説明

半導体装置及び配線基板

【課題】高い信頼性を実現し得る半導体装置及び配線基板を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る半導体装置10は、絶縁性基板121と、絶縁性基板の第1の主面121a上に形成されており導電性を有する配線層122と、その配線層上に搭載される半導体素子14と、を備える。この半導体装置において、絶縁性基板は、cBN又はダイヤモンドから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一例として、配線基板と、配線基板上に実装される半導体素子とを備えた半導体装置が知られている(非特許文献1参照)。上記配線基板としては、銅配線と、銅からなる放熱層とでセラミック基板が挟み込まれたサンドイッチ構造を有するDBC(Direct Bonding Copper)基板が採用されている。半導体素子は、配線基板の銅配線上に半田付けされることで固定され、半導体素子の上部(絶縁性基板と反対側)の電極と銅配線とがアルミワイヤなどに電気的に接続される。上記銅配線には、外部接続のための端子が半田付けされ、この端子により半導体装置が駆動される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】岩室憲幸ほか著、「SiC/GaN パワーデバイスの製造プロセスと放熱・冷却技術」、第1版、株式会社技術情報協会、2010年2月26日、p120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体装置が駆動されると、駆動により半導体装置が熱を帯びる。この場合、半導体素子と絶縁性基板との間の熱膨張の違いなどによって半導体装置が破損する場合があった。特に、例えば、半導体素子がワイドバンドギャップ半導体によって構成されている半導体装置は、パワーモジュールとして利用され得る。この場合、動作及び停止が繰り返し行われることから、ヒートサイクルが生じる。このようなヒートサイクルの元では、上記のような熱膨張の違いによる破損が生じやすかった。そのため、半導体装置の信頼性の向上が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、高い信頼性を実現し得る半導体装置及び配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る半導体装置は、絶縁性基板と、縁性基板の第1の主面上に形成されており導電性を有する配線層と、ワイドバンドギャップ半導体から構成されており配線層上に搭載される半導体素子と、を備える。上記絶縁性基板は、cBN又はダイヤモンドから構成される。
【0007】
この構成では、cBN又はダイヤモンドから構成される絶縁性基板を用いているので、放熱性が向上すると共に、半導体素子と絶縁性基板との間の熱膨張係数差がより小さくなる。その結果、半導体装置の信頼性が向上する。
【0008】
一実施形態において、配線層は、銅と、銅より熱膨張係数が小さい特定金属とを含む銅含有材料から構成され、配線層に含まれる銅含有材料の熱膨張係数が銅の熱膨張係数より小さくし得る。このような構成では、半導体素子と配線層との間及び配線層と絶縁性基板との間の熱膨張係数差の低減を図れる。その結果、半導体装置の信頼性を更に向上できる。
【0009】
一実施形態において、上記配線層を構成する銅含有材料は、銅で構成される第1の層と上記特定金属で構成される第2の層とが積層された積層構造を有する複合材料であり得る。また、上記配線層を構成する銅含有材料は、銅と上記特定金属とを含む合金であり得る。配線層を構成する銅含有材料が上記複合材料である場合、配線層を構成する銅含有材料の作製が容易である。また、配線層を構成する銅含有材料が上記合金である場合、配線層を構成する銅含有材料の熱膨張係数をより調整しやすい。
【0010】
配線層を構成する銅含有材料が複合材料である場合、その複合材料は、第1の層、第2の層及び第3の層がこの順に積層されて構成され得る。この場合、銅からなる第1の層で第2の層が挟まれるので、配線層の表面は銅から構成される。その結果、配線層を銅から構成した場合と同様にして、絶縁性基板に配線層を接合し得る。
【0011】
一実施形態において、上記特定金属は、モリブデン又はタングステンであり得る。モリブデン及びタングステンの熱膨張係数は、銅の熱膨張係数の半分以下である。そのため、特定金属がモリブデン又はタングステンの場合には、銅より熱膨張係数の小さい銅含有材料を形成しやすい。
【0012】
一実施形態において、ワイドバンドギャップ半導体は、SiC又はGaNであり得る。SiC又はGaNは、ワイドバンドギャップ半導体のうちでもパワーモジュールに特に利用されてきている。従って、ワイドバンドギャップ半導体がSiC又はGaNである形態の半導体装置は、パワーモジュールとして利用される傾向にある。パワーモジュールではヒートサイクルが生じるため、半導体素子と配線基板との熱膨張差が小さい方が好ましい。従って、ワイドバンドギャップ半導体は、SiC又はGaNである形態では、パワーモジュール用の半導体装置として特に有効な構成である。
【0013】
一実施形態において、半導体装置は、絶縁性基板の第1の主面と反対側の第2の主面上に形成される放熱層と、放熱層を介して絶縁性基板と接合されるヒートシンクと、を備え得る。この形態では、放熱層は、銅を含む銅含有材料から構成され得る。そして、放熱層に含まれる銅含有材料の熱膨張係数は、絶縁性基板の熱膨張係数より大きくヒートシンクの熱膨張係数以下であり得る。
【0014】
この場合、銅を含む銅含有材料から構成される放熱層を介して、絶縁性基板とヒートシンクとが接合されるので、絶縁性基板とヒートシンクとの間の熱膨張性係数差が緩和され得る。その結果、絶縁性基板とヒートシンクとの間の熱応力等が低減する。そのため、半導体装置の信頼性がより向上する。
【0015】
配線層が、銅と、銅より熱膨張係数が小さい特定金属とを含む銅含有材料から構成される上記半導体装置では、絶縁性基板の第1の主面と反対側の第2の主面上に形成される放熱層を備えてもよく、放熱層は、その銅含有材料から構成され得る。この場合、絶縁性基板の第1の主面と第2の主面に同じ材料が設けられるので、絶縁性基板が反りにくい。
【0016】
本発明の他の側面は、半導体素子が搭載される配線基板に係る。この配線基板は、絶縁性基板と、絶縁性基板の主面上に形成され、半導体素子が搭載される配線層と、を備える。上記絶縁性基板が、cBN又はダイヤモンドから構成される。
【0017】
この構成では、cBN又はダイヤモンドから構成される絶縁性基板を用いているので、放熱性が向上すると共に、半導体素子と絶縁性基板との間の熱膨張係数差がより小さくなる。そのため、半導体素子の駆動により熱が生じても、半導体素子と絶縁性基板との間に生じる熱歪み又は熱応力が低減する。その結果、配線基板に搭載された半導体素子が安定して駆動され得るので、配線基板と半導体素子とを含む装置の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い信頼性を実現し得る半導体装置、及び、半導体素子が搭載される配線基板を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した半導体装置が備える配線基板の一例の斜視図である。
【図3】図3は、図2に示した配線基板が備える配線層の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。説明中、「上」、「下」等の方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0021】
図1は、一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示した半導体装置が備える配線基板の斜視図である。半導体装置10は、配線基板12と、配線基板12に搭載される半導体素子14とを備えた半導体モジュールである。半導体装置10は、例えば電源などに利用されるパワーモジュールであり得る。半導体装置10は、好ましくは、配線基板12に対して半導体素子14と反対側に配置されるヒートシンク16とを備える。以下では、特に断らない限り、半導体装置10がヒートシンク16を備えた形態を例にして半導体装置10について説明する。
【0022】
半導体素子14の例は、絶縁型電界効果トランジスタ(MOSFET)、接合型電界効果トランジスタ及びバイポーラトランジスタを含む。MOSFETの例は、縦型MOSFET及び横型MOSFETを含み得る。半導体素子14を構成する半導体はいわゆるワイドバンドギャップ半導体である。ワイドギャップ半導体の例は、SiC又はGaNである。
【0023】
配線基板12は、図1及び図2に示すように、絶縁性基板121と、絶縁性基板121の表面(第1の主面)121a上に設けられる導電性の配線層122とを有する。
【0024】
絶縁性基板121の平面視形状の例は長方形及び正方形を含み得る。絶縁性基板121の厚さの例は、100μm〜1000μmである。絶縁性基板121は、cBN(立方晶窒化ホウ素)又はダイヤモンドから構成される。cBN又はダイヤモンドは、単結晶でも多結晶でも焼結体であってもよい。なお、絶縁性基板121は、実質的にcBN又はダイヤモンドから構成されていればよい。例えば、絶縁性基板121の主原料がcBN又はダイヤモンドであればよい。
【0025】
配線層122は、ロウ材などを介して又は直接的に絶縁性基板121に接合され得る。配線層122の厚さは、例えば100μm〜500μmである。このような厚さにすることによって、熱膨張率差の影響を低減すると共に、大電流も流すことが可能である。配線層122は、互いに絶縁された複数の導電性の配線領域(以下、単に配線と称す)122A,122Bを備える。複数の配線122A,122Bは、所定の配線パターンで配置されている。図1では、2つの配線122A,122Bを例示しているが、配線は2つに限定されない。
【0026】
配線層122の一部を構成する配線122A上に半導体素子14が搭載される。半導体素子14は、配線122Aに半田付けされている。すなわち、半導体素子14と配線層122との間には接着層としての層状の半田18Aが介在する。半田18Aの一例は、Sn−Ag−Cu系半田である。半導体素子14が、縦型MOSFETの場合、半導体素子14の下部はドレイン電極である。従って、半田18Aを利用して配線122Aに半導体素子14を固定することで、配線122Aと半導体素子14とが電気的に接続される。半導体素子14の上部に設けられた電極は、アルミワイヤといったワイヤ20を介して配線122Bと電気的に接続される。半導体素子14が下部に電極を有しない場合は、配線122Bに接続される電極とは別に半導体素子14の上部に設けられた電極と、配線122Aとをワイヤボンディングして半導体素子14と配線122Aとを電気的に接続し得る。
【0027】
端子22A,22Bをそれぞれ半田18Bなどによって配線122A,122Bに固定することで、端子22A,22Bを利用して半導体素子14が外部接続され得る。半田18Bの一例は、Sn−Ag−Cu系半田である。ここでは、半導体素子14と配線層122との接続関係の一例を示しているが、半導体素子14は、配線層122に接続される端子22A,22Bなどを利用して半導体素子14が動作されるように半導体素子14と配線層122とが電気的に接続されていればよい。
【0028】
配線層122は、銅を含み、銅より熱膨張係数が小さい第1の銅含有材料から構成されることが好ましい。一実施形態では、第1の銅含有材料の熱膨張係数は、銅の熱膨張係数より小さく半導体素子14を構成する半導体の熱膨張係数以上とし得る。第1の銅含有材料は、銅(熱膨張係数:約16.8×10−6/K)と、銅より熱膨張係数の小さい他の特定金属とを含む。このような第1の銅含有材料は、好ましくは、複合材料又は合金であり得る。上記特定金属の例は、モリブデン(熱膨張係数:約5.1×10−6/K)、及びタングステン(熱膨張係数:約4.5×10−6/K)を含む。第1の銅含有材料は、銅より熱膨張係数が小さければ、銅と異なる上記他の特定金属を一種類含んでいればよい。従って、第1の銅含有材料は、銅と異なる金属を2種類以上含んでもよい。
【0029】
第1の銅含有材料が、銅と、銅より熱膨張係数の小さい他の特定金属との複合材料である場合、その複合材料は、好ましくは、銅からなる層(第1の層)と、上記他の特定金属からなる層(第2の層)とが積層された積層構造を有し得る。
【0030】
図3は、第1の銅含有材料が複合材料である場合の配線層の一例を示す模式図である。図3に示した形態では、配線層122は、銅より熱膨張係数の小さい特定金属からなる中間層(第2の層)122aと、銅からなる表層(第1の層)122b,122bとを有しており、表層122b、中間層122a及び表層122bがこの順で積層された3層構造の複合材料によって構成されている。図3に示した形態では、絶縁性基板121と対向する面が銅で構成されている。この場合、配線層122を、例えばDBC(Direct Bonding Copper)基板の場合と同様に、直接絶縁性基板121に配線層122を接合し得る。複合材料の層構造は、2層構造でもよいし、4層以上の層構造でもよい。複合材料が3層以上である場合、各層を構成する材料は異なっていてもよい。
【0031】
配線層122を構成する第1の銅含有材料としての複合材料の一例は、図3に示した中間層122aがモリブデン(Mo)で構成されるCu−Mo−Cu複合材料である。
【0032】
また、銅と他の特定金属との合金としての第1の銅含有材料の例は他の特定金属がタングステン(W)であるCu−W合金又は他の特定金属がモリブデンであるCu−Mo合金である。
【0033】
配線基板12は、絶縁性基板121の表面12aと反対側の裏面(第2の主面)121b上に、好ましくは、放熱層123を備えてもよい。放熱層123は、裏面121b全体を覆うように形成され得る。放熱層123は、配線層122の場合と同様に、ロウ材などを介して又は直接的に裏面121bに接合され得る。このように放熱層123を有する場合、放熱層123は、好ましくは、銅を含む第2の銅含有材料から構成され得る。放熱層123を構成する第2の銅含有材料の熱膨張係数は、絶縁性基板121の熱膨張係数より大きく且つヒートシンク16の熱膨張係数以下である。
【0034】
後述するように、一例としてヒートシンク16が銅から構成される場合には、放熱層123を構成する第2の銅含有材料は銅であり得る。しかしながら、放熱層123を構成する第2の銅含有材料の組成は、配線層122を構成する第1の銅含有材料の組成と同じであってもよい。この場合、放熱層123を構成する第2の銅含有材料は、配線層122を構成する第1の銅含有材料として例示した複合材料又は合金であってもよい。第2の銅含有材料と、第1の銅含有材料とが同じである場合、絶縁性基板121の表面121a側と裏面121b側との間に熱膨張係数差が生じにくいので、配線基板12に反りが生じにくい。
【0035】
ヒートシンク16は金属板である。ヒートシンク16は、熱伝導率の高い金属から構成されていればよい。ヒートシンク16を構成する金属の一例は銅である。ヒートシンク16の平面視形状は長方形及び正方形を含む。一実施形態において、ヒートシンク16は、配線基板12の表面と反対側に半田18Cを介して接合され得る。半田18Cの一例は、Sn−Ag−Cu系半田である。配線基板12の裏面に放熱層123が形成されている場合、図1に示すように、絶縁性基板121とヒートシンク16との間には、絶縁性基板121側から順に放熱層123及び層状の半田18Cが挟まれ得る。
【0036】
図1に示すように、半導体装置10は、ヒートシンク16を囲む枠状の樹脂ケース24を有し得る。樹脂ケース24の材料の例は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)といったエンジニヤリングプラスチックである。この樹脂ケース24は、ヒートシンク16の外縁部に固定される。樹脂ケース24の内側には、応力緩和のため、例えばシリコ−ンゲル26が注入され得る。更に、図1に示すように、シリコンゲル26内に埋設された配線基板12及び半導体素子14などは、エポキシ樹脂といった熱可塑性樹脂28によって、更に気密に封止され得る。なお、シリコンゲル26を介さずに、直接、熱可塑性樹脂28によって、配線基板12及び半導体素子14などが埋設されてもよい。
【0037】
上記構成の半導体装置10では、従来の絶縁性基板を構成する材料より熱伝導率が高く且つ熱膨張係数の小さいcBN又はダイヤモンドから絶縁性基板121が構成されている。従って、半導体装置10では、放熱性がより高くなると共に、半導体素子14の熱膨張係数と、絶縁性基板121の熱膨張係数との差が小さい。
【0038】
この点について、数値を挙げて具体的に説明する。半導体素子14を構成するワイドバンドギャップ半導体の例であるSiC及びGaNの熱膨張係数は、それぞれ約4.2×10−6/K及び約5.6×10−6/Kである。これに対して、従来の絶縁性基板を構成する典型的な材料であるAlN(窒化アルミニウム)の熱膨張係数は、約4.5×1−6/Kであり、熱伝導率は、約150W/m・Kである。一方、cBNの熱膨張係数は、約4.7×10−6/Kであり、熱伝導率は、約1300W/m・Kである。ダイヤモンドの熱膨張係数は約2.3×10−6/Kであり、熱伝導率は、約2000W/m・Kである。このように、絶縁性基板121に用いられるcBN又はダイヤモンドは、AlNに例示される従来の絶縁性基板を構成する材料より熱伝導率が高く、且つ熱膨張係数が小さいので、半導体装置10では、放熱性の向上が図れる共に、半導体素子14及び絶縁性基板121の間の熱膨張係数差の減少が図られている。この場合、熱膨張自体が生じにくいと共に、熱膨張が生じてもその影響が低減されるので、半導体素子14と絶縁性基板121との間に生じる熱歪み又は熱応力が低減する。そのため、半導体素子14の破損又は半導体素子14と絶縁性基板121との間の接合部分の破損などが抑制され、半導体装置10の信頼性が向上する。
【0039】
また、絶縁性基板121がダイヤモンドから構成される場合、放熱性が更に向上し得る。また、絶縁性基板121がcBNから構成される場合、製造コストの低減を図りながら、半導体装置10の信頼性の向上を図り得る。
【0040】
ワイドバンドギャップ半導体を含む半導体素子14を備えた半導体装置10は、前述したようにいわゆるパワーモジュールとして用いられ得る。このようなパワーモジュールとして用いられる半導体装置10においてワイドバンドギャップ半導体としては、例示したSiC又はGaNが特に用いられている。パワーモジュールでは動作と停止とが繰り返し行われるので、ヒートサイクルが生じる。このようなヒートサイクルが生じても、絶縁性基板121を採用することで、絶縁性基板121との熱膨張係数が半導体素子14により近づいていると、熱膨張による熱歪み又は熱応力によって半導体素子14等の破損がより生じくい。また、より放熱性が高い絶縁性基板121を採用することによって、熱膨張自体を抑制可能である。そのため、半導体装置10の構成、特に、ワイドバンドギャップ半導体としてSiC又はGaNが採用される構成は、パワーモジュールとして利用される際に、特に有効である。
【0041】
また、配線層122が、銅と、熱膨張係数が銅より小さい他の特定金属とを含む第1の銅含有材料から構成されている形態では、配線層122の熱膨張係数は、銅のみから構成される配線層の場合より小さくなり、半導体素子14及び絶縁性基板121の熱膨張係数により近づく。そのため、半導体素子14と配線層122との間及び配線層122と絶縁性基板121との間の熱膨張係数差がそれぞれ低減される。このように熱膨張係数差が低減されると、半導体装置10を駆動して熱が発生したとしても、半導体素子14と配線層122との接合部分及び配線層122と絶縁性基板121との間の接合部分に作用する応力がより小さくなるので、上記の各接合部分にクラックなどが発生しにくい。そのため、半導体装置10の信頼性が更に向上する。換言すれば、配線層122を備えた配線基板12を用いることによって、半導体装置10のより高い信頼性を実現し得る。
【0042】
また、上記第1の銅含有材料に含まれる銅の熱伝導率は、例えばタングステンやモリブデンの熱伝導率より高い。従って、配線層122が第1の銅含有材料で構成されていることにより、例えばタングステンやモリブデンだけで配線層を構成する場合よりも放熱性もよい。そのため、配線層122が第1の銅含有材料で構成されている形態では、配線層122と半導体素子14及び絶縁性基板121との間の熱膨張係数差による応力が更に低減されやすい。
【0043】
配線層122が、図3に示したように、積層構造を有する複合材料によって構成される場合、第1の銅含有材料の作製が容易である。図3に示したように、3層構造のうち表層122bを銅で構成した場合、DBC基板と同様にして、配線層122を絶縁性基板121に固定し得る。
【0044】
前述したように、配線層122を構成する第1の銅含有材料は、銅と、銅より熱膨張係数の小さい特定金属との合金(例えば、Cu―W合金又はCu−Mo合金)であり得る。このような合金の場合には、上記特定金属の含有率を調整することで熱膨張係数を調整し得る。そのため、第1の銅含有材料の熱膨張係数の調整が容易である。
【0045】
また、モリブデン及びタングステンの熱膨張係数は、銅の熱膨張係数の半分以下である。そのため、上記特定金属がモリブデン又はタングステンの場合には、銅より熱膨張係数の小さい銅含有材料を形成しやすい。
【0046】
更に、配線基板12が放熱層123を備え、その放熱層123が、絶縁性基板121の熱膨張係数より大きくヒートシンク16の熱膨張係数以下である熱膨張係数を有する第2の銅含有材料から構成されている形態では、放熱層123とヒートシンク16との間の熱膨張係数差も小さくなる。その結果、半導体装置10が駆動により熱を帯びても、放熱層123とヒートシンク16との間の接合部分(図1では、層状の半田18C部分)にクラックなどの破損が生じにくい。よって、半導体装置10の信頼性がより向上する。更に、配線層122の場合と同様に、第2の銅含有材料のように銅を含有した材料で、放熱層123を構成することによって、例えばタングステンやモリブデンだけで放熱層を構成する場合よりも放熱性もよい。そのため、上記熱膨張係数差による応力が更に低減されやすい。
【0047】
配線基板12が放熱層123を備える形態では、放熱層123を構成する第2の銅含有材料は、配線層121を構成する第1の銅含有材料であることが好ましい。この場合、絶縁性基板121の表面121aと裏面121bとの間に熱膨張係数差が生じにくいので、配線基板12に反りが生じにくい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、半導体モジュールとしての半導体装置は、配線基板12と半導体素子14とから構成されるユニットが半導体装置であってもよい。配線層122及び放熱層123を構成する材料として、銅を含む第1及び第2の銅含有材料を例示したが、配線層122及び放熱層123は、それぞれ銅のみから構成されていてもよい。また、前述したように絶縁性基板121は、実質的にcBN又はダイヤモンドから構成されていればよく、例えば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の材料が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…半導体装置、12…配線基板、14…半導体素子、16…ヒートシンク、121…絶縁性基板、121a…表面(第1の主面)、121b…裏面(第2の主面)、122…配線層、123…放熱層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
前記縁性基板の第1の主面上に形成されており導電性を有する配線層と、
ワイドバンドギャップ半導体から構成されており前記配線層上に搭載される半導体素子と、
を備え、
前記絶縁性基板が、cBN又はダイヤモンドから構成される、
半導体装置。
【請求項2】
前記配線層が、銅と、銅より熱膨張係数が小さい特定金属とを含む銅含有材料から構成されており、
前記配線層に含まれる前記銅含有材料の熱膨張係数が銅の熱膨張係数より小さい、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記配線層を構成する前記銅含有材料は、
銅で構成される第1の層と前記特定金属で構成される第2の層とが積層された積層構造を有する複合材料、又は、
銅と前記特定金属とを含む合金である、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複合材料は、前記第1の層、前記第2の層及び前記第1の層がこの順に積層されて構成される、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記特定金属は、モリブデン又はタングステンである、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、SiC又はGaNである、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁性基板の前記第1の主面と反対側の第2の主面上に形成される放熱層と、
前記放熱層を介して前記絶縁性基板と接合されるヒートシンクと、
を備え、
前記放熱層は、銅を含む銅含有材料から構成され、
前記放熱層に含まれる前記銅含有材料の熱膨張係数は、前記絶縁性基板の熱膨張係数より大きく前記ヒートシンクの熱膨張係数以下である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁性基板の前記第1の主面と反対側の第2の主面上に形成される放熱層を備え、
前記放熱層は、前記銅含有材料から構成されている、
請求項2〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体素子が搭載される配線基板であって、
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の主面上に形成され、前記半導体素子が搭載される配線層と、
を備え、
前記絶縁性基板が、cBN又はダイヤモンドから構成される、
配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−98451(P2013−98451A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241858(P2011−241858)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)