説明

半導体発光装置、および車両用前照灯

【課題】 正面輝度の高い半導体発光装置、および半導体発光装置を光源とする車両用前照灯を提供することである。
【解決手段】半導体発光装置10は、基板20と、基板20に実装される複数の発光素子30と、発光素子30の上方に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層40と、波長変換層40と発光素子30の側面に隣接して配置された反射部材50とから構成され、複数の発光素子30は、少なくとも2つの各発光素子30が互いの側面が対向するように隣接して配置され全体として平面視において4つの辺を有する矩形形状とされ、波長変換層40は、各発光素子30の夫々の側面および上面に設けられており、反射部材50は、4つの辺のなかの少なくとも一つの辺の側面に設けた波長変換層40の側面、または複数の辺の側面に設けた波長変換層40の側面のみを覆うように基板20上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光装置に関し、特に、半導体発光素子の光と波長変換層の光との混色光を発光する半導体発光装置、および半導体発光装置を光源とする車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、青色発光素子の光の一部を蛍光体で波長変換し、青色発光素子からの光と蛍光体からの光を合成して白色光を作り出す半導体発光装置が、一般照明、街路灯、ヘッドランプ等のような照明器具の光源として利用されている。
【0003】
従来のこの種の半導体発光装置として、特許文献1には、カップと、カップの底部に配設された発光素子と、カップ内に充填された発光素子を封止する蛍光物質を含んだ樹脂とを備える半導体発光装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、サブマウントにフリップチップ方式で実装された発光素子と、発光素子の周囲に設けられた蛍光体とを備える光源が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3152238号公報
【特許文献2】特開2003−110153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の半導体発光装置では、発光素子がカップに配設されるので、光源としてみた場合、カップ全体から発光するように見える。つまり、光源のサイズが実質的に大きくなる。そのため、レンズやリフレクタのような光学系で光を制御しようとすると、有効に光を利用するためには光学系を大きくする必要が生じてしまう。
【0007】
また、特許文献2では、発光素子の光が上面からも側面からも出射するため、蛍光体が発光素子の周囲、つまり上面及び側面を覆っている。このような構成にすれば、光源のサイズを特許文献1に比べて小さくすることができる。
【0008】
しかし、光源を正面から見た輝度(正面輝度)の特性で捉えた場合、特許文献2の光源では発光素子の側面から光が出射されるので、正面輝度は大幅に減少してしまう問題があった。特に、高い正面輝度が求められる照明装置、たとえば自動車の前照灯や道路灯などに用いる場合、その問題は顕著であった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、正面輝度の高い半導体発光装置、および半導体発光装置を光源とする車両用前照灯を得ること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、発光層を有する半導体エピタキシャル層と、該半導体エピタキシャル層を支持し、該発光層からの光を透過する素子基板とを有する複数の発光素子と、前記複数の発光素子の上方及び側面に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層と、前記波長変換層の少なくとも一つの側面に隣接して配置された反射部材と、前記複数の発光素子及び前記反射部材が実装される基板と、を備え、前記複数の発光素子は、少なくとも2つの各発光素子が互いの側面が対向するように隣接して配置され全体として平面視において4つの辺を有する矩形形状とされ、前記波長変換層は、前記各発光素子の夫々の側面および上面に設けられており、前記反射部材は、上記4つの辺のなかの少なくとも一つの辺の側面に設けた前記波長変換層の側面、または複数の辺の側面に設けた前記波長変換層の側面のみを覆うように前記基板上に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体発光装置は、好ましくは、前記複数の発光素子は、少なくとも2つの各発光素子が互いの側面が対向するように隣接して配置され全体として平面視において4つの辺を有する長方形形状とされ、前記反射部材は、上記4つの辺のなかの少なくとも一つの長辺の側面に設けた波長変換層の側面、または少なくとも一つの長辺の側面に設けた波長変換層および二つの短辺の側面に設けた波長変換層の側面と接している。
【0012】
本発明の半導体発光装置は、好ましくは、前記反射部材は、上記4つ辺のうち、残りの辺の中で少なくとも一つの辺の側面では、前記発光素子の側面および当該発光素子の上面に設けた波長変換層の側面を覆って配置されている。
【0013】
本発明の車両用前照灯は、上記の半導体発光装置を光源とする車両用前照灯であって、前記半導体発光装置の4つの辺のうち、車両用前照灯の配向パターンの明暗境界線を形成する部分に相当する辺の側面には、前記波長変換層を覆う前記反射部材が配置されていることを特徴とする。
【0014】
前記目的を達成するため以下の態様を含むものである。
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、発光層を有する半導体エピタキシャル層と、該半導体エピタキシャル層を支持し、該発光層からの光を透過する素子基板とを有する発光素子と、前記発光素子の上方に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層と、前記波長変換層の側面と、該側面と同一面側に位置する前記発光素子の側面とに隣接して配置された反射部材と、前記発光素子及び前記反射部材が実装される基板と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、発光層を有する半導体エピタキシャル層と、該半導体エピタキシャル層を支持し、該発光層からの光を透過する素子基板とを有する発光素子と、前記発光素子の上方及び少なくとも一つの側面に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層と、前記発光素子の前記波長変換層の形成されていない側面と該側面と同一面側に位置する前記波長変換層の側面に隣接して配置された反射部材と、前記発光素子及び前記反射部材が実装される基板と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の半導体発光装置は、前記発明において、前記反射部材はさらに前記発光素子の側面に位置する波長変換層の少なくとも一面に隣接して配置させることができる。
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の半導体発光装置は、発光層を有する半導体エピタキシャル層と、該半導体エピタキシャル層を支持し、該発光層からの光を透過する素子基板とを有する発光素子と、前記発光素子の上方に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層であって、該波長変換層はその一断面において上方に向けて内側に傾斜している部分を有し、前記発光素子の側面に隣接して配置された反射部材と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の半導体発光装置は、前記発明において、前記反射部材が前記波長変換層の一部を覆うように配置することができる。
【0020】
本発明の半導体発光装置は、前記発明において、前記反射部材の表面に光非透過部材を設けることができる。本発明の半導体発光装置において、好ましくは、反射部材を白色部材とし、非透過部材を黒色部材とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正面輝度の高い半導体発光装置、及び半導体発光装置を光源とする車両用前照灯を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光装置を示す断面図
【図2】第1の実施形態に係る半導体発光装置を示す斜視図
【図3】第2の実施形態に係る半導体発光装置を示す断面図
【図4】第3の実施形態に係る半導体発光装置を示す断面図
【図5】本実施の形態における半導体発光装置と従来の半導体発光装置の正面輝度分布を示すグラフ
【図6】車両用前照灯の配光パターンの一例
【図7】第2の実施形態に係る半導体発光装置を示す平面図
【図8】他の実施形態に係る半導体発光装置を示す平面図
【図9】他の実施形態に係る半導体発光装置を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行なうことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0024】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1は半導体発光装置10の断面図、図2は斜視図を示している。半導体発光装置10は、基板20と、基板20上に実装された発光素子30と、発光素子30の上方の位置に配置された波長変換層40と、発光素子30と波長変換層40の両側面に隣接して配置され、基板20上に設けられた反射部材50とで構成される。
【0025】
基板20は、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック、ガラスエポキシなどの樹脂、シリコーン等の半導体材料などから構成される。基板20の表面に電極配線(不図示)が形成される。また、電極配線が形成されない基板20の裏面に、放熱特性を向上させるため、ヒートシンク(不図示)を設けることができる。
【0026】
発光素子30は、AuSn等の半田を用いて、またAu等のバンプを用いて、基板20上に形成された電極配線と、電気的に接合される。発光素子30を電極配線に実装する際には、素子基板側を基板20に実装しても良いし、半導体エピタキシャル層側を基板20に実装しても良い。本実施の形態では、発光素子30は、例えば青色発光LEDで、サファイ基板,SiC基板、GaN基板等の発光色に対して透過性の素子基板と、透過性の素子基板上に形成されたInGaN系半導体材料で構成される発光部を有する半導体エピタキシャル層で構成される。
【0027】
発光素子30は、例えば素子基板上に半導体エピタキシャル層を成長することで製造することができる。また、別の態様として、素子基板と半導体エピタキシャル層を別々準備し、それらを貼り合わせることで製造することができる。
【0028】
波長変換層40は、例えば、発光素子30からの青色光で励起され、発光素子30からの光と異なる波長(黄色光)に変換するYAG系蛍光体やシリケート系蛍光体を少なくとも1種類含んだシリコーン等の熱硬化性樹脂等から構成される。また、波長変換層40に、さらに散乱材を含ませることができる。
【0029】
波長変換層40は、例えばステンシル印刷等で予め板状に形成される。板状の波長変換層40が発光素子30の上面に配置される。波長変換層40を透過する発光素子30の光量と波長変換層40の光量は、波長変換層40の厚さや、蛍光体の含有量に応じて変化する。したがって、波長変換層40の厚さや、蛍光体の含有量を調整することで、所望の発光色を容易に得ることができる。
【0030】
図1では、波長変換層40が発光素子30と接しているが、波長変換層40と発光素子30の間に、例えば、光透過性樹脂を形成することができる。
【0031】
また、波長変換層40はシリコーンのような樹脂に限らず、ガラスや透明セラミックのような光を透過する透光性部材によって構成されても良い。
【0032】
反射部材50は、シリコーンのような透明樹脂に酸化チタンや酸化アルミニウムなどの粒子を含ませた白色樹脂等で構成される。反射部材50が、発光素子30の側面と波長変換層40の側面に隣接する位置に配置される。反射部材50は、発光素子30の全ての側面に隣接して設ける必要はない。反射部材50は、少なくとも波長変換層40の側面と同一面側に位置する発光素子30の側面に隣接して配置されればよい。これは、図1において、発光素子30間に、発光素子30の側面に隣接する位置に反射部材50を配置しなくても良いことを意味する。半導体発光装置10の正面輝度分布を決定するのは、最も外側に位置する発光素子30の外縁の側面だからである。
【0033】
反射部材50は、発光素子30と波長変換層40側で、発光素子30と波長変換層40の厚さの合計とほぼ同じ高さを有しており、波長変換層40の側面または発光素子30の側面を覆っている。反射部材50の高さは、発光素子30と波長変換層40側から離れるにしたがい、徐々に低くなっている。反射部材50の形状は、波長変換層40の側面または発光素子30の側面を覆っている限り、図1に示す形状に限定されない。
【0034】
反射部材50は、例えば、シリコーン樹脂に酸化チタンを混ぜ、ディスペンサー等により発光素子30の側面と波長変換層40の側面に隣接する位置に塗布することで形成することができる。反射部材50の反射率は、可視光領域において90%以上であることが好ましい。
【0035】
また、発光部と非発光部の輝度差をより急峻で、端部に最大輝度のある半導体発光装置10を得るために、黒樹脂などの光非透過部材(不図示)を反射部材50の表面を覆うように形成することができる。例えば、白色樹脂等で構成される反射部材50は少なからず光を透過する。その光が反射部材50の表面から出射されると、発光部と非発光部の境界が急峻でなくなるおそれがある。光非透過部材(不図示)を反射部材50の表面に形成することで、反射部材50の表面から光がリークするのを防止することができる。
【0036】
また、図1では、2個の発光素子30間に何も充填されていないが、反射部材50や波長変換層40を、さらに形成することができる。
【0037】
例えば、1mm角の発光素子30を100μmより大きい間隔で基板20上に実装した場合、色ムラの問題を防止するため発光素子30間に波長変換層40を設けないほうが好ましい。光透過性の素子基板を有する発光素子30では、発光素子30の側面からも光が照射される。発光素子30の上面の波長変換層40で波長変換される光と、発光素子30間の波長変換層で波長変換される光にばらつきが生じ、発光素子30の正面(上面)から見たときに色ムラが生じるからである。
【0038】
一方、1mm角の発光素子30を100μm以下の間隔で基板20上に実装した場合、発光素子30間に充填される波長変換層の量が少なくなるので、波長変換層の有無に関係なく色ムラが生じにくくなる。また、基板20が高反射性の表面を有している場合には何も設けなくて良い。
【0039】
発光素子30と波長変換層40の組み合わせは、本実施の形態では、青色発光LEDとYAG系蛍光体やシリケート系蛍光体としたが、これに限定されない。例えば、紫外光や近紫外光を発光する発光素子と、この発光素子からの光で励起されて青色光、緑色光、赤色光を発光する波長変換層とを組み合わせて、白色光を含め所望の発光色を作り出すことができる。
【0040】
本実施の形態の半導体発光装置10では、発光素子30と波長変換層40の両側面が反射部材50で覆われている。発光素子30側面から出射される青色光と波長変換層40の側面から出射される白色光は反射部材50により反射され、最終的に波長変換層40の正面から出射される。これにより半導体発光装置10の正面輝度を高めることができる。
【0041】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態を図3に基づいて説明する。第1の実施形態に示した半導体発光装置と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0042】
図3は半導体発光装置10の断面図を示している。半導体発光装置10は、基板20と、基板20上に実装された発光素子30と、発光素子30の周囲に配置された波長変換層40と、波長変換層40の側面に隣接して配置され、基板20上に設けられた反射部材50とで構成される。
【0043】
第2の実施形態の半導体発光装置10では、波長変換層40が発光素子30の周囲、発光素子30の側面及び上面に形成されている。この点が第1の実施形態の半導体発光装置と異なる。
【0044】
第2の実施形態では、波長変換層40は、例えば、ステンシル印刷のような方式で発光素子30の周囲に印刷される。ステンシル印刷では、発光素子30の配列パターンに対応した開口部を有するステンシルが準備される。ステンシルは、発光素子30がステンシルの開口部の中央に位置するよう配置される。開口部に蛍光体を含む熱硬化性樹脂を注入し、硬化させることで、発光素子30の周囲に波長変換層40が形成される。
【0045】
反射部材50に関して、第1の実施形態と同様、例えば、シリコーン樹脂に酸化チタンを混ぜ、ディスペンサー等により発光素子30の側面と波長変換層40の側面に隣接する位置に塗布することで形成することができる。また、光非透過部材を反射部材50の表面に形成することもできる。
【0046】
本実施の形態の半導体発光装置10では、波長変換層40の側面が反射部材50で覆われている。波長変換層40の側面から出射される白色光は反射部材50により反射され、最終的に波長変換層40の正面から出射される。これにより半導体発光装置10の正面輝度を高めることができる。
【0047】
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態を図4に基づいて説明する。第1の実施形態、及び第2の実施形態に示した半導体発光装置と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0048】
図4は半導体発光装置10の断面図を示している。半導体発光装置10は、基板20と、基板20上に実装された発光素子30と、発光素子30の上面のみを覆い、その断面形状が上方に向けて内側に傾斜している波長変換層40と、発光素子30の側面に隣接して配置され、基板20上に設けられた反射部材50とで構成される。
【0049】
第3の実施形態の半導体発光装置10では、波長変換層40が発光素子30の上面のみを覆い、略半球形状の円頂部を有するドーム形状を有している。これに合わせて、反射部材50が発光素子30の側面を覆うように配置されている。
【0050】
波長変換層40は、例えば、ディスペンサー等にて発光素子30上に蛍光体を混入させた熱硬化性樹脂をポッティングすることで形成できる。ポッティングする樹脂の粘度、チクソ性の制御により略半球状の波長変換層40の形状を変化させることができる。例えば、曲率、波長変換層40と発光素子30との接触角、波長変換層40の高さ等を変化させることができる。
【0051】
本実施の形態では波長変換層40は略半球状のドーム形状を有している。しかし、必ずしも全体的に半球形状である必要はない。波長変換層40は、発光素子30の側面から上方に向けて内側を向く傾斜を有していれば良い。また、波長変換層40の最頂部は、本実施の形態に示すような円頂部ではなく、平坦面であってもよい。
【0052】
また、波長変換層40は、発光素子30の上面に対して垂直に形成された側面を有し、続いて上方に向けて内側に傾斜している形状を有していてもよい。
【0053】
反射部材50に関して、第1の実施形態と同様、例えば、シリコーン樹脂に酸化チタンを混ぜ、ディスペンサー等により発光素子30の側面に隣接する位置に塗布することで形成することができる。また、光非透過部材を反射部材50の表面に形成することもできる。
【0054】
本実施の形態では、図4に示すように、反射部材50は発光素子30の側面のみを覆うように配置されている。しかし、これに限定されることなく、反射部材50は波長変換層40の側面の一部を覆うことができる。
【0055】
これにより、発光素子30の角部(発光素子30の側面と上面から形成される端部)からの光漏れを防ぐことができ、不要な色ムラを防ぐことができる。また、波長変換層40は反射部材50に覆われる部分も含めて略弧状を形成していてもよい。波長変換層40は、反射部材50に覆われる部分において発光素子30の上面に対して垂直に形成された側面を有することができる。
【0056】
本実施の形態の半導体発光装置10では、発光素子30の側面から出射された光は反射部材50で反射され、発光素子30の上面に導かれる。発光素子30の上面から出射される光はドーム形状の波長変換層40を通過する際に上方向に導かれる。その結果、発光部の端部と端部以外の領域での輝度の値がほぼ同等となり、発光部と非発光部の差が急峻な半導体発光装置10を得ることができる。
【0057】
図5は、シミュレーションから得られた従来例、及び第1〜第3の実施形態の半導体発光装置の正面輝度分布を示したグラフである。評価のために、第1〜第3の実施形態として、約1×1mmの一つの発光素子の周囲または上面に波長変換層、及び反射部材を配置し、半導体発光装置を準備した。
【0058】
従来例として、特開2003−110153号公報の図3に示すような、基板にフリップチップ方式で実装された発光素子と、発光素子の周囲(上面及び側面)を覆う波長変換層とで構成される半導体発光装置を準備した。
【0059】
図5のグラフに関し、縦軸は光の相対強度を、横軸は発光素子の中心からの距離を示している。第1〜第3の実施形態の場合、発光素子の中心から反射部材までの距離となる。従来例の場合、発光素子の中心から波長変換層までの距離となる。
【0060】
グラフから明らかなように、従来例は、半導体発光装置の両端部の輝度の立ち上がりがなだらかな傾斜を示している。
【0061】
一方、第2の実施形態では、半導体発光装置の両端部の輝度の立ち上がりが従来例に比較して垂直になっている。また、輝度値も従来例に比べて高くすることができる。波長変換層の側面方向に出ていた白色光が反射部材によって上面側へ導かれたことによって得られる効果である。
【0062】
第1の実施形態では、発光素子の側面に波長変換層が設けられていないことにより、輝度の立ち上がりが更に垂直になるよう、つまり急峻となるよう改善されている。また、半導体発光装置の中央部と両端部の輝度値がほぼ同じ値を示すように改善されている。また、側面に出射されていた発光素子からの光も上面に導く構造となっているため、中央部と両端部の輝度値も従来例に比較して大幅に改善されている。
【0063】
従来例のような発光部からの光を透過する素子基板を持つ発光素子と波長変換層を組み合わせた構造においては、発光素子側面にも波長変換層を設ける必要がある。その理由は、従来例では発光素子側面からも光(例えば青色光)が出射されるため、もし発光素子側面に波長変換層がなければ人間が半導体発光装置を見たとき、見る角度によっては白色光が見えたり青色光が見えたりと、色分離が気になるからである。そのため、白色光を得るには発光素子側面にも波長変換層で被覆する必要があった。
【0064】
しかし、第1の実施形態では、発光素子側面に反射部材を配置することで発光素子側面からの光による色分離を気にする必要がなくなるので、それにより発光素子側面に波長変換層を配置する必要がなくなる。これによって、白色光を発する発光面の大きさを発光素子側面に配置していた波長変換層の厚み分だけ減らすことができ、輝度値向上の効果を得ることができる。
【0065】
第3の実施形態の半導体発光装置では、両端部の輝度の立ち上がりが第1の実施形態と同様に垂直となるよう、つまり急峻となるように改善されている。輝度に関し、中央部の輝度が最小値を示し、輝度は中央部から発光部の両端に向けて増加している。両端部を越えた時点で、輝度は概ね垂直に減少している。
【0066】
図5において、第3の実施形態では、中央部に比べて両端部がやや高い輝度値を示している。輝度値に関し、蛍光体濃度を調整したり、波長変換層に散乱材を混入することで散乱度合いを調整したり、発光素子上面に対する波長変換層の立ち上がり傾斜角度を適宜調整することにより、第1の実施形態と同様に発光部の中央部と両端部の輝度値を同等にすることもできる。
【0067】
また、第3の実施形態における波長変換層は発光素子の上面に対して垂直に立ち上がった面を有し、続いて上方に向けて内側に傾斜している形状となっていてもよい。このような形状でも上記に示した輝度の効果をもつことができる。
【0068】
次に、正面輝度分布が改善された半導体発光装置の適用例について説明する。例えば、図6に示すような車両用前照灯のヘッドランプにおけるすれ違い配光などでは、対向車の運転者に対して幻惑を生じさせないように上向光を一切含まない配光パターンが要求される。このような明暗境界線HLを必要とする車両用前照灯を含む照明装置では、その光源として使用される半導体発光装置は、発光部の端部において輝度が最大値を示す正面輝度分布が求められる。
【0069】
半導体発光装置の発光部において中央部が輝度の最大値を示す場合、半導体発光装置の発光部の端部において発光部と非発光部と輝度差が小さくなり、急峻な正面輝度分布を得ることができない。端部において最大値を示さない半導体発光装置は、光学系を配置しても端部の輝度を向上させることはできない。それゆえ、半導体発光装置の発光部において、発光部とその周囲の少なくとも一部分において発光部と非発光部の輝度差が急峻であることが要求される。このような用途の照明装置の光源として、本発明の半導体発光装置は非常に有効なものとなる。
【0070】
また、図6の配光分布は、HVの中心から遠ざかる方向の明るさはH線の上側にあるカットオフ部分以外は徐々に照度が落ちていくような配光分布を示す。この場合、実施形態2において、図7(a)の平面図に示すように、カットオフを形成するために必要な一面には、波長変換層40を覆うように反射部材50を設け、残りの三面には反射部材50を設けないような構造がよい。反射部材50を配置した一面はその他の面よりも高い輝度を得ることができ、すれ違い配光のようなパターンにおいてさらに好ましい半導体発光装置とすることができる。反射部材を設ける面は、所望の配光に合わせて形成すれば良い。また、別の配光パターンを得るために図7(b)の平面図に示すように、一面だけ反射部材50を設けず、残りの三面に波長変換層40を覆うように反射部材50を設けることもできる。
【0071】
また、実施形態1と実施形態2を組み合わせたような構成を用いることができる。すなわち、四面ある発光素子30と反射部材50の間のうち、例えば、図8(a)に示すように三面、または図8(b)に示すように一面に波長変換層40を設け、波長変換層40と波長変換層40を設けなかった他の面を反射部材50で覆うようにする。このようにすると、輝度分布は、実施形態1と実施形態2を組み合わせたようなものが得られ、発光素子30と反射部材50の間に波長変換層40を設けなかった部分は、他の部分に比べて、高い輝度を得ることができる。また、この構成は発光部を上面から見た場合、最大輝度部分を発光部の中心から発光素子30と反射部材50の間に波長変換層40を設けなかった部分側にシフトさせることができる。これは上面から見て波長変換層40が発光素子30の側面を均等に覆っているのではなく偏るような形で覆うようにしているためである。灯具にこの半導体発光装置10を用いるには、波長変換層40を設けなかった一面を図6の配光において明暗境界線HLを形成するために用いるよう光学設計すれば良い。
【0072】
さらに、応用例として、図9(a)(b)に示すように、反射部材50も発光素子30及び波長変換層40のすべてを覆わないようにしてもよい。反射部材50は側面を波長変換層40によって覆われない発光素子30の側面側にのみ形成すれば良い。このようにすれば、反射部材50で覆われない側面は輝度のグラデーションがさらにつくとともに、発光素子30と反射部材50の間に波長変換層40を設けなかった部分との輝度差をより顕著にすることができる。これによって、すれ違い配光のようなパターンにおいてさらに好ましい半導体発光装置10とすることができる。
【0073】
なお、本発明の半導体発光装置において、発光素子の側面は、波長変換層あるいは反射部材に覆われている。発光素子の側面を覆うことで、発光素子からの発光波長の光が放出されるのを防止することができるからである。
【0074】
本発明は上記実施の形態に限定されるもではなく、上記の説明に基づいて多くの変形例が可能となる。
【符号の説明】
【0075】
10…半導体発光装置、20…基板、30…発光素子、40…波長変換層、50…反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を有する半導体エピタキシャル層と、該半導体エピタキシャル層を支持し、該発光層からの光を透過する素子基板とを有する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子の上方及び側面に位置し発光層からの光を波長変換する蛍光体を含む透光性部材からなる波長変換層と、
前記波長変換層の少なくとも一つの側面に隣接して配置された反射部材と、
前記複数の発光素子及び前記反射部材が実装される基板と、を備え、
前記複数の発光素子は、少なくとも2つの各発光素子が互いの側面が対向するように隣接して配置され全体として平面視において4つの辺を有する矩形形状とされ、
前記波長変換層は、前記各発光素子の夫々の側面および上面に設けられており、
前記反射部材は、上記4つの辺のなかの少なくとも一つの辺の側面に設けた前記波長変換層の側面、または複数の辺の側面に設けた前記波長変換層の側面のみを覆うように前記基板上に配置されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記複数の発光素子は、少なくとも2つの各発光素子が互いの側面が対向するように隣接して配置され全体として平面視において4つの辺を有する長方形形状とされ、
前記反射部材は、上記4つの辺のなかの少なくとも一つの長辺の側面に設けた前記波長変換層の側面、または少なくとも一つの長辺の側面に設けた前記波長変換層および二つの短辺の側面に設けた前記波長変換層の側面と接していることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記反射部材は、上記4つ辺のうち、残りの辺の中で少なくとも一つの辺の側面では、前記発光素子の側面および当該発光素子の上面に設けた前記波長変換層の側面を覆って配置されている請求項1または請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか記載の半導体発光装置を光源とする車両用前照灯であって、
前記半導体発光装置の4つの辺のうち、車両用前照灯の配向パターンの明暗境界線を形成する部分に相当する辺の側面には、前記波長変換層を覆う前記反射部材が配置されていることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−33976(P2013−33976A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202497(P2012−202497)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2008−57994(P2008−57994)の分割
【原出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】