説明

医療用液体を投与する噴霧器

医療目的の噴霧器であって、液体を噴霧器内に装着できる少なくとも1つのカートリッジから投与する医療目的の噴霧器並びにカートリッジ及び噴霧器とこの噴霧器内に装着できるカートリッジとを有するシステムが開示される。
この種の噴霧器は、例えば吸い込んで効果のある液体調合薬を投与するために必要とされ、このような噴霧器は、必須のユニットとして、ハウジング(3)内に設けられるカートリッジホルダ(4)と、ハウジング(3)に取り付けられて霧化装置(6)が収納されるマウスピース(5)と、霧化装置(6)とカートリッジホルダ(4)を連結する連結管システム(7)とを有し、霧化装置(6)は、中空プランジャ(10)が変位可能に収納された少なくとも1つの通路(9)を有し、中空プランジャ(10)は、弁体(21)を有する。
第1の実施形態によれば、噴霧器(1)は、第1の通路(9a)内に変位可能に収納された第1の中空プランジャ(10a)と、第2の通路(9b)内に変位可能に収納された第2の中空プランジャ(10b)とを有し、第1の中空プランジャ(10a)及び第2の中空プランジャ(10b)は、カートリッジホルダ(4)内へ延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧器であって医療用液体例えば医薬活性物質の調合薬を噴霧器(カートリッジ)内に装着される少なくとも1つの液体用容器から投与する噴霧器と、カートリッジと、噴霧器と噴霧器内に装着できるカートリッジを有するシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
公知の噴霧器は、必要不可欠のユニットとして、ハウジング内に設けられるカートリッジホルダと、ハウジングに取り付けられ、霧化装置が収納されるマウスピースと、霧化装置とカートリッジホルダを連結する連結管システムとを有し、霧化装置が、中空プランジャを変位可能に収納した少なくとも1つの通路を有し、中空プランジャが、弁体を有する。
【0003】
噴霧器内に挿入される中空プランジャは、弁体を有する。中空プランジャの下方運動時、開放位置において、弁体が、調合薬又は既に混合された状態の調合薬を流れ方向において中空プランジャの下流側に位置する通路の部分内に流入させて取り込むことができる。中空プランジャの上方運動時、弁体は、中空プランジャを閉鎖し、次の上方運動時、流れ方向において中空プランジャの下流側に位置する調合薬又は混合物が圧縮され所望の圧力にされる。
【0004】
この種の噴霧器は、吸入により効果が生じる液体薬剤調合薬の投与に用いられており、液体調合薬は、高品質の基準を満足させなければならない。肺の中での活性物質の良好な分布状態を達成するためには、推進ガスの使用を必要としない液体調合薬をこの目的に適した吸入器又は噴霧器によって投与することが、オプションとして提示されている。特に適当な噴霧器は、治療的に必要な用量として少量の液体調合薬を数秒以内に治療的吸入に適したエーロゾルの状態に噴霧化できる噴霧器である。この点に関し、噴霧化持続期間は、最適な肺内堆積を保証するために時間の点で最適化されるべきである。本発明によれば、100μl未満、好ましくは50μl未満、非常に好ましくは20μl未満の量の活性物質溶液を1ストローク又は数ストロークで既に噴霧化して平均粒径が20マイクロメートル未満、好ましくは10マイクロメートル未満のエーロゾルをもたらすネブライザが好ましい。
【0005】
推進ガスを用いないで吸入使用に向いた1回分の量の液体薬剤を投与するかかる装置は、例えば国際公開第WO91/14468号パンフレット(発明の名称:Atomizing Device and Method)及び更に国際公開第WO97/12687号パンフレットに詳細に記載されている。かかる噴霧器では、薬剤溶液は、最高500バールという高い圧力により肺治療用エーロゾルの状態に変換される。
【0006】
公知の噴霧器では、活性物質調合薬は、リザーバ内に溶液の形態で貯蔵される。この場合、用いられるかかる溶液は、適度の貯蔵安定性を示すと同時に医療目的に従ってできるだけ遠くにそれ以上の操作を必要としないで直接あてるようなものであることが必要である。さらに、かかる溶液は、噴霧器も溶液も生じるエーロゾルも損傷を受けないように、噴霧器と相互作用する恐れのある成分を含まないようにすべきである。
【0007】
溶液の噴霧化は、例えば国際公開第WO94/07607号パンフレット又は同第WO99/16530号パンフレットに記載されているような専用ノズルを用いることにより行われる。
【0008】
好ましい吸入器の構造の別の改造例も又、国際公開第WO97/12687号パンフレットに開示されている。
【0009】
公知の噴霧器は、これが円筒形の形をしていて、長さが9〜15cm、幅が2〜4cmの管理しやすいサイズのものなので、患者にとっていつでも持ち運びできる。噴霧器は、高圧を用いて小さなノズルを介して規定された量の薬剤調合薬を噴霧して吸入可能なエーロゾルを生じさせるようにする。
【0010】
欧州特許第918,570号明細書は、必須構成要素として、ばね作動式プランジャ及びノズル装置を有する鼻内噴霧用の噴霧器を記載している。プランジャとノズルとの間に容器を挿入することが可能であり、この容器は、その底部に、ラムを有すると共にそのヘッド側がシールにより閉鎖されている。容器のこのシールは、シールを介して噴霧器内に一体化された外部ノズルを動かすことにより最初の使用に先立って開かれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の噴霧器は、主として、安定した溶液状の調合薬の投与、即ち、互いに安定的に混合でき、長期間にわたって貯蔵できる調合薬成分に適している。このため、例えば少なくとも2種類の活性物質を含む組合せ製剤の場合、投与されるべき活性物質が例えば同一溶剤中で同一のpH値で安定していることが前提条件である。
【0012】
さらに、薬剤を投与する装置の種々の原理は、技術の現状から知られており、かかる薬剤は、これらの投与に先立って別々に貯蔵されるが、次には混合物として患者に使われる。
【0013】
国際公開第WO2004/011068号パンフレットは、薬剤混合物の投与のための電子システムを開示している。
【0014】
国際公開第WO2004/011071号パンフレットは、薬剤投与システムを開示しており、この場合、2つの薬剤容器は、互いに異なる種類のものである。
【0015】
国際公開第WO2004/011067号パンフレット及び同第WO2004/01170号パンフレットも又、薬剤混合物の投与システムを開示しており、この国際公開第WO2004/011070号パンフレットは、複数種類の同時処方された薬剤と同時処方には適していない薬剤との投与技術をクレーム記載している。
【0016】
国際公開第WO2004/011067号パンフレットは、別々の容器内で貯蔵されるが、混合物の形態で患者に投与できる単純な薬剤投与システムをクレーム記載している。
【0017】
そこで、本発明の目的は、互いに比較的異なる条件、例えばpH値、溶剤又は添加剤の条件下でのみ安定的に貯蔵できる調合薬を調合すると共に投与できる噴霧器を提供することである。
【0018】
本発明は、調合薬の貯蔵用のカートリッジを更に提供しようとするものである。
【0019】
本発明の別の副次的目的は、アトマイザとカートリッジとを有するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、この目的は第1に、第1の通路内に変位可能に収納された第1の中空プランジャと、第2の通路内に変位可能に収納された第2の中空プランジャとを有し、第1の中空プランジャ及び第2の中空プランジャは、カートリッジホルダ内へ延びている噴霧器によって達成される。「中空プランジャ」という用語は、外径が通路の内径よりもほんの僅かに小さな寸法のものである管状プランジャを意味するために用いられている。第1及び第2の通路は、好ましくは、断面が丸い形状のボアであり、この通路は、実質的に互いに平行な関係をなして延びている。この場合、通路は、2つの役目を果たす。一方では、これら通路は、この中に設けられた中空プランジャの軸方向運動方向におけるガイドとして役立ち、他方では、活性物質の調合薬が、ノズル本体に至る途中までこれら通路内に通される。ノズル本体から流れ方向において下流側に位置する中空プランジャの端部までの通路の部分は、同時に、圧力チャンバとなり、この圧力チャンバの容積は、中空プランジャの上方運動時に、次第に減少する。中空プランジャの流れ方向における前(上流)側端部は、カートリッジホルダ内に突き出ている。
【0021】
有利には、霧化装置は、少なくとも1つの第1のノズル出口を備えた第1のノズル本体と、少なくとも1つの第2のノズル出口を備えた第2のノズル本体とを有し、第1のノズル本体は、第1の通路に連結され、第2のノズル本体は、第2の通路に連結される。この実施形態では、2種類の互いに異なる液体が、互いに完全に別々に噴霧器に通され、装置の外部でエーロゾル雲を形成するよう組み合わされるに過ぎない。互いに異なる調合薬相互間のこの接触の結果として、貯蔵中及び噴霧化中にかかる接触により生じる反応が、最小限に抑えられる。
【0022】
第1のノズル本体の第1のノズル出口と第2のノズル本体の第2のノズル出口は、互いに対して傾けられ、したがって、2種類の液体が、噴霧器の外部で出会って相互噴霧化を生じさせるようにする。
【0023】
第1のノズル本体が、2つのノズル出口を有し、第2のノズル本体が、2つのノズル出口を有し、ノズル本体の各々の2つのノズル出口が、互いに対して傾けられていれば、特に望ましいことが判明した。この場合、2種類の液体は、時間の点で並列関係をなして噴霧化され、したがって、相互に侵入し合う2つのエーロゾル雲が生じるようになる。原理的に説明すると、ノズルヘッド1つ当たり2つの別々のノズル出口を設けるのではなく、更に別のノズル出口が可能である。
【0024】
別の実施形態によれば、霧化装置は、ノズル本体を1つだけ有し、第1及び第2の通路は、ノズル本体内に案内され、それぞれ第1及び第2のノズル出口を備える。この場合、別々のノズル出口からの2つの液体ジェットの流出後における2つの流出中の液体ジェットから共通のエーロゾル雲が形成される。また、この実施形態では、共通ノズル本体の第1のノズル出口と第2のノズル出口は、互いに対して傾けられており、したがって、2つの液体ジェットがノズル本体の前で出会い、それにより相互噴霧化を可能にする。
【0025】
さらに、各々2つ又は3つ以上のノズル出口を有する複数個の別々のノズル本体により、互いに異なる粒径を互いに異なる調合薬から同時に作ることができる。したがって、例えば、大きな粒径の第1の調合薬を上気道の治療に投与でき、それと同時に、小さな肺に到達する粒径の第2の調合薬を下気道の治療に投与することができる。
【0026】
別の有利な実施形態では、霧化装置は、ノズル本体を有し、ノズル本体の前に、混合通路が流れ方向に配置され、混合通路内で、第1の通路と第2の通路は、互いに結合されている。この混合通路は、既に混合した溶液をノズル本体に送る。好ましくは、この実施形態においても、互いに対して傾けられた2つのノズル出口が設けられ、これら出口ノズルにより、エーロゾル雲が作られる。
【0027】
上述の実施形態の変形例として、霧化装置は、プレナムチャンバが設けられたノズル本体を更に有するのがよく、第1の通路と第2の通路は、プレナムチャンバ内で互いに結合されている。この実施形態では、混合通路は、ノズル本体内に動かされ、この混合通路は、これを上述の実施形態とは区別するためにプレナムチャンバと称する。エーロゾル雲の生成は、上述の実施形態に一致した仕方で行われる。
【0028】
本発明の目的は又、少なくとも1つの中空プランジャが、カートリッジホルダの近くのその端部のところで第1のプランジャ部分と第2のプランジャ部分に枝分かれしており、第1のプランジャ部分及び第2のプランジャ部分が、カートリッジホルダ内に延びている噴霧器で達成される。この形態では、中空プランジャは、通路内に変位可能に設けられる。中空プランジャは、通路の外部で、2つのプランジャ部分に枝分かれする。上述の実施形態とは別の手段として、2つの調合薬から成る混合物の調製は、混合又はプレナムチャンバ内では起こらず、既に中空プランジャ内で生じている。エーロゾル雲を作るため、この噴霧器は、単一のノズル本体に設けられた第1及び第2のノズル出口を更に有するのがよく、これらノズル出口は好ましくはそれぞれ、互いに対して傾けられている。
【0029】
全ての実施形態において、複数個のノズル出口の場合、傾斜したノズル出口は、これらが20°〜160°、好ましくは60°〜150°、特に好ましくは80°〜100°の衝突角度で液体のジェット方向を生じさせるように差し向けられている。衝突角度は、極めて重要なこととして、衝撃間隔、即ち、2種類の液体が出会うノズル出口からの間隔を定める。この衝撃間隔は、広すぎるようには選択されないようにするのがよい。というのは、広すぎると、適度の噴霧化が生じないからである。
【0030】
好ましくは、ノズル本体に設けられたノズル出口は、10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm、特に好ましくは30μm〜70μm、最も好ましくは50μmの距離のところに配置される。
【0031】
好ましくは、弁体は、中空プランジャの端部のところに配置され、この端部は、流れ方向における下流側端部である。これにより、中空プランジャ内への調合薬又は混合調合薬の逆流が阻止される。
【0032】
望ましくは、少なくとも1つのノズル本体は、少なくとも1つの通路に対して静止状態に固定されている。
【0033】
好ましくは、カートリッジホルダは、可動状態で設けられる。
【0034】
所定量のエネルギーを蓄えるよう応力付与要素をハウジング内に設けるのがよい。用いられる応力付与要素は例えば、軸方向に応力を加えることができるコイルばねであるのがよい。解除ボタンの作動時に、応力付与要素は、所定量のエネルギーをもたらし、カートリッジホルダをハウジングの軸方向、即ち、霧化装置の方向に変位させる。応力付与要素の特性は、調合薬に加えることができるエネルギーの大きさ及び実質的に調合薬の達成可能な流体圧力を定める。関与する流体圧力は、100バール〜700バールであり、好ましくは200バール〜500バールである。
【0035】
本発明の第1の副次的目的は、第1及び第2のカートリッジチャンバを有し、第1の液体が、第1のカートリッジチャンバ内に貯蔵され、第2の液体が、第1のカートリッジチャンバから空間的に離れて位置する第2のカートリッジチャンバ内に貯蔵されているカートリッジによって達成される。この場合、2種類の液体は、1つのカートリッジ内に入れられ、それにより、カートリッジを挿入する際の扱いやすさが単純化される。
【0036】
好ましくは、カートリッジは、形状の点で安定性のある周壁、カバー壁及び底壁を有する。
【0037】
別の副次的目的は、第1の液体が、第1のカートリッジチャンバ内に貯蔵され、第2の液体が、第1のカートリッジ又は第1のカートリッジチャンバから空間的に離れて位置する第2のカートリッジチャンバ内に貯蔵され、第1の中空プランジャが、第1のカートリッジ又はカートリッジチャンバ内に挿入可能であり、第2の中空プランジャが、第2のカートリッジ内に挿入可能であり、又は、中空プランジャに連結された第1のプランジャ部分が、第1のカートリッジ又は第1のカートリッジチャンバ内に挿入可能であり、第2のプランジャ部分が、第2のカートリッジ又は第2のカートリッジチャンバ内に挿入可能であるシステムによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
より良好な理解を得るため、図を参照して以下に本発明について詳細に説明する。
【0039】
以下において、同一の部分は、同一の符号で示されている。
【0040】
図1は、第1の実施形態の噴霧器の縦断面図であり、第1の実施形態の噴霧器は、第1のノズル本体8aと、第2のノズル本体8bと、互いに平行な関係で延びる2つの通路9a,9bとを備え、中空プランジャ10a,10bがこれら通路内で案内される。通路9a,9bと中空プランジャ10a,10bは一緒になって、連結管システム7を形成している。
【0041】
噴霧器は、2つに分割され、互いに対して回転自在なハウジング3を有し、それにより応力付与要素23に応力を加えることができる。解除ボタン24を作動させると、カップ状のスラスト板27が解放され、応力付与要素23のばね力で流れ方向15に前進させられる(図2参照)。このとき、スラスト板27に固定され、これを貫通している2つの中空プランジャ10a,10bも、スラスト板27と一緒に前進させられ、そのとき、通路9a,9b内に吸い込まれていた液体が圧縮され、次いで、この液体が、第1のノズル本体8a及び第2のノズル本体8bから流出させられる。2つの別々のエーロゾル雲の形成は、ノズル本体8a,8bに設けられたそれぞれのノズル出口11a1,11a2,11b1,11b2、即ち、全部で4つのノズル出口によって行われる。
【0042】
次に使用するときには、応力付与要素23に再び張力を加え、それによりスラスト板27及び中空プランジャ10a,10bを下方運動で変位させる。中空プランジャ10a,10bの下方運動により、それぞれの調合薬が、カートリッジチャンバ2a,2bから吸い出されてそれぞれの第1の通路9a又は第2の通路9b内に吸い込まれる。この下方運動の際、2つの弁体21a,21bは、流れ伝達位置にある。
【0043】
解除ボタン24を作動させると、中空プランジャ10a,10bは、ハウジング3の軸方向25に変位され、即ち、これら中空プランジャは、上方運動で変位する。この場合、それぞれの弁体21a,21bは、第1の中空プランジャ10a又は第2の中空プランジャ10bを自動的に閉鎖し、それにより、液体を圧縮させることができる。弁体21a,21bは、それぞれの中空プランジャ10a,10bの後方端部22(図2参照)のところに設けられている。
【0044】
第1の中空プランジャ10a及び第2の中空プランジャ10bの上方運動中、患者は、自分の口をハウジング3に設けられているマウスピース5の周りにあて、エーロゾルを吸入することができる。マウスピース5をクロージャカバー26で覆うのがよい。
【0045】
図1に示す実施形態では、通路9a,9bは各々、それ自体のノズル本体8a,8bをそれぞれ備えている。それぞれの液体を通過させるため、ノズル本体8a,8bは、第1のノズル本体8aに設けられた2つのノズル出口11a1,11a2及び第2のノズル本体8bに設けられた2つの別のノズル出口11b1,11b2を有している。第2のノズル本体8bのノズル出口11b1,11b2は、ノズル出口11b1,11b2からノズル方向12で出た液体ジェットが衝撃間隔14で出会うように差し向けられている。同じことが、第1のノズル本体8aのノズル出口11a1,11a2から出る液体について当てはまる。このように、2つの別々のエーロゾル雲が作られ、これらエーロゾル雲は、互いに混ざり合う。
【0046】
第1のノズル本体8aのノズル出口11a1,11a2は、第2のノズル本体8bのノズル出口11b1,11b2と同様、それぞれ、距離14aのところで互いに対して間隔をおいて設けられている。
【0047】
図2は、第2の実施形態の噴霧器を示し、この噴霧器では、通路9a,9bが霧化装置6の領域内で共通のノズル本体8内に延び、別の独立した第1のノズル出口11a及び別の独立した第2のノズル出口11bによりこの共通ノズル本体から出ている。
【0048】
図2で理解できるように、それぞれの液体は、ジェット方向12で流出し、噴霧器1の前で出会う。この状況において、液体は、衝突角度13で互いに合流する。調合薬が出会うことにより、調合薬の特に細かな霧化及び混合が達成され、エーロゾル雲は、この実施形態では2種類の液体から作られる。
【0049】
図3は、通路9が混合通路16の形態をしており、即ち、第1の通路9aと第2の通路9bが混合通路16で合流する本発明の第3の実施形態を示している。中空プランジャ10a,10bは、通路9a,9bの中でそれぞれ変位可能に設けられている。
【0050】
第3の実施形態では、2種類の液体の混合は既に、吸引プロセス中に、即ち、2つの中空プランジャ10a,10bの下方運動の際に既に生じる。
【0051】
2つの中空プランジャ10a,10bの上方運動の際、通路9a,9b内にそれぞれ既に吸い込まれ、通路9a,9b内に見られる調合薬が圧縮され、ノズル本体8の方向に追い出される。ノズル出口11aが、図3に示す図に見える。したがって、中空プランジャ10aを介して第1のカートリッジチャンバ2aから吸い込まれた調合薬と中空プランジャ10bにより第2のカートリッジチャンバ2bから吸い込まれた調合薬の混合は、この実施形態では混合通路16内で行われる。弁21が、カートリッジチャンバ内への混合通路16からの逆流を阻止する。
【0052】
図4は、図3に見ることができる混合通路16ではなく、ノズル本体8内に設けられたノズルチャンバ17を有する本発明の第4の実施形態を示している。通路9a,9bは、このプレナムチャンバ17で終端しており、したがって、中空プランジャの上方運動時、調合薬がこのプレナムチャンバ内で互いに混ざり合うようになっている。図3の実施形態とは異なり、混合は、液体が吸い込まれたときには生じず、液体が吐き出されたときに生じる。
【0053】
図5は、中空プランジャ10が通路9内に変位可能に設けられた別の変形例としての第5の実施形態を示している。単一の通路9は、流れ方向15においてノズル本体8で終端し、溶液状混合物は、ノズル出口11a,11bを介してこのノズル本体から流出することができる。第1のノズル出口11aだけが図5に示されている。プランジャ9の外部で、カートリッジホルダの近くに位置する中空プランジャ10の端部18の付近において、中空プランジャ10は、第1のプランジャ部分19と第2のプランジャ部分20に枝分かれしている。この場合、プランジャ部分19,20は両方共、カートリッジホルダ4内へ延びている。
【0054】
上述の実施形態とは異なり、2つの物理的に別々のカートリッジ、即ち、第1のカートリッジ55及び第2のカートリッジ56が、カートリッジホルダ4内に設けられている。この実施形態は、あまり好ましくない。
【0055】
図6は、円筒形カートリッジチャンバ2a及びこれに並んで設けられていて、これまた円筒形カートリッジチャンバ2bを有する本発明のカートリッジ2を示している。
【0056】
2つのカートリッジチャンバ2a,2bは、互いに間隔を置いた関係で配置されたこれら自体の内壁57,58、周壁50及び底壁52を有している。カバー壁51は、挿入用補助具59により穴あけされており、中空プランジャ10a,10bは、これら挿入用補助具内に嵌り込むことができ、クロージャダイヤフラム51aが穴あけされた後、これら中空プランジャを第1のカートリッジチャンバ2a及び第2のカートリッジチャンバ2b内に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施形態に従って、2つのノズル本体及び互いに平行な関係で延びる2つの通路を備え、中空プランジャがこれら通路内で案内され、2つのカートリッジチャンバがカートリッジ内に設けられた噴霧器の縦断面図である。
【図2】図1に対応した図であって、ノズル本体及び互いに平行な関係で延びる2つの通路を備え、中空プランジャが第2の実施形態に従ってこれら通路内で案内される状態を示す図である。
【図3】図1に対応した図であって、ノズル本体及び混合通路を備え、第1及び第2の通路が第3の実施形態に従って混合通路内で互いに結合された状態を示す図である。
【図4】図1に対応した部分図であり、ノズル本体及びこの中に配置されたプレナムチャンバを備え、第1及び第2の通路が、第4の実施形態に従ってこのプレナムチャンバ内で結合された状態を示す図である。
【図5】図1に対応した図であり、ノズル本体及び第5の実施形態に従ってプランジャ部分に枝分かれされた中空プランジャを備えた状態を示す図である。
【図6】第1のカートリッジチャンバ及び第2のカートリッジチャンバを備えたカートリッジの縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 噴霧器
2 カートリッジ
2a 第1のカートリッジチャンバ
2b 第2のカートリッジチャンバ
3 ハウジング
4 カートリッジホルダ
5 マウスピース
6 霧化装置
7 連結管システム
8 ノズル本体
8a 第1のノズル本体
8b 第2のノズル本体
9 通路
9a 第1の通路
9b 第2の通路
10 中空プランジャ
10a 第1の中空プランジャ
10b 第2の中空プランジャ
11a ノズル本体の第1のノズル出口
11b ノズル本体の第2のノズル出口
11a1 第1のノズル本体の第1のノズル出口
11a2 第1のノズル本体の第2のノズル出口
11b1 第2のノズル本体の第1のノズル出口
11b2 第2のノズル本体の第2のノズル出口
12 ジェット方向
13 衝突角度
14 衝撃間隔
14a ノズル本体のノズル出口相互間の距離
15 流れ方向
16 混合通路
17 プレナムチャンバ
18 カートリッジホルダの近くの中空プランジャ(10)の端部
19 第1のプランジャ部分
20 第2のプランジャ部分
21a 第1の弁体
21b 第2の弁体
22 中空プランジャの後方端部
23 応力付与要素
24 解除ボタン
25 ハウジング(3)の軸方向
26 クロージャカバー
27 スラスト板
50 カートリッジの周壁
51 カートリッジのカバー壁
51a クロージャダイヤフラム
52 カートリッジの底壁
55 第1のカートリッジ
56 第2のカートリッジ
57 第1のカートリッジの内壁
58 第2のカートリッジの内壁
59 挿入補助具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用液体を、噴霧器(1)内に装着できる少なくとも1つのカートリッジ(2,55,56)から投与する噴霧器であって、
ハウジング(3)内に設けられるカートリッジホルダ(4)と、
前記ハウジング(3)に取り付けられ、霧化装置(6)が収納されるマウスピース(5)と、
前記霧化装置(6)と前記カートリッジホルダ(4)を連結する連結管システム(7)とを有し、前記霧化装置(6)が、中空プランジャ(10)を変位可能に収納した少なくとも1つの通路(9)を有し、前記中空プランジャ(10)が、弁体(21)を有している噴霧器において、
第1の通路(9a)内に変位可能に収納された第1の中空プランジャ(10a)と、第2の通路(9b)内に変位可能に収納された第2の中空プランジャ(10b)とを有し、前記第1の中空プランジャ(10a)及び前記第2の中空プランジャ(10b)は、前記カートリッジホルダ(4)内へ延びている(図1、図2、図3、図4)、
ことを特徴とする噴霧器。
【請求項2】
前記霧化装置(6)は、少なくとも1つの第1のノズル出口(11a)を備えた第1のノズル本体(8a)と、少なくとも1つの第2のノズル出口(11b)を備えた第2のノズル本体(8b)とを有し、
前記第1のノズル本体(8a)は、前記第1の通路(9a)に連結され、第2のノズル本体(8b)は、前記第2の通路(9b)に連結されている(図1)、
請求項1記載の噴霧器。
【請求項3】
前記第1のノズル本体(8a)の前記第1のノズル出口(11a)と前記第2のノズル本体(8b)の前記第2のノズル出口(11b)は、互いに対して傾けられている、
請求項2記載の噴霧器。
【請求項4】
前記第1のノズル本体(8a)は、2つのノズル出口(11a1,11a2)を有し、前記第2のノズル本体(8b)は、2つのノズル出口(11b1,11b2)を有し、前記ノズル本体(8a,8b)の各々の前記2つのノズル出口(11a1,11a2;11b1,11b2)は、互いに対して傾けられている、
請求項2記載の噴霧器。
【請求項5】
前記霧化装置(6)は、ノズル本体(8)を有し、前記第1及び前記第2の通路(9a,9b)は、前記ノズル本体内に案内され、それぞれ第1及び第2のノズル出口(11a,11b)を備えている(図2)、
請求項1記載の噴霧器。
【請求項6】
前記霧化装置(6)は、ノズル本体(8)を有し、該ノズル本体の前に、混合通路(16)が流れ方向(15)に配置され、該混合通路内で、前記第1の通路(9a)と前記第2の通路(9b)は、互いに結合されている(図3)、
請求項1記載の噴霧器。
【請求項7】
前記霧化装置(6)は、プレナムチャンバ(17)が設けられたノズル本体(8)を有し、前記第1の通路(9a)と前記第2の通路(9b)は、前記プレナムチャンバ内で互いに結合されている(図4)、
請求項1記載の噴霧器。
【請求項8】
医療用液体を噴霧器(1)内に装着できる少なくとも1つのカートリッジ(2,55,56)から投与する噴霧器であって、
ハウジング(3)内に設けられるカートリッジホルダ(4)と、
前記ハウジング(3)に取り付けられ、霧化装置(6)が収納されるマウスピース(5)と、
前記霧化装置(6)と前記カートリッジホルダ(4)を連結する連結管システム(7)とを有し、前記霧化装置(6)が、少なくとも1つのノズル本体(8)を有し、前記連結管システム(7)が、中空プランジャ(10)を変位可能に収納した少なくとも1つの通路(9)を有し、前記中空プランジャ(10)が、弁体(21)を有している噴霧器において、
前記少なくとも1つの中空プランジャ(10)は、前記カートリッジホルダの近くのその端部(18)のところで第1のプランジャ部分(19)と第2のプランジャ部分(20)に枝分かれしており、前記第1のプランジャ部分(19)及び前記第2のプランジャ部分(20)は、前記カートリッジホルダ(4)内に延びている(図5)、
ことを特徴とする噴霧器。
【請求項9】
前記少なくとも1つのノズル本体(8)は、第1及び第2のノズル出口(11a,11b)を有する、
請求項6〜8のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項10】
共通の前記ノズル本体(8)の前記第1のノズル出口(11a)と前記第2のノズル出口(11b)は、互いに対して傾けられている、
請求項5又は9に記載の噴霧器。
【請求項11】
傾斜した前記ノズル出口(11a,11b;11a1,11a2,11b1,11b2)は、これらが20°〜160°、好ましくは60°〜150°、特に好ましくは80°〜100°の衝突角度(13)で前記液体のジェット方向(12)を生じさせるように差し向けられている、
請求項3、4又は10に記載の噴霧器。
【請求項12】
前記ノズル本体(8,8a,8b)に設けられた前記ノズル出口(11a,11b;11a1,11a2;11b1,11b2)は、10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm、特に好ましくは30μm〜70μm、最も好ましくは50μmの距離(14a)のところに配置されている、
請求項4、5又は9〜11のいれか1項に記載の噴霧器。
【請求項13】
前記弁体(21)は、前記中空プランジャ(10,10a,10b)の端部(22)のところに配置され、該端部(22)は、流れ方向(15)における下流側端部である、
請求項1〜12のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項14】
前記少なくとも1つのノズル本体(8,8a,8b)は、前記少なくとも1つの通路(9,9a,9b)に対して静止状態に固定されている、
請求項1〜13のうちいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項15】
前記カートリッジホルダ(4)は、可動状態で設けられている、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項16】
応力付与要素(23)が、所定量のエネルギーを蓄えるよう前記ハウジング(3)内に設けられている、
請求項1〜15のいずれか1項に記載の噴霧器。
【請求項17】
解除ボタン(24)の作動時に、前記応力付与要素(23)は、前記所定量のエネルギーをもたらし、前記カートリッジホルダ(4)を前記ハウジング(3)の軸方向(25)に変位させる、
請求項16記載の噴霧器。
【請求項18】
前記応力付与要素(23)は、前記カートリッジを前記霧化装置(6)の方向に変位させる、
請求項16又は17記載の噴霧器。
【請求項19】
好ましくは請求項1〜16のいずれか1項に記載の噴霧器(1)内に装着可能なカートリッジであって、該カートリッジ(2)は、第1及び第2のカートリッジチャンバ(2a,2b)を有し、第1の液体が、前記第1のカートリッジチャンバ(2a)内に貯蔵され、第2の液体が、前記第1のカートリッジチャンバ(2a)から空間的に離れて位置する第2のカートリッジチャンバ(2b)内に貯蔵されている(図6)、
ことを特徴とするカートリッジ。
【請求項20】
前記カートリッジ(2)は、形状の点で安定性のある周壁(50)、カバー壁(51)及び底壁(52)を有する、
請求項19に記載のカートリッジ。
【請求項21】
医療用液体を投与する噴霧器(1)と、該噴霧器(1)内に装着できる少なくとも1つのカートリッジ(2,55,56)とを有するシステムであって、前記噴霧器(1)は、
ハウジング(3)内に設けられるカートリッジホルダ(4)と、
前記ハウジング(3)に取り付けられ、霧化装置(6)が収納されるマウスピース(5)と、
前記霧化装置(6)と前記カートリッジホルダ(4)を連結する連結管システム(7)とを有し、前記霧化装置(6)が、少なくとも1つのノズル本体(8)を有し、前記連結管システム(7)が、中空プランジャ(10)を変位可能に収納した少なくとも1つの通路(9)を有し、前記中空プランジャ(10)が、弁体(21)を有している噴霧器において、
第1の液体が、第1のカートリッジチャンバ(2a)内に貯蔵され、第2の液体が、前記第1のカートリッジ(55)又は前記第1のカートリッジチャンバ(2a)から空間的に離れて位置する第2のカートリッジチャンバ(2b)内に貯蔵され、
第1の中空プランジャ(10a)が、前記第1のカートリッジ(55)又は第1のカートリッジチャンバ(2a)内に挿入可能であり、第2の中空プランジャ(10b)が、前記第2のカートリッジ(56)内に挿入可能であり、又は、前記中空プランジャ(10)に連結された第1のプランジャ部分(19)が、前記第1のカートリッジ(55)又は第1のカートリッジチャンバ(2a)内に挿入可能であり、第2のプランジャ部分(20)が、前記第2のカートリッジ(56)又は第2のカートリッジチャンバ(2b)内に挿入可能である、
ことを特徴とするシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−535352(P2007−535352A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509995(P2007−509995)
【出願日】平成17年5月3日(2005.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004792
【国際公開番号】WO2005/107837
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)