説明

半導体記憶装置、ワード線の昇圧方法、及びシステム

【課題】容量カップリングを介してワード線を昇圧する方式においてワード線の電圧を電源電圧に依存しない所望の電圧に昇圧することができる半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、セルトランジスタに接続されるワード線と、ワード線に第1端が接続される第1のキャパシタと、第1のキャパシタの第2端に接続されるブーストドライバとを含み、ブーストドライバは、第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する電圧降下回路と、第1のキャパシタの第2端の電圧を第2の電圧から第1の電圧に上昇させる昇圧駆動回路とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願開示は、一般に記憶装置に関し、詳しくは記憶装置のワード線の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体記憶装置では、ローアドレスに応じてワード線を選択活性化することにより、選択したメモリセルにデータを書き込む。DRAMの場合は、ワード線を活性化してセルトランジスタを導通させ、セルトランジスタを介してHIGH又はLOWの電圧を記録データとしてメモリキャパシタの一端に印加し、グランドであるもう一端との間にデータに応じた電荷を蓄える。FeRAMのデータ書き込み動作は、プレート電圧制御を除けば、DRAMのデータ書き込み動作と略同様である。簡単には、ワード線を活性化してセルトランジスタを導通させ、セルトランジスタを介してビット線のデータをメモリセルに書き込み、データ書き込み後にワード線を非活性化してセルトランジスタを閉じる。但し、FeRAMにおいては、HIGH又はLOWの電圧を強誘電体素子の一端に印加するだけでは、データは記録されない。ワード線選択と同時にプレート線を選択活性化することで、強誘電体セルに対するデータ書き込みを実行する。具体的には、情報を記録するために、強誘電体素子の一端にデータ電圧を印加しながら、強誘電体素子のもう一端に正のパルス電圧を印加する。このデータ書き込み時にHIGH電圧を印加する側はプレートと呼ばれ、プレート電圧を制御するプレート線に接続されている。ワード線によるワード選択と同時に、活性化されたワード線に対応してプレート線を選択活性化することで、選択されたメモリセルに対するデータ書き込みが行なわれる。
【0003】
FRAMやDRAMのように、ワード線の選択活性化により導通させたセルトランジスタを介してデータ電圧をメモリセルに書き込むメモリ装置の場合、ワード線にはメモリセルに印加するHIGH電圧よりも高い昇圧電圧を供給することが好ましい。これは、ワード線によりセルトランジスタのゲートに電圧を印加した場合、この印加電圧よりもトランジスタの閾値電圧Vth分低い電圧が、メモリセルのストレージノードに印加されるからである。即ち、電源電圧VDDでワード線を選択活性化する場合、データ電圧がHIGHでありVDDであるとすると、VDD−Vthの電圧がメモリセルのストレージノードに印加されることになる。この結果、閾値電圧Vthの影響によりデータ書込みレベルやデータ書込みスピードが低下することになり好ましくない。そのような閾値電圧Vthの影響を無くすために、ワード線にはメモリセルに印加するHIGH電圧よりも高い昇圧電圧を供給することが好ましい。
【0004】
ワード線に昇圧電圧を印加する方式として、昇圧電圧生成回路で昇圧電圧を内部的に生成する方式と、ワード線をある電圧に設定してからキャパシタによる容量カップリングを介してワード線を当該電圧から更に高い電圧に昇圧する方式とがある。キャパシタによる容量カップリングを用いる方式は、単純な回路を用いて小さな回路規模且つ低消費電力で実現できるという利点がある。しかし容量カップリングによる単純な昇圧動作では、高精度な昇圧レベルの設定が困難である。特に、昇圧後の電圧は電源電圧に比例することになるので、変動により電源電圧が高くなった場合には、昇圧後の電圧が設計値以上の高い電圧となってしまう。その結果、セルトランジスタに過大なストレス電圧が印加され、セルトランジスタの寿命が短くなる等の問題が生じる。またクランプトランジスタ等を設けてワード線の電荷を抜くことによりワード線電圧を制御することも考えられるが、セルトランジスタのゲートに瞬間的にストレス電圧が印加されることは避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−353879号公報
【特許文献2】特開平11−308855号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】伊藤清男著,「アドバンストエレクトロニクスシリーズI−9 超LSIメモリ」,培風館,1994年11月,pp.310−315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上を鑑みると、容量カップリングを介してワード線を昇圧する方式においてワード線の電圧を電源電圧に依存しない所望の電圧分昇圧することができる半導体記憶装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体記憶装置は、セルトランジスタに接続されるワード線と、前記ワード線に第1端が接続される第1のキャパシタと、前記第1のキャパシタの第2端に接続されるブーストドライバとを含み、前記ブーストドライバは、第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する電圧降下回路と、前記第1のキャパシタの前記第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる昇圧駆動回路とを含むことを特徴とする。
【0009】
ワード線の昇圧方法は、第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成し、ワード線を所定の電圧に設定し、前記ワード線を前記所定の電圧に設定した後に、前記ワード線に第1端が接続されるキャパシタの第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる各段階を含むことを特徴とする。
【0010】
システムは、メモリと、前記メモリの格納内容に応じてデータ処理を行なう処理ユニットとを含み、前記メモリは、セルトランジスタに接続されるワード線と、前記ワード線に第1端が接続される第1のキャパシタと、前記第1のキャパシタの第2端に接続されるブーストドライバとを含み、前記ブーストドライバは、第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する電圧降下回路と、前記第1のキャパシタの前記第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる昇圧駆動回路とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願開示の少なくとも1つの実施例によれば、容量カップリングを介してワード線を昇圧する方式において、第1の電圧と第2の電圧との間に電源電圧に依存しない一定の電圧降下を生成し、容量カップリングの一端を第2の電圧から第1の電圧に上昇させる。これにより、ワード線の電圧を電源電圧に依存しない所望の電圧分昇圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ワード線を昇圧電圧に設定するブーストドライバの構成の一例を示す図である。
【図2】図1のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。
【図3】半導体記憶装置の構成の一例を示す図である。
【図4】図3に示す半導体記憶装置のワードドライバの回路構成の一例を示す図である。
【図5】図4のワードドライバの動作を示す波形図である。
【図6】各種制御信号を生成する回路の構成の一例を示す図である。
【図7】各種制御信号を生成する回路の構成の別の一例を示す図である。
【図8】ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。
【図9】図8のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。
【図10】ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。
【図11】図10のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。
【図12】ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。
【図13】図13のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。
【図14】システム構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、ワード線を昇圧電圧に設定するブーストドライバの構成の一例を示す図である。図1において、ワードドライブ信号WLDRVがアサートされると、これに応答して駆動回路11がワード線10を所定の電圧(例えば電源電圧VDD)に活性化する。図1では一本のワード線10のみが示されるが、実際には複数のワード線が設けられており、ワード線の活性化は選択されたワード線に対してのみ行なわれる。後述するように、ワード線10は、セルトランジスタのゲートに接続されており、ワード線10が選択活性化されることでセルトランジスタが導通して、データがメモリセルに書き込まれる。
【0015】
ブーストキャパシタ12の第1端がワード線10に接続され、第2端がブーストドライバ13に接続される。ワード線10が例えば電源電圧VDDに設定された後に、インバータ14に入力されるブースト信号WLBOOSTがHIGHにアサートされると、これに応答して、ブーストドライバ13がブーストキャパシタ12の第2端の電圧を上昇させる。これにより、容量カップリングを介してブーストキャパシタ12の第1端の電圧が上昇し、ワード線10が電源電圧VDDから更に高い電圧に上昇する昇圧動作が実現される。
【0016】
ブーストドライバ13は、PMOSトランジスタ16、NMOSトランジスタ17、及び電圧降下回路18を含む。電圧降下回路18は、第1の電圧V1と第2の電圧V2との間に一定の電圧降下を生成する。ここで一定の電圧降下とは、電源電圧に依存しない量の電圧降下であり、電源電圧が変動しても一定量に保たれるような電圧降下のことである。但し電圧降下量はプロセス変動等に依存してよく、例えばトランジスタの閾値電圧分の電圧降下を上記の一定の電圧降下として用いてよい。
【0017】
PMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17は第1の電圧V1と第2の電圧V2との間に直列に接続され、両トランジスタの間の接続点がブーストキャパシタ12の第2端に接続されている。PMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17は、ブーストキャパシタ12の第2端を駆動信号bstdrvにより駆動する駆動回路であり、昇圧動作時にブーストキャパシタ12の第2端の電圧を第2の電圧V2から第1の電圧V1に上昇させる。
【0018】
図2は、図1のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。(a)にはワード線10の電圧変化が示され、(b)にはブースト信号WLBOOSTの電圧変化が示され、(c)には駆動信号bstdrvの電圧変化が示される。まずワード線10が駆動回路11により電源電圧VDDに設定される。この時、ブースト信号WLBOOSTはLOW(例えばグランド電圧GND)にネゲートされている状態であり、図1のPMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17がそれぞれ非導通及び導通となっている。従って、駆動信号bstdrvの電圧(ブーストキャパシタ12の第2端の電圧)は、第2の電圧V2に等しい。その後、ブースト信号WLBOOSTがHIGH(電源電圧VDD)にアサートされると、図1のPMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17がそれぞれ導通及び非導通となる。その結果、駆動信号bstdrvの電圧(ブーストキャパシタ12の第2端の電圧)は第2の電圧V2から第1の電圧V1に上昇する。駆動信号bstdrvがΔVb(=V1−V2)だけ電圧上昇すると、ブーストキャパシタ12を介した容量カップリングにより、ワード線10の電圧がVDDからΔVwだけ上昇する。
【0019】
ワード線10の容量をCwl、ブーストキャパシタ12の容量をCboostとすると、ワード線10の昇圧分ΔVwは、以下のように表わされる。
【0020】
ΔVw=ΔVb・Cboost/(Cwl+Cboost)
ここでセルトランジスタの閾値電圧をVthとすると、ワード線10の適切な昇圧後の電圧はVDD+Vthであり、適切な昇圧分の電圧ΔVwはVthである。従って、以下の関係が成り立つ。
【0021】
ΔVb=Vth・(Cwl+Cboost)/Cboost
例えば、ブーストキャパシタ12の容量Cboostをワード線10の容量Cwlに等しく設定した場合には、ΔVb=2Vthとなる。即ち、電圧降下回路18により電圧V1から2Vth電圧降下した電圧V2を生成すれば、ワード線10の昇圧分の電圧は適切な値Vthとなる。また例えば、ブーストキャパシタ12の容量Cboostをワード線10の容量Cwlの1/2に等しく設定した場合には、ΔVb=3Vthとなる。即ち、電圧降下回路18により電圧V1から3Vth電圧降下した電圧V2を生成すれば、ワード線10の昇圧分の電圧は適切な値Vthとなる。ワード線10の容量は、ワード線10に接続される複数のセルトランジスタのゲート容量の和に略等しいので、これを考慮してブーストキャパシタ12の容量Cboostを設計すればよい。
【0022】
図3は、半導体記憶装置の構成の一例を示す図である。図3の半導体記憶装置は、クロックバッファ21、アドレスバッファ22、WEバッファ23、I/Oバッファ24、ローデコーダ25、コラムデコーダ26、ワードドライバ27、センスアンプ28、及びメモリセルアレイ29を含む。メモリセルアレイ29には、複数のメモリセルが縦横に配置され、各メモリセルに対して1ビットのデータを読み書きするためのアドレス指定やデータ伝送等のための回路や配線が設けられている。FRAMの場合であれば、強誘電体が各メモリセルのメモリ素子であり、DRAMの場合であれば、キャパシタが各メモリセルのメモリ素子である。各メモリセルは、ワード線によりオン・オフが制御されるセルトランジスタを介してビット線に接続され、このビット線がセンスアンプ28に接続されている。センスアンプ28は、メモリセルからビット線上に読み出されるデータを増幅することによりデータを検出する。
【0023】
クロックバッファ21は、外部からクロック信号CKを受け取り種々の内部制御信号を生成することにより、半導体記憶装置の各部の動作及びそのタイミングを制御する。クロックバッファ21は、外部からコントロール信号を受け取るコントロール信号バッファやコマンドデコーダ等の回路群も含み、コントロール信号で示されるコマンドを解釈し、クロック信号に基づいたタイミングで上記の内部制御信号を生成する。即ちクロックバッファ21が、内部制御用のクロック信号やタイミング信号を半導体記憶装置の各ユニットに供給し、各ユニットが適切なタイミングで動作することによって、半導体記憶装置のデータ書き込み・データ読み出し動作が実現される。
【0024】
アドレスバッファ22は、外部からアドレス信号ADDを受け取り、適当なタイミングでローアドレスをローデコーダ14に供給するとともに、コラムアドレスをコラムデコーダ26に供給する。WEバッファ23は、外部から供給される書込み信号WEに応じてI/Oコントロール信号を生成し、生成したI/Oコントロール信号をI/Oバッファ24に供給する。I/Oバッファ24は、I/Oコントロール信号に応じて動作し、書込み動作時には、外部から書き込まれるデータをメモリセルアレイ29に適切なタイミングで供給する。また読出し動作時には、I/Oバッファ24は、メモリセルアレイ29から読み出されるデータを適切なタイミングで外部に出力する。
【0025】
ローデコーダ25は、アドレスバッファ22から供給されたローアドレスをデコードし、ローアドレスに対応するワード線を選択するためのワード線選択信号WLSELを出力する。ワードドライバ27は、クロックバッファ21から供給されるワードドライブ信号WLDRVに応じたタイミングで、ワード線選択信号WLSELが示すワード線を選択的に活性化する。活性化ワード線に接続されるセルトランジスタが導通され、選択されたワードアドレスのメモリセルに対するデータ書き込み動作又はデータ読み出し動作が実行される。なおFRAMの場合であれば、ワードドライバ27にはプレートドライバも含まれており、ローアドレスに対応するプレート線を選択的に活性化する。
【0026】
DRAMの場合であれば、HIGH又はLOWのデータ電圧をメモリセルキャパシタに保存することでデ―タ書込みが行なわれる。FRAMの場合であれば、HIGH又はLOWのデータ電圧を強誘電体素子の一端に印加しながら、プレート線に接続される他端にHIGH電圧を印加することでデータ書き込みが行なわれる。
【0027】
コラムデコーダ26は、アドレスバッファ22から供給されたコラムアドレスをデコードし、コラムアドレスに対応するコラム線を活性化する。これによって対応するコラムトランジスタが導通され、センスアンプ28の対応するセンスアンプとI/Oバッファ24とが接続される。
【0028】
読み出し動作の場合、活性化されたワード線に接続されるメモリセルからビット線にデータが読み出され、センスアンプ28によってビット線のデータが増幅される。活性化されたコラム線に対応するセンスアンプから増幅されたデータが読み出され、I/Oバッファ24に供給される。I/Oバッファ24に供給された読出しデータは、出力データDOUTとして出力される。書き込み動作の場合は、読み出し動作の場合と逆に、I/Oバッファ24に入力された書込みデータDINが、活性化されたコラム線で選択されるセンスアンプに供給される。ワード線が活性化されると、活性化されたワード線に接続されるメモリセルに、センスアンプからビット線を介してデータが書き込まれる。
【0029】
図4は、図3に示す半導体記憶装置のワードドライバの回路構成の一例を示す図である。図4において、図1と同一の構成要素は同一の番号で参照し、その説明は省略する。図4に示すワードドライバは、駆動回路11、ブーストキャパシタ12、インバータ14、PMOSトランジスタ16、NMOSトランジスタ17、電圧降下回路18、及びリセットトランジスタ34を含む。電圧降下回路18は、NMOSトランジスタ31及び32とキャパシタ33を含む。NMOSトランジスタ31及び32の各々は、そのドレイン端がゲート端に接続されるダイオード接続となっている。NMOSトランジスタ31及び32は、電源電圧VDDとグランド電圧との間に直列に配置され、キャパシタ33は、NMOSトランジスタ31及び32に直列に接続されている。電圧降下回路18は、電源電圧VDDからNMOSトランジスタ2つ分の閾値電圧に等しい2Vthだけ降下した電圧VBを生成する。リセットトランジスタ34は、リセット信号BSTRSTがHIGHにアサートされると導通する。
【0030】
駆動回路11は各ワード線毎に設けられ、対応するワード線選択信号WLSELがアサートされ、且つワードドライブ信号WLDRVがアサートされると、対応するワード線10を活性化する。駆動回路11は、例えば、電源電圧VDDとグランド電圧との間を直列に接続するPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを含み、これらPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間の接続点がワード線10に接続される構成であってよい。ワードドライブ信号WLDRVをインバータにより反転し、PMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタのゲートに印加すればよい。ワード線選択信号WLSELは、例えば、駆動回路11への電源電圧供給・停止を制御することにより、駆動回路11の動作・停止を制御すればよい。また駆動回路11は、ワードドライブ信号WLDRVがLOWになると、ワード線10をLOW(グランド電圧)に設定する構成であってよい。
【0031】
駆動回路11により駆動されるワード線10は、メモリセルアレイ29のセルトランジスタ36−1及び36−2のゲートに接続される。図示の都合上2つのセルトランジスタのみが示されるが、ワード線10には2つ以上の所望の個数のセルトランジスタが接続されていてよい。セルトランジスタ36−1のチャネルの一端はビット線35−1に接続され、チャネルの他端はメモリセル37−1の一端に接続される。メモリセル37−1の他端は配線38に接続される。同様に、セルトランジスタ36−2のチャネルの一端はビット線35−2に接続され、チャネルの他端はメモリセル37−2の一端に接続される。メモリセル37−2の他端は配線38に接続される。DRAMの場合、メモリセル37−1及び37−2はキャパシタであり、配線38は固定の電圧(例えばグランド電圧)に設定される。FRAMの場合、メモリセル37−1及び37−2は強誘電体素子であり、配線38は電圧制御可能なプレート線である。
【0032】
図5は、図4のワードドライバの動作を示す波形図である。初期状態において、(f)に示す電圧降下回路18の生成電圧VBは、VDDから2Vth降下した電圧となっている。また(d)に示すようにブースト信号WLBOOSTはLOWであり、図4に示すPMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17はそれぞれ非導通及び導通となっている。従って、初期状態において駆動信号bstdrvは、電圧VBに等しい状態となっている。
【0033】
その後、(a)に示すワード線選択信号WLSELがHIGHになり、更に(b)に示すワードドライブ信号WLDRVがHIGHになる。これにより(c)に示すようにワード線10の電圧が所定の電圧(VDD)に活性化される。このとき、ブーストキャパシタ12に電荷が蓄積され、ブーストキャパシタ12の両端の電圧差はVDD−VB=2Vthとなる。なお厳密には、キャパシタ33にもワード線10からブーストキャパシタ12を介して電流が流れ込むので、キャパシタ33の電圧がVBから若干上昇し、ブーストキャパシタ12の両端の電圧差は2Vthよりも若干小さくなってしまう。しかしながら、キャパシタ33の容量をブーストキャパシタ12の容量よりも十分に大きくしておけば、VBが上昇する電圧変化は無視することができる。なおキャパシタ33の代りに抵抗素子を用いれば、電圧降下回路18は、電圧VBをVDDから2Vth降下した電圧に保持するように作用する。但しこの場合、常に消費電流が流れるという問題がある。
【0034】
その後、(d)に示すブースト信号WLBOOSTがHIGHにアサートされると、図4に示すPMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17はそれぞれ導通及び非導通となる。これにより、(e)に示す駆動信号bstdrvが電圧VBから電圧VDDに2Vth上昇する。この時既に、(a)に示すワード線選択信号WLSELはLOWにネゲートされており、ワード線10は電源電圧から遮断されて浮遊状態となっている。ブーストキャパシタ12の一端が電圧VBから電圧VDDに2Vth上昇することにより、ブーストキャパシタ12の他端に接続されているワード線10は、電圧VDDからVDD+2Vth・Cboost/(Cwl+Cboost)に上昇する。従って、ブーストキャパシタ12の容量Cboostをワード線10の容量Cwlに等しく設定した場合、ワード線10の電圧上昇分は適切な値Vthとなる。
【0035】
ワード線10の昇圧電圧がVDD+Vthとなることで、図4に示すセルトランジスタ36−1及び36−2が導通する。セルトランジスタ36−1及び36−2のゲート電圧が昇圧されていることにより、ビット線35−1及び35−2のデータ電圧がVDDの場合、データ電圧VDDを降下させることなくメモリセル37−1及び37−2に書き込むことができる。
【0036】
その後、図5(b)に示すようにワードドライブ信号WLDRVをLOWにネゲートし、ワード線10をLOWに非活性化する。このとき、ブーストキャパシタ12に電荷が蓄積され、ブーストキャパシタ12の両端の電圧差はVDDとなる。その後、(d)に示すブースト信号WLBOOSTがLOWにネゲートされると、図4に示すPMOSトランジスタ16及びNMOSトランジスタ17はそれぞれ非導通及び導通となる。これにより、駆動信号bstdrvとキャパシタ33の電圧VBとが接続され、(e)に示す駆動信号bstdrvが電圧VDDから下降するとともに、(f)に示すキャパシタ33の電圧VBが上昇する。最後に(g)に示すリセット信号BSTRSTがHIGHになることで、図4に示すリセットトランジスタ34が導通し、電圧VBをグランド電圧に接続してリセットする。リセット信号BSTRSTがLOWに戻ると、キャパシタ33には再度電荷が蓄積され、電圧VBはVDD−2Vthのレベルに戻る。
【0037】
図6は、各種制御信号を生成する回路の構成の一例を示す図である。図6には、図3に示すクロックバッファ21が示される。クロックバッファ21は、縦続接続され遅延素子列を構成する複数の遅延素子41を含む。入力端の遅延素子41にクロック信号CKのクロックパルスが入力されると、遅延素子列をクロックパルスが伝搬していく。例えば矢印42の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをセットし、矢印44の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをリセットすると、ワードドライブ信号WLDRVを生成することができる。また矢印43の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをセットし、矢印45の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをリセットすると、ワードブースト信号WLBOOSTを生成することができる。また矢印46の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをセットし、矢印47の位置で遅延素子列から取り出したクロックパルスでフリップフロップをリセットすると、リセット信号BSTRSTを生成することができる。なお遅延素子列を伝搬させるクロックパルスとしては、クロック信号CKを構成するパルス列から選択又は生成した所望のパルス(例えば読出しコマンドや書込みコマンドの入力タイミングに応じて選択又は生成したアクセス動作の開始を示すパルス)とすればよい。
【0038】
図7は、各種制御信号を生成する回路の構成の別の一例を示す図である。図7に示す回路が、図3に示すクロックバッファ21に含まれてよい。図7に示す回路は、遅延回路51及び52、NAND回路53、インバータ54及び55、及びNOR回路56を含む。遅延回路51、NAND回路53、及びインバータ54で構成される回路部分が、ワードドライブ信号WLDRVを所定時間遅延させた信号とワードドライブ信号WLDRVとのAND論理をとることにより、ブースト信号WLBOOSTを生成する。また遅延回路52、インバータ55、及びNOR回路56で構成される回路部分が、ブースト信号WLBOOSTを遅延且つ反転させた信号とブースト信号WLBOOSTとのNOR論理をとることにより、リセット信号BSTRSTを生成する。なお基となるワードドライブ信号WLDRVについては、アクセス動作の開始を示すパルスを所定時間遅延させたパルスでフリップフロップをセットし、その後更に遅延させたパルスでフリップフロップをリセットさせる等して生成すればよい。
【0039】
図8は、ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。図8に示すブーストドライバは、NMOSトランジスタ61乃至63、抵抗素子64、キャパシタ65、インバータ66、PMOSトランジスタ67、及びNMOSトランジスタ68を含む。NMOSトランジスタ61乃至63、抵抗素子64、及びキャパシタ65が電圧降下回路を構成する。即ち、電圧降下回路は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ61乃至63に直列に接続される抵抗素子64を含み、またダイオード接続されたNMOSトランジスタ61乃至63に並列に接続されるキャパシタ65を含む。電圧降下回路は、抵抗素子64とNMOSトランジスタ61との間の接続点に現れる第1の電圧と第2の電圧(グランド電圧)との間に一定の電圧降下を生成する。PMOSトランジスタ67及びNMOSトランジスタ68は第1の電圧と第2の電圧との間に直列に接続され、両トランジスタの間の接続点に駆動信号bstdrvを生成する。PMOSトランジスタ67及びNMOSトランジスタ68は、昇圧動作時に駆動信号bstdrvを第2の電圧から第1の電圧に上昇させる。これにより、図1に示すブーストドライバの場合と同様に昇圧動作を実行する。
【0040】
図9は、図8のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。(a)に示すようにブースト信号WLBOOSTがグランド電圧から電源電圧VDDに変化すると、それに応答して、駆動信号bstdrvがグランド電圧から3Vthに上昇する。ここでVthはNMOSトランジスタ61乃至63の各々の閾値電圧であり、図8に示すダイオード接続したNMOSトランジスタ61乃至63の直列接続により3Vthの電圧降下を生成している。
【0041】
なお図8のキャパシタ65は電圧安定化による迅速な昇圧動作のために設けられるものであり、キャパシタ65が設けられていなくとも緩やかな昇圧動作であれば実現できる。図8の構成では抵抗素子64を介して常時消費電流が流れてしまうので、消費電流を小さくするためには、抵抗素子64の抵抗値が大きいことが望ましい。しかし抵抗値が大きいと、昇圧動作時に抵抗素子64を流れる電流が小さくなり、昇圧に時間がかかることになる。キャパシタ65を設ければ、キャパシタ65から昇圧動作時の電流を供給して、昇圧動作を迅速に行なうことが可能となる。
【0042】
図10は、ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。図10に示すブーストドライバは、抵抗素子70、NMOSトランジスタ71乃至74、キャパシタ75及び76、インバータ77、PMOSトランジスタ78、及びNMOSトランジスタ79を含む。抵抗素子70、NMOSトランジスタ71乃至74、キャパシタ75及び76が電圧降下回路を構成する。電圧降下回路は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ71乃至74に直列に接続される抵抗素子70を含む。電圧降下回路は、抵抗素子70とNMOSトランジスタ71との間の接続点に現れる第1の電圧とNMOSトランジスタ73及び74の間の接続点に現れる第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する。PMOSトランジスタ78及びNMOSトランジスタ79は第1の電圧と第2の電圧との間に直列に接続され、両トランジスタの間の接続点に駆動信号bstdrvを生成する。PMOSトランジスタ78及びNMOSトランジスタ79は、昇圧動作時に駆動信号bstdrvを第2の電圧から第1の電圧に上昇させる。これにより、図1に示すブーストドライバの場合と同様に昇圧動作を実行する。
【0043】
図11は、図10のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。(a)に示すようにブースト信号WLBOOSTがグランド電圧から電源電圧VDDに変化すると、それに応答して、駆動信号bstdrvがVthから4Vthまで3Vth上昇する。ここでVthはNMOSトランジスタ71乃至74の各々の閾値電圧であり、図10に示すダイオード接続したNMOSトランジスタ71乃至73の直列接続により3Vthの電圧降下を生成している。
【0044】
図12は、ブーストドライバの構成の別の一例を示す図である。図12に示すブーストドライバは、NMOSトランジスタ80乃至83、キャパシタ84及び85、インバータ87、PMOSトランジスタ88、及びNMOSトランジスタ89を含む。NMOSトランジスタ80乃至83及びキャパシタ84及び85が電圧降下回路を構成する。電圧降下回路は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ80乃至83に直列に接続されるキャパシタ84を含む。またダイオード接続されたNMOSトランジスタ81乃至83に並列に接続されるキャパシタ85を含む。電圧降下回路は、NMOSトランジスタ80及び81の間の接続点に現れる第1の電圧とNMOSトランジスタ83及びキャパシタ84の間の接続点に現れる第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する。PMOSトランジスタ88及びNMOSトランジスタ89は第1の電圧と第2の電圧との間に直列に接続され、両トランジスタの間の接続点に駆動信号bstdrvを生成する。PMOSトランジスタ88及びNMOSトランジスタ89は、昇圧動作時に駆動信号bstdrvを第2の電圧から第1の電圧に上昇させる。これにより、図1に示すブーストドライバの場合と同様に昇圧動作を実行する。
【0045】
図13は、図12のブーストドライバによる昇圧動作を示す波形図である。(a)に示すようにブースト信号WLBOOSTがグランド電圧から電源電圧VDDに変化すると、それに応答して、駆動信号bstdrvがVDD−4VthからVDD−Vthまで3Vth上昇する。ここでVthはNMOSトランジスタ80乃至83の各々の閾値電圧であり、図12に示すダイオード接続したNMOSトランジスタ81乃至83の直列接続により3Vthの電圧降下を生成している。
【0046】
図14は、システム構成の一例を示す図である。図14に示すシステムは、CPU(Central Processing Unit)100、マスクROM101、FRAMインターフェース102、SRAM(Static Random Access Memory)103、ロジック回路104、及びFRAM105を含む。FRAM105が例えば図3に示した半導体記憶装置に相当する。FRAM105の代りにDRAMを用いてもよい。CPU100は、FRAM105の格納内容に応じてデータ処理を行なう処理ユニットである。即ち、FRAM105に格納されるデータやプログラムに応じてCPU100が動作し、所望の処理を実行する。CPU100による処理結果はFRAM105に格納されてよい。SRAM103は小容量且つ高速アクセス可能なメモリとして機能する。またマスクROM101は、CPU100が実行する基本プログラムやシステム設定等を格納する。ロジック回路104は、CPU100の制御の下で動作し、所望のロジック処理を実行することにより、システムに要求される所望の動作(例えば通信動作等)を実現する。
【0047】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ワード線
11 駆動回路
12 ブーストキャパシタ
13 ブーストドライバ
14 インバータ
16 PMOSトランジスタ
17 NMOSトランジスタ
18 電圧降下回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルトランジスタに接続されるワード線と、
前記ワード線に第1端が接続される第1のキャパシタと、
前記第1のキャパシタの第2端に接続されるブーストドライバと
を含み、前記ブーストドライバは、
第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する電圧降下回路と、
前記第1のキャパシタの前記第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる昇圧駆動回路と、
を含むことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記電圧降下回路は、第1の電源電圧と第2の電源電圧との間に配置されるダイオード接続されたトランジスタを含み、該ダイオード接続されたトランジスタにより前記一定の電圧降下を生成することを特徴とする請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記電圧降下回路は、前記ダイオード接続されたトランジスタに直列に接続される第2のキャパシタを更に含むことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2のキャパシタの電荷を放電するスイッチ回路を更に含むことを特徴とする請求項3記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記電圧降下回路は、前記ダイオード接続されたトランジスタに直列に接続される抵抗を更に含むことを特徴とする請求項2記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記電圧降下回路は、前記ダイオード接続されたトランジスタに並列に接続されるキャパシタを更に含むことを特徴とする請求項5記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記昇圧駆動回路は、前記第1の電圧と前記第2の電圧との間に直列に接続されるPMOSトランジスタ及びNMOSトランジスタを含み、前記PMOSトランジスタと前記NMOSトランジスタとの間の接続点が前記キャパシタの前記第2端に接続されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成し、
ワード線を所定の電圧に設定し、
前記ワード線を前記所定の電圧に設定した後に、前記ワード線に第1端が接続されるキャパシタの第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる
各段階を含むことを特徴とするワード線の昇圧方法。
【請求項9】
前記一定の電圧降下を生成する段階は、ダイオード接続されたトランジスタにより前記一定の電圧降下を生成することを特徴とする請求項8記載のワード線の昇圧方法。
【請求項10】
メモリと、
前記メモリの格納内容に応じてデータ処理を行なう処理ユニットと
を含み、前記メモリは、
セルトランジスタに接続されるワード線と、
前記ワード線に第1端が接続される第1のキャパシタと、
前記第1のキャパシタの第2端に接続されるブーストドライバと
を含み、前記ブーストドライバは、
第1の電圧と第2の電圧との間に一定の電圧降下を生成する電圧降下回路と、
前記第1のキャパシタの前記第2端の電圧を前記第2の電圧から前記第1の電圧に上昇させる昇圧駆動回路と、
を含むことを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−34658(P2011−34658A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183251(P2009−183251)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)