説明

医薬および他の活性な化合物の制御された投与のための粘膜接着性腐食性薬物送達デバイス

【課題】粘膜表面への医薬又はその他の活性化合物の投与のための層状医薬送達デバイスの提供。
【解決手段】水溶性接着層、非接着性の生体腐食性バッキング層、及び所望によりいずれかの層又は両方の層中の1つ以上の医薬からなり、適用に際し、このデバイスは、粘膜表面上に接着し、処置部位および局在化された薬物送達に対する保護を提供する。腐食が終了する前のデバイスが粘膜表面上に残る時間の長さである「滞留時間」は、バッキング層の改変により容易に調節され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生体腐食性薬学的キャリアデバイスに関し、このデバイスは、医薬または他の活性な化合物の局所的制御送達および全身制御送達ならびに/あるいは下にある処置部位の保護のために粘膜表面に吸着する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
体組織、疾患および創傷の局所的処置は、特定の医薬が、投与され、そして処置部位に治療に有効な期間維持されることを必要とする。湿潤粘膜表面の局所的な処置は、問題が多い。なぜなら、下にある表面に対する適切な治療作用が生じ得る前に、天然の体液は、表面に適用された活性化合物を急速に洗い流し得るからである。口内において、唾液、粘膜組織の自然な置換、ならびに摂食、談話、および飲用の作用は、種々の薬学的キャリアデバイスの有用性を限定する問題のほんのいくつかである。
【0003】
ゲル、ペースト、錠剤およびフィルムは、生体接着性キャリアとして開発されてきており、当該分野で周知である。しかし、これらの型の製品は、粘膜処置のための効果的かつ患者に受容可能な薬学的送達デバイスに必要とされる主要な特徴の全てを示さない。重要な特徴としては、水腐食性、操作および処置部位に対する適用の容易性、最小の外体感による快適性、急速な吸着、処置部位の保護ならびに/または薬学的な活性化合物もしくは他の活性化合物の送達のための長い滞留時間、ならびに処置部位での送達デバイスの自然腐食もしくは自然溶解による下にある粘膜表面からの容易な除去が挙げられる。
【0004】
口腔粘膜において特に使用される生体接着性ゲルは、当該分野で公知である。例えば、米国特許第5,192,802号(特許文献1)は、カルボキシメチルセルロースナトリウムとキサンタンガムとの混合物から構成される生体接着性の歯茎用ゲルを記載する。このゲル組成物は、口内靡爛、熱性疱疹および痔核の処置において潜在的な用途を有し得る。しかし、これらの型のゲル系は、滞留時間が限定されている。なぜなら、唾液のような体液は、処置部位から迅速にゲルを洗い流すからである。米国特許第5,314,915号(特許文献2);同第5,298,258号(特許文献3)および同第5,642,749号(特許文献4)に記載される他の生体接着性ゲルは、水性媒体または油性媒体ならびに異なる型の生体接着性材料およびゲル化材料を使用するが、全てのゲル製品に固有の制限を欠点として持つ。当該分野で公知の別の型の生体接着性製品は、義歯接着性ペーストである。しかし、これらの製品は、これらの接着特性のみについて主に開発され、組織を保護するためにも、下にある粘膜表面に対する医薬の送達のためにも開発されていない。しかし、局所麻酔薬のような活性化合物は、歯茎痛の軽減のためのペーストと共に処方され得る。義歯吸着性ペーストは、米国特許第4,894,232号(特許文献5)および同第4,5518,721号(特許文献6)に記載される。‘721特許(特許文献6)において、ポリエチレングリコール中でのカルボキシメチルセルロースナトリウムとポリエチレンオキシドとの組み合わせが使用され、生体接着性組成物を提供する。粘膜接着性ペーストはまた、保護フィルムおよび薬物送達系として使用されてきた。Orabase(登録商標)−B(フィルム形成および接着特性の両方を有する商品化されたペースト製品)は、口内炎の軽減のために使用される。この製品は、処置部位の麻痺を提供するが、滞留時間は、唾液による迅速な溶解に起因して最小である。この製品は、ガーゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカントゴムおよびペクチンを含む。
【0005】
生体接着性錠剤は、米国特許第4,915,948号(特許文献7)に記載される。接着増強物質(例えば、ポリオール)と共同してキサンタンガムまたはペクチンは、このデバイス中で使用される水溶性の生体接着剤である。滞留時間は、大いに増強されるが、これらの錠剤は、特に口腔内で使用する場合に、それらの不快な感触、固形性、かさ高さおよび遅い溶解時間に起因して、扱いにくい。また、固体デバイスは、曲がった表面、特に口腔内の割れ目に容易に接着し得ない。米国特許第4,226,848号(特許文献8);同第4,292,299号(特許文献9)、および同第4,250,163号(特許文献10)に記載される生体接着性錠剤は、0.2〜2.5mmの平均厚さを有する単一デバイスまたは二層デバイスである。これらのデバイスは、かさ高さがより低いが、滞留時間が限定される。これらは、非接着性材料(例えば、セルロースエーテル)、生体接着性成分(例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはポリビニルピロリドン)、および錠剤化目的のための結合剤から構成される。これらのデバイスにおいて使用されるセルロース誘導体は、水溶性であってもなくてもよい。‘299特許(特許文献9)に記載される二層デバイスは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。包帯および生体接着性積層フィルムは、当該分野でもまた公知である。米国特許第3,996,934号(特許文献11)および同第4,286,592号(特許文献12)に記載されるようなフィルムは、より薄く、より可撓性で、それ故、外体感を減少させる。積層フィルムは、通常、接着層、レザバ層およびバッキング層から構成され、そして皮膚または粘膜を介して薬物を送達するように設計される。これらのフィルムは、代表的に水溶性ではなく、従って、これらは、溶解されないか、または体液によっては洗い流されず、処方された処置時間の後、除去されなければならない。
【0006】
粘膜表面上での使用のためのフィルム送達系はまた、当該分野で公知である。水に不溶性であり、通常、積層フィルム、押し出しフィルムまたは複合フィルムの形態で存在する、これらの型の系は、米国特許第4,517,173号(特許文献13);同第4,572,832号(特許文献14);同第4,713,243号(特許文献15);同第4,900,554号(特許文献16)および同第5,137,729号(特許文献17)に記載される。‘173特許(特許文献13)は、少なくとも3つの層(医薬を含む層、限られた水溶性を有する層、および中間層を含む)から構成される膜接着フィルムに関する。医薬層は、薬物ならびにヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるセルロース誘導体を含む。限られた水溶性を有する層は、1つ以上のセルロース誘導体と疎水性脂肪酸との組み合わせからなり、そして中間層は、セルロース誘導体からつくられる。‘832特許(特許文献14)は、頬送達のための軟フィルムを記載する。このフィルムは、水溶性タンパク質、ポリオール、および多価アルコール(例えば、セルロースおよびポリサッカリド)、ならびに着色料および香味料から構成される。‘243特許(特許文献15)は、40〜95%の水溶性ヒドロキシプロピルセルロース、5〜0%の水不溶性エチレンオキシド、0〜10%の水不溶性エチルセルロース、プロピルセルロース、ポリエチレンまたはポリプロピレンおよび医薬からつくられる単層生体接着性薄膜または多層生体接着性薄膜に関する。これらのフィルムは、3層の積層であり生体接着性層、レザバ層、および非水溶性外側保護層から構成される。‘729特許(特許文献17)は、口腔粘膜での使用のための軟接着性フィルムを教示する。このフィルムは、酢酸ビニル非水溶性ホモポリマー、アクリル酸ポリマー、セルロース誘導体および全身性薬物の混合物から構成される。
【0007】
‘554特許(特許文献16)において、デバイスは、口腔における使用のために設計され、そしてアクリル酸ポリマー、水不溶性セルロース誘導体、水不溶性バッキング層またはわずかに可溶性のバッキング層、と医薬との混合物を含む接着層から構成される。接着層は、活性成分を含み、処置部位への適用の際に、薬物が、下にある粘膜表面に送達される。この特許はまた、前述の成分の3つ全てが、粘膜処置および薬物送達のために適した適切な接着デバイスを獲得することが要求される。
【0008】
最後に、薬学的化合物の送達のための水溶性フィルムはまた、当該分野で公知である。米国特許第5,800,832号(特許文献18)および同第6,159,498号(特許文献19)は、粘膜表面を処置するための生体腐食性水溶性薬学的デバイスを記載する。これらの二層デバイスは、接着性層および非接着性バッキング層から構成され、医薬は、一方または両方の層のいずれかに含まれ得る。
【0009】
接着層の組成物は、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドンを、単独またはこれらの組み合わせで含む。これらの粘膜接着性ポリマーに加えて、フィルム形成ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)が、存在する。この層はまた、薬学的化合物を含み得る。これらのデバイスのバッキング層は、フィルム形成ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含む。これらのポリマーは、低い生体接着を示すことが知られており、種々の薬学適用における用途について承認される。これらの滞留時間は、バッキング層のわずかなバリエーションによって制御されることが特許請求される。滞留時間を増加するために、バッキング層の成分は、グリオキサール溶液で架橋され得、ポリマーの水溶性を低下させ、従って、唾液のような体液に曝される間の溶解をより遅くする。第2のアプローチは、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースの同じファミリーからの、種々のより高分子量のポリマーの混合物を使用することによって、バッキング層の組成を変化することである。バッキング層に対するこれらの変更は、達成するのが容易である。しかし、これらは、最終デバイスに対して、一貫した、制御可能でかつ再現性のある滞留時間を提供しない。さらに、これらの発明の教示の下でこのデバイスを製造するために、粘膜接着性層および/またはバッキング層を、好ましくは、堅くかつ無孔性表面上にキャストすることが必要とされる。次いで、各層は、乾燥されて積層フィルムを生じる。従って、所望される形状への切断および後のパッケージングの前に、キャスティング表面は、デバイスの一体化部分となるか、または積層フィルムから注意深く除去されなければならない。このような非可撓性フィルムの除去は、材料を伸長または破壊することなく、達成することが困難である。このようなデバイスを製造するための関連する製造プロセスは、複雑であり、従って、市販可能でも経済的でもないかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,192,802号
【特許文献2】米国特許第5,314,915号
【特許文献3】米国特許第5,298,258号
【特許文献4】米国特許第5,642,749号
【特許文献5】米国特許第4,894,232号
【特許文献6】米国特許第4,5518,721号
【特許文献7】米国特許第4,915,948号
【特許文献8】米国特許第4,226,848号
【特許文献9】米国特許第4,292,299号
【特許文献10】米国特許第4,250,163号
【特許文献11】米国特許第3,996,934号
【特許文献12】米国特許第4,286,592号
【特許文献13】米国特許第4,517,173号
【特許文献14】米国特許第4,572,832号
【特許文献15】米国特許第4,713,243号
【特許文献16】米国特許第4,900,554号
【特許文献17】米国特許第5,137,729号
【特許文献18】米国特許第5,800,832号
【特許文献19】米国特許第6,159,498号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明の1つの目的は、粘膜表面での使用のための、新規で用途が広く水腐食性の薬学的キャリアデバイスを提供することである。本発明の別の目的は、腐食性のバッキング層の処方の変更により、多くの活性な化合物に対して、広い範囲の滞留時間を提供し得る粘膜表面での使用のための薬学的キャリアデバイスを提供することである。本発明の別の目的は、活性成分を用いずに使用して粘膜表面の保護を提供し得る水腐食性デバイスを提供することである。本発明のさらなる目的は、単純な製造プロセスを使用して、粘膜表面での使用のための、経済的で市販可能でありかつ大量生産可能な薬学的キャリアデバイスを提供することである。
【0012】
本デバイスは、粘膜表面に適用され、医薬を特定の疾患または障害を処置するために送達する間、適用部位の保護を提供する。本デバイスは、最小限の不快感を引き起こし、使用が容易であり、そして種々の時間間隔にわたる治療剤の送達のために調整され得る効果的な滞留時間を提供する。1つの実施形態において、本デバイスは、水溶性かつ生体腐食性である粘膜接着性多層フィルムを含む。別の実施形態において、薬学的送達デバイスは、接着層を有する多層フィルムおよびコーティングされたプレキャストバッキング層を備え、いずれかまたは両方の層に医薬または他の活性な化合物を含む。フィルムは、任意の所望の形状(例えば、円板、正方形、卵型、平行六面体など)に切断され得るか、または製造され得、この形状は、適用および/または処置における使用に対して便利さを提供する。本デバイスの接着層は、水溶性であり、そしてバッキング層は、生体腐食性である。接着層は、フィルム形成ポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルメチルセルロース)(単独でまたは組み合わせて)、および生体接着性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、または任意の他の公知の、天然に存在する粘膜接着性ポリマーもしくは合成の粘膜接着性ポリマー)(単独でまたは組み合わせて)を含む。非接着性バッキング層は、前もって作製された単独のフィルムであるか、または他の層との組み合わせである。プレキャストフィルムは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、または他の水溶性フィルム形成ポリマーの単独でかまたはこれらの組み合わせで構成される。プレキャストフィルムはまた、ポリマーのフィルム形成特性を増強するためおよび最終の多層デバイスに可撓性を与えるために必要とされる、可塑剤または他の賦形剤を含み得る。非接着性バッキング層は、水溶性である代わりに水腐食性にするようにさらに改変される。定義の目的のために、水腐食性は、水または体液に全部が溶解しないが、水または体液に曝露された場合、崩壊しかつ完全に離散する材料または物質を意味する。これは、バッキング層フィルムをEudragit(登録商標)ならびに/またはエチルセルロースポリマーおよびメチルセルロースポリマーの群から選択されるより疎水性のポリマーでコーティングすることによって達成され、これらのポリマーは、薬学的適用における使用について、FDAに認可されている。当業者に公知である他の疎水性ポリマーもまた、使用され得る。疎水性コーティング層は、まず、従来のコーティング技術によって前もって作製されたフィルムに適用され得、次いで、逆のコートされていない側が、粘膜接着性ポリマー溶液が所望される厚さまでキャストされる支持体として使用され得る。使用される疎水性ポリマーの型および量は、層状フィルムデバイスに対して広くかつ制御された範囲の滞留時間を提供する。さらに、改変されたプレキャスト腐食性バッキング層を使用することは、堅い支持材料(例えば、「Mylar」のようなポリエチレンフィルムまたは接着層およびバッキング層の両方が作製されるキャスティング表面としての他の無孔性材料)を使用する必要性を排除し得る。この堅いキャスティング表面は、もはや層状デバイスの一体化成分ではなく、安全性および製造の点から、特に望ましい。
【0013】
別の実施形態において、本発明のデバイスはまた、キャスティング材料でありかつ支持材料としてのポリエチレンフィルムを除く、非剛性で無孔性の表面を使用して作製され得る。コートされた紙が、好ましいが、当業者に公知の他の材料もまた、受容可能である。このプロセスにおいて、疎水性層は、まず支持体の紙に塗布され得、次いで、プレキャストフィルムが、両方の材料を溶媒乾燥後に一緒に結合する、ローラーおよびポリマー溶液を使用して圧力下で疎水性層に積層され、そして最後に、粘膜接着性溶液は、複合層上にコートされ、そしてコーティング溶媒を除去するために乾燥される。これらの層の間に可塑化されたプレキャストフィルムを組込むことは、最終デバイスに対して有意な全体的な可撓性を与える。粘膜接着性層を乾燥の際にプレキャスト積層フィルムに結合するために、ポリマー溶液を使用することもまた好ましい。次いで、得られた複数層のデバイスは、キャリアの紙から引き剥がされ、所望の形状に切断される。
【0014】
好ましい実施形態において、活性成分を有するかまたは有さない粘膜接着性コーティング溶液または懸濁物は、まずキャリア離型紙上にコートされ、続いて、標準のオーブンを使用して乾燥される。所望の滞留時間を提供する適切な疎水性組成物でコートされたプレキャスト水溶性可塑化フィルムは、ポリマー積層溶液、ローラーおよび圧力を使用して乾燥された接着性フィルムに積層され、次いで、多層化デバイスは、標準のオーブンを使用して乾燥される。次いで、多層化フィルムは、紙から分離され、所望の形状に切断されそしてパッケージングされるか、または多層化フィルムおよび離型紙は、所望の形状に切断され得、そしてパッケージングされる。後の例を用いて、離型紙は、最終デバイスの一体化部分であり、粘膜表面上のパッチの粘膜吸着側の適用の前に除去されなければならない。「Mylar」のような剛性キャスティング支持材料が使用されていないので、患者に対する損傷可能性もまた、除去される。製造条件(例えば、温度、湿度、キャリア離型紙および乾燥時間)に加えて他のコーティング順序およびコーティングプロセスにおけるバリエーションは、最終デバイスの質、再現性および経済性に対する主要な影響を有し得ることは、当業者に明らかである。前述のキャスティングプロセスに加えて多層パッチを製造するための他の公知のプロセスは、本発明の開示において概略されるデバイスを製造するために使用され得ることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明において、粘膜表面に接着する、独自の生体腐食性薬学的層状デバイスが提供される。本発明は、湿潤表面を有し得かつ体液に対して感受性である(例えば、口、膣、肛門、または他の型の粘膜表面)、身体組織、疾患または創傷の処置に最も適用可能である。医薬品または他の活性化合物が、所望の場合、このデバイスに組み込まれ得、そして特定の粘膜部位への適用および接着の際に、その底部組織の保護が生じる。同時に、医薬品は、長期にわたって処置部位、その周辺組織および他の体液に送達される。このデバイスは、処置部位における有効な薬物送達のために適切な制御された滞留時間を提供する。この滞留時間は、使用される薬物の型および治療指標に依存して、数分間〜数時間の範囲を提供するように容易に変更される。1つの実施形態において、この医薬品送達デバイスは、水溶性接着層および水腐食性バッキング層を有する層状フィルムパッチを備え、このデバイスは、これらのいずれかまたは両方の層に医薬品を備える。
【0016】
本発明は、当該分野で公知の生体接着性のゲルおよびペーストを超えた滞留時間の増加に関する利点を提供する。ペーストおよびゲル製品(例えば、Orajel、OrabaseおよびKanka)は、分オーダーの短い滞留期間を有する。これは、制限された接着性または乏しい接着性の結果である。ゲル製品を粘膜表面に適用する際に、粘膜接着性成分は、親油性の粘着表面に即時に浸透しない。代わりに、これらの親水性成分は、唾液または他の体液と急速に混合し、従って、結果として最小滞留時間で、適用部位から除去される。しかし、類似の作用機構は、ペースト製品を用いて、わずかに少ない程度まで生じると予測され得る。これは、より緩やかな腐食プロセスを生じさせる、ペーストのより高い粘度およびより高い疎水性に起因する。本発明の多層フィルムは、粘膜表面に即時性の接着を提供する。これは、水溶性フィルム形成ポリマー内の粘膜接着性ポリマーと、その薄い可撓性固体形態との組み合わせに起因する。固形デバイスは、溶解反応速度論に起因して、ゲルデバイスまたはペーストデバイスよりも緩やかに、溶解または腐食する。
【0017】
当該分野で公知の生体接着性の錠剤もまた、深刻な制限を有する。これは、口腔に適用された後に望ましくない感覚および不快感を引き起こすそれらのかさ高さ(bulkiness)および剛性に主に起因している。これらの錠剤は、有効な滞留時間を提供するが、これらは、本発明のデバイスよりも大規模であるので、その好ましい適用部位は、上歯肉領域または舌下領域上である。この部位は、活性化合物の全身送達には適切であるが、局在された一方向性送達には十分でないかもしれない。本発明のデバイスは、そのより薄くより可撓性の構成の結果として、有効な滞留時間および制御された滞留時間、ならびに最小の不快感および適用の容易さを有する、局所送達と全身送達との両方を提供する。
【0018】
最後に、医薬品を送達するために使用される、当該分野で公知のフィルム系もまた、他の制限を有する。本発明の薬学的デバイスとは異なったこれらのフィルムは、閉塞性でかつ水溶性であり、そして粘膜表面の処理後に除去されるように製造されている。非腐食性デバイスの除去は、粘膜にいくらかの損傷を生じさせ得るか、またはこのデバイスが病変を覆うのに使用される場合、治癒中の粘膜を損傷し得る。本発明の薬学的デバイスは、水腐食性であるように設計され、従って、除去を必要としない。一旦粘膜表面に適用されると、水の吸収がこのデバイスを軟化させ、このデバイスは、経時的に特定の医薬品をその処置部位に送達しながら、ゆっくりと腐食する。
【0019】
1つの実施形態において、本発明は、多層フィルムから構成され、この多層フィルムは、接着層、プレキャスト層、非接着層、水溶性バッキング層、および疎水性被覆層を有する。この疎水性被覆層は、バッキング層を水腐食性にし、そして予測可能でかつ制御された広範な滞留時間を提供する。この接着層は、水溶性であり、このバッキング層は、水腐食性である。このデバイスを製造するために使用される全ての構成要素は、FDAに認可された材料である。医薬品または他の活性剤は、いずれかの層に含まれ得るが、好ましくは、接着層に組み込まれる。この層は、処置部位と直接接触し、そして活性化合物は、この接着層の溶解に関連した速度で放出される、このバッキング層は、接着層が水和する速度を制御し、従って、この接着層の溶解速度に影響を及ぼす。
【0020】
1つの好ましい製造実施形態において、この多層フィルムは、既知の厚みの粘膜接着性被覆溶液で、キャリア離型紙を最初にコーティングすることによって作製され、次いで、従来型のオーブンを使用して乾燥させて、接着層を作製する。この接着層は、この加工工程の間に、このキャリア離型紙に接着されたままでなければならない。なぜなら、その最終多層製品を作製するために、さらなるコーティングがその上部に適用されるからである。しかし、最終的な多層フィルムが作製された後、その組成物は、好ましい形状に切断する前に、このキャリア離型紙から、損傷なしに解放しなければならない。これらの独自の接着特性は、使用される粘膜接着性ポリマーの型、製造条件、環境条件および使用されるキャリア基質の型の関数であることが、当業者に明らかである。次いで、疎水性ポリマーで以前にコーティングされたプレキャスト水溶性フィルムが、乾燥接着層に積層される。この積層は、乾燥後に両方の層を一緒に結合し得るポリマー溶液でこのプレキャストフィルムを湿潤させた後、わずかな圧力でローラーを使用してこのフィルムを一緒に圧縮することによって、最大にされる。このポリマー性の結合溶液は、プレキャストフィルムと接着フィルムの構成要素との両方に適合性でなければならない。好ましい実施形態において、アルコール溶液、または1〜30%の間、より好ましくは5〜20%の間の濃度のポリビニルピロリドンのアルコール/水溶液が、良好な積層を提供する。異なる分子量を有する広範な種々のポリマーが、層を一緒に結合するために使用され得ることは、当業者によって理解される。単独でかまたは組み合わせて使用するための最も適切なポリマーの選択は、接着層中の粘膜接着性ポリマーの型、プレキャストフィルムの組成、およびもしあるならば、いずれかの層に存在する活性化合物に関連する。結合するために使用されるポリマーはまた、安全でかつFDAによって認可されていなければならない。異なるコーティング配列を使用し、そして上で概略されるものの代替物を加工して作製される多層フィルムは、本発明の範囲内であることもまた、理解される。
【0021】
接着層は、少なくとも1種のフィルム形成水溶性ポリマー(代表的には、セルロースポリマーのファミリーから選択される)(「フィルム形成ポリマー」)、およびその生体接着特性について当該分野で公知の少なくとも1種以上のポリマー(「生体接着性ポリマー」)を含有し得る。このフィルム形成ポリマーは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースを、単独でかまたはそれらの組み合わせで含有し得る。このフィルム形成ポリマーの分子量は、10〜10の範囲、より好ましくは、10〜10の範囲である。このフィルム形成ポリマーは、架橋され得、そして/またはその接着層は、溶解特性を変化させるために可塑化され得る。この接着層に含まれる生体接着性ポリマーは、ポリアクリル酸(PAA)(これは、部分的に架橋されていても架橋されていなくてもよい)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、または他の公知の天然に存在するかもしくは合成の粘膜接着性ポリマーを、単独でかまたはそれらの組み合わせで含み得る。これらの生体接着性ポリマーは、乾燥フィルム状態で良好な即効性粘膜接着特性を示すので、好ましい。カルボキシメチルセルロースナトリウムの場合、代表的な平均分子量は、50,000ダルトンと700,000ダルトンとの間、好ましくは、60,000ダルトンと500,000ダルトンとの間の範囲であり、0.7の置換度を有する。この置換範囲は、0.5と1.5との間、好ましくは、0.6と0.9との間で変化する。ポリビニルピロリドンは、その平均分子量に従って特徴付けられ得、5,000ダルトンと150,000ダルトンとの間、好ましくは、10,000ダルトンと100,000ダルトンとの間を含む。いくつかの例において、いくつかの等級のポリビニルピロリドンをポリアクリル酸と組み合わせることによって、沈殿が生じ得、これは、非均一性接着層および潜在的に最適でない粘膜接着特性を生じる。ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとのこのような組み合わせは、回避されなければならない。
【0022】
本発明において使用される生体接着性ポリマーの化学性質(鎖、側鎖および架橋剤を含む)は、粘膜構成物質とポリマーとの間の相互作用(例えば、物理的障害物(entanglement)、ファンデルワールス力、および水素結合)を生じる。粘膜表面は、1人の個体と別の個体とで異なり、かつ長期間で自然に変化するので、少なくとも2種の生体接着性ポリマーの使用および/または同じポリマーの異なる等級の組み合わせの使用は、広範な異なる粘膜表面に、このデバイスの最大の接着性を提供する。しかし、単一の生体接着性ポリマーの使用も、同様に有効である。接着層における生体接着性ポリマー 対 フィルム形成ポリマーの比は、変更され得、そしてこの比は、使用される医薬品または他の活性成分および他の因子の型および量に依存する。しかし、接着層における合わせた構成要素の含量は、5重量%と95重量%との間、好ましくは、10重量%と80重量%との間である。異なる生体接着性ポリマー(PAA、NaCMC、PVP、トラガカント、およびアルギン酸ナトリウム)の重量%に関して、いくつかの例が以下に詳述される。好ましい組み合わせとしては、PAAとNaCMC、NaCMCとPVP、PAAとPVP、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、NaCMCとPVPが挙げられ、異なる分子量等級の数種のポリマーの使用もまた、挙げられる。
【0023】
非接着性バッキング層は、水溶性フィルム形成性の薬学的に受容可能なポリマー(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、または他の水溶性フィルム形成性ポリマー)の、単独またはこれらの組み合わせから構成される、予備作製されたフィルムである。非接着性バッキング層は、さらに、これを水溶性ではなく水腐食性にするように改変される。これは、FDA認可Eudragitポリマー、他の薬学的投薬形態での使用について改良されたエチルセルロースポリマーおよびメチルセルロースポリマーの群から選択されるより疎水性のポリマーを、バッキング層フィルムに組込むことによってまたはこれによってバッキング層フィルムをコーティングすることによって達成される。他の疎水性ポリマーは、単独でまたは他の疎水性ポリマーまたは親水性ポリマーと組み合わせて使用され得る。但し、これらのポリマーまたはポリマーの組み合わせに由来する層は、湿った環境において腐食する。プレキャストバッキング層フィルムは、疎水性コーティング溶液で前もってプレコートされても、最終コーティング工程として層状デバイスに適用されてもよい。1つの実施形態において、プレキャストフィルムに対する腐食性層の適用は、所望される場合、層状デバイスの製造の間に、バッキング層を溶解せずに接着溶液がキャストされ得る支持層としてバッキング層が作用することを可能にする。ポリエチレンまたは他の堅く非腐食性で無孔性表面の除去が生じ、従って、デバイスは、ユーザーを損傷する潜在的脅威をもはや示さない。
【0024】
別の実施形態において、バッキング層は、まずキャリア離型紙または他の無孔性表面に適用され、次いで、乾燥され、プレキャストフィルムが、ポリマー結合溶液でそれを湿らせ、圧力をかけたローラーを使用して、物質を一緒に圧縮することによって疎水性層に積層される。次いで、複合物質が、乾燥され、全てのコーティング溶媒を除去し、そして活性化合物を有するかまたは有さない粘膜接着性コーティング溶液が、ドクターナイフ(doctor blade)を使用して、表面上に塗布され、そして乾燥される。次いで、得られた多層フィルムは、キャリア離型紙から注意深く引き剥がされ、所望の形状に切断される。
【0025】
好ましい製造実施形態において、活性化合物を有するかまたは有さない、既知の厚さの乾燥接着層は、当該分野で公知の技術によって、キャリア離型紙上に製造される。適切な疎水性組成物のバッキング層で前にコートされたプレキャストフィルムは、次いで、そのフィルムをポリマー結合溶液で湿らせ、圧力下でローラーを使用して、物質を一緒に圧縮することによって接着層に積層される。次いで複合フィルムは、乾燥され、キャリア紙から注意深く引き剥がされ、そして所望の形状に切断される。コートされたプレキャストフィルムの一次目的は、デバイスの滞留時間を調節することであるが、これはまた、有意な可撓性を付与し、従って、より扱いやすくかつ快適な製品を提供する。上に開示される条件下で生成されたデバイスが、より経済的かつ大量生産可能であることは明らかである。なぜなら、コーティングパスおよび製造工程の数が減少されるからである。本発明の範囲内において生じる、直接関連する労力費用およびフィルムの材料取り扱いは、従って、先行技術で開示された他の多層フィルムより低い。これらの多層フィルムデバイスに関する別の主要な利点は、活性物質を含む接着層コーティングが、より再現性よくかつ一様に制御され得ることである。まず接着剤がキャリア離型紙に塗布される場合、得られたコーティング厚さ変動性は、これがキャストされる表面の厚さの変動性の関数にすぎない。接着性物質が最後に塗布される場合、このコーティング変動性は、全ての以前のコートの厚さ変動性の関数である。さらに、使用される場合、粘膜接着性コーティング中の任意の活性物質の含量一様性はまた、以前のコーティングの累積的な変動性に起因して、全多層フィルムにわたって、より変化する。
【0026】
プレキャストバッキング層のコーティングに用いられる溶液の型は、代表的に、疎水性Eudragitポリマーまたは疎水性Eudragitコポリマー、あるいはエチルセルロースまたはメチルセルロースと、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールあるいはエタノール、エタノール/水または他の適切な揮発性有機溶媒中に溶解したEudragitまたはエチルセルロースとともに完全に混合され得る任意の他の水溶性ポリマー)との混合物から構成される。水溶性ポリマーに対する疎水性Eudragitまたはエチルセルロースの比は、0.5〜18:1、およびより好ましくは、1:0〜10:1の範囲である。このコーティング溶液はまた、口内におけるこの層の「可撓性」を改良するために、そしてデバイスの腐食速度を調節するために、少量(0重量%〜2重量%)の可塑剤(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリン)を含み得る。さらに、このデバイスの「柔らかさ」および「感触」を改良するために、湿潤剤(例えば、ヒアルロン酸、グリコール酸、および他のαヒドロキシル酸)がまた、添加され得る。最後に、得られる非接着性バッキング層と粘膜接着性層とを区別するのを補助するために、染料および乳白剤が添加され得る。いくつかの乳白剤として、二酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0027】
適切なドクターブレードまたは研究室のコーター装置を用い、プレキャストバッキング層に塗布される混合したコーティングの量は、0mmと1.5mmとの間、最も好ましくは、0.05mmと0.4mmとの間の範囲である。コーティング溶液中に存在する固形物の量、生じる溶液粘稠性および塗布されるコーティングの厚さは、プレキャストバッキング層上に沈着されるべきコーティングフィルムの量を決定する。代表的に、水溶性ポリマーに対する疎水性ポリマーの比の増加は、より長い滞留時間を有するデバイスを提供し、一方で、コーティングの厚さ、粘稠性、コーティング固形物、ポリマー組成、および他の可変物を一定に保つ。さらに、Eugragitおよび/またはエチルセルロース/水溶性ポリマー混合物のコーティングの厚さの増加はまた、他の全ての可変物を一定に保ちつつ、増加した滞留時間を提供する。このことは、本開示の後述で示される実施例において明示される。
【0028】
本発明のデバイスの滞留時間は、改変されたバッキング層の組成および用いた水溶性ポリマーの溶解速度に依存する。滞留時間は、バッキング層に塗布されるコーティング溶液の量およびコーティング溶液の特定の組成によって、数分から数時間まで、容易に制御される。従って、本発明のデバイスは、当該分野に公知のフィルム、錠剤およびゲルよりもより多用途であり、異なる治療的送達時間を必要とする、より広い範囲の薬物または他の活性化合物と共に使用され得る。本発明のデバイスはまた、所望される場合、代表的に、当該分野で公知のデバイスよりも長い滞留時間を提供する。これは、適切なバッキング層処方物の選択の結果であり、バッキング層のより遅い腐食速度を提供し、従って、完全に腐食する前に、より長い時間にわたって、粘膜接着性層が、処置部位と接触し続けることを可能にする。本発明のデバイスは、処置部位に対する活性化合物の一方向性の送達を最大化し、一方で、唾液または他の体液に起因する表面腐食から生じる薬物の全身への送達を最小化する。本発明のデバイスは、当該分野で公知のデバイスよりも、大抵の指標について、治療的により効果的である。それは、薬物の持続レベルが、より長い処置時間にわたって、より制御された速度で送達されるからである。
【0029】
薬学的成分または本発明の他の活性化合物は、単一の医薬品または医薬品の組合せを含み得る。これらの活性成分は、接着層、バッキング層またはこれら両方に組み込まれ得る。所望の場合、当該分野で公知の香味料を添加し、活性化合物の味が隠され得る。浸透増強剤がまた、接着層に含まれ、薬物輸送に対する粘膜の抵抗性の低下を助け得る。当該分野に公知の代表的な増強剤としては、エチレンジアミン四酢酸、キトサン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。薬物溶解性および/または薬物の安定性を増強するための成分もまた、活性成分を含む層に添加され得る。安定剤および溶解剤の例は、シクロデキストリンである。
【0030】
単独または組合せのいずれかで使用され得る医薬としては、抗アレルギー化合物、抗狭心症薬、抗炎症性鎮痛薬、ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン剤、局所麻酔薬、殺菌薬および消毒薬、血管収縮薬、止血剤、化学治療剤、抗生物質、角質溶解剤、焼灼薬、ホルモン、成長ホルモンおよび成長ホルモンインヒビター、鎮痛麻酔薬、および抗ウイルス薬物が挙げられる。
【0031】
抗アレルギー化合物の例としては、アンレキサイクス(amlexanox)、アステミゾール、アゼラスチン(azelastinep)、エミロラスト、アロパタジン(alopatadine)、クロモリン、フェンピプラン、レピリナスト、トラニラスト、およびトラキサノクスが挙げられる。
【0032】
抗狭心症薬の例としては、ニフェジピン、アテノロール、ベプリジル、カラゾロール、およびエパノロールが挙げられる。
【0033】
抗炎症性鎮痛薬の例としては、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナミン酸、フルフェナミン酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナック、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマク、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、塩酸チアラニドなどが挙げられる。
【0034】
ステロイド性抗炎症薬の例としては、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、トリトリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、βメタゾン、吉草酸βメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、ジプロプリオン酸ベクロメタゾンなどが挙げられる。
【0035】
抗ヒスタミン剤の例としては、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸クロルフェニルアミン、マレイン酸クロルフェニルアミン、塩酸イソチペンジル、塩酸トリペレンアミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジンなどが挙げられる。
【0036】
局所麻酔薬の例としては、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸2−(ジエチルアミノ)エチルエステル塩酸塩、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸ピペロカイン、ジクロニン、塩酸ジクロニンなどが挙げられる。
【0037】
殺菌薬および消毒薬の例として、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンズトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウム、オイゲノール、トリメチルアンモニウムブロミド、安息香酸、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
血管収縮薬の例としては、硝酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸フェニルエフリン、塩酸トラマゾリンなどが挙げられる。
【0039】
止血剤の例としては、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、硫酸カルバキソクロムナトリウム、ルチン、ヘスペリジンなどが挙げられる。
【0040】
化学治療剤薬物の例としては、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルミン、スルフィソキサゾール、スルフイソアミジン、スルフアメチゾール、ニトロフラゾン、タキサン、白金化合物、トポイソメラーゼ Iインヒビター、およびアントロサイクリンが挙げられる。
【0041】
抗生物質の例としては、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セフェロチン、セファロルジン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロルアンフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリン、およびクリンダマイシンが挙げられる。
【0042】
角質溶解薬の例としては、サリチル酸、ポドフィルム樹脂、ポドリフォックス、およびカンタリジンが挙げられる。
【0043】
焼灼薬の例としては、クロロ酢酸および硝酸銀が挙げられる。
【0044】
ホルモンの例としては、エストロン、エストラジオール、テストステロン、エキリン、およびヒト成長ホルモンが挙げられる。
【0045】
成長ホルモンインヒビターの例は、オクトレオチドおよびソマトスタチンである。
【0046】
鎮痛麻酔薬の例としては、フェンタニル、ブプレノルフィン、硫酸コデイン、レボルファノール、および塩酸モルフィンが挙げられる。
【0047】
抗ウイルス薬の例としては、プロテアーゼインヒビター、チマジンキナーゼインヒビター、糖合成インヒビターまたは糖タンパク質合成インヒビター、構造タンパク質合成インヒビター、結合インヒビターおよび吸着インヒビター、ならびにヌクレオシドアナログ(例えば、アシクロビル、ペンシクロビル、およびガンシクロビル)が挙げられる。
【0048】
本発明のデバイス中における活性薬剤または医薬品の量は、治療的な必要量に依存するが、好ましくは、薬学的成分は、デバイスの0.001重量%〜30重量%を含み、より好ましくは、0.005重量%〜20重量%を含む。
【0049】
香味料、保存剤、可塑剤、乳白剤、安定剤および可溶化化合物、浸透増強剤、および着色薬剤はまた、デバイスの接着層、バッキング層、または両方の層に含まれ得る。好ましくは、これらの組成物は、最終的なデバイスの5重量%以下に相当する。
【0050】
このデバイスの厚さは、個々の層の厚さに依存して変化し得る。好ましくは、本発明の層状ディスクの厚さは、0.05mm〜1mmの範囲であり、より好ましくは、0.1mm〜0.5mmの範囲である。各個々の層の厚さは、層状デバイスの全体の厚さの10%〜90%で変化し得、好ましくは30%〜60%で変化する。従って、各層の好ましい厚さは、0.002mm〜0.9mmで変化し得、より好ましくは0.003mm〜0.6mmで変化し得る。
【0051】
本発明の薬学的送達デバイスは、当該分野に公知の種々の方法によって調製され得る。1つの実施形態において、その成分は、適切な溶媒中または溶媒の組合せ中に溶解され、溶液が調製される。本発明で使用するための溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘプタン、およびジクロロエタンを、単独でまたは組合せで含み得る。乾燥させた多層フィルム中に含まれる残留溶媒は、可塑剤、腐食速度調節剤(erosion−rate−modifying agent)として作用しうるか、またはいくつかの薬学的利点を提供し得る。所望の残留溶媒は、いずれか一方の層または両方の層に存在しうる。
【0052】
次いで、各溶媒を、基板層または支持層として作用するプレキャストバッキング層上にコーティングする。最終的に、その成分のうちの1つが、懸濁され得る。溶解される各コーティング溶液中の全ての成分が好ましくある一方で、1つ以上の成分溶液であることが、コーティング溶液に部分的または完全に懸濁されるコーティング溶液がまた、用いられ得た。各溶液は、当該分野に公知の技術によって(例えば、フィルム浸漬によって、フィルムコーティングによって、フィルムキャスティングによって、スピンコーティングによって、またはスプレー乾燥によって)、薄いフィルムに成型および処理される。次いで、この薄いフィルムを乾燥させる。この乾燥処理は、任意の適切な型のオーブンを使用して達成され得る。しかし、溶媒残渣は、用いた乾燥手順およびパラメータに依存する。あるいは、多層デバイスの個々の層は、独立して作製され得、次いで、一緒にして積層され得うるか、または他方の上方の層でフィルム化されたものであり得る。本発明の1つの実施形態において、始めに、バッキング層および支持層として用いたプレキャストフィルムを、疎水性ポリマーおよび水溶性ポリマーの適切な混合物を含むアルコールポリマー溶液を用いてコーティングする。引き続いて行われる乾燥の後、次いで、コーティングした形成済みのバッキング層を、薬学的薬剤または他の活性薬剤を含んでも含まなくてもよい適切な粘膜接着性溶液を用いてトップコートするか、または逆の面をコーティングする。適切な乾燥の後、得られた多層フィルムを切断して、粘膜組織に対する適用のために、任意のサイズまたは形にし得る。いくつかの可能な形として、円形、楕円形、正方形、長方形、および平行六面体が挙げられる。
【0053】
好ましい実施形態において、その成分を、適切な溶媒または溶媒の組合せ中に溶解し、溶液を調製する。疎水性ポリマーおよび水溶性ポリマーの適切な混合物を含むポリマーコーティング溶液を、形成済みの水溶性バッキング層に適用する。この溶液を、当該分野に公知の技術によって(例えば、フィルム浸漬によって、フィルムコーティングによって、フィルムキャスティングによって、スピンコーティングによって、またはスプレー乾燥によって)、薄いフィルムに成型および処理される。次いで、この薄いフィルムを乾燥させ、コーティングした形成済みのフィルムを、将来使用するために保存する。この活性成分を有するかまたは有さない粘膜接着性溶液を、所望の厚さのキャリア離型基材に適用する。この溶液を、当該分野に公知の技術によって(例えば、フィルム浸漬によって、フィルムコーティングによって、フィルムキャスティングによって、スピンコーティングによって、またはスプレー乾燥によって)、フィルムに成型および処理され、そしてこのフィルムを引き続き乾燥させる。次いで、このコーティングした形成済みのバッキング層を積層し、キャリア離型基材に結合される乾燥接着性フィルムとする。このことは、始めにコーティングした形成済みバッキング層を、ポリマー結合溶液で濡らし、次いで、圧力下でローラーを用いて両方のフィルムを一緒にプレスすることによって達成される。次いで、この複合性の材料を、標準的なオーブンを用いて乾燥させる。乾燥させた多層フィルム中の残留溶媒含有量は、可塑剤、腐食速度調節剤として作用しうるか、またはいくつかの薬学的利点を提供し得る。所望の残留溶媒は、いずれか一方の層または両方の層に存在しうる。当該分野に公知の他の積層手順もまた、使用され得る。ポリマー結合溶液を、層を溶解または幾何学的に崩壊させることなく、結合して一緒になっている層のマトリックスに浸漬するように注意深く設計し、乾燥させる際に、両方の層に接着し、結合を形成するポリマーを沈着させる。次いで、この多層複合体フィルムを、キャリア離型基材から注意深く剥がし、切断して所望の形にし、そして適切なパッケージに入れる。
【0054】
局所的および全身への薬物投与のための、粘膜表面(特に口腔粘膜)、周囲の組織表面および体液を処置するための方法、方法が提供される。1つの実施形態において、これらの方法は、下にある領域に薬物送達および保護を提供するための、多層接着性フィルムの処置部位への適用を含む。この接着性フィルムは、本明細書中に提供される層状デバイスのいずれかを含み得る。好ましい実施形態において、この方法は、第1粘膜接着層、デバイスに自由度を与える第2バッキング層を有する多層薬学的キャリアデバイスの適用を含み、また、支持層およびデバイスの滞留時間を制御する第3層として作用し得る。薬学的化合物または他の活性化合物は、接着層、バッキング層、または両方の層に存在し得る。
【実施例】
【0055】
(実施例1)
300グラムバッチの粘膜接着性コーティング溶液を、0.22μ濾過した268.2グラムの脱イオン水、5.40グラムのヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250 L NF(BF Goodrich)、3.19グラムのAmlexanox、2−アミノ−7−イソプロピル−5−オキソ−5H−{1}ベンゾピラノール{2,3−b}−ピリジン−3−カルボン酸(Takeda Chemical Industries)、7.81グラムのNoveon AA1、Polycarbophil(BF Goodrich)、13.50グラムのカルボキシメチルセルロースナトリウム、7LF PH(BF Goodrich)、0.96グラムの安息香酸ナトリウム、NF(Spectrum Chemicals)、および0.95グラムのプロピレングリコール、USP(Spectrum Chemicals)を用いて調製した。A−100プロペラを有するLightnin(登録商標)ミキサーを用いて、この粘稠性粘膜接着性コーティング懸濁物を、1000rpmの速度で、効率的に均一化した。生じたフィルム形成ポリマーのパーセントは、1.8%であり、粘膜接着性ポリマーのパーセントは、7.1%であった。この接着性コーティング懸濁物を、以下に示すいくつかの実施例において用いた。
【0056】
(実施例2)
500グラムバッチの粘膜接着性コーティング溶液を、451.5グラムの0.22μ濾過した脱イオン水、8.0グラムのヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250 L NF(BF Goodrich)、9.0グラムのAmlexanox、2−アミノ−7−イソプロピル−5−オキソ−5H−{1}ベンゾピラノール{2,3−b}−ピリジン−3−カルボキシル酸(Takeda Chemical Industries)、11.0グラムのNoveon AA1、Polycarbophil( BF Goodrich)、17.0グラムのカルボキシメチルセルロースナトリウム、7LF PH(BF Goodrich)、1.0グラムのヒドロキシプロピルセルロース、Klucel EF Pharm(BF Goodrich)、1.5グラムの安息香酸ナトリウム、NF(Spectrum Chemicals)および1.0グラムのプロピレングリコール、USP(Spectrum Chemicals)を用いて調製した。A−100プロペラを有するLightnin(登録商標)ミキサーを用いて、この粘稠性粘膜接着性コーティング懸濁物を、1000rpmの速度で、効率的に均一化した。生じたフィルム形成ポリマーのパーセントは、1.8%であり、粘膜接着性ポリマーのパーセントは、5.6%であった。この接着性コーティング懸濁物を、以下に示すいくつかの実施例において用いた。
【0057】
(実施例3)
1784.4グラムバッチの粘膜接着性コーティング溶液を、1520グラムの0.22μ濾過した脱イオン水、36.0グラムのヒドロキシエチルセルロース、Natrosol 250 L NF(BF Goodrich)、73.6グラムベンゾカイン、p−アミノ安息香酸エチル、USP(Spectrum Chemicals)、20.0グラムのPVP、USP(1,000,000分子量(BASF))、36.0グラムのアルギニン酸ナトリウム、NF(Spectrum Chemicals)、24.0グラムのトラガント、NF(Spectrum Chemicals)、62.0グラムのカルボキシメチルセルロースナトリウム、7LF PH(BF Goodrich)、6.4グラムの安息香酸ナトリウム、NF(Spectrum Chemicals)、および6.4グラムのプロピレングリコール、USP(Spectrum Chemicals)を用いて調製した。A−100プロペラを有するLightnin(登録商標)ミキサーを用いて、この粘稠性粘膜接着性コーティング懸濁物を、1000rpmの速度で、効率的に均一化した。この接着性コーティング懸濁物を、以下に示すいくつかの実施例において用いた。
【0058】
(実施例4)
いくつかのコーティング溶液を調製し、そしてそれを用いて滞留時間の異なる多層フィルムを作製した。エタノール(USP、190プルーフ(Spectrum. Chemicals))中に溶解したポリビニルピロリドン(pvp)(16% w/wのPVP)、USP(1,000,000分子量(BASF))、およびエタノール(USP、190プルーフ)中に溶解したエチルセルロース(20% w/wのエチルセルロース)の両ストック溶液を調製した。両ストック溶液のアリコートを合わせ、混合して以下の範囲のコーティング溶液を作製した:
4a.20グラムのpvp溶液と16グラムのエチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1:1(エチルセルロース:pvp)を作製した;
4b.20グラムのpvp溶液と20グラムのエチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1.25:1(エチルセルロース:pvp)を作製した;
4c.20グラムのpvp溶液と28グラムのエチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1.75:1(エチルセルロース:pvp)を作製した;
4d.20グラムのpvp溶液と32グラムのエチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比2:1(エチルセルロース:pvp)を作製した;
4e.20グラムのpvp溶液と40グラムのエチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比2.5:1(エチルセルロース:pvp)を作製した;
4f.20グラムのpvp溶液と12グラムの水とを足す(積層溶液);
4g.3.84グラムのpvp粉末と18.58グラムのエタノールと9.63グラムの水とを足す(積層溶液)。
【0059】
(実施例5)
実施例4と同様に、さらなる疎水性コーティング溶液を、エタノール(USP、190プルーフ(Spectrum. Chemicals))中に溶解したポリビニルピロリドン(16% w/wのPVP)、USP(1,000,000分子量(BASF))、およびエタノール(USP、190プルーフ)中に溶解したEudragit(登録商標)RS−100 NF(Rohm GmbH)(48% w/wのポリマー)の両方のストック溶液を用いて調製した。両ストック溶液のアリコートを合わせ、混合して以下の範囲を作製した:
5a.20グラムのpvp溶液と6.67グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比1:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した;
5b.20グラムのpvp溶液と13.34グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比2:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した;
5c.20グラムのpvp溶液と23.33グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比3.5:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した;
5d.20グラムのpvp溶液と26.67グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比4:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した;
5e.20グラムのpvp溶液と40グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比6:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した;
5f.20グラムのpvp溶液と60グラムのEudragit(登録商標)溶液とを足して、混合コーティング溶液比9:1(Eudragit(登録商標):pvp)を作製した。
【0060】
(実施例6)
実施例4と同様に、さらなる疎水性コーティング溶液を調製し、そしてそれを用いて滞留時間の異なる多層フィルムを作製した。エチルセルロース(エタノール(USP、190プルーフ)中に溶解した25% w/wのEthocel 7(Dow Chemical Corp.製))およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(エタノール(USP、190プルーフ)中に溶解した10% w/wのMethocel E5(Dow Chemical Corp.製))の両ストック溶液を調製した。両ストック溶液のアリコートを、少量のレッドフード着色料(Adams Extracts, Inc.製)(視覚的区別のため)と合わせ、混合し、以下の範囲のコーティング溶液を作製した:
6a.20グラムのエチルセルロース溶液と50.00グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6b.20グラムのエチルセルロース溶液と40.00グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1.25:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6c.20グラムのエチルセルロース溶液と33.33グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比1.5:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6d.20グラムのエチルセルロース溶液と25.00グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比2:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6e.20グラムのエチルセルロース溶液と20.00グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比2.5:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6f.20グラムのエチルセルロース溶液と16.67グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比3:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6g.20グラムのエチルセルロース溶液と12.50グラムのヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液とを足して、混合コーティング溶液比4:1(エチルセルロース:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を作製した;
6h.わずか25%のエチルセルロース溶液。
【0061】
(実施例7)
実施例1において詳述した粘膜接着性コーティング懸濁液と共に、実施例4において概説した疎水性コーティング溶液を用いて、多層フィルムを調製した。まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)の一片(0.004インチ厚)を、約18インチ×11.5インチに切り、そしてWerner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダーの中に置いた。ドクターブレードの設定を、0.15mmに調節し、そして実施例4からの各溶液を、バッキングフィルムの個々のプレキャスト小片に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして堆積された疎水性/水溶性ポリマーの滑らかで完全な層を得た。コーティングした各フィルムを取り出し、そしてバッキング層のコーティングしていない側を上向きにして、フレームに嵌め戻した。0.50mmに調節したドクターブレードを使用して、実施例4からの16%pvp溶液を、各バッキング層のコーティングしていない側に塗布した。次いで、これらのフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして滑らかで完全なpvp層を得た。次いで、実施例1からの接着性コーティング懸濁液を使用して、ドクターブレードでの1.2mm設定を用いて、コーティングしたバッキング層サンプルの各々をコーティングした。これらのフィルムを、前述のように乾燥し、そしてこの接着層を使用して、第2のコーティング工程および乾燥工程を行った。これらの多層フィルムを、インビボ試験に使用する前、防水性のプラスチックバッグ中で保持した。サンプルを、7.4a、7.4b、7.4c、7.4d、および7.4eと名付けた。例えば、サンプル7.4cは、実施例4において概説される、エチルセルロースとポリビニルピロリドンとの1.75:1の比の混合物で構成されるフィルムでコーティングされたヒドロキシプロピルメチルセルロースのバッキング層、および実施例1からの粘膜接着層で疎水性コーティング溶液について0.15mmのコーティング設定を用いて構成される多層フィルムをいう。
【0062】
(実施例8)
実施例7において概説した実験プロセスを、疎水性/水溶性コーティングプロセスのためのコーティング設定が、0.15mmの代りに0.25mmである事を除いて、正確に繰り返した。コーティング厚の量を増加させることの効果および生じた滞留時間を、後の実施例において示し、そして表にする。サンプルを、実施例7と同様に名付けた。例えば、サンプル8.4bは、8.4bサンプルが、より厚いエチルセルロース/pvpコーティングを含むことを除いて、サンプル7.4bと同じ組成である。
【0063】
(実施例9)
実施例2において詳述した粘膜接着性コーティング懸濁液と共に、実施例5において概説したEudragit(登録商標)/pvpコーティング溶液を用いて、多層フィルムを調製した。まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)の一片(0.004インチ厚)を、約18インチ×11.5インチに切り、そしてWerner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダーの中に置いた。ドクターブレードの設定を、0.25mmに調節し、そして実施例5からの各溶液を、バッキングフィルムの個々のプレキャスト小片に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして堆積された疎水性/水溶性ポリマーの滑らかで完全な層を得た。コーティングした各フィルムを取り出し、そしてバッキング層のコーティングしていない側を上向きにして、フレームに嵌め戻した。0.50mmに調節したドクターブレードを使用して、実施例4からの16%pvp溶液を、各バッキング層のコーティングしていない側に塗布した。次いで、これらのフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして滑らかで完全なpvp層を得た。次いで、実施例2からの粘膜接着性コーティング懸濁液を使用して、ドクターブレードでの1.2mm設定を用いて、コーティングしたバッキング層サンプルの各々をコーティングした。これらのフィルムを、前述のように乾燥し、そしてこの接着層を使用して、第2のコーティング工程および乾燥工程を行った。これらの多層フィルムを、インビボ試験に使用する前、防水性のプラスチックバッグ中で保持した。サンプルを、9.5a、9.5b、9.5c、9.5d、9.5eおよび9.5fと名付けた。例えば、サンプル9.5cは、実施例5において概説した、Eudragit(登録商標)とポリビニルピロリドンとの3.5:1の比の混合物で構成されるフィルムでコーティングされたヒドロキシプロピルメチルセルロースのバッキング層、および実施例2からの粘膜接着層で疎水性コーティング溶液について0.25mmのドクターブレード設定を用いて構成される多層フィルムをいう。
【0064】
(実施例10)
実施例9において概説した実験プロセスを、疎水性/水溶性コーティングプロセスのためのドクターブレード設定が、0.25mmの代りに0.5mmである事を除いて、正確に繰り返した。コーティング厚の量を増加させることの効果および生じた滞留時間を、後の実施例において示し、そして表にする。サンプルを、実施例9と同様に名付けた。例えば、10.5bは、10.5bサンプルが、より厚いEudragit(登録商標)/pvpコーティングを含むことを除いて、サンプル9.5bと同じ組成である。
【0065】
(実施例11)
実施例4において詳述したストック溶液を使用して、5.0グラムのpvp溶液および7.0グラムのエチルセルロース溶液を混合した。この溶液に、0.7グラムの緑色食品着色料(Kroger Company)、プロピレングリコール/水中の2%色素(黄色5および青色1)を添加し、完全に混合した。ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)の一片(0.004インチ厚)を、約18インチ×11.5インチに切り、そしてWerner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダーの中に置いた。ドクターブレードの設定を、0.15mmに調節し、そしてこの溶液を、プレキャストバッキング層にコーティングし、そして乾燥させた。滑らかな緑色の均一なコーティングを得た。このフィルムを取り出し、そしてホルダー内で裏返し、そして実施例4の16%pvp溶液および実施例1で示された粘膜接着性コーティング懸濁液を使用して、実施例7において詳述されたのと同様にコーティングし、そして乾燥させた。得られた層状フィルムは、良好な色のコントラスト(適切な滞留時間を提供する緑色の外側層および口腔粘膜へ貼り付けられることが意図される白色不透明の粘膜接着層)を示した。従って、FDA認可の無害の色素を含有することは、最終消費者に、粘膜接着層の処置部位への適切な方向性のための視覚補助を提供する。サンプルを11と名付けた。
【0066】
(実施例12)
実施例2において詳述した粘膜接着性コーティング懸濁液と共に、実施例6において概説した疎水性コーティング溶液を用いて、多層フィルムを調製した。まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)の一片(0.004インチ厚)を、約18インチ×11.5インチに切り、そしてWerner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダーの中に置いた。ドクターブレードの設定を、0.25mmに調節し、そして実施例6からの溶液を、バッキングフィルムの個々のプレキャスト小片に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして堆積された疎水性/水溶性ポリマーの滑らかで完全な層を得た。コーティングした各フィルムを取り出し、そしてバッキング層のコーティングしていない側を上向きにして、フレームに嵌め戻した。0.50mmに調節したドクターブレードを使用して、実施例4からの16%pvp溶液を、各バッキング層のコーティングしていない側に塗布した。次いで、これらのフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして滑らかで完全なpvp層を得た。次いで、接着性コーティング懸濁液(実施例1または2)を使用して、ドクターブレードでの1.2mm設定を用いて、コーティングしたバッキング層サンプルの各々をコーティングした。これらのフィルムを、前述のように乾燥し、そして同じ接着層を使用して、第2のコーティング工程および乾燥工程を行った。これらの多層フィルムを、インビボ試験に使用する前、防水性のプラスチックバッグ中で保持した。サンプルを、12.6a、12.6b、12.6c、12.6d、および12.6eと名付けた。例えば、サンプル12.6cは、実施例6において概説した、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの1.5:1の比の混合物で構成されるフィルムでコーティングされたヒドロキシプロピルメチルセルロースのバッキング層、および実施例2からの粘膜接着層で疎水性コーティング溶液について0.25mmのコーティング設定を用いて構成される多層フィルムをいう。
【0067】
(実施例13)
実施例12において概説した実験プロセスを、使用した接着剤が実施例3からである事を除いて、正確に繰り返した。サンプルを、実施例12と同様に名付けた。従って、サンプル13.6dは、13.6dサンプルが、アンレキサノクス接着剤の代りにベンゾカイン接着剤を含むことを除いて、サンプル12.6dと同じ組成である。
【0068】
(実施例14)
わずかに高い量のアンレキサノクスを含む、実施例1において詳述した粘膜接着性コーティング懸濁液と共に、実施例6において概説した疎水性コーティング溶液6dを用いて、多層フィルムを調製したが、多層フィルムを生成するための加工順序を変更した。まず、ポリプロピレンでコーティングした紙の一片を、Werner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダー上に延ばした。ドクターブレードの設定を、0.25mmに調節し、そして実施例6からの6d溶液を、この紙に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて乾燥させ、そして堆積された疎水性/水侵食性可溶性ポリマーの滑らかで完全な層を得た。次いで、0.004”ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)を、実施例4からの積層溶液4fを用いて、この疎水性フィルムに積層した。実施例4からの16%pvp溶液を、0.60mmに調節したドクターブレードを用いて、バッキング層のコーティングしていない側に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして滑らかで完全なpvp層を得た。最後に、ドクターブレードの設定を1.75mmに調節し、そして実施例14からの接着溶液を、プレキャストフィルムに塗布し、lab coaterにて乾燥させた。この多層フィルムを、インビボ試験に使用する前、防水性のプラスチックバッグ中で保持した。
【0069】
このプロセスは、請負人の場所において、首尾よくスケールアップされた。この単一シートのプロセスは、紙のロールで置き換えられている。このことは、コスト効率が良く、そしてスケーリング可能な量の製品を製造するための連続的コーティングプロセスの潜在力を用いて、より長いフィルムのストリップが製造されることを可能にする。このスケールアッププロセスからのサンプルを、14.6dと名付けた。
【0070】
(実施例15)
実施例14において概説した実験プロセスを、接着剤が実施例3からである事を除いて、正確に繰り返した。サンプルを、実施例12と同様に名付けた。従って、サンプル15.6dは、15.6dサンプルが、アンレキサノクス接着剤の代りにベンゾカイン接着剤を含むことを除いて、サンプル14.6dと同じ組成である。
【0071】
(実施例16)
実施例14において詳述した粘膜接着性コーティング懸濁液と共に、実施例6において概説した疎水性コーティング溶液を用いて、多層フィルムを調製した。まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)の一片(0.004インチ厚)を、約18インチ×11.5インチに切り、そしてWerner Mathis AG Lab Coater,type LTFの紙および箔ホルダーの中に置いた。ドクターブレードの設定を、0.25mmに調節し、そして実施例6からの6d溶液を、バッキングフィルムの個々のプレキャスト小片に塗布した。次いで、このフィルムを、lab coaterの乾燥器部分にて自動的に乾燥させ、そして堆積された疎水性/水溶性ポリマーの滑らかで完全な層を得た。このコーティングしたフィルムを取り出し、後の使用のために保存した。ポリプロピレンでコーティングした紙の一片を、フレームに嵌めた。次いで、実施例14からの接着性コーティング懸濁液を使用して、ドクターブレードでの1.75mm設定を用いて、この紙をコーティングした。これらのフィルムを、前述のように乾燥した。次いで、層状フィルムの2つのストリップを、実施例4からの積層溶液4gを用いて、接着剤をヒドロキシプロピルメチルセルロースプレキャストフィルム(Watson Polymer Films)に向けて一緒に積層した。これらを乾燥し、インビボ試験に使用する前、防水性のプラスチックバッグ中で保持した。
【0072】
このプロセスは、請負人の場所において、首尾よくスケールアップされている。この単一シートのプロセスは、紙のロールで置き換えられている。このことは、コスト効率が良く、そしてスケーリング可能な量の製品を製造するための連続的コーティングプロセスの潜在力を用いて、フィルムの非常により長いストリップが製造されることを可能にする。このスケールアッププロセスからのサンプルを、16.6dと名付けた。
【0073】
(実施例17)
実施例16において概説した実験プロセスを、接着剤が実施例3からである事を除いて、正確に繰り返した。このプロセスはまた、請負人の場所において、首尾よくスケールアップされている。このスケールアッププロセスからのサンプルを、実施例12と同様に名付けた。従って、サンプル17.6dは、17.6dサンプルが、アンレキサノクス接着剤の代りにベンゾカイン接着剤を含むことを除いて、サンプル16.6dと同じ組成である。
【0074】
(実施例18)
多層化薬物送達デバイスのインビボ性能を確認するために、前述の実施例からのフィルムを、ダイパンチを使用して0.5インチの円盤に切った。粘膜接着層を、人差し指で口の粘膜の頬表面に慎重に方向を合わせ、そして2〜4秒間、最初の接着を最大にするために連続的な圧力をかけた。パラメータ(例えば、最初の粘着性、快適さ、および滞留時間)を記録した。これらの結果を、以下に表で示す:
【0075】
【表1】


上記の表から、これらの多層化薬学的薬物送達デバイスについてのより長い滞留時間が、存在する水溶性ポリマーより高い量の疎水性ポリマーを含むコーティング溶液を使用して提供されることが明らかである。さらに、コーティング厚の量を増加させることによって、付随する滞留時間の増加が生じる。
【0076】
コーティング溶液中の疎水性ポリマー成分として、Eugdragit(登録商標)の代りにエチルセルロースを使用することはまた、水溶性ポリビニルピロリドン成分と同じ相対濃度において、より長い滞留時間を提供するようである。おそらく、このことは、エチルセルロースのより大きい疎水性の結果である。1つの他の結論は、疎水性コーティング溶液中の食品着色料およびプロピレングリコールの存在がまた、滞留時間の増加(予測された時間の約2倍)を提供したことである。本発明者らの仮説は、着色料および/またはプロピレングリコールが、疎水性コーティングマトリクスを可塑化し、より緩徐な侵食プロセスの発生を起こし、それ故、滞留時間を増加させるというものである。この発見はまた、使用者が、多層フィルムデバイスの最終疎水性コーティング層におけるプロピレングリコールおよび着色料の濃度の変更によって、滞留時間を潜在的に改変することを可能にする。
【0077】
当業者は、特定の実施形態および実施例が記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変および変更がなされ得ることを理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性な化合物とともに、またはそれなしで使用するための、粘膜接着性、腐食性の多層デバイスであって、局所的、領域的または全身的に活性な、保護または投与のための粘膜表面と接触して配置される、第1の水溶性接着剤層、および該デバイスの滞留時間を制御する第2の水腐食性の非接着性バッキング層を備え;ここで、該第1の層が、少なくとも1つの粘膜接着性ポリマーと組み合わせて、少なくとも1つの水溶性フィルム形成性ポリマーを含み、そして該第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびエチレンオキシド−ポリエチレンオキシドコポリマーの少なくとも1つのプレキャストフィルムを含み、そして、少なくとも1つの疎水性ポリマー単独で、または該バッキング層が生体腐食性であるように少なくとも1つの親水性ポリマーと組み合わせた疎水性ポリマーでコートされる、デバイス。
【請求項2】
前記活性化合物が、薬学的薬物物質である、請求項1に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項3】
前記第1の水溶性接着層が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの水溶性フィルム形成性ポリマーを、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガントガムおよびアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの粘膜接着性ポリマーと組み合わせて含む、請求項1に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項4】
前記第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、その上に前記接着層が調製されるキャスティング表面および支持表面として作用し、そしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルムを、Eugragitポリマー、エチルセルロースおよびメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーを、単独、またはポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーとの組み合わせからなるコーティングとともに含む、請求項1に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項5】
前記第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが0.5:1〜18:1の比の混合物であるコーティングを含む、請求項4に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項6】
前記比が、1:0〜0:1である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのプレキャストフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティングを含み、ここで、該コーティングが、可撓性を改善するために、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセリンからなる群から選択される、少なくとも1つの可塑剤を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティングを含み、ここで、該コーティングが、柔らかさまたは感触を改善するために、少なくとも1つのヒアルロン酸、グリコール酸およびαヒドロキシ酸湿潤剤を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項9】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのプレキャストフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティング混合物を含み、ここで、該コーティングが、該バッキング層を前記粘膜接着性層からの区別を補助するために、二酸化チタン、酸化亜鉛のような乳白剤色素、または乳白剤としてジルコニウムシリケートおよび着色剤としてのFD&C Red、Yellow、GreenまたはBlueを含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、前記接着層に積層され、そしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルムを、Eugragitポリマー、エチルセルロースおよびメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーの単独からなる、または該疎水性ポリマーとポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つの親水性ポリマーとを組み合わせてなるコーティング、と組み合わせて含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが0.5:1〜18:1の比の混合物であるコーティングを含む、請求項10に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項12】
前記比が、1:0〜10:1である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのプレキャストフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティング混合物を含み、ここで、該コーティングが、可撓性を改善するために、可塑剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセリン可塑剤の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティング混合物を含み、ここで、該コーティングが、柔らかさまたは感触を改善するために、湿潤剤として、少なくとも1つのヒアルロン酸、グリコール酸およびαヒドロキシ酸を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのプレキャストフィルム、および疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比のコーティング混合物を含み、ここで、該コーティングが、該バッキング層を前記粘膜接着性層からの区別を補助するために、乳白剤として、二酸化チタン、酸化亜鉛、またはジルコニウムシリケートおよび着色剤としてのFD&C Red、Yellow、GreenまたはBlueを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記粘膜接着性、腐食性の多層が、水溶性接着層および非接着性バッキング層を備え、ここで、該バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの予備作製されたフィルム、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとが1:0〜10:1の比の混合物を含むコーティング、可塑剤、およびその組み合わせた合計が該デバイスの約4重量%より少ない着色剤と乳白剤を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
粘膜表面と接触する第1の水溶性接着層、第2の非接着性バッキング層、および少なくとも1つの該第1の層または第2の層に取り込まれた薬学的薬物物質を含む、請求項1に記載の粘膜接着性、腐食性の多層デバイス。
【請求項18】
前記第1の層または第2の層が、患者のコンプライアンスを改善するために、任意の活性化合物の味をマスクするための香料を含む、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記医薬が、抗アレルギー剤である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記抗アレルギー剤が、アンレキサノクス、アステミゾール、アゼラスチネップ、エミロラスト、アロパタジン、クロモリン、フェンピプラン、レピリナスト、トラニラスト、またはトラキサノクスである、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記医薬が、抗炎症性鎮痛剤である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項22】
前記抗炎症性鎮痛剤が、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナミン酸、フルフェナミン酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アクロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマク、ピロシキカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、または塩酸チアラミドである、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記医薬が、抗狭心症剤である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項24】
前記抗狭心症剤が、ニフェジピン、アテノロール、ベプリジル、クラゾロール、またはエパノロールである、請求項23に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項25】
前記医薬が、ステロイド系抗炎症剤である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項26】
前記ステロイド系抗炎症剤が、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、デマメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノアセトニド、ヒドロコルチゾンアセテート、プレドニソロンアセテート、メチルプレドニソロン、デキサメタゾンアセテート、ベタメタゾン、ベタメタゾンバレレート、フルテタゾン、フルオルメトロン、オルベクロメタゾンジプロピオネートである、請求項25に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項27】
前記医薬が、抗ヒスタミン剤である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項28】
前記抗ヒスタミン剤が、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンマレート、塩酸イソチペンジル、塩酸トリペレナミン、塩酸プロメタジン、または塩酸メソジラジンである、請求項27に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項29】
前記医薬または医薬の組み合わせが、局所麻酔薬である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項30】
前記局所麻酔薬が、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸、塩酸2−(ジ−エチルアミノ)エチルエステル、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸ピペロカイン、ジクロニン、または塩酸ジクロニンである、請求項29に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項31】
前記医薬が、殺菌薬または消毒薬である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項32】
前記殺菌薬または消毒薬が、チメロサール、フェノール、チモール、ベンザルコニウムクロライド、クロロヘキシジン、プロビドンヨード、セチルピリジニウムクロライド、オイゲノール、トリメチルアンモニウムブロマイド、安息香酸または安息香酸ナトリウムである、請求項31に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項33】
前記医薬が、血管収縮薬である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項34】
前記血管収縮薬が、硝酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸フェニレフリン、または塩酸トラマゾリンである、請求項33に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項35】
前記医薬が、止血剤である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項36】
前記止血剤が、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トランキサミン酸、カルバゾクロム、硫酸カルバゾクロムナトリウム、ルチン、またはヘスペリジンである、請求項35に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項37】
前記医薬が、化学治療剤である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項38】
前記化学治療剤が、スルファミン、スルファチアゾール、スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフィソキサゾール、スルフィソミジン、スルファメチゾール、ニトロフラゾン、タキサン、白金化合物、トポイソメラーゼ1インヒビター、またはアントラサイクリンである、請求項37に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項39】
前記医薬が抗生物質である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項40】
前記抗生物質が、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロルジン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリン、またはクリンダマイシンである、請求項39に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項41】
前記医薬が、角質溶解剤である、請求項15に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項42】
前記角質溶解剤が、サリチル酸、ポドフィルム樹脂、ポドリフォックス、またはカンタリジンである、請求項41に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項43】
前記医薬が、焼灼剤である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項44】
前記焼灼剤が、クロロ酢酸または硝酸銀である、請求項43に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項45】
前記医薬が、ホルモンである、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項46】
前記ホルモンが、エストロン、エストラジオール、テストステロン、エクィリン、またはヒト成長ホルモンである、請求項45に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項47】
前記医薬が、成長ホルモンインヒビターである、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項48】
前記成長ホルモンインヒビターが、オクトレオチドまたはソマトスタチンである、請求項47に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項49】
前記医薬が、鎮痛麻酔薬である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項50】
前記鎮痛麻酔薬が、フェンタニル、ブプレノルフィン、硫酸コデイン、レボファノール、または塩酸モルヒネである、請求項49に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項51】
前記医薬が、抗ウイルス薬物である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項52】
前記抗ウイルス薬物が、プロテアーゼインヒビター、チミジンキナーゼインヒビター、糖または糖タンパク質合成インヒビター、構造タンパク質合成インヒビター、付着および吸着インヒビター、またはヌクレオシドアナログである、請求項51に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項53】
前記インヒビターが、アシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、またはガンシクロビルである、請求項52に記載のデバイス。
【請求項54】
前記医薬が、医薬または活性化合物の治療要求に依存して、前記デバイスの約0.001と約30重量%の間である、請求項17に記載の多層医薬キャリアデバイス。
【請求項55】
前記医薬が、前記デバイスの約0.005と約20重量%の間である、請求項17に記載のデバイス。
【請求項56】
粘膜接着性、腐食性の多層デバイスであって、局所的、領域的または全身的に活性な、保護または投与のために粘膜表面と接触して配置される、第1の水溶性接着剤層、および該デバイスの滞留時間を制御する第2の水腐食性の非接着性バッキング層から本質的になり;ここで、該第1の層が、少なくとも1つの粘膜接着性ポリマーと組み合わせて、少なくとも1つの水溶性フィルム形成性ポリマーを含み;そして該第2の水腐食性の非接着性バッキング層が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、およびエチレンオキシド−ポリエチレンオキシドコポリマーの少なくとも1つのプレキャストフィルムを含み、そして、少なくとも1つの疎水性ポリマー単独でコートされるか、または該バッキング層が生体腐食性であるように少なくとも1つの親水性ポリマーと組み合わせた疎水性ポリマーでコートされる、デバイス。

【公開番号】特開2010−159268(P2010−159268A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41418(P2010−41418)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2003−520708(P2003−520708)の分割
【原出願日】平成14年8月16日(2002.8.16)
【出願人】(507088152)ウルル インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】