半導体装置及び非接触通信媒体
【課題】動作可能な供給電力の範囲を広くできる半導体装置及び非接触通信媒体を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、半導体装置は、機能回路と、電流測定回路と、制御回路と、を備える。前記機能回路は、供給された電力で動作する。前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流を測定する。前記制御回路は、前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する。
【解決手段】実施形態によれば、半導体装置は、機能回路と、電流測定回路と、制御回路と、を備える。前記機能回路は、供給された電力で動作する。前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流を測定する。前記制御回路は、前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波からの供給電力を用いて動作する無線型ICカード(非接触型ICカード)と称される非接触通信媒体が知られている。このような無線型ICカードは、例えば、定期券等に用いられている。
【0003】
従来の無線型ICカードでは、上記供給電力に基づいてレギュレータで電源電圧を生成し、この電圧を測定することで、測定された電圧に応じて回路動作を制御している。レギュレータの特性により、回路動作に十分とは言えない程度の供給電力(つまり電流が小さい)であっても、電源電圧は回路動作に十分な電圧まで高くなる。また、生成された電源電圧は、通常、ある程度以上の供給電力では変化量は小さくなる。よって、測定された電圧では、供給電力を正確に把握することができない。従って、電圧だけの判断で回路動作を制御する場合、供給電力によっては無線型ICカード自体の消費電力が供給電力を超えてしまい、正常な回路動作が行えなくなることがある。
【0004】
また、無線型ICカードは、無線電波から供給される電力を用いて動作するので、正常動作中でも環境の変化によって供給電力が不十分になり正常動作が行われなくなる可能性がある。
【0005】
これらの理由から、無線型ICカードが確実に動作可能な供給電力の範囲が狭くなるので、無線型ICカードが動作可能な電力供給源からの距離は大幅に制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−99887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、動作可能な供給電力の範囲を広くできる半導体装置及び非接触通信媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、機能回路と、電流測定回路と、制御回路と、を備える半導体装置が提供される。前記機能回路は、供給された電力で動作する。前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流を測定する。前記制御回路は、前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードのブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。
【図4】比較例に係る無線型ICカードのブロック図である。
【図5】比較例に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。
【図6】比較例に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態についての説明に先立ち、図4から図6を参照して、発明者が知得する比較例の無線型ICカードについて説明する。
【0011】
図4は、比較例に係る無線型ICカードのブロック図である。
【0012】
図4に示すように、一般的に、無線型ICカードでは、アンテナ11で受信された電波により供給された電力を整流回路12が整流し、整流された電力に基づいてシャントレギュレータ13が目標の電源電圧Voutと電源電流Ioutとを出力する。電源電圧Vout及び電源電流Ioutは、シリーズレギュレータ14を介して機能回路15a等に供給される。電波は、電力供給源としての外部装置(図示せず)から供給される。
【0013】
無線型ICカードは、電力の供給状態を判断し、電力の供給が十分であると判断した場合、機能回路15aを起動する。十分な供給電力の判断は、電源電圧Voutが図5の十分な電圧範囲(環境判断用検出電圧(例えば電圧V3)以上)となったことを基準として行っている。そのため、電圧検知回路16は、電源電圧Voutの大きさにより電力状態の判断を行う。電圧検知回路16により電源電圧Voutが環境判断用検出電圧以上であると判断された場合、システム制御回路151は、機能回路15aの処理回路(CPU等)152等のリセット解除を行う。これにより、機能回路15aの動作による電力の消費が始まる。
【0014】
図5は、シャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。図5の横軸は、供給された電力に基づいてシャントレギュレータ13に供給される電流Iinを表し、縦軸は出力される電源電圧Voutを表す。電流Iinは、電源電流Ioutとして出力可能な最大値である。
【0015】
範囲Aは、ある程度以上の電源電圧Voutが得られ、電源電圧Voutの変化量が小さい範囲を表す。変化量が小さい理由は、シャントレギュレータ13により電源電圧Voutが一定値となるように制御されるためである。範囲Bは、回路動作限界電圧VL以上の、回路動作可能な供給電圧範囲を表す。範囲Cは、回路動作に十分な供給電流範囲を表す。
【0016】
比較例の無線型ICカードにおいて、環境判断用検出電圧の設定として以下の3つが考えられる。
【0017】
(設定1)環境判断用検出電圧を回路動作限界電圧VLの近くの電圧V1に設定した場合、自己動作による電力消費で供給電力が不足して、動作不能になる。
【0018】
つまり、この設定では、低い供給電力となる電力供給源から離れた場所であっても機能回路15aを起動できる。しかし、消費電力が供給電力を超えてしまい、正常な回路動作が行えない場合が多い。
【0019】
(設定2)環境判断用検出電圧を回路動作限界電圧VLに対し余裕を持たせる場合、電圧の変化量が小さい範囲での判断となるため、多くの供給電力がない限り動作可能と判断できない(電圧V2)。
【0020】
つまり、この設定では、高い供給電力が得られる電力供給源に近い場所でないと起動できない。
【0021】
(設定3)環境判断用検出電圧を電圧V1と電圧V2との間の電圧V3に設定した場合、上記(設定2)より少ない供給電力でも動作可能であるが、電圧の変化量が小さい範囲であるため電圧のみでは供給電力の判断が困難である。
【0022】
つまり、この設定では、電力供給源からの距離が(設定2)より離れた場所で起動でき、正常動作が可能であるが、電圧で判断するには高い測定精度が要求される。
【0023】
このように、比較例の無線型ICカードは、電圧では供給電力を正確に把握することができないので、環境判断用検出電圧を本来動作可能な下限の電圧よりも高く設定する必要があり、範囲Aの全てで動作することが困難である。
【0024】
ここで、機能回路15aが動作する上での消費電力は、処理に応じて異なる。たとえば、機能回路15aが高速の暗号演算処理モードなどで動作する場合、多くの電力を消費する。一方、機能回路15aが演算を実行していない場合(例えば、無線型ICカード内でデータ転送を行っている場合)などでは、それほど電力は消費されない。
【0025】
供給された電力のうち機能回路15aで消費されない電力は、シャントレギュレータ13で熱などとして消費される。このことについて、図6を参照して説明する。
【0026】
図6は、比較例に係る無線型ICカードにおける供給された電力と消費電力との関係を説明する概念図である。
【0027】
図6に示すように、シャントレギュレータ13に供給された電力Pinは、機能回路15a(負荷15X)の動作で消費される電力(消費電力P)と、機能回路15a(負荷15X)の動作で消費されない不要な電力(余剰消費電力Pw)とに分類される。不要な電力は、シャントレギュレータ13で破棄(消費)される。電流で考えると、整流器12からシャントレギュレータ13に流れる全体電流Iinは、機能回路15aに流れる電流Ioutと、シャントレギュレータ13で破棄される電流Iwと、に分かれる。
【0028】
本発明者は、シャントレギュレータ13で破棄される電流が小さい場合として、以下の2つの状態が考えられることを独自に知得した。
状態1.供給された電力Pinは十分多いが、機能回路15aが動作する上で電力は消費され、そのためシャントレギュレータ13で破棄される電流が小さい。
状態2.供給された電力Pin自体が少ない。
【0029】
以下に説明する本発明の実施形態は、上記状態2の場合において、無線型ICカードの機能回路15aで自己消費される消費電力Pを抑えることで、供給された電力Pin内で動作を行うものである。ただし、状態1の場合と状態2の場合との区別が出来なければならない。従って、無線型ICカードは供給された電力Pinの状態を複数レベルで判断できると共に、機能回路15aは複数の動作モードを持つ必要がある。
【0030】
発明者は、上述した独自の知得に基づいて本発明をなすに至った。
【0031】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態は、シャントレギュレータで破棄される電流と、機能回路の動作モードと、に応じて、機能回路の動作モードを変更することを特徴の1つとする。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【0034】
この無線型ICカードは、図4の比較例に加え、破棄される電流Iwを測定する電流測定回路20をさらに備える。そして、無線型ICカードは、電流測定回路20で測定された電流に応じて、負荷15Xとしての機能回路の動作モード(消費電力)を変更する。つまり、図1に示すように、無線型ICカードは、測定された電流に応じて負荷15Xのインピーダンスを変化させるように動作する。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0035】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードのブロック図である。
【0036】
図2に示すように、この無線型ICカードは、アンテナ(電力生成回路)11と、整流回路(電力生成回路)12と、シャントレギュレータ13と、シリーズレギュレータ14と、機能回路15と、クロック抽出回路17と、電流測定回路20と、を備える。機能回路15は、第1システム制御回路151と、処理回路152と、ROM/RAM153と、不揮発性メモリ154と、第2システム制御回路(制御回路)155と、を備える。処理回路152は、CPU、暗号回路、通信回路および制御回路などを備える。
【0037】
つまり、この無線型ICカードは、図5の比較例の構成に加えて、電流測定回路20と、第2システム制御回路155と、を備える。また、比較例の電圧検知回路16は備えていない。
【0038】
無線型ICカード(例えば、定期券)は、外部装置(例えば、自動改札機)(図示せず)から供給される電波により得られる電力で動作する。
【0039】
アンテナ11は、外部装置から電波を受信する。整流回路12は、受信された電波により供給された電力を整流する。ここでは、整流回路12の一例として、4つのダイオードが接続されたブリッジダイオードが用いられている。
【0040】
シャントレギュレータ13は、整流回路12から供給された電力Pin(電圧Vin、電流Iin)に基づいて、所定値に制御した電源電圧Voutと電源電流Ioutとを、シリーズレギュレータ14を介して機能回路15に供給する。シリーズレギュレータ14は、入力された電源電圧Voutをより安定させて出力すると共に、入力された電源電流Ioutをそのまま出力する。
【0041】
シャントレギュレータ13は、電流Iinのうち、機能回路15に供給されない電流を破棄する。破棄される電流Iwは、電流測定回路20を介して接地点(グランド)に流れる。
【0042】
電流測定回路20は、供給された電力Pinの量を判断するために、シャントレギュレータ13において破棄される電流(供給された電力に基づく電流)Iwを測定する。電流測定回路20は、破棄される電流Iwのレベルを複数の状態として第2のシステム制御回路155に与えることが出来る。
【0043】
電流で電力を判断する理由は、図5を参照して前述した様に、通常、動作可能な電力の範囲では電圧の差分が小さいため、十分な電力供給の有無の判断程度であれば電圧で判断できるが、細かい電力供給レベルの判断は難しいためである。
【0044】
クロック抽出回路17は、アンテナ11で受信された電波に含まれているクロック信号を抽出し、機能回路15に供給する。
【0045】
機能回路15は、シャントレギュレータ13からの電源電圧Vout及び電源電流Iout(アンテナ11及び整流回路12で生成された電力)に基づいて動作し、無線型ICカードと外部装置との情報伝達に伴う処理を行う。機能回路15は、例えば、クロック抽出回路17から供給されるクロック信号、又は、機能回路15の内部で生成されるクロック信号等に同期して各処理を行う。
【0046】
機能回路15は、互いに消費電力が異なる複数の動作モード(低速動作モードと高速動作モード)を有する。高速動作モードは低速動作モードより消費電力が高い。
【0047】
第2システム制御回路155は、機能回路15の動作情報(低速/高速動作モード)と、電流測定回路20で測定された電流と、に応じて、機能回路15を低速動作モードと高速動作モードとの何れかで動作するように制御する。つまり、第2システム制御回路155は、電力供給レベルから動作可能な動作モードを判断し、機能回路15の動作モードを最適なものに設定する。
【0048】
高速動作モードは、例えば、高速の暗号演算処理モード、認証処理モードなどを有する。低速動作モードは、例えば、低速の暗号演算処理モード、データ転送モードなどを有する。低速の暗号演算処理モードは、高速の暗号演算処理モードで用いられる周波数よりも低い周波数のクロック信号により処理が行われる。データ転送モードでは、機能回路15内部でのデータ転送(例えば、ROM/RAM153と、不揮発性メモリ154との間のデータ転送など)が行われる。
【0049】
第2システム制御回路155は、機能回路15が低速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第1の値以上の場合に、高速動作モードに切り替える。
【0050】
第2システム制御回路155は、機能回路15が高速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第2の値より小さい場合に、低速動作モードに切り替える。第1の値は第2の値より大きい。
【0051】
本実施形態では、第2システム制御回路155は、動作モードに応じて検出レベル(上記第1の値又は第2の値)を電流測定回路20に設定する。電流測定回路20は、破棄される電流Iwが設定された検出レベル以上か否かを第2システム制御回路155に出力する。
【0052】
次に、図3を参照して無線型ICカードの動作をより詳しく説明する。
【0053】
図3は、本実施形態に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。図3の横軸は、供給された電力に基づいてシャントレギュレータ13に供給される電流Iinを表し、縦軸は出力される電源電圧Voutを表す。電流Iinは、電源電流Ioutとして出力可能な最大値である。この電流−電圧特性は、比較例の図5と同一である。
【0054】
まず、無線型ICカードが外部装置に近づくと、無線型ICカードのアンテナ11は外部装置からの微弱な電波を受信する。整流回路12は、受信された電波により供給された電力を整流する。シャントレギュレータ13は、整流回路12から供給された電力に基づいて電源電圧Voutを生成する。この時点では機能回路15は動作していないので、電源電流Ioutは機能回路15に流れず、ほぼ全ての電流Iinは、廃棄される電流Iwとして電流測定回路20を介して接地点に流れる。電流測定回路20は、この廃棄される電流Iwを測定する。無線型ICカードが外部装置に更に近づいていくと、受信される電波は強くなっていき、廃棄される電流Iwも増加する。廃棄される電流Iwが所定値IwL以上になる(つまり、電流Iinが図3の値IL以上になる)と、第2のシステム制御回路155の制御により第1システム制御回路151が機能回路15の処理回路152等のリセットを解除する。これにより、電源電流Ioutが機能回路15に流れ、機能回路15は起動処理などを行う。
【0055】
無線型ICカードの動作モードは供給された電力に応じて設定される。動作中の電力の供給状態として、下記の4つのケースが考えられる。
【0056】
ケース1:電力の供給が少ない場合(図3のC1)
電力の供給が少なく、且つ、機能回路15がそれほど電力を消費していない状態では、破棄される電流Iwは小さい。従って、第2システム制御回路155は、消費電力の高い高速動作モードを禁止し、消費電力の低い低速動作モードに機能回路15を設定して、演算や処理を仕様上の最低限の動作とする。これにより、無線型ICカードは正常動作状態を維持することが出来る。
【0057】
例えば起動時には、前述のように、リセット解除後に低速動作モードで起動されるので、破棄される電流Iwが小さい場合に、第2システム制御回路155はこのケース1の状態であることを判断できる。
【0058】
なお、図3において、矢印C1〜C4の破線部分では低速動作モードに設定され、実線部分では高速動作モードに設定される。
【0059】
ケース2:電力の供給が少ない状態から十分な状態に移行する場合(図3のC2)
第2システム制御回路155が消費電力の高い高速動作モードを禁止した状態、つまり、機能回路15の動作にそれほど電力を消費していない状態で、電力の供給量が増加する。そのため、破棄される電流Iwは増加する。破棄される電流Iwが第1の値Iw1以上になる(つまり、電流Iinが値I1以上になる)と、第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードの許可に移行し、機能回路15は消費電力の高い演算や高速処理を行うことが出来る。
【0060】
ケース3:電力が十分供給されている場合(図3のC3)
第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードを許可しているので、機能回路15は消費電力の大きい演算や高速処理を行うことが出来る。このとき、第2システム制御回路155は、消費電力が高い高速動作モードで動作しているという情報を管理している。このことにより、破棄される電流Iwが次のケース4の第2の値Iw2に減るまでは、機能回路15自体が電力を消費していると判断することが出来る(図3のC3a)。
【0061】
ケース4:電力の供給が十分な状態から少ない状態に移行する場合(図3のC4)
第2システム制御回路155が消費電力の高い動作モードを許可した状態で、電力の供給量が減少するため、破棄される電流Iwは減少し、第2の値Iw2より小さくなる(つまり、電流Iinは値I2より小さくなる)。これにより、第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードの禁止に移行し、低速動作モードに設定して演算や処理を仕様上の最低限の動作とすることで正常動作状態を維持出来る。つまり、ケース1の状態に戻る。
【0062】
ただし、消費電力が高い高速動作モードで動作中に供給電力が減少するため、低速動作モードへの移行に必要な時間が電力供給の減少時間より長い場合、正常動作を維持できない可能性が高い。このような場合、破棄される電流Iwがある程度残っているところで動作モードを移行するように設定すれば、正常動作を維持することが出来る。
【0063】
以上のケース1からケース4で説明したように、第2システム制御回路155は、動作モードと電流Iinとの関係がヒステリシスを持つように動作モードを切り替える。
【0064】
このように、本実施形態によれば、電流測定回路20が破棄される電流Iwを測定し、第2システム制御回路155が、測定された電流と機能回路15の動作モードとに応じて、機能回路15を高速動作モード又は低速動作モードに制御するようにしたので、供給された電力Pinに適した動作モードを選択できる。つまり、供給された電力Pinが減少しても消費電力が低い低速動作モードで動作させることができるので、供給された電力Pin内で正常動作状態の維持が可能となる。これにより、リブートせずに処理を続けることができ、動作可能な供給電力の範囲を比較例より広くすることが出来る。従って、無線型ICカードが動作可能な電力供給源からの距離の範囲は、比較例より広くなる。また、比較例では利用されていなかった破棄される電流Iwを有効に活用できる。
【0065】
ただし、低速動作モードによる処理速度の犠牲は伴うことになる。
【0066】
なお、第1の値Iw1と第2の値Iw2との間に他の複数の値を設定し、これらの値を基準として中間の消費電力の動作モードに切り替えるようにしても良い。
【0067】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではシャントレギュレータで破棄される電流の測定を行っているが、本実施形態では無線電波により供給された全電流を測定するようにしている。
【0068】
本実施形態の無線型ICカードは、電流測定回路20が接続される位置が第1の実施形態と異なる。電流測定回路20は、図2におけるブリッジダイオード12と、シャントレギュレータ13との間の電流Iinを測定する。つまり、電流測定回路20は、電力に基づく電流として、シャントレギュレータ(定電圧回路)13に供給された電流Iinを測定する。その他の構成は図2の第1の実施形態と同一であるため、同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、測定された電流Iinは供給電力Pinに比例するので、単に測定された全電流Iinから機能回路15の動作モードを制御すればよい。従って、第1の実施形態とは異なり、機能回路15の動作状態(動作モード)と破棄される電流Iwとの関係を考慮する必要はない。
【0070】
第1の実施形態で説明した様に、第2システム制御回路155は、機能回路15が低速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第1の値以上の場合に、高速動作モードに切り替える。本実施形態では、第1の値として、図3の値I1を用いる。
【0071】
また、第2システム制御回路155は、機能回路15が高速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第2の値より小さい場合に、低速動作モードに切り替える。本実施形態では、第2の値として、図3の値I2を用いる。
【0072】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
ただし、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、機能回路15等の動作に用いられない廃棄される電流Iwを測定していない。第1の実施形態では、電流の測定による電力のロスがあっても、本来廃棄されるべき電力のロスなので、電力の無駄にはならない。本実施形態では、電流Iinの測定により、本来使用可能であるはずの電力のロスが発生することになる。
【0074】
以上で説明した各実施形態によれば、動作可能な供給電力の範囲を広くできる半導体装置及び非接触通信媒体を提供できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【0076】
例えば、比較例のように電圧検知回路16を備え、電圧検知回路16により機能回路15の処理回路152等のリセット解除を行っても良い。
【0077】
また、前述の電流測定回路20と第2システム制御回路155の機能は一例であり、破棄される電流Iwが動作モードに応じた検出レベル(上記第1の値又は第2の値)以上か否かを判断できれば良い。例えば、電流測定回路20により、破棄される電流Iwの値の情報を第2システム制御回路155に出力して、第2システム制御回路155により、破棄される電流Iwが動作モードに応じた検出レベル以上か否かを判断するようにしても良い。
【0078】
また、無線型ICカードはシリーズレギュレータ14を備えなくとも良い。
【符号の説明】
【0079】
11 アンテナ(電力生成回路)
12 整流回路(電力生成回路)
13 シャントレギュレータ(定電圧回路)
14 シリーズレギュレータ
15 機能回路
17 クロック抽出回路
20 電流測定回路
151 第1システム制御回路
152 処理回路
153 ROM/RAM
154 不揮発性メモリ
155 第2システム制御回路(制御回路)
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び非接触通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波からの供給電力を用いて動作する無線型ICカード(非接触型ICカード)と称される非接触通信媒体が知られている。このような無線型ICカードは、例えば、定期券等に用いられている。
【0003】
従来の無線型ICカードでは、上記供給電力に基づいてレギュレータで電源電圧を生成し、この電圧を測定することで、測定された電圧に応じて回路動作を制御している。レギュレータの特性により、回路動作に十分とは言えない程度の供給電力(つまり電流が小さい)であっても、電源電圧は回路動作に十分な電圧まで高くなる。また、生成された電源電圧は、通常、ある程度以上の供給電力では変化量は小さくなる。よって、測定された電圧では、供給電力を正確に把握することができない。従って、電圧だけの判断で回路動作を制御する場合、供給電力によっては無線型ICカード自体の消費電力が供給電力を超えてしまい、正常な回路動作が行えなくなることがある。
【0004】
また、無線型ICカードは、無線電波から供給される電力を用いて動作するので、正常動作中でも環境の変化によって供給電力が不十分になり正常動作が行われなくなる可能性がある。
【0005】
これらの理由から、無線型ICカードが確実に動作可能な供給電力の範囲が狭くなるので、無線型ICカードが動作可能な電力供給源からの距離は大幅に制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−99887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、動作可能な供給電力の範囲を広くできる半導体装置及び非接触通信媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、機能回路と、電流測定回路と、制御回路と、を備える半導体装置が提供される。前記機能回路は、供給された電力で動作する。前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流を測定する。前記制御回路は、前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードのブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。
【図4】比較例に係る無線型ICカードのブロック図である。
【図5】比較例に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。
【図6】比較例に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態についての説明に先立ち、図4から図6を参照して、発明者が知得する比較例の無線型ICカードについて説明する。
【0011】
図4は、比較例に係る無線型ICカードのブロック図である。
【0012】
図4に示すように、一般的に、無線型ICカードでは、アンテナ11で受信された電波により供給された電力を整流回路12が整流し、整流された電力に基づいてシャントレギュレータ13が目標の電源電圧Voutと電源電流Ioutとを出力する。電源電圧Vout及び電源電流Ioutは、シリーズレギュレータ14を介して機能回路15a等に供給される。電波は、電力供給源としての外部装置(図示せず)から供給される。
【0013】
無線型ICカードは、電力の供給状態を判断し、電力の供給が十分であると判断した場合、機能回路15aを起動する。十分な供給電力の判断は、電源電圧Voutが図5の十分な電圧範囲(環境判断用検出電圧(例えば電圧V3)以上)となったことを基準として行っている。そのため、電圧検知回路16は、電源電圧Voutの大きさにより電力状態の判断を行う。電圧検知回路16により電源電圧Voutが環境判断用検出電圧以上であると判断された場合、システム制御回路151は、機能回路15aの処理回路(CPU等)152等のリセット解除を行う。これにより、機能回路15aの動作による電力の消費が始まる。
【0014】
図5は、シャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。図5の横軸は、供給された電力に基づいてシャントレギュレータ13に供給される電流Iinを表し、縦軸は出力される電源電圧Voutを表す。電流Iinは、電源電流Ioutとして出力可能な最大値である。
【0015】
範囲Aは、ある程度以上の電源電圧Voutが得られ、電源電圧Voutの変化量が小さい範囲を表す。変化量が小さい理由は、シャントレギュレータ13により電源電圧Voutが一定値となるように制御されるためである。範囲Bは、回路動作限界電圧VL以上の、回路動作可能な供給電圧範囲を表す。範囲Cは、回路動作に十分な供給電流範囲を表す。
【0016】
比較例の無線型ICカードにおいて、環境判断用検出電圧の設定として以下の3つが考えられる。
【0017】
(設定1)環境判断用検出電圧を回路動作限界電圧VLの近くの電圧V1に設定した場合、自己動作による電力消費で供給電力が不足して、動作不能になる。
【0018】
つまり、この設定では、低い供給電力となる電力供給源から離れた場所であっても機能回路15aを起動できる。しかし、消費電力が供給電力を超えてしまい、正常な回路動作が行えない場合が多い。
【0019】
(設定2)環境判断用検出電圧を回路動作限界電圧VLに対し余裕を持たせる場合、電圧の変化量が小さい範囲での判断となるため、多くの供給電力がない限り動作可能と判断できない(電圧V2)。
【0020】
つまり、この設定では、高い供給電力が得られる電力供給源に近い場所でないと起動できない。
【0021】
(設定3)環境判断用検出電圧を電圧V1と電圧V2との間の電圧V3に設定した場合、上記(設定2)より少ない供給電力でも動作可能であるが、電圧の変化量が小さい範囲であるため電圧のみでは供給電力の判断が困難である。
【0022】
つまり、この設定では、電力供給源からの距離が(設定2)より離れた場所で起動でき、正常動作が可能であるが、電圧で判断するには高い測定精度が要求される。
【0023】
このように、比較例の無線型ICカードは、電圧では供給電力を正確に把握することができないので、環境判断用検出電圧を本来動作可能な下限の電圧よりも高く設定する必要があり、範囲Aの全てで動作することが困難である。
【0024】
ここで、機能回路15aが動作する上での消費電力は、処理に応じて異なる。たとえば、機能回路15aが高速の暗号演算処理モードなどで動作する場合、多くの電力を消費する。一方、機能回路15aが演算を実行していない場合(例えば、無線型ICカード内でデータ転送を行っている場合)などでは、それほど電力は消費されない。
【0025】
供給された電力のうち機能回路15aで消費されない電力は、シャントレギュレータ13で熱などとして消費される。このことについて、図6を参照して説明する。
【0026】
図6は、比較例に係る無線型ICカードにおける供給された電力と消費電力との関係を説明する概念図である。
【0027】
図6に示すように、シャントレギュレータ13に供給された電力Pinは、機能回路15a(負荷15X)の動作で消費される電力(消費電力P)と、機能回路15a(負荷15X)の動作で消費されない不要な電力(余剰消費電力Pw)とに分類される。不要な電力は、シャントレギュレータ13で破棄(消費)される。電流で考えると、整流器12からシャントレギュレータ13に流れる全体電流Iinは、機能回路15aに流れる電流Ioutと、シャントレギュレータ13で破棄される電流Iwと、に分かれる。
【0028】
本発明者は、シャントレギュレータ13で破棄される電流が小さい場合として、以下の2つの状態が考えられることを独自に知得した。
状態1.供給された電力Pinは十分多いが、機能回路15aが動作する上で電力は消費され、そのためシャントレギュレータ13で破棄される電流が小さい。
状態2.供給された電力Pin自体が少ない。
【0029】
以下に説明する本発明の実施形態は、上記状態2の場合において、無線型ICカードの機能回路15aで自己消費される消費電力Pを抑えることで、供給された電力Pin内で動作を行うものである。ただし、状態1の場合と状態2の場合との区別が出来なければならない。従って、無線型ICカードは供給された電力Pinの状態を複数レベルで判断できると共に、機能回路15aは複数の動作モードを持つ必要がある。
【0030】
発明者は、上述した独自の知得に基づいて本発明をなすに至った。
【0031】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。これらの実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態は、シャントレギュレータで破棄される電流と、機能回路の動作モードと、に応じて、機能回路の動作モードを変更することを特徴の1つとする。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードの動作原理を説明する概念図である。
【0034】
この無線型ICカードは、図4の比較例に加え、破棄される電流Iwを測定する電流測定回路20をさらに備える。そして、無線型ICカードは、電流測定回路20で測定された電流に応じて、負荷15Xとしての機能回路の動作モード(消費電力)を変更する。つまり、図1に示すように、無線型ICカードは、測定された電流に応じて負荷15Xのインピーダンスを変化させるように動作する。このことについて、以下に詳しく説明する。
【0035】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る無線型ICカードのブロック図である。
【0036】
図2に示すように、この無線型ICカードは、アンテナ(電力生成回路)11と、整流回路(電力生成回路)12と、シャントレギュレータ13と、シリーズレギュレータ14と、機能回路15と、クロック抽出回路17と、電流測定回路20と、を備える。機能回路15は、第1システム制御回路151と、処理回路152と、ROM/RAM153と、不揮発性メモリ154と、第2システム制御回路(制御回路)155と、を備える。処理回路152は、CPU、暗号回路、通信回路および制御回路などを備える。
【0037】
つまり、この無線型ICカードは、図5の比較例の構成に加えて、電流測定回路20と、第2システム制御回路155と、を備える。また、比較例の電圧検知回路16は備えていない。
【0038】
無線型ICカード(例えば、定期券)は、外部装置(例えば、自動改札機)(図示せず)から供給される電波により得られる電力で動作する。
【0039】
アンテナ11は、外部装置から電波を受信する。整流回路12は、受信された電波により供給された電力を整流する。ここでは、整流回路12の一例として、4つのダイオードが接続されたブリッジダイオードが用いられている。
【0040】
シャントレギュレータ13は、整流回路12から供給された電力Pin(電圧Vin、電流Iin)に基づいて、所定値に制御した電源電圧Voutと電源電流Ioutとを、シリーズレギュレータ14を介して機能回路15に供給する。シリーズレギュレータ14は、入力された電源電圧Voutをより安定させて出力すると共に、入力された電源電流Ioutをそのまま出力する。
【0041】
シャントレギュレータ13は、電流Iinのうち、機能回路15に供給されない電流を破棄する。破棄される電流Iwは、電流測定回路20を介して接地点(グランド)に流れる。
【0042】
電流測定回路20は、供給された電力Pinの量を判断するために、シャントレギュレータ13において破棄される電流(供給された電力に基づく電流)Iwを測定する。電流測定回路20は、破棄される電流Iwのレベルを複数の状態として第2のシステム制御回路155に与えることが出来る。
【0043】
電流で電力を判断する理由は、図5を参照して前述した様に、通常、動作可能な電力の範囲では電圧の差分が小さいため、十分な電力供給の有無の判断程度であれば電圧で判断できるが、細かい電力供給レベルの判断は難しいためである。
【0044】
クロック抽出回路17は、アンテナ11で受信された電波に含まれているクロック信号を抽出し、機能回路15に供給する。
【0045】
機能回路15は、シャントレギュレータ13からの電源電圧Vout及び電源電流Iout(アンテナ11及び整流回路12で生成された電力)に基づいて動作し、無線型ICカードと外部装置との情報伝達に伴う処理を行う。機能回路15は、例えば、クロック抽出回路17から供給されるクロック信号、又は、機能回路15の内部で生成されるクロック信号等に同期して各処理を行う。
【0046】
機能回路15は、互いに消費電力が異なる複数の動作モード(低速動作モードと高速動作モード)を有する。高速動作モードは低速動作モードより消費電力が高い。
【0047】
第2システム制御回路155は、機能回路15の動作情報(低速/高速動作モード)と、電流測定回路20で測定された電流と、に応じて、機能回路15を低速動作モードと高速動作モードとの何れかで動作するように制御する。つまり、第2システム制御回路155は、電力供給レベルから動作可能な動作モードを判断し、機能回路15の動作モードを最適なものに設定する。
【0048】
高速動作モードは、例えば、高速の暗号演算処理モード、認証処理モードなどを有する。低速動作モードは、例えば、低速の暗号演算処理モード、データ転送モードなどを有する。低速の暗号演算処理モードは、高速の暗号演算処理モードで用いられる周波数よりも低い周波数のクロック信号により処理が行われる。データ転送モードでは、機能回路15内部でのデータ転送(例えば、ROM/RAM153と、不揮発性メモリ154との間のデータ転送など)が行われる。
【0049】
第2システム制御回路155は、機能回路15が低速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第1の値以上の場合に、高速動作モードに切り替える。
【0050】
第2システム制御回路155は、機能回路15が高速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第2の値より小さい場合に、低速動作モードに切り替える。第1の値は第2の値より大きい。
【0051】
本実施形態では、第2システム制御回路155は、動作モードに応じて検出レベル(上記第1の値又は第2の値)を電流測定回路20に設定する。電流測定回路20は、破棄される電流Iwが設定された検出レベル以上か否かを第2システム制御回路155に出力する。
【0052】
次に、図3を参照して無線型ICカードの動作をより詳しく説明する。
【0053】
図3は、本実施形態に係るシャントレギュレータに供給される電流と、シャントレギュレータから出力される電圧の特性を表す図である。図3の横軸は、供給された電力に基づいてシャントレギュレータ13に供給される電流Iinを表し、縦軸は出力される電源電圧Voutを表す。電流Iinは、電源電流Ioutとして出力可能な最大値である。この電流−電圧特性は、比較例の図5と同一である。
【0054】
まず、無線型ICカードが外部装置に近づくと、無線型ICカードのアンテナ11は外部装置からの微弱な電波を受信する。整流回路12は、受信された電波により供給された電力を整流する。シャントレギュレータ13は、整流回路12から供給された電力に基づいて電源電圧Voutを生成する。この時点では機能回路15は動作していないので、電源電流Ioutは機能回路15に流れず、ほぼ全ての電流Iinは、廃棄される電流Iwとして電流測定回路20を介して接地点に流れる。電流測定回路20は、この廃棄される電流Iwを測定する。無線型ICカードが外部装置に更に近づいていくと、受信される電波は強くなっていき、廃棄される電流Iwも増加する。廃棄される電流Iwが所定値IwL以上になる(つまり、電流Iinが図3の値IL以上になる)と、第2のシステム制御回路155の制御により第1システム制御回路151が機能回路15の処理回路152等のリセットを解除する。これにより、電源電流Ioutが機能回路15に流れ、機能回路15は起動処理などを行う。
【0055】
無線型ICカードの動作モードは供給された電力に応じて設定される。動作中の電力の供給状態として、下記の4つのケースが考えられる。
【0056】
ケース1:電力の供給が少ない場合(図3のC1)
電力の供給が少なく、且つ、機能回路15がそれほど電力を消費していない状態では、破棄される電流Iwは小さい。従って、第2システム制御回路155は、消費電力の高い高速動作モードを禁止し、消費電力の低い低速動作モードに機能回路15を設定して、演算や処理を仕様上の最低限の動作とする。これにより、無線型ICカードは正常動作状態を維持することが出来る。
【0057】
例えば起動時には、前述のように、リセット解除後に低速動作モードで起動されるので、破棄される電流Iwが小さい場合に、第2システム制御回路155はこのケース1の状態であることを判断できる。
【0058】
なお、図3において、矢印C1〜C4の破線部分では低速動作モードに設定され、実線部分では高速動作モードに設定される。
【0059】
ケース2:電力の供給が少ない状態から十分な状態に移行する場合(図3のC2)
第2システム制御回路155が消費電力の高い高速動作モードを禁止した状態、つまり、機能回路15の動作にそれほど電力を消費していない状態で、電力の供給量が増加する。そのため、破棄される電流Iwは増加する。破棄される電流Iwが第1の値Iw1以上になる(つまり、電流Iinが値I1以上になる)と、第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードの許可に移行し、機能回路15は消費電力の高い演算や高速処理を行うことが出来る。
【0060】
ケース3:電力が十分供給されている場合(図3のC3)
第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードを許可しているので、機能回路15は消費電力の大きい演算や高速処理を行うことが出来る。このとき、第2システム制御回路155は、消費電力が高い高速動作モードで動作しているという情報を管理している。このことにより、破棄される電流Iwが次のケース4の第2の値Iw2に減るまでは、機能回路15自体が電力を消費していると判断することが出来る(図3のC3a)。
【0061】
ケース4:電力の供給が十分な状態から少ない状態に移行する場合(図3のC4)
第2システム制御回路155が消費電力の高い動作モードを許可した状態で、電力の供給量が減少するため、破棄される電流Iwは減少し、第2の値Iw2より小さくなる(つまり、電流Iinは値I2より小さくなる)。これにより、第2システム制御回路155は消費電力の高い高速動作モードの禁止に移行し、低速動作モードに設定して演算や処理を仕様上の最低限の動作とすることで正常動作状態を維持出来る。つまり、ケース1の状態に戻る。
【0062】
ただし、消費電力が高い高速動作モードで動作中に供給電力が減少するため、低速動作モードへの移行に必要な時間が電力供給の減少時間より長い場合、正常動作を維持できない可能性が高い。このような場合、破棄される電流Iwがある程度残っているところで動作モードを移行するように設定すれば、正常動作を維持することが出来る。
【0063】
以上のケース1からケース4で説明したように、第2システム制御回路155は、動作モードと電流Iinとの関係がヒステリシスを持つように動作モードを切り替える。
【0064】
このように、本実施形態によれば、電流測定回路20が破棄される電流Iwを測定し、第2システム制御回路155が、測定された電流と機能回路15の動作モードとに応じて、機能回路15を高速動作モード又は低速動作モードに制御するようにしたので、供給された電力Pinに適した動作モードを選択できる。つまり、供給された電力Pinが減少しても消費電力が低い低速動作モードで動作させることができるので、供給された電力Pin内で正常動作状態の維持が可能となる。これにより、リブートせずに処理を続けることができ、動作可能な供給電力の範囲を比較例より広くすることが出来る。従って、無線型ICカードが動作可能な電力供給源からの距離の範囲は、比較例より広くなる。また、比較例では利用されていなかった破棄される電流Iwを有効に活用できる。
【0065】
ただし、低速動作モードによる処理速度の犠牲は伴うことになる。
【0066】
なお、第1の値Iw1と第2の値Iw2との間に他の複数の値を設定し、これらの値を基準として中間の消費電力の動作モードに切り替えるようにしても良い。
【0067】
(第2の実施形態)
第1の実施形態ではシャントレギュレータで破棄される電流の測定を行っているが、本実施形態では無線電波により供給された全電流を測定するようにしている。
【0068】
本実施形態の無線型ICカードは、電流測定回路20が接続される位置が第1の実施形態と異なる。電流測定回路20は、図2におけるブリッジダイオード12と、シャントレギュレータ13との間の電流Iinを測定する。つまり、電流測定回路20は、電力に基づく電流として、シャントレギュレータ(定電圧回路)13に供給された電流Iinを測定する。その他の構成は図2の第1の実施形態と同一であるため、同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、測定された電流Iinは供給電力Pinに比例するので、単に測定された全電流Iinから機能回路15の動作モードを制御すればよい。従って、第1の実施形態とは異なり、機能回路15の動作状態(動作モード)と破棄される電流Iwとの関係を考慮する必要はない。
【0070】
第1の実施形態で説明した様に、第2システム制御回路155は、機能回路15が低速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第1の値以上の場合に、高速動作モードに切り替える。本実施形態では、第1の値として、図3の値I1を用いる。
【0071】
また、第2システム制御回路155は、機能回路15が高速動作モードで動作していると共に、電流測定回路20で測定された電流が第2の値より小さい場合に、低速動作モードに切り替える。本実施形態では、第2の値として、図3の値I2を用いる。
【0072】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
ただし、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、機能回路15等の動作に用いられない廃棄される電流Iwを測定していない。第1の実施形態では、電流の測定による電力のロスがあっても、本来廃棄されるべき電力のロスなので、電力の無駄にはならない。本実施形態では、電流Iinの測定により、本来使用可能であるはずの電力のロスが発生することになる。
【0074】
以上で説明した各実施形態によれば、動作可能な供給電力の範囲を広くできる半導体装置及び非接触通信媒体を提供できる。
【0075】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【0076】
例えば、比較例のように電圧検知回路16を備え、電圧検知回路16により機能回路15の処理回路152等のリセット解除を行っても良い。
【0077】
また、前述の電流測定回路20と第2システム制御回路155の機能は一例であり、破棄される電流Iwが動作モードに応じた検出レベル(上記第1の値又は第2の値)以上か否かを判断できれば良い。例えば、電流測定回路20により、破棄される電流Iwの値の情報を第2システム制御回路155に出力して、第2システム制御回路155により、破棄される電流Iwが動作モードに応じた検出レベル以上か否かを判断するようにしても良い。
【0078】
また、無線型ICカードはシリーズレギュレータ14を備えなくとも良い。
【符号の説明】
【0079】
11 アンテナ(電力生成回路)
12 整流回路(電力生成回路)
13 シャントレギュレータ(定電圧回路)
14 シリーズレギュレータ
15 機能回路
17 クロック抽出回路
20 電流測定回路
151 第1システム制御回路
152 処理回路
153 ROM/RAM
154 不揮発性メモリ
155 第2システム制御回路(制御回路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された電力で動作する機能回路と、
前記電力に基づく電流を測定する電流測定回路と、
前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する制御回路と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記機能回路は、互いに消費電力が異なる複数の動作モードを有し、
前記制御回路は、前記機能回路の前記動作情報として前記各動作モードを用い、前記機能回路が前記複数の動作モードの何れかで動作するように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の動作モードは低速動作モードと高速動作モードとを含み、
前記高速動作モードは前記低速動作モードより消費電力が高く、
前記制御回路は、
前記機能回路が前記低速動作モードで動作していると共に、測定された前記電流が第1の値以上の場合に、前記高速動作モードに切り替え、
前記機能回路が前記高速動作モードで動作していると共に、測定された前記電流が第2の値より小さい場合に、前記低速動作モードに切り替える、ように構成され、
前記第1の値は前記第2の値より大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
供給された前記電力に基づいて電源電圧と電源電流とを前記機能回路に供給し、前記機能回路に供給されない電流を破棄する、シャントレギュレータを更に備え、
前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流として、前記シャントレギュレータにおいて破棄される電流を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項5】
供給された前記電力に基づいて電源電圧と電源電流とを前記機能回路に供給する定電圧回路を更に備え、
前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流として、前記定電圧回路に供給された電流を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項6】
外部装置から供給される電波により得られる電力で動作する非接触通信媒体であって、
前記外部装置から前記電波を受信し、前記電波から電力を生成する電力生成回路と、
前記電力生成回路で生成された前記電力で動作し、前記外部装置との情報伝達に伴う処理を行う機能回路と、
前記電力に基づく電流を測定する電流測定回路と、
前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する制御回路と、
を備える非接触通信媒体。
【請求項1】
供給された電力で動作する機能回路と、
前記電力に基づく電流を測定する電流測定回路と、
前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する制御回路と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記機能回路は、互いに消費電力が異なる複数の動作モードを有し、
前記制御回路は、前記機能回路の前記動作情報として前記各動作モードを用い、前記機能回路が前記複数の動作モードの何れかで動作するように制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の動作モードは低速動作モードと高速動作モードとを含み、
前記高速動作モードは前記低速動作モードより消費電力が高く、
前記制御回路は、
前記機能回路が前記低速動作モードで動作していると共に、測定された前記電流が第1の値以上の場合に、前記高速動作モードに切り替え、
前記機能回路が前記高速動作モードで動作していると共に、測定された前記電流が第2の値より小さい場合に、前記低速動作モードに切り替える、ように構成され、
前記第1の値は前記第2の値より大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
供給された前記電力に基づいて電源電圧と電源電流とを前記機能回路に供給し、前記機能回路に供給されない電流を破棄する、シャントレギュレータを更に備え、
前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流として、前記シャントレギュレータにおいて破棄される電流を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項5】
供給された前記電力に基づいて電源電圧と電源電流とを前記機能回路に供給する定電圧回路を更に備え、
前記電流測定回路は、前記電力に基づく電流として、前記定電圧回路に供給された電流を測定する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置。
【請求項6】
外部装置から供給される電波により得られる電力で動作する非接触通信媒体であって、
前記外部装置から前記電波を受信し、前記電波から電力を生成する電力生成回路と、
前記電力生成回路で生成された前記電力で動作し、前記外部装置との情報伝達に伴う処理を行う機能回路と、
前記電力に基づく電流を測定する電流測定回路と、
前記機能回路の動作情報と、測定された前記電流と、に応じて前記機能回路の動作を制御する制御回路と、
を備える非接触通信媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−53540(P2012−53540A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193771(P2010−193771)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]