説明

半導体プラスチックパッケージ

【課題】 放熱性、吸湿後の耐熱性などに優れた半導体プラスチックパッケージを得る。
【解決手段】 金属芯プリント配線板を用いるボールグリッドアレイの半導体プラスチックパッケージであって、該金属芯の一部をエンボス加工によって表面の一部に露出し、反対面はへこんだ構造の金属板の、表面突起部の上に固定された半導体チップとその周囲の回路導体とをワイヤボンディングで接続し、表裏の回路を熱硬化性樹脂で金属芯と絶縁されたスルーホール導体で結線し、少なくとも1個以上のスルーホールを金属芯と直接接続し、半導体チップが樹脂封止されてなる半導体プラスチックパッケージ。
【効果】 放熱性、吸湿後の耐熱性などに優れ、大量生産に適した新規な構造の半導体プラスチックパッケージを得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体チップを複数個小型プリント配線板に搭載した形の、新規な半導体プラスチックパッケージに関する。特に、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、ASIC、グラフィック等の比較的高ワットで、多端子高密度の半導体プラスチックパッケージに関する。本半導体プラスチックパッケージは、ソルダーボールを用いてマザーボードプリント配線板に実装して電子機器として使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体プラスチックとして、プラスチックボールグリッドアレイ( P-BGA)やプラスチックランドグリッドアレイ( P-LGA)等、プラスチックプリント配線板の上面に半導体チップを固定し、このチップを、プリント配線板上面に形成された導体回路にワイヤボンディングで結合し、プリント配線板の下面にはソルダーボールを用いて、マザーボードプリント配線板と接続するための導体パッドを形成し、表裏回路導体がメッキされたスルーホールで接続されて、半導体チップが樹脂封止されている構造の半導体プラスチックパッケージが公知である。本公知構造において、半導体から発生する熱をマザーボードプリント配線板に拡散させるため、半導体チップを固定するための上面の金属箔から下面に接続するメッキされた熱拡散スルーホールが形成されている。該スルーホールを通して、水分が半導体固定に使われている銀粉入り樹脂接着剤に吸湿され、マザーボードへの実装時の加熱により、また、半導体部品をマザーボードから取り外す際の加熱により、層間フクレを生じる危険性があり、これはポップサーン現象と呼ばれている。このポプコーン現象が発生した場合、パッケージは使用不能となることが多く、この現象を大幅に改善する必要がある。また、半導体の高機能化、高密度化は、ますます発熱量の増大を意味し、熱放散用のための半導体チップ直下のスルーホールのみでは熱の放散は不十分となってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題点を改善した半導体プラスチックパッケージを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、プリント配線板の片面のほぼ中央に、少なくとも1個以上部分的に露出した内層金属板の上に半導体チップを固定し、該半導体チップをその周囲のプリント配線板表面に形成された回路導体とワイヤボンディングで接続し、少なくとも、該表面のプリント配線板上の信号伝播回路導体を、プリント配線板の反対面に形成された回路導体もしくは該パッケージの外部とハンダボールで接続するために形成された回路導体パッドと、めっきされたスルーホールで結線し、少なくとも半導体チップを樹脂封止し、該内層金属板を、プリント配線板とほぼ同じ大きさでプリント配線板の厚さ方向のほぼ中央に配置し、表裏回路導体と熱硬化性樹脂組成物で絶縁し、かつ、内層金属板には少なくとも1個以上のスルーホール導体径より大きい径のクリアランスホールを形成し、クリアランスホールの孔壁を絶縁化し、少なくとも1個以上のスルーホールを内層金属板と接続しているプリント配線板を用いた半導体プラスチックパッケージであって、該プリント配線板を構成する内層金属板の、半導体チップを直接固定する部分、又は一部分が、内層金属板のエンボス加工により、片表面に突起して露出し、内層金属板の反対側はへこんだ構造であり、この露出金属表面に半導体チップが固定されていることを特徴とする半導体プラスチックパッケージを提供する。本発明によれば、発生した熱はこの放熱用スルーホールを通してマザーボードに逃げるため、半導体チップの下面からの吸湿がなく、吸湿後の耐熱性、すなわちポップコーン現象が大幅に改善できるとともに、熱放散性を大幅に改善でき、加えて大量生産にも適しており、経済性の改善された、新規な構造の半導体プラスチックパッケージを提供することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の半導体プラスチックパッケージは、プリント配線板の厚み方向のほぼ中央に熱放散性の良好な内層金属板を配置し、表裏の回路導体導通用のメッキされたスルーホールは、内層金属板にあけられた該クリアランスホール径より小さめの径の孔とし、埋め込まれた樹脂のほぼ中央に形成することにより、内層金属板との絶縁性を保持する。
【0006】公知のスルーホールを有する金属芯プリント配線板の上面に半導体チップを固定する方法においては、従来の P-BGAパッケージと同様に半導体チップからの熱は直下の熱放散用スルーホールに落として熱放散せざるを得ず、ポプコーン現象は改善できない。本発明は、まず金属芯とする両面平滑な金属板に表裏の導通スルーホールを形成可能なように、スルーホールを形成しようとする位置にスルーホール径より大きめのクリアランスホールを、公知のエッチング法、打ち抜き法、ドリル、レーザー等で金属芯に孔を形成しておく。次いで、エンボス加工により、平坦な金属板を、少なくとも1箇所以上、上側に凸として、下側凹形状のへこました構造とする。この突起部分の高さは、特に限定はないが、一般的には30〜 200μmであり、この突起の部分を表面に露出して半導体チップを固定する。半導体から発生する熱は、半導体チップを搭載する部分から金属板全体に熱伝導されるために、直接金属板に接続するスルーホールを通して熱をマザーボードプリント配線板等に拡散する構造とする。
【0007】該突起とスルーホールが形成された金属板の表面に公知の方法で酸化処理、微細凹凸形成、皮膜形成等の接着性や電気絶縁性向上のための表面処理を必要に応じて施す。該表面処理され、突起部とクリアランスホールが形成された金属板の、半導体チップを直接固定する面以外は、すべて熱硬化性樹脂組成物で絶縁部を形成する。熱硬化性樹脂組成物による絶縁部の形成は、半硬化状態の熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥したローフロー、或いはノーフローのプリプレグ等を用い、半導体チップを直接固定する突起のある金属部分に相当するプリプレグの部分を、あらかじめ突起部分の面積よりやや大きめの孔を打ち抜き等によってあけておき、これを表面に配置し、裏面には孔のあいていないハイフローのプリプレグを配置し、加熱、加圧下に積層成形する。プリプレグの厚みは金属突起の高さよりやや高めになるように作成する。加熱、加圧工程中に、熱により1度熔融した半硬化状態の熱硬化性樹脂を金属板のクリアランスホールに流し込んでクリアランスホールの中を埋め込むと同時に、金属突起物の表面以外は熱硬化性樹脂組成物で一体化する。
【0008】また、無溶剤或いは溶剤タイプの熱硬化性樹脂組成物を用い、スクリーン印刷等で該金属板突起場所以外に塗布し、更には裏面も同様に塗布してから加熱して半硬化状態とした後、外側に金属箔を配置し、加熱、加圧下に積層成形して一体化する。積層成形する場合、クリアランスホール内に樹脂を流し込むと同時に熱硬化させる。クリアランスホールの中に樹脂をあらかじめ充填する場合、スクリーン印刷等で塗布する際に、低圧にてクリアランスホールの中に樹脂を流し込み、溶剤或いは空気を加熱しながら抜き、半硬化或いは硬化する。溶剤が入っている場合、クリアランスホール内の未充填が起こり易いため、無溶剤液状の熱硬化性樹脂組成物の方が好ましく、これをクリアランスホール、さらには下部の凹部に流し込み、半硬化、又は硬化させ、その後、スクリーン印刷等で半導体チップ搭載用金属露出部以外に樹脂を塗布し、加熱して半硬化状態としてから、その外側に金属箔を被せ、加熱、加圧下に、好ましくは真空下に積層成形する。いずれの方法においても、金属板のクリアランスホール内を熱硬化性樹脂組成物で充填されるように加工する。
【0009】金属板の側面については、熱硬化性樹脂組成物で埋め込まれている形、一部金属が露出している形、或いは全体が露出している形、いずれの形でも良い。
【0010】上記サブトラクティブ法によるスルーホールプリント配線板の形成のためには、積層成形時に、表裏の最外層に、プリント配線板よりやや大きめの金属箔、或いは片面銅張積層板を配置して、加熱、加圧下に積層成形することにより、外層回路形成用の金属箔で表裏が覆われた金属箔張多層板が形成される。
【0011】表裏層に金属箔を使用しないで積層成形する場合、公知のアディティブ法にて回路を形成し、プリント配線板を作る。
【0012】上記サブトラクティブ法、セミアディティブ法で作成した板の、半導体を固定する部分以外の箇所に表裏の回路を導通するスルーホール用孔をドリル、レーザー或いはプラズマ等、公知の方法にて小径の孔をあける。
【0013】表裏信号回路用のスルーホール用孔は、樹脂の埋め込まれた金属板クリアランスホールのほぼ中央に、金属板と接触しないように形成する。次いで無電解メッキや電解メッキによりスルーホール内部の金属層を形成して、メッキされたスルーホールを形成するとともに、フルアディティブ法では、同時に表裏にワイヤボンディング用端子、信号回路、ソルダーボール用パッド、導体回路等を形成する。
【0014】セミアデティブ法では、スルーホールをメッキすると同時に、表裏も全面メッキされ、その後、公知の方法にて上下に回路を形成する。また、表裏金属箔を使用して積層成形されたものは、表裏の回路形成工程で、半導体チップ固定部分の金属突起部分の表面にある金属箔も除去される。
【0015】この場合、貴金属メッキの必要のない箇所は、事前にメッキレジストで被覆しておく。または、メッキ後に、必要により公知の熱硬化性樹脂組成物、或いは光選択熱硬化性樹脂組成物で、少なくとも、金属突起部、ボンディングパッド、反対面のハンダボール接着用パッド以外の表面に皮膜を形成する。片面銅張積層板を使用した場合、回路形成後、或いは貴金属メッキ後にルータ等で半導体チップ搭載箇所金属板の上の基材を切除する。
【0016】該プリント配線板の半導体を接着する金属板の突起部分の表面に接着剤や金属粉混合接着剤を用いて、半導体チップを固定し、さらに半導体チップとプリント配線板回路のボンディングパッドとをワンヤボンディング法で接続し、少なくとも、半導体チップ、ボンディングワイヤ、及びボンディングパッドを公知の封止樹脂で封止する。
【0017】半導体チップと反対面のソルダーボール接続用導体パッドに、ソルダーボールを接続して P-BGAを作り、マザーボードプリント配線板上の回路にソルダーボールを重ね、熱によってボールを熔融接続するか、またはパッケージにソルダーボールをつけずに P-LGAを作り、マザーボードプリント配線板に実装する時に、マザーボードプリント配線板面に形成されたソルダーボール接続用導体パッドと P-LGA用のソルダーボール用導体パッドとを、ソルダーボールを加熱熔融することにより接続する。
【0018】本発明に用いる金属板は、特に限定しないが、高弾性率、高熱伝導性で、厚さ30〜 300μmのものが好適である。具体的には、純銅、無酸素銅、その他、銅が95重量%以上のFe、Sn、P、Cr、Zr、Zn等との合金、或いは合金の表面を銅メッキした金属板等が好適に使用される。
【0019】本発明の金属板の突起部の高さは、30〜 200μmが好適である。また、突起部をく抜いたプリプレグ、或いはスクリーン印刷で形成する熱硬化性樹脂の高さは、この突起と同じ高さか、やや高いことが好ましい。突起部の面積は、半導体チップの面積と同等以上である。一般的には5〜20mm角である。
【0020】本発明で使用される熱硬化性樹脂組成物の樹脂としては、一般に公知の熱硬化性樹脂が使用される。具体的には、エポキシ樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミドーシアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられ、1種或いは2種類以上が組み合わせて使用される。耐熱性、耐湿性、耐マイグレーション性、吸湿後の電気的特性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適である。
【0021】本発明の好適な熱硬化性樹脂分である多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3 −又は1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5 −トリシアナトベンゼン、1,3 −、1,4 −、1,6 、1,8 −、2,6 −又は2,7 −ジシアナトナフタレン、1,3,6 −トリシアナトナフタレン、4,4 −ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2 −ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2 −ビス(3,5 −ジブロモー4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類などである。
【0022】これらのほかに特公昭 41-1928、同43-18468、同 44-4791、同45-11712、同46-41112、同47-26853及び特開昭51-63149等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いら得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量 400〜 6,000のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。
【0023】エポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。具体的には液状或いは固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エボキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;ブタジエン、ペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンチルエーテル等の二重結合をエポキシ化したポリエポキシ化合物類;ポリオール、水酸基含有シリコン樹脂類とエポハロヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジル化合物類等が挙げられる。これらは1種或いは2種類以上が組み合わせて使用され得る。
【0024】ポリイミド樹脂としては、一般に公知のものが使用され得る。具体的には、多官能性マレイミド類とポリアミン類との反応物、特公昭 57-005406に記載の末端三重結合のポリイミド類が挙げられる。
【0025】これらの熱硬化性樹脂は、単独でも使用されるが、特性のバランスを考え、適宜組み合わせて使用するのが良い。
【0026】本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、不飽和ポリエステル等の重合性二重結合含有モノマー類およびそのプレポリマー類;ポリブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等の低分子量液状〜高分子量の elasticなゴム類;ボリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、 ABS樹脂、 MBS樹脂、スチレン−イソプレンゴム、ポリエチレン−プロピレン共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化エチレン共重合体類;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド等の高分子量プレポリマー若しくはオリゴマー;ポリウレタン等が例示され、適宜使用される。また、その他、公知の無機或いは有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0027】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用い得る。使用量は、熱硬化性樹脂 100重量部に対して 0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0028】プリプレグの補強基材として使用するものは、一般に公知の無機或いは有機の織布、不織布が使用される。具体的には、Eガラス、Sガラス、Dガラス等の公知のガラス繊維布、全芳香族ポリアミド繊維布、液晶ポリエステル繊維布等が挙げられる。これらは、混抄でも良い。また、ポリイミドフィルム等のフィルムの表裏に熱硬化性樹脂組成物を塗布、加熱して半硬化状態にしたものも使用できる。
【0029】最外層の金属箔は、一般に公知のものが使用できる。好適には厚さ3〜100μmの銅箔、ニッケル箔等が使用される。
【0030】金属板に形成するクリアランスホールの径は、表裏導通用スルーホール径よりやや大きめに形成する。具体的には、該スルーホール壁と金属板クリアランスホール壁とは、熱硬化性樹脂組成物による絶縁距離が50μm以上であることが好ましい。表裏導通用スルーホール径については、特に限定はないが、50〜300μmが好適である。
【0031】本発明の多層プリント配線板用プリプレグを作成する場合、基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸、乾燥し、半硬化状態の積層材料とする。また基材を使用しない半硬化状態とした樹脂シートも使用できる。或いは塗料も使用できる。この場合、半硬化状態の程度により、ハイフロー化、ローフロー化、ノーフロー化する。ノーフローとした場合、加熱、加圧して積層成形した時、樹脂の流れ出しが 100μm以下、好ましくは50μm以下とする。また、この際、金属板、金属箔とは接着し、ボイドの発生しないことが肝要である。プリプレグを作成する温度は一般的には 100〜 180℃である。時間は5〜60分であり、目的とするフローの程度により、適宜選択する。
【0032】本発明の金属芯の入った半導体プラスチックパッケージを作成する方法は特に限定しないが、例えば以下(図1)の方法による。
(1)内層となる金属板を用意する。
(2)全面を液状エッチングレジストで被覆し、加熱して溶剤を除去した後、半導体チップを固定する突起部のレジストが残るように作成したネガフィルムを被せ、紫外線照射後、1%炭酸ナトリウム水溶液で未露光部分を溶解除去した後、エッチングにて金属板にクリアランスホールを作成する。
(3)エッチングレジストを除去した後、エンボス加工により、表面に凸、下面が凹の形状にする。凸とした突起部は半導体チップ搭載部である。
(4)金属板全面を化学表面処理し、金属突起部の部分よりやや大きめに孔をあけたローフロー、或いはノーフロープリプレグを表側に、裏面には孔のあいていないハイフロープリプレグを配置し、上下に金属箔を置く。
(5)加熱、加圧、真空下に積層成形し、クリアランスホールに樹脂を充填すると同時に一体化する。
(6)所定の位置にドリル、或いはレーザー等でスルーホールを内層金属箔に接触しないようにあける。又、放熱用の孔を金属板に直接接触するようにあける。
(7)デスミア処理を施した後、金属メッキを行い、公知の方法にて上下に回路を作成すると同時に、金属板突起部の金属箔を除去する。メッキレジストで被覆後、貴金属メッキを施し、半導体チップ搭載部である内層金属板の突起部の表面に半導体チップを導電ペーストで接着し、ワイヤボンディングを行い、その後、樹脂封止して、必要によりハンダボールを接着する。
【0032】
【実施例1】以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
【0033】〔実施例1〕2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン 900部、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン 100部を 150℃に熔融させ、撹拌しながら4時間反応させ、プレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。これにビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、油化シェルエポキシ<株>製) 400部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名: ESCN-220F、住友化学工業<株>製) 600部を加え、均一に溶解混合した。更に触媒としてオクチル酸亜鉛 0.4部を加え、溶解混合し、これに無機充填剤(商品名:焼成タルク BST-200、日本タルク<株>製)500部を加え、均一撹拌混合してワニスAを得た。このワニスを厚さ 100μmのガラス織布に含浸し 150℃で乾燥して、ゲル化時間(at170℃)7秒、 170℃、 20kgf/cm2、5分間での樹脂流れ110μmとなるように作成した、厚さ 105μmの半硬化状態のローフロープリプレグ(プリプレグB)を得た。またゲル化時間 114秒、樹脂流れ13mm、厚さ 109μmのハイフロープリプレグCを作成した。一方、内層金属板となる厚さ 250μmの銅板を用意し、金属板の全面に液状エッチングレジストを厚さ20μm塗布し、乾燥して溶剤を飛ばした後、クリアランスホール部が残るようにしたネガフィルムを被せ、紫外線照射してからクリランスホール部のレジスト膜を1 %炭酸ナトリウム水溶液で除去した後、両側からエッチングによって 0.6mmφのクリアランスホールをあけた。この後、エンボス加工により、下側からから圧力をかけ、大きさ50mm角の中央表面に、面積13mm角、高さ 100μmの突起を作成し、下側はへこんだ構造の金属板とした。この金属板全面に黒色酸化銅処理を施し、表面には、突起部分に相当する位置に、突起部より50μm大きめの孔をパンチングにてあけた上記プリプレグBを被せ、下側には上記プリプレグCを配置し、その両外側に厚さ8μmの電解銅箔を被せ、 200℃、 20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形して一体化した。クリアランスホール箇所は、クリアランスホール部の金属に接触しないように、中央に孔径0.25mmのスルーホールをドリルにてあけ、放熱用スルーホールを4隅内層金属板と接続してあけ、デスミア処理後、銅メッキを無電解、電解メッキで行い、孔内に17μmの銅メッキ層を形成した。表裏に液状エッチングレジストを塗布、乾燥してからポジフィルムを重ねて露光、現像し、表裏回路を形成するとともに、突起部上の銅箔も同時にエッチング除去した。内層金属板の突起部、ボンディングパッド部及びボールパッド部以外にメッキレジストを形成し、ニッケル、金メッキを施してプリント配線板を完成した。上面突起部に大きさ13mm角の半導体チップを銀ペーストで接着固定した後、ワイヤボンディングを行い、次いでエポキシ樹脂ベースの封止用コンパウンドを用い、半導体チップ部を樹脂封止して半導体パッケージを作成し、ハンダボールを付けた(図1、図2)。これをエポキシ樹脂のマザーボードプリント配線板の上に、加熱によってハンダボールを熔融させて接続した。この半導体プラスチックパッケージの評価結果を表1に示す。
【0033】〔実施例2〕内層となる、厚さ 250μmのCu: 99.86重量%、Fe:0.11重量%、P:0.03重量%の合金板を用意し、実施例1と同様に加工して、クリアランスホールを作成後、エンボス加工にて表面に大きさ4mm角、高さ 100μmで、4個の突起を作成し、裏面は凹とした。更に 0.6mmφのクリアランスホールをあけ、同様にパンチングで突起部に孔をあけたプリプレグBを表面に配置し、下側にはプリプレグCを配置し、さらにその両側に厚さ12μmの電解銅箔を置き、同一条件で積層成形した。クリアランスホール箇所は、クリアランスホール部の金属に接触しないように、ドリルにて中央に孔径0.20mmのスルーホールをあけ、放熱部は同一径の孔を金属板に接触するようにあけ、デスミア処理後、銅メッキを無電解、電解メッキにて行い、孔内に17μmの銅メッキ層を形成した。表裏に液状エッチングレジストを塗布、乾燥して溶剤を除去してからポジフィルムを重ねて、露光、現像して表裏回路を形成すると同時に、金属突起部及び半導体チップを接着する範囲の部分の銅箔をエッチングで除去した。後は実施例1と同様に、半導体チップ搭載用突起部、ボンディングパッド部及びボールバッド部以外にメッキレジストを形成し、ニッケル、金メッキを施してプリント配線板を完成させた。これに半導体チップを銀ペーストで接着し、ワイヤボンディングを行い、樹脂封止して半導体パッケージとした(図3、図4)。これを同様にマザーボードに接続した。評価結果を表1に示す。
【0035】〔比較例1〕実施例1のプリプレグCを2枚使用し、上下に電解銅箔を配置し、 200℃、 20kgf/cm2、30mmHg以下の真空下に2時間積層成形し、両面銅張積層板を得た。所定の位置に孔径0.25mmφのスルーホールをドリルであけ、デスミア処理後に銅メッキを施した。この板の上下に公知の方法で回路を形成し、メッキレジストを施し、ニッケルメッキ、金メッキを付けた。これは半導体チップを搭載する箇所の下に放熱用のスルーホールが形成されており、この上に銀ペーストで半導体チップを接着し、ワイヤボンディング後、エポキシ封止用コンパウンドで実施例1と同様に樹脂封止し、ハンダボールを付けた(図5)。また、同様にマザーボードに接続した。この半導体プラスチックパッケージの評価結果を表1に示す。
【0036】〔比較例2〕エポキシ樹脂(商品名:エピコート1045)500部、及びエポキシ樹脂(商品名:ESCN220F) 500部、ジシアンジアミド 300部、2−エチルイミダゾール2部をメチルエチルケトンとジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解し、これを厚さ 100μmのガラス織布に含浸させて、ゲル化時間( at170℃)10秒、樹脂流れ98μmのノーフロープリプレグ(プリプレグD)、ゲル化時間 150秒、樹脂流れ18mmのハイフロープリプレグ(プリプレグE)を作成した。プリプレグEを2枚使用し、 170℃、 20kgf/cm2、30mmHgの真空下で2時間積層成形して両面銅張積層板を作成した。後は比較例1と同様にプリント配線板を作成し、半導体チップ搭載部分をザグリマシーンにてくり抜いてから、裏面に厚さ 200μmの銅板を、上記ノーフロープリプレグDを打ち抜いたものを使用して、加熱、加圧下に同様に接着させ、放熱板付きプリント配線板を作成した。これはややソリが発生した。この放熱板に直接銀ペーストで半導体チップを接着させ、ワイヤボンディングで接続後、液状エポキシ樹脂で封止し、金属張り合わせ面とは反対側の面にハンダボールを付けた(図6)。同様にハンダボールを用いてマザーボードに接続した。この半導体プラスチックパッケージの評価結果を表1に示す。
【0037】<測定方法>1)吸湿後の耐熱性・JEDEC STANDARD TEST METHOD A113-A LEVEL3:30℃・60%RHで所定時間処理後220℃リフローソルダー3サイクル後の基板の異常の有無について、断面観察及び電気的チェックによって確認した。
2)吸湿後の電気絶縁性・JEDEC STANDARD TEST METHOD A113-A LEVEL2:85℃・60%RHで所定時間( Max.168hrs.)処理後、 220℃リフローソルダー3サイクル後の基板の異常の有無を断面観察及び電気的チェックよって確認した。
3)ガラス転移温度DMA法にて測定した。
4)プレッシャークッカー処理後の絶縁抵抗値端子間(ライン/スペース=70/70μm)の櫛形パターンを作成し、この上に、それぞれ使用したプリプレグを配置して同様に積層成形したものを、121℃・2気圧で所定時間処理した後、25℃・60%RHにて2時間後処理を行い、500VDCを印加60秒後に、その端子間の絶縁抵抗値を測定した。
5)耐マイグレーション性上記4)の試験片を用い、85℃・85%RHにて、 50VDC印加して端子間の絶縁抵抗値を測定した。
6)放熱性パッケージを同一マザーボードプリント配線板にハンダボールで接着させ、1000時間連続使用してから、パッケージの温度を測定した。
【0038】
【表1】


【0039】
【発明の効果】プリント配線板の片面に少なくとも、1箇所以上部分的に露出した内層金属板の上に半導体チップが固定され、この半導体チップはその周囲のプリント配線板表面に形成された回路導体とワイヤボンディングで接続されており、少なくとも、該プリント配線板表面上の信号伝播回路導体は、プリント配線板の反対面に形成された回路導体もしくは該ハンダボールでの接続用導体パッドとめっきされたスルーホール導体で結線されており、少なくとも、半導体チップは樹脂封止されており、該内層金属板は、該プリント配線板とほぼ同じ大きさでプリント配線板の厚さ方向のほぼ中央に配置され、表裏回路導体と多官能性シアン酸エステル樹脂組成物のような耐熱性樹脂組成物で絶縁されており、内層金属板には少なくとも1個以上のスルーホール導体径より大きい径のクリアランスホールがあけられ、スルーホール壁と金属板とは樹脂組成物で絶縁されており、少なくとも、1個以上のスルーホールが内層金属板と接続しているプリント配線板を用いた半導体プラスチックパッケージであって、該プリント配線板を構成する内層金属板の、半導体チップを直接固定する部分、又は一部分が、金属板のエンボス加工により、片表面に突起して露出し、反対面はへこんだ構造であり、この露出金属表面には半導体チップが固定され、ワイヤボンディング、樹脂封止された半導体プラスチックパッケージとすることにより、半導体チップの下面からの吸湿がなく、吸湿後の耐熱性、すなわちポップコーン現象が大幅に改善できるとともに、熱放散性も改善でき、加えて大量生産にも適しており、経済性の改善された、新規な構造の半導体プラスチックパッケージを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図2】実施例1の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図3】実施例2の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図4】実施例2の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図5】比較例1の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【図6】比較例2の半導体プラスチックパッケージの製造工程を示す説明図である。
【符号の説明】
(a) 金属板
(b) 金属箔
(c) ローフロープリプレグB
(d) ハイフロープリプレグC
(e) 表裏回路導通用スルーホール
(f) 放熱用スルーホール
(g) 封止樹脂
(h) 半導体チップ
(i) 金ワイヤ
(j) 銀ペースト
(k) ハンダボール
(l) メッキレジスト
(m) ノーフロープリプレグD

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント配線板の片面のほぼ中央に、少なくとも1個以上部分的に露出した内層金属板の上に半導体チップを固定し、該半導体チップをその周囲のプリント配線板表面に形成された回路導体とワイヤボンディングで接続し、少なくとも、該表面のプリント配線板上の信号伝播回路導体を、プリント配線板の反対面に形成された回路導体もしくは該パッケージの外部とハンダボールで接続するために形成された回路導体パッドと、めっきされたスルーホールで結線し、少なくとも半導体チップを樹脂封止し、該内層金属板を、プリント配線板とほぼ同じ大きさでプリント配線板の厚さ方向のほぼ中央に配置し、表裏回路導体と熱硬化性樹脂組成物で絶縁し、かつ、内層金属板には少なくとも1個以上のスルーホール導体径より大きい径のクリアランスホールを形成し、クリアランスホールの孔壁を絶縁化し、少なくとも1個以上のスルーホールを内層金属板と接続しているプリント配線板を用いた半導体プラスチックパッケージであって、該プリント配線板を構成する内層金属板の、半導体チップを直接固定する部分、又は一部分が、内層金属板のエンボス加工により、片表面に突起して露出し、内層金属板の反対側はへこんだ構造であり、この露出金属表面に半導体チップが固定されていることを特徴とする半導体プラスチックパッケージ。
【請求項2】 該金属板が銅95重量%以上の銅合金、或いは純銅である請求項1に記載の半導体プラスチックパッケージ。
【請求項3】 該絶縁樹脂組成物が、多官能性シアン酸エステル、該シアン酸エステルプレポリマーを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物である請求項1に記載の半導体プラスチックパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平11−220065
【公開日】平成11年(1999)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−34235
【出願日】平成10年(1998)1月30日
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)