説明

医療用粘着剤組成物

【課題】薬物などの医療用有効成分を含有する場合において、そのような成分との反応による変性等が抑制され、前記成分の有効性を減殺するおそれがなく、貼付剤や貼付製剤の粘着剤層を形成した場合、皮膚面に対する良好な固定性を示し、カテーテルなどの医療用具に対しても優れた固定性を付与することのできる、医療用粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有し、かつカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含有させて、上記組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の貼付剤や貼付製剤において好適に用いられ得る医療用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の保護、各種医療用具の固定、薬物の経皮投与等の目的で皮膚に貼付して用いる貼付剤および貼付製剤には、皮膚に貼付する際には充分な粘着性を示し、使用後には皮膚表面を汚染する(例えば、糊残りやベタツキなどを生じる)ことなく剥離除去できることが求められる。また、貼付剤および貼付製剤は、皮膚に対し低刺激性であることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたは該エステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとの混合物と、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を含有する単量体との共重合体の架橋体を粘着剤層に含む貼付剤が開示されている。しかし、上記貼付剤における粘着剤層は、カルボキシル基を有する共重合体を含有することから、薬物のような有効成分と、カルボキシル基との反応性を考慮する必要がある。
【0004】
また、特許文献2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能であり、かつカルボキシル基およびスルホ基のいずれも含有しない単量体とを重合して得られるアクリル系粘着剤を用いた貼付剤が開示されている。さらに、同文献の貼付剤は、その粘着剤層が有機液状成分を含むものである。上記貼付剤は、剥離時に糊残りを生じないような十分な凝集力を有しつつも、皮膚への刺激が少ないと述べられている。しかし、特許文献2に開示された、カルボキシル基およびスルホ基を有しない粘着剤は、長時間皮膚面に貼付したり、動きの大きい皮膚面に貼付した場合には、皮膚から剥離することがあり、さらなる接着特性の改良が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−150865号公報
【特許文献2】特開2003−313122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に鑑み、本発明は、粘着剤層に薬物などの医療用有効成分を含有させた場合にも、そのような成分との反応による変性等を抑制することができ、かつ、貼付剤等に用いた場合に、それ自体の皮膚面への良好な固定性のみでなく、カテーテルなどの医療用具に対して優れた固定性を付与することもでき、医療用貼付剤等の用途に特に適する医療用粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明者らは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有し、かつカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を用いることにより、医療用有効成分が粘着剤組成物と反応することによる変性等がなく、貼付剤等に用いた場合に良好な固定性を付与できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明の医療用粘着剤組成物は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含み、該単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量が50重量%〜99.9重量%であり、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が0.1重量%〜20重量%であり、かつ、該単量体成分が、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない。
好ましい実施形態においては、上記(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1〜20のアルキル基を有する。
好ましい実施形態においては、上記(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する。
好ましい実施形態においては、上記単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体との合計の含有量は、60重量%以上である。
好ましい実施形態においては、上記(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸2−エチルヘキシルから選択される少なくとも1つである。
好ましい実施形態においては、上記(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドから選択される少なくとも1つである。
好ましい実施形態においては、上記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は−10℃以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用粘着剤組成物は、薬物などの医療用有効成分を含有する場合において、そのような成分との反応による変性等が抑制され、上記医療用有効成分の有効性を減殺するおそれがない。また、貼付剤や貼付製剤の粘着剤層を形成した場合、皮膚面に対する良好な固定性を示し、カテーテルなどの医療用具に対して優れた固定性を付与することができ、医療用貼付剤等の用途に特に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例4および比較例4の医療用粘着剤組成物について、プラミペキソールの皮膚透過性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医療用粘着剤組成物は、(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有し、かつカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含む。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(単量体(a))は、代表的には式(I)で示される。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、炭素数が1〜20のアルキル基が好ましい。該アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、また環状であってもよい。
【0014】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記エステルのうちでも、常温で粘着性を与えるために、ガラス転移温度を低下させる単量体成分の使用が好適であり、式(I)中、Rで示されるアルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、炭素数2〜10のものがさらに好ましい。具体的には、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルが最も好ましい。重合させた場合に充分に低いガラス転移温度(−70℃)を有する重合体が得られ、しかも入手が容易だからである。なお、本発明においては、単量体(a)の全量のうち、約70重量%以上、より好ましくは約90重量%以上が、上記炭素数2〜10のアルキル基を有するエステルであることが好ましい。
【0016】
本発明においては、単量体(a)の含有量は、単量体成分の全量に対して、50重量%〜99.9重量%であり、好ましくは約60重量%〜約99重量%であり、より好ましくは約70重量%〜約99重量%であり、さらに好ましくは約85重量%〜約97重量%である。単量体(a)の含有量がこのような範囲である場合、該粘着剤組成物により形成される粘着剤層の粘着性能(接着性、タック等)が良好なものとなる。一方、単量体(a)の含有量が99.9重量%を超えると、単量体成分に含有され得る単量体(b)の量が少なくなるため、凝集力(たとえば、一定応力存在下での剥がれに対する耐久性、すなわち定荷重特性)と耐反撥性との両立が困難となる場合がある。なお、上記単量体成分の組成(単量体組成)は、典型的には、該単量体成分を重合させて得られるアクリル系共重合体の各構成単量体の組成に概ね対応する。
【0017】
N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(単量体(b))は、代表的には下記式(II)で表される。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはヒドロキシアルキル基を示す。
【0020】
式(II)において、上記ヒドロキシアルキル基としては、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基が好ましい。上記ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明における好ましい単量体(b)としては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが挙げられる。特に好ましい単量体(b)としては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。親水性と疎水性とのバランスがよく、粘着性のバランスに優れた粘着剤層を形成し得るからである。例えば、単量体(b)の好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは実質的にすべてがHEAAである。
【0021】
単量体(b)は、その分子間の相互作用によって、粘着剤の凝集性向上に寄与し得る。本発明においては、単量体(b)の含有量は、単量体成分の全量に対して、0.1重量%〜20重量%であり、好ましくは1重量%〜15重量%である。単量体(b)の含有量がこのような範囲であれば、粘着剤に十分な凝集力を付与することができ、皮膚の動きによって、貼付剤端面より外側に糊のはみ出しが発生して、衣服等の汚染を生じたり、剥離時に皮膚への糊残りを生じたりするおそれがない。一方、単量体(b)の含有量が20重量%を超えると、タックが低下し、皮膚のように表面が粗く伸縮性のある被着体では、貼付剤の浮きや端部の剥離などを引き起こすことがある。
【0022】
本発明の粘着剤組成物の好ましい一態様においては、単量体(b)の含有量は、単量体成分の全量に対して約2重量%以上(典型的には2重量%〜20重量%)であり、より好ましくは約3重量%以上(典型的には3重量%〜15重量%、例えば3重量%〜12重量%)である。このような割合で単量体(b)を含む単量体成分を共重合して得られるアクリル系共重合体を含む粘着剤組成物によれば、例えば、単量体成分が酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)を有する単量体を、単量体(b)以外には実質的に含有しない場合においても、皮膚面に接着した場合の凝集力および接着力をより向上させることができる。本明細書において、「ヘテロ原子を有する単量体を実質的に含有しない」とは、ヘテロ原子を有する単量体を全く含有しない場合のみならず、あるいはその含有量が単量体成分の全量に対して0.1重量%以下である場合を包含する。
【0023】
単量体成分に含まれる単量体(a)と単量体(b)との質量比(a:b)は、例えば99.9:0.1〜71:29であり、好ましくは99:1〜75:25であり、より好ましくは98:2〜80:20であり、さらに好ましくは97:3〜85:15である。質量比(a:b)がこのような範囲であれば、例えば、単量体成分が、酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)を有する単量体を、単量体(b)以外には実質的に含有しない組成である(例えば、単量体成分が実質的に単量体(a)と単量体(b)のみからなる)場合にも、皮膚面に接着した場合の凝集力および接着力のより良好な貼付剤等を得ることができる。
【0024】
単量体(a)と単量体(b)との合計の含有量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは約60重量%以上であり、より好ましくは約80重量%以上であり、さらに好ましくは約90重量%以上であり、特に好ましくは約95重量%以上である。本発明の粘着剤組成物の好ましい一態様においては、単量体成分が実質的に単量体(a)と単量体(b)のみからなる(すなわち、単量体(a)と単量体(b)とを合わせた含有量が、全単量体成分の実質的に100重量%である)。かかる粘着剤組成物によると、皮膚面に接着した場合の凝集力および接着力の良好な貼付剤等を得ることができる。
【0025】
本発明においては、上記単量体成分は、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しないことを特徴とする。ここで、「カルボキシル基を有する単量体」としては、代表的には、一分子内に少なくとも一つのカルボキシル基(無水物を形成した形態であってもよい)を有するエチレン性不飽和単量体(代表的には、ビニル系単量体)が挙げられる。かかるカルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物などが挙げられる。なお、本明細書において「単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない」とは、共重合に供する単量体成分がカルボキシル基を有する単量体を全く含有しない場合のみならず、その含有量が単量体成分の全量に対して0.1重量%以下である場合を包含する。
【0026】
さらに、本発明においては、上記単量体成分は、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しないのみならず、カルボキシル基以外の酸性基(スルホ基、リン酸基等)を有する単量体についても、実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、上記単量体成分は、好ましくは、カルボキシル基を有する単量体と他の酸性基を有する単量体とを全く含有しないか、単量体成分の全量に対してこれらの単量体を0.1重量%以下で含有する。このような単量体成分を用いれば、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層に薬物などの医療用有効成分を含有させた場合に、上記カルボキシル基等と上記有効成分との反応等を未然に防ぐことができる。
【0027】
上記単量体成分には、単量体(a)および単量体(b)に加えて、任意成分として、(c)その他の単量体を含有させることができる。かかる単量体(c)を用いることによって、例えば、粘着剤の各種特性やアクリル系共重合体の構造等をより適切にコントロールし得る。単量体(c)としては、上記の単量体(a)および単量体(b)と共重合可能であり、かつカルボキシル基、好ましくはカルボキシル基およびその他の酸性基を有しない任意の適切な単量体を採用することができる。例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基を1個または2個以上有する単量体を用いることができる。このような単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、単量体(c)として、窒素(N)を構成原子として含む単量体(ただし、単量体(b)に該当する化合物を除く)を用いることができる。かかる窒素原子含有単量体の例としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン等の環状(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド;N−置換(メタ)アクリルアミド(たとえば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)などの非環状(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等のN−ビニル環状アミド;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド骨格を有する単量体;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド等のイタコンイミド系単量体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
単量体(c)として採用し得る単量体の他の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のアルコキシ基を有する単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のα−オレフィン;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体;ビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;フッ化(メタ)アクリレート等のハロゲン原子を有する単量体;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する単量体;シリコーン(メタ)アクリレート等のシロキサン結合を有する単量体;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
また、単量体(c)として、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等の多官能単量体を用いてもよい。
【0031】
単量体(c)のさらに他の例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル](メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール等のアルケニルアルコールなどの、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0032】
なお、単量体(c)として水酸基を有する単量体を用いる場合、単量体(b)を用いることにより得られる効果を損なわないためには、かかる水酸基を有する単量体(c)を単量体(b)よりも少ない含有量で用いることが好ましい。換言すれば、単量体成分に含まれる水酸基を有する単量体の総量のうち、単量体(b)の含有量は、好ましくは50重量%を超える量であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは75重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上である。あるいは、単量体成分に含まれる水酸基を有する単量体は、実質的に単量体(b)のみであってもよい。
【0033】
単量体(c)としては、上記単量体のうちビニル系単量体が好ましく、窒素原子を含む複素環を有するビニル系単量体がより好ましい。
【0034】
単量体(c)の含有量(2種以上を含む場合にはそれらの合計の含有量)は、単量体成分の全量に対して、好ましくは0重量%〜40重量%であり、より好ましくは1重量%〜35重量%であり、さらに好ましくは5重量%〜30重量%である。単量体(c)の含有量が多すぎると、得られる粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層において、粘着性能のバランスが崩れやすくなることがある。
【0035】
上記単量体成分は、得られるアクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が好ましくは−10℃以下(典型的には−10℃〜−70℃)、より好ましくは−20℃以下(典型的には−20℃〜−70℃)となるように上記の単量体を含有し得る。言い換えれば、Tgが上記範囲となるように単量体成分の組成が調整され得る。ここで、アクリル系共重合体のTgとは、単量体成分を構成する各単量体のホモ重合体のTgと、各単量体の質量分率(共重合組成)に基づいて、Foxの式から求められる値をいう。各単量体のホモ重合体のTgの値は、各種の公知資料(例えば、日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」等)から得ることができる。
【0036】
本発明においては、上記単量体成分からアクリル系共重合体を得るための重合方法は特に限定されず、任意の適切な重合方法を採用することができる。例えば、熱重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等の熱重合法);光や放射線等の活性エネルギー線(高エネルギー線ともいう)を照射して行う重合方法などを採用することができる。
【0037】
上記の重合方法のうち、溶液重合法を好ましく採用することができる。作業性や品質安定性等に優れるからである。該溶液重合の態様は特に限定されず、任意の適切な態様が採用され得る。具体的には、任意の適切な単量体供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を採用することができる。上記単量体供給方法としては、単量体成分の全量を一度に反応容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれをも採用することができる。好ましい一態様として、単量体成分の全量および開始剤を溶媒に溶かした溶液を反応容器内に供給し、該単量体成分を一括して重合させる態様(一括重合)が例示される。このような一括重合は、重合操作および工程管理が容易であるので好ましい。他の好ましい一態様としては、反応容器内に開始剤(典型的には開始剤を溶媒に溶かした溶液)を用意し、単量体成分を溶媒に溶かした溶液を該反応容器に滴下しながら重合させる態様(滴下重合または連続重合)が例示される。単量体成分の一部(一部の成分および/または一部の分量)を、典型的には溶媒とともに反応容器内に入れ、その反応容器に残りの単量体成分を滴下してもよい。単量体(b)を15重量%以上含む単量体成分を重合させる場合には、重合反応を均一に進行させやすいという観点から、滴下重合を用いることがより好ましい。
【0038】
上記熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの混合剤、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合剤等のレドックス系開始剤などが挙げられる。単量体成分を熱重合法により重合させる場合は、重合温度は、好ましくは約20℃〜約100℃であり、さらに好ましくは約40℃〜約80℃である。
【0039】
光(典型的には紫外線)を照射して行う重合方法は、典型的には光重合開始剤を使用して行われる。該光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。このような光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
ケタール系光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製)]等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば商品名「ルシリンTPO」(BASF社製)等を使用することができる。α−ケトール系光重合開始剤としては、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としてはベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としてはベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0041】
上記重合開始剤の使用量は特に限定されない。例えば、重合開始剤の使用量は、単量体成分の全量100重量部に対して、好ましくは約0.01重量部〜約2重量部、より好ましくは約0.01重量部〜約1重量部である。
【0042】
本発明の医療用粘着剤組成物は、上記アクリル系共重合体に加えて、任意の適切な粘着付与剤をさらに含有し得る。かかる粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然物及びその誘導体、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、例えば脂環族系飽和炭化水素樹脂、石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂等が挙げられる。これら粘着付与剤は、粘着剤組成物の全量に対して、1重量%〜30重量%の範囲で含有され得る。
【0043】
また、本発明の医療用粘着剤組成物には、粘度調整(典型的には増粘)の目的で、上記アクリル系共重合体以外の重合体を適宜配合することができる。かかる粘度調整用重合体としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、ポリウレタン、ポリエステル等を用いることができる。また、(メタ)アクリル酸アルキルに官能性の単量体(例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、アクリル酸等の官能基を有するアクリル系単量体から選択される1種または2種以上)を共重合させてなるアクリル系共重合体を用いてもよい。ただし、本発明の特徴を損なわないためには、カルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基その他の酸性基を実質的に含有しない粘度調整用重合体を採用することが好ましい。粘度調整用重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の医療用粘着剤組成物中の上記粘度調整用重合体の含有量は、好ましくは約40重量%以下であり、より好ましくは約1重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約5重量%〜約20重量%以下である。
【0045】
本発明の医療用粘着剤組成物は、上記アクリル系共重合体に対し相溶性を有する有機液状成分をさらに含有し得る。有機液状成分は、粘着剤組成物を可塑化させてソフト感を付することができる。その結果、本発明の粘着剤組成物を粘着剤層として用いた場合、粘着テープ、経皮吸収型製剤などの貼付剤または貼付製剤を皮膚から剥離する際に、皮膚接着力に起因して生じる痛みや皮膚刺激性を低減させ得る。従って有機液状成分としては、可塑化作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。なお、粘着剤層に薬物を含有させる場合には、経皮吸収性を向上させるため、吸収促進作用を有するものを用いることが好ましい。
【0046】
上記有機液状成分としては、オリーブ油、ヒマシ油、パーム油等の植物性油脂;ラノリン等の動物性油脂;ジメチルデシルスルホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、メチルピロリドン、ドデシルピロリドン等の有機溶剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の液状の界面活性剤;アジピン酸ジイソプロピル、フタル酸エステル、セバシン酸ジエチル等の可塑剤;スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素;オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル等の脂肪酸アルキルエステル;グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル;エトキシ化ステアリルアルコール;ピロリドンカルボン酸脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
また、本発明の医療用粘着剤組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲で、任意の他の成分をさらに含有し得る。このような任意成分としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、2,6−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアミン−ケトン系老化防止剤、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体等のモノフェノール系老化防止剤、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系老化防止剤、2,5−tert−ブチルヒドロキノン等のポリフェノール系老化防止剤、カオリン、含水二酸化ケイ素、酸化亜鉛、アクリル酸デンプン1000などの充填剤、プロピレングリコール、ポリブテン、マクロゴール1500等の軟化剤、安息香酸、安息香酸ナトリウム、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等の防腐剤、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、カルミン、β−カロテン、銅クロロフィル、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、カンゾウエキス等の着色剤、ウイキョウ油、d−カンフル、dl−カンフル、ハッカ油、d−ボルネオール、l−メントール等の清涼化剤、スペアミント油、チョウジ油、バニリン、ベルガモット油、ラベンダー油等の香料などが挙げられる。
【0048】
本発明の粘着剤組成物は、上記単量体(a)および単量体(b)を含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を、好ましくは約50重量%以上、より好ましくは約70重量%以上、さらに好ましくは約90重量%以上含有する。粘着剤組成物中のアクリル系共重合体の含有量がこのような範囲であれば、より粘着性能のよい粘着剤層が形成され得る。
【0049】
本発明の医療用粘着剤組成物は、所望により、薬物を含有し得る。ここにいう薬物は特に限定されないが、ヒトなどの哺乳動物にその皮膚を通して投与し得る、すなわち経皮吸収可能な薬物が好ましい。かかる薬物の例としては、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤、女性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤などの種類の薬物であって、経皮投与可能な薬物が挙げられる。なかでも、本発明の医療用粘着剤組成物の特徴から、カルボキシル基を含有する粘着剤層中で安定性が極端に低下してしまうような薬物を好適に含有させることができる。
【0050】
皮膚透過性の高い経皮吸収製剤を得る観点から、上記薬物として塩基性薬物を用いることが有利である。塩基性薬物とは、その分子中に塩基性基を有する薬物を意味する。カルボキシル基を実質的に含有しないアクリル系共重合体を含む本発明の医療用粘着剤組成物では、塩基性薬物の塩基性基とカルボキシル基の反応により生じる、粘着剤層における塩基性薬物の移動阻害等を抑制することが可能となる。かかる観点から、塩基性薬物としては、塩基性窒素原子を有する塩基性薬物が好ましく、第1級〜第3級アミノ基を有する薬物がより好ましい。
【0051】
本発明の医療用粘着剤組成物における上記薬物の含有量は、薬物の種類や投与目的、患者の年齢、性別、症状等に応じて適宜設定することができる。上記薬物の含有量は、好ましくは約0.1重量%〜約40重量%であり、より好ましくは約0.5重量%〜約30重量%である。選択した薬剤によっても異なるため一義的には言えないが、一般的に含有量が0.1重量%未満である場合には、治療に有効な量の薬物の放出が期待できず、また、40重量%を超えると治療効果に限界が生じるとともに、経済的に不利である。
【0052】
本発明の医療用粘着剤組成物は、医療用の貼付剤および貼付製剤(以下、貼付剤等と称する場合がある)の調製に好適である。当該貼付剤等は、本発明の医療用粘着剤組成物を用いて、シート状基材(支持体)の少なくとも一方の面に粘着剤層を形成することによって調製された医療用粘着シートであり得る。かかる貼付剤等は、粘着剤層を支持体の片面または両面に固定的に(当該基材から粘着剤層を分離する意図なく)設けた形態の基材付き粘着シートであってもよく、あるいは該粘着剤層をたとえば剥離ライナー(剥離紙、表面に剥離処理を施した樹脂シート等)のような剥離性を有する支持体上に設けた形態のいわゆる基材レス粘着シートであってもよい。上記貼付剤の概念には、救急絆創膏、巻絆、創傷被覆ドレッシング、医療用具固定用粘着テープ、粘着包帯、サージカルテープ等と称されるものが包含され得る。また、貼付製剤の概念には、パップ剤、経皮吸収用テープ剤、マトリクス型貼付製剤、リザーバー型貼付製剤、パッチ型貼付製剤等の経皮吸収型製剤が包含され得る。なお、上記粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0053】
支持体としては、特に限定されない。支持体としては、実質的に薬物等不透過性であるもの、すなわち粘着剤層に含有される薬物等の有効成分や添加剤などが、支持体中を透過して背面から失われ、含有量の低下を引き起こすことのないものが好ましい。
【0054】
上記支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;サラン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、サーリン(登録商標)等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のアクリル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化炭素樹脂;金属箔などの単独フィルム、およびこれらのラミネートフィルムなどが挙げられる。なお、支持体の厚さは、通常10μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmである。
【0055】
上記支持体は、好ましくは、上記材質からなる無孔のプラスチックフィルムと多孔質フィルムとの積層フィルムである。このような構成であれば、支持体と粘着剤層との接着性(投錨性)を向上させることができる。この場合、粘着剤層は多孔質フィルム側に形成するようにすることが好ましい。上記多孔質フィルムとしては、粘着剤層との投錨性を向上させ得るものが採用される。具体的には、紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したシート等が挙げられ、これらのうち取扱い性等の観点からは、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔質フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜200μmである。このような厚みであれば、投錨性が向上し、貼付剤全体の柔軟性及び貼付操作性に優れる。例えばプラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の貼付製剤の場合には、多孔質フィルムの厚みは好ましくは10μm〜100μmである。また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、その目付量は、好ましくは5g/m〜30g/mであり、より好ましくは8g/m〜20g/mである。なお、支持体が上記積層フィルムである場合には、無孔のプラスチックフィルムの厚みは、好ましくは1μm〜25μmである。
【0056】
上記支持体のうち、特に好適な支持体は、1.5μm〜6μm厚のポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量8g/m〜20g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムである。
【0057】
貼付剤等を調製する場合、使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するため、該粘着面に剥離ライナーを積層するのが好ましい。当該剥離ライナーとしては、充分に軽い剥離性を確保できれば、特に限定されない。具体例としては、粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、あるいは上質紙またはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。該剥離ライナーの厚さは、通常10μm〜200μm、好ましくは25μm〜100μmである。
【0058】
上記剥離ライナーとしては、バリアー性、価格の点からポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂製剥離ライナーが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、厚みは好ましくは25μm〜100μm程度である。
【0059】
上記粘着剤層は、上記粘着剤層を形成するための塗工液を支持体または剥離ライナーに付与(典型的には塗布)し、これを乾燥させて溶媒を除去することにより形成され得る。あるいは、粘着剤層は、粘着剤組成物に活性エネルギー線(たとえば紫外線)を照射して硬化させることにより形成され得る。かかる粘着剤層形成方法は、あらかじめ適宜の重合法(例えば光重合法)にて単量体成分を部分的に重合させ、その部分重合体に光重合開始剤および必要に応じて使用される架橋剤(多官能(メタ)アクリレート等)を配合して調製された活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物に好ましく適用され得る。このような活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、液状媒体を実質的に含有しない組成であり得る。該組成物が液状媒体を含む場合には、支持体に付与した組成物を乾燥させた後に活性エネルギー線を照射することが好ましい。なお、上記粘着剤層を形成するための塗工液は、本発明の医療用粘着剤組成物と当該組成物を溶解し得る適切な溶媒とを含む。本発明の医療用粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型に処方される場合には、溶媒を実質的に含まない場合があり得る。
【0060】
粘着剤組成物(実質的には、上記粘着剤層を形成するための塗工液)の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の任意の適切なコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。該組成物が塗布される支持体の種類にもよるが、乾燥温度は例えば約40℃〜約150℃である。なお、基材付き粘着シートの場合は、基材に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成してもよく、剥離ライナー上に形成した粘着剤層を基材に転写してもよい。
【0061】
本発明の粘着剤組成物を貼付剤等に用いる場合、粘着剤層の厚みは特に限定されない。例えば、粘着剤層の厚みは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約20μm以上、さらに好ましくは約30μm以上である。このような厚みであれば、良好な粘着性能(たとえば接着強度)が実現され得る。一方、厚みは、好ましくは約400μm以下、より好ましくは約200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例により詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に示すものに限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に示す場合を除き、「重量部」および「重量%」を表す。
【0063】
[実施例1]粘着剤組成物
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル(以下「2−EHA」と表すことがある)70部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド(以下「HEAA」と表すことがある)10部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン(以下「N−VP」と表すことがある)20部、および溶媒として酢酸エチル333.3部を入れ、室温において窒素ガスバブリング(100mL/分)を行いながら1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物を加熱し、60℃に達した時点で、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を加えた。内容物の温度を60℃に保つよう制御し、窒素ガス流中で6時間重合を行い、次いで76℃に15時間保持した。上記方式の溶液重合により、アクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=70/10/20)の溶液である粘着剤組成物(実質的には、粘着剤層を形成するための塗工液、実施例2〜3および比較例1〜3において同様)を得た。
【0064】
[実施例2]粘着剤組成物
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル85部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド10部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン5部を単量体成分として用い、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=85/10/5)の溶液である粘着剤組成物を調製した。
【0065】
[実施例3]粘着剤組成物
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル50部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド10部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン40部を単量体成分として用い、実施例1と同様にしてアクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=50/10/40)の溶液である粘着剤組成物を調製した。
【0066】
[比較例1]粘着剤組成物
単量体(b)のN−ヒドロキシエチルアクリルアミドの代わりにアクリル酸ヒドロキシエチルエステル(以下「HEA」と表すことがある)を用いてアクリル系共重合体(2−HEA/HEA/N−VP=85/10/5)を調製したこと以外は、実施例2と同様にして粘着剤組成物を調製した。
【0067】
[比較例2]粘着剤組成物
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル95部、単量体(b)に代えてアクリル酸(以下「AA」と表すことがある)5部を単量体成分として用いてアクリル系共重合体(2−HEA/AA=95/5)を調製したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。
【0068】
[比較例3]粘着剤組成物
単量体(a)としてアクリル酸2−エチルヘキシル50部、単量体(b)としてN−ヒドロキシエチルアクリルアミド30部、単量体(c)としてN−ビニル−2−ピロリドン20部を単量体成分として用い、溶媒としてイソプロピルアルコール100部を用いてアクリル系共重合体(2−EHA/HEAA/N−VP=50/30/20)を調製したこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を調製した。
【0069】
上記実施例1〜3および比較例1〜3の粘着剤組成物(粘着剤層を形成するための塗工液)を用いて、皮膚粘着シートを調製した。皮膚粘着シートは、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離ライナーの剥離面に、上記粘着剤組成物(粘着剤層を形成するための塗工液)をアプリケータで塗布し、100℃で3分間乾燥して、粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層に、支持体の不織布面を圧着して貼り合せ、皮膚粘着シートを調製した。なお、支持体としては、厚さ2μmのPETフィルムと目付け量14g/mのPET不織布との積層体を用いた。
【0070】
<保持力>
上記で調製した皮膚粘着シートについて、凝集力の指標として保持力を以下のようにして評価した。すなわち、上記の各皮膚粘着シートを幅10mm、長さ50mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としては、アセトンを染み込ませたクリーンウェスで洗浄した清浄なベークライト板を使用した。上記試験片から剥離ライナーをはがし、2kgのローラを一往復転がして、幅10mm、長さ20mmの接着面積で上記被着体に圧着した。これを40℃で20分保存した後、上記被着体を40℃の環境下に垂下し、上記試験片の自由端に300gの荷重を付与して、試験片が被着体から落下するまでの時間を計測した。ただし、実施例1の粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートについては、300gの荷重を用いた場合には24時間以上脱落せず、差を確認できなかったため、荷重を500gとして評価した。また、より詳細に評価するため、比較例2の粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートについては、300g、500gの両方の荷重で測定を実施した。
【0071】
<チューブ固定性試験>
上記の各粘着シートを幅12mm、長さ55mmに切断して試料とした。また、皮膚のモデルとして、脱脂して延伸したコラーゲン膜を、平坦な台上に両面テープで固定したものを用いた。内径3mm、外径5mm、長さ70mmの塩化ビニル製のチューブを直径20mmの円弧状に曲げ、そのうちの2箇所を横断するように、上記試料にて上記コラーゲン膜上に固定し、3時間および19時間経過後の接着状態を目視によって判定した。チューブ固定性は、19時間経過後においても接着が認められた場合を○、19時間経過までにチューブの脱落が見られた場合を×として評価した。また、3時間および19時間経過後のチューブ末端間移動距離を測定した。円弧状に固定した直後のチューブ末端間距離は23mmであるため、これを初期値として、次式よりチューブ末端間移動距離を求めた。
チューブ末端間移動距離(mm)=[各時間での末端間距離]−[初期値(23mm)]
【0072】
上記の保持力評価及びチューブ固定性試験の結果を表1に示す。また、上記実施例1〜3および比較例1〜3の各粘着剤組成物について、各単量体より構成されるホモ重合体のガラス転移温度(Tg)より算出したTgを、表1に併せて示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1より明らかなように、実施例1の粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートについては、保持力の評価において、荷重を500gとした場合でも、160分以上脱落せず、高い接着力および凝集力が認められた。また、上記皮膚粘着シートは、チューブ固定性試験においても十分な皮膚固定性を示した。実施例2の粘着剤組成物を用いた皮膚粘着シートについては、荷重を300gとした場合には、十分な接着力および凝集力を示し、チューブ固定性も良好であった。比較例1の粘着剤組成物を用いた皮膚粘着シートについては、荷重を300gとした場合でも脱落し、皮膚接着力および凝集力は十分ではなかった。なお、比較例2の粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートについては、接着力および凝集力並びにチューブ固定性は十分であった。しかし、データは示していないが、後述の皮膚透過性試験における皮膚透過性は低いものであった。
【0075】
[実施例4]粘着剤組成物
実施例1で調製したアクリル系共重合体溶液に、薬物としてプラミペキソール(PRA)を、アクリル系共重合体100部(固形分)あたり5.3部添加して、粘着剤組成物を調製した。なお、プラミペキソールは、下記(III)式の通り、その分子中に第1級アミノ基と第2級アミノ基を一つずつ有する。
【0076】
【化3】

【0077】
[比較例4]粘着剤組成物
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルへキシル72部、N−ビニル−2−ピロリドン25部、アクリル酸3部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチルに添加、混合し、60℃にて溶液重合させて、アクリル系共重合体(2−EHA/AA/N−VP=72/3/25)溶液(固形分:28重量%)を得た。上記アクリル系共重合体溶液に、薬物としてプラミペキソール(PRA)を、アクリル系共重合体100部(固形分)あたり5.3部添加して、粘着剤組成物を調製した。
【0078】
上記の実施例4および比較例4の粘着剤組成物を用いて、皮膚粘着シートを調製した。すなわち、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム製剥離シートの剥離面に、上記粘着剤組成物をアプリケータで塗布し、80℃で5分間乾燥した後、支持体として、厚さ25μmのPETフィルムを圧着し、貼り合せた。このようにして、皮膚粘着シート剤を調製した。
【0079】
<薬物透過性評価>
上記皮膚粘着シートについて、薬物透過性の評価を行った。すなわち、ヘアレスマウス摘出皮膚を縦型拡散セルに装着し、ドナーセルには上記の各製剤を、レシーバーセルには生理食塩液を適用し、所定時間毎にレシーバー液を採取して、透過したプラミペキソール量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。HPLCは、次の条件で行った。
(HPLC測定条件)
カラム:TSK−gel ODS−80Ts QA(5μm、150×4.6mmI.D.;TOSOH)
移動相:1%トリエチルアミン水溶液(pH7.0)/メタノール(80:20)
カラム温度:40℃
流速:0.7mL/分
検出器:紫外吸光光度計(測定波長262nm)
【0080】
薬物透過性の評価結果を図1に示す。図1より明らかなように、実施例4の医療用粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートにおいては、プラミペキソールが十分に皮膚を透過することが認められた。これに対して、比較例4の粘着剤組成物を用いて調製した皮膚粘着シートにおいては、プラミペキソールの皮膚透過はほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
上述したように、本発明によれば、薬物などの医療用有効成分を含有する場合において、そのような成分との反応による変性等が抑制され、当該成分の有効性を減殺するおそれがなく、貼付剤や貼付製剤の粘着剤層を形成した場合、皮膚面に対する良好な固定性を示し、カテーテルなどの医療用具に対しても優れた固定性を付与することのできる、医療用粘着剤組成物を提供することができる。本発明の医療用粘着剤組成物は、医療用の貼付剤や、貼付製剤の用途に特に適するものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上の単量体と、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの1種または2種以上の単量体とを含有する単量体成分を共重合してなるアクリル系共重合体を含む、医療用粘着剤組成物であって、
該単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の含有量が50重量%〜99.9重量%であり、(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体の含有量が0.1重量%〜20重量%であり、かつ、
該単量体成分が、カルボキシル基を有する単量体を実質的に含有しない、
医療用粘着剤組成物。
【請求項2】
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数1〜20のアルキル基を有する、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項3】
(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記単量体成分の全量に対する(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド単量体との合計の含有量が、60重量%以上である、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項5】
(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸2−エチルヘキシルから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項6】
(b)N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が−10℃以下である、請求項1に記載の医療用粘着剤組成物。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−126864(P2011−126864A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249329(P2010−249329)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】