説明

半導体装置

【目的】内部回路から発生する電源ノイズを低減するためのバイパスコンデンサを、半導体チップ内部に形成してシステムの小型化およびノイズ低減能力の向上を図る。
【構成】多層配線構造の半導体チップの外周に沿って、層間絶縁膜4の一部に薄い層間絶縁膜4aを設けて、対向する下層配線3と上層配線6とをそれぞれ電源配線と接地電位配線として、バイパスキャパシタとする。
【効果】半導体チップの面積を増加することなく、電源ノイズを低減するための大きな容量値をもつバイパスキャパシタを形成することができる。従来半導体チップの外部に実装していたキャパシタを削減して、システムを小型化することができる。半導体チップ内部にバイパスコンデンサを形成することにより、電源ノイズ低減効果が向上するとともに、EMI(電波雑音干渉)発生の低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多層配線構造の半導体集積回路における容量素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体チップをプリント基板に実装するとき、半導体チップに隣接してキャパシタ(コンデンサ)が実装される。半導体チップ内部で発生したノイズが誤動作を引き起こすのを防ぐためである。これはバイパスキャパシタと呼ばれている。
【0003】C−MOSスィッチに用いられるバイパスキャパシタについて、図4(a)〜(c)を参照して説明する。
【0004】図4(a)および(b)に示すように入力信号VINがローレベルからハイレベルに変化する瞬間に、PチャネルFETQ1 およびNチャネルFETQ2 が同時に導通する。電源VDDとGNDとの間に、FETQ1 ,Q2 のソース−ドレイン電流が流れる。この電流が電源ラインに流れ込んで、電源ラインのインピーダンスによって電圧変動が生じる。これが内部回路で生じるスィッチングノイズである。特に高速動作のときにノイズ発生が大きく、半導体集積回路の誤動作の原因になる。
【0005】そのため半導体チップをプリント基板に実装するとき、図4(c)に示すように半導体チップIC1 ,IC2 のそれぞれに隣接して、容量0.01〜1μFのバイパスキャパシタC1 ,C2 を電源VDDとGNDとの間に実装して電源ノイズを抑制する。高周波電流が電源ラインをバイパスしてキャパシタC1 ,C2 の充放電によって供給される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】バイパスキャパシタを半導体チップに隣接して実装しても、半導体チップからの電源ラインのインピーダンスよりもバイパスキャパシタのインピーダンスを小さくしなければならない。バイパス効果が得られないと、ノイズを低減することができないので、3cm以下の配線で接続しなければならない。
【0007】そのため、1個のバイパスキャパシタで複数の半導体チップのノイズを低減することはできない。充分にノイズを低減するには、半導体チップ1個毎に3cm以内のところに実装する必要がある。特に高速動作を行なうシステムにおいては、バイパスコンデンサによって構成部品数が増加して、システムの小型化が困難になっている。
【0008】その対策として、半導体チップの内部に0.01〜1μFという大容量のバイパスキャパシタを形成するのは、現状では極めて実現性に乏しかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体集積回路は、半導体基板の一主面上の外周部に沿って形成された接地電位配線および電源配線となる下層配線および上層配線が、薄い絶縁膜または高誘電率膜からなる層間絶縁膜を挟んで対向して容量素子を構成しているものである。
【0010】
【実施例】本発明の第1の実施例について、図1(a)および(b)の平面図および、図1(a)のA−B断面図である図1(c)を参照して説明する。
【0011】半導体チップのコーナー部を模式的に示す図1(a)において、半導体基板1の周辺部にはボンディングパッドCが形成され、その内側に下層配線と上層配線とがオーバーラップしたキャパシタ部Dが形成されている。このキャパシタ部Dは図1(b)に示すように、半導体チップである半導体基板1の外周に沿って形成されている。
【0012】図1(c)において半導体基板1の外周から順にボンディングパッドC、キャパシタ部D、内部の上下層配線分離部Eが形成されている。ここで下層配線3と上層配線6とに挟まれた層間絶縁膜4は、キャパシタ部Dで薄くなっている。キャパシタ部Dでは、薄い層間絶縁膜4aを容量絶縁膜とし、下層配線3および上層配線6はそれぞれ電源配線および接地電位配線となって、バイパスコンデンサを構成している。
【0013】このバイパスコンデンサの形成方法について、図2(a)〜(c)を参照して説明する。
【0014】はじめに図2(a)に示すように、拡散層形成済みの半導体基板1上に形成された酸化膜2上に例えば厚さ1μmのAl(アルミニウム)をスパッタしてから、レジスト(図示せず)をマスクとして選択エッチングすることにより、下層配線3を形成する。下層配線3によって拡散層(図示せず)との間の接続が行なわれている。つぎにCVD法により厚さ1μmの酸化膜からなる層間絶縁膜を堆積してから、レジスト5をパターニングする。
【0015】つぎに図2(b)に示すように、レジスト5をマスクとして層間絶縁膜4をエッチングしたのち、CVD法により厚さ15nmの酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜4bを堆積する。
【0016】つぎに図2(c)に示すように、厚さ1μmのアルミニウムからなる上層配線6を形成したのち、厚さ1μmの表面保護膜7を形成する。このとき半導体基板1上の能動素子に接続された下層配線3に対して、上層配線6の接続が行なわれている。
【0017】本実施例において、例えば11mm角の半導体チップの周辺において、4辺に長さ10mmのキャパシタを形成する。幅450μmにわたって、厚さ15nmの薄い酸化シリコン膜を形成すると、容量値が0.04μFの実用に耐えるバイパスキャパシタが得られる。しかも半導体チップ面積はほとんど増加しない。
【0018】通常、電源配線および接地電位配線は半導体チップの外周に沿って、それぞれ幅200μm、間隔50μmの同一配線層で形成されている。合計200μm×2本+50μm=450μmの幅をもっている。本実施例ではこの幅でバイパスキャパシタを形成することができるので、半導体チップ面積の拡大を伴なうことなく、効果的なノイズ低減を行なうことができる。
【0019】つぎに第2の実施例について、図3(a)を参照して説明する。
【0020】本実施例においては、下層配線3にスリットを形成したのち、容量絶縁膜4bおよび表面保護膜7を形成した。下層配線3の側壁も容量となるので、例えば厚さ1μmの下層配線3に幅1μmのスリットを形成することにより、約30%大きな容量をもつバイパスキャパシタを得ることができる。容量絶縁膜の膜厚と誘電率、そして長さと幅とを設定することにより、0.1μF以下の任意の容量値を得ることができる。
【0021】つぎに本発明の第3の実施例について、図3R>3(b)を参照して説明する。
【0022】本実施例においては、下層配線3と上層配線6との間に選択的に高誘電率膜4cを形成して容量絶縁膜とする。例えば窒化シリコン膜を用いると、酸化シリコン膜の比誘電率3.9に対して、窒化シリコン膜の比誘電率は7.5と約1.9倍の容量値を得ることができる。また容量部のみに選択的に高誘電率膜を形成することにより、厚い層間絶縁膜4で分離された領域には高周波特性などに影響を与えることがない。
【0023】
【発明の効果】下層配線および上層配線が層間絶縁膜を挟んで対向して容量素子を構成している。半導体チップの外周に沿って、電源配線および接地電位配線となる下層配線および上層配線を対向させる。層間絶縁膜を局部的に薄くするか、高誘電率膜とすることによりノイズ低減のためのバイパスキャパシタを構成する。
【0024】従来半導体チップに隣接して実装していた、0.01〜1μFの大容量のキャパシタを半導体チップの内部に形成することができる。プリント基板上の構成部品数を減らして、システムの小型化を図ることができる。
【0025】バイパス効果を上げるには、可能な限りノイズ発生源である半導体チップ内の回路に近づける必要がある。半導体チップの面積を増加させることなく内部にキャパシタを形成して、理想的なバイパス効果を得ることができる。
【0026】さらに電源配線と接地電位配線とを対向させることにより電流ループを作ることなく、最も効率的にEMI(electromagnetic interference)を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は本発明の第1の実施例を示す平面図である。(c)は(a)のA−B断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例を工程順に示す断面図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施例を示す断面図である。(b)は本発明の第3の実施例を示す断面図である。
【図4】(a)はCMOSスィッチの回路図である。(b)はCMOSスィッチの波形を示すグラフである。(c)は従来の半導体チップをプリント基板に実装した半導体集積回路を示す模式図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 酸化膜
3 下層配線
4 層間絶縁膜
4a 容量絶縁膜
4b 高誘電率膜
5 レジスト
6 上層配線
7 表面保護膜
8 プリント基板
C ボンディングパッド
D キャパシタ部
E 上・下層配線分離部
DD 電源
IN 入力信号
OUT 出力信号
1 PチャネルFET
2 NチャネルFET
1 ,C2 バイパスキャパシタ
IC1 ,IC2 半導体チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板の一主面上に形成された下層配線および上層配線が層間絶縁膜を挟んで対向して容量素子を構成している半導体装置。
【請求項2】 層間絶縁膜が薄くなった領域を挟んで下層配線および上層配線が容量素子を構成している請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 層間絶縁膜の一部が高誘電率膜からなり、前記高誘電率膜が下層配線および上層配線に挟まれて容量素子を構成している請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】 容量素子を構成している下層配線および上層配線が、電源配線および接地配線になっている請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】 容量素子を構成している下層配線および上層配線が半導体基板の一主面の外周に形成されている請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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