説明

半導体部品の放熱構造

【目的】 プリント配線板に実装した半導体部品の放熱構造に関し、半導体部品の冷却性が良く且つ塵埃等が筐体内に侵入する恐れがない放熱構造を提供する。
【構成】 カバー付の筐体内に収容実装した半導体部品5と、開口端面21がカバー2の裏面に当接するよう、半導体部品5のパッケージ上面に搭載される金属材よりなる有底筒体20と、を備え、有底筒体20の開口に対応するカバー2の領域内に通気孔25が配列されてなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント配線板に実装した半導体部品の放熱構造に関する。例えばパーソナルコンピュータ等の電子機器は、箱形の筐体にプリント配線板を収容し、発熱量が大きい半導体部品(例えばCPU)をプリント配線板に実装したものが多い。
【0002】このような半導体部品は、所定の温度以下でないと性能が低下する。したがって電子機器に冷却手段を装着して半導体部品を冷却している。
【0003】
【従来の技術】従来の半導体部品の放熱構造を図3に示す。図において、1は、上方が開口した浅い箱形のプラスチック製の筐体であって、筐体1の底板に平行するようプリント配線板3を収容している。
【0004】5は、例えばCPUのような発熱量が大きい半導体部品である。半導体部品5は集積回路がプラスチックパッケージ,セラミックスパッケージ, 金属板パッケージ等により封止され、パッケージの外に導出したリードをスルーホールに挿入してはんだ付けするか、或いはリードをパッドにリフローはんだ付けすることで、プリント配線板3に実装されている。
【0005】10は、基台上に複数のフィンを設けた放熱体である。放熱体10の基台の底面を熱伝導性接着剤等の接着媒体11を介して、半導体部品5の上面に接着している。
【0006】また、筐体1の開口面に、カバー2を嵌着して筐体1を密閉している。したがって、半導体部品5の熱は放熱体10に伝達され、放熱体10の放熱面積が大きいフィンを介して、筐体内の気体(空気) に伝達され、対流する気体が熱媒体となって筐体及びカバーに伝達され、筐体側壁,カバー等から外気に放出される。
【0007】したがって、半導体部品5が冷却される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、密閉構造のプラスチック製の筐体内に半導体部品を実装し、半導体部品に添着した放熱体により半導体部品を冷却する上述の半導体部品の放熱構造は、電子機器が長時間稼働すると、筐体及びカバーの熱伝達率が小さいので、筐体内の気体の温度が上昇して気体温度と放熱体温度との差が小さくなり、半導体部品の冷却性が低下するという問題点があった。
【0009】一方、カバー等に孔を設けて、筐体内の高温気体を筐体外に排出することが考えられるが、そのような孔を設けると、塵埃等が筐体内に侵入して、半導体部品, プリント配線板等が汚損し電気的障害が発生する。
【0010】本発明はこのような点に鑑みて創作されたもので、半導体部品の冷却性が良く、且つ塵埃等が筐体内に侵入する恐れがない半導体部品の放熱構造を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、図1に例示したように、カバー付の筐体1内に収容実装した半導体部品5と、開口端面21がカバー2の裏面に当接するよう半導体部品5のパッケージ上面に搭載される金属材よりなる有底筒体20と、を備える。
【0012】そして、有底筒体20の開口に対応するカバー2の領域内に、通気孔25が配列されてなる構成とする。図2に例示したように、通気孔35が、カバー2に設けた窓28に嵌着した板部材30に設けられた構成とする。
【0013】
【作用】本発明によれば、金属材よりなる有底筒体が半導体部品に密接して搭載され、その有底筒体の開口端面が通気孔が配列したカバーの裏面に当接している。
【0014】したがって、有底筒体に伝達された半導体部品の熱は、有底筒体内の空気に伝達される。そして温度上昇した有底筒体内の空気は、カバーの通気孔を経て筐体外に流出する。
【0015】即ち、有底筒体と有底筒体内の空気との温度差が大きいので、半導体部品の冷却性が向上する。また、カバーの通気孔を経て塵埃等が有底筒体内に侵入することがあっても、半導体部品或いは半導体部品等を実装したプリント配線板に付着することがないので、電気的障害が発生しない。
【0016】
【実施例】以下図を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、全図を通じて同一符号は同一対象物を示す。
【0017】図1は本発明のー実施例の断面図、図2は本発明の他の実施例の要所を示す図である。図において、上方が開口した浅い箱形のプラスチック製,或いは金属製の筐体1には、プリント配線板3が底板に平行するように収容されている。
【0018】例えばCPUのような発熱量が大きい半導体部品5は、集積回路がプラスチックパッケージ,セラミックスパッケージ, 金属板パッケージ等により封止され、パッケージの外に導出したリードをスルーホールに挿入してはんだ付けするか、或いはリードをパッドにリフローはんだ付けすることで、プリント配線板3に実装されている。
【0019】20は、アルミニウム等の金属材よりなる、角形又は円形の鍔付の有底筒体である。有底筒体20の底板の形状は、半導体部品5のパッケージの上平面よりも十分に大きい。
【0020】有底筒体20は、開口端面21が上向きになるように、その底板が熱伝導性接着剤等の接着媒体11により半導体部品5のパッケージの上平面に接着されている。プラスチック製又は金属製のカバー2には、半導体部品5に上方に対応する部分に、円形又はスロット状の通気孔25が配列形成されている。
【0021】このようなカバー2が筐体1に嵌着され、カバー2の裏面が有底筒体20の開口端面21に当接している。即ち、有底筒体20の開口に対応するカバー2の領域内に、通気孔25が配列している。
【0022】前述のように、金属材よりなる有底筒体20が半導体部品5に熱伝導性接着剤を介して接着し、有底筒体20の開口端面21がカバー2の裏面に当接し、且つカバー2にはその開口対応する領域に多数の通気孔25が配列している。
【0023】したがって、半導体部品5の熱は、熱伝導性接着剤等の接着媒体11を介して効率良く有底筒体20に伝達される。有底筒体20は熱伝導率が高いので、有底筒体全体がほぼ均一の温度に上昇し、その表面から熱が放出され、周囲の空気に伝達される。
【0024】有底筒体から熱が放出されると、有底筒体20内の空気の温度が上昇する。したがって、有底筒体20内の高温の空気が、上昇して通気孔25を経て筐体1の外に排出されるとともに、筐体1の外の低温の空気が通気孔25を経て有底筒体20内に侵入する。
【0025】よって、有底筒体と有底筒体内空気との温度差が、常に好ましい状態に保持されるので、半導体部品5の冷却性が向上する。一方、カバー2に設けた通気孔25から塵埃等が有底筒体20内に侵入することがあっても、その塵埃等は有底筒体20内に留まるので、半導体部品5或いは半導体部品5等を実装したプリント配線板3に付着することがない。
【0026】よって、半導体部品5或いはプリント配線板3に電気的障害が発生しない。図2において、28は、半導体部品5に上方に対応するカバー2の部分に穿孔した角形, 円形等の窓である。窓28の大きさは、有底筒体20の開口形状よりも所望に小さい。
【0027】30は、窓28に嵌入する、プラスチック製(筐体1がプラスチックの場合) 又は金属製(筐体1が金属の場合)の鍔付の板部材である。板部材30には、円形又はスロット状の通気孔35が配列形成されている。
【0028】板部材30はカバー2の内側から、窓28に嵌挿され鍔端面がカバー2の裏面に当接した状態で、接着剤等によりカバー2に接着されている。なお、窓28に板部材30を嵌挿した状態で、カバー2の表面と板部材30の表面とが同一平面になるような寸法にすることで、カバー2の外観を良好にしている。
【0029】このように板部材30を嵌着したカバー2が筐体1に嵌着され、カバー2の裏面即ち板部材30の鍔端面が、有底筒体20の開口端面21に当接している。即ち、有底筒体20の開口に対応するカバー2の領域内に、通気孔35が配列している。
【0030】このようにカバー2に窓28を設け、窓28に通気孔35が配設した板部材30を嵌着する構成は、筐体1内に複数の半導体部品5が実装されている電子機器に適用して下記のような効果がある。
【0031】それぞれの半導体部品に上方に対応する大凡の位置に、窓28を設ければよいので、カバーに直接通気孔を配設するのに較べて、通気孔35の配列する位置出し作業が簡単で、カバーの製作費が低コストになる。
【0032】また、カバー2がプラスチックの場合は、カバーのモールド金型の構造が簡単になり、低コストになる。一方、半導体部品5の実装高さが異なる場合には、板部材30の鍔の厚さを切削等して調整することで、有底筒体の開口端面に当接させることができるので、共通の板部材を採用し得る。
【0033】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0034】有底筒体に伝達された半導体部品の熱は、有底筒体内の空気に伝達され、温度上昇した有底筒体内の空気が、カバーの通気孔を経て筐体外に流出するので、半導体部品の冷却性が向上する。
【0035】また、カバーの通気孔を経て塵埃等が有底筒体内に侵入することがあっても、半導体部品或いは半導体部品等を実装したプリント配線板に付着することがなくて、半導体部品或いは半導体部品等を実装したプリント配線板等に電気的障害が発生しない。
【0036】筐体に嵌着するカバーに窓を設け、通気孔が配設した板部材を窓に嵌着する発明は、複数の半導体部品を有する電子機器に適用してカバーの製作費が低コストになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のー実施例の断面図である。
【図2】本発明の他の実施例の要所を示す断面図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1 筐体
2 カバー
3 プリント配線板
5 半導体部品
10 放熱体
11 接着媒体
20 有底筒体
21 開口端面
28 窓
30 板部材
25,35 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カバー付の筐体内に収容実装した半導体部品と、開口端面が該カバーの裏面に当接するよう、該半導体部品のパッケージ上面に搭載される金属材よりなる有底筒体と、を備え、該有底筒体の開口に対応する該カバーの領域内に、通気孔が配列されてなることを特徴とする半導体部品の放熱構造。
【請求項2】 通気孔が、カバーに設けた窓に嵌着した板部材に設けられたものであることを特徴とする、請求項1記載の半導体部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平8−125364
【公開日】平成8年(1996)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−256523
【出願日】平成6年(1994)10月21日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)