説明

医療用排液用具

【課題】吸引の負圧を充分に低圧とするために吸引器を充分に柔軟に形成しても、その上部に連結されているカテーテルなどの重量のために、吸引器に屈曲や座屈などの変形が発生することを防止できる、医療用排液用具を提供する。
【解決手段】連結チューブ110が上部に連結されている吸引器120が負圧を発生するので、人体の創腔等から排液が吸引される。吸引器120の負圧を充分に低圧とするため、吸引器120は充分に柔軟に形成されている。しかし、吸引器120が排液管130より外側の位置で支持部材140により支持されている。このため、上部に連結されている連結チューブ110などの重量のために、柔軟な吸引器120に屈曲や座屈等の変形が発生することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の創腔等から滲出液等の排液を吸引および貯留する医療用排液用具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人体の創腔等から滲出液等の排液を吸引および貯留するために医療用排液用具が利用されている。例えば、第一の接続部材を有する第一の流入口および第一の開閉部材を有する第一の排出口を備え、かつ、陰圧発生機能を有した第一の容器本体と、第二の接続部材を有する第二の流入口および第二の開閉部材を有する第二の排出口を備えた袋状の第二の容器本体と、からなり、第一の容器本体の第一の排出口と、第二の容器本体の第二の接続部材と、が着脱自在な医療用排液用具の提案がある(特許文献1)。
【0003】
このような医療用排液用具では、人体創腔から滲出液等の排液を取り去る手段として自然排出法と吸引排出法を適宜選択することができ、カテーテルと容器との脱着する手間を省くことができると共に、感染の危険性を少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の医療用排液用具は、陰圧発生機能により人体創腔から排液を吸引排出することができる。特許文献1の医療用排液用具は、上述のように排液を吸引する負圧を、弾性体で中空の球状に形成されている吸引器で発生している。
【0006】
従来の医療用排液用具では、上述のような吸引器で、例えば、−50mmHgなどの圧力を発生していた。このような負圧を発生する吸引器は、その負圧を発生するように充分に肉厚に形成されるため、充分な機械的な強度を有していた。しかし、本発明者は上述のような比較的高めの負圧を患者に負荷することなく排液を吸引することを試みた。
【0007】
そこで、本発明者は負圧が最大でも充分に低圧となる医療用排液用具を試作した。しかし、このような低圧を発生するためには、肉厚や硬度を調節するなどして、吸引器を充分に柔軟に形成する必要がある。このため、吸引器の機械的な強度が不足し、例えば、上部に連結されている連結チューブやカテーテルの重量のために、吸引器に屈曲や座屈などの変形が発生することが確認された。
【0008】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、中空の球状の吸引器を充分に柔軟に形成しても機械的な強度を確保することができる医療用排液用具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の医療用排液用具は、人体の創腔等から排液を吸引および貯留する医療用排液用具であって、創腔等に挿入されるカテーテルが連結される連結チューブと、弾性体で中空の球状に形成されていて連結チューブが上部に連結されている吸引器と、吸引器の下部に連結されている排液管と、排液管より外側の位置で吸引器の少なくとも下部を支持する上面開口の椀状の支持部材と、を有する。
【0010】
従って、本発明の医療用排液用具では、人体の創腔等にカテーテルが挿入される。そのカテーテルが連結される連結チューブが上部に連結されている吸引器が負圧を発生するので、人体の創腔等から排液が吸引される。その排液は連結チューブから中空の吸引器、排液管、を経由して貯留バッグなどに排出され、貯留される。上述のような吸引の負圧を充分に低圧とするためには、吸引器を充分に柔軟に形成する必要がある。しかし、この吸引器は排液管より外側の位置で支持部材により支持されている。このため、上部に連結されている連結チューブなどの重量のために、柔軟な吸引器に屈曲や座屈などの変形が発生することが防止される。
【0011】
また、上述のような医療用排液用具において、排液管が排液を貯留する貯留バッグに配管されており、支持部材は貯留バッグの上縁部も支持していてもよい。
【0012】
また、上述のような医療用排液用具において、貯留バッグを懸架する懸架部材を、さらに有しており、懸架部材が支持部材に連結されていてもよい。
【0013】
また、上述のような医療用排液用具において、吸引器が発生する最大の圧力が−10〜−30mmHgであってもよい。
【0014】
また、上述のような医療用排液用具において、吸引器が発生する最大の圧力が約−20mmHgであってもよい。
【0015】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0016】
また、本発明で云う椀状とは、球形の下半部より下位の部分を支持する上面開口の形状を意味しており、具体的には、球状の吸引器の下半部より下位の部分を支持する形状に形成されていればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の医療用排液用具では、吸引器が排液管より外側の位置で支持部材により支持されている。このため、吸引の負圧を充分に低圧とするために吸引器を充分に柔軟に形成しても、その上部に連結されている連結チューブなどの重量のために、吸引器に屈曲や座屈などの変形が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の医療用排液用具の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の医療用排液用具100は、人体の創腔等から滲出液等の排液を吸引および貯留することに利用される(図示せず)。
【0020】
このため、本実施の形態の医療用排液用具100は、図1に示すように、創腔等に挿入されるカテーテル(図示せず)と、カテーテルが先端部分111に連結される連結チューブ110と、弾性体で中空の球状に形成されていて連結チューブ110が上部121に連結されている吸引器120と、吸引器120の下部122に連結されている排液管130と、排液管130より外側の位置で吸引器120の少なくとも下部を支持する上面開口の椀状の支持部材140と、を有する。
【0021】
さらに、本実施の形態の医療用排液用具100では、排液管130が排液を貯留する貯留バッグ150に配管されており、支持部材140は貯留バッグ150の上縁部151も支持している。また、貯留バッグ150を懸架する懸架部材160も有しており、懸架部材160が支持部材140に連結されている。
【0022】
より具体的には、連結チューブ110の先端部分111は、人体の創腔等から滲出液等の排液を吸引するカテーテルが連結される既存の構造に形成されている。連結チューブ110の末端部分112は、排液が固化しても閉塞することがない充分な内径で吸引器120の上部121に連結されている。
【0023】
吸引器120は、例えば、外径50mm、内径46mm、肉厚2mm、の球形に硬さ(デュロメータA)50のシリコーンゴムで形成されており、その材料硬度や製品肉厚を調節することにより、発生する最大の圧力が−10〜−30mmHg、より好適には、約−20mmHg、であるように形成されている。
【0024】
排液管130は、吸引器120より充分に高硬度な樹脂等で形成されており、やはり排液が固化しても閉塞することがない充分な内径の直管からなる。排液管130は、吸引器120の下部に接着で一体に固着されているとともに、貯留バッグ150に溶着で一体に固着されている。
【0025】
なお、連結チューブ110の末端部分112と排液管130の下端部分131には一方弁(図示せず)が装着されている。支持部材140は、例えば、所定硬度の樹脂で横長形状に形成されており、貯留バッグ150の上縁部151を支持している。支持部材140の両端には懸架部材160が連結されているので、この懸架部材160で懸架される支持部材140により貯留バッグ150が支持される。
【0026】
支持部材140は、排液管130の外側に位置する中央の部分141で吸引器120を支持している。この支持部材140の中央の部分141は、球状の吸引器120の下部を、変形させることなく支持する上面開口の椀状に形成されている。
【0027】
この上面開口の椀状の部分141は、連結チューブ110の重量により屈曲や座屈等の変形が発生しないように柔軟な吸引器120の下部を支持する形状に形成されている。より具体的には、この支持部材140の部分141は、吸引器120の外径に対応した直径50mmの内径で、上面開口の直径が約36mmに形成されている。
【0028】
この貯留バッグ150は、上部に通気口152が形成されており、この通気口152に疎水性の通気フィルタ153が装着されている。貯留バッグ150の外面には、貯留された排液の容量を示す目盛(図示せず)が表記されている。
【0029】
上述のような構成において、本実施の形態の医療用排液用具100では、人体の創腔等にカテーテルが挿入される(図示せず)。このような状態で吸引器120を作業者(図示せず)が収縮させることにより、この収縮から復元する吸引器120がカテーテルに約−20mmHgの圧力を発生させる。
【0030】
この負圧により人体の創腔等から滲出液等の排液がカテーテルから連結チューブ110を経由して吸引器120まで吸引される。このように吸引された排液は、中空の吸引器120と下部の排液管130とを経由して貯留バッグ150に排出され、貯留される。
【0031】
この貯留バッグ150は通気口152が形成されているので、その内部は大気圧に常時維持されている。そこで、この貯留バッグ150に貯留された排液の容量は目盛により読み取られる。
【0032】
なお、貯留バッグ150の通気口152には疎水性の通気フィルタ153が装着されているので、排液は貯留バッグ150に円滑に排出され、貯留バッグ150の外部から内部に雑菌などが侵入することがない。また、貯留バッグ150は、上縁部151が支持部材140で支持されているので、排液を貯留しても不要に変形することがなく、目盛を正確に読み取ることができる。
【0033】
さらに、貯留バッグ150は、支持部材140の両端に連結されている懸架部材160で懸架されるので、その取り扱いが容易である。そして、このような支持部材140の排液管130の外側に位置する中央の部分141で吸引器120が支持されている。
【0034】
このため、上述のように負圧が充分に低圧となるように吸引器120の硬度や肉厚を調節し、吸引器120を充分に柔軟に形成しても、上部121に連結されている連結チューブ110などの重量のために、吸引器120に屈曲や座屈等の変形が発生することを防止できる。
【0035】
特に、吸引器120を支持する支持部材140は懸架部材160で懸架される。このため、連結チューブ110などの重量のために吸引器120が傾斜しても、これに対応して支持部材140が傾斜し、その中央の部分141による吸引器120の支持を維持することができる。
【0036】
しかも、本実施の形態の医療用排液用具100では、充分な内径の直管からなる排液管130が、吸引器120に接着されているとともに、貯留バッグ150に溶着されている。このため、排液管130が固化した排液で閉塞されることを防止できる。
【0037】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。また、上述した実施の形態では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【0038】
例えば、上記形態では吸引器120の下部を支持する支持部材140の椀状の部分141が、支持部材140の貯留バッグ150を支持する他部などと一体に形成されていることを例示した。
【0039】
しかし、この椀状の部分141が支持部材140の他部に着脱自在に装着されていてもよい(図示せず)。この場合、例えば、連結チューブ110の重量で吸引器120が傾斜したときに、椀状の部分141もともに傾斜して吸引器120の下部の支持を維持するようなことができる。
【符号の説明】
【0040】
100 医療用排液用具
110 連結チューブ
111 先端部分
112 末端部分
120 吸引器
121 上部
122 下部
130 排液管
131 下端部分
140 支持部材
141 部分
150 貯留バッグ
151 上縁部
152 通気口
153 通気フィルタ
160 懸架部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の創腔等から排液を吸引および貯留する医療用排液用具であって、
前記創腔等に挿入されるカテーテルが連結される連結チューブと、
弾性体で中空の球状に形成されていて前記連結チューブが上部に連結されている吸引器と、
前記吸引器の下部に連結されている排液管と、
前記排液管より外側の位置で前記吸引器の少なくとも下部を支持する上面開口の椀状の支持部材と、
を有する医療用排液用具。
【請求項2】
前記排液管が前記排液を貯留する貯留バッグに配管されており、
前記支持部材は前記貯留バッグの上縁部も支持している請求項1に記載の医療用排液用具。
【請求項3】
前記貯留バッグを懸架する懸架部材を、さらに有しており、
前記懸架部材が前記支持部材に連結されている請求項1または2に記載の医療用排液用具。
【請求項4】
前記吸引器が発生する最大の圧力が−10〜−30mmHgである請求項1ないし3の何れか一項に記載の医療用排液用具。
【請求項5】
前記吸引器が発生する最大の圧力が約−20mmHgである請求項4に記載の医療用排液用具。

【図1】
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【公開番号】特開2011−206100(P2011−206100A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74097(P2010−74097)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】