説明

半田酸化膜除去装置および半田付け装置

【課題】従来の半田酸化膜除去装置は、構造が複雑で高価であった。また、スクレーパの取り外しができないために、スクレーパの清掃作業を半田槽の近くでせざるを得ず、スクレーパの清掃作業は危険を伴うものであった。
【解決手段】移動機構に固定されたブラケットに支持されたスクレーパを有する半田酸化膜除去装置において、スクレーパの両端部は平板形状であり、ブラケットには、上部が開口したV字形状の切り欠きと、V字形状の切り欠きの下端と連通する所定長さの直線形状の切り欠きが形成されており、スクレーパが待機状態の場合は、スクレーパが溶融半田の液面とは非接触で、かつ、スクレーパの両端部がブラケットの直線形状の切り欠き中に位置し、スクレーパの中央部が溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除く場合は、スクレーパの両端部がV字形状の切り欠き中に位置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融半田の液面に形成された酸化膜を除去する半田酸化膜除去装置および半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半田槽の一辺に沿って移動するスクレーパにより溶融半田の液面に形成された酸化膜を除去する半田酸化膜除去装置が提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3020797号公報
【特許文献2】実開平05−044372号公報
【特許文献3】実開平06−066864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の半田酸化膜除去装置は、スクレーパを半田槽の一辺に沿って移動させる移動手段と、スクレーパを溶融半田の液面に漬けたり離したりするための回動手段の2つのアクチュエータを要するものであった。このため、半田酸化膜除去装置の構造(機構)が複雑で、かつ高価であるという問題があった。
【0005】
また、従来の半田酸化膜除去装置は、スクレーパが回動手段に対して回動可能に固定されているため、スクレーパの清掃作業に時間を要するという問題があった。スクレーパには溶融半田の酸化膜が付着して固化するため、スクレーパによる酸化膜の除去を正常に行うためには、定期的にスクレーパから酸化膜を除去する必要がある。かかるスクレーパの清掃作業は、半田酸化膜除去装置を停止させた後に行う必要があるため、スクレーパの清掃作業に時間を要すると、半田酸化膜除去装置が取り付けられた半田付け装置の稼働率を下げることになる。
【0006】
さらに、従来の半田酸化膜除去装置はスクレーパが回動手段に対して回動可能に固定されているため、前記したスクレーパの清掃作業は、高温の溶融半田が入った半田槽の近くで行う必要があり、高温の熱源近くでの作業であり、かつ、作業者が火傷等の怪我をする危険性が高いという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、スクレーパの取り外しが容易で、かつ、安価な半田酸化膜除去装置、およびこの半田酸化膜除去装置を備えた半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(第1発明)
第1発明に係る半田酸化膜除去装置は、溶融半田が入った略矩形の半田槽の互いに対向する2辺に沿って移動する一対の移動機構と、この一対の移動機構のそれぞれに固定されたブラケットにより両端部を支持されて移動し、中央部が溶融半田の表面に接触して溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除くスクレーパと、を備えた半田酸化膜除去装置に関するものである。
【0009】
そして、このスクレーパの両端部は平板形状であり、ブラケットには、上部が開口したV字形状の切り欠きと、このV字形状の切り欠きの下端と連通する所定長さの直線形状の切り欠きが形成されており、スクレーパが待機状態の場合は、スクレーパが溶融半田の液面とは非接触で、かつ、スクレーパの両端部がブラケットの直線形状の切り欠き中に位置し、スクレーパの中央部が溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除く場合は、スクレーパの両端部がブラケットのV字形状の切り欠き中に位置するものである。ここで、連通とは、隔絶された2つの空間を連続状態にすることをいう。
【0010】
かかる構成により、第1発明に係る半田酸化膜除去装置は、スクレーパを1つの移動機構で動作させることができ、機構が単純かつ安価となる。また、第1発明に係る半田酸化膜除去装置は、スクレーパが待機状態の場合にスクレーパを容易に取り外しすることができるので、スクレーパの清掃作業を半田槽から離れた安全な場所で行うことができる。
【0011】
(第2発明)
第2発明に係る半田酸化膜除去装置は、第1発明の半田付け装置において、さらに、両端部がブラケットに係合され、中央部が常に溶融半田中に存する半田撹拌部材を備えたものである。ここで、係合とは、かかわり合うことをいう。
【0012】
かかる構成により、第2発明に係る半田酸化膜除去装置は、前記した第1発明の効果を奏するだけではなく、移動機構の動作により、半田槽中の溶融半田を撹拌することができるので、半田槽中の溶融半田の温度を略均一にすることができる。
【0013】
(第3発明)
第3発明に係る半田付け装置は、溶融半田が入った略矩形の半田槽と、この半田槽の互いに対向する2辺に沿って移動する一対の移動機構と、この一対の移動機構のそれぞれに固定されたブラケットにより両端部を支持されて移動し、溶融半田の液面に接触して溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除くスクレーパと、を備えたものである。
【0014】
そして、スクレーパの両端部は平板形状であり、ブラケットには、上部が開口したV字形状の切り欠きと、このV字形状の切り欠きの下端と連通する所定長さの直線形状の切り欠きが形成されており、スクレーパが待機状態の場合は、スクレーパが溶融半田の表面とは非接触で、かつ、スクレーパの両端部がブラケットの直線形状の切り欠き中に位置し、スクレーパが溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除く場合は、スクレーパの両端部がブラケットのV字形状の切り欠き中に位置するものである。
【0015】
かかる構成により、第3発明に係る半田付け装置は、スクレーパを1つの移動機構で動作させることができ、機構が単純かつ安価となる。また、第3発明に係る半田付け装置は、スクレーパが待機状態の場合にスクレーパを容易に取り外しすることができるので、スクレーパの清掃作業を半田槽から離れた安全な場所で行うことができる。
【0016】
(第4発明)
第4発明に係る半田付け装置は、第3発明の半田付け装置において、さらに、両端部がブラケットに係合され、中央部が常に溶融半田中に存する半田撹拌部材を備えたものである。
【0017】
かかる構成により、第4発明に係る半田酸化膜除去装置は、前記した第3発明の効果を奏するだけではなく、移動機構の動作により、半田槽中の溶融半田を撹拌することができるので、半田槽中の溶融半田の温度を略均一にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、機構が単純かつ安価で、清掃時の安全性の高い半田酸化膜除去装置および半田付け装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明に係る半田酸化膜除去装置および半田付け装置の斜視図、図2乃至図4は本発明に係る半田酸化膜除去装置および半田付け装置の側面図である。さらに詳述すると、図2は図1の矢視AA、図3は図1の矢視BB、図4は図1の矢視CCである。尚、図1には、説明を分かりやすくするため、A、BおよびCで示した3組の「一対のブラケット、スクレーパおよび半田撹拌部材」が図示されているが、実際にはA、BまたはCで示した状態の1組の「一対のブラケット、スクレーパおよび半田撹拌部材」があるのみである。
【0021】
図1乃至図4に示すように、本発明に係る半田酸化膜除去装置1は、半田槽6の互いに対向する片61、62に沿って移動する一対の移動機構4と、この一対の移動機構4のそれぞれに固定されたブラケット5と、このブラケット5により両端部31、31が支持されて片61、62に沿って移動し、中央部32が半田槽6に入れられた溶融半田の液面に接触して、溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除く(掻き取る)スクレーパ3と、ブラケット5に両端部71、71が係合し、中央部72が常に溶融半田中に存する半田撹拌部材7とを有するものである。また、本発明に係る半田付け装置2は、半田槽6に前記した半田酸化膜除去装置1を取り付けたものである。
【0022】
(移動機構)
移動機構4は、半田槽6の互いに対向する2辺(片61、62)のそれぞれの側に設けられたプーリー41、43と、これらのプーリー41、43に掛け渡されたタイミングベルト42とを備えている。そして、プーリー41、41は、図示しない回転軸により連結されており、この図示しない回転軸はモータ等のアクチュエータに図示しない歯車を介して連結され、当該アクチュエータの動力により回動可能になっている。尚、歯車は、カップリングであっても良い。また、同様に、プーリー43、43は回転軸44により連結されている。かかる構成により、タイミングベルト42は、アクチュエータの正転、逆転動作に対応して正転、逆転動作を行う。
【0023】
(ブラケット)
また、図1および図2に示すように、それぞれのタイミングベルト42には、ネジおよび取付部材45を用いてブラケット5が取り付けられている。このブラケット5の上部には、上部が開口した略V字形状の切り欠き11と、この切り欠き11の下端と連通した所定長さの直線形状の切り欠き12が形成されている。ここで、連通とは、隔絶された2つの空間を連続状態にすることをいう。つまり、切り欠き11における切り欠きの幅が狭くなった下端部分と切り欠き12は、連続的につながっている。そして、所定長さとは、後述するスクレーパ3の両端部31の幅と略同じ長さのことをいう。
【0024】
また、ぞれぞれのブラケット5の上部には、前記した切り欠き11、12とは別に、略コの字形状の切り欠き13が形成されている。そして、このぞれぞれの切り欠き13には、半田撹拌部材7の両端部71、71が位置している。このため、移動機構4によりブラケット5が図1のα方向に移動する場合は、半田撹拌部材7の両端部71、71が切り欠き13の一端15に当接して移動する。また、移動機構4によりブラケット5が図1のβ方向に移動する場合は、半田撹拌部材7の両端部71、71が切り欠き13の他端14に当接して移動する。つまり、半田撹拌部材7は、半田撹拌部材7の両端部71がブラケット5に係合して移動する。ここで、当接とは、突き当たった状態に接触させることをいう。
【0025】
(スクレーパ)
また、それぞれのブラケット5の切り欠き11または12には、スクレーパ3の両端部31が位置している。このスクレーパ3は、半田よりも比重が軽い金属からなる板金を折り曲げ加工して形成されており、両端部31が平板形状である。
【0026】
(半田撹拌部材)
半田撹拌部材7は、前記したように、両端部71、71がブラケット5に形成された略コの字形状の切り欠き13に位置しており、中央部72が常に半田槽6中の溶融半田の液面よりも下に位置している。かかる構成により、半田撹拌部材7は、移動機構4の移動に伴い移動するので、半田槽6中の溶融半田の温度を均一にすることができる。
【0027】
半田撹拌部材7のそれぞれの両端部71には貫通穴が形成されており、それぞれの貫通穴にはバー8が挿入されている。そして、それぞれのバー8の両端部は、移動機構4の移動に伴って半田撹拌部材7が片61、62に沿って移動できるように半田槽6に対してL字形状の板金を介して固定されている。
【0028】
(スクレーパの動作)
次に、スクレーパ3の動作について説明する。
まず、スクレーパ3が待機位置(状態)からスタート位置までα方向に移動する場合、スクレーパ3の両端部31は、待機位置(図1のA、図2)からスタート位置(図1のC、図4)の直前までの間は、直線形状の切り欠き12中にある。つまり、スクレーパ3の両端部31は、幅方向が略垂直状態となる。
【0029】
そして、スタート位置(図1のC、図4)の近傍において、スクレーパ3の両端部31がプレート10の斜面に当接し、両端部31が切り欠き12から押し出されて、重力により中央部32が溶融半田の液面方向に落下する。そうすると、スクレーパ3の両端部31の幅方向が略水平となるので、両端部31が切り欠き12内に入ることが無く、切り欠き11内に位置するようになる。
【0030】
このとき、スクレーパ3は半田槽6中の溶融半田よりも比重が軽いので、スクレーパ3が溶融半田の液面で浮く。この状態で、移動機構4がスタート位置(図1のC、図4)から図1における矢印β方向に移動し、スクレーパ3の中央部32が溶融半田の液面に存する酸化膜を掻き取る(図3)。
【0031】
そして、スクレーパ3の両端部31がプレート9に当接すると、両端部31の幅方向が水平状態から垂直状態になると共に、両端部31が切り欠き12中に位置するようになる。この際、スクレーパ3の中央部32は、図2に示すようにD→E→Fと位置を変え、溶融半田の液面から徐々に離れて溶融半田の液面とは非接触の状態になる。尚、図2において、スクレーパ3の中央部32がD、E、Fの3つ図示されているが、これは、中央部32が3つあることを意味するのではなく、DからE、EからFへと位置を変化することを示したものに過ぎない。
【0032】
スクレーパ3が図2に示す待機状態にある場合は、ブラケット5の切り欠き11の上部が開口しており、かつ、スクレーパ3が溶融半田の液面から離れているので、作業者はスクレーパ5を容易に取り外してスクレーパ5を半田槽6から離れた安全な場所で清掃することができる。
【0033】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0034】
例えば、前記した実施例においては、移動機構4として、プーリーとタイミングベルトからなるものを示したが、これに限るわけではなく、半田槽6の対向する2片に沿って移動できる構造のものであれば良い。
【0035】
また、半田撹拌部材7は、必要に応じて取り付ければ良く、半田槽6の内部に溶融半田を撹拌する機能を有する機構があれば、不要である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、電子部品が実装されたプリント基板に対して半田付けする際に使用する半田酸化膜除去装置および半田付け装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】半田酸化膜除去装置および半田付け装置の斜視図
【図2】半田酸化膜除去装置および半田付け装置の側面図(図1の矢視AA)
【図3】半田酸化膜除去装置および半田付け装置の側面図(図1の矢視BB)
【図4】半田酸化膜除去装置および半田付け装置の側面図(図1の矢視CC)
【符号の説明】
【0038】
1 半田酸化膜除去装置
2 半田付け装置
3 スクレーパ
4 移動機構
5 ブラケット
6 半田槽
7 半田撹拌部材
11 V字形状の切り欠き
12 直線形状の切り欠き
31 スクレーパの両端部
32 スクレーパの中央部
61 半田槽の一辺
62 半田槽の一辺
71 半田撹拌部材の両端部
72 半田撹拌部材の中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融半田が入った略矩形の半田槽の互いに対向する2辺に沿って移動する一対の移動機構と、
該一対の移動機構のそれぞれに固定されたブラケットにより両端部を支持されて移動し、中央部が前記溶融半田の表面に接触して該溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除くスクレーパと、を備えた半田酸化膜除去装置において、
該スクレーパの両端部は平板形状であり、
前記ブラケットには、上部が開口したV字形状の切り欠きと、該V字形状の切り欠きの下端と連通する所定長さの直線形状の切り欠きが形成されており、
前記スクレーパが待機状態の場合は、前記スクレーパが前記溶融半田の液面とは非接触で、かつ、前記スクレーパの両端部が前記ブラケットの前記直線形状の切り欠き中に位置し、
前記スクレーパの中央部が前記溶融半田の液面に形成された前記酸化膜を取り除く場合は、前記スクレーパの両端部が前記ブラケットの前記V字形状の切り欠き中に位置することを特徴とする半田酸化膜除去装置
【請求項2】
両端部が前記ブラケットに係合され、中央部が常に前記溶融半田中に存する半田撹拌部材を備えた請求項1に記載の半田酸化膜除去装置
【請求項3】
溶融半田が入った略矩形の半田槽と、
該半田槽の互いに対向する2辺に沿って移動する一対の移動機構と、
該一対の移動機構のそれぞれに固定されたブラケットにより両端部を支持されて移動し、前記溶融半田の表面に接触して該溶融半田の液面に形成された酸化膜を取り除くスクレーパと、を備えた半田付け装置において、
該スクレーパの両端部は平板形状であり、
前記ブラケットには、上部が開口したV字形状の切り欠きと、該V字形状の切り欠きの下端と連通する所定長さの直線形状の切り欠きが形成されており、
前記スクレーパが待機状態の場合は、前記スクレーパが前記溶融半田の液面とは非接触で、かつ、前記スクレーパの両端部が前記ブラケットの前記直線形状の切り欠き中に位置し、
前記スクレーパが前記溶融半田の液面に形成された前記酸化膜を取り除く場合は、前記スクレーパの両端部が前記ブラケットの前記V字形状の切り欠き中に位置することを特徴とする半田付け装置
【請求項4】
両端部が前記ブラケットに係合され、中央部が常に前記溶融半田中に存する半田撹拌部材を備えた請求項3に記載の半田付け装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−120029(P2010−120029A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293964(P2008−293964)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)