説明

医療用装置及び制御方法

【課題】使用者の利き手に関係なく、使いやすいユーザインターフェースを提供する。
【解決手段】医療用装置100は、筐体101と、筐体に設けられた表示部103と、筐体に設けられた操作部104とを有し、表示部103に表示させている表示内容を、所定の条件下において、所定の角度だけ回転させる。そして、医療用装置は、表示部の表示内容を回転させた場合に、操作部104の各操作部材に割り当てられている機能を入れ替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用装置の電子化が進み、多くの医療用装置は、計測結果等を表示するために液晶パネルなどの表示器を有している。一般に、電子体温計や血糖計のように、長手形状の筐体を有する医療用装置では、筐体の長手方向に表示内容の横方向が一致するように表示が行なわれ、使用者は筐体を横方向に持って表示内容を読み取る。
【0003】
近年では、液晶パネルなどの表示器の高精細化が進み、その表示内容は、計測結果のみではなく、蓄積された計測結果を用いたトレンドグラフの表示、操作スイッチと連携して動作モード等を設定するためのメニュー表示やアイコン表示、等も行なわれる。すなわち、医療用装置の表示器における表示内容は多岐にわたるとともに、複雑化してきている。たとえば、特許文献1に示されるように、女性体温計においては、表示されたアイコンを用いた動作モードの選択や設定を、表示器の近傍に設けられた複数の操作ボタンの操作により行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−68839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、医療用装置の表示器における表示内容の方向は固定されている。例えば、特許文献1の女性体温計に示されるユーザインターフェースでは、表示器の表示内容を見ながら操作を行うためには、センサ部が左側になるように電子体温計を左手で持ち、右手で操作ボタンを操作するようになる。そして、使用者が右利きであろうが左利きであろうが、このような操作形態が強要されることになる。
【0006】
ボタン操作などの細かい操作は、当然のことながら利き手で行なう方が容易であり、表示内容を操作ボタンへの操作と連携させる場合、操作ボタンを操作する手は利き手であることが望ましい。よって、特許文献1は右利きの使用者には操作しやすいが、左利きの使用者にとっては若干操作性が落ちる。しかしながら、上述の電子体温計などの医療用装置のユーザインターフェースにおいて使用者の利き手を考慮したものはない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用者が使いやすいユーザインターフェースを提供可能な医療用装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る医療用装置は以下のような構成を備える。即ち、
筐体と、前記筐体に設けられた表示部と、前記筐体に設けられた操作部とを備える医療用装置であって、
前記表示部に表示内容を表示させる表示制御手段と、
所定の条件下において、前記表示部における表示内容を所定の角度だけ回転させる表示回転手段と、
前記表示回転手段により前記表示内容を回転させた場合に、前記操作部において、各操作部材に割り当てられている機能を入れ替える入れ替え手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用者の利き手に応じたユーザインターフェースを提供することが可能となり、使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る女性体温計の外観構成を示す図である。
【図2】女性体温計のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】女性体温計の表示部の表示内容と、操作ボタンとの連携を説明する図である。
【図4】女性体温計における表示処理を示すフローチャートである。
【図5】女性体温計における操作ボタンのレイアウトの変形例を示す図である。
【図6】表示形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る医療用装置としての女性体温計100の表側の外観構成を示す図である。図1において、101は、耐衝撃性、耐薬品性を備えた合成樹脂によって形成された本体ケースであり、後述する演算制御部や、ブザー部、電池(電源部)等が収納されている。102はステンレス製の金属キャップであり、内部にはサーミスタ(後述)等の温度計測部が接着剤により固定して収納されている(つまり、金属キャップ102は、サーミスタに対して体温(温度)を伝熱させるとともに、サーミスタを外部の衝撃等から保護する役割を担っている)。
【0013】
本体ケース101は長手形状の筐体であり、その表面上には、表示画面103と十字ボタン104が金属キャップ102とともに長手方向の中心軸に対して、線対称に設けられている。表示画面103は、数字・文字・図形(キャラクター、アイコン等)を表示可能な、ドットマトリックス液晶部等により構成されている。十字ボタン104は、表示画面103上に表示された表示内容に基づいて、女性体温計100に各種指示を入力するために用いられる。十字ボタン104は、表示画面103上に表示されたメニュー項目等の選択対象を選択状態にするための識別子(カーソル)を移動させるための指示(移動指示)を与える左ボタン111、右ボタン112を備える。また、カーソルの移動先の選択対象について、設定値を変更したりするための指示(変更指示)を与える上ボタン121、下ボタン122を備える。更に、カーソルの移動先の選択対象(またはカーソルの移動先の選択対象ついて、変更された設定値)を決定するための決定ボタン130を備える。なお、決定ボタン130は、女性体温計100の電源ON/OFFスイッチとしての役割も担っている。ただし、電源をON/OFFするためのスイッチは別途設けられてもよい。また、十字ボタン104以外に、他の機能を割り当てたスイッチが更に設けられていてもよい。
【0014】
さらに、図示しないが、女性体温計100には、パーソナルコンピュータ(PC)などをホストとして接続するための外部通信部(コネクタ等を含む)も備えられている。また、定時測定を促すための目覚まし機能も備えられており、別途設定された時刻になると目覚まし音を鳴らしてユーザに体温測定を促すよう構成されているものとする。
【0015】
次に、女性体温計100のシステム構成について図2を参照しながら説明する。図2は、女性体温計100のシステム構成を示す図である。
【0016】
図2に示すように、女性体温計100は、温度を計測しそれをデジタル値として出力する温度計測部210と、計測された温度から予測温度を演算すると共に女性体温計100全体を制御する演算制御部220と、測定結果を表示する表示画面103やバックライト用のLED231を備えた表示部230と、目覚まし音等の音声を出力するブザー部240と、ユーザからの操作を受け付ける操作部250と、各部に電源を供給する電源部260と、加速度センサ270とを有する。操作部250には、上述した左ボタン111、右ボタン112、上ボタン121、下ボタン122、決定ボタン130からなる十字ボタン104などが含まれ、ユーザからの各種指示を受け付ける。
【0017】
温度計測部210は、並列に接続された感温部に設置されたサーミスタ及びコンデンサと、測温用CR発振回路とから構成され、サーミスタからの温度に対応して発振周波数が変化する。カウンタ226は、温度計測部210からの発振信号をカウントし、温度をデジタル量として出力する。なお、温度計測部210の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0018】
また、演算制御部220は、各種のデータを一時記憶するRAM223と、体温測定に必要なパラメータや予測式プログラム等を格納したROM(コンピュータ読取可能な記憶媒体)222と、時刻及び日付を管理するタイマ224とを備える。更に、演算制御部220は、表示部230を制御するための表示制御部227と、測温用CR発振回路の発振信号をカウントするカウンタ226と、ROM222の予測式プログラムに従い予測演算等を行う演算処理部221とを備える。また、演算制御部220は、カウンタ226や演算処理部221、表示制御部227を制御する制御回路225を備える。なお、測定値などを記憶する一時記憶領域には、不揮発性の書き換え可能メモリを用いるようにしてもよい。例えば、電源オフ時にもRAM223の一部領域をバッテリーでバックアップして不揮発性領域を形成し、そこに測定値などを記憶するようにしてもよい。
【0019】
表示制御部227は、本体ケース101である筐体の長手方向を横方向とした表示内容を表示部230の表示画面103上に表示する。長手方向と直交する方向が表示の上下方向となり、図1(A)では金属キャップ102を左側とした場合に表示内容が正立するように表示されている。表示回転部228は、表示画面103の表示内容を180度回転させる。表示回転部228により、本実施形態の女性体温計100は、図1(A)に示す表示状態と図1(B)に示す表示状態を得ることができる。図1(B)では、図1(A)表示内容が180度回転されており、金属キャップ102を右側として観察した場合に表示内容が正立する。演算処理部221が有する入れ替え部229は、表示回転部228により表示内容が回転された場合に、操作部250における操作部材の機能(本実施形態では十字ボタン104の上下左右ボタンの機能)を入れ替える。
【0020】
次に、本実施形態の女性体温計100の表示画面103に表示される表示内容と、十字ボタン104による操作の連携の一例について、図1(A)に示した表示状態の場合について説明する。図3(A)は、女性体温計100の表示画面103に表示される表示内容を示す図である。図3(A)において、301は女性体温計100の各種機能を選択するための選択機能表示領域である。選択機能表示領域301に表示された各絵文字(アイコン)は、左から順に、メモ入力機能、次回生理日表示機能、次回排卵日表示機能、目覚まし時刻設定機能、音量設定機能、時刻設定機能を選択するためのアイコンである。302はメモ入力機能が選択された際に、入力されるメモ内容を選択するための選択メモ表示領域である。選択メモ表示領域302に表示された各絵文字(アイコン)は、左から順に、生理日、生理痛、性交、飲薬、発熱、不正出血、おりものを示しており、左右ボタンの操作により所望のアイコンを選択することでメモ入力を行なえる。
【0021】
303は測定データ表示領域であり、測定された体温データを表示したり、過去の所定日数分の体温データをトレンドグラフとして表示したりする。304は設定情報表示領域であり、音量設定機能等、ユーザが設定した設定内容を表示する。なお、本実施形態に係る女性体温計100では、音量設定機能を用いて音量を設定する際に、音量を変更するための操作を行った場合、当該操作を行ったタイミングで、変更後の音量による音声が出力されるよう構成されているものとする。このように、変更した音量を、実際にユーザがその場で視聴できる構成とすることで、ユーザは最適な音量設定を行うことが可能となる。305は現在日時表示領域であり、現在の日付(年月日)または時刻(時分)が表示される。306は内部状態表示領域であり、女性体温計100の内部状態を示す情報(例えば、電池の残量等)が表示される。
【0022】
左ボタン111または右ボタン112を操作することにより、選択機能表示領域301に表示されている任意のアイコンを選択することができる。この際、左ボタン111が押されるたびに、図3(B)に示されるようにアイコンの選択枠311が左方向へ移動し、右ボタン112が押されるたびに図3(C)に示されるように選択枠311が右方向へ移動する。例えば、図3(B)の状態で決定ボタン130が押されると、選択枠311により指定されている機能(ここでは時刻設定機能)が起動し、現在日時表示領域305における日付や時刻の設定等が可能となる。この状態で、左ボタン111や右ボタン112を操作することで「年」「月」「日」等の設定項目を選択し、上ボタン121、下ボタン122により設定項目の値を設定することができる。ここで、上ボタン121は図3(D)に示すように設定値を増加させ、下ボタン122は図3(E)に示すように設定値を減少させる機能を有する。なお、図で0〜9の間で数値が増減する様子を示したが、設定項目が年の場合は00〜99の範囲で、設定項目が月の場合は01〜12の範囲で、設定項目が日の場合は01〜31の範囲で増減するように構成される。
【0023】
表示回転部228は、所定の条件下で表示画面103に表示中の表示内容を180度回転させる。表示内容を180度回転させる所定の条件として、本実施形態では、加速度センサ、好ましくは3軸加速度センサ270からの信号を利用する。すなわち、表示回転部228は、女性体温計100の長手方向と直交する方向に関して女性体温計100の上下方向を判定し、現在表示中の表示内容の上下方向が、判定された上下方向と異なるという状況が所定秒、例えば、1秒間継続した場合に表示内容を180度回転させる。なお、表示内容を180度回転させる所定の条件についての上記構成は一例であることは言うまでもない。例えば、表示内容を180度回転させる所定の条件として、操作部の所定の操作部材に対する所定操作(たとえば図1(A)で下方向の操作が割り当てられた下ボタン122を5秒以上継続して押下するなど)を検出したこととしてもよい。表示内容を180度回転する処理により、例えば、図1(A)に示される表示状態から図1(B)に示される表示状態へと表示が切り替わる。
【0024】
たとえば、図1(A)の状態の女性体温計100では、右手で十字ボタン104を操作できるので、右利きの使用者にとって好都合な状態である。他方、図1(B)の状態の女性体温計では、左手で十字ボタン104を操作できるので、左利きの使用者にとって好都合である。さて、図1(A),(B)では、女性体温計100は180度回転して用いられているため、左ボタン111と右ボタン112の左右の配置、上ボタン121と下ボタン122の上下の配置が入れ替わっている。したがって、図1(B)の状態で女性体温計100を使用する場合、入れ替え部229は、選択枠311を左方向へ移動する機能(図3(B))を右ボタン112が有し、選択枠311を右方向へ移動する機能(図3(C))を左ボタン111が有するように、操作ボタンに割り当てられている機能を入れ替える。同様に、入れ替え部229は、設定値を増加させる機能(図3(D))を下ボタン122が有し、設定値を減少させる機能(図4(E))を上ボタン121が有するように操作ボタンに割り当てられている機能を入れ替える。なお、図1(B)の状態とした場合に、下ボタン122に割り当てられていた上述した表示内容の方向を切り替える機能を上ボタン121に割り当てるようにしてもよい。
【0025】
以上のように、表示内容を180度回転するとともに、十字ボタン104の上下ボタンどうしと左右ボタンどうしにおいて機能を入れ替えることで、すなわち、増減という対称的な機能を持つ1対のボタンどうし、左右移動という対称的な機能を持つ1対のボタンどうしにおいて機能を入れ替えることで、図1(A)と図1(B)の状態で同様の操作が可能となる。そのため、使用者が右利きであるか左利きであるかに関わらず操作性を維持することができる。また、使用者の利き手に関する操作性だけでなく、使用者の使用状況に応じた操作性も維持することができる。例えば、右利きの使用者が右手に何かを持った状態或いは右手がふさがった状態で、もう一方の左手で女性体温計を操作せざるを得ない状況のときでも、表示画面を手で覆うことなく、女性体温計を反転させることで不便なく操作することができる。
【0026】
以上説明した処理を、図4のフローチャートを参照して更に、説明する。図4に示す処理は、女性体温計100に電源が投入されることで開始される。
【0027】
演算処理部221は、RAM223の不揮発性領域(電源オフの間も電池によりデータが保持される領域)から上下方向情報を読み出し、この上下方向情報にしたがって表示内容の上下を決定する。表示制御部227は、決定された上下にしたがって、表示内容を表示画面103に表示する。この上下方向情報は、前回に装置の電源がオフされた時点における当該装置(表示内容)の上下方向を示している。したがって、女性体温計100に電源が投入されると、表示内容は、まず前回の電源オフ時の上下方向にしたがって表示画面103に表示されることになる。なお、電源投入時の上下方向の決定はこれに限られるものではなく、例えば、電源投入時の表示は、常に図1(A)に示す状態というように、固定としてもよい。或いは、過去の利用において使用頻度の高い方向を選択するようにしてもよい。この場合、例えば、演算処理部221は、図1(A)の表示状態で表示した時間と図1(B)の表示状態で表示した時間をそれぞれRAM223に記憶しておき、表示した時間の長い方の表示状態を、電源投入時の初期の表示方向に決定する。
【0028】
ステップS402において、演算処理部221は、女性体温計100の上下方向を判定する。上述したように、本実施形態では、演算処理部221は、加速度センサ270の検出信号を利用して女性体温計100の上下方向を判定する。
【0029】
次に、ステップS403において、演算処理部221は、表示中の表示内容の上下方向がステップS402で判定された上下方向と一致するか否かを調べる。両者が不一致の場合はステップS404へ、両者が一致する場合はステップS408へ処理が進む。
【0030】
演算処理部221は、ステップS404において不一致な状態の継続時間をカウントし、そのカウントに基づいて、ステップS405において不一致な状態の継続時間が1秒を経過したかを判定する。ステップS405において、不一致な状態の継続時間が1秒を経過していないと判定された場合は、処理はステップS402に戻る。他方、ステップS405において、不一致な状態の継続時間が1秒を経過したと判定されると、ステップS406において、演算処理部221は表示内容を180度回転させるように制御回路225に指示する。この指示を受けた制御回路225は、表示回転部228により表示内容を現在の状態から180度回転させて表示画面103に表示させる。
【0031】
そして、ステップS407において、現在の上下方向を示すように上下方向情報を更新して、RAM223の不揮発性領域に記録する。この上下方向情報は、電源投入時にステップS401で使用されることになる。その後、処理はステップS402に戻り、上述した処理が繰り返される。また、ステップS408では、演算処理部221は、ステップS404でカウントした継続時間をリセットする。なお、所定のボタン(たとえば下ボタン)の長押しにより表示内容の表示方向を回転させる場合は、上述のS403〜SS405の処理を当該所定のボタンが長押しされたか否かの判定処理とする。そして、長押しされたと判定された場合に処理をS406に、そうでない場合に処理をS408に進めるようにすればよい。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の女性体温計によれば、使用者が右利きか左利きかに応じて持ち方を変えた場合に、常に正立した表示内容を提供できるとともに、その操作性も維持される。
【0033】
なお、上記実施形態では、操作部250が十字ボタン104を有する例を説明したが、操作部250の構成はこれに限られるものではない。例えば、図5(A)や(B)に示すように、上ボタン121と下ボタン122と決定ボタン130のような構成でもよい。また、図5(C)に示すように、上下左右のボタンが配置されたような構成にも適用できる。いずれの場合においても、表示内容の回転とともに、「左」と「右」、「上」と「下」、「増」と「減」といったように、対称的な機能が割り当てられた1対の操作ボタンにおいて、機能の入れ替えが行なわれる。
【0034】
なお、上記実施形態では、操作部250と表示部230の表示画面103が、本体ケース101の同一の面上に配置されているが、これに限られるものではない。操作部250と表示画面103が本体ケース101の対向する面に配置されてもよい。すなわち、表示画面103が表面に、操作部250(たとえば、十字ボタン104)が裏面に配置されてもよい。また、操作部250の一部の操作ボタンを表面に、他の操作ボタンを裏面に配置してもよい。なお、表面と裏面に配置された操作ボタンに1対の機能が割り当てられている場合は、表示内容の回転に伴う機能の入れ替えは行わない方が好ましい。女性体温計100を180度回転させて使用しても、表面と裏面の関係は変わらないためである。すなわち、表示内容の回転に伴って機能の入れ替えが行なわれる操作ボタンの対は、表面か裏面のいずれか一方の同一面上に配置された操作ボタンとするのが好ましい。
【0035】
また、同一面上に配置された、対称的な機能を有する1対の操作ボタンは、180度の回転対称性を有するように配置、形成されることが好ましい。例えば、図5(C)において、上ボタン121と下ボタン122、左ボタン111と右ボタン112はそれぞれ180度の回転対称性を有するように構成されている。このような操作ボタンの構成によれば、女性体温計100を180度回転させて使用する場合に、対称的な機能を持つ1対の操作ボタンについて、操作ボタンの相対的な位置関係が維持されるからである。
【0036】
又、本体ケース101を形成する筐体は、図1に示すように長手方向に対称軸を有する線対称形状を有し、表示画面103と操作部250の一部である十字ボタン104は、その対称軸について線対称になるように配置されている。このような筐体の形状、表示画面103や十字ボタン104の配置によれば、図1(A)、(B)のいずれの状態で女性体温計100を用いることとなっても、筐体の外形、表示画面、十字ボタンの関係がほぼ同一に保たれることになり、好ましい。ただし、本発明はこのような構成に限られるものではなく、筐体の外形は厳密に線対称である必要はないし、表示画面と操作ボタンが同一の対称軸について線対称である必要もない。
【0037】
また、上記実施形態では、表示内容を180度回転することにより、表示画面103が180度回転した状態で観察された場合に正立した表示内容を提供するようにしたがこれに限られるものではない。すなわち、表示画面103が所定角度だけ回転した場合に正立した表示内容を提供できるように画面を切り替えるものであればよい。なお、例えば、表示画面103の90度回転に対応するべく表示内容を90度回転した場合、十字ボタンの上下ボタンと左右ボタンの機能を入れ替えることになる。例えば、上ボタン121に右ボタンとしての機能を、下ボタン122に左ボタンとしての機能を割り当て、左ボタン111に上ボタンとしての機能を、右ボタン112に下ボタンとしての機能を割り当てる。
【0038】
また、回転後の表示画面103において表示内容が正立していればよく、表示内容を回転したものでなくてもよい。図6はそのような表示切り替えの一例を示す図である。図6(A)は、通常の表示内容であり、図6(B)は垂直反転のように上下が入れ替わった表示内容を示している。また、図6(C)では、選択機能表示領域301や選択メモ表示領域302におけるアイコンの順序がひっくり返った表示内容となっている。更に、図6(D)では、表示内容右半分と左半分においてそれぞれの表示内容を180度回転させたもので、表示内容の左側と右側を入れ替えたような表示内容としている。また、回転前後の表示内容として図6(A)から図6(D)に示したような表示形態のいずれを用いるかを使用者が選択可能としてもよい。例えば、図1(A)の状態では図6(B)の表示形態で、図1(B)の状態では図6(D)の表示形態で表示するように、使用者が設定できるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、医療用装置として女性体温計を用いて説明したが、本発明は、血糖計や輸液ポンプなど種々の医療用装置に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
100・・・女性体温計、101・・・本体ケース、102・・・金属キャップ、103・・・表示画面、104・・・十字ボタン、111・・・左ボタン、112・・・右ボタン、121・・・上ボタン、122・・・下ボタン、130・・・決定ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体に設けられた表示部と、前記筐体に設けられた操作部とを備える医療用装置であって、
前記表示部に表示内容を表示させる表示制御手段と、
所定の条件下において、前記表示部における表示内容を所定の角度だけ回転させる表示回転手段と、
前記表示回転手段により前記表示内容を回転させた場合に、前記操作部において、各操作部材に割り当てられている機能を入れ替える入れ替え手段と、を備えることを特徴とする医療用装置。
【請求項2】
前記筐体は長手形状を有し、
前記表示制御手段は、前記筐体の長手方向と前記表示内容の横方向とを一致させて、前記表示内容を前記表示部に表示し、
前記表示回転手段は、所定の条件下において、前記表示内容を180度回転させ、
前記入れ替え手段は、前記操作部のうち対称的な機能を割り当てられた1対の操作部材において、各操作部材に割り当てられている機能を入れ替える、ことを特徴とする請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記長手方向に直交する方向について前記表示部の上下を決定する決定手段を更に備え、
前記表示回転手段は、前記決定手段で決定された前記表示部の上下が現在表示されている前記表示内容の上下と不一致であった場合に、前記表示内容を180度回転させる、ことを特徴とする請求項2に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記操作部の所定の操作部材に対する所定操作に応じて前記決定された上下を入れ替えることを特徴とする請求項3に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記決定手段は、加速度センサにより判定される上下方向にしたがって、前記表示部の上下を決定することを特徴とする請求項3に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記表示部と前記操作部は前記筐体の同一面上に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記表示部と前記操作部は前記筐体の対向する別々の面上に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記操作部は十字ボタンを含み、
前記入れ替え手段は、前記十字ボタンの上下ボタンと左右ボタンのそれぞれにおいて機能を入れ替えることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項9】
前記表示制御手段による前記表示内容の上下方向は、装置の電源がオフされた時点の上下方向であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項10】
前記1対の操作部材は、180度の回転対称性を有するように配置、形成されていることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記長手方向に対称軸を有する線対称形状を有し、
前記表示部と前記操作部の少なくとも一部は、前記対称軸について線対称であり、
前記医療用装置は、女性体温計である、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医療用装置。
【請求項12】
筐体と、前記筐体に設けられた表示部と、前記筐体に設けられた操作部とを備える医療用装置の制御方法であって、
前記表示部に表示内容を表示させる表示制御工程と、
所定の条件下において、前記表示部における表示内容を所定の角度だけ回転させる表示回転工程と、
前記表示回転工程において前記表示内容を回転させた場合に、前記操作部において、各操作部材に割り当てられている機能を入れ替える入れ替え工程と、を有することを特徴とする医療用装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate