説明

医療用閉塞具

【課題】本発明は、経気管支的な気管支閉塞を行うことによって、肺気腫の外科的治療における上記の問題を解決することができ、かつ製作が容易な医療用閉塞具を提供することを最も主要な特徴とする。
【解決手段】気管支H4の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部H4bに留置可能な留置材2に分岐部H4bの1つの第1の分岐管腔H4cを密閉可能な第1の閉塞部9と、第1の分岐管腔H4cとは異なる他の第2の分岐管腔H4dを閉塞可能な第2の閉塞部10と、第1,第2の分岐管腔H4c,H4d間の接合部分の端縁部に係止可能な係止部11とを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検体の管腔臓器の内腔で使用され、例えば肺気腫の治療時に気管支を閉塞する際に使用される医療用閉塞具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、肺気腫は喫煙等による有害物質の吸引を主な原因として形成される、末梢気道、肺胞の広範な破壊を主体とした病変である。その病変の形成は慢性進行性であり、進行した患者では呼吸機能が著しく障害される。肺気腫による呼吸障害は、肺胞の破壊による弾力性の減弱と呼吸膜面積の減少を基本機能障害要素とし、複数の機能障害要因の組み合わせによって、換気効率の低下、呼吸予備能の減少によって引き起こされる。
【0003】
肺気腫病変部の肺組織は過膨張になっており、呼気に伴う十分な収縮ができない。胸腔内に占める病変の容積が大きくなるに従い、横隔膜や胸郭は膨張位にシフトし、呼吸運動の駆動力が減少する。また、残された正常な肺組織は胸腔内で十分に膨張できなくなり、換気効率が著しく低下する。
【0004】
肺気腫の主な治療方法は、気管支拡張薬、抗炎症剤、および合併する感染症を治療するための抗生物質の投与、および病変が進行した患者において行われる酸素の吸入である。これらの内科的な治療によって、患者の症状が緩和される場合もあるが、病態の進行を止めることはできない。
【0005】
一方、近年肺気腫患者に行われている外科的治療として、肺容量減少手術および肺移植がある。肺容量減少手術は、肺気腫病変が形成されている部位を外科的に切除することによって、残された正常な肺の機能を回復させる。これにより患者の生活の質を向上することが可能であるが、一般的に肺全体の約30%にあたる大きな部分の切除が必要であり、患者に対して大きな負担になるため手術後の回復に時間がかかる。
【0006】
肺気腫病変と正常な肺組織が混在している場合には、病変組織のみを分離することが困難であるために、正常な肺組織も切除せざるを得ない場合や、肺の外表面を含む漿膜の形状が変化して残存肺の膨張を妨げることもあるため、患者に残された正常な肺組織の機能を十分に保つことができない場合がある。また、切除部ラインは自然な状態と異なり、不均一な圧力がかかるため組織が破綻して気胸が発生することもある。肺気腫は進行性の病変であるため、やがて患者の残存肺にも病変が形成されてくるが、肺組織の切除は患者の身体への負担が大きいため、繰り返し実施することが困難である。
【0007】
一方、肺移植は患者の肺を正常な肺に交換することによって、肺気腫を根治できる唯一の方法である。しかし、患者への身体負担は非常に大きく、免疫学的問題やドナーの確保など、移植医療に特有の問題がある。肺容量減少手術および肺移植は、いずれも大きな手術が必要であるため、治療には莫大な費用がかかるという問題もあり、容易に実施できるものではない。
【0008】
また、特許文献1には上記のような肺気腫の外科治療上の問題点を解決するための道具として、肺気腫病変部に分布する気管支を閉塞することによって肺気腫を治療する閉塞具が記載されている。この閉塞具には閉塞具本体の外周部位に生体組織に引っ掛けて係止するための係止部材を設ける構成になっている。そして、この閉塞具を体内に留置する場合には閉塞具本体の外周の係止部材を生体組織に引っ掛けて係止することにより、閉塞具を体内の所望の位置に留置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第98/48706号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
肺気腫の外科的治療として行なわれている肺容量減少手術や肺移植では次のような問題がある。
(1)大きな外科手術を行うことによって患者の身体に大きな傷を作らなければならない。
(2)同じ患者に繰り返し実施することができない。
(3)病変が切除しやすい位置でなければ実施できない(肺容量減少手術)。
(4)残存肺の機能を十分に発揮させることができない場合がある(肺容量減少手術)。
(5)莫大なコストがかかる。
(6)手術後に気胸を発生することがある。
(7)ドナーの確保や移植片拒絶反応等の乗り越えるべき障害が大きい(肺移植)。
【0011】
また、特許文献1の閉塞具では閉塞具本体を体内の所望の位置に留置するために閉塞具本体の外周部位に係止部材を設ける構成になっている。しかしながら、肺気腫を治療する閉塞具は全体の大きさが極めて小さいものであるため、極めて小さい複数の部品同士を正しく組み付けることは技術的に難しい問題がある。そのため、閉塞具本体の外周部位に脱落防止のために特別な係止部材を設ける作業は難しく、閉塞具全体の製作が難しい問題がある。
【0012】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、経気管支的な気管支閉塞を行うことによって、肺気腫の外科的治療における上記の問題を解決することができ、かつ製作が容易な医療用閉塞具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分に留置可能な留置用弾性体からなり、前記分岐部分の1つの第1の分岐管腔を密閉可能な第1の閉塞部と、前記第1の分岐管腔とは異なる他の第2の分岐管腔を閉塞可能な第2の閉塞部と、前記第1,第2の分岐管腔間の接合部分の端縁部に係止可能な係止部とを前記留置用弾性体に設けたことを特徴とする医療用閉塞具である。
そして、本請求項1の発明では、肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分の1つの第1の分岐管腔を第1の閉塞部によって密閉し、第1の分岐管腔とは異なる他の第2の分岐管腔を第2の閉塞部によって閉塞した状態で、第1,第2の分岐管腔間の接合部分の端縁部に係止部を係止させることにより、留置用弾性体を分岐部分に留置させる。これにより、肺気腫病変に分布する気管支の内腔を留置用弾性体によって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止する。治療前の肺気腫病変には過剰な空気が貯留していることによって体積が非常に大きいが、この空気は病変部の気管支経由で局所に運ばれるものであるので、病変部への空気の供給を遮断すると、血流等に運ばれて貯留していた空気は自然に減少していく。その結果、空気によって膨張していた肺気腫病変部の体積が減小し、結果的に肺容量減少手術と同様の効果を得るようにしたものである。
【0014】
請求項2の発明は、被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分の近傍の管腔に留置可能で、且つ、前記管腔を密閉可能な外形を有する閉塞部材と、前記閉塞部材に取り付けられ、前記分岐部分を把持可能な閉塞部固定手段と、を有することを特徴とする医療用閉塞具である。
そして、本請求項2の発明では、肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分の近傍の管腔に閉塞部材を挿入した状態で、閉塞部固定手段によって分岐部分を把持させることにより、閉塞部材を分岐部分の近傍の管腔に留置させる。これにより、肺気腫病変に分布する気管支の内腔を留置用弾性体によって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するようにしたものである。
【0015】
請求項3の発明は、被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、形状記憶の性質のあるワイヤと、前記ワイヤに取り付けられた膜と、を有することを特徴とする医療用閉塞具である。
そして、本請求項3の発明では、予め直径が大きい特定の拡開形状を記憶させた医療用閉塞具のワイヤを好ましくは細長い形状に伸ばした状態で気管支内視鏡などによって肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔の管腔に挿入する。その後、留置目的部位で気管支内視鏡などから医療用閉塞具のワイヤを押し出すことにより、医療用閉塞具のワイヤを記憶させた特定の拡開形状に復元させ、この医療用閉塞具を気管支の内腔の管腔に留置させる。このとき、ワイヤに取り付けられた膜によって肺気腫病変に分布する気管支の内腔を閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するようにしたものである。なお、気管支内視鏡などによって管腔に挿入されるときのワイヤ形状は上記細長い形状に限定されるものではなく、例えばコイル形状でも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、経気管支的な気管支閉塞を行うことによって、肺気腫の外科的治療における問題を解決することができ、かつ製作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すもので、(A)は気管支の閉塞装置を示す斜視図、(B)は気管支の閉塞装置の縦断面図、(C)は留置材を示す側面図。
【図2】第1の実施の形態の留置材を気管支の内腔の分岐部分に留置させた使用例における閉塞直後の病変分布状態を示す概略構成図。
【図3】第1の実施の形態の留置材の使用例である局所閉塞状態を示す概略構成図。
【図4】第1の実施の形態の気管支の内腔の分岐部分に留置させた使用例における閉塞後、時間が経過した後の病変分布状態を示す概略構成図。
【図5】第1の実施の形態の留置材の第1の変形例を示すもので、(A)は留置材を示す縦断面図、(B)は(A)の留置材を挿入装置による操作で体内に挿入する作業を説明するための要部の縦断面図。
【図6】(A)は第1の実施の形態の留置材の第2の変形例を示す縦断面図、(B)は第1の実施の形態の留置材の第3の変形例を示す縦断面図、(C)は第1の実施の形態の留置材の第4の変形例を示す斜視図、(D)は第1の実施の形態の留置材の第5の変形例を示す斜視図。
【図7】第1の実施の形態の留置材の第6の変形例を示す縦断面図。
【図8】(A)は第1の実施の形態の留置材の第7の変形例を示す縦断面図、(B)は第7の変形例の留置材を気管支の内腔の分岐部分に留置させた使用例を示す概略構成図。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示すもので、(A)はT字状の留置材を示す斜視図、(B)はY字状の留置材を示す正面図、(C)は留置材を気管支の内腔の分岐部分に留置させた使用例を示す概略構成図。
【図10】(A)は第2の実施の形態のY字状の留置材の第1の変形例を示す縦断面図、(B)は第2の実施の形態のY字状の留置材の第2の変形例を示す斜視図。
【図11】本発明の第3の実施の形態を示すもので、(A)は気管支の閉塞装置全体を示す平面図、(B)は挿入装置の先端部の縦断面図、(C)は留置材を留置するときの状態を示す気管支の閉塞装置全体の平面図、(D)は(C)の状態の挿入装置の先端部の縦断面図。
【図12】第3の実施の形態の留置材の変形例を示すもので、(A)は留置材を収めたバルーンの収縮形状を示す縦断面図、(B)は留置材を収めたバルーンの膨張形状を示す縦断面図。
【図13】(A)は留置材を内部に入れたバルーンをカテーテルに接続した状態を示す概略構成図、(B)は留置材を内部に入れたバルーンをカテーテルから切り離した状態を示す概略構成図。
【図14】二重のカテーテルを利用してバルーンをカテーテルから切り離す装置を示すもので、(A)はバルーンを二重のカテーテルに接続した状態を示す要部の縦断面図、(B)は留置材を内部に入れたバルーンを二重のカテーテルから切り離した状態を示す要部の縦断面図。
【図15】気管支内視鏡のチャンネル内に挿入して使用可能な細い径の把持具によってバルーンを挿入させる装置を示すもので、(A)はバルーンを把持具で把持した状態を示す要部の側面図、(B)はバルーンを把持具から切り離した状態を示す要部の側面図。
【図16】気管支内に留置されたバルーンを有する留置材を回収するための装置を示すもので、(A)は回収装置の先端部を留置材に接近させた状態を示す要部の縦断面図、(B)は回収装置によって留置材を回収する状態を示す要部の縦断面図。
【図17】本発明の第4の実施の形態における留置材の挿入装置全体の概略構成図。
【図18】本発明の第5の実施の形態を示すもので、(A)は医療用閉塞具の留置材を示す側面図、(B)は気管支内腔から留置材を気管支壁に固定した状態を示す概略構成図。
【図19】本発明の第6の実施の形態を示すもので、(A)は透明キャップの側面にバルーンが取り付けられた状態を示す要部の縦断面図、(B)は内視鏡先端部に留置材の透明キャップを被せた状態を示す要部の縦断面図。
【図20】第6の実施の形態の留置材を気管支内視鏡によって目的とする気管支内腔に挿入した状態を示す概略構成図。
【図21】本発明の第7の実施の形態を示すもので、(A)は内視鏡先端部にシースおよび留置材を取り付けた状態を示す要部の斜視図、(B)は留置材収納部内の留置材を内視鏡の先端方向に押し出した状態を示す要部の斜視図。
【図22】本発明の第8の実施の形態を示すもので、(A)は留置材が直線的な第1の形状の状態を示す平面図、(B)は留置材がリング状若しくはコイル状の第2の形状の状態を示す平面図。
【図23】本発明の第9の実施の形態の医療用閉塞具における留置材を用いて気管支内腔の閉塞を行っている状態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1(A)〜(C)乃至図4を参照して説明する。図1(A),(B)は患者の体内の気管支を閉塞する際に使用される気管支閉塞装置1を示すものである。この気管支閉塞装置1は本実施の形態の医療用閉塞具である留置材(留置用弾性体)2と、この留置材2を体内に挿入するための挿入装置3とから構成されている。
【0019】
挿入装置3には留置材2を把持する把持具4が設けられている。この把持具4には細長いシャフト5の先端部に留置材2を把持する把持部6が配設されている。ここで、シャフト5は、可撓性あるいは硬性の材料で構成されている。さらに、シャフト5の基端部には把持部6を操作するためのハンドル7が設けられている。そして、この把持具4はシャフト5の先端部側が把持部6とともに体内に挿入される挿入部4aになっている。なお、把持具4の挿入部4aの外周面には、平滑な表面を持つシース8を装着することにより、患者の気道への刺激を最小限にすることが望ましい。
【0020】
また、図1(C)に示すように本実施の形態の留置材2は、気道粘膜を刺激しない生体に適合性のある柔軟な材料で構成された内腔を持たない棒状の部材である。なお、留置材2の両方の端部2a,2bは、気道への刺激を最小限にするために角を取った曲線状の形状としても良い。
【0021】
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の留置材2は、図1(A),(B)の挿入装置3によって図2に示すように患者Hの体内に挿入される。なお、図2中で、H1は胸腔、H2は肺、H3は気管、H4は気管支、H5は肺気腫病変である。そして、本実施の形態の留置材2は挿入装置3の把持具4によって把持された状態で、肺気腫病変H5に分布する気管支H4の内腔に挿入される。ここで、気管支H4の内腔に挿入される留置材2は図3に示すように中枢側の気管支H4aから気管支H4の分岐部H4b側に向けて挿入される。また、留置部位への留置材2の誘導は、X線透視や内視鏡を用いて行う。
【0022】
さらに、気管支H4の内腔に挿入された本実施の形態の留置材2は中央部で略V字状に折り曲げられる。そして、留置材2の一端部2a側は気管支H4の分岐部H4bより末梢側の2本の気管支H4c,H4dのうちの一方の気管支H4cである第1の分岐管腔H4cに挿入されてこの第1の分岐管腔H4cを密閉可能な第1の閉塞部9が形成される。また、留置材2の他端部2b側は他方の気管支H4dである第2の分岐管腔H4dに挿入されてこの第2の分岐管腔H4dを密閉可能な第2の閉塞部10が形成される。
【0023】
さらに、留置材2の第1の閉塞部9と第2の閉塞部10との間のV字状の屈曲部には気管支H4の分岐部H4bにおける第1,第2の分岐管腔H4c,H4d間の接合部分の端縁部に係止可能な係止部11が形成される。そして、本実施の形態の留置材2によって図3に示すように気管支H4の分岐部H4bより末梢側の2本の気管支H4c,H4dと、この分岐部H4bよりも中枢側の気管支H4aの3個所を閉塞することによって、目的とする気管支H4の内腔が完全に閉塞される。なお、図1(A),(B)の挿入装置3に代えて気管支内視鏡の鉗子等を用いて本実施の形態の留置材2を留置してもよい。
【0024】
次に、図2、図4に示すようにヒトの胸腔H1を示す模式図を用いて、本発明による肺気腫治療を説明する。図2は、肺気腫病変H5に分布する気管支H4の内腔を留置材2で閉塞した状態を示す。ここで、留置材2で閉塞した直後の時点では肺気腫病変H5は、大きな容積を持って患者の胸腔H1を占拠しているが、時間の経過に伴って病変部に貯留した空気が吸収されていき、図4に示すように肺気腫病変H5の体積は減少する。これにより、肺気腫病変H5によって押し潰されて換気機能が低下していた、患者の健康な肺H2が拡張可能となり、換気機能が改善することによって、患者の生活の質が向上する。
【0025】
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の留置材2の使用時には肺気腫病変H5に分布する気管支H4の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分の1つの第1の分岐管腔H4cを第1の閉塞部9によって密閉し、他の第2の分岐管腔H4dを第2の閉塞部10によって閉塞した状態で、第1,第2の分岐管腔H4c,H4d間の接合部分の端縁部に係止部11を係止させることにより、留置材2を分岐部H4bに留置させる。これにより、肺気腫病変H5に分布する気管支H4の内腔を留置材2によって完全に閉塞させ、肺気腫病変H5に新たな空気が流入することを防止できる。治療前の肺気腫病変には過剰な空気が貯留していることによって体積が非常に大きいが、この空気は病変部の気管支経由で局所に運ばれるものであるので、病変部への空気の供給を遮断することにより、血流等に運ばれて貯留していた空気は自然に減少していく。その結果、空気によって膨張していた肺気腫病変H5の体積が減少し、結果的に肺容量減少手術と同様の効果を得ることができる。そのため、従来の肺気腫の外科的治療のように患者の身体に対する大きな侵襲無しに、肺気腫を治療できる。
【0026】
また、本実施の形態では留置材2および挿入装置3の構成が簡単であり、低コストである。さらに、本実施の形態の留置材2による肺気腫の治療では繰り返しての治療に使用できる効果もある。
【0027】
なお、本実施の形態の棒状の留置材2の長さを長くすることにより、留置材2が気管支壁に接触する面積を大きくして留置材2が気管支内腔で移動し難くする移動防止作用をする構成にしてもよい。本実施の形態の留置材2は、例えば挿入装置と同様の構成の装置によって把持、回収可能であってもよい。
【0028】
また、図5(A),(B)は第1の実施の形態の留置材2の第1の変形例を示すものである。本変形例は第1の実施の形態の棒状の留置材2の外周面に挿入装置3の把持具4による操作を容易にするための突起21を設けたものである。この突起12の位置は、留置材2の外表面であればどこでも良い。
【0029】
そして、本変形例の留置材2を挿入装置3の把持具4による操作で体内に挿入する場合には図5(B)に示すように把持具4の先端部の把持部6によって留置材2の突起21を把持することができる。そのため、把持具4によって留置材2を把持する操作を容易にすることができる。
【0030】
また、第1の実施の形態の棒状の留置材2の別の構成として図6(A)〜(D)に示す各変形例のように構成しても良い。図6(A)は第1の実施の形態の留置材2の第2の変形例を示すものである。本変形例は、留置材2の少なくとも一個所に折り曲げやすくするための切り込み22を設けたものである。
【0031】
さらに、図6(B)は第1の実施の形態の留置材2の第3の変形例を示すものである。本変形例は、留置材2の両端部2a,2bに気道内での動揺を防止するためのフランジ状の抜け止め部23a,23bを設けたものである。なお、各抜け止め部23a,23bにX線不透過性の目印であるX線不透過マーカー24を設けても良い。
【0032】
また、図6(C)は第1の実施の形態の留置材の第4の変形例を示すものである。本変形例は、留置材2の外周面に軸方向に沿って複数の大径な凸部25を並設し、前後の凸部25間の凹部26との間で留置材2の直径が連続的に変化する構成にしたものである。ここで、前後の凸部25間の間隔は、例えば気管支内腔の凹凸に合わせて3mm〜10mm位に設定されている。
【0033】
さらに、図6(D)は第1の実施の形態の留置材2の第5の変形例を示すものである。本変形例は、留置材2の外周面に略円錐台形状のテーパー面27を形成し、1つの留置材2の直径が連続的に変化する構成にしたものである。なお、留置材2の形状によって、挿入装置3を変更して留置する。
【0034】
また、図7は第1の実施の形態の留置材2の第6の変形例を示すものである。本変形例は全体を柔軟な材料で筒状の形状にした留置材31を設けたものである。このように筒状の留置材31の場合には、挿入装置3の先端に被せるようにして挿入可能である。
【0035】
また、筒状の留置材31では、図7に示すように筒の両端部31a,31bを開口した状態で使用する単純な筒形の他、筒の両端部31a,31bのうちの一方を閉塞した形状で使用しても良い。そして、これらの筒の開口端部と閉塞端部との組み合わせによって、一方の末梢気管支のみを閉塞する場合や、両方の末梢気管支を閉塞させるなど、閉塞部位を変えることができる。
【0036】
また、図8(A),(B)は第1の実施の形態の留置材2の第7の変形例を示すものである。本変形例は図8(A)に示すように筒状の留置材31の一端部31a側に閉塞端部32、他端部31b側に開口端部33がそれぞれ設けられている。さらに、本変形例では留置材31の外周面の中央部分に円孔34が形成されている。
【0037】
そして、本変形例の留置材31の使用時には図8(B)に示すように例えば留置材31の一端側の閉塞端部32を末梢側の一方の気管支である第1の分岐管腔H4cに挿入させてこの第1の分岐管腔H4cを密閉した後、挿入装置3の先端を留置材31の中央部分の円孔34に挿入して留置材31の他端の開口端部33を末梢側の他方の気管支である第2の分岐管腔H4dの内腔へ導入することが可能である。この図8(B)に示すように第7の変形例の留置材31を気管支H4の内腔の分岐部分に留置させた使用例では末梢側の一方の気管支である第1の分岐管腔H4cを閉塞させ、末梢側の他方の気管支である第2の分岐管腔H4dを開通状態で保持することができる。
【0038】
そこで、本変形例の筒状の留置材31の場合には、閉塞端部32と、開口端部33と、円孔34との組み合わせによって留置後の気管支H4の内腔の閉塞状態を任意に変えることが可能である。なお、筒状の留置材31の外周面に長軸方向の切れ込み等を設ける構成にしても良い。
【0039】
また、図9(A)〜(C)は本発明の第2の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)の棒状の留置材2に代えて図9(A)に示すようにT字状の留置材41、あるいは図9(B)に示すようにY字状の留置材42を設けたものである。ここで、T字状の留置材41は図9(A)に示すようにこの留置材41の使用時に中枢側に位置する1本の中枢チューブ41aと、末梢側に位置する2本の末梢チューブ41b,41cとから構成されている。
【0040】
さらに、Y字状の留置材42も同様に図9(B)に示すように中枢側に位置する1本の中枢チューブ42aと、末梢側に位置する2本の末梢チューブ42b,42cとから構成されている。
【0041】
そして、本実施の形態の留置材41、42の使用時には気管支H4の分岐部H4bより末梢側の2本の気管支H4c,H4dを閉塞するため、中枢チューブ41a,42aあるいは末梢チューブ41b,41c、42b,42cの各内腔の少なくとも1個所が完全に閉塞されている。なお、中枢チューブ41a,42aと、末梢チューブ41b,41c、42b,42cの直径は、留置部位の気管支内径に合わせた径にすることが望ましい。
【0042】
次に、上記構成の本実施の形態の作用について説明する。図9(C)は、本実施の形態の留置材41を病変に分布する気管支分岐部H4bの気管支H4の内腔に留置した後の状態を示す。ここでは、気管支分岐部H4bよりも中枢側の気管支H4aの内腔には中枢チューブ41a、末梢側の2本の気管支H4c,H4dの内腔には末梢チューブ41b,41cがそれぞれ挿入されている。この状態では、末梢チューブ41b,41cが気管支分岐部H4bから枝分かれして末梢側に向けて広がっているために、末梢チューブ41b,41cが気管支H4の内腔での留置材2の動揺を防止する。
【0043】
また、留置材41は、末梢チューブ41b,41cの少なくとも一方が完全に閉塞されているので、留置した気管支分岐部H4bの末梢側の2本の気管支H4c,H4dの内腔の少なくとも一方が完全に閉塞される。なお、留置材41の全ての部分が中空の形状である場合には、留置後に栓等を用いて末梢チューブ41d,41cの少なくとも一方あるいは中枢チューブ41aを完全に閉塞する。
【0044】
そこで、本実施の形態では気管支H4の分岐部H4bにT字状の留置材41、あるいはY字状の留置材42を留置させることにより、末梢側の2本の気管支H4c,H4dを閉塞することができるので、第1の実施の形態と同様に肺気腫病変H5に分布する気管支H4の内腔をT字状の留置材41、あるいはY字状の留置材42によって完全に閉塞させ、肺気腫病変H5に新たな空気が流入することを防止できる。そのため、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態では特に、気管支H4の分岐部H4bの形状に近いT字状の留置材41、あるいはY字状の留置材42を設けたので、留置材の材質に関わらず気管支粘膜への刺激が少ない効果がある。さらに、気管支への固定が確実に行える効果もある。
【0046】
また、図10(A)は第2の実施の形態のY字状の留置材42の第1の変形例を示すものである。本変形例は、留置材42の中枢チューブ42aに栓をする閉塞部材44を設けたものである。ここで、留置材42の中枢チューブ42aの内周面には閉塞部材係止爪43が内方向に向けて突設されている。
【0047】
さらに、閉塞部材44は弾性のある材料で中枢チューブ42aの内腔と略同形状の中実部材によって形成されている。そして、この閉塞部材44の外径寸法は中枢チューブ42aの内径寸法と略同径に設定されている。さらに、閉塞部材44の一端部には挿入装置3による操作を容易にするために突起45が突設されている。
【0048】
そして、本変形例では留置材42の中枢チューブ42aが閉塞していない場合には、挿入装置3によって閉塞部材44を中枢チューブ42aの内腔に挿入することにより、留置材42の中枢チューブ42aに栓をすることができる。ここで、中枢チューブ42aの内部に閉塞部材44が挿入された場合には閉塞部材係止爪43が閉塞部材44の端縁部に係合し、中枢チューブ42aの内腔に閉塞部材44をしっかりと固定することができるようになっている。
【0049】
また、図10(B)に示す第2の実施の形態のY字状の留置材42の第2の変形例のように、留置材42の外周面にX線不透過性の素材、例えば金属のワイヤーなどで構成されたX線不透過マーカー46を設けても良い。
【0050】
なお、第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)の留置材2や、第2の実施の形態(図9(A)〜(C)参照)のT字状の留置材41、Y字状の留置材42は、挿入装置3との組み合わせによって使用される時に、挿入装置3による操作を補助するための突起や孔を有していても良い。また、これらの突起や孔を使用して一旦留置された留置材41、42は、回収可能であってもよい。さらに、これら第1実施の形態の留置材2や、第2実施の形態のT字状の留置材41、Y字状の留置材42は、中空で少なくとも一端が閉塞している形状の場合、閉塞面の材料を透明な部材で構成してもよい。この場合には、内視鏡の外側に第1実施の形態の留置材2や、第2実施の形態のT字状の留置材41、Y字状の留置材42を被せて留置操作をする際に、内視鏡の視野を妨げない効果がある。さらに、治療中および治療後の位置確認手段として留置材とともに、挿入装置3にもX線不透過性の目印であるX線不透過マーカーを設けても良い。
【0051】
また、図11(A)〜(D)は本発明の第3の実施の形態を示すものである。図11(A)は気管支の閉塞装置51を示すものである。この閉塞装置51は図11(B)に示すように本実施の形態の医療用閉塞具である留置材52と、この留置材52を体内に挿入するための挿入装置53とから構成されている。
【0052】
挿入装置53には体内に挿入される細長い挿入部54と、この挿入部54の基端部に連結された手元側の操作部55とが設けられている。ここで、挿入部54には細長い外套管56が設けられている。この外套管56の先端部には留置材52を収納するための留置材収納部57が設けられている。さらに、外套管56の内部には細長いワイヤー状の押し出し部材58が留置材収納部57の後方に進退自在に挿入されている。
【0053】
また、操作部55には略管状の細長い操作部本体59が設けられている。この操作部本体59には長穴状のガイド溝60が軸方向に延設されている。さらに、この操作部55には押し出し部材58の操作ツマミ61がガイド溝60に沿って移動自在に設けられている。この操作ツマミ61には押し出し部材58の基端部が接続されている。そして、操作ツマミ61を前後方向に動かすと、押し出し部材58は外套管56に対して軸方向に移動するようになっている。
【0054】
ここで、操作ツマミ61が図11(A)に示すように操作部本体59のガイド溝60の基端部(図11(A)中で右端部)位置に移動されている状態では図11(B)に示すように押し出し部材58の先端部は外套管56の内部に押込まれた状態で保持されるようになっている。そして、外套管56の内部には押し出し部材58の先端部分に留置材収納部57が形成され、この留置材収納部57内に留置材52を収納することができるようになっている。
【0055】
さらに、操作ツマミ61が図11(C)に示すように操作部本体59のガイド溝60の先端部(図11(C)中で左端部)位置に移動された場合には図11(D)に示すように押し出し部材58の先端部は留置材収納部57内へ入り、外套管56の先端位置まで押し出されるようになっている。これにより、留置材収納部57内の留置材52を外部に押し出すようになっている。
【0056】
また、留置材52は、挿入装置53の留置材収納部57の中に収められるときの、体積が小さな形状と、目的部位に留置される時の体積が大きな形状の2つの形状を取ることが可能な構成を有する。例えば、留置材52は体積比で10倍以上の膨張率を示すような、非常に大きな膨張性を有するスポンジなどで構成されている。そして、この留置材52は圧縮された形状で挿入装置53の留置材収納部57の中へ入れることが可能である。
【0057】
なお、スポンジ状の留置材52は圧縮された形状を維持するために外力や収納具などを必要としない構成でも良い。この様な構成を有するものとして、例えば空気中で圧縮形状を維持し、水分を吸収させることによって非常に大きく膨張させることが可能な材質のものが挙げられる。
【0058】
そして、本実施の形態の気管支の閉塞装置51でも第1実施の形態と同様の操作でスポンジ状の留置材52を気管支H4の分岐部H4bに留置させ、気管支H4の分岐部H4bより末梢側の2本の気管支H4c,H4dと、この分岐部H4bよりも中枢側の気管支H4aの3個所を閉塞することによって、目的とする気管支H4の内腔を完全に閉塞させることができる。そのため、第1実施の形態と同様の効果が得られる。
【0059】
さらに、本実施の形態では、挿入装置53の留置材収納部57の中に収められるときの、体積が小さな形状と、目的部位に留置される時の体積が大きな形状の2つの形状を取ることが可能なスポンジ状の留置材52を設けたので、1つの留置材72形状での留置対象となる気管支の直径の適用範囲が広い。
【0060】
また、図12(A),(B)は第3の実施の形態(図11(A)〜(D)参照)の留置材52の変形例を示すものである。本変形例は、バルーン71内に膨張性の材料、例えばスポンジ等からなる留置材72を収めたものである。このバルーン71には少なくとも一部に外空間との連通口73を有する。
【0061】
さらに、本変形例の留置材72は、外周面をバルーン71で覆われている。このバルーン71内に収められた留置材72の膨張性の材料は、挿入装置53の留置材収納部57に収納されている状態では図12(A)に示すように圧縮された縮小形状で保持されている。そして、体内への留置時に押し出し部材58によって留置材収納部57から留置材72が押し出された場合には留置材72が留置材収納部57の外に出た後、スポンジ自体の復元力によって図12(B)に示すようにバルーン71が自然に膨張して気管支内腔に留置されるようになっている。
【0062】
なお、バルーン71における留置材72の連通口73は留置後に閉塞可能な構成、例えば熱で溶着可能であるものや、鉗子等による操作によって機械的に閉塞可能であるものが望ましい。
【0063】
また、バルーン71を有する留置材72の挿入装置としては、図13(A)に示すように、細い径のカテーテル74によって手元側と連通される構成のものがよい。ここで、留置材72を構成する膨張材料を内部に入れたバルーン71は、カテーテル74の先端部に接続されている。このカテーテル74の手元側端部には開口部76と、この開口部76を開閉操作し、かつ開口部76を閉じた際に気密を保つ弁、例えば三方活栓75とが設けられている。
【0064】
そして、留置前には、図13(A)に示すようにカテーテル74の手元側端部の開口部76からバルーン71内の空気等を吸引して、バルーン71を縮小させて直径を小さくしておく。また、体内の留置部へ挿入した後、三方活栓75を操作してカテーテル74の手元側端部の開口部76を開くとカテーテル74を通してバルーン71内に空気が入り、バルーン71内の留置材72のスポンジが復元力によって膨張する。
【0065】
なお、カテーテル74からバルーン71内に入れるものは、気体のみではなく液体であってもよい。例えば、バルーン71内の膨張材料が水で膨張する材料である場合には、カテーテル74の手元側端部の開口部76から水を注入する。
【0066】
また、カテーテル74の先端部でバルーン71との接続部付近には、通電によって発熱する発熱体77が設けられている。この発熱体77には同軸ケーブル78の一端部が接続されている。この同軸ケーブル78の他端部は、カテーテル74の内側あるいは外側に沿って手元側へ達し、電源ボックス79に接続されている。
【0067】
そして、同軸ケーブル78に通電すると、発熱体77が発する熱によって図13(B)に示すように留置材72を収納したバルーン71がカテーテル74から切り離される。このとき、カテーテル74が切断された際の、カテーテル74の断端は溶着されて閉塞する。
【0068】
また、図14(A),(B)は留置材72を収納したバルーン71をカテーテル74から切り離す装置の変形例を示すものである。本変形例は二重管構造のカテーテル81を利用するものである。この二重管構造のカテーテル81には外側カテーテル82と、内側カテーテル83とが設けられている。そして、図14(A)に示すように外側カテーテル82および内側カテーテル83がそれぞれバルーン71に接続されている。
【0069】
さらに、外側カテーテル82は、バルーン71に接続された短い末端部82aと手元部分に達する長いカテーテル本体部82bとに分かれている。そして、留置前には図14(A)に示すように、内側カテーテル83の先端部は外側カテーテル82の末端部82aまで延設されている。
【0070】
また、留置時には内側カテーテル83を手元側にスライドさせることによって、図14(B)に示すように留置材72が収納されたバルーン71と外側カテーテル82の末端部82aとからなる留置ユニット84が、外側カテーテル82のカテーテル本体部82bおよび内側カテーテル83から脱落する。
【0071】
なお、バルーン71内の留置材72が手元側端部の開口部76からバルーン71内に液体等を注入する必要が無い構成である場合には、内側カテーテル83は中空である必要はない。
【0072】
また、図15(A),(B)は気管支内視鏡のチャンネル内に挿入して使用可能な細い径の把持具91によってバルーン71を挿入させる装置を示すものである。ここで、留置材72は、外側をバルーン71によって覆われた膨張性のある素材で構成され、バルーン71の一部に連通口73を有する。
【0073】
さらに、連通口73は把持具91によって把持できる部位に配置されている。そして、挿入前には図15(A)に示すようにバルーン71およびその中の膨張性素材の留置材72を十分に圧縮した状態で把持具91の把持部92で把持する。このとき、把持具91の把持部92で把持された状態では、バルーン71の連通口73が完全に閉塞することによってバルーン71の気密性が保たれる。
【0074】
また、留置材72を留置するときに図15(B)に示すように把持具91をバルーン71から外すと、バルーン71の連通口73が開いてバルーン71内の膨張性材料が膨張し、気管支を閉塞する。このとき、バルーン71内の膨張性の材料を膨張させるときに必要なものは、連通口73からバルーン71内へ注入する。
【0075】
また、気管支内視鏡のチャンネルを利用して留置材72を気管支に挿入する場合には、気管支内視鏡のチャンネル内を通過可能な細長い把持具91を、一旦内視鏡チャンネル内に挿入し、把持具91の先端部を内視鏡の先端部から突出させてから留置材72を把持することができる。
【0076】
このような方法では、留置材72の直径は内視鏡チャンネルを通過できるほど小さくする必要がないため、大きな留置材72を挿入することが可能であり、結果として径の大きな気管支を閉塞することが可能となる。
【0077】
また、図16(A),(B)は例えば、一旦気管支内に留置されたバルーン71を有する留置材72を回収するための装置101を示すものである。この回収装置101にはワイヤー状の細長い挿入部102の先端部に留置材72を把持するための把持部103とバルーン71に穿刺するための先端が鋭利な中空針104とが設けられている。この中空針104は、回収装置101の把持部103が閉じているときに把持部103内に位置し、把持部103を開いた時に露出する。
【0078】
また、この回収装置101の先端部は、気管支内視鏡105のチャンネル内に挿入されて気管支H4の内腔に留置された留置材72に到達する。そして、図16(A)に示すように把持部103を開いた状態で回収装置101の先端部を留置材72に押し付けることによって、中空針104の先端部はバルーン71を貫いてバルーン71の内腔に達する。このとき、中空針104によってバルーン71が破れてこのバルーン71の内外が連通し、バルーン71の内容物が外に漏れ出る。これによってバルーン71の緊張が緩むため容易に圧縮することが可能となる。
【0079】
その後、図16(B)に示すように回収装置101の把持部103を閉じてバルーン71を把持し、牽引して容易に気道外へ引き出すことができる。また、中空針104が手元側の操作部とチューブでつながっている場合には、中空針104を穿刺してバルーン71を把持した後、チューブの手元側から留置材72のバルーン71の内容物を吸引することによって、留置材72を小さくして容易に気道から除去できる。
【0080】
なお、回収装置101は、直径の比較的大きい単純なチューブ状の部材と、気管支内視鏡や把持具を組み合わせたものでも良い。そして、第3の実施の形態の気管支閉塞装置51は、留置材72が収納されたバルーン71と、挿入装置53と、この回収装置101とを組み合わせて構成しても良い。この場合には留置材72の回収が容易であるので、留置位置の変更や、治癒後に留置材72の除去が可能である。
【0081】
また、図17は本発明の第4の実施の形態を示すものである。本実施の形態は図13(A),(B)に示すバルーン71内の留置材72の構成を次の通り変更したものである。なお、これ以外の部分は図13(A),(B)の装置と同一構成になっており、図13(A),(B)の装置と同一部分には同一の符号を付してここではその説明を省略する。
【0082】
すなわち、本実施の形態ではバルーン71内の留置材111は流動性のある例えば液状等の第1の形状と、流動性の比較的小さな例えばゲル状あるいは固形等の第2の形状を持つ注入材によって形成されている。この留置材111である注入材の第1の形状から第2の形状への変化は、例えば2つの流動性のある液体を混合する等の方法で行われる。この様な性質を持つ材料としては、例えば特定のイオンを加えることによって液状からゲル状に変化する材料や、硬化剤を加えることによって液状から固形に変化するシリコン等の材料がある。
【0083】
また、留置材111を収納するバルーン71に接続されたカテーテル74は、単純な筒状のチューブ構造でも良い他、2つの内腔を持ち、2つの注入材を別々に注入できる2つのチューブ74a,74bを備えた構造でも良い。
【0084】
そして、本実施の形態ではバルーン71内の留置材111の内容物が流動性の低いものとすることによって、留置材111のバルーン71を変形しにくい性質にすることができる。また、バルーン71内の留置材111を流動性のある例えば液状等の第1の形状にすることにより、留置材111の形状を閉塞部位の気管支形状と一致させることが可能となる。
【0085】
また、図18(A),(B)は本発明の第5の実施の形態を示すものである。本実施の形態の閉塞装置では、図18(A)に示すように気管支H4の内腔に密着して気管支H4を閉塞するための留置材121の端部にクリップ形状の固定部122が接続されている。この固定部122は、気管支H4の内腔から留置材121を気管支壁に固定するもので、例えば気管支粘膜だけでなく気管支の軟骨に引っ掛けるクリップ123を有する。この固定部122のクリップ123は先端に鉤124を有し、気管支の軟骨を強力に把持することが可能である。なお、留置材121の固定部122はクリップ123の他、返しのある針状の部材で構成されていても良い。
【0086】
そして、本実施の形態では図18(B)に示すように、固定部122の位置を気管支軟骨気管支の分岐部H4bにすることによって、簡単・安全に固定可能である。固定部122が返しのある針で構成される場合にも、気管支の分岐部H4bであれば比較的安全に穿刺可能である。
【0087】
そこで、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、本実施の形態では留置材121の閉塞部の構成を簡単にできる。
【0088】
また、図19(A),(B)および図20は本発明の第6の実施の形態を示すものである。本実施の形態の留置材131は、内視鏡132の先端部に被せることが可能な直径を持つ透明キャップ133で構成されている。この透明キャップ133の先端部は透明な閉塞部材133aによって閉塞されている。そして、本実施の形態では図19(B)に示すように透明キャップ133は気管支内視鏡132の先端部に被せた状態で装着され、気管支内視鏡132によって気管支閉塞装置の挿入装置が形成されている。
【0089】
また、透明キャップ133の外周面には、例えば、図19(A)に示すように膨張可能なバルーン134が取り付けられている。このバルーン134には細径のカテーテル135の先端部が接続されている。このカテーテル135の基端部は手元側に延出されている。そして、手元側からこのカテーテル135を通してバルーン134内腔への物質の注入を行うことができる。なお、カテーテル135の先端部には例えば図13(A),(B)に示した発熱体77のような留置材131からの切り離し機構136が設けられている。
【0090】
そして、本実施の形態の留置材131の透明キャップ133は、図19(A)に示すように内視鏡132の先端部に被せられて図20に示すように目的とする気管支H4の内腔へ挿入される。ここで、内視鏡132の先端部が目的部位に到達した時点で、カテーテル135等を用いてバルーン134内腔への物質の注入を行うことにより、バルーン134を膨張させる。これによって、留置材131の外周面が気管支壁に密着するようにして気管支H4を閉塞する。その後、留置材131からカテーテル135を切り離すことによって留置材131の留置が完了する。
【0091】
そこで、本実施の形態では気管支内視鏡132によって留置材131を目的とする気管支H4の内腔へ挿入させ、この留置材131によって気管支H4を閉塞することができるので、本実施の形態でも第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)と同様の効果がある。
【0092】
また、本実施の形態では気管支内視鏡132を気管支閉塞装置の挿入装置として使用することができるので、特別な挿入装置を必要としない。さらに、留置材131を内視鏡132の先端部に被せる透明キャップ133によって形成したので、内視鏡132の挿入時に内視鏡132の視野を妨げない効果もある。
【0093】
また、カテーテル135を使わない構成として、透明キャップ133の側面に取付ける部材は、前述のバルーン134ではなく水分を含むことによって膨張する膨張性材料、例えば吸水性の高分子材料や乾燥時には圧縮された形状を保つスポンジのようなものでも良い。この場合には、透明キャップ133を気管支内視鏡132に装着した状態で気管支内に挿入し、目的の部位まで誘導したのち、吸収性材料が膨張して気管支壁に確実に固定される。この状態で、気管支内視鏡132のみを抜去する。さらに、透明キャップ133の側面の気管支壁に接触する部分を、シリコン等の生体適合性のある材料で構成しても良い。
【0094】
このような構成の場合には、透明キャップ133の側面の膨張性材料の接触部材を膨張させるためのカテーテル135を必要とせず、内視鏡132の先端に取り付けたまま可能な限り細い気管支に挿入して、気管支壁に密着するように留置材131を留置することができる。
【0095】
また、内視鏡132の先端部に被せられた留置材131を留置部位で取り外すための積極的な手段として、チャンネルを有する気管支内視鏡132では、チャンネルから液体や気体等の流体を注入し、留置材131と気管支内視鏡132との間の圧力を高める方法もある。
【0096】
また、図21(A),(B)は本発明の第7の実施の形態を示すものである。本実施の形態は第6の実施の形態(図19(A),(B)および図20参照)の留置材131の変形例を示すものである。
【0097】
すなわち、本実施の形態では第6の実施の形態のように透明キャップ133で構成される留置材131に代えてコイル141およびこのコイル141の周囲に接着された薄い膜142によって構成される留置材143が設けられている。
【0098】
さらに、気管支内視鏡132に被せて使用するシース144が設けられている。このシース144は、気管支内視鏡132の先端部の外周を覆っている先端シース144aと、この先端シース144a内に突没可能な細長い操作用シース144bとからなる。ここで、先端シース144aと、気管支内視鏡132の先端部との間には留置材143を収納する留置材収納部145が形成されている。
【0099】
そして、図21(A)に示すように操作用シース144bを留置材収納部145よりも後退させた後退位置で保持させている状態では留置材収納部145に留置材143を収納可能である。この状態で、留置材143は、シース144の先端部の留置材収納部145に格納され、気管支内視鏡132の先端部外周面に取り付けられている。
【0100】
また、この状態で、図21(B)に示すように操作用シース144bを先端方向に押し出し操作することにより、留置材収納部145内に収納されている留置材143を先端方向に押し出し、留置材収納部145の外に押し出すことができる。ここで、留置材143のコイル141に例えば形態記憶合金等の特定の形態に復元する性質のあるものを使用すれば、留置材収納部145から留置材143を押し出したときに、シース144内に位置する場合よりも直径が大きい形状に拡開させることが可能である。
【0101】
そして、本実施の形態の留置材143は、シース144の先端部の留置材収納部145に格納され、気管支内視鏡132の先端部外周面に取り付けられた状態で、目的とする気管支H4の内腔へ挿入される。ここで、内視鏡132の先端部が目的部位に到達した時点で、操作用シース144bを先端方向に押し出し操作することにより、留置材収納部145内に収納されている留置材143を先端方向に押し出す。これによって、留置材143の外周面が気管支壁に密着するようにして気管支H4を閉塞する。
【0102】
そこで、本実施の形態では気管支内視鏡132によって留置材143を目的とする気管支H4の内腔へ挿入させ、この留置材143によって気管支H4を閉塞することができるので、本実施の形態でも第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)と同様の効果がある。
【0103】
また、本実施の形態では第6の実施の形態と同様に気管支内視鏡132を気管支閉塞装置の挿入装置として使用することができるので、特別な挿入装置を必要としない。なお、留置材143のコイル141に例えば形態記憶合金等の特定の形態に復元する性質のあるものを使用することにより、留置材収納部145から留置材143を押し出したときに、シース144内に位置する場合よりも直径が大きい形状に拡開させることができるので、内径の大きな気管支を閉塞可能である。
【0104】
また、図22(A),(B)は本発明の第8の実施の形態を示すものである。本実施の形態では形状記憶材料、例えば形状記憶合金等で構成された留置材151が設けられている。この留置材151は図22(A)に示すように直線的な軸部152の第1の形状と、図22(B)に示すように軸部152をリング状、若しくはコイル状に変形させた第2の形状とに変形可能になっている。そして、本実施の形態の留置材151は細いチューブ内に入れられるなど外力によって第1の形状に変形することが可能であるが、外力が無い場合には第2の形状で保持されている。さらに、この留置材151の軸部152には長軸に沿って薄い膜153が取り付けられている。
【0105】
そして、本実施の形態の留置材151は図22(A)に示すように、軸部152を直線的な第1の形状に変形させた状態で、この留置材151は細いカテーテルや内視鏡のチャンネルを通過可能である。そのため、留置材151は第1の形態の状態で、気管支内へ挿入される。
【0106】
また、留置材151が第1の形態の状態で、細いカテーテルや内視鏡のチャンネルを通過したのち、気管支内で細いカテーテルや内視鏡のチャンネルから押し出されることにより、留置材151の軸部152に作用する外力が無くなるので、この場合には留置材151の軸部152は第2の形状に復帰する。そして、図22(B)に示すように留置材151の軸部152が第2の形状に復帰した状態では、この軸部152に取り付けられた膜153はリング状あるいはコイル状の軸部152の中心部で互いに重なり合うことによって、気管支を閉塞する。
【0107】
そこで、本実施の形態では図22(A)に示すように、軸部152を直線的な第1の形状に変形させた状態で、この留置材151を細いカテーテルや内視鏡のチャンネルを通して目的とする気管支H4の内腔へ挿入させ、気管支H4の内腔で図22(B)に示すように留置材151の軸部152を第2の形状に復帰させることにより、この留置材151によって気管支H4を閉塞することができるので、本実施の形態でも第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)と同様の効果がある。
【0108】
また、本実施の形態では一旦留置した留置材151を、気管支内視鏡用の鉗子等で把持して内視鏡チャンネルに引き込んで、第1の形状にすることによって回収することができる。
【0109】
なお、留置材151の軸部152に取り付けられた膜153は、加熱による溶着や、生体適合性のある接着剤、例えばフィプリン糊などによって互いに接着しても良い。
【0110】
また、留置材151の軸部152は、気管支内への留置後の脱落や動揺を防止するために、第2の形状に復帰した際に外周面側にあたる部位に、突起などの抜け止めを設けても良い。
【0111】
また、図23は本発明の第9の実施の形態を示すものである。本実施の形態では液体と固体の2つの形状を取ることが可能な、生体適合性のある材料で構成された留置材161が設けられている。この様な性質を有する材料として、血液、紫外光等の光線によって重合する樹脂、および硬化剤と混合することによって液状から固形に変化するシリコン樹脂等がある。
【0112】
さらに、本実施の形態の閉塞装置では、液状の留置材161を気管支H4の内腔へ注入するためのカテーテル162が設けられている。このカテーテル162は例えば気管支内視鏡163のチャンネル164に挿入され、この気管支内視鏡163のチャンネル164を通して気管支H4の内腔へ挿入するようになっている。
【0113】
また、留置材161の性状によって、カテーテル162は1本、あるいは複数設けられている。さらに、気管支内視鏡163には体外の光源からの光を局所へ送るためのライトガイド165等が設けられている。なお、光源が内視鏡163の先端部にある構成では、ライトガイド165が無くても良い。
【0114】
そして、本実施の形態の閉塞装置では、図23に示すように気管支内視鏡163のチャンネル164を通してカテーテル162が気管支H4の内腔へ挿入され、このカテーテル162を通して液状の留置材161が気管支H4の内腔へ注入される。このとき、気管支内腔に注入された留置材161が固形化することにより、気管支H4を閉塞する。ここで、気管支内腔に注入され、固形化した留置材161は、閉塞する気管支およびその末梢に位置する複雑な形状の気管支内腔へ入り込むため、脱落防止のために特別な構成を必要としない。
【0115】
また、液状の留置材161が閉塞対象部位以外の場所へ流れ込まないようにするため、留置材161を注入した直後から固形化が終了するまでの間、閉塞対象部位に逆流防止用の閉塞物を留置しても良い。
【0116】
そこで、本実施の形態では気管支内視鏡163のチャンネル164を通してカテーテル162が気管支H4の内腔へ挿入され、このカテーテル162を通して液状の留置材161を目的とする気管支H4の内腔へ注入させたのち、固形化した留置材161によって気管支H4を閉塞することができるので、本実施の形態でも第1の実施の形態(図1(A)〜(C)乃至図4参照)と同様の効果がある。
【0117】
さらに、本実施の形態では液状の留置材161を使用しているので、閉塞対象気管支の形状に関わらず使用可能である。また、手技が簡単なものとなる効果もある。
【0118】
なお、留置材161および挿入装置には、ガイドワイヤを通すための構造があっても良い。
【0119】
さらに、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
次に、本出願の他の特徴的な技術事項を下記の通り付記する。

(付記項1) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な弾性体からなり、この弾性体は、前記管腔臓器の複数に分岐している管腔の一つを密閉可能な外形を有する第一の閉塞部と、前記第一の閉塞部が密閉可能な管腔とは異なる他の管腔を閉塞可能な外形を有する第二の閉塞部と、前記分岐部分に当接可能な固定部と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0120】
(付記項2) 前記弾性体は二つの端部を有する棒状部材であり、前記第一の閉塞部は前記棒状部材の一方の端部を含み、前記第二の閉塞部は前記棒状部材の他方の端部を含むことを特徴とする付記項1記載の医療用閉塞具。
【0121】
(付記項3) 前記弾性体は、一方の端部の直径が他方の端部の直径よりも大きいことを特徴とする付記項2記載の医療用閉塞具。
【0122】
(付記項4) 前記弾性体は棒状部材であり、その外形面に起伏部を有することを特徴とする付記項1又は2記載の医療用閉塞具。
【0123】
(付記項5) 前記弾性体は、前記第一の閉塞部と第二の閉塞部との間に、切り欠き部を有することを特徴とする付記項4記載の医療用閉塞具。
【0124】
(付記項6) 前記弾性体は、その外形面に突起部を有することを特徴とする付記項4記載の医療用閉塞具。
【0125】
(付記項7) 前記弾性体は、略球形の弾性体が、一体的に連なった外形を有することを特徴とする付記項4記載の医療用閉塞具。
【0126】
(付記項8) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な中空の棒状弾性体からなり、前記棒状弾性体は、その外周が前記管腔臓器の内腔の壁と接触可能な径を有し、前記管腔臓器の複数に分岐している管腔の一つに挿入可能な第一の挿入部と、前記第一の挿入部を挿入可能な管腔とは異なる他の管腔に挿入可能な第二の挿入部と、前記分岐部分に当接可能な固定部と、を有していることを特徴とする医療用閉塞具。
【0127】
(付記項9) 前記棒状弾性体は二つの端部を有し、前記第一の挿入部は前記棒状弾性体の一方の端部を含み、また、前記第二の挿入部は前記棒状弾性体の他方の端部を含み、前記二つの端部の少なくとも一方に前記棒状弾性体の中空部分と連結する開口が形成されていることを特徴とする付記項8記載の医療用閉塞具。
【0128】
(付記項10) 前記弾性体は、前記二つの端部の間に、中空部分と連結する開口を有し、前記棒状弾性体の一方の端部は閉口されていることを特徴とする付記項9記載の医療用閉塞具。
【0129】
(付記項11) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な弾性体からなり、前記弾性体は、T字もしくはY字形状をしており、異なる三方向に伸びる複数の棒状部と、前記複数の棒状部が交わることにより構成される、前記分岐部分に当接可能な固定部とを有し、前記棒状部の少なくとも一つは、前記管腔臓器の管内腔を密閉可能な外形を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0130】
(付記項12) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な中空の棒状弾性体からなり、前記弾性体は、その外周が前記管腔臓器の内腔の壁と接触可能な径を有し、T字もしくはY字形状をしており、異なる三方向に伸びる複数の棒状部と、前記複数の棒状部が交わることにより構成される、前記分岐部分に当接可能な固定部と、前記棒状部の中空部分に挿入され管腔を密閉可能な閉塞部材と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0131】
(付記項13) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分の手前に留置可能で、且つ、管腔を密閉可能な外形を有する閉塞部材と、前記閉塞部材に取り付けられ、前記分岐部分を係止可能な閉塞部固定手段と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0132】
(付記項14) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、形状記憶の性質のあるワイヤと、前記ワイヤに取り付けられた膜と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0133】
(付記項15) 留置材および挿入装置からなる、ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支の閉塞装置は、留置材の形状が、柔軟な棒状部材であることを特徴とする。
【0134】
(付記項16) 付記項15による閉塞装置において、留置材の形状がT字あるいはY字であることを特徴とする。
【0135】
(付記項17) 付記項15による閉塞装置において、留置材は3mm〜10mmの間で複数の直径を持つ棒状部材であることを特徴とする。
【0136】
(付記項18) 付記項15による閉塞装置において、留置材は一端の直径が他端の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0137】
(付記項19) 留置材および挿入装置からなる、ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支の閉塞装置において、留置材はバルーンおよび前記バルーン内に収容された膨張材料によって構成される。
【0138】
(付記項20) 付記項15および19による閉塞装置において、留置材にクリップが接続されていることを特徴とする。
【0139】
(付記項21) 付記項15および19による閉塞装置において、留置材は内視鏡の外周面に取り付けられて挿入されることを特徴とする。
【0140】
(付記項22) 留置材と挿入装置からなる、ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支の閉塞装置において、閉塞材は液体と固体の2つの形状を取ることが可能であることを特徴とする。
【0141】
(付記項23) 留置材および挿入装置からなる、ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支の閉塞装置は、形状記憶の性質のあるワイヤと前記ワイヤに取り付けられた膜によって構成される。
【0142】
(付記項24) 付記項23による閉塞装置において、留置材は互いに接着可能な材料によって構成される。
【0143】
(付記項25) 付記項15、19、22、23による閉塞装置において、挿入装置は複数の留置材を連続的に留置可能な構成を有することを特徴とする。
【0144】
(付記項26) 留置材および挿入装置からなる、ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支の閉塞装置は、一旦留置した留置材が回収可能であることを特徴とする。
【0145】
(付記項27) ヒトおよび動物の気管支あるいは細気管支内に、閉塞物を留置することによって、肺気腫、肺瘻、気管支瘻およびその他の肺疾患を治療する方法。
【0146】
(付記項28) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分に留置可能な管状弾性体からなり、前記管状弾性体の外周は前記管腔臓器の内腔の壁面と接触可能な径を有し、前記管腔の分岐部分の1つの第1の分岐管腔に挿入可能な第1の挿入部と、前記第1の分岐管腔とは異なる他の第2の分岐管腔に挿入可能な第2の挿入部と、前記第1,第2の分岐管腔間の接合部分に係止可能な係止部とを前記管状弾性体に設けたことを特徴とする医療用閉塞具。
【0147】
(付記項28の作用) 本付記項28では、肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分の1つの第1の分岐管腔に第1の挿入部を挿入し、第1の分岐管腔とは異なる他の第2の分岐管腔に第2の挿入部を挿入した状態で、第1,第2の分岐管腔間の接合部分の端縁部に係止部を係止させることにより、管状弾性体を分岐部分に留置させる。これにより、肺気腫病変に分布する気管支の内腔を管状弾性体によって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するようにしたものである。
【0148】
(付記項29) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な留置用弾性体からなり、前記留置用弾性体は、異なる三方向に伸び、T字もしくはY字形状に形成され、前記管腔の分岐部分のそれぞれ異なる管腔に挿入される棒状部と、前記三方向の棒状部が交わる部分に構成され、前記分岐部分に係止可能な係止部とを有し、前記棒状部の少なくとも一つは、前記管腔臓器の管内腔を密閉可能な外形を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0149】
(付記項29の作用) 本付記項29では、肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分のそれぞれ異なる管腔にT字もしくはY字形状に形成された三方向の棒状部を挿入した状態で、分岐部分に係止部を係止させることにより、留置用弾性体を分岐部分に留置させる。これにより、肺気腫病変に分布する気管支の内腔を留置用弾性体によって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するようにしたものである。
【0150】
(付記項30) 被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分に留置可能な管状弾性体からなり、前記管状弾性体は、その外周が前記管腔臓器の内腔の壁と接触可能な径を有し、異なる三方向に伸びるT字もしくはY字形状に延設され、前記管腔の分岐部分のそれぞれ異なる管腔に挿入される延設部と、前記三方向の延設部が交わる部分に構成され、前記分岐部分に係止可能な係止部と、前記延設部の管内部分に挿入され管腔を密閉可能な閉塞部材と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【0151】
(付記項30の作用) 本付記項30では、肺気腫病変に分布する管腔臓器である気管支の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分のそれぞれ異なる管腔にT字もしくはY字形状に形成された三方向の延設部を挿入した状態で、分岐部分に係止部を係止させることにより、管状弾性体を分岐部分に留置させる。さらに、延設部の管内部分に閉塞部材を挿入させることにより、管腔を密閉させる。これにより、肺気腫病変に分布する気管支の内腔を管状弾性体によって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するようにしたものである。また、閉塞部材を挿入させる延設部を任意に選択することにより、複数に分岐する管腔の分岐部分のいずれか一部のみを閉塞させ、残りを開通状態で保持させることもできる。
【0152】
(付記項1〜30の目的) 本発明は、経気管支的な気管支閉塞を行うことによって、肺気腫の外科的治療における上記の問題点を解決するものである。
【0153】
(付記項1の作用) 肺気腫病変に分布する気管支の内腔に留置材を置くことによって完全に閉塞させ、肺気腫病変部に新たな空気が流入することを防止するための閉塞装置を提供する。治療前の肺気腫病変には過剰な空気が貯留していることによって体積が非常に大きいが、この空気は病変部の気管支経由で局所に運ばれるものであるので、病変部への空気の供給を遮断すると、血流等に運ばれて貯留していた空気は自然に減少していく。その結果、空気によって膨張していた肺気腫病変部の体積が減小し、結果的に肺容量減少手術と同様の効果を得る事ができる。
【符号の説明】
【0154】
2…留置材(留置用弾性体)、H4…気管支(管腔臓器)、H4b…分岐部、H4c…第1の分岐管腔、H4d…第2の分岐管腔、9…第1の閉塞部、10…第2の閉塞部、11…係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔で複数に分岐する管腔の分岐部分に留置可能な留置用弾性体からなり、前記分岐部分の1つの第1の分岐管腔を密閉可能な第1の閉塞部と、前記第1の分岐管腔とは異なる他の第2の分岐管腔を閉塞可能な第2の閉塞部と、前記第1,第2の分岐管腔間の接合部分の端縁部に係止可能な係止部とを前記留置用弾性体に設けたことを特徴とする医療用閉塞具。
【請求項2】
被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、前記管腔臓器の内腔に存在する分岐部分の近傍の管腔に留置可能で、且つ、前記管腔を密閉可能な外形を有する閉塞部材と、前記閉塞部材に取り付けられ、前記分岐部分を係止可能な閉塞部固定手段と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。
【請求項3】
被検体の管腔臓器の内腔で使用される医療用閉塞具であって、形状記憶の性質のあるワイヤと、前記ワイヤに取り付けられた膜と、を有することを特徴とする医療用閉塞具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−130726(P2012−130726A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34398(P2012−34398)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2009−223372(P2009−223372)の分割
【原出願日】平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】