腎臓疾患治療薬として用いる場合には、前記の活性炭を有効成分として薬剤を経口投与する。本発明の吸着剤を腎臓疾患治療薬又は肝臓疾患治療薬として経口投与する場合、その投与量は、投与対象がヒトであるかあるいはその他の動物であるかにより、また、年令、個人差、又は病状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一般にヒトを対象とする場合の経口投与量は1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し、更に症状によって適宜増減することができる。投与形態は、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分包包装体、又は乳剤等であることができる。カプセル剤として服用する場合は、通常のゼラチンの他に、必要に応じて腸溶性のカプセルを用いることもできる。錠剤として用いる場合は、体内でもとの微小粒体に解錠されることが必要である。更に他の薬剤であるアルミゲルやケイキサレートなどの電解質調節剤と配合した複合剤の形態で用いることもできる。
【発明の効果】
【0044】
本発明による医療用吸着剤は、フェノール樹脂を炭素源として製造され、特有の細孔構造と低酸性基量を有しているので、経口服用した場合に、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の消化器系内における吸着性能が優れるという選択吸着特性を有し、またその吸着速度も従来の経口投与用吸着剤と比較すると遙かに速く、従来の吸着剤よりも吸着特性が著しく向上している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
球形粒状フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、平均粒子径0.42mm)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後、炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で13時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。
賦活終了後、回転炉温度を950℃に維持しながら、水蒸気の供給を停止し、二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを20分間供給した。次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を、冷却用容器に排出した(図1)。その際、冷却容器の頂部に二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成の二酸化炭素ガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に小さな開口部を設けた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを流入させながら6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
【実施例2】
【0047】
球形粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で13時間賦活処理を行って粒状活性炭を生成させた。
賦活終了後、回転炉温度を950℃に維持しながら、水蒸気の供給を停止し二酸化炭素ガス濃度86%、窒素ガス濃度13.6%、酸素濃度0.4%の二酸化炭素ガスを20分間供給した。次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を、冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に二酸化炭素ガス86%、窒素ガス濃度13.6%、酸素濃度0.4%のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成のガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に小さな開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス86%、窒素ガス濃度13.6%、酸素濃度0.4%のガスを導入して、6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
【実施例3】
【0048】
球形粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で13時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。
賦活終了後、回転炉温度を950℃に維持しながら、水蒸気の供給を停止し二酸化炭素ガス濃度72.2%、窒素ガス濃度27%、酸素濃度0.8%の二酸化炭素ガスを20分間供給した。次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に二酸化炭素ガス濃度72.2%、窒素ガス濃度27%、酸素濃度0.8%のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成のガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス濃度72.2%、窒素ガス濃度27%、酸素濃度0.8%のガスを導入して、6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
【実施例4】
【0049】
球形粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入り口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後、炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で15時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。賦活終了後、回転炉温度を950℃に維持しながら、水蒸気の供給を停止し二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)の二酸化炭素ガスを20分間供給した。
次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を、冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成の二酸化炭素ガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に小さな開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを流入させながら6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
【実施例5】
【0050】
球形粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入り口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後、炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で11時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。
賦活終了後、回転炉温度を950℃に維持しながら、水蒸気の供給を停止し二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)の二酸化炭素ガスを20分間供給した。
次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成の二酸化炭素ガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に小さな開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス濃度100%(酸素ガス濃度10ppm)のガスを流入させながら6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
[比較例1]
【0051】
粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後、炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で13時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。
賦活終了後、回転炉を傾斜して冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に窒素濃度89%、酸素濃度11%のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成の二酸化炭素ガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に小さな開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から窒素濃度89%、酸素濃度11%のガスを流入させながら6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
[比較例2]
【0052】
粒状フェノール樹脂(実施例1と同じ樹脂)を35kg/hrの速度で外熱ロータリーキルンに入れ、窒素ガス気流下、レトルト入り口温度480℃、レトルト出口温度800℃でキルン内に30分間滞留させ炭素質材料を得た。その後、炭素質材料の50kgを回転炉に仕込み、100%水蒸気雰囲気中、950℃で13時間賦活処理を行い、粒状活性炭を生成させた。
次いで回転炉を傾斜して炉内の活性炭を、冷却用容器に排出した(図1)。その際、容器の頂部に二酸化炭素ガス濃度49%、窒素濃度41%、酸素濃度10%のガスを吹き付けながら、容器底部の小孔からも同じ組成の二酸化炭素ガスを容器内に導入し、活性炭が極力空気と接触しないようにした。活性炭の冷却容器への排出が完了した後、容器頂部に開口部の付いた蓋を施して空気の流入を遮断し、容器底部の小孔から二酸化炭素ガス濃度49%、窒素濃度41%、酸素濃度10%のガスを導入しながら6時間を要して100℃程度まで冷却し、粒状活性炭を得た。
[比較例3]
【0053】
実施例1で最終的に得られた粒状活性炭500gに、水道水で希釈した1W/V%塩酸5Lを加えて撹拌した後室温で一昼夜放置した。この活性炭と塩酸との混合物をろ過洗浄槽に移し、撹拌しながら水道水10L/hrを加えながら一昼夜洗浄した。洗浄品を脱水し、115℃に温度調節した電気乾燥機内で乾燥して粒状活性炭を得た。
以上の吸着剤の物理的、化学的性質については表1にまとめて記載した。
【0054】
【表1】

【0055】
〔試験例〕
以下の試験例においては、前記実施例、比較例で得られた活性炭につき、DL−β−アミノイソ酪酸、クレアチニン、グリシルグリシン、p−ヒドロキシフェニル酢酸、トリグリシン、インドキシル硫酸カリウム塩、α−アミラーゼ、ペプシン、トリプシン、リパーゼおよびキモトリプシン吸着試験を実施し、吸着後残存率を計算した。それらの結果を表2にまとめて記載した。
【0056】
(1)DL−β−アミノイソ酪酸吸着試験
活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.5gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。別に、DL−β−アミノイソ酪酸0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜた。フラスコの内容物を孔径0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、初めのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを試料溶液とした。試料溶液0.5mLを試験管に正確にとり、pH8.0のリン酸塩緩衝液2.5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gをアセトニトリル100mLに溶かした液0.5mLを正確に加えて混合した。この液10μLにつき、15分間静置後4時間以内に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により試験を行った。HPLCの測定は検出器に蛍光光度計を用い、励起波長390nm、蛍光波長475nmとし、カラムはウォーターズ社XterraC18(内径4.6mm、長さ15cm)、移動相はpH7.4のリン酸塩緩衝液/アセトニトリル混液(9:1)を用い、カラム温度40℃、移動相流量は毎分約1mLに設定した。
一方で、DL−β−アミノイソ酪酸原液0mL、2mL、4mL、6mL、8mLおよび10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて各々正確に10mLとしてかくはんし、ろ過する。各ろ液0.5mLを試験管に正確にとり、pH8.0のリン酸塩緩衝液2.5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gをアセトニトリル100mLに溶かした液0.5mLを正確に加えて混合する。この各液10μLにつき、15分間静置後4時間以内に、上記と同じHPLC条件で試験を行い、得られた主ピークのピーク面積から検量線を作成する。次に試料溶液から得られたピーク面積について、上記検量線を用いDL−β−アミノイソ酪酸原液を100%濃度として、DL−β−アミノイソ酪酸の残存率(%)を計算した。
【0057】
(2)クレアチニン吸着試験
活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.5gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。別に、クレアチニン0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物を孔径0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、初めのろ液約20mLを除き、次のろ液10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で正確に50mLとし、試料溶液とする。試料溶液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法により試験を行い、波長234nmにおける吸光度を測定した。
検量線はクレアチニン原液10mLをとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で正確に50mLとし、その2mL、4mL、6mL、8mLおよび10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で各々正確に10mLとし、波長234nmにおける吸光度を測定することにより作成する。試料溶液の吸光度と検量線より、クレアチニン残存率(%)を計算した。
【0058】
(3)インドキシル硫酸カリウム塩(インドキシル硫酸)吸着試験
活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.1gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。別に、インドキシル硫酸0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物を孔径0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で正確に50mLとし、試料溶液とする。試料溶液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法により試験を行い、波長278nmにおける吸光度を測定した。
検量線はインドキシル硫酸原液10mLをとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で正確に50mLとし、その2mL、4mL、6mL、8mLおよび10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で各々正確に10mLとし、波長278nmにおける吸光度を測定することにより作成する。試料溶液の吸光度と検量線より、インドキシル硫酸残存率(%)を計算した。
【0059】
(4)α−アミラーゼ吸着試験
活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.1gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。別に、α−アミラーゼ(液化型)0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物を孔径0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、初めのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを試料溶液とした。
別に、pH7.4のリン酸塩緩衝液を用いて同じ操作を行い、そのろ液を補正液とする。試料溶液及び補正液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法により試験を行い、波長280nmにおける吸光度を測定する。試料溶液の吸光度と補正液の吸光度の差を試験吸光度とした。
検量線はα−アミラーゼ原液を0mL、2mL、4mL、6mL、8mLおよび10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で各々正確に10mLとし、波長280nmにおける吸光度を測定することにより作成した。試験吸光度と検量線より、α−アミラーゼ残存率(%)を計算した。
【0060】
(5)グリシルグリシン、p−ヒドロキシフェニル酢酸、トリグリシン、ペプシン、トリプシン、リパーゼ及びキモトリプシン吸着試験
活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.1gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。別に、各被吸着試料0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物を孔径0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLをとって、試料溶液とする。試料溶液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法により試験を行い、次に示す波長における吸光度を測定した。
検量線は各成分原液2mL、4mL、6mL、8mLおよび10mLを正確にとり、pH7.4のリン酸塩緩衝液で各々正確に10mLとし、次に示す波長における吸光度を測定することにより作成した。
被吸着物質 測定波長
グリシルグリシン: : 207nm
p−ヒドロキシフェニル酢酸: 276nm
トリグリシン : 207nm
ペプシン : 205nm
トリプシン : 277nm
リパーゼ : 259nm
キモトリプシン : 282nm
【0061】
【表2】

【0062】
表2からも明らかなように、本発明の吸着剤は、比較例の吸着剤に比して酵素などの有用物質の吸着は少なく、尿毒物質の吸着は多い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によって得られた医療用吸着剤は、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる。また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
また、本発明の医療用吸着剤は、人口透析器用の吸着剤としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】賦活後、活性炭を冷却容器に移すときの装置の模式図
【符号の説明】
【0065】
1.加熱器
2.回転炉
3.水蒸気供給管
4.窒素ガスまたは二酸化炭素ガス供給管
5.冷却容器
6.二酸化炭素ガス供給管
7.モータ
8.ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状フェノール系樹脂を原料とし、全酸性基量が0.16meq/g以下、900℃加熱重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療用吸着剤。
【請求項2】
粒状フェノール系樹脂を不活性ガス雰囲気下300〜800℃で炭化し、700〜1200℃で水蒸気賦活を行い、雰囲気を酸素濃度2%以下の二酸化炭素ガスに代えて、700〜1200℃で暫時保持した後100℃以下になるまで冷却することにより得られる、全酸性基量が0.16meq/g以下、900℃加熱重量減少率が2%以下、直径0.0075〜15μmの細孔容積が0.1〜1.0mL/g、BET比表面積が800〜2000m/g、平均粒子径が0.1〜1.5mmである活性炭からなる医療用吸着剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の医療用吸着剤を有効成分として含有する経口投与用腎疾患または肝疾患の治療又は予防剤。

【図1】
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【公開番号】特開2008−303193(P2008−303193A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153556(P2007−153556)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(591041130)テイコクメディックス株式会社 (4)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】