説明

医療用回路用部品

通気性のある医療用回路部品ならびにこれらの部品を形成するための材料および方法を開示する。これらの部品には、水蒸気に対して透過性でありかつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である通気性発泡材料を組み込む。開示する材料および方法は、管、Yコネクター、カテーテルマウントおよび患者用インターフェースを含む様々な部品に組み込むことができ、吸入回路、麻酔回路および呼吸回路を含む様々な医療用回路における使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本実用特許出願は、「医療用回路用部品(Components for Medical Circuits)」と題する、2009年12月22日に出願された米国仮特許出願番号第61/289,089号に基づく優先権を主張し、この開示の内容は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0002】
技術分野
本開示は、一般的に、医療用回路用部品に関し、特に、例えば、気道陽圧(PAP)、レスピレーター、麻酔、ベンチレーター(人工呼吸器)(ventilator)および吸入システムなどにおいて、加湿ガスを患者に供給し、かつ/または患者から加湿ガスを取り除く医療用回路用部品に関する。
【0003】
関連技術の説明
医療応用において、相対湿度レベルが高いガスは様々な部品によって患者へ、または患者から輸送される。高湿度ガスが低い温度で部品の壁と接触すると、凝縮物、すなわち「レインアウト(rain out)」が問題になる可能性がある。しかしながら、凝縮は多くの要因に依存し、それらの要因には、部品についての温度特性だけでなく、ガス流量、部品形状、および部品の形成に使用される材料の固有の「通気性」も含まれる。「通気性」とは、水蒸気を透過させるが液体水バルク流(総体流)(bulk flow)およびガスバルク流に実質的に抵抗する材料の能力である。
【0004】
例えば、PAPシステム(患者に陽圧で呼吸ガスを供給する換気システム)は、吸気ガスおよび呼気ガスの送達および除去に呼吸管を使用する。これらの用途や、補助呼吸などの他の呼吸用途では、患者によって吸入されるガスは、通常、飽和状態に近い湿度で吸気管を通って送達される。患者によって吐き出された呼吸ガスは、呼気管を通って流れ、通常完全飽和している。患者の吸入中に呼吸回路部品の内壁に凝縮物が生じることがあり、患者の吐出中には重大なレベルの凝縮物が生じることもある。そのような凝縮物が患者に近いところにある場合にはそれは特に有害である。例えば、呼吸管(吸気管または呼気管のいずれか)中に生じる流動性の凝縮物は、患者によって呼吸されまたは吸入される可能性があり、咳の発作または他の不快感をきたすことがある。
【0005】
別の例として、吸入システムもまた加湿ガスの送達および除去を行う。吸入下での腹腔鏡手術中に、吸入ガス(一般には、CO)を腹腔内に送る前に加湿することが望ましいこともある。これは、患者の内部臓器の「乾燥」を防ぐ手助けとなり得、手術からの回復に必要な時間を減らすことができる。乾燥吸入ガスを使用する時でさえ、そのガスは、患者の体腔から水分を取り込むため飽和状態になり得る。ガス中の水分は、吸入システムの排出リムまたは管の壁体上に凝縮する傾向がある。また、水蒸気は、吸入システムの他の部品、例えば、フィルターなどにおいても凝縮し得る。蒸気がフィルター上で凝縮し水分がリム(入口リムまたは排気リム)に沿って流出されることは非常に望ましくない。例えば、壁体上で凝縮した水は、フィルターを飽和状態にし、フィルターを閉塞させることがある。これは背圧を増加させ、煙を除去するシステムの能力を妨げる可能性がある。さらに、リム中の液体水は他の接続装置に流れ込むことがあり、これも望ましくない。
【0006】
高「通気性」材料、すなわち、水蒸気に対して高透過性であり、かつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である材料を管壁に組み込むことにより、凝縮の有害作用を軽減する試みがなされてきた。しかしながら、これには凝縮を防止または低減するほど十分に高い通気性を達成するために超薄膜壁が必要であった。結果として、許容される通気性を有する管は壁厚が薄かったため、それらの管にはかなりの補強処置が必要である。これらの補強処置によって製造プロセスに時間、コストおよび複雑性が加わる。従って、加湿ガス送達用の、通気性であるが強い医療用回路用部品が求められている。
【発明の概要】
【0007】
通気性のある医療用回路部品、例えば、通気性のある吸入回路、麻酔回路または呼吸回路用の部品などを形成するための材料および方法を本明細書において様々な実施形態で開示する。これらの通気性部品には、水蒸気に対して透過性であり、かつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である通気性発泡材料を組み込む。開示する材料および方法は、管、Yコネクター、カテーテルマウントおよび患者用インターフェースを含む様々な部品に組み込むことができる。
【0008】
加湿ガスとともに使用するための医療用回路部品を開示する。少なくとも1つの実施形態では、その部品は、内部の空間を画成する壁体であり、該壁体の少なくとも一部が水蒸気を透過させるが液体水を実質的に透過させないように構成された通気性発泡材料からなる壁体を備え得る。
【0009】
様々な実施形態では、前述の部品は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。通気性発泡材料の拡散係数は少なくとも3×10−7cm/秒であり得る。壁体の厚さは0.1mm〜3.0mmの間であり得る。通気性発泡材料はポリマーのブレンドを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、その発泡材料を25mm径の金属円筒の周りにキンク(kinking)(ねじれ)または圧潰なく曲げることができる、十分に剛性があり得る。部品のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法(desiccant method)を用いて)測定した時に少なくとも60g−mm/m/日であり得る。部品の弾性率は30〜1000MPaの間であり得る。透過性Pは下記式:
【数1】

(式中、Mは発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)
を満たし得る。
【0010】
加えて、様々な実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる部品は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡材料は空隙を含んでなり得る。発泡材料は25%より大きい空隙率(void fraction)を有し得る。発泡材料は壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有し得る。発泡材料は、壁体の縦軸に沿って扁平になっている空隙を含んでなり得る。それらの空隙の少なくとも80%は、2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比(縦横比)(aspect ratio)を有し得る。それらの空隙の少なくとも10%は相互接続されていてよい。
【0011】
ある特定の実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる部品は、管の壁体またはマスクの壁体を形成し得る。発泡材料により管の壁体を構成する場合には、その管は、例えば、押出管(extruded tube)、蛇管(corrugated tube)または押出成形された蛇管であってよい。これら前述の管のいずれもが吸入システムにおいて使用する管であり得る。
【0012】
少なくとも1つの実施形態では、その部品は、空間を画成する壁体であり、その壁体の少なくとも一部が、水蒸気に対して透過性であり、かつ液体水に対して実質的に不透過性である発泡材料からなる壁体を備え得、この際、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された、g−mm/m/日単位での発泡材料の透過性Pは、少なくとも60g−mm/m/日であり、かつ下記式:
【数2】

(式中、Mは発泡材料の弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)
を満たす。
【0013】
様々な実施形態では、前述の部品は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。Pは少なくとも70g−mm/m/日であり得る。Mは30〜800MPaの間であり得る。壁厚は0.1mm〜3.0mmの間であり得る。発泡材料は25%より大きい空隙率を有し得る。発泡材料は空隙を含んでなり得る。発泡材料は壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有し得る。それらの空隙の少なくともいくつかは、壁体の縦軸に沿って扁平になっていてよい。それらの空隙の少なくとも80%は、2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有し得る。それらの空隙の少なくとも10%は相互接続されていてよい。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。
【0014】
ある特定の実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる部品は、管の壁体または患者用マスクの壁体を形成し得る。発泡材料により管の壁体を構成する場合には、その管は、例えば、押出管、蛇管または押出成形された蛇管であってよい。これら前述の管のいずれもが吸入システムにおいて使用する管であり得る。
【0015】
医療用回路部品を製造する方法もまた開示する。少なくとも1つの実施形態では、その方法は、ポリマー基材に発泡剤マスターバッチ(担体ポリマーと活性発泡剤との混合物)を混ぜ、液化混合物を形成すること、その発泡剤部分によりガス気泡をその液化混合物の基材部分中へ放出させること、およびガス気泡の放出を止め、その混合物を加工して、水蒸気透過性部品を形成することを含む。
【0016】
様々な実施形態では、前述の方法は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡剤および/またはポリマー基材は、固体ポリマーおよびその固体ポリマー全体に分布した空隙を含んでなる水蒸気透過性部品を形成するように、選択し、その混合物は加工し得る。部品のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された少なくとも60g−mm/m/日または少なくとも70g−mm/m/日であり得る。部品の弾性率は30〜1000MPaの間であり得る。Pは下記式:
【数3】

(式中、Mは発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間または30〜800MPaの間である)
を満たし得る。壁厚は0.1mm〜3.0mmの間であり得る。
【0017】
加えて、様々な実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる方法は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡材料は空隙を含んでなり得る。発泡材料は25%より大きい空隙率を有し得る。横方向の平均空隙サイズは壁厚の30%未満であり得る。発泡材料は、壁体の縦軸に沿って扁平になっている空隙を含んでなり得る。それらの空隙の少なくとも80%は、2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有し得る。それらの空隙の少なくとも10%は相互接続されていてよい。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。
【0018】
ある特定の実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる方法は、水蒸気透過性部品を管に成形することまたは水蒸気透過性部品をマスクに成形することを含み得る。その方法が部品を管に成形することを含む場合には、混合物の加工行為は、混合物を管形状物に押出成形することを含み得る。混合物の加工はまた、管形状物の表面に複数の補強リブを共押出成形することも含み得る。そのリブは、管形状物の内面に、または管形状物の外面に、または管形状物の内面および外面に配列され得る。特に、そのリブは、管形状物の円周に配列され得る、例えば、管形状物の内面に円周方向に配列され得る。そのリブは、管形状物の長さに沿って一般的に縦方向に整列され得る。混合物の加工はまた、押出成形された管形状物に波形をつけることも含み得る。押出成形された管形状物に波形をつける場合には、その管形状物はリブを備えていてよくまたはそれらのリブを省略してもよい。
【0019】
加湿ガスを患者へまたは患者から送達するための管も開示する。少なくとも1つの実施形態では、その管は、入口および出口と、水蒸気に対して透過性でありかつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である、押出成形され波形がつけられた発泡ポリマー導管であり、その導管によって囲まれた空間内に加湿ガスが入口から出口へ流れることを可能にするように構成された発泡ポリマー導管とを備える。その管は、複数の補強リブをさらに備え得る。そのリブは、管形状物の内面に、または管形状物の外面に、または管形状物の内面および外面に配列され得る。特に、そのリブは、管形状物の円周に配列され得る、例えば、管形状物の内面に円周方向に配列され得る。そのリブは、入口と出口との間に管形状物の長さに沿って一般的に縦方向に整列され得る。
【0020】
様々な実施形態では、上記リブを備えたまたは備えていない、前述の管は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡ポリマー導管は、固体熱可塑性エラストマー材料およびその固体材料全体に分布した気泡空隙を含んでなり得る。発泡ポリマー導管は、その囲まれた空間に面した内面;およびその内面に面した内部体積を有し得、その内部体積中の気泡空隙の少なくともいくつかは他の気泡空隙に接続され、それによってその導管を通る水蒸気の移動を促進する連続気泡通路(open cell pathways)を形成している。それらの気泡空隙の少なくとも10%または少なくとも20%は、他の気泡空隙に接続されていてよい。内部体積は25%より大きい空隙率を有し得る。横方向の平均空隙サイズは壁厚の30%未満または壁厚の10%未満であり得る。それらの空隙の少なくともいくつかは、導管の縦軸に沿って扁平になっていてよい。扁平は、2:1より大きいまたは3:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有することとして表すことができる。それらの空隙の少なくとも80%は、扁平であり得る。
【0021】
加えて、様々な実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる管は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡ポリマー導管は0.1mm〜3.0mmの間の壁厚を有し得る。部品のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された少なくとも60g−mm/m/日であり得る。部品の弾性率は30〜1000MPaの間であり得る。Pは下記式:
【数4】

(式中、Mは発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)
を満たし得る。発泡ポリマー導管は、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、その発泡ポリマー導管を25mm径の金属円筒の周りにキンクまたは圧潰なく曲げることができる、十分に剛性があり得る。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、その管は、入口および出口と、水蒸気に対して透過性であり、かつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマー導管であり、その導管によって囲まれた空間内に加湿ガスが入口から出口へ流れることが可能になっている発泡ポリマー導管とを備え、ここで、その発泡ポリマー導管は、固体熱可塑性エラストマー材料およびその固体材料全体に分布した気泡空隙を含んでなる。発泡ポリマー導管は、その囲まれた空間に面した内面;およびその内面に面した内部体積を有し得る。その内部体積中の気泡空隙の少なくともいくつかは他の気泡空隙に接続されていてよく、それによってその導管を通る水蒸気の移動を促進する連続気泡通路を形成している。
【0023】
様々な実施形態では、前述の管は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡ポリマー導管は3×10−7cm/秒より大きい拡散係数を有し得る。その導管は押出成形してよい。その導管は波形がつけられていてよい。その管は、複数の補強リブをさらに備え得る。そのリブは、管形状物の内面に、または管形状物の外面に、または管形状物の内面および外面に配列され得る。特に、そのリブは、管形状物の円周に配列され得る、例えば、管形状物の内面に円周方向に配列され得る。そのリブは、入口と出口との間に管形状物の長さに沿って一般的に縦方向に整列され得る。その管は加熱ラインをさらに備え得る。加熱ラインは、入口と出口との間に発泡ポリマー導管の長さに沿って一般的に縦方向に整列され得る。
【0024】
加えて、様々な実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる管は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。内部体積中の気泡空隙の少なくとも10%または少なくとも20%は、他の気泡空隙に接続されていてよい。内部体積は25%より大きい空隙率を有し得る。それらの空隙の少なくともいくつかは、導管の縦軸に沿って扁平になっていてよい。扁平は、2:1より大きいまたは3:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有することとして表すことができる。それらの空隙の少なくとも80%は、扁平であり得る。内部体積は、発泡ポリマー導管壁厚の30%未満または10%未満の横方向の平均空隙サイズを有し得る。発泡ポリマー導管は0.1mm〜3.0mmの間の壁厚を有し得る。管のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された少なくとも60g−mm/m/日であり得る。管の弾性率は30〜1000MPaの間であり得る。Pは下記式:
【数5】

(式中、Mは発泡ポリマーの弾性率をMpaで表す)
を満たし得る。発泡ポリマー導管は、内部体積に面した外スキン層をさらに有し得、その内部体積中の気泡空隙は独立気泡(closed cell)である。スキン層の厚さは、壁厚の5〜10%の間、例えば、10〜50μmの間であり得る。
【0025】
患者へまたは患者からの加湿ガスの送達に好適な管を製造する方法も開示する。少なくとも1つの実施形態では、その方法は、1種以上の熱可塑性エラストマーを含んでなる基材に発泡剤を混ぜ、押出物を形成すること;押出機を使用してその押出物に圧力を加えて、中空管を形成すること;その中空管をコルゲーター金型へ送達すること;コルゲーター金型内で中空管を冷却させること;および冷却した中空管をコルゲーターから外し、それによって波形がつけられた水蒸気透過性管を形成することを含む。
【0026】
様々な実施形態では、前述の方法は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。管は、0.1mm〜3.0mmの間の壁厚を有し得る。蛇管は、固体熱可塑性エラストマーおよび発泡剤によって放出されたガス気泡によって形成された空隙を含んでなり得る。横方向の最大空隙サイズ径は、最小壁厚の3分の1未満であり得る。蛇管の空隙率は25%より大きくてよい。基材は0.75×10−7cm/秒より大きい拡散係数を有し得る。基材は15MPaより大きい引張弾性率を有し得る。
【0027】
患者へまたは患者から加湿ガスを送達する方法も開示する。少なくとも1つの実施形態では、その方法は、通気性発泡材料から形成された壁体を備えた医療用回路部品を準備すること、その医療用回路部品を患者と接続すること、およびその医療用回路部品によって加湿ガスを透過させることを含み、ここで、その医療用回路部品は、その部品の壁体を通じて水蒸気を通過させるがその部品の壁体を通じて液体水およびガスバルク流を実質的に透過させない。
【0028】
様々な実施形態では、前述の方法は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。通気性発泡材料の拡散係数は少なくとも3×10−7cm/秒であり得る。壁体の厚さは0.1mm〜3.0mmの間であり得る。通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。特に、通気性発泡材料は、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。通気性発泡材料は、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、その発泡材料を25mm径の金属円筒の周りにキンクまたは圧潰なく曲げることができる、十分に剛性があり得る。部品のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定した場合、少なくとも60g−mm/m/日であり得る。部品の弾性率は30〜1000MPaの間であり得る。Pは下記式:
【数6】

(式中、Mは発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)
を満たし得る。
【0029】
加えて、様々な実施形態では、上記の実施形態の一部または総てによる方法は、次の特性のうちの1つ、一部または総てを有する。発泡材料は空隙を含んでなり得る。それらの空隙の少なくとも10%は相互接続されていてよい。発泡材料は25%より大きい空隙率を有し得る。発泡材料は壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有し得る。それらの空隙の少なくともいくつかは、部品の縦軸に沿って扁平になっていてよい。扁平は、2:1より大きいまたは3:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有することとして表すことができる。それらの空隙の少なくとも80%は、扁平であり得る。
【0030】
ある特定の実施形態では、医療用回路部品による加湿ガスの透過は、通気性発泡材料を含んでなる管を通じて加湿ガスを透過させること、または通気性発泡材料を含んでなるマスクによって加湿ガスを透過させること、または通気性発泡材料を含んでなる吸入管によって加湿ガスを透過させることを含み得る。
【0031】
本発明は、前述の実施形態の総てを含んでなり、以下の実施例の構成も企図する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで、開示したシステムおよび方法の様々な特徴を実行する実施形態例を、図面を参照して記載する。図面および関連する説明は、本開示の範囲を限定するためではなく実施形態を例示するために示す。
【図1】通気性部品を組み込んでいる医療用回路の概略図である。
【図2A】医療用回路の部品に用いられるいくつかの既知の通気性材料についての透過性とヤング率のlog/logプロットである。
【図2B】既知の材料について、および本明細書において論じた実施形態による通気性発泡ポリマー材料についての透過性とヤング率のlog/logプロットである。
【図3】本明細書において論じた実施形態による通気性発泡ポリマー材料における相対拡散率と空隙率のプロットである。
【図4A】例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4B】例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4C】例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4D】例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4E】別の例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4F】別の例示発泡蛇管の顕微鏡写真である。
【図4G】例示発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4H】例示発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4I】別の例示発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4J】別の例示発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4K】ポリマーブレンドから形成された非発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4L】ポリマーブレンドから形成された発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4M】ポリマーブレンドから形成された発泡押出ストリップの顕微鏡写真である。
【図4N】非発泡押出ポリマーストリップの顕微鏡写真である。
【図4O】非発泡押出ポリマーストリップの顕微鏡写真である。
【図5】通気性発泡ポリマー材料を組み込んでいる医療用回路用部品の概略図である。
【図6A】通気性発泡ポリマー材料を組み込んでいる管状部品の側面平面図である。
【図6B】図6Aの管部品の断面図である。
【図7A】一体の補強リブを組み込んでいる管状部品の正面斜視図であり、その部品には部分的に波形がつけられている。
【図7B】全体に波形がつけられている管状部品の正面斜視図である。
【図8A】リブを組み込んでいる、波形がつけられている管状部品の代替構造の正面斜視写真である。
【図8B】図8Aの管状部品の正面斜視写真である。
【図8C】図8Aおよび図8Bの管状部品の成形に好適なコルゲーターブロックである。
【図9】少なくとも1つの実施形態による呼吸回路の概略図である。
【図10】少なくとも1つの実施形態による、同軸管を含んでなる部品の概略図である。
【図11A】少なくとも1つの実施形態によるマスク型患者用インターフェースの側面平面図である。
【図11B】図11Aの患者用インターフェースの正面斜視図である。
【図12】少なくとも1つの実施形態による鼻カニューレ型患者用インターフェースを着用している患者の正面斜視図である。
【図13】少なくとも1つの実施形態によるカテーテルマウントの概略図である。
【図14】入口リムおよび排気リムを備えた、少なくとも1つの実施形態による加湿吸入システムの概略図である。
【図15】少なくとも1つの実施形態による部品を製造する方法の概略図である。
【図16A】外スキン層を有する押出発泡ポリマーを示す顕微鏡写真である。
【図16B】外スキン層を有する押出発泡ポリマーを示す顕微鏡写真である。
【図17】少なくとも1つの実施形態による部品を製造する方法を示すフローチャートである。
【図18】一定の拡散率での理想収着/脱着曲線のプロットである。
【図19】代表的な実験脱着曲線のプロットである。
【図20】実験脱着曲線と算出脱着曲線のプロットである。
【0033】
図面を通じて、参照番号は、参照(または類似)要素の間の対応を示すためにも用いられる。加えて、各参照番号の最初の数字はその要素が最初に表示される図を示す。
【発明の具体的説明】
【0034】
次の詳細な説明には、通気性のある医療用回路部品、例えば、通気性のある吸入回路、麻酔回路または呼吸回路用の部品などを形成するための新規の材料および方法を開示する。上に説明したように、これらの通気性部品は、水蒸気に対して透過性であり、かつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である。開示する材料および方法は、様々な部品に組み込むことができ、そのような部品には、様々な医療用回路における、管(例えば、吸気管および呼気管、ならびにベンチレーター、加湿器、フィルター、ウォータートラップ、サンプルライン、コネクター、ガス分析器などのような呼吸回路の様々な要素の間の他の管系)、Yコネクター、カテーテルマウントおよび患者用インターフェース(例えば、鼻および顔を覆うためのマスク、鼻マスク、カニューレ、鼻枕など)が含まれる。医療用回路とは、広義の用語であり、当業者にとって通常使用されている意味を与えるものである(すなわち、特別な意味に限定されるものではない)。よって、医療用回路とは、開回路(ベンチレーター/ブロワーと患者用インターフェースとの間に単一吸気管を備え得る、特定のCPAPシステムなど)ならびに閉回路を含むことが意図されている。
【0035】
通気性部品を含んでなる呼吸回路
本開示をより詳細に理解するために、まず図1を参照する。図1は、1種以上の通気性部品を含む、少なくとも1つの実施形態による呼吸回路を示している。そのような呼吸システムは、持続的気道陽圧システム、可変型気道陽圧システムまたは二相式気道陽圧(PAP)システムまたは他の呼吸療法形態であり得る。例示呼吸回路では、患者101は通気性吸気管103によって加湿ガスを受ける。管とは、広義の用語であり、当業者にとって通常使用されている意味を与えるものであり(すなわち、特別な意味に限定されるものではなく)、限定されるものではないが、非円筒通路を含む。吸気管は、加湿呼吸ガスを患者へ送達するように構成された管である。通気性管については下により詳細に論じる。
【0036】
加湿ガスは、以下のとおり図1の回路で輸送され得る。乾燥ガスは、ベンチレーター/ブロワー105から加湿器107へと移り、乾燥ガスは加湿器107により加湿される。加湿器107は、ポート111によって吸気管103の入口109(加湿ガス受入端)に接続し、それによって加湿ガスを吸気管103へ供給する。加湿ガスは、吸気管103を通って出口113(加湿ガス放出端)へ流れ、その後、出口113に接続された患者用インターフェース115を通って患者101へと流れる。呼気管117もまた患者用インターフェース115に接続している。呼気管は、吐き出された加湿ガスが患者から離れて移動するように構成された管である。この場合、吐き出された加湿ガスは呼気管117により患者用インターフェース115からベンチレーター/ブロワー105へと戻る。
【0037】
この実施例では、乾燥ガスは、通風孔119を通ってベンチレーター/ブロワー105に入る。ファン121は、通風孔119から空気または他のガスを引き込むことによりベンチレーター/ブロワーへのガスの流れを改善することができる。ファン121は、例えば、可変速ファンであってよく、その場合、電子制御装置123によりファン速度が制御される。特に、電子制御装置123の機能は、親(マスター)制御装置125からの入力に応じて親電子制御装置125によりおよびダイヤル127によってユーザーにより設定される圧力またはファン速度の所定の必要値(設定値)により制御することができる。
【0038】
加湿器107は、ある容量の水130または他の好適な加湿液を入れ得る加湿チャンバー129を備える。加湿チャンバー129は、使用後に加湿器107から取り外し可能であることが好ましい。取り外し可能であると、加湿チャンバー129をより容易に滅菌または処理することができる。しかしながら、加湿器107の加湿チャンバー129部分は単一構造を有することがある。加湿チャンバー129の本体は、非伝導性のガラス材料またはプラスチック材料から形成することができる。しかし、加湿チャンバー129は伝導性部品も含み得る。例えば、加湿チャンバー129は、加湿器107上のヒータープレート131と接触しているかまたは結合された高熱伝導性基材(例えば、アルミニウム基材)を含み得る。
【0039】
加湿器107はまた、電子制御装置も含み得る。この実施例では、加湿器107は、アナログまたはデジタル型親電子制御装置125を含む。親制御装置125は、関連メモリーに保存されたコンピューターソフトウェアコマンドを実行するマイクロプロセッサーベースの制御装置であることが好ましい。例えば、ダイヤル133によってユーザーにより設定される湿度値または温度値入力、および他の入力に応じて、親制御装置125は、ヒータープレート131に電圧を加えて加湿チャンバー129内で水130を加熱する時期(またはレベル)を決定する。
【0040】
任意の好適な患者用インターフェース115を組み込むことができる。患者用インターフェースとは、広義の用語であり、当業者にとって通常使用されている意味を与えるものであり(すなわち、特別な意味に限定されるものではなく)、限定されるものではないが、マスク(顔マスクおよび鼻マスクなど)、カニューレおよび鼻枕を含む。患者用インターフェースは、通常、使用時にガス空間を画成し、このガス空間は暖かい湿潤な呼吸ガスを受け入れるため、レインアウト(rain out)が生じる危険性がある。患者用インターフェース115患者101に近いことから、これはあまり望ましくない。レインアウトの危険性に取り組むために、患者用インターフェース115近くで吸気管103に、または患者用インターフェース115に温度プローブ135を接続することができる。温度プローブ135は、患者用インターフェース115近くでまたは患者用インターフェース115において温度を監視する。温度プローブと連通する加熱ライン(示していない)を使用して、吸気管103および/または患者用インターフェース115内の温度を、飽和温度を超える温度に高めるように患者用インターフェース115および/または吸気管103内の温度を調整することができる。温度プローブおよび加熱ラインに加えて(または温度プローブおよび加熱ラインに代わるものとして)、患者用インターフェース115はまた、図11A、図11Bおよび図12に関して下により詳細に記載するように、通気性インターフェースを含んでなり得る。
【0041】
図1では、吐き出された加湿ガスは、呼気管117によって患者用インターフェース115からベンチレーター/ブロワー105へ戻される。呼気管117は、下に記載するように通気性発泡材料を含んでなることが好ましい。しかしながら、呼気管117はまた、当技術分野で既知のように、医療用管でもあり得る。いずれの場合にも、呼気管117は、吸気管103に関して上に記載したように、レインアウトの危険性を低減するために一体となった、温度プローブおよび/または加熱ラインを備え得る。さらに、呼気管117は、吐き出されたガスをベンチレーター/ブロワー105へ戻す必要はない。あるいは、吐き出された加湿ガスは、周囲環境へまたは他の付属機器、例えば、エアースクラバー(air scrubber)/フィルター(示していない)などへ直接送ることができる。ある特定の実施形態では、呼気管は全く省略される。
【0042】
通気性部品を形成するための発泡ポリマー
図1に関して上に説明したように、呼吸回路などの医療用回路は、通気性部品、例えば、管または患者用インターフェースなどを利用することができる。これらの部品でのレインアウトを防ぐために通気性であることが望ましい。材料通気性の1つの尺度は透過性(g−mm/m/日で表される)である。通気性の別の尺度は材料中の水の拡散率(拡散係数、cm/秒で測定される)である。同様の試験条件では、例えば、同様の温度では、ある材料の透過性および拡散率は相互に正比例する。通気性熱可塑性エラストマー材料(ISO 18064:2003(E)に準拠したTPE、これは引用することにより本明細書の開示の一部とされる)は、これらの通気性部品の形成に特に適していることは知られている。しかしながら、これらの公知材料はもろく、それらを使用可能にするには十分な補強が必要である。
【0043】
通気性と強度の関係は、部品に成形される発泡ポリマー材料(既知の通気性ポリマーを含む)により予想外に改善することができることが見出された。高通気性発泡材料を組み込むことにより、相対的に高い曲げ剛性および高通気性の両方を有する部品を製造することができる。同様に、本明細書に記載する発泡材料から形成された部品はまた、相対的に高い圧縮抵抗(resistance to crushing)および座屈抵抗(resistance to buckling)も有し得る。結果として、特別な補強を施さずに、ISO 5367:2000(E)規格(すなわち、流れ抵抗の増大についての試験)の要件を満たし、さらに、後により詳細に定義するように、十分に通気性のある、適切な「内部」特性(例えば、厚さ、材料、材料配合、弾性率、通気性および/または内部剛性)を有する管を製造することができる。ISO 5367:2000(E)は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。例えば、通気性熱可塑性エラストマー(TPE)材料、例えば、ARNITEL(商標)VT 3108などは、様々な実施形態による部品の発泡および成形に特に適していることが見出されている。この材料は製品または部品に成形されるため、この材料では、材料を発泡させることにより通気性と強度の関係を大幅に改善することができる。
【0044】
従って、ある特定の実施形態は、既知の通気性材料と比べて大幅に改善された特性、ヤング率(剛性)および透過性(通気性)特性を兼ね備えるように、特定の発泡ポリマーを用いて通気性部品を形成することの実現を含む。これらの新規発泡ポリマーならびに発泡ポリマーおよびそのような発泡ポリマーを組み込んでいる医療用回路部品を形成するための技術は、例示例として本明細書に記載している。これらの発泡ポリマーは、高透過性であるため、それらを通じて水蒸気は迅速に拡散することができる。これによって、部品内の加湿ガスから周囲の大気へまたは部品の反対側の他のドライヤーガスへ水蒸気を透過させることにより部品内での凝縮の蓄積が低減する。さらに、これらの発泡ポリマーから形成された部品はまた、剛性があり、自己支持性があり、圧縮抵抗力がありまたは半硬質でもあり、さらなる補強の必要がない場合さえある。発泡ポリマーはガスから水蒸気を透過させるが液体水を透過させないため、発泡ポリマーは医療用回路部品の形成に有用である。発泡ポリマーはまたガスバルク流に対して実質的に不透過性でもあり、そのため、それらを使用して、加湿ガスを送達するための部品を形成することもできる。
【0045】
一般的に、少なくとも1つの実施形態による発泡ポリマーは、通気性発泡熱可塑性ポリマーである。好ましくは、通気性熱可塑性ポリマーは、発泡熱可塑性エラストマー(またはISO 18064:2003(E)により規定されているTPE)、例えば、(1)コポリエステル熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーであるARNITEL(商標)、またはISO 18064:2003(E)により規定されている他のTPC材料またはTPC−ET材料)、あるいは(2)ポリエーテルブロックアミド(例えば、ポリエーテルソフトセグメントを含むポリアミド熱可塑性エラストマーであるPEBAX(商標)、または他のISO 18064:2003(E)により規定されているTPA−ET材料)、あるいは(3)熱可塑性ポリウレタン(ISO 18064:2003(E)により規定されているTPU材料)、あるいは(4)発泡ポリマーブレンド、例えば、TPE/ポリブチレンテレフタレート(PBT、例えば、DURANEX(商標)500FP)ブレンドなどである。通気性熱可塑性ポリマーが発泡TPE/PBTブレンドである場合には、そのブレンドは、好ましくは、80重量%〜99重量%(または約80重量%〜99重量%)の間のTPEおよび20重量%〜1重量%(または約20重量%〜1重量%)の間のPBTを含んでなる。
【0046】
上記実施形態のいずれの場合でも、発泡材料の空隙率は25%(または約25%)より大きくてよく、例えば、25〜60%(または約25〜60%)の間、または30〜50%(または約30〜50%)の間などであってよい。少なくとも1つの実施形態では、前記発泡材料の空隙の5%(または約5%)以下は直径500μmを超える。
図2Aは、当技術分野で既知の通気性材料についての透過性とヤング率の文献値のlog/logプロットを示す。値は弾性率および透過性の双方において6桁にわたって変化する。
図2Bは、図2Aに、1番〜4番および6番と表示した、本明細書において開示する様々な実施形態による例示発泡ポリマーの例についてのデータポイントを加えたものである。既知の材料の総てについての透過性および弾性率の組合せは、下記式:
【数7】

(式中、Pは、ASTM E96の手順A(温度23℃および相対湿度90%での乾燥法)に従って測定された、材料の透過性をg・mm/m/日で表し、Mは材料のヤング率をMPaで表す)
に相当する直線201を超えないことが分かった。ASTM E96は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0047】
図2Bのポイント1番〜4番、6番および8番により表される発泡ポリマー材料では、透過性Pは下記式:
【数8】

を満たす。このように、これらの発泡ポリマーは、これまで知られていない通気性および剛性レベル組合せを有する。
【0048】
発泡ポリマーの透過性および弾性率は、発泡ポリマーを組み込んでいる部品において改善された剛性および/または通気性を提供するように選択することができる。好ましくは、その材料は、容易に圧潰もしくはキンクを起こさないまたは圧力により体積が変化しないように、十分に剛性がなければならない。例えば、通気性発泡ポリマーは、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、その発泡ポリマーを25mm径の金属円筒の周りにキンクまたは圧潰なく曲げることができる、十分に剛性がある必要がある。そのため、少なくとも1つの実施形態では、弾性率Mは30MPa(または約30MPa)より大きい。M=30MPaのラインは、図2Bでは直線203として示される。しかしながら、部品の剛性を制限して、その部品を扱い易くするまたは患者の安楽を高めることが望ましいこともある。そのため、ある特定の実施形態では、弾性率Mは1000MPa(または約1000MPa)未満に制限することができる。M=1000MPaのラインは直線205として示される。また、弾性率Mを800MPa(または約800MPa)未満、または500MPa(または約500MPa)未満に制限することが望ましいこともある。
【0049】
加えて、様々な一般的用途および医療用部品において凝縮を防止または低減するほど十分に高い通気性を選択することが望ましいこともある。発泡ポリマーの拡散率は空隙体積分率の関数であることが分かった。これについては表1に示され、表1では各相対湿度(RH)における、特定の空隙率(D)での拡散率を固体ARNITEL(商標)VT 3108(D)の同じRHでの拡散率で割った割合を要約している。表1のデータのプロットを図3に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
従って、発泡ポリマーの透過性および/または空隙率の適当なレベルを選択して、適当な通気性を定めることが可能である。ある特定の実施形態では、透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って測定された60g−mm/m/日(または約60g−mm/m/日)より大きい。透過性60g−mm/m/日は、固体ARNITEL(商標)VT 3108に対する66%増加を表す。P=60g−mm/m/日のラインは直線207として示される。また、いくつかの実施形態では、70MPa g−mm/m/日(または約70g−mm/m/日)より大きい透過性Pを選択することが望ましいこともある。
【0052】
透過性を対応する空隙率と関連付けることが可能である。透過性60g−mm/m/日は、固体ARNITEL(商標)VT 3108の値の1.66倍である。透過性が拡散率に正比例することが分かれば、図3から拡散率比が1.66より大きい場合の対応する空隙率を求めることが可能である。図3によれば、対応する空隙率は25%より大きい。従って、ある特定の実施形態では、空隙率は25%(または約25%)より大きい。また、いくつかの実施形態では、30%(または約30%)より大きい空隙率を選択することが望ましいこともある。空隙率30%は、上に説明したように、透過性70g−mm/m/日(または約70g−mm/m/日)と対応する。
【0053】
また、発泡ポリマーの空隙率を制限して、液体水が空隙を通じて漏出しないようにすることが望ましいこともある。発泡ポリマーに(下により詳細に論じる)外スキン層構造がない場合には、空隙率が45%(または約45%)未満であることが望ましいことがある。発泡ポリマーが外スキン層構造を有する場合には、空隙率が60%(または約60%)未満であることが好適であり得る。本明細書において記載する医療用回路用部品の形成については、発泡ARNITEL(商標)VT 3108の空隙率が25〜60%(または約25〜60%)の間であることが好適であることが見出されている。例えば、空隙率30%(またはその前後)では、Arnitel VT3108の通気性を最大2倍まで向上させることができる。比較的軽微な弾性率の低下は、同様の通気性を維持しながら、下に記載するように、部品の厚さを増すことにより補うことができる。これらの部品の形成については、発泡ARNITEL(商標)VT 3108の空隙率が30〜50%(または約30〜50%)の間であることが特によく適していることが見出されている。前述は好適な空隙率および対応する材料特性の例にすぎないことは理解されよう。
【0054】
上に論じたように、材料通気性の別の尺度は材料中の水の拡散率(拡散係数、cm/秒で測定される)である。同様の試験条件では、特定の基材の透過性および拡散率は相互に正比例する。様々な実施形態では、発泡ポリマーは3×10−7cm/秒(またはその前後)より大きい、より好ましくは6×10−7cm/秒(またはその前後)より大きい拡散係数を有する。例えば、47%空隙率の発泡ARNITEL(商標)VT 3108の0.1625cm径ロッドは、拡散係数が7.6×10−7cm/秒に等しい(またはほぼ等しい)と計算されている。別の例として、13%空隙率の発泡ARNITEL(商標)VT 3108の0.0505cm厚フィルムは、拡散係数が3.3×10−7cm/秒に等しい(またはほぼ等しい)と計算されている。
【0055】
図2Bのサンプル1番〜4番は、発泡ARNITEL(商標)VT 3108を含んでなる。これらの材料、特に53%空隙率のサンプル4番は、透過性および弾性率の組合せに関しては任意の他の既知の材料よりも良い性能を有することが分かる。サンプル4番では、発泡加工により97%RHにおいて透過性のほぼ6.5倍平均増加がもたらされ、弾性率は純粋ARNITEL(商標)VT 3108の30%であった。
【0056】
図2Bにおいて、ポイント1番は、サンプル名「AB 14.2a」のデータを表している。AB 14.2aは、外径24.5cmの発泡波形ARNITEL(商標)VT 3108成人用管である。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4A〜図4Dに示し、表2に要約している)、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれる。
【0057】
ポイント2番は、サンプル名「MB27 4%」のデータを表している。MB27 4%は、外径15.46cmの発泡波形ARNITEL(商標)VT 3108幼児用管である。その管は、基材ポリマー(ARNITEL(商標)VT 3108)および4重量%(または約4重量%)の発泡剤マスターバッチ(ポリエチレンおよび20重量%のClariant社製HYDROCEROL(商標)BIH−10Eを含んでなる)の混合物から押出成形されたものである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Eおよび図4Fに示し、表2に要約している)、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれる。
【0058】
ポイント3番は、サンプル名「FIIA−2」のデータを表す。FIIA−2は、ARNITEL(商標)VT 3108の発泡押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Gおよび図4Hに示し、表2に要約している)、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれる。水含有量に伴う寸法の変化も測定した。水含有量に伴う長さの変化は下記式:
【数9】

(式中、
W%は、乾燥ポリマー1g当たりに吸収された水のグラム数であり、
Xは測定寸法であり、かつ
はW%=0での測定寸法である)
により表すことができることが分かった。
【0059】
ポイント4番は、サンプル名「FIIA−5」のデータを表している。FIIA−5は、ARNITEL(商標)VT 3108の発泡押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Iおよび図4Jに示し、表2に要約している)、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれる。水含有量に伴う寸法の変化も測定した。水含有量に伴う長さの変化(ΔX/X)は下記式:
【数10】

により表すことができることが分かった。
【0060】
ポイント5番は、サンプル名「80/20 ARNITEL/PBT」のデータを表している。80/20 ARNITEL/PBTは、ARNITEL(商標)VT 3108およびポリブチレンテレフタレート(PBT)の80/20重量パーセントブレンドから作製されたポリマーの押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Kに示し、表2に要約している)、平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRH=100での拡散率(表1に要約している)が含まれる。
【0061】
ポイント6番は、サンプル名「発泡80/20 ARNITEL/PBT」のデータを表している。発泡80/20 ARNITEL/PBTは、ARNITEL(商標)VT 3108およびPBTの80/20重量パーセントブレンドから作製されたポリマーの発泡押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Lおよび図4Mに示し、表2に要約している)、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRH=100での拡散率(表1に要約している)が含まれる。
【0062】
ポイント7番は、サンプル名「FIIA−1」のデータを表している。FIIA−1は、固体Arnitel 3108の押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、顕微鏡写真(図4Nおよび図4Oに示し、表2に要約している)、平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれる。水含有量に伴う寸法の変化も測定した。水含有量に伴う3つの寸法総て(長さ、幅および厚さ)の変化は、観察によりほぼ同じ(すなわち、等方拡大)であることが認められ、下記式:
【数11】

により表すことができた。この関係を用いて、水脱着実験における時間に対するサンプル厚さの変化を計算した。
【0063】
最後に、ポイント8番は、サンプル名「発泡TPU/アセタール10%」のデータを表している。発泡TPU−アセタール10%は、ESTANE(商標)58245(TPU)およびアセタールの発泡ブレンドの押出ストリップである。このサンプルについて集めた実験データには、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびに拡散率(表4に示す)が含まれた。
【0064】
また、図2Bには、「FmdAd1」と表示したポイントも示している。FmdAd1は、外径24.5cmの発泡波形ARNITEL(商標)VT 3108成人用管である。このサンプルについて集めた実験データには、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれた。
【0065】
図2Aまたは図2Bに記入していない追加の非発泡ポリマー材料および発泡ポリマー材料を下に記載する。
【0066】
「Batch 15 wts」、「Batch 15 f」、「MB27 0%」、「MB27 6%」、「MB22.1」、「MB32.1」および「MB41.4」は、外径15.46cmの発泡波形ARNITEL(商標)VT 3108幼児用管である。これらのサンプルについて集めた実験データには、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)ならびにRHに伴う拡散率の変化(表1に要約している)が含まれた。MB32.1については、水含有量に伴う長さの変化も測定した。その変化は、下記式:
【数12】

により表されることが見出された。
【0067】
「TPU、ESTANE 58245」は、壁厚0.048cmの非発泡波形TPU(ESTANE(商標)58245)管である。このサンプル(this same)について集めた実験データには、空隙率および平均サンプル厚さ(表3に示す)、弾性率(表4に示す)ならびに拡散率(表4に示す)が含まれた。
【0068】
【表2】

【0069】
顕微鏡写真から、発泡ポリマーサンプル(サンプル1番〜4番および6番)が固体ポリマー内に気泡または空隙を含んでなることが分かる。これらの空隙の横方向サイズは、発泡ポリマーの厚さの30%(または約30%)未満、例えば、全厚の10%(または約10%)未満であることが望ましい。
【0070】
顕微鏡写真からまた、図2Bの直線201および直線207より上(P>60g−mm/m/日)にある特定の発泡ポリマーサンプル(すなわち、サンプル1番〜4番)では、空隙が球状ではなく実質的に扁平になっていることも分かる。空隙の扁平形状により空隙間のポリマーもまた扁平となる。ポリマーの扁平形状は、発泡ポリマーを含んでなる機械特性部品を改善することが見出されている。連続ポリマーの長さを縦方向に長くすることによって弾性率がこの方向に増加すると考えられている。そのため、少なくとも1つの実施形態は、発泡ポリマーが少なくともいくつかの空隙、例えば、少なくとも80%またはその前後を有し、それらの空隙が縦軸に沿って扁平になっていることが有利であり得ることの実現を含む。この扁平のアスペクト比(長さ対高さ)は、望ましくは少なくとも2:1(または約2:1)または少なくとも3:1(または約3:1)、例えば、2:1〜7:1(または約2:1〜7:1)の間または3:1〜7:1(または約3:1〜7:1)の間である。
【0071】
また、これらのサンプルでは、空隙が互いに孤立していないことも認められた。それらの空隙の多くは接続されているかまたは結合されている。すなわち、発泡ポリマーは「連続気泡」を有する。これらの発泡ポリマーの連続気泡構造は、軸方向に(または横方向に)も縦方向にもより広い距離の水蒸気の移動を可能にし、固体ポリマーを通過する必要がないため、通気性を向上させる。発泡ポリマー中の空隙の少なくとも10%(または約10%)が相互接続されていることが望ましい。いくつかの実施形態では、空隙の少なくとも20%(または約20%)が他の空隙に接続されている。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
表4では、ARNITEL(商標)に基づくサンプルについての透過性データを、下の関係式:
【数13】

(式中、Psampleはサンプルの透過性を表し、PARNITEL VT 3108はARNITEL(商標)VT 3108の透過性を表し、Dsampleはサンプルの拡散率を表し、DARNITEL VT 3108はARNITEL(商標)VT 3108の拡散率を表す)
を用いて計算した。同様に、TPU(ESTANE(商標))に基づくサンプルについての透過性データを、下の関係式:
【数14】

(PESTANE 58245およびDESTANE 58248はそれぞれ、ESTANE(商標)58245の透過性および拡散率を表す)
を用いて計算した。係数0.7はブレンドサンプルの水含有量が低いことを反映している。
【0075】
別の好適な発泡ポリマー材料はポリエーテルに基づく熱可塑性ポリウレタン(TPU)であり、このTPUは良好な通気性および引裂抵抗(tear resistance)を有する。しかしながら、TPUは不十分な剛性(低ヤング率)を有する。多くの研究によってその材料を他のポリマーと混合することによるその剛性の改善に取り組まれている。しかしながら、TPUと他のポリマーとの配合は剛性を増加させるのに効果的であり得るが、ブレンドポリマーの通気性に深刻な低下が起こり得ることが見出されている。
【0076】
試験後、通気性が許容されないレベルに低下することなく機械剛性を大幅に改善させるブレンドが確認された。例示ブレンドは、上に論じたコポリエステルTPE/PBTのブレンドである。別の例示ブレンドは、TPUおよびポリカーボネート−アクリロニトリルブタジエンスチレン(PC−ABS、例えば、WONDERLOY(商標)として販売されている)を含んでなる。TPU:WONDERLOY(商標)の好適な重量比は70:30(または約70:30)である。19mm径の一軸スクリュー押出機を使用して行った試験では、ブレンドの引張強さはTPU単独と比べて剛性の著しい改善(14倍またはその前後)を示すが、水蒸気透過率は通気性のわずかな低下(30%またはその前後)しか示さないことが示された。上記のように、TPU−WONDERLOY(商標)ポリマーブレンドを発泡させることによって、通気性と剛性のさらなる改善を達成することができる。
【0077】
上に論じたように、少なくとも1つの実施形態によるさらに別の例示ブレンドは、通気性(透過性)および水吸収が非常に低い化合物であるTPU(ESTANE(商標)58245)およびアセタールを含んでなる。発泡ストリップ(空隙率15〜20%の間または約15〜20%の間)は、重量比70:30(または約70:30)のESTANE(商標)58245およびアセタールから作出した。平均サンプル厚さは0.139cmであった。そのブレンドの100%RHでの水吸収は乾燥ポリマー1g当たり水0.38g(38%)であった。サンプルの拡散率は、脱着曲線から測定し、23℃で6.59×10−6cm/秒であると分かった。サンプルの弾性率は34MPaであり、透過性は151g−mm/m/日であると計算された。
【0078】
これらの結果は、非発泡TPU(ESTANE(商標)58245)を含んでなる対照例と比較する。蛇管を押出成形し、壁厚は0.048cmであり、100%RHでの水吸収は乾燥ポリマー1g当たり水0.53g(53%)であった。非発泡サンプルの拡散率は、脱着曲線から測定し、23℃で2.41×10−7cm/秒であると分かった。弾性率は18MPaであった。このポリマーの透過性は80g−mm/m/日である。
【0079】
発泡ポリマーを含んでなる部品
上に記載した通気性発泡材料は、高通気性であるが自己支持性があり半硬質の材料が有利な、多くの医療用部品に向いていることは理解されよう。従って、上に論じた通気性発泡材料の詳細の総てはこれらの部品に適用できる。以下は、その通気性発泡材料によって、これまでは不可能であった新たな利点が与えられる部品の一部の例にすぎない。空隙率、厚さおよび空隙サイズを操作することによって、形成部品の内部特性の様々なカスタマイズが可能となる。
【0080】
一般的に、部品は、内部の空間を画成する壁体であり、該壁体の少なくとも一部が、その空間内のガスから水蒸気を透過させるが液体水を透過させない上記のような通気性発泡材料からなる壁体を備える。その壁体はまた、その空間内の、呼吸ガス、麻酔ガス、吸入ガスおよび/または煙を含むガスバルク流に対しても不透過性であることが好ましい。
【0081】
その壁体は、通気性のために、ガス空間からその壁体の反対側の領域への水蒸気通路を形成する。いくつかの実施形態では、前記通気性発泡材料を通るガス空間から大気への水蒸気通路が存在する。その通路は直接経路であり得、その壁体は大気に直接曝される。あるいは、その通路は間接的であり、その経路はガス空間と大気との間の1以上の他の壁体を経る。他の構造では、前記壁体の反対側に、大気の代わりに第2のガス空間(スイープガス空間と呼ばれる)が存在し得る。このスイープガス空間より、次には、大気に間接的に排出することができる。その場合には、水蒸気通路はガス空間からスイープガス空間までに及ぶ。
【0082】
上記実施形態のいずれの場合でも、囲い壁全体を発泡材料から形成することができる。少なくとも1つの実施形態では、その壁体の少なくとも一領域は厚さが0.1〜3.0mm(または約0.1〜3.0mm)の間、例えば、0.1〜1.5mm(または約0.1〜1.5mm)の間などである。例えば、その壁体の少なくとも一領域は、厚さが0.7〜1.0mm(または約0.7〜1.0mm)の間または0.7〜3.0mm(または約0.7〜3.0mm)の間であり得る。
【0083】
上記実施形態のいずれの場合でも、前記壁体は少なくとも2つのゾーンを含み得る。第1のゾーンは、実質的に独立気泡発泡材料の層を含んでなる外スキン層であり、第2のゾーンは、外層に隣接した内層であり、その外層とガス空間との間にある。スキン層の厚さは壁厚の5〜10%(または約5〜10%)の間、例えば、10〜50μm(または約10〜50μm)の間であり得る。第1のゾーンおよび第2のゾーンの各々は空隙を有する。ある特定の実施形態では、第1のゾーン中の空隙の5%(または約5%)以下は直径100μmを超える。第2のゾーン中の空隙は第1のゾーン中の空隙よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態では、前記発泡材料第2のゾーンの空隙の5%(または約5%)以下は直径700μmを超える。
【0084】
上記実施形態のいずれの場合でも、前記壁体はまた、その壁体または少なくとも1つの領域を補剛する少なくとも1つの補強リブも備え得、その部分では壁体を補剛するために壁体は局部的に厚くなっている。
【0085】
前記部品は、患者用インターフェース;または管、例えば、呼吸回路において使用する呼吸管など;または患者用インターフェースの管および少なくとも一部分;または呼吸回路において使用する導管(すなわち、周囲が密閉される必要がない管の一部);またはマスク(マスクフレームおよびそのマスクフレームの周囲にわたるシールを含み、この際、そのマスクフレームは壁体を含んでなり、その壁体の実質的大部分は通気性発泡材料から形成される);または吸入システムの部品、例えば、吸入システムの排気アームの少なくとも一部分において使用する管または導管などであり得る。
【0086】
次に図5を参照する。図5は、少なくとも1つの実施形態による部品501を示している。部品501は、壁体503を設けて構成され、一方の側にガス空間505を画成している。壁体503は、上記のように、通気性発泡ポリマーを含んでなる。点線507により表しているように、その壁体は、完全に密閉されたガス空間505を画成してもしなくてもよい。使用時には、そのガス空間は、壁体503が壁体503の一方の側にガス空間505を画成しその空間505が湿潤なガスを含むように、実質的に密閉され得る。
【0087】
壁体503の反対側には第2のガス空間509が存在する。少なくとも1つの実施形態では、第2のガス空間509は大気である。部品501の壁体503は、水蒸気を透過させるが液体水および呼吸ガスバルク流を実質的に透過させない通気性発泡材料からなる。通気性発泡材料により空間505内でガスを乾燥させ得るように、壁体503の外面は第2のガス空間509内で大気または乾燥スイープガスに曝される。そのような構造では、ガス空間505内の相対湿度が高いガスは、壁体503を通じて第2のガス空間509へ水蒸気を透過させることによって乾燥させることができ、第2のガス空間509は、例えば、大気であってよい。比較的温かいまたは湿潤なガス/空気/呼吸ガスが満たされた時にガス空間505内で起こるレインアウトをもたらすおよび/または防止するために、ガス空間505内のガスの乾燥は有用である。
【0088】
1つの例では、部品501は患者用インターフェース、例えば、呼吸マスクなどであってよく、ガス空間505は壁体503によって、および空間505を実質的に囲む患者の顔(示していない)によって少なくとも部分的に画成され得る。この実施例では、患者の顔は点線507にって表される。別の実施形態では、部品501は呼吸管(吸気管または呼気管)であってよい。患者用インターフェースおよび呼吸管については下により詳細に論じる。
【0089】
通気性管
補助呼吸、特に医療応用では、相対湿度レベルが高いガスは、比較的限られた大きさ、一般には10〜25mm(または約10〜25mm)の範囲の間の直径(新生児用および成人用の両方にあてはまる)のフレキシブル呼吸管を通じて供給され、戻される。そのような呼吸管は、最大性能および患者の安楽レベルを保証するために、非常に軽く、キンクまたはピンチングに対して抵抗力があり、柔軟であることが理想的である。呼吸管の重量によって患者用インターフェースにかかる力を低下させるためには、軽量の呼吸管が非常に重要である。同様に、高い患者の安楽レベルを実現するためには、呼吸管は柔軟でかつ容易に曲げることが可能でなければならないが、この高い患者安楽レベルによって患者コンプライアンスを改善することができる。しかしながら、極めて軽く柔軟な部品は、通常脆弱であり、過度にキンクする傾向がある。上記発泡ポリマーを含んでなる管は、キンクおよびピンチングに耐えることができ、さらに、軽く、患者の安楽を高めるのに十分に柔軟であることが分かった。
【0090】
管は部品の一種であるため、上に論じた部品の詳細は、本明細書において論じる管に適用できる。一般的に、医療用回路管は、入口(加湿ガス受入用)と、出口(加湿ガス放出用)と、該入口および該出口の間に少なくとも1つのガス通路を画成する囲い壁とを備え、この際、該囲い壁の少なくとも一部は、水蒸気を透過させるが液体水および呼吸ガスバルク流を実質的に透過させない通気性発泡材料からなる。少なくとも1つの実施形態では、その管は押出成形された蛇管である。医療用回路管は、呼吸管または導管あるいは吸入システムのリム用の管または導管として使用することができる。例えば、その管は、個々に、呼気管または排気導管であり得る。その管は患者用インターフェースの部分でもあり得る。
【0091】
前記管は柔軟であり得る。すなわち、その管は、25mm径のロッドの周りにキンクまたは圧潰なく曲げることができる。さらに特には、その管は、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験に合格することにより規定されるとおり、柔軟である。
【0092】
上記実施形態のいずれの場合でも、その管は長さが1〜2m(または約1〜2m)の間、例えば、1.5m(または約1.5m)であり得る。管は平均直径が10〜25mm(または約10〜25mm)の間であり得る。少なくとも1つの実施形態では、その管は壁厚が0.1〜1.2mm(または約0.1〜1.2mm)の間、例えば、0.6mm〜1.0mm(または約0.6〜1.0mm)の間である。管はその全長のかなりの部分にわたって通気性のある囲い壁を備えることが好ましい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、管の長さの少なくとも80%が通気性のある囲い壁を備える。通気性壁体は、加湿ガス受入管の入口端の近位に位置することが好ましい。例えば、1.5m(または約1.5m)長の管では、その入口端の近位から、管の少なくとも1.2m(または約1.2m)が通気性壁体を備える。
【0093】
その壁体は、通気性のために、ガス空間からその壁体の反対側の領域への水蒸気通路を形成する。いくつかの実施形態では、前記通気性発泡材料を通るガス空間から大気への水蒸気通路が存在する。その通路は直接経路であり得、その壁体は大気に直接曝される。例えば、少なくとも1つの実施形態では、前記管は、呼吸管であり、前記入口では第1のコネクターが末端となり、前記出口では第2のコネクターが末端となる。前記入口コネクターから前記出口コネクターまでの長さで1つのガス通路しかない。
【0094】
あるいは、その通路は間接的であり、その経路はガス空間と大気との間の1以上の他の壁体を経る。他の構造では、前記壁体の反対側に、大気の代わりに第2のガス空間(スイープガス空間と呼ばれる)が存在し得る。このスイープガス空間より、次には、大気に間接的に排出することができる。その場合には、水蒸気通路はガス空間からスイープガス空間までに及ぶ。例えば、その管は同軸呼吸管であり得る。同軸呼吸管では、ガス空間は吸気リムまたは呼気リム(expiratory limb)であり、第2のガス空間は該吸気リムまたは該呼気リムの残りの方である。該吸気リムの入口と該吸気リムの出口との間に1つのガス通路が備わっており、該呼気リムの入口と該呼気リムの出口との間に1つのガス通路が備わっている。1つの実施形態では、前記ガス空間は前記吸気リムであり、前記第2のガス空間は前記呼気リムである。あるいは、前記ガス空間は前記呼気リムであってよく、前記第2のガス空間は前記吸気リムであってよい。
【0095】
前記部品の記載に関連して上に説明したように、上記実施形態のいずれの場合でも、前記壁体は少なくとも2つのゾーンを含み得る。第1のゾーンは、実質的に独立気泡発泡材料の層を含んでなる外スキン層であり、第2のゾーンは、外層に隣接した内層であり、その外層とガス空間との間にある。スキン層の厚さは壁厚の5〜10%(または約5〜10%)の間、例えば、10〜50μm(または約10〜50μm)の間であり得る。第1のゾーンおよび第2のゾーンの各々は空隙を有する。ある特定の実施形態では、第1のゾーン中の空隙の5%(または約5%)以下は直径100μmを超える。第2のゾーン中の空隙は第1のゾーン中の空隙よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態では、前記発泡材料第2のゾーンの空隙の5%(または約5%)以下は直径700μmを超える。
【0096】
さらに、上記実施形態のいずれの場合でも、前記管は、前記囲い壁に配列された複数の補強リブを備え得る。これらのリブは、一般的に管の縦軸と整列されるように、管とともに共押出成形することができる。好ましくは、3〜8個の補強リブ、さらに特には3〜5個の補強リブが存在する。
【0097】
上記に加えて、管内での凝縮物の形成を低減しまたはなくすために、および使用時に管を通るガス流において実質的に均一な温度を維持するために、ヒーター、例えば、抵抗加熱ヒーター線などを管通路内にまたは管壁内に配設してもよい。
【0098】
特定の実施形態では、前記管は、長さ1.525m(またはその前後)、重量54g(またはその前後)、空隙率35%(またはその前後)、空気圧コンプライアンス0.23mL/cm HO/m(またはその前後)および透過性85g−mm/m/日(またはその前後)である。その管は、95%(または約95%)のARNITEL(商標)VT 3108および5%(または約5%)の発泡剤マスターバッチ(ポリエチレンおよび20重量%(または約20重量%)のClariant社製HYDROCEROL(商標)BIH−10Eを含んでなる)から形成される。
【0099】
次に図6Aおよび図6Bを参照する。図6Aおよび図6Bは、少なくとも1つの実施形態による通気性管601を示している。図6Aは、管601の側面図を示し、一方、図6Bは、図2Aと同じ側面図に沿った管601の断面を示している。図6Aおよび図6Bの両方において、水平軸をライン603−603として表している。図6Bで壁体605として示した管壁は、上記のように、通気性発泡材料である。典型的な寸法−新生児用および成人用それぞれについて直径12〜20mm(または約12〜20mm)の間および長さ1〜2m(または約1〜2m)の呼吸管の場合、壁体605は100〜1500μm(または約100〜1500μm)の間の厚さであり得る。しかしながら、壁体605は最大3mm(または約3mm)厚であってよく、さらに良好な通気性も果たし得る。
【0100】
管601には波形がつけられている(すなわち、その管は隆起表面または溝付表面を有する)。蛇管を形成するための方法は、図15に関して、下により詳細に論じる。しかしながら、いくつかの実施形態では、その管は平滑表面を有する。
次に図7Aおよび図7Bを参照する。図7Aおよび図7Bは、少なくとも1つの実施形態による通気性管701を示している。この場合も、本明細書における実施例のいずれかに記載するように、管701は通気性発泡材料から製造される。その管は複数の補強リブ703をさらに備え、これらの補強リブは、管とともに共押出成形することができる。リブ703の形態は押出機ダイヘッドによって決められ、サイズおよび発泡度はダイヘッドから押し出す際の温度および圧力によって制御される。
【0101】
リブ703は、管701と同じ発泡ポリマーから形成することができる。あるいは、リブ703は、管とは異なる材料から作製してもよい。これは、共押出成形によって達成することができる。図7Aに示されるように、管701は、所定位置にリブ703を配置して押出成形することができ、次いで、その管に波形をつけて、図7Bに示される「点在」構造を形成することができる。ある特定の実施形態では、管は、3〜8個の間の補強リブ、例えば、3〜5個の間の補強リブなどを備える。そのように追加補強された管は、医療用回路に関して本明細書に記載する管部品の1以上において独立した用途を見出すことができる。
【0102】
次に図8Aおよび図8Bを参照する。図8Aおよび図8Bは、少なくとも1つの実施形態によるリブ付通気性管801の代替構造を示している。図8Bでは、突起リブ803は管801の内側に隆起の間の空間内に見える。図8Cは、図8Aおよび図8Bに示される管の形成に好適なコルゲーターを示している。そのブロックは隆起部分807の間に突起部分805を含んでなり、これらの突起部分によって、コルゲーターから管を取り出した時に突起リブが形成される。性能特性(例えば、コンプライアンス、引張強さ、曲げに伴う流れ抵抗および圧縮抵抗など)をさらに向上させるために、さらに他の補強加工を用いて管を補ってよいことは理解されよう。それらのプロセスは、管形成プロセスと統合されていても統合されていなくてもよい。
【0103】
次に図9を参照する。図9は、少なくとも1つの実施形態による別の例示医療用回路を示している。それらの回路は、上記の通気性発泡ポリマーを含んでなる2つの通気性管、すなわち、吸気管103および呼気管117を含んでなる。吸気管103および呼気管117の特性は、図1に関して上に記載した管と同様である。吸気管103は、加湿器115と連通する入口109と、患者101に加湿ガスを供給する際に通る出口113とを備える。呼気管117もまた、患者から吐き出された加湿ガスを受ける入口109と、出口113とを備える。図1に関して上に記載したように、呼気管117の出口113より、吐き出されたガスを、大気中へ、ベンチレーター/ブロワーユニット115へ、エアースクラバー/フィルター(示していない)へ、または任意の他の好適な場所へ排出することができる。
【0104】
図1に関して上に記載したように、飽和温度を超える温度に温度を高めることによって管内でのレインアウトの危険性を低減するために、吸気管103および/または呼気管117内に電熱線901を配置することができる。
【0105】
この実施例では、呼気管117は、他の部品に接続するためのコネクター(この場合、Yコネクター903)を含んでなる。例えば、Yコネクター903は、吸気管103および患者用インターフェース(示していない)に接続するように構成される。当然、図9の実施形態は例示構造にすぎない。少なくとも1つの実施形態による部品は、通気性発泡ポリマー管を含んでなる。その部品は好適なコネクターをさらに含んでなり得る。そのコネクターもまた、通気性発泡ポリマーを含んでなることが好ましい。
【0106】
次に図10を参照する。図10は、少なくとも1つの実施形態による同軸管1001を示している。この実施例では、同軸管1001は、患者101とベンチレーター1005との間に配設される。呼気ガスおよび吸気ガスは各々、内管1007または内管1007と外管1011との間の空間1009の一方を流れる。外管1011は内管1007と正確に整列していなくてもよいことは理解されよう。むしろ、「同軸」とは、別の管の内部に位置している管を意味する。使用時には、下に説明するように、水蒸気は通気性発泡管壁を透過するが液体水は透過しない。
【0107】
熱伝達のために、内管1007はその内部の空間1013内で吸気ガスを運び、一方、呼気ガスは内管1007と外管1011との間の空間1009内で運ばれる。この気流構造は矢印で示している。
【0108】
内管1007は、本明細書に記載する通気性発泡材料を使用して形成される。そのため、呼気流空間1009内の湿気は通気性発泡材料を通過して、吸気流空間1013内の吸気流を加湿し得る。実施例に示すように向流配置でガス流を用いることで、通気性材料は吸気流の実質的受動的加湿をもたらす。
【0109】
同軸管1001を用いる場合、ベンチレーター1005は内管1007での漏れを認識しない可能性がある。そのような漏れによって患者101の迂回が起こり得、患者101に十分な酸素が供給されないということになる。そのような迂回は、同軸管1001の患者側端にセンサーを配置することによって検出し得る。このセンサーは患者側端コネクター1015内に設置し得る。ベンチレーター1005近傍で迂回が生じると、患者101は患者101近傍の空気量を連続的に再呼吸することになる。これにより、患者101近傍の吸気流空間1013内で二酸化炭素濃度の増加が起こり、この増加はCOセンサーにより直接検出することができる。そのようなセンサーは、現在市販されている複数の同様のセンサーのうちのいずれかを含んでなり得る。あるいは、この再呼吸は患者側端コネクター1015でガスの温度を監視することによって検出してもよく、この場合、所定のレベルを超える温度上昇によって再呼吸が生じていることが示される。
【0110】
上記に加えて、内管1007または外管1011のいずれかの内部での凝縮物の形成を低減しまたはなくすために、および同軸管1001を通るガス流において実質的に均一な温度を維持するために、ヒーター、例えば、抵抗加熱ヒーター線などを内管1007または外管1011のいずれかの内部に配設し、ガス空間1009または1013内に、あるいは内管1007または外管1011の壁自体の中に配置してもよい。
【0111】
受動的加湿が望まれない同軸管1001の代替実施形態では、外管1011の外壁は通気性発泡壁体であってよい。この配置では、外管1011は大気と接触し、その通気性壁体は比較的湿潤な呼気ガスの大気との水蒸気交換を可能にする。結果として、レインアウトに対処しおよび/または防止することができる。
【0112】
呼吸マスク
呼吸装置の分野では周知の種類の呼吸マスクがあり、そのような呼吸マスクは、患者摂取用としてガスをマスク内で陽圧供給し得るように患者の顔の鼻腔領域および/または口腔領域の周囲に連続密閉を提供するために患者の鼻および/または口を覆うものである。そのようなマスクの使用は、高所での呼吸(例えば、航空用途)から、鉱業用途および消防用途に、様々な医療上の診断用途および治療用途にまで及ぶ。
【0113】
そのようなマスクの1つの用途は、呼吸のための加湿処置においてある。このシステムは、通常、ベンチレーター、加湿器、呼吸回路および患者用インターフェース、例えば、マスクまたは鼻カニューレなどで構成される。この処置形態では、湿潤な空気が患者に供給され、湿潤な空気と周囲環境との間の温度差の結果として、湿潤な空気は凝縮し水滴を形成し得る。処置が長期にわたる(最大数日)場合では、これらの水滴がマスク内で水たまりとなり、この水たまりによって処置が妨げられ、患者が不慮に水を吸い込む危険性が高まり、患者に不快感および/または息詰まりを引き起こす可能性もある。
【0114】
そのような呼吸マスクの1つの要件は、呼吸マスクが患者の顔に対して効果的な密閉を提供して、供給されるガスの漏れを防止することであった。一般に、先行のマスク構造では、良好なマスクと顔の密閉が得られたが、多くの場合において患者にかなりの不快感を与えた。この問題は前記用途、とりわけ、患者に対してそのようなマスクを何時間もあるいは何日間も連続着用することが要求される医療応用において最も重要である。そのような状況では、患者は長期間マスクに耐えられず、そのため最適な治療目標または診断目標は達成されないか、または大変な苦労をし患者はかなりの不快感を伴って達成されるであろう。
【0115】
呼吸療法の送達における様々な改良点を下に記載する。特に、患者が苦痛なく着用できる患者用インターフェースであり、本明細書に記載する通気性発泡材料で作製された患者用インターフェースの本体において少なくとも部分的に水蒸気透過性(通気性)領域を含む患者用インターフェースを記載する。そのマスク本体の大部分(またはマスク本体全体)は、独特の強度特性および高通気性を利用して、その通気性発泡材料で作製することができる。
【0116】
次に図11Aおよび図11Bを参照する。図11Aおよび図11Bは、少なくとも1つの実施形態による呼吸マスク1101を示している。この患者用インターフェースは、一般的に呼吸管理においてまたはベンチレーターとともに使用することができることは理解されるであろうがここでは加湿式気道陽圧(PAP)システムにおける使用に関して下に記載する。また、次の説明は、先行技術の極薄フィルム構造への限定というよりも、高通気性を有する自己支持性半硬質構造に形成される材料能力から、鼻マスク、口マスク、口鼻マスク、鼻プロングおよび全顔マスクにも適用され得ることも理解されるであろう。
【0117】
マスク1101は、吸気管に接続するための入口1105を備えた中空体1103を含む。マスク1101は患者101の顔に取り付けられ、ヘッドギア1109は患者101の後頭部周囲に固定される。中空体1103に対するヘッドギア1109の固定力は、患者101の顔に対して効果的な密閉を提供するのに十分な、マスククッション1111に対する圧縮力を保証する。複数の連結クリップは、マスク1101をヘッドギア1109に接続するためのスライド部材の取付け用に中空体に接続されている。呼気ガスは、マスク1101中のバルブ(示していない)、さらなる呼気導管(示していない)、または当技術分野で公知の任意の他の同様の手段から放出され得る。
【0118】
中空体1103は、本明細書に記載する発泡ポリマー材料で構成される。そのような材料は、マスク1101に必要な剛性を与えるだけでなく高通気性にもする。マスク1101に通気性領域を与えるこれまでの試みでは、十分に高い通気性を達成するために薄膜の使用が必要であった。これらの膜は、強固なマスクフレームなどの追加補強により支持する必要があり、また、損傷からの保護も必要であった。通気性膜の領域は、通常、マスクフレームの切り抜き部分内で支持される。しかしながら、本明細書に記載する自己支持性通気性発泡ポリマーの場合、独特の強度特性および高通気性を利用して、マスク1101の大部分(またはマスク1101全体)をその発泡ポリマーで作製することができる。結果として、完全(かつ高い)通気性であり得る自己支持性半硬質マスク1101となる。
【0119】
あるいは、中空体1103が、外周を有するフレームワークで実質的に構成されるように、中空体1103は前面の切り抜き部分が大部分であってもよい。長期にわたる加湿処置中にマスク1101内での水滴の形成を防止または低減するために、本明細書に記載する自己支持性通気性発泡材料から作製されたインサートを切り抜き部分内に配置し、結合することができ、それによって水分を周囲の環境へ排出することが可能となる。通気性構造物を中空体1103に取り付ける手段として複数の技術が存在し、それらの技術には、接着、超音波溶接技術、オーバーモールド 共押出成形、または通気性発泡インサートと中空体1103とのスナップ式接続が含まれ得る。
【0120】
例えば、通気性発泡材料で作製されたマスクに対して、その部品の曲げ特性をさらにカスタマイズするために、構造の追加補強を施し得ることも理解されよう。例えば、リブをマスクの内面および/または外面に追加し得る。また、患者の顔の特徴への適合を高めるために、および/または通気性のさらに高い領域を提供するために、一部の部分を補剛/脆弱化するように壁厚の局部的変化も採用し得る。特に、この種の補強は、種々の荷重パターンが予想される特定方向へ部品の曲げ特性を合わせるのに非常に有用であり得る。これらの利点は、これまで使用されていた極薄通気性膜では実現が不可能であったかまたは実現が容易ではなかった。
【0121】
鼻カニューレ
次に図12を参照する。図12は、少なくとも1つの実施形態による鼻カニューレ1201患者用インターフェースを示している。鼻カニューレ1201は、カニューレ本体1203および短送出管1205を含んでなる。本明細書に記載する通気性発泡ポリマーを、カニューレ本体1203および/または短送出管1205に利用して、これらの部品のガス空間内で生じるレインアウトに対処し、かつ/または防止することができる。前にも記載したように、吸気管601においても用途を見出すことができる。
【0122】
カテーテルマウント
通気性発泡ポリマーを適用することができるさらに別の医療用回路部品は、カテーテルマウントである。カテーテルマウントは、マウスピース、鼻マスクまたは気管内挿入管などの患者用インターフェース部品と、呼吸回路のデュアルリムまたは呼吸管との間を接続する。呼吸回路のデュアルリムとの接続は、一般的にYコネクターを介する。患者の吸入・吐出サイクルでは、呼吸回路のデュアルリムの各々は異なる役割を有しており、一方は吸入導管として、もう一方は吐出導管としての役割を有する。カテーテルマウントは二元的な役割を果たし、吸い込まれたガスと吐き出されたガスの両方を輸送する。それゆえに、カテーテルマウントは重要な不利点を有し得る。吐出と吸入との間である量の吐き出された空気がカテーテルマウント内に残留する。従って、患者によって一部の空気が再呼吸される。必ずしも許容されないわけではないが、再呼吸は一般的に望ましくなく、かなりの再呼吸が見込まれる場合には、酸素供給レベルを高める必要がある。
【0123】
患者によって吸入されるガスは、よく管理された換気システムにより、飽和レベルに近い湿度を有する状態で体温に近い温度、通常、33〜37°C(または約33〜37℃)の間の温度で送達される。この温度は、ガスがカテーテルマウントに入る地点に至るまで、吸気管内のヒーターにより維持し得る。患者によって吐き出されたガスは、完全飽和して戻され、カテーテルマウントを通って流れる際にさらなる冷却を受ける。従って、患者の吸入中に内壁に凝縮物が生じることはほとんどないが、患者の吐出中には重大なレベルの凝縮物が生じることがある。カテーテルマウント内部に生じる凝縮物、すなわち、レインアウトは、患者に近いことから特に有害である。患者によって呼吸されまたは吸入された流動性の凝縮物は、咳の発作または他の不快感をきたすことがある。
【0124】
次に図13を参照する。図13は、少なくとも1つの実施形態によるカテーテルマウント1301を示している。カテーテルマウント1301は、ベンチレーター側端にYコネクター1303を組み込んでいる。内管1305は外管1307と同軸に延びている。内管1305は、その患者側端では内管コネクター1309によって支持されており、その内管コネクターは患者側端コネクター1313の支持支柱1311を介して支持されている。内管1305は、そのもう一方の端では第2の内管コネクター1315によって支持されており、その内管コネクターはベンチレーター側端Yコネクター1303の一部を形成している。
【0125】
第2の内管コネクター1315は、吸気管コネクター1317と連通している。外管1307は、その壁体の少なくとも一部が本明細書に記載する通気性発泡材料から作製されている。ある特定の実施形態では、外管1307はその全体が通気性発泡材料から形成される。
【0126】
従って、使用時に、カテーテルマウント1301には、矢印1319で示すように、カテーテルマウント1301に入る吸気流がある。その吸気流は、矢印1319で示すように、内管1305を通過して、患者側端コネクター1313を通って患者へと出ていく。患者吐出後、補助装置を用いる場合もそうでない場合も、呼気ガスは、矢印1321で示すように、患者側端コネクター1313を通過し、内管1305周囲の空間に入る。これらのガスは、矢印1321で示すように、外管1307の壁の内側に沿って進み、矢印1325で示すように、Yコネクター1303の呼気管コネクター1323を通って排出される。カテーテルマウント1301において内管1305と外管1307との間の空間を通過する際に、水蒸気は水蒸気透過性発泡外管1307を通過し得る。ある特定の実施形態では、外管1307全体が通気性を有する。このようにして、呼気ガスは、カテーテルマウント1301を通って呼気管コネクター1323へと進む際に少し温度が低下し得るが、この温度低下は、水蒸気が外管1307の通気性発泡材料を通過することによる湿度の低下と同調している。従って、呼気流の相対飽和度は低下し、それによってレインアウトも低減する。通気性発泡材料で作製された管壁は、0.1〜3mm(または約0.1〜3.0mm)の間の壁厚を有し得、高通気性を維持しながら自己支持性があり、または半硬質であるほど十分な剛性があり得る。
【0127】
本明細書に記載する通気性発泡ポリマーを組み込んでいるカテーテルマウント1301は、カテーテルマウント1301を通る吸気流および呼気流の明確な区分を有し、それによって再呼吸を著しく低減する。呼気ガスの温度が低下したとしても呼気ガスの湿度を低下させることによってレインアウトもまた低減する。
【0128】
吸入部品または煙排出システム
腹腔鏡手術は、最小侵襲手術(MIS)または鍵穴手術とも呼ばれ、従来の外科的処置ではより大きな切開が必要であるのに対し、小さな切開(通常0.5〜1.5cm)によって腹部の手術が行われる現代外科技術である。腹腔鏡手術には、腹腔または骨盤腔内での手術が含まれる。
【0129】
吸入下での腹腔鏡手術中に、吸入ガス(一般にはCO)を、腹腔内に送る前に加湿することが望ましいこともある。これは、患者の内部臓器の「乾燥」を防ぐ手助けとなり得、手術からの回復に必要な時間を減らすことができる。乾燥吸入ガスを使用する時でさえ、そのガスは、患者の体腔から水分を取り込むため飽和状態になり得る。ガス中の水分は、吸入システムの排出リムまたは導管の壁体上に凝縮する傾向がある。また、水蒸気は、吸入システムの他の部品、例えば、フィルターなどにおいても凝縮し得る。蒸気がフィルター上で凝縮し水分がリム(入口リムまたは排気リム)に沿って流出されることは非常に望ましくない。例えば、壁体において凝縮した水は、フィルターを飽和状態にし、フィルターを閉塞させることがある。これは、背圧を増加させ、煙を除去するシステムの能力を妨げる可能性がある。さらに、リム中の液体水は他の接続装置に流れ込むことがあり、これも望ましくない。
【0130】
腹部手術では、例えば、腹部に通常二酸化炭素ガスを注入して(気腹)、術視野を作る。使用されるガスは一般的にはCOであり、COは、ヒトの体で普通に見られ、組織によって吸収され呼吸器系によって除去され得る。またCOは不燃性であり、腹腔鏡下処置では電気手術装置が一般的に使用されるため不燃性であることは重要である。乾燥ガスの使用は腹腔鏡手術では一般的に行われていた。しかしながら、COまたは他の吸入ガスを、腹腔内に送る前に加湿することも望ましい。これは、患者の内部臓器の「乾燥」を防ぐ手助けとなり得、手術からの回復に必要な時間を減らすことができる。吸入システムは、ある量の水を入れることができる加湿器チャンバーを一般的に備える。加湿器は、水を加熱して水蒸気を作るヒータープレートを一般的に備え、その水蒸気を流入ガス中に透過させて、流入ガスを加湿する。そのような流入ガスは、水蒸気を含んで加湿器外に輸送される。
【0131】
外科的処置は、電気外科手術または電気焼灼または次第にレーザの使用を伴うこともよくある。これらの装置を使用すると、組織が焼けるために空間内に手術煙が生じることとなる。排出アームまたはリムを使用する煙排出システムは、手術部位から煙を除去するために一般的に使用されており、そうすることで、外科医が今何を行っているのかをその外科医自身が見ることができるようにし、そして術後にこの有害な可能性がある材料が体腔内に残留しないようにする。排出アームまたはリムの一方の端は、第2の切開部(または同じ切開部の場合もある)に接続されるかまたは挿入される。典型的な煙排出システムは、手術部位への挿入を補助するためにその末端にトロカールおよびカニューレを一般的に備える。煙は排出リムを通って気腹した腹部領域から出る。電気焼灼を行う部位近くで排出が起こるように、排出リムを腹腔鏡手術器械の末端に取り付けてよい。通常、体腔からのガスおよび煙は大気へ排出される前に、フィルターで濾過され、粒子状物質が除去される。手術煙から化学物質および任意の有害な微生物を除去するように、フィルターをさらに構成することもできる。
【0132】
次に図14を参照する。図14は、少なくとも1つの実施形態による吸入システム1401を示している。吸入システム1401は、患者1405腹腔または腹膜腔内への送達のために大気を超える圧力で吸入ガスの流れを作る吸入器1403を備える。吸入ガスは加湿器1407に入るが、加湿器はヒーターベース1409と加湿器チャンバー1411を備え、使用時には、ヒーターベース1409がチャンバー1411に熱を供給するように、チャンバー1411はヒーターベース1409と接触している。加湿器1407内では、吸入ガスがチャンバー1411を通過して、吸入ガスが適当な水分レベルに加湿されるようになっている。
【0133】
吸入システム1401は、加湿器チャンバー1411と患者1405腹膜腔または手術部位との間を接続する送出導管1413を有する。導管1413は第1の端部および第2の端部を有し、第1の端部は、加湿器チャンバー1411の出口に接続され、チャンバー1411から加湿ガスを受ける。導管1413の第2の端部は、患者1405手術部位または腹膜腔内に入れられ、加湿吸入ガスは、チャンバー1411から導管1413を通って気腹する手術部位内へ移動し、手術部位または腹膜腔を膨張させる。そのシステムはまた、ヒーターベース1409に供給される電力を制御することによってガスに供給される湿度量を調節する制御装置(示していない)も備える。その制御装置はまた、加湿器チャンバー1411内の水を監視するために使用することもできる。煙排出システム1415は、患者1405体腔から導いて示している。
【0134】
煙排出システム1415は、上に記載した吸入システム1401に関連して使用することができまたは他の好適な吸入システムとともに使用してもよい。煙排出システム1415は、排出リムまたは排気リム1417、排出アセンブリー1419およびフィルター1421を含んでなる。排出リム1417は、フィルター1421と排出アセンブリー1419との間を接続し、使用時に、その排出アセンブリー1419を患者1405手術部位または腹膜腔内にあるいは患者1405手術部位または腹膜腔内に隣接して配置する。排出リム1417は、自己支持性管(すなわち、その管は圧潰することなくそれ自体の重量を支持することが可能である)であり、2つの開口端を有する:手術部位端および出口側端。
【0135】
吸入システム1401により供給されるガスは、患者1405体腔への入口地点ではすでに加湿されている。体腔はすでに湿気が多い湿潤であるため、ガスは体内で水分を失わないこととなるが、ガスが飽和点に達していない場合にはガスは完全飽和状態になり得る。体腔への入口でガスが乾燥している場合には、ガスが体腔を通過して、内部臓器上の体腔内の湿った空気から水分を取り込むため、ガスは加湿されることとなる。
【0136】
これらの飽和ガスが患者1405体腔から排出される際には、ガスは排出リム1417のより冷たい壁体(これは通常、長さが1m(またはその前後)である)に沿って進む。ガス中の水分は、ガスから、排出リム1417、排出アセンブリー1419の壁体、および/またはフィルター1421上に凝縮する傾向がある。蒸気がフィルター1421上で凝縮し壁体において凝縮した水分が排出リム1417に沿って流出されることで、フィルター1421を飽和状態にし、フィルターを閉塞させることがある。これは、背圧を増加させ、煙を除去するシステムの能力を妨げる可能性がある。
【0137】
フィルター1421内の凝縮水分は、フィルター1421を部分的にまたは完全に閉塞させることがあり、背圧の増加と閉塞による濾過効率の低下につながる。背圧の増加によって、手術煙を効果的に除去するシステムの能力が妨げられるため、これは不利点である。手術腔内の手術部位にまたは排出システムの導管内に残留する手術煙は、患者1405の手術腔または組織中に取り込まれる可能性があるいくつかの潜在的毒素を含有するため、患者にとって有害であり得る。手術煙が手術部位に残留し排出されないことによって、外科医の視界は遮られまたは妨げられることがあり、外科医にとって危険な作業環境につながる可能性がある。凝縮物はフィルター1421を部分的に閉塞させ、手術煙の毒素の濾過作用低下を起こし得る。この結果、臭気、手術煙、死細胞成分などのような有害な可能性がある物質が手術室に流出することになり得る。これらの種類の材料は、健康に有害であることがあり、医師および患者の多くの健康上の問題を引き起こし得る。
【0138】
少なくとも1つの実施形態は、通気性壁体を備える排出リム1417または通気性材料を含むリムの壁体を使用することでこの問題の緩和を促進することの実現を含む。特に、本明細書に記載する通気性発泡材料は、前に記載した発泡材料、部品および呼吸管に関して論じた特性から、とりわけ、この種の吸入システム排出リム1417導管の形成に好適である。放出されたガスのある量の水分はフィルター1421に到達するまで排出リム1417の壁体を通過し、そのため、ガスから凝縮しフィルター1421を詰まらせるガス中の水分は少ない。従って、排出リム1417は、本明細書に記載する通気性発泡材料で作製されることが好ましい。呼吸管を製造するための下に詳述するプロセスは、入口リムまたは排気(煙排出)リムを有する吸入システムの管にそのまま適用することができる。
【0139】
製造方法
次に図15を参照する。図15は、少なくとも1つの実施形態による、加湿ガスの送達に好適な通気性部品(例えば、図2Aおよび図2Bの場合の管または本明細書において論じた任意の他の管など)の例示製造方法を示している。
【0140】
一般的に、部品を製造する方法は、ポリマー基材に発泡剤を混ぜ、液化混合物を形成することを含む。発泡剤によりガス気泡を液化混合物の基材部分中へ放出させる。次いで、ガス気泡の放出を止め、混合物を凝固させて、所望の部品を形成する。完成部品の望ましい特性は上に論じている。
【0141】
少なくとも1つの実施形態では、呼吸管などの部品の作製に用いられるプロセスは、溶融押出物1501をコルゲーター1503中へ押出成形して、所望の部品、例えば、管1505などを形成することを含む。ある特定の実施形態では、押出物用のポリマー基材は拡散係数が0.75×10−7cm/秒(またはその前後)より大きい。その基材は次の剛性特性を有し得る:(a)15MPa(または約15MPa)より大きい引張弾性率(これは、ウレタン熱可塑性エラストマーに基づく基材(またはISO 18064:2003(E)により規定されているとおり、TPUに基づく基材)の場合に望ましいことがある);または(b)100MPa(または約100MPa)より大きい引張弾性率(これは、コポリエステル熱可塑性エラストマーに基づく基材(または18064:2003(E)により規定されているとおり、TPCに基づく基材)、例えば、ARNITEL(商標)に基づく基材などの場合に望ましいことがある)。これらの前述の特性は例示にすぎない。所望の通気性および剛性を有する発泡材料を生産するために、基材がこれらの特性を有する必要はなく、例示弾性率数値は、TPUおよびTPCに基づく基材に明示的に限定されるものではない。
【0142】
30mm径スクリューおよび12mm環状ダイヘッドを間隙0.5mmで装着したWelex社製押出機などの押出機が低コスト管の短時間生産に好適であると分かった。押出機ダイヘッド1507から押し出された後、溶融管1501は、コルゲーター1503の一連の回転する金型またはブロックの間に送ることができる。UNICOR(商標)によって製造供給されているようなコルゲーターもまた好適であると分かった。これにより蛇管1505が形成される。
【0143】
上記方法は例示にすぎない。本明細書に記載する発泡材料を含んでなる部品を形成するための代替方法も好適である。例えば、通気性部品を製造するための別の方法は、発泡材料のストリップを押出成形すること、その発泡ストリップをマンドレルに巻き取ること、および巻き取られたストリップの継ぎ目をビーズ(例えば、発泡材料のビーズなど)で封止することを含む。
【0144】
押出プロセス中の発泡はいくつかの方法で行うことができ、そのような方法には物理発泡および化学発泡が含まれる。
【0145】
物理発泡では、発泡剤は不活性ガス(例えば、COまたはN)であり、不活性ガスは、不活性ガスを溶融ポリマーに溶解するのに十分に高い流速および圧力で押出機バレルに注入される。例えば、100バール(または約100バール)より大きい圧力とポリマー流速の1%(または約1%)くらいわずかな流速が好適であることもある。また、ポリマーに核剤も導入して、発泡気泡が膨張する部位を形成することも好ましい。この方法の例としては、Sulzer社製市販ユニットを使用して、押出機バレルの終端で不活性ガスを注入し、ダイ出口前に不活性ガスを静的ミキサーで混合することが含まれる。
【0146】
化学発泡では、加熱する際に化学分解反応(吸熱または発熱を伴う)を誘導する化学物質の添加が必要であり、それによってガスを放出する。ガスは押出プロセス中にポリマー溶融物に溶解するが、これは溶融物の圧力がガスの臨界可溶化圧力より高いためである。ダイヘッド出口地点(または直後)などで圧力低下に遭遇すると、溶液からガスが出てくる。発泡剤は可塑剤として作用し、それによって溶融物の粘度が低下する。粘度の低下は、特定温度では溶融物圧力の低下、剪断速度およびダイヘッド形状につながる。従って、押出機内の圧力を、臨界可溶化圧力を超える圧力に維持することによって、確実にガスが早期発泡しないように気をつけるべきである。この圧力は、ダイヘッドにおける剪断速度および/または溶融物の温度を制御することによって維持することができる。
【0147】
管に波形をつける前の押出機内での材料の発泡に好適な例示プロセスは、化学発泡剤を0.3〜1.5重量%(または約0.3〜1.5重量%)の量で基材ポリマー(例えば、ARNITEL(商標)VT 3108など)に添加することを必要とする。これは、発泡剤粉末(例えば、HYDROCEROL(商標)CT 671または同等物など)を基材ポリマーと直接混合することによって、またはまず、発泡剤「マスターバッチ」(すなわち、担体ポリマー(例えば、ポリエチレンなど)および活性発泡剤(例えば、HYDROCEROL(商標)BIH−10Eまたは同等物など)の、担体ポリマー/活性発泡剤の80/20重量%または約80/20重量%混合物をまず混合し、その後、その混合物を押出機バレルの供給部に供給することによって達成することができる。第1の場合では、発泡剤粉末は前記発泡剤である。第2の場合では、発泡剤マスターバッチは前記発泡剤である。HYDROCEROL(商標)CT 671は、分解温度が160℃であり、可溶化圧力が60バールである。ARNITEL(商標)VT 3108は、溶融温度が185℃である。そのため、この押出例では、溶融温度が低下すると粘度が高まるため、圧力が臨界値より低い圧力に低下しないように、加工温度を10〜20℃(または約10〜20℃)下げることができる。
【0148】
剪断速度(押出機速度による)は、圧力が臨界圧力より高いことを確実にし、さらに発泡剤が溶融ポリマーと十分に混合されることを確実にするのに十分に高く設定される。一度、ポリマーがダイヘッドから押し出されたら、発泡が起こり始め、気泡が核形成することが認められ、気泡膨張力が溶融ポリマーを変形させるのに必要な力より低くなる温度(例えば、ポリマーの溶融温度より低い温度または発泡剤の活性化温度より低い温度、この温度で発泡反応が開始し/停止する)にポリマーが冷却されるまで気泡は膨張する。ポリマーがコルゲーターに入り、コルゲーターブロックで成形されると冷却が始まる。コルゲーターブロックは、次に、コルゲーター給水設備および成形真空設備によって冷却される。
【0149】
一度、発泡させたら、部品は、何千もの発泡気泡空隙が部品の壁体の厚さ全体に分布している蛇管からなる。典型的な呼吸管部品では、横方向の空隙サイズ直径が約700μm(95%信頼水準)を超えないことで望ましい製品が生み出され得ることが見出されている。しかしながら、横方向の空隙サイズ直径は、空隙が管壁の厚さ全体に及んで漏れ経路を作らないように、700μm未満であることが有利である。例えば、いくつかの実施形態では、横方向の空隙サイズ直径は約500μmを超えなくてよい(95%信頼水準)。また、横方向の空隙サイズ直径が75〜300μm(または約75〜300μm)の間であることで医療用回路用の高品質の製品が生み出されることも見出されている。横方向最大空隙サイズ直径は、部品の最小壁厚に応じて異なるであろう。例えば、横方向の最大空隙サイズは、最小壁厚の50%(または約50%)未満に制限され得る。しかしながら、横方向の最大空隙サイズ直径は、最小壁厚の3分の1(または約3分の1)未満、30%(または約30%)未満、あるいは4分の1(または約4分の1)未満であり得る。
【0150】
上に論じたように、発泡する気泡は、材料が冷えるとともに成長が止まる。急冷することにより壁体の厚さ中に2つのゾーンが形成されることが見出されている。図16Aおよび図16Bは、少なくとも1つの実施形態による、2つのゾーンを有する押出発泡材料を示している。第1のゾーン1601、100μm厚(または約100μm厚)は、コルゲーター金型/ブロックと接触する表面上に独立気泡発泡材料の外「スキン層」として生じる。このゾーンでは、平均および最大空隙サイズはより小さく、スキン層に壁体を貫通する漏れ経路が形成される可能性は低い。残る第2のゾーン1603では、材料はより時間をかけて冷え、空隙がより大きいことで連続気泡となり得る。従って、少なくとも1つの実施形態は、材料がダイヘッドから押し出されると、発泡が始まったらその材料を急冷することが望ましいことの実現を含む。
【0151】
一度、管がコルゲーターブロック(輪郭形状を機械加工する金属ブロック)と接触したら、その管は波形加工の一貫として冷却される。急冷は、水などの冷却剤を用いて、コルゲーターブロック温度を低い値、例えば、15℃(または約15℃)に維持することによって達成される。また、急冷は、溶融プラスチックが急速に凝固するように押出機出口地点(およびブロック接触前)の溶融温度をポリマーの融点に近い温度に変更することによって達成してもよい。これは、押出機およびコルゲーターの間の空気間隙で達成することができ、冷却ガスおよび/またはエアジェットあるいは液体浴、例えば、水浴などを用いて増強することができる。急冷はまた、ポリマーが非常に短時間で金属形状に「吸い込まれ」、そのようにして気泡が十分に膨張しないうちに冷めるようにブロック内の真空圧を高めることによって達成することもできる。これらの技術の1以上を単独でまたは組み合わせて用いて、様々な実施形態において急冷を達成することができる。
【0152】
スキン層の形成は急冷に依存しているだけではない。スキン層の形成は、材料組成(例えば、発泡度など)、押出機速度、溶融温度および圧力、冷却までの間隙、浴槽の水温および長さ、最後に引取速度(押出機から形成された管を引く機構)にも依存する。急冷は、主として引取速度、間隙および水温に依存する。
【0153】
得られるスキン層の厚さは、壁厚の5〜10%(または約5〜10%)の間、例えば、10〜50μm(または約10〜50μm)の間であり得る。第1のゾーンおよび第2のゾーンの各々は空隙を有する。ある特定の実施形態では、第1のゾーン中の空隙の5%(または約5%)以下は直径100μmを超える。第2のゾーン中の空隙は第1のゾーン中の空隙よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態では、前記発泡材料第2のゾーンの空隙の5%(または約5%)以下は直径700μmを超える。
【0154】
次に図17を参照する。図17は、少なくとも1つの実施形態による管の例示製造方法を記載している。例示方法では、ブロック1701に示すように、まず、基材に発泡剤を混ぜて、押出物を形成する。その基材は、拡散係数が0.75×10−7cm/秒(または約0.75×10−7cm/秒)より大きく、引張弾性率が約15MPaより大きい1種以上の通気性熱可塑性エラストマーを含んでなる。次いで、ブロック1703に示すように、押出機を使用して押出物に圧力を加えて、中空管を形成する。ブロック1705に示すように、その中空管をコルゲーター金型へ送達する。ブロック1707に示すように、コルゲーター金型内で中空管を冷却させ、それによって押出物の発泡剤部分によりガス気泡を放出させる。最後に、ブロック1709に示すように、冷却した中空管をコルゲーターから外し、それによって固体熱可塑性エラストマーおよびガス気泡によって形成された空隙を含んでなる管を形成する。この実施例では、得られる管は壁厚が0.1〜3.0mm(または約0.1〜3.0mm)の間である。また、最大空隙サイズは最小壁厚の3分の1(または約3分の1)未満であり、その蛇管の空隙率は25%(または約25%)より大きい。
【0155】
測定
特性は、弾性率、空隙率、質量、直径、厚さおよび拡散率を含め、上に述べている。これらの特性を測定するための好ましい方法を以下に示す。測定は総て、室温(23℃またはその前後)で行う。
【0156】
A.弾性率
一定の伸び率下での発泡蛇管の力/歪の関係を決定するために引張試験を実施した。この関係は、典型的には10%伸び率まで線形であることが分かった。500N荷重セルを装着したInstron社製試験機を使用して、この実験を実施し、200mm長の蛇管サンプルを試験片として用いた。
【0157】
2D軸対称有限要素(数値)モデルを用いて、実験から材料のヤング率を求めた。蛇管の測定値からこのモデルでの形状を構築した。そのモデルには、弾性率(E)の解析のために線形弾性的な(フックの法則)材料挙動を含めた。そのモデルでの線形弾性材料の使用は低伸び率条件下では正しいとされる。そのモデルを一方の端で拘束し、もう一方の端から一定の荷重で引っ張り、Instron社製試験機で見られるものと同様の挙動をシミュレートした。そのモデルから異なる弾性率(E)での伸び率値を求め、そのモデルデータを、下記式:
【数15】

(式中、
Fは力を表し、
Lは試験片の長さを表し、
εは伸び率を表す)
によってInstron社製試験装置によるデータと比較した。
【0158】
弾性率は、モデルと実験値との間でこの等式に一致する値として選択した。既知弾性率を有する蛇管を用いて検証実験を実施し、その結果は数値モデルと十分に一致した。
【0159】
B.空隙率測定
発泡ポリマーサンプルの空隙率(φ)は、下記式1:
【数16】

(式中、ρ(S)は発泡ポリマーサンプルの密度であり、ρ(P)は対応する非発泡ポリマーの密度である)
により定義される。ρ(S)を測定するための2つの例示方法は浮力法および変位法であり、下に論じる。
【0160】
浮力法は、空中に浮遊させたサンプルの質量(M)を測定し、さらに既知の低密度流体(例えば、ヘプタンなど)中に浮遊させたサンプルの質量(M)を測定することを含む。発泡ポリマーサンプルの密度は、下記式2:
【数17】

(式中、ρは懸濁流体の密度を表す)
に従って計算することができる。サンプルの密度が懸濁流体の密度より大きい場合、より小さいサンプルに浮力法は好適である。例えば、ヘプタンを懸濁流体として使用するならば、空隙率が45%未満の発泡ARNITEL(商標)サンプルにこの方法は好適である。
【0161】
変位法は、サンプルが変位させる液体量を測定することによってサンプルの体積を計算することを含む。デジタル高さ測定器を使用し、空のメスシリンダーのマーキングの高さを測定する。これにより高さと体積との相関を較正する。液体をシリンダーに入れ、凹状メニスカスの底部までまたは凸状メニスカスの最上部まで測定し、シリンダー内の液体の高さを決める。これにより初期体積(V)を得る。次いで、既知乾燥質量(M)の発泡ポリマーのサンプルを液体に入れ、シリンダー内の液体の高さを再度決める。これにより最終体積(V)を得る。発泡ポリマーサンプルの密度は、下記式3:
【数18】

に従って計算することができる。変位法では十分な正確さを得るためにより大きなサンプルが必要であるが、サンプルを水中に入れ、適所に保つことができるため、より低い密度のサンプルの測定が可能である。
【0162】
C.質量
質量は総て、新光電子株式会社(Shinko Denshi Co.)製造のVibra AJ−420 CE音叉式微量天秤(製品番号504068)を使用して得た。
【0163】
D.厚さおよび直径
サンプル厚さおよび/または直径は次の方法により得ることができる。
管状サンプルの場合、Mitutoyo社製デジタルカリパス(CD−8 CSXモデル)を使用して、直径を測定することができる。サンプル直径は、複数の場所で測定し、これらの測定値の単純平均をサンプル直径とみなすことができる。
【0164】
フィルムサンプルの場合、Mitutoyo社製ノギスD(0〜25mm)RH NEO MODELSHOPを使用して、厚さを多くの場所で得ることができる。この場合も、単純平均をサンプル厚さとみなすことができる.
【0165】
波形がつけられている管状サンプルの厚さを測定する場合、その管を切り分け、デジタルカリパスを使用して、輪郭に沿って様々な位置で測定値を多くとることができる。面積加重平均厚さを計算することができる。別法では、目盛り付き顕微鏡、例えば、Meiju Techno社製顕微鏡などを使用して、波形がつけられている管状サンプルの厚さを測定してもよい。その方法は、周囲に異なる位置でその管の長さに沿って、ピークおよび谷の厚さの両方について多く(典型的には90以上)の測定値をとることを含む。これは、その管を半分に、らせん1回転当たり45の波形に及ぶらせん路に沿って切ることによって達成される。
【0166】
E.拡散率
ポリマー系による時間依存性水収着および脱着は、ポリマー中での水の拡散率の関数である。Crank J. The mathematics of diffusion. 2nd ed. Oxford: Clarendon Press; 1975により、実験データを解析して、ポリマー中の水の拡散係数を得る手法についての詳細な説明が示されている。Crankの46〜49頁、60頁、61頁および72〜75頁は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0167】
Crankによれば、拡散係数Dが一定である場合、厚さ2lのサンプル中での水の脱着/吸収は、式4により定義される。
【数19】

式中、
【数20】

は質量損失または質量増加の割合を表し、
【数21】

【数22】

【数23】

は時間=0での質量、グラム数を表し、
【数24】

は時間=tでの質量、グラム数を表し、
【数25】

は超長時間経過時点でのサンプルの質量、グラム数を表し、
nは無限和におけるn番目の項を表し、
【数26】

【数27】

Dは拡散係数、cm/秒を表し、
tは時間、秒を表し、
2lはサンプルの厚さ、cmを表す。
式4では、n=1の(すなわち、Aおよびβに関する)場合の誘導指数関数は、
【数28】

の値の主項となる。
【0168】
また、
【数29】

は、ラプラス変換を用いて拡散方程式を解くことによっても得られる。結果はCrankによって得られ、式7として下に示す。
【数30】

式中、
【数31】

【数32】

、および
erfc(x)はxの誤差関数を表す。
短時間経過時点において、
【数33】

の値の場合、波括弧{−}内の項
【数34】

だけが最も大きく寄与する。式7は、
【数35】


【数36】

のプロットは傾きが
【数37】

に等しい直線であることを示している。
【0169】
図18は、一定の拡散係数D=3.0×10−7cm/秒およびl=0.075cmでの理想収着/脱着曲線を示している。実際の実験曲線は、図19に示すように、理想曲線とは異なって見える。理想曲線と比較して、実験曲線における質量変化率は時間的に遅れて見え、実験曲線全体はS字形状である。S字形状は、フィルムの表面での蒸発速度によってフィルムからの水の脱着が制限される場合に得られる。これは、材料の表面における式8の境界条件によって数学的に記述される。
【数38】

式中、
は、外部環境と平衡状態にあると思われるフィルムにおける濃度、g/cmを表し、
は、表面のすぐ内側の水の濃度、g/cmを表し、
αは、表面での蒸発速度に関する定数、cm/秒を表す。
蒸発に関して、式1の類似式は、式9によって表すことができる。
【数39】

式中、
【数40】

そして、βは方程式 L=βtan(β) (11) の解である。 また、長時間経過時点において、
【数41】

の場合、式9は、Aおよびβに関する、誘導(n=1)指数関数に支配される。α、その結果Lがより大きくなると、Aおよびβは式5および式6の定義に従って変わる。
【0170】
式9においてβ、LおよびDの間に強い関係があるため、短時間経過時点でのデータからDを導くことが望ましいこともある。理想拡散の場合、拡散係数Dは、式7を用いて、短時間経過時点での実験データを調べることによって求められた。式8により示される境界条件を用いた場合の式7に対応する方程式はCrankによって示されていない。従って、ラプラス変換による解をn=2までの項によって導いた。
【数42】

の値の場合、式12により実際の結果に極めて近い近似値が得られる。
【数43】

短時間経過時点では、高次項は小さく、無視してよい。
【0171】
上記導出を用いて、拡散率の例示計算方法を以下のように提供する。
【0172】
1.時間(t)(秒)に対する
【数44】

(質量損失または質量増加の割合)についての実験データを収集する。脱着実験では、これを、まず既知乾燥重量のサンプルを制御されたRHで水蒸気と平衡状態にし、次いでサンプルの重量(その初期値m(0)を含む)を何度も測定することによって行う。重量が変化しなくなる、m(∞)まで測定値をとる。測定は総て、サンプルに乾燥空気を10〜30L/分(または約10〜30L/分)の速度で吹きつけながら行い、実験的観察に対する蒸発の影響を減少させる。
2.各時点における乾燥ポリマー(W%)1g当たりの水のグラム数を計算する。このデータおよび他の実験から各時点におけるl(t)の値を計算し、この場合、2l(t)はサンプルの厚さ(cm)を表す。
3.LおよびDの初期値(または最初の推定値)を選択する。
4.式13に従って上式12から求められる関数G(t)を定義する。
【数45】

5.LおよびDの初期推定値を用いてG(t)の値を計算する。
6.G(t)と
【数46】

をプロットし、式14:
【数47】

を用いて、最初の4つのデータポイントの傾きからDの比較値を計算する。
7.ステップ3のLの初期値を用い、Dが収束するまでステップ5およびステップ6を繰り返す。これによりDおよびLを次のステップの入力パラメーターとする。
8.ステップ3のLの値を用い、式11に従ってβ(n=1...6)の最初の6つのルートを計算する。
9.実験から、各時点tにおける
【数48】

の値を計算する。長時間経過時点での式9から、式15は、式16によって下に示す関係と等しい。
【数49】

10.従って、式15による計算値を次に、
【数50】

に対してプロットする。
11.
【数51】

である範囲におけるこのプロットの傾きから、そしてステップ8で計算したβの値から、式16を用いて新たなD値を計算することができる。
12.ステップ3のLの値を調整し、ステップ11のDの値とステップ7のDの値が同じ値になるまでステップ4〜ステップ11を繰り返す。これにより式9および式12の両方を満たすLおよびDの固有値を定義する。
13.n=1...6の場合のD、L、Aおよびβの値を記録する。式9を用いて全曲線を計算し、適合に関するRを計算し、記録する。図20は、幼児サイズの発泡ポリマー管についての前述の計算方法の結果を示している。その管は、流速16.7L/分、RH=100%、D=1.228×10−6cm/秒およびL=3.5697の、52%空隙率のサンプル MB−27 6%を含んでなる。曲線適合についてのRは0.9998であった。
【0173】
本発明についての前述の説明にはその好ましい形態が含まれる。本発明の範囲を逸脱しない限り、それに対して改変を行うことができる。本発明が関連する分野の技術に精通している人ならば、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を逸脱しない範囲で、構築における多くの変更ならびに本発明の多様な実施形態および用途が思い浮かぶであろう。本明細書における開示および記載は例示にすぎず、何ら限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加湿ガスとともに使用するための医療用回路部品であって、
内部の空間を画成する壁体であり、該壁体の少なくとも一部が、水蒸気を透過させるが液体水を実質的に透過させないように構成された通気性発泡材料からなる、壁体
を備える、部品。
【請求項2】
前記通気性発泡材料の拡散係数が少なくとも3×10−7cm/秒である、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記壁体の厚さが0.1mm〜3.0mmの間である、請求項1または2に記載の部品。
【請求項4】
前記通気性発泡材料がポリマーのブレンドを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
前記通気性発泡材料が、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
前記通気性発泡材料が、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
前記通気性発泡材料が、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、前記発泡材料を25mm径の金属円筒の周りに、ねじれまたは圧潰なく曲げることができる、十分に剛性がある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の部品。
【請求項8】
部品のg−mm/m/日単位での透過性Pが、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定した場合、少なくとも60g−mm/m/日であり、かつ下記式を満たす、請求項1〜7のいずれか一項に記載の部品:
【数1】

(式中、Mは前記発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)。
【請求項9】
前記発泡材料が25%より大きい空隙率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の部品。
【請求項10】
前記発泡材料が壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の部品。
【請求項11】
前記発泡材料が前記壁体の縦軸に沿って扁平になっている空隙を有し、かつ該空隙の少なくとも80%が2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の部品。
【請求項12】
前記発泡材料が空隙を有し、かつ該空隙の少なくとも10%が相互接続される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の部品。
【請求項13】
前記発泡材料が管の壁体を構成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の部品。
【請求項14】
前記管が押出管である、請求項13に記載の部品。
【請求項15】
前記管が蛇管である、請求項13または14に記載の部品。
【請求項16】
前記発泡材料がマスクの壁体を構成する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の部品。
【請求項17】
前記発泡材料が、吸入システムにおいて使用する管の壁体を構成する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の部品。
【請求項18】
医療用回路部品を製造する方法であって、
ポリマー基材に発泡剤を混ぜ、液化混合物を形成する工程、
該発泡剤部分によりガス気泡を該液化混合物の該基材部分中へ放出させる工程、および
ガス気泡の放出を止め、該混合物を加工して、水蒸気透過性部品を形成する工程
を含み、
ここで、該発泡剤および該ポリマー基材は、固体ポリマーおよび該固体ポリマー全体に分布した空隙を含んでなる水蒸気透過性部品を形成するように選択され、該混合物は加工され、ここで、該部品のg−mm/m/日単位での透過性Pは、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された少なくとも60g−mm/m/日であり、かつ下記式を満たす、方法:
【数2】

(式中、Mは該発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)。
【請求項19】
Pが少なくとも70g−mm/m/日である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Mが30〜800MPaの間である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
壁厚が0.1mm〜3.0mmの間である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記発泡材料が25%より大きい空隙率を有する、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記発泡材料が壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有する、請求項18〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記発泡材料が前記壁体の縦軸に沿って扁平になっている空隙を有し、かつ該空隙の少なくとも80%が2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比を有する、請求項18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記発泡材料が空隙を有し、かつ該空隙の少なくとも10%が相互接続される、請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記通気性発泡材料が、ポリエーテルソフトセグメントを含む熱可塑性エラストマーを含んでなる、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記通気性発泡材料が、ポリエーテルソフトセグメントを含むコポリエステル熱可塑性エラストマーを含んでなる、請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記水蒸気透過性部品を管に成形することを含む、請求項18〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物の加工が前記混合物を管形状物に押出成形することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記混合物の加工が、前記管形状物の内面周囲に円周方向に配列された複数の補強リブを共押出成形して、該複数のリブが前記管形状物の長さに沿って一般的に縦方向に整列されるようにすることを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記混合物の加工が、前記押出成形された管形状物に波形をつけることを含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項32】
前記水蒸気透過性部品をマスクに成形することを含む、請求項18〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
加湿ガスを患者へまたは患者から送達するための管であって、
入口および出口と、
水蒸気に対して透過性であり、かつ液体水およびガスバルク流に対して実質的に不透過性である発泡ポリマー導管であり、該導管によって囲まれた空間内に加湿ガスが該入口から該出口へ流れることが可能である、発泡ポリマー導管と
を備え、
ここで、該発泡ポリマー導管は、固体熱可塑性エラストマー材料および該固体材料全体に分布した気泡空隙を含んでなり、該発泡ポリマー導管が、該囲まれた空間に面した内面および該内面に面した内部体積を有し、かつ
該発泡ポリマー導管は3×10−7cm/秒より大きい拡散係数を有する、管。
【請求項34】
前記内部体積中の気泡空隙の少なくともいくつかが他の気泡空隙に接続され、それによって前記導管を通る水蒸気の移動を促進する連続気泡通路を形成する、請求項33に記載の管。
【請求項35】
前記内部体積中の気泡空隙の少なくとも10%が他の気泡空隙に接続される、請求項34に記載の管。
【請求項36】
前記内部体積中の気泡空隙の少なくとも20%が他の気泡空隙に接続される、請求項35に記載の管。
【請求項37】
前記導管が押出成形された、請求項33〜36のいずれか一項に記載の管。
【請求項38】
前記導管に波形がつけられた、請求項33〜37のいずれか一項に記載の管。
【請求項39】
前記発泡ポリマー導管の内面周囲に円周方向に配列され、かつ前記入口と前記出口との間に前記発泡ポリマー導管の長さに沿って一般的に縦方向に整列された複数の補強リブをさらに備える、請求項33〜38のいずれか一項に記載の管。
【請求項40】
前記入口と前記出口との間に前記発泡ポリマー導管の長さに沿って一般的に縦方向に整列された加熱ラインをさらに備える、請求項33〜39のいずれか一項に記載の管。
【請求項41】
前記内部体積が25%より大きい空隙率を有する、請求項33〜40のいずれか一項に記載の管。
【請求項42】
前記空隙の少なくとも80%が、前記導管の縦軸に沿って、2:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比で扁平となる、請求項33〜41のいずれか一項に記載の管。
【請求項43】
前記空隙の少なくとも80%が、前記導管の縦軸に沿って、3:1より大きい縦方向の長さと横方向の長さとのアスペクト比で扁平となる、請求項42に記載の管。
【請求項44】
前記発泡ポリマー導管が0.1mm〜3.0mmの間の壁厚を有する、請求項33〜43のいずれか一項に記載の管。
【請求項45】
前記内部体積が、前記発泡ポリマー導管壁厚の30%未満の横方向の平均空隙サイズを有する、請求項33〜44のいずれか一項に記載の管。
【請求項46】
前記内部体積が、前記発泡ポリマー導管壁厚の10%未満の横方向の平均空隙サイズを有する、請求項45に記載の管。
【請求項47】
管のg−mm/m/日単位での透過性Pが、ASTM E96の手順Aに従って(温度23℃および相対湿度90%で乾燥法を用いて)測定された少なくとも60g−mm/m/日であり、かつ下記式を満たす、請求項33〜46のいずれか一項に記載の管:
【数3】

(式中、Mは前記発泡ポリマーの弾性率をMpaで表し、Mは30〜1000MPaの間である)。
【請求項48】
前記発泡ポリマー導管が、前記内部体積に面したスキン層をさらに有し、前記内部体積中の気泡空隙が独立気泡である、請求項33〜47のいずれか一項に記載の管。
【請求項49】
前記発泡ポリマー導管が、ISO 5367:2000(E)に準拠した曲げに伴う流れ抵抗の増大についての試験により規定されるとおり、前記発泡ポリマー導管を25mm径の金属円筒の周りにキンクまたは圧潰なく曲げることができる、十分に剛性がある、請求項33〜48のいずれか一項に記載の管。
【請求項50】
管が、ベンチレーターと患者との間に位置づけられるように構成され、かつ該ベンチレーターから該患者へ加湿ガスを送達するように構成された、請求項33〜49のいずれか一項に記載の管。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図4H】
image rotate

【図4I】
image rotate

【図4J】
image rotate

【図4K】
image rotate

【図4L】
image rotate

【図4M】
image rotate

【図4N】
image rotate

【図4O】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2013−514849(P2013−514849A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545470(P2012−545470)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/003454
【国際公開番号】WO2011/077250
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504298349)フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド (41)