説明

半導体記憶装置

先端電極(40、42、114)と、媒体電極(48)と、記憶媒体(44)とを有する半導体記憶装置(30)。記憶媒体は、記憶される情報を表わす複数の構造的状態のうちの1つをとるように構成可能な記憶エリア(46)を有し、その構成変更は、先端電極と媒体電極との間にある当該記憶エリアに電流(60)を流すことによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[背景]
研究者たちは、磁気ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、及び半導体ランダムアセクスメモリのような情報記憶装置の記憶密度を高め、且つ記憶コストを削減することに取り組んできた。しかしながら、記憶密度の向上は、益々難しくなっている。従来技術は、記憶密度に関して根本的な限界に急速に近づいているように思われる。たとえば、従来の磁気記録による情報記憶は、超常磁性限界のような限界に近づいている。超常磁性限界とは、それ未満では室温において磁気ビットが不安定になる限界である。
【0002】
これらの根本的な限界に直面しない情報記憶装置が研究開発されている。そのようなデバイスの1つである原子分解能記憶装置は、記憶媒体に隣接する電子放出面を有する複数の電子放出器を備える。書込み動作の際、電子放出器は、適当なパルス形状及び振幅を有する比較的高い強度の電子ビームで記憶エリアに衝撃を与えることにより、記憶媒体上のサブミクロンサイズの記憶エリアの状態を変更する。記憶媒体は、多結晶状態か、非晶質状態かのいずれかの状態をとる。記憶エリアの状態を変更することによって、記憶エリアに1ビットが書き込まれる。
【0003】
そのようなデバイスのもう1つの例は、熱ランダムアクセスメモリ(RAM)である。熱RAMは、電流を用いて、アレイ内の2つの導体の交点に配置された記憶エリア(セル)の状態を変更するクロスポイントメモリである。典型的な熱RAMセルは、多結晶状態か、非晶質状態かのいずれかの状態をとる記憶エリアを含む。記憶エリアの状態を変更することにより、記憶エリアに1ビットが書き込まれる。状態(すなわち相)変化を引き起こすためのプログラミング電流は、数ミリアンペアの範囲にある。プログラミング電流の使用を可能にするために、大面積のトランジスタが使用される。
【0004】
熱RAMと比べてプログラミング電流が小さく、記憶容量が大きい、不揮発性半導体記憶装置が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概要]
本発明の実施形態は、半導体記憶装置を提供する。一実施形態において、半導体記憶装置は、先端電極と、媒体電極と、記憶媒体とを有する。記憶媒体は、記憶される情報を表わす複数の構造的状態のうちの1つをとるように構成可能な記憶エリアを有し、その構成変更は、先端電極と媒体電極との間にある当該記憶エリアに電流を流すことによって行われる。
【0006】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照すれば、より理解し易いであろう。図面の要素は必ずしも相対的に一定の縮尺で拡大縮小されていない。同様の参照符号は、対応する類似の部品を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[詳細な説明]
図1は、半導体記憶装置30の一実施形態を示す側面図である。記憶装置30は、複数の先端電極(図面には先端電極40と先端電極42が描かれている)と、複数の記憶エリア46を有する記憶媒体44と、媒体電極48と、マイクロムーバ(超小型可動子)50と、ハウジング52とを備える。先端電極40及び42は記憶媒体44に隣接する。記憶媒体44はマイクロムーバ50に結合される。ハウジング52は、先端電極40及び42と、記憶媒体44と、マイクロムーバ50とを収容する。半導体記憶装置30は、半導体微細加工技術を用いて形成される。
【0008】
実際の記憶装置30は、複数の先端電極と、1以上の記憶媒体と、1以上のマイクロムーバと、記憶媒体に対してデータの読出し及び書込みを行うための関連回路とを備える。分かり易くするために、図面には、2つの先端電極40及び42、1つの記憶媒体44、及び1つのマイクロムーバ50だけが描かれている。
【0009】
記憶媒体44は、先端電極40及び42と、媒体電極48との間に配置される。記憶エリア46は、当該記憶エリア46に電流60を流すことによって、複数の構造的状態のうちの1つになるように構成することができる。複数の構造的状態は、記憶媒体に記憶される情報を表わす。一実施形態では、記憶エリアに対する情報の読出し及び書込みを行うために、先端電極40と媒体電極48との間に電圧を印加し、記憶エリア40を流れる電流を生成する。
【0010】
読出し処理や書込み処理の際、先端電極40及び42は記憶媒体44に接触する。先端電極40及び42と、記憶媒体44との間の先端接触面積は小さい。一実施形態では、先端接触面積は、5ナノメートル〜50ナノメートルの直径範囲を有する。先端接触面積が小さいほど、記憶エリア46において情報の読出し又は書込みを行うのに必要とされる電力は少なくなる(たとえば、3ボルト以下のとき、100ピコアンペア以下の読出し又は書込み電流)。さらに、先端接触面積が小さいことによって、記憶媒体44に記憶されるデータのデータ密度を高めることができる。必要とされる実際の読出し電流又は書込み電流は、記憶媒体44に使用される具体的な材料によって変わる。
【0011】
先端電極40及び42はシリコンから形成される。一実施形態では、低い接触抵抗が得られるように、先端電極40及び42は「高濃度にドープ」され、その結果、読出し電流や書込み電流が、熱RAMのような他の既知のデバイスよりも小さくなるようにする。読出し又は書込み電流が小さいと、体積変化が小さくなるとともに、記憶装置の電力要件が緩和され、切替速度が速くなり、装置の信頼性が高くなる。別の実施形態では、先端電極40及び42は、高濃度にドープされたダイヤモンド先端であるか、又は金属でコーティングされる場合がある。先端電極40及び42の詳細については、本願の中で後で詳しく説明する。
【0012】
記憶媒体44は、第1の主面60と第2の主面62とを有する不揮発性記憶媒体である。第1の主面60は露出した概ね平坦な表面である。第2の主面62は、媒体電極48に接触している。媒体電極48は、金属(たとえば、銅、アルミニウム又はモリブデン)、又は高濃度にドープされた半導体からなる。記憶媒体44は、構成変更可能であり、複数の状態を有する記憶エリア46を含む。一実施形態として、記憶エリア46は、情報を記憶するための第1の状態及び第2の状態を有する。第1の状態及び第2の状態は、それぞれ論理「0」及び論理「1」として定義され、又はその逆として定義される。
【0013】
媒体44は相変化材料から形成される。一実施形態では、相変化材料は、カルコゲニド系相変化材料である。相変化材料は、合金Te、Se、Sb、Ni、Ge、In及びAgを含む。一実施形態では、媒体相変化材料は、Ge(2)、Sb(2)、Te(5)であり、GSTと呼ばれる。書込み動作中は、先端電極40及び42と、媒体電極48との間に電圧が印加され、各記憶エリア46を流れる電流が生成される。この電流は、各記憶エリア46における相変化材料の構造的状態を多結晶状態から非晶質状態へ変化させる。他の実施形態として、この電流は、各記憶エリア46における相変化材料の状態を非晶質状態から多結晶状態へ変化させる場合もある。各記憶エリア46は、非晶質状態又は多結晶状態によって表される、1以上の情報ビットを記憶することができる。
【0014】
非晶質状態の記憶エリア46において検出される抵抗値は、多結晶状態の記憶エリア46において検出される抵抗値よりも約100倍大きい。一実施形態では、論理「0」は非晶質状態における約1.0E+12オーム〜1.0E+13オームの範囲内の抵抗値によって表され、論理「1」は、多結晶状態における約1.5E+9オーム〜約1.5E+10の範囲内の抵抗値によって表される。実際の抵抗値範囲及び/又は読出し/書込み電圧範囲は、実際の媒体材料によって異なる場合がある。一実施形態として、読出し電圧は0.3ボルト〜5.0ボルトの範囲内であり、書込み電圧は2.0ボルト〜15.0ボルトの範囲内である。
【0015】
マイクロムーバ50は、記憶媒体44に対してデータの読出し及び書込みを行うために、先端電極40及び42に対して記憶媒体44を移動させる働きをする。一実施形態として、プローブ先端40及び42に対して記憶媒体32を移動させる場合、マイクロムーバ50は記憶媒体44に結合され、先端電極40及び42は静止状態に維持される。別の実施形態として、記憶媒体44に対して先端電極40及び42を移動させる場合、マイクロムーバ50は先端電極40及び42に結合され、記憶媒体44は静止状態に維持される。
【0016】
マイクロムーバ50は、記憶媒体44を動かして、種々の記憶エリア46の上方に先端電極40及び42を位置決めする。マイクロムーバ50は、記憶エリア38の上方にプローブ先端40及び42を位置決めできるだけの十分な範囲及び分解能を有するものであれば、どのような形態のものであってもよい。一実施形態では、マイクロムーバ50は、半導体微細加工技術によって製造され、ハウジング52に対してX及びY方向に記憶媒体44を走査するように構成される。
【0017】
記憶装置30は、先端電極40及び42を含む先端電極アレイを有することができる。一実施形態として、先端電極アレイにおける先端電極間のピッチは、X方向及びY方向において50マイクロメートルである。各先端電極40及び42は、数万〜数億個の記憶エリア46内のビットにアクセスすることができる。たとえば、先端電極40及び42は多数の記憶エリア46を走査し、これらの記憶エリア46は、記憶エリア46間に約1〜100ナノメートルの間隔を有している。先端電極(たとえば、先端電極40及び42)は、同時にアドレス指定することも、多重化方式でアドレス指定することも可能である。並列アドレス指定方式によれば、記憶装置30のアクセス時間を大幅に短縮し、且つデータ速度を大幅に向上させることができる。
【0018】
一実施形態では、先端電極40及び42は、比較的先が尖った先端である。先端電極40及び42は、直径約15〜50ナノメートルの範囲の小さな先端接触エリアを有する。他の適当な先端電極構成及び形状を用いることもできる。たとえば、先端電極は平坦、すなわち平面的であってもよい。先端接触エリアを小さくすることによって、ビット密度を高めることができる。さらに、プローブ先端40及び42は、記憶媒体32内の記憶エリア46に対して読出し及び書込みを行うための電流を流す。
【0019】
読出し動作の際、先端電極40は、その先端すなわち端部が記憶媒体44の選択された記憶エリア46に接触するように、マイクロムーバ50によって位置決めされる。一実施形態では、約0.3〜0.5Vの範囲内の電圧が、先端電極40と媒体電極48との間に印加される。その結果、選択された記憶エリア46を流れる約60〜80pAの範囲内の電流が、先端電極40と媒体電極48との間に生成される。信号電流の大きさは、選択された記憶エリア46の構造的状態(たとえば、非晶質であるか、多結晶であるか)によって決まる。読出し回路は、選択された記憶エリア46を流れる電流を検出し、選択された記憶エリア46の抵抗値を判定する。この抵抗値は、構造的状態を表わし、したがって、選択された記憶エリア46に記憶された対応する論理レベルを表わす。
【0020】
書込み動作の際、先端電極40は、記憶媒体44の選択された記憶エリア46に接触するように、マイクロムーバ50によって位置決めされる。選択された記憶エリア46に書込みを行うためには、選択された記憶エリア46から読出しを行うために必要とされる電圧及び電流よりも多くの電圧及び電流が必要とされる。一実施形態では、適当なパルス波形を有する約2.8〜3.2Vの範囲内の電圧が、先端電極40と媒体電極48との間に印加される。この電圧により、選択された記憶エリア46を流れる約90〜110pAの電流60が生成される。この電流は、選択された記憶エリア46の構造的状態を多結晶状態から非晶質状態へ変化させ、又は非晶質状態から多結晶状態へ変化させる。書込み回路は、選択された記憶エリア46の構造的状態が変化し、それによって、選択された記憶エリア46の抵抗値が変化するまで、選択された記憶エリア46を流れる電流を検出する。この抵抗値は、選択された記憶エリア46の構造的状態及びそこに記憶された論理レベルを表わす。
【0021】
図2は、記憶装置30の一部の一実施形態を示す図である。記憶装置30は、位置決めコントローラ102と、読出し/書込みコントローラ104とを備える。マイクロムーバ50は、走査アセンブリ116を有する。走査アセンブリ116は、支持アーム118と、z軸走査アクチュエータ120と、x−y軸走査アクチュエータ122と、走査ヘッド124と、先端電極40とを備える。記憶媒体44は、複数の記憶エリア46を有する。媒体電極48は、記憶媒体44に結合される。位置決めコントローラ102は、130で示すように記憶媒体44に接続され、且つ132で示すように走査アセンブリ116に接続される。読出し/書込みコントローラ104は、136で示すように走査アセンブリ116に電気的に接続され、且つ138で示すように記憶媒体44に電気的に接続される。
【0022】
支持アーム118は、z軸アクチュエータ118と、x−y軸アクチュエータ122と、走査ヘッド124と、先端電極40とを支持する。支持アーム118は、記憶媒体44に対して、先端電極40を動かす。z軸走査アクチュエータ120は、矢印140で示すように、先端電極40を記憶媒体44に対して概ね直交する方向に(すなわち垂直に)、z軸に沿って動かす。z軸走査アクチュエータ120は、先端電極と記憶媒体44とを移動可能に接触させる。x−y軸走査アクチュエータ122は、矢印142で示すように、プローブ先端電極40を記憶媒体に沿ってx方向及びy方向に水平に動かす。x−y走査アクチュエータ122は、先端電極40を、記憶媒体44上の記憶エリアに対して位置決めする。走査ヘッド124は、先端電極40を支持する。一実施形態として、先端電極アレイは、走査ヘッド124によって支持される。
【0023】
走査アセンブリ116は、走査型トンネル顕微鏡(STM)走査アセンブリであり、その場合、先端電極40の位置は、トンネル電流情報に基づいて制御される。あるいは、走査アセンブリ116は、原子間力顕微鏡(AFM)走査アセンブリであってもよく、その場合、先端電極40の位置は、先端電極40と記憶媒体44表面との間に発生する力(たとえば、原子間力、静電力又は磁力)に基づいて制御される。z軸走査アクチュエータ120及びx−y軸走査アクチュエータ122は、静電アクチュエータ、圧電アクチュエータ又は他の適当なアクチュエータを含む。
【0024】
位置決めコントローラ102は、記憶媒体44上方における先端電極40の垂直方向及び水平方向の位置を制御する。動作として、位置決めコントローラ102は、z軸走査アクチュエータ120を使用し、先端電極40を下降させて記憶媒体44に接触させ、又は先端電極40を上昇させて記憶媒体44から離隔させる。位置決めコントローラ102は、接触状態にある先端電極40を記憶媒体44の表面に沿って水平に走査する。この走査は、x−y走査アクチュエータ122を制御するか、又はマイクロムーバ50を使用して記憶媒体を電極40に対して移動させることによって行われる。
【0025】
読出し/書込みコントローラ104は、記憶エリア46に対する読出しや書込みを制御する。読出し/書込みコントローラ104は、先端電極40と媒体電極48の間に印加される読出し/書込み電圧信号のパルス波形や振幅などを制御して、記憶エリア46を流れる電流を生成し、記憶エリア46に対する読出しや書込みを行う。
【0026】
選択された記憶エリア46に対する情報の読出しや書込みは、プローブ先端114によって行われる。読出し/書込みコントローラ108は、プローブ先端114と電極36との間に印加される電圧信号が適当なパルス波形及び振幅を有するものになるように電圧信号の印加を制御する。幾つかのプローブ先端114が、対応する数の選択された記憶エリア46の上に位置決めされた後、読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア46に情報を書き込む。読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア46を流れる電流が生成されるように選択された約2.8〜3.2Vの範囲内の比較的高い状態変化電圧を、選択された記憶エリア46に印加することによって、情報を書き込む。この電流は、選択された記憶エリア46の構造的状態を結晶から非晶質へ、又は非晶質から結晶へ変化させる。一実施形態では、構造的状態を結晶から非晶質へ変化させるためには、95〜105pAの範囲内のプログラミング又は書込み電流で十分である。
【0027】
あるいは、読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア46に記憶される情報を読み出す場合もある。読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア46を流れる電流が生成されるように選択された約0.3〜0.5Vの範囲内の比較的低い検出電圧を、選択された記憶エリア46に印加することによって、情報を読み出す。読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア46の構造的状態を変化させることなく、選択された記憶エリア46の電流を検出し、その抵抗値を判定する。
【0028】
図3及び図4はそれぞれ、走査アセンブリ116の一実施形態を示している。走査アセンブリ116は先端電極114のアレイを有し、各先端電極114は平面アクチュエータ115を有する。走査アセンブリ116は、先端電極114のアレイを支持している。先端電極間隔は、記憶装置30の記憶エリア46間の間隔の約10〜10倍に相当する。
【0029】
先端電極は、耐久性があり、弾性で、導電性の半導体又はドープされた半導体材料(たとえば、ドープされたシリコン)から形成される。他の実施形態として、先端電極は、金属材料(たとえば、プラチナ)、非金属材料(たとえば、炭素)から形成される場合もある。一実施形態において、プローブ先端114はカーボンナノチューブである。本明細書で使用される場合、「ナノチューブ」という用語は、約1〜200nmの細い寸法(直径)と、長い寸法(長さ)とを有する中空部材として定義され、細い寸法に対する長い寸法の比(すなわち、アスペクト比)は少なくとも5である。一般に、このアスペクト比は5〜2000にすることができる。
【0030】
カーボンナノチューブは、炭素原子から形成される中空構造である。この実施形態の場合、各先端電極114には、多層ナノチューブと単層ナノチューブのどちらを使用してもよい。多層ナノチューブは、直径の異なる複数のナノチューブを含む。すなわち、最も小さな直径のチューブはそれよりも大きな直径のチューブで包まれ、そのチューブは更に大きな直径のナノチューブで包まれる。これに対し、単層ナノチューブは、たった1本のナノチューブから構成される。多層ナノチューブは一般に、単一の多層ナノチューブとして製造されるか、又は多層ナノチューブの束として製造される。一方、単層ナノチューブは一般に、単層ナノチューブのロープとして製造され、その場合、ロープの各ストランドが1つの単層ナノチューブである。カーボンナノチューブプローブ先端114は、従来のカーボンナノチューブ製造プロセス(たとえば、化学気相成長)によって、又は他の適当な製造プロセスによって形成される。
【0031】
一実施形態では、先端電極をN型にするために、先端電極40及び42は、リン又はヒ素がドープされたシリコンから形成される。他の実施形態では、先端電極40及び42は、P型になるようにドープされる。
【0032】
平面アクチュエータ115は、各先端電極114の基部に配置され、各先端電極40を記憶媒体44に接触させた状態に維持するように構成される。先端電極40の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。走査の際、各平面アクチュエータ115は、対応する各先端電極40の位置を調節し、個々の先端電極の長さに応じて、先端電極40と記憶媒体44との間の接触を維持する。
【0033】
図5は、記憶装置30に対する読出し及び書込みを行うための方法200を示すフロー図である。202において、読出し/書込みコントローラ104は、外部デバイスから読出しコマンド又は書込みコマンドを受信する。204において、位置決めコントローラ102は、マイクロムーバ44及び/又は走査アセンブリ116を使用して、選択された記憶エリア46に関連する先端電極40又は先端電極40アレイを動かし、データをその記憶エリア内の所定の位置に書き込み、又はそこから読み出す。206においてコマンドが読出しコマンドであった場合、208において、そのコマンドの実行が続けられる。コマンドが書込みコマンドであった場合、218において、そのコマンドの実行が続けられる。
【0034】
208における読出しコマンドにおいて、読出し/書込みコントローラ108は、先端電極40と媒体電極44との間にある選択された記憶エリア46に、適当なパルス波形を有する約0.3〜0.5Vの範囲内の電圧信号を印加する。選択された記憶エリア46を流れる約60〜80ピコアンペアの範囲内の電流が生成される。
【0035】
生成される電流の大きさは、記憶エリアの構造的状態に対応する。たとえば、非晶質状態は、多結晶状態よりも大きな抵抗値を有する。そのため、記憶エリアが非晶質状態にある場合、少ない電流が生成される。
【0036】
210において、読出し/書込みコントローラ104は、選択された記憶エリア38を流れる電流を検出する。検出された電流を使用して、記憶エリアの抵抗値を判定する。212において、読出し/書込みコントローラ104は、その抵抗値に基づいて記憶エリア46の状態を判定し、選択された記憶エリア46の状態を示す論理値を外部デバイスに出力する。
【0037】
218における書込みコマンドにおいて、読出し/書込みコントローラ104は、先端電極40と媒体電極44との間にある選択された記憶エリア46に、適当なパルス波形を有する約2.8〜3.2Vの範囲内の電圧を印加する。選択された記憶エリア46を流れる約90〜110ピコアンペアの範囲内の電流が生成される。220において読出し/書込みコントローラ104は、記憶エリア46の抵抗値が変化し、非晶質から結晶への、又は結晶から非晶質への構造的状態の変化を示すまで、電圧及び電流を制御する。222において、読出し/書込みコントローラ104は、書込み動作が終了したことを外部デバイスに通知する。
【0038】
図6〜図8は、記憶媒体44の相変化材料としてGSTを使用した場合の、半導体記憶装置30の一実施形態の特性を示すグラフである。図6は、記憶装置30を用いて、記憶媒体44上の種々の場所に書込みを行うときの電圧特性を示すグラフである。5回の書込み動作について解析を行った。第1の軸は、先端電極40と媒体電極48との間に印加される電圧200を示している。第2の軸202は、書込み電流をピコアンペア単位で示している。記憶媒体44上の記憶エリア46への書込みには、100ピコアンペアのとき、約3ボルトの非常に小さな電圧しか必要とされない。この実験では、所望の書込み電流を得るために、先端電極40と媒体電極48との間に印加される電圧の変動は非常に小さく、約0.5ボルト(2.5ボルトと3.0ボルトの間)である。書込み動作の各例について、データは、100ピコアンペアの所望の書込み電流のときに、各記憶エリア46に書き込まれた。
【0039】
図7は、半導体記憶装置30上の記憶エリアにおける書込み及び読出しの一実施形態に関する電圧電流特性を示すグラフである。第1の掃引210で示されているように、記憶媒体44上の記憶エリア46に、データが書き込まれる。3ボルトの電圧を先端電極40と媒体電極48との間に印加すると、記憶エリア46を流れる100ピコアンペアの書込み電流が生成される。第2の掃引212は、読出し動作の動作特性を示している。先端電極40と媒体電極48との間に0.5ボルト未満の電圧を印加すると、記憶エリア46を流れる約80ピコアンペアの読出し電流が生成され、それよって記憶エリア46からデータが読み出される。
【0040】
図8は、半導体記憶装置30上の記憶エリアに書き込まれたビットの状態を判定するための検出抵抗範囲を示すグラフである。読出し動作中、240で示すように、1e+10オームの検出抵抗値は、論理「1」、すなわちハイ状態を示す。約1e+12範囲の検出抵抗値は、論理「0」、すなわちロー状態を生成する。なお、ハイ状態とロー状態のそれぞれ抵抗範囲は、先端電極40と媒体電極48との間に0.2ボルトから0.5ボルトとの読出し電圧を印加したときに比較的均一になることに留意して欲しい。また、このグラフは、論理状態と論理1状態との間の電気抵抗の大きさが少なくとも2桁違うことも示している。
【0041】
本発明による記憶装置30は「高濃度にドープされた」先端を有し、その結果、相変化媒体との接触抵抗は小さくなっている。そのため、読出し電流や書込み電流は、従来の熱RAMデバイスと比べて少なく、記憶装置電力要件が緩和され、体積変化が小さくなり、且つ切替速度が速くなり、デバイスの信頼性が高くなる。本発明によれば、わずか100pAの範囲内のプログラミング電流、又は書込み電流が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による、半導体記憶装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】半導体記憶装置の一部の1つの例示的な実施形態を示す図である。
【図3】プローブ先端のアレイの一実施形態の平面図である。
【図4】プローブ先端のアレイの一実施形態の側面図である。
【図5】半導体記憶装置に対して読出し又は書込みを行うための方法の一実施形態を示す流れ図である。
【図6】半導体記憶装置の1つの例示的な実施形態の特性を示すグラフである。
【図7】半導体記憶装置の1つの例示的な実施形態の特性を示すグラフである。
【図8】半導体記憶装置の1つの例示的な実施形態の特性を示すグラフである。
【図9】半導体記憶装置の1つの例示的な実施形態の特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端電極(40,42,114)と、
媒体電極(48)と、
記憶エリア(46)を有する記憶媒体(44)であって、前記記憶エリア(46)が、前記先端電極と前記媒体電極との間にある当該記憶エリアに電流(60)を流すことによって、当該記憶エリアに記憶される情報を表す複数の構造的状態のうちの1つをとるように構成可能である、記憶媒体(44)と
を含む、半導体記憶装置(30)。
【請求項2】
前記記憶エリアにある情報の読出し又は書き込みを行う際に、前記先端電極と前記媒体電極との間に電圧を印加し、当該記憶エリアを流れる電流を生成するためのコントローラ(104)を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記先端電極はドープされた先端である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記先端電極には、リン、ヒ素及びホウ素のうちの少なくとも1つがドープされる、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記先端電極はナノチューブを含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記先端電極は、半導体微細加工技術によって形成される先端構造体の一部である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記先端電極はシリコンを含む、請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記記憶エリアに情報を書き込むための前記電流は100ピコアンペア程度に小さく、前記記憶エリアにおいて情報を読み出すための前記電流は約80ピコアンペアである、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記先端電極は、前記記憶媒体の表面(62)に沿って該記憶媒体に対して相対的に動くことができ、該先端電極は、該記憶媒体の表面に対して直交する方向に動くように構成され、前記先端は前記記憶媒体の表面に対して概ね平行に動くように構成され、前記記憶媒体と前記先端電極を互いに相対的に動かすためのマイクロムーバ(50)を含む、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記複数の構造的状態は多結晶状態及び非晶質状態を含み、前記記憶媒体は相変化材料から形成され、前記先端電極は、前記記憶媒体の表面に沿って該記憶媒体に対して動かすことができ、前記多結晶状態の抵抗は、前記非晶質状態の抵抗よりも約2桁小さく、前記先端電極は、前記記憶媒体に対する先端接触エリアを含み、該先端接触エリアは5ナノメートル程度の小さい直径を有し、前記相変化材料は、カルコゲニド系相変化材料からなり、又はTe、Se、Sb、Ni、Ge、In及びAgのうちの1つを含む合金、若しくはそれらの材料の組み合わせを含む合金からなる、請求項16に記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−503840(P2008−503840A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516828(P2007−516828)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/021837
【国際公開番号】WO2006/002115
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)