説明

半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法及び半導体ナノ粒子蛍光体

【課題】粒度分布、発光強度に優れた半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法を提供すること。
【解決手段】気相法による半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法において、連続した工程で、且つ脱酸素雰囲気下で製造されることを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法、及び該製造方法で製造された半導体ナノ粒子蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Siナノ粒子作製法ではSi/SiO2をAr雰囲気でスパッタし、SiO2膜中にSi原子集団を作製し、熱処理・フッ酸工程を行うことでSiナノ粒子を取り出すことが佐藤ら特許に開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。但し、各工程間はサンプルの取り出しをしなくてはならないため不連続であることから、工程間に膜上または膜内に不純物が混入すること、Siの末端には酸素などが吸着してしまい、次工程の熱処理・フッ酸工程を経ても、酸素やフッ素などが不均一に粒子表面についてしまうなど、表面酸化膜の制御が難しいことが課題であった。また、フッ酸処理後にSiO2シェル形成の自然酸化膜をつける場合、その制御が難しいことも課題である。そのため、本発明では工程間を連続にすること、且つ脱酸素下の状態で行うことでかかる課題を解決することができた。
【特許文献1】特開2006−70089号公報
【特許文献2】特開2007−63378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、粒度分布、発光強度に優れた半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0005】
1.気相法による半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法において、連続した工程で、且つ脱酸素雰囲気下で製造されることを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0006】
2.前記連続した工程の間は開閉部によって仕切られており、工程ごとに雰囲気ガスを制御することを特徴とする前記1に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0007】
3.半導体ナノ粒子蛍光体を生成させるための基板が連続した工程間を移動できる手段を具備していることを特徴とする前記1または2に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0008】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法において、(1)ガス中で半導体ナノ粒子蛍光体を作製する工程、(2)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体を液中に取り出す工程、(3)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体、または(2)で液中に取り出した半導体ナノ粒子蛍光体に表面修飾を施す工程を有し、且つ外部大気に触れずに連続的に少なくとも2つの工程を経ることを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0009】
5.前記(1)の工程におけるガスが不活性ガスであることを特徴とする前記4に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0010】
6.前記(1)の工程は膜内に半導体ナノ粒子蛍光体を含むことを特徴とする前記4または5に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0011】
7.前記(2)の工程はフッ酸により膜を溶かした後、超音波または攪拌により分散液として取り出すことを特徴とする前記4〜6のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0012】
8.前記分散液が純水またはアルコール類であることを特徴とする前記7に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0013】
9.酸素雰囲気に行うことを特徴とする前記7または8に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【0014】
10.前記1〜9のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法で製造することを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体。
【0015】
11.粒径が1〜30nmであることを特徴とする前記10に記載の半導体ナノ粒子蛍光体。
【0016】
12.前記半導体ナノ粒子蛍光体がSiまたはGeであることを特徴とする前記10または11に記載の半導体ナノ粒子蛍光体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法により、粒度分布、発光強度に優れた半導体ナノ粒子蛍光体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
本発明では、半導体ナノ粒子蛍光体の製造の各工程を脱酸素雰囲気下で少なくとも2つの工程を連続的に行うことにより、各工程間での外部酸素などの大気の影響をなくし、作製した半導体ナノ粒子蛍光体の表面の酸化を制御することができ、均一な粒子形成を行うことができる。これにより発光強度の向上ができる。
【0020】
本発明は、複数の工程を連続的、且つ脱酸素雰囲気下に行うことを特徴とする。脱酸素のためには、工程は下記(1)、(2)が連続していることが好ましい。更に(1)〜(3)の全ての工程が連続していることが好ましい。工程が不連続の場合は各工程での脱酸素の調整が難しく、再現が難しくなる。
【0021】
連続した工程として、具体的には連続した工程の間は開閉部によって仕切られており、工程ごとに雰囲気ガスを制御できることが好ましく、また半導体ナノ粒子蛍光体を生成させるための基板が連続した工程間を移動できる手段を具備していることが好ましい。
【0022】
各工程間の開閉部はシャッター等で仕切られ、他工程のガスの影響を受けない。また、工程間を移動する手段は基板を平らに保持したレール式、ベルトコンベア式であり、進行方向に進むことができ、また上下方向を制御することもできる。
【0023】
本発明に係る半導体ナノ粒子蛍光体製造方法は以下の工程を含む。
【0024】
(1)ガス中で半導体ナノ粒子蛍光体を作製する工程
(2)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体を液中に取り出す工程
(3)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体、または(2)で液中に取り出した半導体ナノ粒子蛍光体に表面修飾を施す工程。この内、少なくとも2つの工程は外部大気に触れずに連続的に経ることである。
【0025】
半導体ナノ粒子蛍光体がSiナノ粒子の場合は以下の如くである。
【0026】
(1)はSi/SiO2のスパッタでSiO2膜内にSi原子集団を形成し、原子集団を熱処理によってSiナノ粒子を作製する工程である。
【0027】
(2)はSiO2膜内のSiナノ粒子をフッ酸蒸気にあて、超音波によって粒子を取り出す工程である。
【0028】
(3)はSiナノ粒子の表面修飾を施す工程である。
【0029】
工程(1)の気相法の半導体ナノ粒子蛍光体作製方法は、スパッタ法、レーザーアブレーション法など雰囲気ガスを調整できるものである。使用するガスは不活性ガス、例えば、Arである。更に工程(1)では、半導体ナノ粒子蛍光体は、例えば、SiO2膜内に形成される。
【0030】
工程(2)の工程はフッ酸により膜を溶かした後、超音波または攪拌により分散液として取り出すことを特徴とする。分散用溶媒としては、エチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、純水を使用する。
【0031】
工程(3)では、表面修飾は末端に生体親和性を持つ官能基を持つ二重結合含有化合物を使用することができる。本発明においては、従来周知の種々のキャッピング剤を使用できるが、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルピロリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、N−ビニルアセタミドなどが好ましい。
【0032】
工程(3)ではSiナノ粒子のシェルは酸化膜でもよい。酸化膜の場合、大気中酸化を行う。好ましくは、前工程と連結した真空チャンバー内を酸素雰囲気にすることでシェル形成を行う。
【0033】
各工程は真空チャンバー内で行うが、工程(2)のフッ酸処理工程を行う場合、プラスチック製のグローブボックスなどを使用することが好ましい。
【0034】
本発明の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法によって製造された半導体ナノ粒子蛍光体の発光色は、粒径によって決まり、平均粒径が小さいほど短波長の発光を示す。通常、平均粒径は1〜8nm程度の範囲にあることが好ましい。粒径分布の標準偏差が20%を超えると、各種の発光が混ざり合ってしまうため20%以下となるようにする。また、生体応用の場合、その粒径は1〜30nmが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0036】
比較例1(スパッタ以外の各工程が酸素雰囲気・不連続工程)
高周波スパッタを行う際に、ターゲットは直径45mmのSiO2のプレート上に4mm角のサイズのSiチップを16個配置した。高周波スパッタ条件としては、ベースガス圧を1.3×10-3Pa、Ar雰囲気ガス圧0.3Pa、高周波電力を200Wとした。作製された膜をチャンバーから取り出し、RTA装置に設置し、酸素雰囲気1100℃の高温処理を行う。
【0037】
その後、大気中に取り出した作製したSi/SiO2膜をフッ酸溶液処理を行った。フッ酸処理は樹脂容器内のフッ酸水溶液の40℃蒸気をあて、SiO2膜内のSiを表面から徐々に出す。次にこの基板を洗浄し、フッ酸粒子を取り除いた後、純水を収容した容器に浸し、超音波をあて液中に粒子を取り出す。
【0038】
更に自然酸化させ、最終的に純水中に酸化膜で覆われたSiナノ粒子分散液が得られた。
【0039】
発光強度は日立製蛍光光度計(日立F−7000)で測定を行った。粒度分布はシスメックス社製、粒度分布径ゼータサイザーを使用して測定を行った。
【0040】
比較例2(スパッタ以外の各工程が酸素雰囲気・連続工程)
高周波スパッタを行う際に、ターゲットは直径45mmのSiO2のプレート上に4mm角のサイズのSiチップを16個配置した。高周波スパッタ条件としては、ベースガス圧を1.3×10-3Pa、Ar雰囲気ガス圧0.3Pa、高周波電力を200Wとした。連続してRTA装置にて、酸素雰囲気1100℃の高温処理を行う。
【0041】
その後、Si/SiO2膜をフッ酸溶液処理を行った。フッ酸処理は樹脂容器内のフッ酸水溶液の40℃蒸気をあて、SiO2膜内のSiを表面から徐々に出す。次にこの基板を洗浄し、フッ酸粒子を取り除いた後、純水を収容した容器に浸し、超音波をあて液中に粒子を取り出す。
【0042】
更に自然酸化させ、最終的に純水中に酸化膜で覆われたSiナノ粒子分散液が得られた。
【0043】
発光強度は日立製蛍光光度計(日立F−7000)で測定を行った。粒度分布はシスメックス社製、粒度分布径ゼータサイザーを使用して測定を行った。
【0044】
比較例3(各工程がアルゴン雰囲気・不連続工程)
比較例1と同様の方法で、スパッタで半導体ナノ粒子蛍光体を作製する工程と高温処理工程とフッ酸処理工程を連結して行った。スパッタ工程、熱処理工程、フッ酸工程をAr雰囲気下で行った。但し、各工程の間は一旦大気中に取り出して次の工程に移した。
【0045】
フッ酸処理は樹脂容器内のフッ酸水溶液の40℃蒸気をあて、SiO2膜内のSiを表面から徐々に出す。次にこの基板を洗浄し、フッ酸粒子を取り除いた後、純水を収容した容器に浸し、超音波をあて純水中に粒子を取り出した。
【0046】
更に自然酸化させ、最終的に純水中に酸化膜で覆われたSiナノ粒子分散液が得られた。
【0047】
発光強度は日立製蛍光光度計(日立F−7000)で測定を行った。粒度分布はシスメックス社製、粒度分布径ゼータサイザーを使用して測定を行った。
【0048】
実施例1(脱酸素雰囲気・連続工程)
比較例2と同様の方法において、スパッタで半導体ナノ粒子蛍光体を作製する工程と高温処理工程とフッ酸処理工程を連結して行った。全ての工程はAr雰囲気下で行った。
【0049】
フッ酸処理は樹脂容器内のフッ酸水溶液の40℃蒸気をあて、SiO2膜内のSiを表面から徐々に出す。次にこの基板を洗浄し、フッ酸粒子を取り除いた後、純水を収容した容器に浸し、超音波をあて純水中に粒子を取り出した。
【0050】
更に自然酸化させ、最終的に純水中に酸化膜で覆われたSiナノ粒子分散液が得られた。
【0051】
発光強度は日立製蛍光光度計(日立F−7000)で測定を行った。粒度分布はシスメックス社製、粒度分布径ゼータサイザーを使用して測定を行った。
【0052】
【表1】

【0053】
表1より、本発明の製造方法により、粒度分布、発光強度に優れた半導体ナノ粒子蛍光体が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法による半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法において、連続した工程で、且つ脱酸素雰囲気下で製造されることを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項2】
前記連続した工程の間は開閉部によって仕切られており、工程ごとに雰囲気ガスを制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項3】
半導体ナノ粒子蛍光体を生成させるための基板が連続した工程間を移動できる手段を具備していることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法において、(1)ガス中で半導体ナノ粒子蛍光体を作製する工程、(2)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体を液中に取り出す工程、(3)(1)で作製した半導体ナノ粒子蛍光体、または(2)で液中に取り出した半導体ナノ粒子蛍光体に表面修飾を施す工程を有し、且つ外部大気に触れずに連続的に少なくとも2つの工程を経ることを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項5】
前記(1)の工程におけるガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項4に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項6】
前記(1)の工程は膜内に半導体ナノ粒子蛍光体を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項7】
前記(2)の工程はフッ酸により膜を溶かした後、超音波または攪拌により分散液として取り出すことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項8】
前記分散液が純水またはアルコール類であることを特徴とする請求項7に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項9】
酸素雰囲気に行うことを特徴とする請求項7または8に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体ナノ粒子蛍光体の製造方法で製造することを特徴とする半導体ナノ粒子蛍光体。
【請求項11】
粒径が1〜30nmであることを特徴とする請求項10に記載の半導体ナノ粒子蛍光体。
【請求項12】
前記半導体ナノ粒子蛍光体がSiまたはGeであることを特徴とする請求項10または11に記載の半導体ナノ粒子蛍光体。