説明

十字レンチ用補助具

【課題】十字レンチから外れ難く、十字レンチにより大きな力をかけることができる十字レンチ用補助具を提供する。
【解決手段】十字レンチ用補助具18は、レンチ部14bを収容するレンチ収容空間24を形成するレンチ収容部20aと、レンチ収容部20aの先端に形成される鉤部20bと、レンチ収容空間24の上に設けられるレンチ受け部20cを有するレンチ保持部と、レンチ収容部20aの谷部26から外部に向けて延出されるレンチ延長棒部22とを備える。ホイールナット16aに装着したレンチ部14aとその延長上にあるレンチ部14cに鉤部20bを引っかけて、十字レンチ10に補助具18を取り付ける。レンチ収容空間24にレンチ部14bを収容し、レンチ延長棒部22を左に回すと、小さな力でもホイールナット16aを緩められる。また、レンチ部14dを収容するように取り付けるとホイールナット16aを適正な力で締め付けできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤ交換時に使用する十字レンチの補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤ交換の際、レンチを用いてホイールナットを緩め外して、タイヤの脱着を行う。タイヤ交換用レンチにはいろいろな形態のものがあるが、ホイールナットに両手で安定した大きな力をかけやすい十字レンチが最も利用される。
しかし、ホイールナットが硬く締まっていると、十字レンチを用いても大きな力をかけないとホイールナットを緩められない場合がある。一方、力が不足すると、ホイールナットを適正な力(トルク)で締め付けられない場合がある。従って、力のない者、特に女性や高齢者はタイヤの交換を行うことができなかった。
そこで、従来、女性や高齢者のように力がない者でも容易にタイヤ交換を行うことができるようにした十字レンチ加圧補助具が提供されていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−214282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の十字レンチ加圧補助具は、十字レンチを使ってホイールナットを緩める際に手につかむ2本のレンチの先端部にあるソケット部にそのレンチの長さを延長させる延長棒(以下、「補助具」という。)を連結したものである。ホイールナットを緩める際、補助具に手や足を掛け、その手・足の力でホイールナットを緩めることができるようにしたものである。
しかし、特許文献1の補助具は、レンチのソケット部に補助具を連結するものであるため、作業中にレンチから補助具が外れてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するものであって、十字レンチから外れ難く、十字レンチにより大きな力をかけることができる十字レンチ用補助具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の十字レンチ用補助具は、1つのソケットが設けられるレンチ部を収容するレンチ収容空間を形成する略U字形状又はコの字形状のレンチ収容部と、レンチ収容部の先端に形成されるものであってホイールナットに装着したレンチ部とその延長上にあるレンチ部に引っかける鉤部と、前記レンチ収容空間の上に設けられるものであって鉤部を中心にレンチ収容部を動作させる際にその動作方向にレンチ収容空間に収容されるレンチ部を移動させるレンチ受け部とを有するレンチ保持部と、レンチ収容部の谷部から外部に向けて延出されるものであって前記レンチ保持部を動作させるレンチ延長棒部とを備えるようにしたものである。
【0007】
また、前記レンチ収容空間に収容されるソケットを除くレンチ部の先端部に前記レンチ受け部を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の十字レンチ用補助具は、レンチ部の長さを延長するものであり、小さな力を大きな力に変え、その大きな力を十字レンチにかけることができるものである。本発明によると、十字レンチに小さい力しかかけられない女性又は高齢者であっても、ホイールナットを容易に緩めることができ、また、ホイールナットを適正な力(トルク)で締め付けることができることから、力のない者でもタイヤの交換を行うことが可能となる。
また、本発明の十字レンチ用補助具は、十字レンチに確実に取り付けられるものであることから、ソケットに連結する従来の補助具とは異なり、ホイールナットの脱着作業中に十字レンチから外れてしまうおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ホイールナットに装着した十字レンチに取り付けた状態を表わす本発明の十字レンチ用補助具の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図であり、本発明の十字レンチ用補助具の正面図を表わす図である。
【図3】図1のB−B拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、小さい力でホイールナットを緩めることおよび締め付けることを実現するものである。
【実施例】
【0011】
本発明の十字レンチ用補助具を図に基づいて説明する。図1は、ホイールナットに装着した十字レンチに取り付けた状態を表わす本発明の十字レンチ用補助具の平面図である。図2は、図1のA−A断面図であり、本発明の十字レンチ用補助具の正面図を表わす図である。図3は、図1のB−B拡大断面図である。
図1および図2にホイールナットに装着された市販の十字レンチを示す。十字レンチ10は、先端に1つのソケット12(12a,12b,12c,12d)が設けられているレンチ部14(14a,14b,14c,14d)が連結部14eから四方に伸び十字に形成されたものである。ソケット12a,12b,12c,12dは異なる大きさからなるものであり、そのうちいずれか一つが、ホイールナット16(16a,16b,16c,16d)に装着できるものとなっている。図1および図2では、ホイールナット16aにソケット12aおよびレンチ部14aを装着している。この場合、レンチ部14aと隣り合う2本のレンチ部14b及び14dを手に保持して左に回してホイールナット16aを緩める。また、右に回してホイールナット16aを締め付ける。
図1および図2は、ホイールナット16aを緩める場合を表わす図であり、レンチ部14bに本発明の十字レンチ用補助具18を取り付けている。十字レンチ用補助具18は、レンチ保持部20とレンチ延長棒部22とから構成されている。
【0012】
レンチ保持部20は、レンチ収容部20aと、鉤部20bと、レンチ受け部20cとを有するものである。
レンチ収容部20aは、金属棒又は金属パイプ(以下、「金属棒等」という。)を略U字形状又はコの字形状に形成したものである。略U字形状又はコの字形状の金属棒等により形成されるレンチ収容空間24の幅(金属棒28,30間の距離)および長さは、十字レンチ10のレンチ部14およびソケット12を収容できる大きさに設定されているものである。
また、レンチ収容空間24は、レンチ部14およびソケット12を収容できる必要かつ十分な幅にとどめられている。レンチ収容部20aを略U字形状又はコの字形状に形成し、レンチ収容空間24の幅を必要かつ十分なものにとどめることにより、十字レンチ用補助具18のズレを防止することができる。レンチ部14およびソケット12を収容できる必要かつ十分な幅は、ズレ防止部として働くレンチ収容部20aの谷部26の大きさ又は長さにより設定される。
【0013】
鉤部20bは、レンチ収容部20aの金属棒28,30の先端に形成されるものである。鉤部20bは、ホイールナットに装着されたレンチ部14aとその延長上にあるレンチ部14cに引っかけられるように形成されている(図2)。
【0014】
レンチ受け部20cは、レンチ収容部20aのレンチ収容空間24の上に設けられるものである。図1および図2において、レンチ受け部20cは、レンチ収容空間24を形成する1の金属棒28(20a)から他の金属棒30(20a)へかけ渡すように設けられている。鉤部20bを中心にレンチ収容部20aを左回りの方向に動作させると(すなわち、ホイールナット16aを緩める方向に十字レンチ用補助具18を移動させる場合)、レンチ受け部20cを設けないと、レンチ収容部20aのみが移動し、レンチ収容空間24に収容されているレンチ部14bは動作(移動)しない。レンチ受け部20cを設けることにより、レンチ収容部20aの動作と同時に、レンチ収容空間24の上に設けられたレンチ受け部20cがレンチ部14bを受け止め、レンチ収容部20aの動作方向にレンチ部14bを移動させることができる(図2)。
レンチ受け部20cは、レンチ収容部20aに収容されるレンチ部14bの上部(ソケット12b又はそれに近いレンチ部14b)を受け止める位置に設けるようにする(図1および図2)。
【0015】
また、レンチ収容空間24に収容されるソケット12bを除くレンチ部14bの先端部にレンチ受け部20cを設けるようにしてもよい。(図1乃至図3)。レンチ受け部20cがレンチ部14bの先端にのみ当接する位置にレンチ受け部20cを設け、レンチ収容空間24にソケット格納空間32を形成する(図1および図3)。これにより、ソケット12bの径はレンチ部14bの径より径大に形成されていることから、レンチ保持部20でソケット12bを確実に保持でき、ホイールナットを緩める作業において、力を有効にホイールナットに伝えることができる。また、ソケット12bが十字レンチ用補助具18のストッパーとして働き、十字レンチ用補助具18の位置ズレを防止できる。
本発明では、レンチ収容部20a、鉤部20b、レンチ受け部20c等により、十字レンチ10に十字レンチ用補助具18を確実に取り付けられることから、ソケットに連結する従来の補助具とは異なり、ホイールナット16の脱着作業中に補助具18が十字レンチ10から外れてしまうおそれはない。
【0016】
十字レンチ用補助具18のレンチ延長棒部22は、レンチ収容部20aの谷部26(ズレ防止部)から外部に向けて延出されているものである。レンチ収容部20aに収容されているレンチ部14bは、レンチ受け部20cによりレンチ延長棒部22と一連に動作することから、十字レンチ用補助具18を取り付けることによって、レンチ部14bの長さを延長することができる。レンチ延長棒部22を設けることにより、レンチ部14bを手に保持して加える力以上の力をレンチ部14bおよびホイールナット16aに加えることが可能になる。
【0017】
本発明の十字レンチ用補助具18は、レンチ部14bの長さを延長するものであり、小さな力を大きな力に変え、その大きな力をホイールナット16aにかけることができるものである。十字レンチ10に小さい力しかかけられない女性又は高齢者であっても、ホイールナット16aを容易に緩めることができる。また、図1および図2において、レンチ部14dに本発明の十字レンチ用補助具18を取り付けることにより、ホイールナット16aを大きな力(適正な力)で確実に締め付けることができる。よって、本発明により、力のない者でもタイヤの交換を行うことが可能となる。
【0018】
レンチ延長棒部22の先端部には、レンチ保持部20を動作させるときに保持するグリップ22aが形成されている。また、レンチ延長棒部22とレンチ収容部20a(谷部26)には、補強部材36(補強PL)が設けられている。
【0019】
本発明の十字レンチ用補助具の取付方法および動作を図1および図2に基づいて説明する。
緩めるホイールナット16aにそのホイールナット16aをホールドできるソケット12aが設けられたレンチ部14aを装着する。ホイールナット16aに装着したレンチ部14aとその延長上にあるレンチ部14cに十字レンチ用補助具18の鉤部20bを引っ掛けて、十字レンチ10に十字レンチ用補助具18を取り付ける。また、レンチ収容部20aのレンチ収容空間24に、レンチ部14bを収容する。このとき、レンチ受け部20cはレンチ部14bと当接する。
十字レンチ用補助具18のクリップ22aを握り、十字レンチ用補助具18を左回りに回転させるように力Fを加える。これにより、十字レンチ用補助具18のクリップに加える力Fより大きな力が収容したレンチ部14bに加わり、その力によりホイールナット16aを緩めることができる。
ホイールナット16aを締め付ける場合は、レンチ収容部20aのレンチ収容空間24にレンチ部14dを収容するように、十字レンチ用補助具18を取り付ける。これにより、十字レンチ用補助具18のクリップに加える力Fより大きな力でホイールナット16aを締め付けることができる。
【0020】
十字レンチ用補助具18とともに、レンチ支持具34を併用してもよい(図1および図2)。レンチ支持具34は、ホイールナット16に装着されているレンチ部14を水平に支持するものである。レンチ支持具34としては、タイヤ交換に必要な用具であるジャッキを用いることができる。図1および図2において、ホイールナット16aに装着されたレンチ部14aおよび14cはホイールナット16aと同じ高さに支持されている。また、レンチ支持具34の頭部には、レンチ部14を保持する溝部34aが設けられている。
【符号の説明】
【0021】
10 十字レンチ
12 ソケット
14 レンチ部
16 ホイールナット
18 十字レンチ用補助具
20 レンチ保持部
20a レンチ収容部
20b 鉤部
20c レンチ受け部
22 レンチ延長棒部
24 レンチ収容空間
26 谷部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのソケットが設けられるレンチ部を収容するレンチ収容空間を形成する略U字形状又はコの字形状のレンチ収容部と、レンチ収容部の先端に形成されるものであってホイールナットに装着したレンチ部とその延長上にあるレンチ部に引っかける鉤部と、前記レンチ収容空間の上に設けられるものであって鉤部を中心にレンチ収容部を動作させる際にその動作方向にレンチ収容空間に収容されるレンチ部を移動させるレンチ受け部とを有するレンチ保持部と、
レンチ収容部の谷部から外部に向けて延出されるものであって前記レンチ保持部を動作させるレンチ延長棒部と
を備えることを特徴とする十字レンチ用補助具。
【請求項2】
前記レンチ収容空間に収容されるソケットを除くレンチ部の先端部に前記レンチ受け部を設けることを特徴とする請求項1記載の十字レンチ用補助具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22668(P2013−22668A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158271(P2011−158271)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(511174915)