説明

半導体パッケージ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ICチップやLSIチップとマザーボードであるプリント配線板との電気的な接続は、一般的に半導体パッケージを介して行われる。そして、近年においては樹脂封止型の半導体パッケージ(いわゆるプラスティックパッケージ)がその主流を占めている。プラスティックパッケージを作製する場合、LSIチップの誤動作や熱破壊を未然に防止するために、LSIチップの発する熱を確実に放散させることが必要になる。そのため、従来のプラスティックパッケージでは、例えばチップ実装部分の裏面側にCu−W等の高熱伝導材料製の板材である放熱体を配置するという対策が採られている。
【0003】ところが、大型の放熱体を使用することによりパッケージに大きな放熱領域を確保しようとすると、配線を形成することができない領域(デッドエリア)が放熱領域の面積分だけ増えてしまう。このため、パッケージ全体のサイズを大きくせざる得なくなり、結果的に信号伝搬速度の低下などというように電気特性を悪化させてしまう。逆にデッドエリアを極力小さくしてパッケージサイズの現状維持を図ろうとすると、放熱体を小さくせざるを得なく、結果として充分な放熱領域を確保することができなくなる。
【0004】このような問題を解消しうるものとして、高熱伝導性材料からなる板材の片側面に高密度配線層を形成してなる放熱体を、入出力端子を有するベースユニットの窓部に装着した半導体パッケージが従来より提案されている。この半導体パッケージの場合、高密度配線層における電子部品搭載領域に、LSIチップ等が実装される。電子部品搭載領域の外縁部には、複数のボンディングパッドが配設されている。また、ベースユニットの窓部の周囲にも、前記パッドに対応して複数の接続パッドが配設されている。これらのパッドどうしは、ボンディングワイヤを介して電気的に接続される。従って、上記の半導体パッケージは放熱性及びコンパクト性の両方に優れたものになっている。
【0005】また、この種のパッケージでは、ボンディングワイヤ等による電気的接続部分は、何らかの手段によって被覆・保護されることが望ましい。そのため、信頼性向上等の観点からも、ポッティング法による樹脂封止がなされることがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ポッティング法において使用される封止樹脂には流動性があるため、封止樹脂を所定の位置に正確に塗布することが難しい。従って、図6(a),図6(b)に示されるように、ボンディングパッド形成領域R1 を越えて入出力端子形成領域R2 まで封止樹脂70が拡がった箇所が部分的にできやすい。この場合、封止樹脂70が入出力端子71まで到達した部分とそうでない部分とで電気抵抗値に差が生じ、半導体パッケージ72の電気的特性が悪くなる。
【0007】また、封止樹脂70の外形線が不定状になることによって、半導体パッケージ72全体の見栄えも損なわれる。さらに、入出力端子71に封止樹脂70が付着していると、めっきスルーホール内への挿入が困難となり、実装時に不具合が起こりやすくなる。そして、このような封止樹脂70の流動が起こると、ボンディングワイヤ73の露出を避けるためにどうしても樹脂量を増やさざるを得なくなる。その結果、封止樹脂70の拡がりがさらに拡大する。
【0008】入出力端子71に対する封止樹脂70の付着を回避するためには、例えば入出力端子形成領域R2 とボンディングパッド形成領域R1 との間の領域R3 の幅を、ある程度大きく確保すればよいことはいうまでもない。しかし、この方法ではダウンサイジングの要求に逆行することになる。
【0009】本発明は上記の課題を解決するためなされたものであり、その目的は、外形の大型化を招くことなく、封止樹脂の流動に起因する電気的特性の悪化や見栄えの悪化を確実に回避することができる半導体パッケージを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、高熱伝導性材料からなる板材の片側面を放熱領域とし、かつその反対側面を高密度配線層を備える電子部品搭載領域とし、その高密度配線層上に電子部品搭載部を設け、前記高密度配線層を介して電子部品側に電気的に接続される複数の接続端子を前記電子部品搭載領域の外縁部に配設してなる放熱体と、前記放熱体の放熱領域を外側に露出させるための窓部をプリント配線板のほぼ中央部に設け、前記プリント配線板の片側面かつ前記窓部の周囲に複数のボンディングパッドを配設し、さらに前記ボンディングパッド形成領域の外側の領域に複数の入出力端子を配設してなる放熱体装着用のベースユニットとによって構成されるとともに、前記ボンディングパッドと前記接続端子とがボンディングワイヤを介して電気的に接続され、さらにその接続部分が樹脂によって封止されてなる半導体パッケージであって、前記放熱体の高密度配線層は絶縁層と配線パターンとを交互に積層した構成を有するビルドアップ層であり、前記ベースユニットを構成するプリント配線板における前記窓部の内壁面に同プリント配線板の入出力端子形成する面よりも低い上面を持つ段部が形成され、その段部の上面に前記ボンディングパッドが形成されてなる半導体パッケージをその要旨としている。
【0011】請求項2に記載の発明では、請求項1において、前記窓部の内壁面に形成される段部は2段かつ階段状であり、それら段部のうち相対的に高い上面を持つものを前記ボンディングパッドを有する段部とし、相対的に低い上面を持つものを前記放熱体の外縁部を支持する段部としている。
【0012】請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、前記プリント配線板はサブトラクティブプロセスによって形成される多層板であり、前記ボンディングパッドはその内層導体回路の一部に形成されているとしている。
【0013】
【作用】請求項1〜3に記載の発明によると、ボンディングパッドが形成されている面がプリント配線板の入出力端子形成面よりも相対的に低くなるため、窓部の内壁面によって入出力端子形成領域への封止樹脂の流動が阻止される。
【0014】請求項2に記載の発明によると、相対的に低い上面を持つ段部によって放熱体が下面側から確実にかつ水平に支持されるため、ワイヤボンディングの精度が向上する。
【0015】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例の半導体パッケージを図1〜図4に基づき詳細に説明する。
【0016】本実施例の半導体パッケージ11は、図3等に示されるように、基本的にPGAタイプのベースユニット25と、放熱体であるビルドアップ多層薄膜配線板12とによって構成されている。
【0017】ビルドアップ多層薄膜配線板12は、図3に示されるように、高熱伝導性材料からなる板材としてのりん青銅板13を主材料として形成されている。このりん青銅板13の片側面全体は放熱領域となっており、かつその反対側面全体は電子部品搭載領域となっている。電子部品搭載領域全体には、高密度配線層としてのビルドアップ層Bが形成されている。本実施例では、前記ビルドアップ層Bは絶縁層14と極めてファインな配線パターン15とを交互に積層した構成を有している。各層の配線パターン15は、絶縁層14に形成されたバイアホール16によって互いに接続されている。
【0018】図3に示されるように、ビルドアップ層B上には、電子部品搭載部としてのダイパッド17が複数個設けられている。ダイパッド17上には、電子部品としてのLSIチップ18,19が搭載されている。LSIチップ18,19とビルドアップ層B上のボンディングパッド20とは、ボンディングワイヤ21を介して電気的に接続されている。ビルドアップ層Bの外縁部には、接続端子としての多数の接続パッド22が規則的に配設されている。そして、LSIチップ18,19側と接続パッド22とは、ビルドアップ層Bの内層または外層の配線パターン15を介して電気的に接続されている。
【0019】ベースユニット25は、プラスティック製の板材(本実施例ではBT樹脂製の銅張積層板)を主形成材料とするプリント配線板40を用いて作製される。この種の板材には、基本的に穴あけ加工等が容易であるという利点があるからである。本実施例のベースユニット25を構成しているプリント配線板40は、導体層を4つ備えたいわゆる4層板である。図3においてプリント配線板40のピン突出面S1 (同図における上側の面)に形成された第1番めの導体層は、スルーホール28のランド31及び略ロ字状のシール用パターン32である。プリント配線板40のコアとなる内層板41の両面には、第2番め及び第3番めの導体層としての内層導体回路42,43が形成されている。また、プリント配線板40のピン非突出面S2 に形成された第4番めの導体層は、スルーホール28のランド31及び所定形状のグランドパターン44である。このピン非突出面S2 は、ほぼ全体的にソルダーレジスト34によって被覆されている。そして、このプリント配線板40の場合、第2番めの導体層が信号層、第3番めの導体層が電源層、第4番めの導体層がグランド層としての役割を担っている。なお、本実施例のプリント配線板40は、通常のサブトラクティブプロセスによって作製される。
【0020】図1,図2に示されるように、プリント配線板40のほぼ中央部には、前記ビルドアップ多層薄膜配線板12の外形にほぼ等しい外形を有する窓部26が透設されている。前記窓部26の周囲には、表裏を貫通するスルーホール28が多数形成されている。これらのスルーホール28によって、各導体層間の電気的な接続が図られている。各スルーホール28には、入出力端子としての金属製のピン29が挿入されている。なお、このベースユニット25においてピン29が設けられている略ロ字状の帯形領域を、説明の便宜上、入出力端子形成領域R2 と呼ぶことにする。
【0021】図1,図3に示されるように、窓部26の内壁面には、パッド用段部27a及び支持用段部27bの2つが階段状に設けられている。パッド用段部27aの上面の高さは、プリント配線板40におけるピン突出面S1 の高さよりも低くなっている。このパッド用段部27aの上面には、窓部26を全体的に取り囲むように矩形状のボンディングパッド30が配設されている。各ボンディングパッド30とスルーホール28とは、内層導体回路42を介して電気的に接続されている。なお、このベースユニット25においてボンディングパッド30が設けられている略ロ字状の帯状領域を、説明の便宜上、ボンディングパッド形成領域R1 と呼ぶことにする。また、入出力端子形成領域R2 とボンディングパッド形成領域R1 との間に存在する略ロ字状の帯状領域を、空白領域R3 と呼ぶことにする。本実施例の場合、この空白領域R3 の幅は約1mm〜5mmである。
【0022】ここで、ピン突出面S1 とパッド用段部27aの上面の高さとの差は、少なくとも0.3mm以上、好ましくは0.5mm〜1.0mmであることがよい。この差が小さすぎると、封止樹脂36の流動を確実に阻止することができなくなるおそれがある。逆にこの差が大すぎると、前記の流動阻止作用を高めるうえでは好都合である反面、半導体パッケージ11が全体的に肉厚化するおそれがある。本実施例では、かかる点を考慮してこの差を0.5mmに設定している。
【0023】パッド用段部27aの内側には、支持用段部27bが配置されている。支持用段部27bの上面は、パッド用段部27aの上面よりも相対的に低くなっている。本実施例では、具体的にいうとその差はビルドアップ多層薄膜配線板12の厚さとほぼ等しく約1.1mmである。ビルドアップ多層薄膜配線板12を窓部26に嵌合させると、支持用段部27bの上面によってビルドアップ多層薄膜配線板12の裏面外縁部が支持される。
【0024】図3に示されるように、ベースユニット25側のボンディングパッド30と、ビルドアップ多層薄膜配線板12の接続パッド22とは、ボンディングワイヤ33を介して電気的に接続されている。そして、LSIチップ18,19側とビルドアップ多層薄膜配線板12側との電気的接続部分や、ビルドアップ多層薄膜配線板12側とベースユニット25側との電気的接続部分は、封止樹脂36で全体的に封止されている。本実施例では、封止樹脂36として粘度が500cps 〜1000cps のエポキシ樹脂(九州松下製,商品名:CCN2001−23P)が使用されている。LSIチップ18,19側とビルドアップ多層薄膜配線板12側との電気的接続部分とは、詳細にはボンディングパッド20、LSIチップ18,19の上面の図示しないボンディングパッド及びそれらを接続しているボンディングワイヤ21を指す。ビルドアップ多層薄膜配線板12側とベースユニット25側との電気的接続部分とは、ボンディングパッド30、接続パッド22及びそれらを接続しているボンディングワイヤ33を指す。
【0025】図1,図3に示されるように、ピン突出面S1 において窓部26の周囲に形成されたシール用パターン32には、コバール等のような導電性に優れた金属材料からなる封止キャップ45がはんだ付けされている。この封止キャップ45によって、樹脂封止部分が全体的にカバーされる。
【0026】図3に示されるように、ベースユニット25にビルドアップ多層薄膜配線板12を装着すると、ビルドアップ多層薄膜配線板12の放熱領域が窓部26から外側に露出する。そして、本実施例の半導体パッケージ11は、ピン29によって図示しないマザーボードにフェースダウン式に実装される。つまり、実装時においては放熱領域が上向き(外側向き)になり、電子部品搭載領域が下向き(内側向き)になる。そして、前記放熱領域の面積、より詳細には放熱領域のうち窓部26から露出する部分の面積がこの半導体パッケージ11における実際上の放熱面積になる。
【0027】次に、この半導体パッケージ11を作製する手順を図4に基づいて述べる。半導体パッケージ11を構成するビルドアップ多層薄膜配線板12は、次のようにして作製される。まず出発材料であるりん青銅板13の片面を黒化処理し、その上に感光性エポキシ樹脂を塗布する。そして、露光・現像を行うことにより、内径40μmのバイアホール形成用穴を有する厚さ15μmの絶縁層14を形成する。スパッタリングすることによって絶縁層14上に厚さ0.1μmのCr薄層を形成し、更にその上にスパッタリングすることによって厚さ0.2μmのCu薄層を形成する。L/S=25μm/25μmの配線パターン15を形成するためのめっきレジストをCu薄層上に配置する。この状態で電解Cuめっき及び電解Niめっきを順次行うことにより、厚さ6μmのCuめっき層及び厚さ1μmのNiめっき層をそれぞれ形成する。めっきレジストを剥離した後、塩化第二銅溶液と20%塩酸水溶液とを用いて非めっき部分のCu薄層及びCr薄層をエッチングする。そして、以上の工程を必要に応じて繰り返すことにより、絶縁層14と複数種の金属からなる配線パターン15とを交互に形成する。その結果、配線パターン15を5層備えたビルドアップ多層薄膜配線板(35mm角,1.0mm厚)12が作製される。そして、この後にオープン・ショートテストを行う。
【0028】一方、ベースユニット25は次のようにして作製される。まず、BT樹脂製の銅張積層板(50mm角,1.7mm厚)のほぼ中央部を略正方形状に貫通ざぐり加工(31mm角)する。この加工によって当該部分に貫通孔が形成される。所定部分にめっきレジストを配置した状態で電解Cuめっきを行うことにより、必要部分にCuを析出させる。めっきレジストを剥離した後、不要なCuをエッチングする。このエッチングによって、内層導体回路42,43及びボンディングパッド30が形成される。得られた内層板41の両面に、同じくBT樹脂製のプリプレグ46をラミネートする(図4(a) 参照)。このプリプレグ46はいわゆるBステージにあり、その片面には銅箔が貼着されている。ラミネートによって得られた積層体を穴あけ加工することにより、ピン挿入用のスルーホール形成用孔を形成する。
【0029】所定部分にめっきレジストを配置した状態で電解Cuめっきを行うことにより、必要部分にCuを析出させる。めっきレジストを剥離した後、不要なCuをエッチングする。このエッチングによって、ランド31、シール用パターン32及びグランドパターン44が形成される(図4(b) 参照)。この後、ピン非突出面S2 側にソルダーレジスト34を形成した後、スルーホール28内にピン29を挿入する。さらに、ピン突出面S1 側のプリプレグ46をざぐり加工することによって、パッド用段部27aを形成するとともに、ボンディングパッド30を露出させる。また、ピン非突出面S2 側のプリプレグ46をざぐり加工することによって、支持用段部27bを形成するとともに、窓部26を貫通させる。最後にざぐり面をダイシングする(図4(c) 参照)。そして、この後にオープン・ショートテストを行う。
【0030】次に、オープン・ショートテストをパスしたビルドアップ多層薄膜配線板12とベースユニット25とを、銅張積層板の支持用段部27bに配置された接着シール(三菱油化製,商品名:YEF−040)35によって仮接着する。本実施例では、仮接着の圧力は25kgf/cm2 であり、温度は220℃,時間は2分である。その後、150℃,60分でキュアを行うことによって、接着シール35を完全に硬化させる。
【0031】次いで、ダイボンダを使用して、ダイパッド17上にテスト済のCPU用LSIチップ18を1個、メモリ用LSIチップ19を6個搭載する。ここで、ワイヤボンディング装置(九州松下製,商品名:HW−2200)を用いて、LSIチップ18,19をワイヤボンディングする。このとき、同じ装置を用いてボンディングパッド30と接続パッド22との間もワイヤボンディングする。
【0032】そして、ポッティング法による樹脂封止を行って、LSIチップ18,19の電気的接続部分と、ビルドアップ多層薄膜配線板12側とベースユニット25側との電気的接続部分とを、封止樹脂36で全体的に封止する(図4(d) 参照)。最後に、封止キャップ45をシール用パターン32にはんだ付けする。半導体パッケージ11は、以上のような手順を経て製造される。
【0033】さて、本実施例の半導体パッケージ11によると、ビルドアップ多層薄膜配線板12を構成するりん青銅板13の片面側には、高密度配線層であるビルドアップ層Bが形成されている。このため、ベースユニット25と共に半導体パッケージ11を形成したときでも、半導体パッケージ11の表面にビルドアップ多層薄膜配線板12の面積に相当するようなデッドエリアが生じるようなことはない。従って、半導体パッケージ11全体が大型になることなく、充分な放熱領域を確保することが可能となる。また、大型化が回避されることに起因して信号伝搬速度が速くなるなど、電気特性も向上する。そして、上記のように半導体パッケージ11の放熱性が向上することによって、LSIチップ18,19の誤動作・熱破壊等が従来に比して極めて少なくなる。
【0034】また、ベースユニット25の収容部にビルドアップ多層薄膜配線板12を装着すると、りん青銅板13の片側面である放熱領域が窓部26から大きく露出した状態となる。よって、電子部品搭載領域からビルドアップ層B及びりん青銅板13を経て放熱領域に伝導してきた熱は、窓部26を介して大気中に効率良く放散される。
【0035】そして、本実施例の半導体パッケージ11では、窓部26の内壁面にパッド用段部27a及び支持用段部27bの2つが階段状に設けられ、パッド用段部27aの上面にボンディングパッド30が配設されている。従って、ボンディングパッド30が形成されている面は、プリント配線板40のピン突出面S1 よりも相対的に低くなっている。このため、ポッティングによって供給された封止樹脂36が入出力端子形成領域R2 の方向へ拡がろうとするときに、窓部26の内壁面によって封止樹脂36の流動が阻止される。その結果、封止樹脂36の外形線は、窓部26に追従することによって直線状になる。よって、外形線が不定状になりやすかった従来のものに比較して、半導体パッケージ11全体の見栄えも確実に向上する。
【0036】また、封止樹脂36の不均一な流動が解消される結果、電気抵抗値のばらつきも同時に解消され、半導体パッケージ11の電気的特性が確実に向上する。勿論、封止樹脂36の不均一な流動が解消されることによって、ピン実装時における不具合も解消される。加えて、ポッティングを行う際の封止樹脂36の供給作業が極めて容易になる。
【0037】さらに、この半導体パッケージ11では、既存の空白領域R3 の幅をある程度大きくするという対策を採っていないため、外形の大型化を招くこともない。従って、ダウンサイジングの要求に反することもない。
【0038】また、ベースユニット25にビルドアップ多層薄膜配線板12を装着する際、ビルドアップ多層薄膜配線板12の下面外縁部は支持用段部27bの上面によって確実にかつ水平に支持される。そして、このときパッド用段部27aの上面の高さと、ビルドアップ多層薄膜配線板12の上面の高さとが、ほぼ等しくなる。ゆえに、両者の高さにばらつきがある場合に比べて、ボンディングパッド30−接続パッド22間のワイヤボンディングが容易になり、ワイヤボンディングの精度も向上する。
【0039】そして、本実施例のベースユニット25は、上述したように基本的にサブトラクティブプロセスによって作製される4層板であるため、比較的容易にかつ安価に製造することができる。よって、半導体パッケージ11の低コスト化にとって好都合である。また、上記のベースユニット25は、信号層、電源層及びグランド層としての役割を担う導体層を備えているため、電気的特性にも極めて優れている。
【0040】なお、本発明は例えば次のように変更することが可能である。
(1)図5に示される別例1の半導体パッケージ50のような構成を採用してもよい。ベースユニット51を構成するプリント配線板52は、いわゆる5層板である。プリント配線板52の窓部26の内壁面には、3段かつ階段状に段部53a,53b,53cが設けられている。それらの段部53a〜53cのうち、最も内側の支持用段部53cを除く2つのパッド用段部53a,53bの上面には、それぞれ複数のボンディングパッド30が形成されている。即ち、この半導体パッケージ50は、いわゆる2ティア構造を持つものとなっている。勿論、段部53a,53b,53cを4段にすることにより3ティア構造にしたり、5段にすることにより4ティア構造にすることも可能である。そして、以上のような構成を採ったときでも、上記実施例と同等の作用効果を奏する。
【0041】(2)支持用段部27b等は必ずしも窓部26の全周にわたっていなくても足り、窓部26の4つの辺のうちの2つまたは3つでもよい。
(3)多層板であるプリント配線板を形成する方法として、実施例のようなサブトラクティブプロセスばかりでなく、部分的にアディティブプロセスを適用することも可能である。
【0042】(4)実施例に示した製造手順以外の手順で半導体パッケージ11を製造することも勿論可能である。例えば、ベースユニット25の製造において、内層板41にプリプレグ46をラミネートする前に、各プリプレグ46の所定部分をざぐり加工しておいてもよい。
【0043】(5)封止樹脂36の形成材料は、実施例のようなエポキシ樹脂のみに限定されるわけではなく、例えばBT樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等のようなその他のプラスティック材料でもよい。ベースユニット25を構成するプリント配線板25aの主形成材料を、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂に変更することも可能である。
【0044】(6)ベースユニット25のピン29はスルーホールに挿入されるタイプのものに限られない。例えば、ベースユニット25にスルーホールを形成することなく、表面に設けられたパッド等に直に接合するようなタイプにしても良い。また、入出力端子としてのピン29の代わりにストレートウォール状のバンプ等を形成してもよい。
【0045】(7)放熱体であるビルドアップ多層薄膜配線板12を作製する場合、実施例にて用いたりん青銅板13以外にも、例えばアルミニウム板やアルマイト板等の金属板を使用することが勿論可能である。また、金属板のみに限定されることはなく、例えばアルミナ板、ムライト板、窒化珪素板、窒化ホウ素板等のセラミックス基板を使用することも可能である。なお、放熱体を構成する板材は必ずしも完全に板状である必要はなく、例えば放熱領域側の表面に多少凹凸があるものでも構わない。
【0046】ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施例及び別例によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 放熱体の放熱領域を外側に露出させるための窓部をプリント配線板のほぼ中央部に設け、前記プリント配線板の片側面かつ前記窓部の周囲に複数のボンディングパッドを配設し、さらに前記ボンディングパッド形成領域の外側の領域に複数の入出力端子を配設してなるベースユニットであって、前記窓部の内壁面に前記プリント配線板の入出力端子形成面よりも低い上面を持つ段部が形成され、その段部の上面に前記ボンディングパッドが形成されてなる放熱体装着用のベースユニット。
【0047】なお、本明細書中において使用した技術用語を次のように定義する。
「高熱伝導性材料: プラスティック材料に比べて熱伝導性のよい材料をいい、例えば窒化アルミニウム、アルミナ、ムライト等のセラミックス材料や銅、銅合金、アルミニウム等の金属材料をいう。」
【0048】
【発明の効果】以上詳述したように、入出力端子形成面よりも低い部分にボンディングパッドを形成した請求項1〜3に記載の発明によれば、外形の大型化を招くことなく、封止樹脂の流動に起因する電気的特性の悪化や見栄えの悪化を確実に回避することができる。特に請求項2に記載の発明によれば、放熱体が下面側から確実に支持されるため、ワイヤボンディングの精度を向上させることができる。請求項3に記載の発明によれば、製造が容易でありしかも比較的安価な半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のベースユニットを示す底面図。
【図2】図1のベースユニットの平面図。
【図3】実施例の半導体パッケージを示す要部拡大断面図。
【図4】(a)〜(d)は同じくその製造手順を示す概略断面図。
【図5】別例1の半導体パッケージを示す概略断面図。
【図6】(a)は従来の半導体パッケージにおける問題点を説明するための要部拡大底面図、(b)は同じくその要部拡大断面図。
【符号の説明】
11…半導体パッケージ、12…放熱体としてのビルドアップ多層薄膜配線板、13…高熱伝導性材料からなる板材、17…電子部品搭載部としてのダイパッド、18,19…電子部品としてのLSIチップ、22…接続端子としての接続パッド、25,51,56,61…ベースユニット、26…窓部、27a,53a,53b,58a…パッド用段部、27b,53c,63b…支持用段部、29…入出力端子としてのピン、30…ボンディングパッド、33…ボンディングワイヤ、36…封止樹脂、40,52,57,62…プリント配線板、42…内層導体回路、B…高密度配線層、R1 …ボンディングパッド形成領域、R2 …入出力端子形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 高熱伝導性材料からなる板材の片側面を放熱領域とし、かつその反対側面を高密度配線層を備える電子部品搭載領域とし、その高密度配線層上に電子部品搭載部を設け、前記高密度配線層を介して電子部品側に電気的に接続される複数の接続端子を前記電子部品搭載領域の外縁部に配設してなる放熱体と、前記放熱体の放熱領域を外側に露出させるための窓部をプリント配線板のほぼ中央部に設け、前記プリント配線板の片側面かつ前記窓部の周囲に複数のボンディングパッドを配設し、さらに前記ボンディングパッド形成領域の外側の領域に複数の入出力端子を配設してなる放熱体装着用のベースユニットとによって構成されるとともに、前記ボンディングパッドと前記接続端子とがボンディングワイヤを介して電気的に接続され、さらにその接続部分が樹脂によって封止されてなる半導体パッケージであって、前記放熱体の高密度配線層は絶縁層と配線パターンとを交互に積層した構成を有するビルドアップ層であり、前記ベースユニットを構成するプリント配線板における前記窓部の内壁面に同プリント配線板の入出力端子形成する面よりも低い上面を持つ段部が形成され、その段部の上面に前記ボンディングパッドが形成されてなる半導体パッケージ。
【請求項2】前記窓部の内壁面に形成される段部は2段かつ階段状であり、それら段部のうち相対的に高い上面を持つものを前記ボンディングパッドを有する段部とし、相対的に低い上面を持つものを前記放熱体の外縁部を支持する段部とした請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】前記プリント配線板はサブトラクティブプロセスによって形成される多層板であり、前記ボンディングパッドはその内層導体回路の一部に形成されている請求項1または2に記載の半導体パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【特許番号】特許第3506788号(P3506788)
【登録日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【発行日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−322367
【出願日】平成6年12月26日(1994.12.26)
【公開番号】特開平8−181247
【公開日】平成8年7月12日(1996.7.12)
【審査請求日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【参考文献】
【文献】特開 昭63−34961(JP,A)
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