説明

半導体レーザ装置の光軸ズレ角測定装置の校正方法

【課題】 未知の光軸ズレ角を有する半導体レーザ装置を用いて光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正する。
【解決手段】 光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準Sを設定し、該設定した仮の光軸基準Sに基づいて校正用半導体レーザ装置20の第1の光軸ズレ角Δθ1 をホトダイオード32で測定し、同半導体レーザ装置20を180度回転させた状態で第2の光軸ズレ角Δθ2 を再度ホトダイオード32で測定し、該測定した第1及び第2の光軸ズレ角Δθ1 ,Δθ2 の平均値から光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準S0 を求める。この際、光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準S0 と仮の光軸基準Sとのなす角度Δθm は、等式Δθm =(Δθ1 +Δθ2 )/2で与えられる。平均値を求める段階で半導体レーザ装置20の真の光軸ズレ角Δθが打ち消されるので、真の光軸ズレ角Δθが既知である必要はない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パッケージ中心軸に沿ってレーザ光を出射するように作製された半導体レーザ装置の光軸ズレ角の測定に用いられる光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザ装置は、光ディスクドライブ、レーザプリンタなどの種々の機器に組み込んで使用されるものである。従来、種々の内部構造及び種々のパッケージ形状を有する半導体レーザ装置が知られている。例えば、円柱状パッケージ型半導体レーザ装置は、半導体レーザチップが円柱状のパッケージに実装されてなるものである。発光素子である半導体レーザチップと、受光素子であるホトダイオードチップとが平面状のパッケージに一体的に実装されてなる平面状パッケージ型の半導体レーザ装置(レーザユニット)も知られている。レーザユニットと集光用のレンズとを1個のパッケージに実装してなる光ピックアップ装置も半導体レーザ装置の一種である。
【0003】一般に、半導体レーザ装置は、パッケージ中心軸に沿ってレーザ光を出射するように作製される。ところが、実際には、半導体レーザ装置の個々の内部部品が公差を有するので、出射レーザ光の光軸とパッケージ中心軸とが一致しないのが通例である。半導体レーザ装置の出射レーザ光の光軸が該半導体レーザ装置のパッケージ中心軸となす角度は、「光軸ズレ角」と呼ばれる。種々の機器への半導体レーザ装置の組み込みに際して光軸調整を円滑に進めるためには、一定の許容範囲内に収まる光軸ズレ角を有する半導体レーザ装置を選別する必要がある。
【0004】半導体レーザ装置の光軸ズレ角の測定に用いられる装置として、基準面と、該基準面に取り付けられた半導体レーザ装置に対して回転できるように配置されたホトダイオードとを備えた光軸ズレ角測定装置が知られている。半導体レーザ装置を通常の状態で光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けると、該半導体レーザ装置の発光点がホトダイオードの回転中心と一致し、かつ該半導体レーザ装置のパッケージ中心軸が光軸ズレ角測定装置の光軸基準と一致するようになっている。通常の状態で光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けられた半導体レーザ装置からレーザ光を出射させながら、入射レーザ光がピーク強度を示すホトダイオードの回転位置が求められる。このときの光軸ズレ角測定装置の光軸基準に対するホトダイオードの回転角度が、測定しようとしている半導体レーザ装置の光軸ズレ角である。ただし、半導体レーザ装置の光軸ズレ角を正確に測定するためには、光軸ズレ角測定装置自身の光軸基準が正確に校正されていなければならない。従来は、既知の光軸ズレ角を有する基準半導体レーザ装置を用いて、該基準半導体レーザ装置の光軸ズレ角を校正対象の光軸ズレ角測定装置が示すように、該光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正する方法が採用されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法は、既知の光軸ズレ角を有する基準半導体レーザ装置を必要とする問題があった。
【0006】本発明の目的は、未知の光軸ズレ角を有する半導体レーザ装置を用いて遂行できる光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の校正方法は、光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準を設定するステップと、該設定した仮の光軸基準に基づいて校正用半導体レーザ装置の第1の光軸ズレ角を測定するステップと、同半導体レーザ装置を180度回転させた状態で第2の光軸ズレ角を測定するステップと、該測定した第1の光軸ズレ角と第2の光軸ズレ角との平均値から光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準を求めるステップとを備えることとしたものである。
【0008】第1の光軸ズレ角の測定の際には、校正用半導体レーザ装置を通常の状態で光軸ズレ角測定装置の基準面を取り付けて、該半導体レーザ装置から出射されたレーザ光の光軸と光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準とのなす角度を第1の光軸ズレ角として測定する。また、第2の光軸ズレ角の測定の際には、同半導体レーザ装置を該半導体レーザ装置のパッケージ中心軸を中心として180度回転させた状態で光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けて、該半導体レーザ装置から出射されたレーザ光の光軸と光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準とのなす角度を第2の光軸ズレ角として測定する。そして、第1の光軸ズレ角と第2の光軸ズレ角との平均値を求め、該求めた平均値を光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準と仮の光軸基準とのなす角度として、光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準を求める。
【0009】上記本発明によれば、第1の光軸ズレ角と第2の光軸ズレ角との平均値を求めることにより、校正用半導体レーザ装置の出射レーザ光の光軸が該半導体レーザ装置のパッケージ中心軸となす角度、すなわち半導体レーザ装置の真の光軸ズレ角が打ち消される。したがって、未知の光軸ズレ角を有する半導体レーザ装置を用いて光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る半導体レーザ装置の光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正するための方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】図1は、本発明において選択される校正用の半導体レーザ装置が有する半導体レーザチップの構造を示している。図1において、半導体レーザチップ10は活性層12を有し、該半導体レーザチップ10の側端面14に対して垂直方向にレーザ光が出射される。図1中のTは半導体レーザチップ10の出射レーザ光を、Lは該出射レーザ光の光軸をそれぞれ示している。出射レーザ光Tの強度は、水平方向(X方向)及び垂直方向(Y方向)とも光軸Lのまわりに、ほぼガウス分布をしている。θh は、水平方向の強度分布における半値幅、すなわちレーザ光の水平方向の広がり角である。θv は、垂直方向の強度分布における半値幅、すなわちレーザ光の垂直方向の広がり角である。
【0012】図2は、本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される円柱状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示している。図2の半導体レーザ装置20では、図1の半導体レーザチップ10がサブマウント22の上にボンディングされ、該サブマウント22がステム24にボンディングされている。レーザ光は、半導体レーザ装置20のパッケージ中心軸Pに沿って出射される。ただし、サブマウント22やステム24の作製精度及びそれらの組立精度が原因となって半導体レーザチップ10がパッケージ中心軸Pに対して傾くため、出射レーザ光の光軸Lとパッケージ中心軸Pとの間に光軸ズレ角Δθが生じる。
【0013】図3(a)及び(b)は、未知の光軸ズレ角Δθを有する図2の半導体レーザ装置20を用いた本発明の光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法を示している。光軸ズレ角測定装置は、基準面30と、該基準面30に取り付けられた半導体レーザ装置20に対して回転できるように配置されたホトダイオード32とを備えている。ホトダイオード32は、円弧を描くように移動する。このホトダイオード32の受光面の手前には、不図示のピンホール又はスリットが設けられている。
【0014】本発明によれば、はじめに光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準が設定される。図3(a)及び(b)の中のSは、設定された仮の光軸基準を示している。S0は、真の(未知の)光軸基準である。真の光軸基準S0 と仮の光軸基準Sとの間には、未知の角度Δθm のズレがあるものとする。角度は、ホトダイオードの回転中心34に対して、時計回りを+方向、反時計回りを−方向とする。
【0015】半導体レーザ装置20を通常の状態で光軸ズレ角測定装置の基準面30に取り付けると、半導体レーザ装置20の発光点がホトダイオードの回転中心34と一致し、かつ半導体レーザ装置20のパッケージ中心軸Pが光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準S0 と一致するようになっている。
【0016】図3(a)では、半導体レーザ装置20を通常の状態で光軸ズレ角測定装置の基準面30に取り付けて、半導体レーザ装置20から出射されたレーザ光の光軸L1 と光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準Sとのなす角度を第1の光軸ズレ角Δθ1 として測定する。図4は、図3(a)の第1の光軸ズレ角Δθ1 の測定ステップにおいてホトダイオード32の出力信号から得られた半導体レーザ装置20の出射レーザ光の強度分布曲線を示している。横軸は光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準Sからの角度を、縦軸はピーク強度が1.0になるように任意単位(arbitrary unit)を採用したレーザ光の強度分布をそれぞれ示している。図4において、レーザ光強度0.5を示す水平線と強度分布曲線との2交点を、それぞれD11及びD12とする。両交点D11,D12の間の距離は、強度分布の半値幅、すなわちレーザ光の広がり角を示している。そして、両交点D11,D12の間の中点をD13とする。中点D13の位置は、半導体レーザ装置20の出射レーザ光の光軸L1 を表わしている。この中点D13の角度を図4から読み取ると、仮の光軸基準Sから測った第1の光軸ズレ角Δθ1 が得られる。図3(a)から判るように、Δθ1 =Δθm +Δθ …(1)
が成り立つ。ここに、Δθは、半導体レーザ装置20の出射レーザ光の光軸L1がそのパッケージ中心軸Pとなす角度、すなわち半導体レーザ装置20の真の光軸ズレ角である。ただし、Δθm 及びΔθは未知である。なお、光軸L1 の位置特定に用いる半導体レーザ装置20の出射レーザ光の強度分布の半値幅、すなわち広がり角は、水平方向の広がり角θh や垂直方向の広がり角θv (図1参照)などの任意の方向の広がり角であってよい。
【0017】次に、図3(b)では、同じ半導体レーザ装置20をそのパッケージ中心軸Pを中心として180度回転させた状態で光軸ズレ角測定装置の基準面30に再度取り付けて、半導体レーザ装置20から出射されたレーザ光の光軸L2 と光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準Sとのなす角度を第2の光軸ズレ角Δθ2 として測定する。図5は、図3(b)の第2の光軸ズレ角Δθ2 の測定ステップにおいてホトダイオード32の出力信号から得られた半導体レーザ装置20の出射レーザ光の強度分布曲線を示している。図5において、レーザ光強度0.5を示す水平線と強度分布曲線との2交点をそれぞれD21及びD22とし、両交点D21,D22の間の中点をD23とすると、中点D23の位置は半導体レーザ装置20の出射レーザ光の光軸L2 を表わしている。この中点D23の角度を図5から読み取ると、仮の光軸基準Sから測った第2の光軸ズレ角Δθ2 が得られる。図3(b)から判るように、Δθ2 =Δθm −Δθ …(2)
が成り立つ。ただし、Δθm 及びΔθは未知である。
【0018】次に、第1の光軸ズレ角Δθ1 と第2の光軸ズレ角Δθ2 との平均値が、光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準S0 と仮の光軸基準Sとのなす角度Δθm として求められる。上記の式(1)及び式(2)から、Δθm =(Δθ1 +Δθ2 )/2 …(3)
が得られることは明らかである。したがって、光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準Sから角度Δθm だけずらした位置が光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準S0であることが判り、光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正が完了する。
【0019】上記の式(1)及び式(2)から、式(3)を導出する際に、半導体レーザ装置20の真の光軸ズレ角Δθが打ち消される。つまり、真の光軸ズレ角Δθが未知であっても、第1の光軸ズレ角Δθ1 の測定値と第2の光軸ズレ角Δθ2 の測定値とから、角度Δθm を計算することができる。すなわち、未知の光軸ズレ角Δθを有する半導体レーザ装置20を用いて光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0020】図6は、本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される平面状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示している。図6の半導体レーザ装置50は、半導体レーザチップ10とホトダイオードチップ40とが平面状のパッケージ52の中に一体的に実装され、かつガラスキャップで封止されてなるものである。半導体レーザチップ10はホトダイオードチップ40の主面に設けられた凹部の中にボンディングされ、ホトダイオードチップ40はパッケージ52の中にボンディングされている。このような半導体レーザチップ10とホトダイオードチップ40とが一体化された半導体レーザ装置50は、レーザユニットとも呼ばれる。
【0021】ホトダイオードチップ40は、図7(a)の拡大斜視図に示すように、エッチングで形成された45度ミラー面42を有する。図7(b)はその拡大縦断面図である。半導体レーザチップ10は活性層12を有し、該半導体レーザチップ10の側端面14に対して垂直方向にレーザ光が出射される。そして、半導体レーザチップ10から出射されたレーザ光は、45度ミラー面42で反射されて、ホトダイオードチップ40の主面に対して垂直方向に出射されるようになっている。これにより、図6の半導体レーザ装置50から、そのパッケージ中心軸に沿ってレーザ光が出射される。Lは、出射レーザ光の光軸を表わしている。なお、45度ミラー面42は、半導体レーザチップ10の発光点から1mm以内の位置に形成される。この45度ミラー面42の角度公差は、±5度である。
【0022】半導体レーザチップ10の出射レーザ光の垂直方向の広がり角θv (図1参照)が20度より大きいと、図7(b)中に破線で示すように、半導体レーザチップ10の出射レーザ光が該半導体レーザチップ10の側端面上縁Eと45度ミラー面42の上縁Fとで回折されるので、好ましくない。逆に言うと、半導体レーザチップ10の出射レーザ光が回折の影響を受けることなくホトダイオードチップ40の45度ミラー面42で反射されるように、出射レーザ光の垂直方向の広がり角θv として20度以下の広がり角を有する半導体レーザチップ10を選別することが肝要である。
【0023】図8(a)及び(b)は、未知の光軸ズレ角を有する図6の半導体レーザ装置50を用いた本発明の光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法を示している。すなわち、図6の構造を有する半導体レーザ装置50を選択した場合でも、図3(a)及び(b)の場合と同様の手順で光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。ただし、出射レーザ光の垂直方向の広がり角θv として20度より大きい広がり角を有する半導体レーザチップ10を採用した場合には、該半導体レーザチップ10の出射レーザ光が回折されるので、図9に示すように、ホトダイオード32の出力信号から得られた半導体レーザ装置50の出射レーザ光の強度分布曲線が波打った形となる。図9の強度分布曲線から半値幅を求めることはできず、したがって半導体レーザ装置50の出射レーザ光の光軸を特定することができない。
【0024】図10は、出射レーザ光の垂直方向の広がり角θv として15度の広がり角を有する半導体レーザチップ10を採用した場合の、図6の半導体レーザ装置50の出射レーザ光の強度分布の測定結果を示している。図10によれば、回折の影響がなくなり、半導体レーザ装置50の出射レーザ光の垂直方向の広がり角が、発光源である半導体レーザチップ10と同じく15度となっている。図5の場合と同様に、レーザ光強度0.5を示す水平線と強度分布曲線との2交点をそれぞれD31及びD32とし、両交点D31,D32の間の中点をD33とすれば、中点D33の位置は半導体レーザ装置50の出射レーザ光の光軸L2 (図8(b)参照)を表わしている。この中点D33の角度を図10から読み取ると、仮の光軸基準Sから測った光軸ズレ角Δθ2 が得られる。なお、光軸の位置特定に用いる半導体レーザ装置50の出射レーザ光の強度分布の半値幅、すなわち広がり角は、垂直方向の広がり角θv に限らず、水平方向の広がり角θh などの任意の方向の広がり角であってよい。
【0025】図11は、本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される他の平面状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示している。図11の半導体レーザ装置(レーザユニット)70は、半導体レーザチップ10とホトダイオードチップ40とマイクロプリズム60とが平面状のパッケージ72の中に一体的に実装され、かつガラスキャップで封止されてなるものである。半導体レーザチップ10及びマイクロプリズム60はホトダイオードチップ40の主面上にボンディングされ、ホトダイオードチップ40はパッケージ72の中にボンディングされている。
【0026】マイクロプリズム60は、図12(a)の拡大斜視図に示すように、45度ミラー面62を有する。図12(b)はその拡大縦断面図である。半導体レーザチップ10は活性層12を有し、該半導体レーザチップ10の側端面14に対して垂直方向にレーザ光が出射される。そして、半導体レーザチップ10から出射されたレーザ光は、45度ミラー面62で反射されて、ホトダイオードチップ40の主面に対して垂直方向に出射される。これにより、図11の半導体レーザ装置70から、そのパッケージ中心軸に沿ってレーザ光が出射される。なお、45度ミラー面62は、半導体レーザチップ10の発光点から1mm以内の位置に形成される。この45度ミラー面62の角度公差は、±5度である。
【0027】図11の半導体レーザ装置70を選択した場合でも、出射レーザ光の垂直方向の広がり角θv として20度以下の広がり角を有する半導体レーザチップ10を選別すれば、図2の半導体レーザ装置20及び図6の半導体レーザ装置50の場合と同様の手順で、光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0028】図13は、本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される光ピックアップ装置の構造を示している。図13の光ピックアップ装置100は、半導体レーザチップ及びホトダイオードチップを有するレーザユニット80と、集光用のレンズ90とを1個のパッケージ102に実装してなるものである。
【0029】図13の光ピックアップ装置100を選択した場合でも、図2の半導体レーザ装置20、図6の半導体レーザ装置50及び図11の半導体レーザ装置70の場合と同様の手順で、光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0030】なお、図4、図5及び図10の例ではレーザ光の強度分布において半値幅の中心位置を半導体レーザ装置の出射レーザ光の光軸としたが、他の方法で光軸を特定することも可能である。例えば、0.5以外のレーザ光強度を示す水平線と強度分布曲線との2交点を求め、両交点の間の中点の位置を半導体レーザ装置の出射レーザ光の光軸としてもよい。また、ピーク強度の位置を半導体レーザ装置の出射レーザ光の光軸としてもよい。
【0031】さて、以上の説明では、図3(a)及び(b)並びに図8(a)及び(b)に示すとおり、円弧を描くように移動するホトダイオード32を備えた光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正対象としてきた。ただし、本発明は、他の構成を備えた光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正にも適用可能である。その例を図14〜図16に示す。
【0032】図14の光軸ズレ角測定装置は、直線を描くように移動するホトダイオード32を備えたものである。図14の構成によれば、図2の半導体レーザ装置20の出射レーザ光Tの強度分布が、直線を描くように移動するホトダイオード32によって測定される。この構成を採用した場合でも、上記と同様の手順で光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0033】図15の光軸ズレ角測定装置は、不動のホトダイオード32を備えたものである。半導体レーザ装置20は、軸Aの回りに回転できるように光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けられる。図15の構成によれば、半導体レーザ装置20が軸Aのまわりに回転することにより、該半導体レーザ装置20の出射レーザ光Tの強度分布が不動のホトダイオード32によって測定される。この構成を採用した場合でも、上記と同様の手順で光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0034】図16の光軸ズレ角測定装置は、可動部分を持たない測定装置であって、半透明のスクリーン110と、CCDカメラ112と、モニター114と、コンピュータ116とを備えたものである。半導体レーザ装置20は、スクリーン110の向こう側において光軸ズレ角測定装置の基準面に固定される。図16の構成によれば、半導体レーザ装置20の出射レーザ光Tの2次元強度分布が半透明のスクリーン110の上に投影される。CCDカメラ112はスクリーン110の手前側に配置されており、該スクリーン110の上に投影されたレーザ光の2次元強度分布の全体がCCDカメラ112によって撮影される。この撮影で得られた画像は、モニター114に映し出されるとともに、コンピュータ116へ送られる。コンピュータ116は、画像処理により、図4のようなある方向のレーザ光強度分布曲線を求め、半導体レーザ装置20の出射レーザ光Tの光軸位置を特定する。したがって、図16の構成を採用した場合でも、上記と同様の手順で光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0035】なお、図14〜図16の光軸ズレ角測定装置において、図2の半導体レーザ装置20に限らず、図6R>6の半導体レーザ装置50、図11の半導体レーザ装置70及び図13の光ピックアップ装置100のうちのいずれかを選択した場合でも、上記と同様の手順で光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正することができる。
【0036】
【発明の効果】以上説明してきたとおり、本発明によれば、光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準を設定するステップと、該設定した仮の光軸基準に基づいて校正用半導体レーザ装置の第1の光軸ズレ角を測定するステップと、同半導体レーザ装置を180度回転させた状態で第2の光軸ズレ角を測定するステップと、該測定した第1及び第2の光軸ズレ角の平均値から光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準を求めるステップとを備えた構成を採用したので、未知の光軸ズレ角を有する半導体レーザ装置を用いて光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において選択される校正用の半導体レーザ装置が有する半導体レーザチップの構造を示す斜視図である。
【図2】本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される円柱状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図2の半導体レーザ装置を用いた本発明の光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法の説明図であって、(a)は第1の光軸ズレ角Δθ1 の測定ステップを、(b)は第2の光軸ズレ角Δθ2 の測定ステップをそれぞれ示す図である。
【図4】図3(a)の測定ステップにおいて光軸ズレ角測定装置のホトダイオードで測定されたレーザ光の強度分布曲線から第1の光軸ズレ角Δθ1 を求めるための手順を示す図である。
【図5】図3(b)の測定ステップにおいて光軸ズレ角測定装置のホトダイオードで測定されたレーザ光の強度分布曲線から第2の光軸ズレ角Δθ2 を求めるための手順を示す図である。
【図6】本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される平面状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示す斜視図である。
【図7】(a)は図6中の半導体レーザチップとエッチング形成された45度ミラー面を有するホトダイオードチップとの拡大斜視図であり、(b)はその拡大縦断面図である。
【図8】図6の半導体レーザ装置を用いた本発明の光軸ズレ角測定装置の光軸基準の校正方法の説明図であって、(a)は第1の光軸ズレ角Δθ1 の測定ステップを、(b)は第2の光軸ズレ角Δθ2 の測定ステップをそれぞれ示す図である。
【図9】出射レーザ光の垂直方向の広がり角として20度より大きい広がり角を有する半導体レーザチップを採用した場合の、図6の半導体レーザ装置の出射レーザ光の強度分布の測定結果を示す図である。
【図10】出射レーザ光の垂直方向の広がり角として15度の広がり角を有する半導体レーザチップを採用した場合の、図6の半導体レーザ装置の出射レーザ光の強度分布の測定結果を示す図である。
【図11】本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される他の平面状パッケージ型半導体レーザ装置の構造を示す斜視図である。
【図12】(a)は図11中の半導体レーザチップとホトダイオードチップとマイクロプリズムとの拡大斜視図であり、(b)はその拡大縦断面図である。
【図13】本発明において校正用の半導体レーザ装置として選択される光ピックアップ装置の構造を示す断面図である。
【図14】本発明の校正対象の光軸ズレ角測定装置の他の構成を示す斜視図である。
【図15】本発明の校正対象である光軸ズレ角測定装置の更に他の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の校正対象である光軸ズレ角測定装置の更に他の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 半導体レーザチップ
12 活性層
20 円柱状パッケージ型半導体レーザ装置
22 サブマウント
24 ステム
30 光軸ズレ角測定装置の基準面
32 光軸ズレ角測定装置のホトダイオード
34 ホトダイオードの回転中心
40 ホトダイオードチップ
42 45度ミラー面
50 平面状パッケージ型半導体レーザ装置(レーザユニット)
52 パッケージ
60 マイクロプリズム
62 45度ミラー面
70 平面状パッケージ型半導体レーザ装置(レーザユニット)
72 パッケージ
80 レーザユニット
90 レンズ
100 光ピックアップ装置(半導体レーザ装置)
102 パッケージ
110 スクリーン
112 CCDカメラ
114 モニター
116 コンピュータ
L,L1 ,L2 出射レーザ光の光軸
P パッケージ中心軸
S 光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準
S0 光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準
T 出射レーザ光
Δθ 出射レーザ光の光軸ズレ角
Δθ1 第1の光軸ズレ角
Δθ2 第2の光軸ズレ角
θh 出射レーザ光の水平方向の広がり角
θv 出射レーザ光の垂直方向の広がり角

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パッケージ中心軸に沿ってレーザ光を出射するように作製された半導体レーザ装置の光軸ズレ角の測定に用いられる光軸ズレ角測定装置の光軸基準を校正するための方法であって、前記光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準を設定するステップと、ある校正用の半導体レーザ装置を通常の状態で前記光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けて、前記半導体レーザ装置から出射されたレーザ光の光軸と前記光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準とのなす角度を第1の光軸ズレ角として測定するステップと、前記半導体レーザ装置を該半導体レーザ装置のパッケージ中心軸を中心として180度回転させた状態で前記光軸ズレ角測定装置の基準面に取り付けて、前記半導体レーザ装置から出射されたレーザ光の光軸と前記光軸ズレ角測定装置の仮の光軸基準とのなす角度を第2の光軸ズレ角として測定するステップと、前記第1の光軸ズレ角と前記第2の光軸ズレ角との平均値を求め、該求めた平均値を前記光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準と仮の光軸基準とのなす角度として、前記光軸ズレ角測定装置の真の光軸基準を求めるステップとを備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項2】 請求項1記載の校正方法において、半導体レーザチップが円柱状のパッケージに実装されてなる円柱状パッケージ型半導体レーザ装置を前記校正用の半導体レーザ装置として選択するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項3】 請求項1記載の校正方法において、半導体レーザチップとホトダイオードチップとが平面状のパッケージに実装されてなる平面状パッケージ型半導体レーザ装置を前記校正用の半導体レーザ装置として選択するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項4】 請求項3記載の校正方法において、前記半導体レーザチップから出射されたレーザ光が回折の影響を受けることなく前記ホトダイオードチップ上にエッチングで形成されたミラー面で反射されるように、出射レーザ光の垂直方向の広がり角として20度以下の広がり角を有する半導体レーザチップを選別するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項5】 請求項1記載の校正方法において、半導体レーザチップとマイクロプリズムとが平面状のパッケージに実装されてなる平面状パッケージ型半導体レーザ装置を前記校正用の半導体レーザ装置として選択するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項6】 請求項5記載の校正方法において、前記半導体レーザチップから出射されたレーザ光が回折の影響を受けることなく前記マイクロプリズムで反射されるように、出射レーザ光の垂直方向の広がり角として20度以下の広がり角を有する半導体レーザチップを選別するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。
【請求項7】 請求項1記載の校正方法において、少なくとも半導体レーザチップを有するレーザユニットと、レンズとが1個のパッケージに実装されてなる光ピックアップ装置を前記校正用の半導体レーザ装置として選択するステップを更に備えたことを特徴とする校正方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開平9−214057
【公開日】平成9年(1997)8月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−20087
【出願日】平成8年(1996)2月6日
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)