説明

医療装置

【課題】 体内に導入されて留置された状態から、患部を種々の位置から観察できるように、観察場所を容易に変更することができる医療装置を提供する。
【解決手段】 医療装置1は、体内101を撮像すると共に、被係止部3を有する撮像手段2と、被係止部3に対して着脱自在な係止部、および係止部に接続された伸張自在な位置調整部により撮像手段2を体内101の所定の位置に留置する留置手段5と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に導入されて、被検部位を観察するため撮像装置を有した医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、医療装置である内視鏡は、撮像装置を備えており、患者の体腔内へ導入されて、撮像装置によって撮影された観察像により、体内患部の各種検査、各種処置等を行うためのものである。
【0003】
医療用の内視鏡には、体内の管腔管路である、食道、胃、大腸、十二指腸等の消化臓器内に肛門、または口腔から導入するもの、臍部近傍から体壁を穿刺して貫通して、腹腔内へ導入するものがある。一般に内視鏡は、長尺な挿入部を有しており、この挿入部が消化器管路内、または腹腔内に挿入される。
【0004】
近年、挿入部を備えておらず、撮像装置を有して、体内の被検部位を観察するための医療装置も開発されている。このような医療装置に関しては、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載された、種々の技術の提案がされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、体腔内において撮像を行なうカメラと、このカメラにより撮像された信号を伝送するための電極を有し、体壁を貫通してカメラからの信号を体腔外に伝送する針部とを備えた内視鏡システムが開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、観察対象物を撮影可能な少なくとも1つ以上の第1の撮影装置と、この第1の撮影装置とは異なる少なくとも1つ以上の第2の撮影装置と、この第2の撮影装置を体腔内に留置するための留置手段と、第1の撮影装置、および第2の撮影装置によって撮影された信号を処理する信号処理装置と、この信号処理装置から出力された画像信号を表示する表示装置と、を備えた内視鏡システムが開示されている。
【0007】
さらに、例えば、特許文献3には、カプセル型内視鏡を装着保持する保持部材に連結して設けられ、体腔内組織に対するカプセル型内視鏡投影面外であって、カプセル型内視鏡を挟む位置で体腔内組織に張りを持って係止される複数の係止部を有する係止部材を備えることで、カプセル型内視鏡の母線が所望の方向で体腔内組織に線接触し観察軸の向きがずれないように係止されるカプセル留置型医療装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−307224号公報
【特許文献2】特開2008−307224号公報
【特許文献3】特開2008−307224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載された従来の内視鏡システム、またはカプセル留置型医療装置では、体内に導入された医療装置を留置固定した後、この医療装置の体内での固定点が拘束されてしまい、体内の観察範囲が限定されてしまう。
【0010】
そのため、従来の内視鏡システム、またはカプセル留置型医療装置では、体内に導入されて留置固定される医療装置が固定視点でのみの観察しか行なえず、病変部位である患部を撮影し難かったり、この患部に死角が生じたりして、狙いとおりに患部の観察を行なうことが困難であるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは体内に導入されて留置された状態から、患部を種々の位置から観察できるように、観察場所を容易に変更することができる医療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の医療装置は、体内を撮像すると共に、被係止部を有する撮像手段と、前記被係止部に対して着脱自在な係止部、および前記係止部に接続された伸張自在な位置調整部により前記撮像手段を前記体内の所定の位置に留置する留置手段と、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体内に導入されて留置された状態から、患部を種々の位置から観察できるように、観察場所を容易に変更することができる医療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係り、腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図2】同、腹腔内設置カメラの内部構成を模式的に示す図
【図3】同、腹腔内設置カメラを使用する状態を説明するための図
【図4】同、変形例の腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図5】本発明の第2の実施の形態に係り、腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図6】同、カメラ留置具の構成を示す断面図
【図7】同、カメラ留置具が腹壁に固定された状態を示す断面図
【図8】同、腹腔内設置カメラの位置を変更する状態を説明するための図
【図9】同、図8から腹腔内設置カメラの位置が変更された状態を説明するための図
【図10】同、腹腔内設置カメラが腹腔内に留置される一形態を説明するための図
【図11】同、腹腔内設置カメラを使用する一形態を説明するための図
【図12】同、変形例のカメラ留置具の構成を示す図
【図13】本発明の第3の実施の形態に係り、腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図14】同、変形例の腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図15】本発明の第4の実施の形態に係り、腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図
【図16】本発明の第5の実施の形態に係り、腹腔内設置カメラの構成を模式的に示す図
【図17】同、図16のXVII矢視図
【図18】同、腹腔内設置カメラの位置を変更する状態を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、例えば、腹腔鏡下外科手術を行う医療装置を例示する。また、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
(第1の実施の形態)
先ず、腹腔鏡下外科手術に用いられる本発明の医療装置である腹腔カメラシステムについて、図1から図4に基づいて、以下に説明する。なお、図1から図4は本発明の第1実施形態に係り、図1は腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図、図2は腹腔内設置カメラの内部構成を模式的に示す図、図3は腹腔内設置カメラを使用する状態を説明するための図、図4は変形例の腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図である。
【0017】
本実施の形態の医療装置である腹腔カメラシステム(以下、単にカメラシステムと言う。)1は、図1に示すように、ここでの撮像手段を構成し、外形がカプセル形状の撮影医療機器である腹腔内設置カメラ(以下、単にカメラと言う。)2と、このカメラ2の上部中央に設けられたフック部3を引掛けて、カメラ2を吊り上げて、体内(腹腔内)で留置するための留置手段であるワイヤ5と、穿刺部6を備え、この穿刺部6を介してワイヤ5を体外から体内へ挿通する固定ユニット7と、を有して主に構成されている。
【0018】
カメラ2は、図2に示すように、被係止部を構成する、上述のフック部3が筐体部に螺着固定されており、一方の側部に突起状の把持部である把持片4が設けられている。この把持片4は、例えば、把持部111が先端に設けられた把持鉗子110などの処置具により把持される。
【0019】
このカメラ2には、制御手段となる制御基板である制御部10と、この制御部10に給電する電源部であるバッテリ11と、制御部10と電気的に接続された送信機12と、制御部10と電気的に接続された撮像装置である撮像ユニット20と、この撮像ユニット20の両脇に配設され、制御部10と電気的に接続された、ここではLED光源25を有する照明部26と、が内蔵されている。
【0020】
カメラ2の撮像ユニット20は、CCD、またはCMOSである固体撮像素子21と、この固体撮像素子21が実装された基板部22と、固体撮像素子21の前方に配置された対物レンズ群23と、観察窓2aに配置されたカバーガラス24と、を有して構成されている。
なお、送信機12は、撮像ユニット20が光電変換した画像信号を体外機器となるモニタに接続されたビデオプロセッサ(共に不図示)に無線送信出力する。
【0021】
また、本実施の形態のカメラ2は、所定の視野角が設定されており、フック部3が設けられる外周上部と反対側となる外周下部に観察用の観察窓2aと、この観察窓2aの両側に2つの照明窓2bと、が配設されている。また、本実施の形態のカメラ2は、腹腔内全体を俯瞰するカメラとして用いても良く、このカメラ2の他に、例えば、腹腔用の硬性内視鏡と併用しても良い。
【0022】
図1に戻って、固定ユニット7には、カメラ2を吊り上げるワイヤ5を体外側で固定する固定レバー8が設けられている。この固定レバー8は、中途部にワイヤ5が貫挿する孔部8aが形成され、この孔部8aの位置が固定ユニット7の孔部7aの位置とズレが生じるように固定ユニット7内に設けられたバネ9により、固定ユニット7の一側方向へ付勢されている。
【0023】
つまり、ユーザは、固定ユニット7の孔部7aと、固定レバー8の孔部8aが略一致する位置まで、固定レバー8をバネ9の付勢力に抗して固定ユニット7内へ押し込むと、ワイヤ5を容易に牽引弛緩(上下にスライド)することができる。そして、ユーザは、固定レバー8の固定ユニット7内への押し込みを解除すると、バネ9の付勢力を受けて固定レバー8がスライドする。
【0024】
そのため、固定ユニット7の孔部7aの位置に対して、固定レバー8の孔部8aの位置にズレが生じるため、各孔部7a,8aに挿通するワイヤ5は、固定ユニット7内で挟持固定される。また、固定ユニット7の下面部には、孔部7aに連通する円筒針状の上述した穿刺部6が螺着されている。
【0025】
なお、本実施の形態のワイヤ5は、一方の端部となるように折り返された部分が係止部となる輪状(リング状)に伸展するように形成されると共に、位置調節部を構成する伸縮(伸張)性を備えた金属ワイヤ、バネ、またはゴムなどの弾性体から形成されている。なお、ワイヤ5は、SMA(形状記憶合金)により形成して、通電等による温度変化によって伸縮(伸張)する構成としても良い。
【0026】
以上のように構成された本実施の形態のカメラシステム1は、腹腔鏡下外科手術に用いられる。このとき、カメラ2は、患者の体腔の1つである腹腔101内の臓器などに治療部位(例えば、図3に示す被検部位である患部100)を撮影するために用いられる。
具体的には、先ず、固定ユニット7が患者の腹腔101内に体側から穿刺部6が腹壁102を貫通するように穿刺される。このとき、ワイヤ5は、予め、穿刺部6から導出しない位置で、固定ユニット7の各孔部7a,8aに挿通した状態となるように固定されている。そして、カメラ2は、把持鉗子110などによって把持されて、腹壁102に穿刺された、ここでは図示しないトラカールを介して、患者の腹腔101内へ導入される。
【0027】
次に、固定ユニット7は、孔部7aと、固定レバー8の孔部8aが略一致する位置まで、固定レバー8をバネ9の付勢力に抗して固定ユニット7内へ押し込まれて、ワイヤ5の端部が穿刺部6の先端から導出されて、腹腔101内に導入される。このとき、腹腔101内に導入されたワイヤ5の端部は、輪状(リング状)に伸展する(図1参照)。
【0028】
そして、カメラ2は、フック部3がワイヤ5の端部(輪状に伸展した端部)に引掛けられて係着され、腹腔101内でワイヤ5に吊り下げられた状態となる。なお、ユーザは、カメラ2を腹腔101内で吊り上げた所望の位置において、固定ユニット7の固定レバー8の押し込みを解除して、ワイヤ5を固定ユニット7内で挟持固定する。このようにして、カメラ2は、腹腔101内にワイヤ5に吊り上げられた状態で留置される。
【0029】
以上のように構成された本実施の形態のカメラシステム1は、図3に示すように、腹腔101内にカメラ2が留置された状態から、ユーザが固定レバー8を固定ユニット7内へ押し込んで、ワイヤ5を牽引弛緩(固定ユニット7に対して上下にスライド)すれば、カメラ2の位置を上下方向に移動させることができるため、腹腔101内の患部100を俯瞰観察したり、近接観察したりすることができる。
【0030】
また、カメラシステム1は、ワイヤ5を腹腔101内に所定の長さで導出させた状態にしておけば、カメラ2を把持鉗子110によって移動させることができるため、腹腔101内の患部100を所望の角度、位置などから撮影することができる。
【0031】
以上に説明したように、本実施の形態のカメラシステム1は、腹腔101内で留置したカメラ2の固定視点位置から、カメラ2を所望の角度、近接した位置などに移動することで、腹腔101内の患部100を観察でき、良好な検査、処置などが行なえる構成となる。特に、カメラシステム1は、死角となってしまう患部100の箇所にカメラ2を所望の位置に移動させて撮影することができ、狙いとおりの種々の角度、および位置から患部100の観察が行なえる。
【0032】
なお、カメラ2は、図4に示すように、フック部3に代えて、変形自在で伸展した状態の輪状(リング状)のワイヤから形成された被係止部となるワイヤリング13を有した構成としても良い。
このカメラ2の構成の場合、固定ユニット7に挿通されるワイヤ15は、先端に設けられた係止部となるフック部14が設けられ、ワイヤリング13にフック部14を引掛けて係着することで、カメラ2を腹腔101内で吊り上げることができる構成となっている。なお、ワイヤ15も、伸縮(伸張)性を備えた金属、またはゴムなどから形成されている。
つまり、本変形例のカメラシステム1では、図1から図3に説明した、カメラ2のフック部3と、ワイヤ5とを入れ変えた構成としている。
(第2の実施の形態)
次に、図5から図12を用いて、本発明の腹腔カメラシステムに係る第2の実施の形態について、以下に説明する。なお、図5から図12は、本発明の第2の実施の形態に係り、図5は腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図、図6はカメラ留置具の構成を示す断面図、図7はカメラ留置具が腹壁に固定された状態を示す断面図、図8は腹腔内設置カメラの位置を変更する状態を説明するための図、図9は図8から腹腔内設置カメラの位置が変更された状態を説明するための図、図10は腹腔内設置カメラが腹腔内に留置される一形態を説明するための図、図11は腹腔内設置カメラを使用する一形態を説明するための図、図12は変形例のカメラ留置具の構成を示す図である。
また、以下の説明において、上述した第1の実施の形態の腹腔カメラシステム1と同一の構成について同じ符号を用い、それら構成の詳細な説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、本実施の形態の腹腔カメラシステム(以下においても、カメラシステムと略記する)1は、第1の実施の形態のワイヤ5、および固定ユニット7に代えて、腹腔内設置カメラ(以下においても、カメラと略記する)2を吊り上げて、腹腔101内で留置するための留置手段である、ここでは2つのカメラ留置具30を備えている。
【0034】
このカメラ留置具30は、図6に示すように、係止部であるフック部31と、このフック部31が一端に接続固定され、所定の長さを有して伸縮(伸張)自在な金属ワイヤ、ゴム(弾性体)、バネなどから形成された位置調節部である弾性伸縮部32と、この弾性伸縮部32の他端が接続固定され、上部に開口部33aを有する中空の外形略円柱形状に弾性部材から形成されたケース体33と、このケース体33に開口部33aから突起するように球状の頭部34aが収容される、所謂、マチ針状の固定手段を構成するここでは3つの針部34と、3つの針部34が挿通して各頭部34aに当接して3つの針部34がケース体33から抜け落ちないように保持するケース体33内に設けられた板体35と、を有して構成される。
【0035】
このカメラ留置具30は、ケース体33の外周部が内方側へ押し潰(押し込み)されると、ケース体33が上下方向に伸張変形して、板体35が上方へ移動し、3つの針部34が起立する構成となっている。そして、カメラ留置具30は、図7に示すように、ケース体33の外周部を内方側への押し潰しが解除されると、ケース体33が弾性力によって拡径するように上下方向に収縮変形して、3つの針部34が拡開する。
【0036】
つまり、カメラ留置具30は、腹腔101内に導入され、ケース体33の外周部が内方側へ押し潰されて、3つの針部34が起立した状態で腹壁102に穿刺される。その後、カメラ留置具30は、ケース体33の外周部の内方側への押し潰しが解除されると、3つの針部34が腹壁102内で拡開し、腹腔101内側の腹壁102に固定される構成となっている。
【0037】
なお、本実施の形態のカメラ2は、第1の実施の形態のフック部3、またはワイヤリング13に代えて、被係止部を構成する3つの逆U字形状の係止体16が設けられている。これら係止体16は、カメラ2を腹腔101内で吊り上げて留置するため、カメラ留置具30のフック部31が引掛けられて係着する。
【0038】
以上のように構成された、本実施の形態のカメラシステム1は、図5に示したように、ここでは2つのカメラ留置具30が腹腔101内に導入されて、腹壁102の任意の位置に固定される。そして、腹腔101内に導入されたカメラ2は、任意の係止体16にカメラ留置具30のフック部31が引掛けられて、吊り上げられた状態で腹腔101内に留置される。
【0039】
例えば、図5の状態から図8、および図9に示すように、ユーザは、把持鉗子110などを用いて、カメラ2を引っ張ると、カメラ2を吊り上げている一方のカメラ留置具30の弾性伸縮部32が伸張させる。そして、ユーザは、把持鉗子110などで、他方のカメラ留置具30のフック部31を引っ張って、弾性伸縮部32を伸張させ、カメラ2に設けられた任意の係止体16にフック部31を引掛けて、一方のカメラ留置具30のフック部31をカメラ2の係止体16から外すことによって、カメラ2の位置を変更することができる。なお、カメラ留置具30の弾性伸縮部32は、把持鉗子110などによる引っ張りが解除されると収縮する。
【0040】
以上の説明により、本実施の形態のカメラシステム1でも、第1の実施の形態と同様に、腹腔101内で留置したカメラ2の固定視点位置から、カメラ2を容易に移動できると共に、所望の角度、近接した位置などに移動することで、腹腔101内の患部100を観察でき、良好な検査、処置などが行なえ、狙いとおりの種々の角度、および位置から患部100の観察が行なえる。
【0041】
また、カメラ2は、図10に示すように、例えば、2つのカメラ留置具30の夫々のフック部31が任意の係止体16に引掛けられて、これら2つのカメラ留置具30によって腹腔101内で吊り上げられた状態となるように留置されても良い。これにより、カメラ2は、腹腔101内で安定した状態で留置される。また、弾性伸縮部32は、伸縮(伸張)自在な構成であるため、把持鉗子110などを用いて、カメラ2の位置を自由に変更することができる。
【0042】
さらに、カメラ2は、図11に示すように、カメラ留置具30の弾性伸縮部32が伸縮(伸張)自在なため、把持鉗子110などにより、腹腔101内で容易に移動させることができるため、腹腔101内の患部100を所望の角度、位置などから撮影することができる。
【0043】
なお、カメラ留置具30は、図12に示すように、腹壁101に固定する固定手段がクリップ構造としても良い。
具体的には、カメラ留置具30は、2つのクリップ片36が回動自在に設けられ、バネ37によって閉じる方向に付勢され、これら2つのクリップ片36を回動自在に保持する枢軸部38が弾性伸縮部32の端部に接続固定されている。なお、これらクリップ片36には、把持鉗子110の把持部111によって把持して開閉するための突起部36aが形成されている。
【0044】
このように構成されたカメラ留置具30は、2つのクリップ片36により腹壁102を挟むことで、任意の腹壁102の位置に固定することができる。
【0045】
(第3の実施の形態)
次に、図13、および図14を用いて、本発明の腹腔カメラシステムに係る第3の実施の形態について、以下に説明する。なお、図13、および図14は、本発明の第3の実施の形態に係り、図13は腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図、図14は変形例の腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図である。
また、以下の説明においても、上述した第1の実施の形態の腹腔カメラシステム1と同一の構成について同じ符号を用い、それら構成の詳細な説明を省略する。
【0046】
図13に示すように、本実施の形態の腹腔カメラシステム(以下においても、カメラシステムと略記する)1の腹腔内設置カメラ(以下においても、カメラと略記する)2は、第1の実施の形態のフック部3、またはワイヤリング13に代えて、位置調節部を構成する、ここでは3つの伸縮ワイヤ41が設けられている。これら3つの伸縮ワイヤ41は、カメラ2の視界に入らないように、カメラ2の下部側に設けられる観察窓2aと反対側となる上部側に延出するように所定の段発性を有している。なお、この伸縮ワイヤ41は、SMA(形状記憶合金)ワイヤでも良い。
【0047】
これら3つの伸縮ワイヤ41のそれぞれの端部には、変形自在で伸展した状態の輪状(リング状)の被係止部であるワイヤリング42が設けられている。このワイヤリング42がフック部122を備えたフック針121が突没して係止部となる穿刺針120などの処置具により引掛けられ、伸縮ワイヤ41が体外へ引き出される。なお、この穿刺針120は、体外側から腹壁102を貫通させて、腹腔101内に穿刺される。
【0048】
ユーザは、体外に引き出された伸縮ワイヤ41を牽引することで、カメラ2を腹腔101内で吊り上げて、留置することができる。このとき、第1の実施の形態に記載した固定ユニット7(ここでは不図示)に伸縮ワイヤ41を挿通して、腹腔101内の所望の位置でカメラ2を吊り上げるように固定しても良い。
【0049】
また、ユーザは、穿刺針120を伸縮ワイヤ41が引き出されている位置とは別の所望の位置から腹壁102を貫通するように腹腔101内に穿刺して、腹腔101内の任意の伸縮ワイヤ41を体外へ引き出すことで、容易にカメラ2を別の位置に移動させることができる。
【0050】
さらに、3つの伸縮ワイヤ41が伸縮(伸張)自在なため、カメラ2を把持鉗子110などにより、腹腔101内で容易に移動させることができるため、腹腔101内の患部100を所望の角度、位置などから撮影することができる。
【0051】
以上の説明により、本実施の形態のカメラシステム1でも、第1の実施の形態と同様に、腹腔101内で留置したカメラ2の固定視点位置から、カメラ2を容易に移動できると共に、所望の角度、近接した位置などから腹腔101内の患部100を観察でき、良好な検査、処置などが行なえ、狙いとおりの種々の角度、および位置から患部100の観察が行なえる。
【0052】
なお、図14に示すように、2つのカメラ2は、互いが撮像データ、制御信号、電力などを授受する通信ケーブル43で連結した構成としても良い。この構成では、一方のカメラ2に制御部10、バッテリ11、および送信機12を設けるだけで良い。
【0053】
(第4の実施の形態)
次に、図15を用いて、本発明の腹腔カメラシステムに係る第4の実施の形態について、以下に説明する。なお、図15は、本発明の第4の実施の形態に係り、腹腔内に導入される腹腔内設置カメラを有する医療装置の構成を模式的に示す図である。
また、以下の説明においても、上述した第1の実施の形態の腹腔カメラシステム1と同一の構成について同じ符号を用い、それら構成の詳細な説明を省略する。
【0054】
図15に示すように、本実施の形態の腹腔カメラシステム(以下においても、カメラシステムと略記する)1は、ここでは透明なオーバチューブであるチューブ体45と、このチューブ体45に挿通された、複数、ここでは3つの磁性体47が略等間隔に配置されたワイヤ46と、を有している。また、本実施の形態の腹腔内設置カメラ(以下においても、カメラと略記する)2は、第1の実施の形態のフック部3、またはワイヤリング13に代えて、ワイヤ46の磁性体47と磁力により引力が生じるように、カメラ2の下部側に設けられる観察窓2aと反対側となる上部側に磁石19が設けられている。なお、磁石19は、電磁石でも良い。
【0055】
このように構成されたカメラシステム1は、チューブ体45の両端開口部が体外側の異なる位置で露出するように、チューブ体45が腹壁102を貫通して腹腔101内に配置される。そして、チューブ体45に挿通するワイヤ46の任意の磁性体47に腹腔101内に導入されたカメラ2の磁石19がチューブ体45を介して吸着され、カメラ2が腹腔101内に留置される。そして、ユーザは、ワイヤ46をチューブ体45に対してスライドさせることで、腹腔101内のチューブ体45に沿って、カメラ2を移動させることができる。
【0056】
このような構成としても、本実施の形態のカメラシステム1は、腹腔101内で留置したカメラ2の視点位置を容易に変更できる。また、腹壁102は、ワイヤ46をスライドさせても、チューブ体45によって保護されるため、ワイヤ46が直接擦れることがないため傷つくことがない。
【0057】
(第5の実施の形態)
次に、図16から図18を用いて、本発明の腹腔カメラシステムに係る第5の実施の形態について、以下に説明する。なお、図16から図18は、本発明の第5の実施の形態に係り、図16は腹腔内設置カメラの構成を模式的に示す図、図17は図16のXVII矢視図、図18は腹腔内設置カメラの位置を変更する状態を説明するための図である。
また、以下の説明においても、上述した第1の実施の形態の腹腔カメラシステム1と同一の構成について同じ符号を用い、それら構成の詳細な説明を省略する。
【0058】
図16、および図17に示すように、本実施に形態の腹腔カメラシステム(以下においても、カメラシステムと略記する)1における腹腔内設置カメラ(以下においても、カメラと略記する)2は、第1の実施の形態のワイヤ5、および固定ユニット7に代えて、下部側に設けられる観察窓2aと反対側となる上部側に開口する円弧状の溝部19が形成され、この溝部19の形状に沿った、一端(先端)が鋭利な円弧状のカギ爪54がスライド自在(進退自在)に配設されている。
【0059】
また、溝部19の中途には、カギ爪54の他端(基端)に形成された凸状のストッパ部54aと当接して、カギ爪54が溝部19から抜け落ちないようにするための段部19aが形成されている。なお、カギ爪54は、例えば、所謂、手術用の縫合針と同じ形状をしている。
【0060】
カメラ2は、第1の実施の形態で説明した内蔵する各種構成要素に加え、カギ爪54の内周部に接触して、制御部10に接続する温度センサ51と、制御部10によって駆動制御されるモータ52と、モータ52の軸に取り付けられ、カギ爪54に接触して溝部19に沿ってカギ爪54をスライドさせて、カメラ2の上部から突没するように繰出し入れするゴムローラ53と、制御部10に接続されモータ52の駆動を切換えるスイッチ55を有する操作ツマミ56と、を有している。
温度センサ51は、カメラ2の上部側に配置され、被検者の体温を検知して、制御部10に検出信号を出力する。この検出信号が入力された制御部10は、ゴムローラ53の回動によって、カギ爪54を溝部19から繰り出す方向にモータ52を駆動制御する。
【0061】
なお、操作ツマミ56は、把持鉗子110の把持部111で把持して操作できるように、カメラ2の一端側にて露出しており、カメラ2の内部で固定されているスイッチ55を回動して切り替え操作するためにカメラ2に対して回動自在に配設されている。また、この操作ツマミ56が回動操作されて、スイッチ55が所定に切り替わることで、モータ52の任意の回転方向の切換え、および停止が制御部10によって制御される。
【0062】
なお、制御部10には、カギ爪54が溝部19に沿って所定の距離だけスライド移動するようにモータ52の回転数が設定されている。つまり、カギ爪54のストッパ部54aが溝部19の段部19aと当接する位置、およびカギ爪54が溝部19内に全て収容される位置まで、回動するゴムローラ53の接触によってカギ爪54を繰り出し入れするモータ52の回転数が制御部10に設定されており、この設定に応じて、温度センサ51による体温検知時、または操作ツマミ56の操作時に制御部10がモータ52を駆動制御する。
【0063】
以上のように構成された本実施の形態のカメラ2は、図18に示すように、上部が腹腔101内の腹壁102と接触すると、温度センサ51が体温を検出して、カギ爪54が溝部19に沿って上部から繰り出されて突出し、カギ爪54が腹壁102に刺さることで、腹壁102の腹腔101側の壁面に留置される。また、カメラ2は、ユーザによる操作ツマミ56の回動操作によって、カギ爪54が溝部19内に収容されるように繰り入れられるため、腹壁102の腹腔101側の壁面におけるユーザの所望の位置に容易に付け変えて留置することができる。また、温度センサ51は、圧力センサでもよく、カメラ2の上部と腹壁102の接触を検出して、制御部10へ検出信号を出力する構成としても良い。
【0064】
なお、以上に説明した各実施の形態のカメラ2は、外部との撮像信号の授受を無線通信で行なう構成としたが、勿論、これに限定することなく、外部との撮像信号の授受を通信ケーブルなどによる有線通信で行なう構成としても良い。
【0065】
また、実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0066】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0067】
1…腹腔カメラシステム
2…腹腔内設置カメラ
2a…観察窓
2b…照明窓
3…フック部
4…把持片
5…ワイヤ
6…穿刺部
7…固定ユニット
8…固定レバー
10…制御部
11…バッテリ
12…送信機
20…撮像ユニット
21…固体撮像素子
22…基板部
23…対物レンズ群
24…カバーガラス
25…光源
26…照明部
100…患部
101…腹腔
102…腹壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内を撮像すると共に、被係止部を有する撮像手段と、
前記被係止部に対して着脱自在な係止部、および前記係止部に接続された伸張自在な位置調整部により前記撮像手段を前記体内の所定の位置に留置する留置手段と、
を具備することを特徴とする医療装置。
【請求項2】
前記位置調節部は、伸張自在な金属ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記位置調節部は、伸張自在なバネであることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記位置調節部は、伸張自在な弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記被係止部を前記係止部と選択的に係着させて、前記撮像手段の前記体内の留置位置を変更できるように、前記体内の異なる任意の位置に固定される複数の前記留置手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項6】
前記留置手段は、前記体内側の体壁に固定する固定手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項7】
前記固定手段は、前記体壁に穿刺されて拡開して固定する複数の針部であることを特徴とする請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記固定手段は、前記体壁を挟んで固定するクリップであることを特徴とする請求項6に記載の医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−156267(P2011−156267A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22177(P2010−22177)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】