説明

半導体光反射器およびその製法

【課題】 本発明は、特に集積レーザキャビティに相対して設置され、キャビティをリフィードし、連続的に発振できるようにする半導体光反射器に関するものである。
【解決手段】 本反射器は、ブラッグ反射器の複数の縦続接続されたセクション(S、Si+1)で構成される。特に、上記セクションは長さLが同一であり、同一の結合係数(κ)を有し、セクションの各対の長さLが式、L=λ/[(ni+1+n)×1.7(ni+1Λi+1−nΛ)]
(式中、λは反射器により反射されたブラッグ波長の平均値、ni+1およびnは上記隣接セクション(Si+1、S)の各有効屈折率、Λi+1およびΛは上記隣接セクション(Si+1、S)の各周期) で与えられることを特徴とする。本発明の反射器は、結合係数の値に関係なく、広いスペクトル幅を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体光反射器、およびこのような反射器の製法に関するものである。本発明は特に、ブラッグ反射器の複数の縦続接続されたセクションを含む、光反射器に関するものである。ブラッグ反射器は、受けた光の一部を反射させることが可能であり、光送信の分野で一般に使用されている。ブラッグ反射器は、集積されたレーザキャビティに相対して設置でき、上記キャビティにエネルギーを戻して、連続的に発振できるようにすることができる。この場合、ブラッグ反射器は、集積されない半導体レーザのへき開面ミラーの代わりに使用される。
【0002】
【従来の技術】ブラッグ反射器は、さらに具体的には、屈折率の異なる2種類の材料で構成される周期格子と規定される。このような装置の反射比は、2つの成分材料の屈折率の差と、格子の幾何学的形状との両方に依存する。これは、格子の長さをLとし、2つの材料の屈折率の差と格子の厚みとの両方に関係する結合係数をκとした場合、κとLとの積に比例する。
【0003】従来の反射器を、図1Aに長さ方向の断面図で、図1Bに横方向の断面図で示す。この反射器は、基板1上にエピタキシーにより積層させた層2、3の上に形成したものである。一般に、基板1は、n型のキャリアをドーピングしたリン化インジウム(InP)でつくられる。積層させた各層は、異なる光学的機能を行う。図1Aおよび図1Bに示す例では、「導波層」とも呼ばれる活性層2を、基板1の上に堆積させる。活性層2は、InPなどのIII−V族型の材料で形成した「底部クラッド」層3中に埋め込まれる。
【0004】ブラッグ格子は、図1Aに参照符号10で示す。これは、たとえば図1Aおよび図1Bに斜線部で示したGaInAsP型の四元材料などのInPを主体とする材料4と、上部クラッド層を構成するInP材料5とで構成される。
【0005】格子は、底部クラッド層の上に四元材料の層4をエピタキシャル成長させ、層4をエッチングして周期Λを有する刻み目のあるパターンを形成し、次に得られた刻み目にキャリアをドーピングしたInPの上部クラッド層5を充てんすることにより形成される。四元材料GaInAsP4とInP5とは、屈折率が異なり、それぞれ3.3および3に等しく、得られたホログラフィ格子10は、受けた光波の一部を反射する。
【0006】しかし、図2に示すように、その種の格子のスペクトルウインドウが十分広くなるようにするには、すなわち、格子が多数の波長に対して使用可能にするためには、その結合係数κが非常に高くなければならない。したがって、長さが35μmの従来の格子に対応する図2の曲線が示すように、約20nmのスペクトル幅を得るためには、結合係数κが約500cm−1でなければならず、約30nmのスペクトル幅を得るためには、結合係数κが約1000cm−1でなければならない。残念ながら、高い結合係数を得るためには、大きい屈折率ステップおよび/または大きい厚みを有する格子を形成する必要がある。
【0007】このような高い結合係数を有する格子を形成するための既知の第1の解決方法は、光波が可能な限り大きいコントラストを感知するように、格子の厚みを増大させることである。コントラストは、材料の種類と、格子の厚み、すなわち四元材料の層の厚みとの両方に関係する。残念ながら、その解決方法は、実際には所期の性能を有する反射器を形成させることは不可能である。四元材料中に形成した刻み目が深すぎると、充てん材料、すなわち上部クラッド層の結晶の質を低下させることなく充てんステップを行うことが困難になる。残念ながら、上記上部クラッド層の結晶の質が影響を受けると、光の伝搬損失が生じ、装置の性能が低下し、ブラッグ係数κが広いスペクトルウインドウを得るために十分に増加しない。
【0008】屈折率ステップを増加させるために、もうひとつの解決方法が考えられている。この解決方法は、四元(または三元)材料4とInPのクラッド層5との間に、従来の方法で得られたホログラフィ格子をエッチングして、四元(または三元)材料を選択的に除去し、空気とInP半導体との間に大きい屈折率ステップを有するもうひとつの格子構造を形成することである。この場合、屈折率ステップの値は大きく、約2である。残念ながら、広いスペクトルウインドウを有するにもかかわらず、この種の格子は、他の装置、たとえばレーザ装置の導波層と結合した場合、非常に大きい界面結合損失が発生する。
【0009】したがって、ホログラフィブラッグ格子の結合係数κを、その性能を低下させることなく増大させることは困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の目的は、結合係数の高い格子を形成することによる問題を回避するように、結合係数κの値にかかわらず、広いスペクトル帯域を有する半導体光反射器を製造する解決方法を見いだすことにある。
【0011】このような反射器を製造するための解決方法が研究され、この解決方法は、周期Λが連続的に変化する格子を製造することからなる。この解決方法は、このような格子が結合係数に関係なく広いスペクトルウインドウを有するため、理論的に有利であると考えられる。残念ながら、実際には、このような格子を製造するのは困難であり、また長時間の工程となる。この種の周期が変化する格子は、ホログラフィ干渉を使用する従来の方法では製造することができない。この種の格子を製造するために用いられるもうひとつの方法は、異なる周期値の数だけのエッチングステップを必要とする。その結果、実施の困難さと時間はかなり増大し、この方法の効率はかなり低下する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の縦続接続されたブラッグ反射器セクションで構成され、結合係数の値に関係なく広いスペクトルウインドウを有する半導体光反射器を提供するため、上述の欠点を軽減することができる。
【0013】この光反射器は、さらに具体的には、上記セクションの長さLが同一であり、同一の結合係数を有し、各対の隣接するセクションSi+1およびSの長さLが、下記の関係で与えられることを特徴とする。
【0014】L=λ/[(ni+1+n)×1.7(ni+1×Λi+1−n×Λ)]
式中、λは、反射器により反射されたブラッグ波長の平均値、ni+1およびnは、上記隣接するセクションSi+1およびSのそれぞれの有効屈折率、Λi+1およびΛは、上記隣接するセクションSi+1およびSのそれぞれの周期である。
【0015】反射器のセクションの長さLについての式を使用することにより、その有効周期をひとつのセクションから他のセクションに変化させる、すなわちその有効屈折率またはその格子周期のいずれかを変化させることが可能である。
【0016】有効屈折率とは、ひとつのセクション中の光波が遭遇した媒体の平均屈折率と規定される。有効周期とは、実際に刻まれた周期と、セクション中の光波が遭遇した有効屈折率とを掛け合わせた積と規定される。
【0017】本発明の反射器の製法は、変化するのが有効屈折率であるか周期であるかによって異なる。
【0018】従って有効屈折率が変化する場合、製法は、最初に所定の周期Λと所定の結合係数κを有するホログラフィブラッグ格子を含む従来の積層構造を形成することからなる。この製法は、次にそれぞれが異なる幅を有する縦続接続されたホログラフィ格子のセクションを形成するために、上記積層構造を横方向にエッチングすることを特徴とする。
【0019】この方法は、積層構造のホログラフィ格子が、屈折率ステップまたは深さを増大させようとせずに従来の方法により形成することができ、縦続接続されたセクションを1回のエッチングステップで形成することができるため、非常に簡単で、短時間に実施することができる。
【0020】周期Λを変化させる場合、製法はまず、ホログラフィ格子を形成するためにエッチングされる三元材料または四元材料の上部層を含む積層構造を形成する。この製法の特徴は、次に、以下を行うことを特徴とする。
【0021】長さLのセクションS上の上部層をエッチングして、所定の周期Λを有する刻み目のあるパターンを形成し、続いて上記のセクションSに隣接し、長さLが同一のセクションSi+1上の上部層をエッチングして、他の周期Λi+1を有する他の刻み目のあるパターンを形成し、各セクションの刻み目を継続してエッチングした後、隣接するセクションすべてを同一の幅Wとなるような方法でのエッチングと、III−V族材料によるクラッド層の堆積とをいずれかの順序で行って、刻み目を充てんし、それぞれが異なる周期を有する複数の縦続接続されたホログラフィ格子セクションを形成することである。
【0022】このホログラフィ法は、前述の方法より実施するのに幾分時間が長くかかる。しかし、連続して周期が変化する格子の製法と異なり、実施が簡単で、制御が容易である。
【0023】本発明の他の特長および利点は、限定しない例を用いた下記の説明を読み、添付の図を参照することにより明らかになる。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の半導体光反射器は、複数の縦続接続されたホログラフィブラッグ格子セクションで有利に構成される。このブラッグ格子セクションが連続することにより、特に反射器のスペクトルウインドウの幅を広げ、しかも妥当な結合係数、すなわち500cm−1未満の結合係数を保持することが可能になる。
【0025】しかし、この種の反射器では、縦続接続されたセクションそれぞれの長さが、スペクトルウインドウのプロファイルにかなりの影響を与えるため、重要であり、制御されなければならない。
【0026】本発明の反射器のブラッグ反射器セクションは、対称なスペクトルウインドウを得るため、長さLがすべて同一でなければならない。反射器が長さの異なる2つの縦続接続されたセクションを有する場合、長い方のセクションにより反射される平均波長に集中する高い反射ピークが形成されるため、スペクトルウインドウは非対称となる。
【0027】さらに、反射器のスペクトルウインドウをできるだけ広くするためには、できるだけ平坦なプロファイルを持たなければならない。図3で、曲線a、b、およびcは、長さLの等しい2つのブラッグ格子セクションで構成され、Lがそれぞれ30μm、20μm、および15μmである本発明の反射器の、スペクトルウインドウのプロファイルを示す。スペクトルウインドウは、2個の側方反射ピークと、1個の中央ピークを有する。したがって、できるだけ平坦なプロファイルを得るためには、中央ピークと側方反射がすべてほぼ同一の反射比を持たなければならない。図に示すように、セクションの長さLが長すぎる場合(曲線a:L=30μm)、中央ピークは存在しなくなり、2個の側方ピークが支配的になる。この場合、スペクトルウインドウは2つの部分に分離する。セクションの長さLが短かすぎる場合(曲線c:L=15μm)、中央ピークが支配的になり、側方ピークはそれより低い反射比を有する。この場合、スペクトルウインドウは中央ピークの両側に折れ目を有する。
【0028】その結果、反射器が2つのセクションのみで構成された場合、スペクトルウインドウができるだけ平坦になるためには、反射器のセクションの長さは、15μm〜20μmの範囲内になければならない。好ましくは、17μmである。
【0029】さらに一般的には、反射器の各セクションの長さLは、有効屈折率、およびそれぞれのセクションの格子周期に依存する。長さLの値は、さらに具体的には下記の近似一般関係式により与えられる、すなわち、 L=λ/[(ni+1+n)×0.85(λBi+1−λBi)] (1)
式中λは、反射器により反射されたブラッグ波長の平均値、ni+1およびnは、隣接するセクションSi+1およびSのそれぞれの有効屈折率、λBi+1およびλBiは、隣接するセクションSi+1およびSによって反射される、それぞれのブラッグ波長の平均値である。
【0030】λBi+1およびλBiの値は、各セクションのブラッグ格子の周期にも依存する。これらの値は、下記の関係式により与えられる。
【0031】
λBi+1=2ni+1Λi+1 (2)
λBi=2nΛ (3)
式中、Λi+1およびΛは、隣接するセクションSi+1およびSのそれぞれの格子周期である。
【0032】関係式(2)および(3)を使用すると、関係式(1)は下記のようになる。
【0033】
L=λ/[(ni+1+n)×1.7(ni+1Λi+1−nΛ)](4)
スペクトルウインドウの幅が広く30nm以上の幅になるように値を選択した、同一長さLを有する縦続接続された格子セクションの反射器を構成するためには、有効周期をひとつの隣接するセクションから他のセクションへと変化させることが必要である。有効周期とは、実際に刻まれた周期と、格子セクション中の光波が遭遇した媒体の有効屈折率とを掛け合わせた積と規定される。したがって、有効周期を変化させるには、2つの方法が可能である。すなわち、異なる幅W、Wi+1のセクションを形成することにより有効屈折率n、ni+1を変化させるか、各セクションのブラッグ格子の周期Λ、Λi+1を変化させることができる。
【0034】図4Aは、本発明の光反射器の、第1の実施形態を示す概略平面図である。示された例で、反射器は2つの縦続接続されたホログラフィブラッグ格子のセクションS、Sで構成されている。当然のこのながら、本発明はこの例に限定されるものではなく、反射器は3つ以上のセクションで構成されるものであってもよい。
【0035】この例では、2つのセクションSおよびSは、同一の格子周期ΛおよびΛ、ならびに同一の長さLおよびLを有するが、幅WおよびWは異なる。この2つのセクションSとSの幅Wが異なる結果、各セクションの両側で空気の比率が異なる。このひとつのセクションと他のセクションで空気の比率が変化することにより、有効屈折率n、nが、2つのセクションSとSのいずれかから他のセクションへ変化する。すなわち、光波に遭遇する媒体の平均案内係数が、ひとつのセクションから他のセクションへと変化する。
【0036】図4Bに示す曲線は、各セクションの有効屈折率neffが、幅Wの関数としてどのように変化するかを示す。この曲線はまた、幅の関数である有効屈折率の最大変化が、3.235−3.170=0.065であることも示している。このようにして、選択したセクションの長さに対応する定められた有効屈折率の変化のための、各セクションの幅の値を知ることができる。
【0037】したがって、1.55μmに等しい波長λの、すなわち240nmに等しい周期Λの周囲に集中する30nmのスペクトルウインドウを有する光反射器を製造しようとする場合、2つのセクション間の有効屈折率ステップΔneffが決定され、0.05に等しくなければならない。この有効屈折率ステップは、知られているように、反射器のスペクトルウインドウの幅に依存する。この場合、ひとつの有効屈折率nが、3.18になるように選択されれば、他のセクションの屈折率nは、3.18+0.05=3.23に等しくなければならない。近似一般関係式(4)で与えられる各セクションの長さの値Lは、n、n、λ、およびΛの値に基づいて計算される。この場合、長さLは約17μmである。さらに、図4Bの曲線に示すように、3.18に等しい有効屈折率nを有するセクションSの幅Wは、1.2μmに等しくなければならず、3.23の有効屈折率を有するセクションSの幅Wは、2.5μmに等しくなければならない。
【0038】ひとつの隣接する格子セクションから他のセクションへと変化する有効屈折率を有する反射器は、形成すべき反射器のセクションの形状に対応する形状を有するマスクにより、エッチングステップが1回の方法を単に使用して形成される。このためには、方法は、まず所定の周期Λと所定の結合係数κを有するホログラフィブラッグ格子を含む従来のスタック構造を形成させることからなる。レーザキャビティに向かう光波を反射させるのに使用する反射器を形成する場合、周期Λは、たとえば、反射器により反射される光波の平均値が1.55μmに等しくなるように、240nmに設定する。さらに、ブラッグ格子は、従来の方法により、浅いエッチングの後、充てんを行って形成され、満足な、500cm−1未満である結合係数κを有する。次に、それぞれが異なる幅Wを有するカスケードホログラフィ格子のセクションを形成するように、得られた積層構造を横方向にエッチングする。
【0039】この反射器は、III−V族材料、たとえばInPの基板上に形成する。セクションが形成されたホログラフィブラッグ格子は、III−V族材料、たとえばInPと、三元材料、たとえばGaInAs、または四元材料、たとえばGaInAsPでつくられる。上記の例では、隣接するセクションは同一組成を有する導波層を含む。
【0040】変形実施形態では、異なる組成の導波層を含む隣接セクションの形成を考慮することが可能である。しかし、このような変形実施形態は製法を複雑にする。
【0041】図5は、本発明の光反射器の、第2の実施形態の概略平面図である。この実施形態では、縦続接続されたホログラフィブラッグ格子のセクションSおよびSは、同一の長さL、同一の幅W、したがって同一の有効屈折率を有する。しかし、各セクションSおよびSの周期ΛおよびΛは異なる。
【0042】この反射器の製法は、まずホログラフィ格子を形成するためにエッチングされる三元材料、または四元材料の上部層を含む積層構造を形成する。次に上部層を、長さLの第1のセクションS上でエッチングして、所定の周期Λを有する刻み目のあるパターンを形成する。次に上部層を、前のセクションに隣接する同一の長さLの、他のセクションS上でエッチングして、他の周期Λを有する他の刻み目のあるパターンを形成する。刻み目のエッチングを、反射器の各セクションのS上でこのようにして繰り返す。最後に、すべてのセクションの刻み目をエッチングした後、すべては同一の幅Wを有するように隣接するセクションをエッチングし、刻み目を充てんし、それぞれが異なる周期を有する複数の縦続接続されたホログラフィ格子のセクションを形成するように、たとえばIII−V族材料のクラッド層を堆積させる。最後の2つのステップを行う順序は重要ではない。すべてのセクションは、刻み目の充てんステップの前でも後でも、等しくエッチングすることができる。
【0043】この方法はいくつかのステップを必要とするため、2つまたは3つに限定されたセクションを有する反射器を形成するためのみに使用される。反射器が3つを超える縦続接続されたセクションを含む場合は、第1の実施形態のように、有効屈折率をひとつのセクションから次のセクションへと変化させることにより製造することが好ましい。
【0044】上記実施形態にかかわらず、本発明の反射器は、各セクションS、Si+1に分布するミラーを有する。
【0045】図6の曲線は、2つのセクションで構成される本発明の反射器の、スペクトルウインドウのプロファイルを示す。これらのセクションはそれぞれ、17μmに等しい長さと、その結合係数κの関数として、0.05の屈折率ステップを有する。この図は、スペクトルウインドウの幅が、結合係数κの関数として、きわめて小範囲で変化することを示している。これは、結合係数κが100cm−1に等しい場合40nmに等しく、結合係数κが500cm−1に等しい場合でも50nmに等しいからである。しかし、この曲線は、反射比が結合係数とともに変化することを明示している。これは、κが100cm−1に等しい場合約2%〜3%の範囲であるが、κが500cm−1に等しい場合には約40%に増大するからである。その結果、本発明の反射器の結合係数κは、それが使用される用途によって選択され、特にそれが光波を反射するレーザキャビティの種類によって選択される。
【0046】図7は、隣接セクションの数の関数としての、本発明の反射器のスペクトルウインドウのプロファイルを示す曲線である。曲線aは、それぞれの長さが17μmに等しく、結合係数κが200cm−1に等しい2つのセクションで構成される本発明の反射器の、スペクトルウインドウのプロファイルを示す。曲線bは、それぞれの長さが34μmに等しく、結合係数κが200cm−1に等しい3つのセクションで構成される本発明の反射器の、スペクトルウインドウのプロファイルを示す。これら2つの曲線は、反射器を構成するブラッグ格子のセクションの数が多いほど、スペクトルウインドウのプロファイルが平坦になることを示す。
【0047】これら2つの曲線はまた、反射器を構成するブラッグ格子のセクションの数が多いほど、反射比が増大することも示している。すなわち、結合係数κが200cm−1に等しい反射器については、2つのセクションで構成される場合、反射比が約10%であるのに対して、3つのセクションで構成される場合、反射比が約50%である。
【0048】さらに、この例では、各セクションの長さLは、全体の有効屈折率変動が0.05であるとして計算されている。このことは、反射器が2つのセクションを有する場合、これらのセクションの有効屈折率がそれぞれ3.205および3.255であれば、関係式(4)で与えられる各セクションの長さLは約17μmであることを意味する。これに対して、反射器が3つのセクションを有する場合、全体の変動が0.05であるためには、これらのセクションの有効屈折率がそれぞれ3.205、3.23、および3.255である。この場合、関係式(4)で与えられる各セクションの長さLは約34μmである。
【図面の簡単な説明】
【図1A】従来のブラッグ反射器の長さ方向断面図である。
【図1B】従来のブラッグ反射器の横方向断面図である。
【図2】従来のブラッグ反射器のスペクトルウインドウの幅が、その結合係数κの関数としてどのように変化するかを示す曲線である。
【図3】本発明の反射器のスペクトルウインドウのプロファイルを、反射器を構成するブラッグ格子の各セクションの長さLの関数として示す曲線である。
【図4A】本発明の反射器の第1の実施形態の概略平面図である。
【図4B】ブラッグ格子のセクションの有効屈折率の値を、その幅Wの関数として示す曲線である。
【図5】本発明の反射器の第2の実施形態の概略平面図である。
【図6】本発明の反射器のスペクトルウインドウのプロファイルを、その結合係数κの関数として示す曲線である。
【図7】本発明の反射器のスペクトルウインドウのプロファイルを、隣接するセクションの数の関数として示す曲線である。
【符号の説明】
1 基板
2 活性層
3 底部クラッド層
4 四元材料層
5 上部クラッド層
10 ブラッグ格子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブラッグ反射器の複数の縦続接続されたセクション(S、Si+1)からなる半導体光反射器であって、前記セクションは長さLが同一であり、同一の結合係数(κ)を有し、セクションの各対の長さLが以下の式、L=λ/[(ni+1+n)×1.7(ni+1Λi+1−nΛ)]
(式中、λは反射器により反射されたブラッグ波長の平均値、ni+1およびnは隣接セクション(Si+1、S)の各有効屈折率、Λi+1およびΛは前記隣接セクション(Si+1、S)の各周期)で与えられることを特徴とする反射器。
【請求項2】 有効屈折率が、一つのセクションと別のセクションとで変化し(ni+1≠n)、一方周期は同一のまま(Λi+1=Λ)であることを特徴とする請求項1に記載の反射器。
【請求項3】 各セクション(Si+1、S)の幅(Wi+1、W)が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の反射器。
【請求項4】 周期が、一つのセクションと次のセクションとで変化し(Λi+1≠Λ)、一方有効屈折率は同一のまま(ni+1=n)であることを特徴とする請求項1に記載の反射器。
【請求項5】 反射器が2つのセクション(S、S)からなる場合、前記セクションのそれぞれの長さ(L)が15μmから20μmの範囲内にあり、好ましくは17μmに等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の反射器。
【請求項6】 隣接セクション(S、Si+1)が、同一組成を有する導波層を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の反射器。
【請求項7】 前記隣接セクション(S、Si+1)の結合係数(κ)が、500cm−1より小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の反射器。
【請求項8】 第1に、所定の周期(Λ)および所定の結合係数を有するホログラフィブラッグ格子を含む積層構造を形成し、第2に、前記積層構造を横方向にエッチングして、それぞれが異なる幅(W、Wi+1)を有する縦続接続されたホログラフィ格子セクション(S、Si+1)を形成することを特徴とする請求項1から3および5から7のいずれか一項に記載の反射器を製造する方法。
【請求項9】 第1に、ホログラフィ格子を形成するためにエッチングされる三元材料または四元材料の上部層を含む積層構造を形成し、次に、長さLのセクション(S)上の上部層をエッチングして所定の周期(Λ)を有する刻み目のあるパターンを形成し、上記セクションに隣接し、同一の長さLを有するセクション(Si+1)上の上部層を継続してエッチングし、他のいずれかの周期(Λi+1)を有する他の刻み目のあるパターンを形成し、各セクションの刻み目を継続してエッチングした後、隣接するセクションすべてを同一の幅(W)となるような方法でのエッチング、およびIII―V族材料によるクラッド層の堆積をいずれかの順序で行って、刻み目を充てんし、それぞれが異なる周期(Λ、Λi+1)を有する複数の縦続接続されたホログラフィ格子セクション(S、Si+1)を形成することを特徴とする請求項1および請求項4から7のいずれか一項に記載の光反射器を製造する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平11−316312
【公開日】平成11年(1999)11月16日
【国際特許分類】
【外国語出願】有
【出願番号】特願平11−45362
【出願日】平成11年(1999)2月23日
【出願人】(391030332)アルカテル (1,149)