説明

半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法

【課題】本発明は、反射光用領域および透過光用領域における色特性が等しく、反射光用領域の着色層をインクジェット法により形成することが可能な半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成するバンク形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部をパターン状に形成する透明樹脂部形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、上記透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成する着色層形成工程とを有することを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過型液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置として、外光の反射と、バックライト光の透過光とを利用した半透過型液晶表示装置が開発され、この半透過型液晶表示装置は、外光を利用して表示を行なう従来の反射型カラー液晶表示装置に、バックライトを兼ね備え、周囲が暗い場合でもバックライトによる表示(透過表示)が行なえる、という利点を有する。しかしながら、このような半透過型液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて、外光が入射光および反射光として着色層を2回通過することから、外光により表示が行われる反射光用領域の色特性と、バックライト光によって表示が行われる透過光用領域との色特性が異なるという問題を有する場合があった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、反射光用領域における着色層にスルーホールを設ける方法が採用されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、着色層形成用感光性樹脂組成物を用いて、フォトリソグラフィー法により着色層にスルーホールを形成するのが一般的である。しかしながら、この方法では、微細なスルーホールを形成することが困難であるという問題がある。
【0004】
また近年、製造コストを削減できることから、着色層の形成方法としてインクジェット法が実用化されつつある。しかしながら、インクジェット法を用いて、スルーホールを有する着色層を形成するのは困難である。
【0005】
また、反射光用領域および透過光用領域の色特性を等しくすることを目的として、透明基板と、透明基板上にパターン状に形成された透明膜と、透明基板上に透明膜パターンを覆うように形成された着色層とを有する半透過型液晶表示装置用カラーフィルタが提案されている(特許文献2参照)。この半透過型液晶表示装置用カラーフィルタでは、透明基板上に透明膜がパターン状に形成されている領域を反射光用領域として用い、透明基板上に着色層のみが形成されている領域を透過光用領域として用いることによって、反射光用領域および透過光用領域の色特性を等しくさせることができる。
しかしながら、特許文献2には、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法について詳しく述べられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−94381号公報
【特許文献2】特開2003−330008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、反射光用領域および透過光用領域における色特性が等しく、反射光用領域の着色層をインクジェット法により形成することが可能な半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成するバンク形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部をパターン状に形成する透明樹脂部形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、上記透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成する着色層形成工程とを有することを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、透明基板上に透明樹脂部をパターン状に形成した後に、透明樹脂部が形成された透明基板上に着色層を形成するので、インクジェット法により反射光用領域の着色層を形成することが可能である。また本発明によれば、透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成するので、透明樹脂部上に着色層が形成されることがなく、反射光用領域の輝度が高い半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを作製することが可能である。
【0010】
また本発明においては、通常、上記バンク形成工程にて、上記バンクとして遮光部を形成する。一般的に、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、着色層のパターン間を遮光し、コントラストを向上させるために、着色層のパターンを仕切るための遮光部を形成するからである。
【0011】
さらに本発明においては、上記透明樹脂部形成工程にて、上記透明樹脂部の断面を逆テーパー状または矩形状に形成することが好ましい。一般的に、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、スルーホールの断面の形状を逆テーパー状または矩形状とするからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、透明基板上に透明樹脂部をパターン状に形成した後に、透明樹脂部が形成された透明基板上に着色層を形成するので、インクジェット法により反射光用領域の着色層を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における透明樹脂部形成工程を説明するための模式図である。
【図3】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における着色層形成工程を説明するための模式図である。
【図4】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における着色層形成工程を説明するための模式図である。
【図5】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図6】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における透明樹脂部剥離工程を説明するための模式図である。
【図7】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における透明樹脂部形成工程を説明するための模式図である。
【図8】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における透明樹脂部剥離工程を説明するための模式図である。
【図9】本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における透明樹脂部形成工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法は、透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成するバンク形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部をパターン状に形成する透明樹脂部形成工程と、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、上記透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成する着色層形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。また、図1(c)は図2のA−A線断面図であり、図1(d)は図3のB−B線断面図であり、図1(e)は図4のC−C線断面図である。
図1に例示する本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法においては、まず、透明基板1上に着色層のパターンを仕切るためのバンク2として遮光部を形成する(図1(a)、バンク形成工程)。次に、透明基板1上に透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物13を塗布し、フォトマスク11を介して紫外線12を照射して、透明基板1上のバンク(遮光部)2で仕切られた領域4内に、透明樹脂部3をパターン状に形成する(図1(b)および(c)、透明樹脂部形成工程)。この際、図2に例示するように、反射光用領域となる領域にのみ、円柱状の透明樹脂部3を形成する。
次に、透明基板1上のバンク2で仕切られた領域4内に、透明樹脂部3表面が露出するように、インクジェット装置14により赤色着色層形成用組成物15Rを吐出する(図1(d))。この際、図3に例示するように、赤色着色部となる領域にのみ、赤色着色層形成用組成物15Rを吐出する。続いて、図示しないが、赤色着色層形成用組成物の吐出と同様にして、透明基板上のバンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部表面が露出するように、インクジェット法により緑色着色層形成用組成物を吐出し、さらに透明基板上のバンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部表面が露出するように、インクジェット法により青色着色層形成用組成物を吐出する。その後、図示しないが、各色着色層形成用組成物が吐出されて得られる塗膜を加熱してポストベークを行う。このようにして、図1(e)および図4に例示するように、赤色着色部5R、緑色着色部5Gおよび青色着色部5Bから構成される着色層5を形成する(着色層形成工程)。
【0017】
なお、図1(e)および図4において、透明基板1上に透明樹脂部3および着色層5が形成されている領域を反射光用領域r、透明基板1上に着色層5が形成され、透明樹脂部3が形成されていない領域を透過光用領域tとする。
【0018】
図5は、本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。また、図5(b)は図2のA−A線断面図であり、図5(c)は図4のC−C線断面図であり、図5(d)は図6のD−D線断面図である。
図5に例示する本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法においては、まず、透明基板1上に着色層のパターンを仕切るためのバンク2として遮光部を形成する(図5(a)、バンク形成工程)。次に、透明基板1上のバンク(遮光部)2で仕切られた領域4内に、透明樹脂部3をパターン状に形成する(図5(b)、透明樹脂部形成工程)。この際、図2に例示するように、反射光用領域となる領域にのみ、円柱状の透明樹脂部3を形成する。
次に、図5(c)および図4に例示するように、透明基板1上のバンク2で仕切られた領域4内に、透明樹脂部3表面が露出するように、インクジェット法により赤色着色部5R、緑色着色部5Gおよび青色着色部5Bから構成される着色層5を形成する(着色層形成工程)。
次に、図5(d)および図6に例示するように、アルカリ系剥離液を用いて透明樹脂部を剥離し、スルーホール6を形成する(透明樹脂部剥離工程)。
【0019】
なお、図5(d)および図6において、透明基板1上にスルーホール6および着色層5が形成されている領域を反射光用領域r、透明基板1上に着色層5が形成され、スルーホール6が形成されていない領域を透過光用領域tとする。
【0020】
図1および図5に例示するように、本発明においては、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行ってもよく行わなくてもよい。
図1に例示するように、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行わない場合には、透明基板上に透明樹脂部および着色層が形成されている領域を反射光用領域に用い、透明基板上に着色層が形成され、透明樹脂部が形成されていない領域を透過光用領域に用いることができる半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを作製することが可能である。透明樹脂部を有していない透過光用領域に対して、反射光用領域は透明樹脂部を有していることから、着色層のみの透過光と比較して、色純度を淡くすることが可能となり、外光が反射光用領域を二回通過した際にも、透過光用領域をバックライトが一回通過した際と同様の色特性とすることができる。したがって、反射光用領域の色特性を、透過光用領域における色特性と等しくさせることが可能となる。
一方、図5に例示するように、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行う場合には、透明基板上にスルーホールおよび着色層が形成されている領域を反射光用領域に用い、透明基板上に着色層が形成され、スルーホールが形成されていない領域を透過光用領域に用いることができる半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを作製することが可能である。スルーホールを有していない透過光用領域に対して、反射光用領域はスルーホールを有していることから、着色層のみの透過光と比較して、色純度を淡くすることが可能となり、外光が反射光用領域を二回通過した際にも、透過光用領域をバックライトが一回通過した際と同様の色特性とすることができる。したがって、反射光用領域の色特性を、透過光用領域における色特性と等しくさせることが可能となる。
【0021】
このように本発明においては、透明基板上に透明樹脂部をパターン状に形成し、次いで透明樹脂部が形成された透明基板上に着色層を形成することによって、反射光用領域の色特性を調整することが可能となり、反射光用領域および透過光用領域の色特性が等しい半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを作製することが可能である。
【0022】
本発明においては、透明基板上に透明樹脂部をパターン状に形成した後に、透明樹脂部が形成された透明基板上に着色層を形成するので、インクジェット法により着色層を形成することが可能である。
【0023】
また本発明においては、透明樹脂部の形成に感光性樹脂組成物を用いることができるので、微細な透明樹脂部のパターンを形成することが可能である。そのため、バンクで仕切られた1つの領域内に、微小な透明樹脂部またはスルーホールを複数個形成することができ、反射光用領域における色特性を均一化することが可能である。
【0024】
さらに本発明においては、透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成するので、透明樹脂部上に着色層が形成されることがなく、反射光用領域の輝度が高い半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを作製することが可能である。また、透明樹脂部表面が露出するように着色層を形成するので、透明樹脂部の大きさによって反射光用領域での反射色の正確な設計が可能となる。一方、透明樹脂部表面が露出しないように着色層を形成する、すなわち透明樹脂部上にも着色層を形成する場合には、透明樹脂部上の着色層の厚み等のばらつきによって反射色の設計がずれてしまう。
【0025】
また従来、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおいて、反射光用領域および透過光用領域における色特性を等しくするために、反射光用領域のみに透明樹脂層(枕)を形成し、反射光用領域の着色層の厚みを薄くする方法も採用されている。この方法では、着色層形成用組成物の粘度によっては、着色層表面に厚みムラが生じることがある。そのため、材料による反射色特性の制約が大きい。これに対し、本発明においては、インクジェット法により着色層を形成するので、着色層形成用組成物の粘度によらず、比較的厚みムラの少ない着色層を形成することができる。よって、材料特性に依存せずに、透明樹脂部の設計によって任意に反射色特性を設定することができる。
【0026】
本発明においては、透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成する。これは、本発明においてはインクジェット法により着色層を形成するので、バンクを形成しないと、透明基板上に吐出された着色層形成用組成物が目的とする領域以外に濡れ広がり、各色着色層形成用組成物が混色するおそれがあるからである。
【0027】
以下、本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0028】
1.バンク形成工程
本発明におけるバンク形成工程は、透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成する工程である。
【0029】
本工程にて形成されるバンクとしては、着色層のパターンを仕切るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、遮光部、後述する透明樹脂部と同一の材料から構成される透明樹脂バンク等が挙げられる。通常は、バンクとして遮光部を形成する。一般に、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、着色層のパターン間を遮光し、コントラストを向上させるために、着色層のパターンを仕切るための遮光部を形成するからである。また、バンクは、遮光部と透明樹脂バンクとから構成されるものであってもよい。
【0030】
遮光部の形成材料としては、所望の遮光性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、通常、黒色着色剤および樹脂を含有する遮光部形成用樹脂組成物、または、金属材料が用いられる。
遮光部形成用樹脂組成物を用いる場合、黒色着色剤および樹脂としては、一般的なカラーフィルタの遮光部に用いられるものを使用することができる。
また、金属材料を用いる場合、金属材料としては、一般的なカラーフィルタの遮光部に用いられる金属材料を使用することができる。
【0031】
遮光部の形成方法としては、所望の開口部を有する遮光部を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム等の金属材料を用いたスパッタリング法、遮光部形成用樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、および、遮光部形成用樹脂組成物を用いた熱転写法等を挙げることができる。
【0032】
なお、透明樹脂バンクの形成材料および形成方法については、後述する透明樹脂部形成工程に記載するものと同様であるので、ここでの説明は省略する。本発明において、透明樹脂部と同一の材料から構成される透明樹脂バンクを形成する場合には、工程の簡略化のために、透明樹脂バンクおよび透明樹脂部を同時に形成してもよい。
【0033】
本工程においては、撥液性を有するバンクを形成することが好ましい。後述する着色層形成工程において、バンクで仕切られた領域内、すなわちバンクの開口部内に吐出される着色層形成用組成物が、バンクを越えて他の開口部へ濡れ広がることを防ぐことができるため、着色層に混色が生じるのを防止することができるからである。
【0034】
撥液性を有するバンクを形成する方法としては、例えば、バンクの形成材料として撥液剤を含有する材料を用いる方法や、バンクに撥液化処理を施す方法等を挙げることができる。撥液剤を含有する材料を用いる方法では、別途バンクに撥液化処理を施すことなく、撥液性の高いバンクを形成することができる。一方、バンクに撥液化処理を施す方法では、樹脂を含有するバンクのみに選択的にフッ素を導入することができるため、透明基板表面よりも撥液性の高いバンクを容易に形成することができる。
【0035】
撥液剤を含有する材料を用いる場合、撥液剤としては、所望の撥液性を有する遮光部を形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、フッ素含有化合物、および、低表面エネルギー物質の微粒子等を挙げることができる。
【0036】
フッ素含有化合物としては、例えば、下記式(1)または(2)で表される化合物のモノマーまたはオリゴマー等を例示することができる。
一般式(1):Rf−X−Rf´
一般式(2):(Rf−X−R)−Y−(R´−X´−Rf´)
ここで、上記式(1)または(2)において、RfおよびRf´はフルオロアルキル基、RおよびR´はアルキレン基を表し、RfおよびRf´、またRおよびR´は同一であっても異なっていてもよい。また、X、X´およびYは、−COO−、−OCOO−、−CONR”−、−OCONR”−、−SO2NR”−、−SO2−、−SO2O−、−O−、−NR”−、−S−、−CO−、OSO2O−、−OPO(OH)O−のいずれかを表し、X、X´およびYは同一であっても異なっていてもよい。R”はアルキル基または水素を表す。
【0037】
さらに、フッ素含有化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂等も用いることができる。
【0038】
また、上記低表面エネルギー物質の微粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテル系共重合体、3フッ化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体等からなる微粒子や、シリコーン微粒子等を挙げることができる。
【0039】
一方、バンクに撥液化処理を施す場合、撥液化処理方法としては、バンクの撥液性を透明基板表面の撥液性よりも相対的に高くできる方法であれば特に限定されるものではない。
例えば、バンクの形成材料として樹脂を用い、透明基板に無機材料からなる基板を用いる場合には、撥液化処理方法として、バンクにフッ素化合物を導入ガスとしたプラズマを照射する方法が好ましく用いられる。このような方法は、有機物にのみフッ素化合物を導入することができるため、バンクのみに選択的にフッ素を導入でき、バンクの撥液性を透明表面の撥液性よりも容易に高くすることができるからである。
【0040】
ここで、上記プラズマ照射を行った際の、バンクにおけるフッ素の存在は、X線光電子分光分析装置(XPS:ESCALAB 220i−XL)による分析において、遮光部の表面より検出される全元素中のフッ素元素の割合を測定することにより確認することができる。
【0041】
導入ガスに用いられるフッ素化合物としては、例えば、CF4、SF6、CHF3、C26、C38、C58等を挙げることができる。
【0042】
また、導入ガスとしては、上記フッ素化合物からなるフッ素ガスと他のガスとが混合されたものであってもよい。他のガスとしては、例えば、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができるが、中でも、窒素が好ましい。他のガスとして窒素を用いる場合、窒素の混合比率は50%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましい。
【0043】
プラズマの照射方法としては、バンクを撥液化することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、減圧下でプラズマ照射してもよく、大気圧下でプラズマ照射してもよい。中でも、大気圧下でプラズマ照射を行うことが好ましい。減圧用の装置等が必要なく、コストや製造効率等の面で好ましいからである。
【0044】
バンクの撥液性としては、透明基板表面よりも相対的に撥液性が高ければ特に限定されるものではないが、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましく、中でも表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましく、さらには表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上であることが好ましい。また、純水との接触角が11°以上であることが好ましい。
【0045】
一方、透明基板表面の親液性としては、バンクの親液性よりも高ければ特に限定されるものではなく、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°未満であることが好ましく、中でも表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下であることが好ましく、さらには表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下であることが好ましい。
【0046】
本発明に用いられる透明基板は、透明樹脂部および着色層を形成可能であり、可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板と同様のものとすることができる。具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等が挙げられる。
【0047】
2.透明樹脂部形成工程
本発明における透明樹脂部形成工程は、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部をパターン状に形成する工程である。
【0048】
本工程により透明樹脂部をパターン状に形成する方法としては、透明基板上の反射光用領域となる領域に透明樹脂部を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を、スピンコート法やダイコート法等、一般的な塗布方法で塗布した後、パターン露光し、現像する方法等とすることができる。
【0049】
透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物としては、可視光線透過率が高い透明樹脂部が得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶剤等を含有する組成物が挙げられる。
【0050】
感光性樹脂としては、例えば、感光性アクリル樹脂、感光性ポリイミド、ポジレジスト、カルド樹脂、ポリシロキサン、ベンゾシクロブテン等が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、上記感光性樹脂の種類に応じて適宜選択される。
さらに、溶剤としては、上記の感光性樹脂、ポリマー成分等を分散または溶解することができるものであれば特に限定されるものではない。
本発明において、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行わない場合には、上述したような組成物が用いられる。
【0051】
また、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物として、熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物を用いることができる。本発明において、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行う場合には、熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物を用いることが好ましい。このような光架橋性樹脂組成物を用いる場合には、光架橋性樹脂組成物を光架橋させて得られる光硬化物を加熱することによって分解させることができ、光硬化物をアルカリ系剥離液に対して膨潤しやすくすることができる。その結果、透明樹脂部を容易に剥離することが可能となるからである。
【0052】
熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物としては、例えば、光重合(光架橋)可能なポリマー成分および熱分解性を有する架橋剤を含有する組成物、熱分解性を有する光重合(光架橋)可能なポリマー成分を含有する組成物などを挙げることができる。
【0053】
光重合(光架橋)可能なポリマー成分および熱分解性を有する架橋剤を含有する組成物を用いた場合には、下記式に例示するような反応が起こる。すなわち、光照射により架橋サイトX,Yが反応し、架橋体を生成する。架橋体を加熱すれば、熱分解サイトZが解裂して、溶剤に可溶な線状高分子になる。
【0054】
【化1】

【0055】
上記の光重合(光架橋)可能なポリマー成分としては、例えば、ポリビニルフェノール(PVP);カルボキシル基を含むポリマー;o−クレゾールノボラックエポキシアクリレート、フェノールノボラックエポキシアクリレート等のエポキシアクリレート;ポリエステルアクリレート;ポリウレタンアクリレート;ポリエーテルアクリレート;オリゴマアクリレート;アルキドアクリレート;ポリオールアクリレート;メタクリル酸メチル−スチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0056】
上記の熱分解性を有する架橋剤としては、熱分解性を有する結合基を有する官能基を有するものが挙げられる。例えば、架橋剤としては、両末端に架橋反応に関与する官能基を有し、両官能基をつなぐ部分に熱分解性を有する結合基を有する官能基が挿入されたものを用いることができる。具体的に、架橋剤としては、両末端にエポキシユニットを有し、2つのエポキシ基が3級のカルボン酸エステル結合でつながっているジエポキシ化合物を用いることができる。3級エステルは、加熱により解裂して、ジカルボン酸とオレフィンを生成する。このような架橋剤については、未来材料 vol.2,no.9,2002,p.20‐25を参照するものとする。
また、熱分解性を有する結合基を有する官能基としては、下記一般式(3)で表されるものを挙げることができる。
【0057】
【化2】

【0058】
ここで、上記式(3)中、R1は炭素数1〜20のアルキル基を示し、R2は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。
【0059】
上記式(3)において、熱分解性を有する結合基は、O−C(CはR1およびR2が結合している炭素原子)−OにおけるO−C結合およびC−O結合、ならびに、C−O−CHにおけるO−CH結合のうちの少なくとも1つであると考えられる。このような結合基が切断されることにより、上記式(3)で表される官能基から、例えば下記一般式(4)で表される化合物や下記一般式(5)で表される化合物が生成すると予想される。
【0060】
【化3】

【0061】
ここで、上記式(5)中、R1およびR2は上記式(3)と同様である。
【0062】
光重合(光架橋)可能なポリマー成分および熱分解性を有する架橋剤を含有する組成物には、光酸発生剤が含有されていることが好ましい。この組成物としては、光照射のみでは不溶化しないものがあるからである。光酸発生剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、フルオレニリデンイミノp−トルエンスルホナート(FITS)等が挙げられる。FITSは、紫外光照射によりp−トルエンスルホン酸を生成する。
具体的には、光重合(光架橋)可能なポリマー成分として、ポリビニルフェノール(PVP)を用い、架橋剤として、両末端にエポキシユニットを有し、2つのエポキシ基が3級のカルボン酸エステル結合でつながっているジエポキシ化合物を用い、光酸発生剤として、フルオレニリデンイミノp−トルエンスルホナート(FITS)を用いた場合、光照射で発生した酸が、PVPのフェノール性OH基と架橋剤のエポキシ基との反応触媒となり、架橋体が得られる。この架橋体を加熱すると、3級エステル部分が解裂して、線状高分子が生成する。この線状高分子は、テトラヒドロフランなどの有機溶剤に溶解する。
光酸発生剤の種類を適宜選択することにより、架橋体の熱分解温度を調整することができる。
なお、光重合(光架橋)可能なポリマー成分および熱分解性を有する架橋剤を含有する組成物については、未来材料 vol.2,no.9,2002,p.20‐25を参照するものとする。
【0063】
一方、熱分解性を有する光重合(光架橋)可能なポリマー成分を含有する組成物を用いた場合、下記式に例示するような反応が起こる。すなわち、光照射により架橋サイトRが反応し、架橋体を生成する。架橋体を加熱すれば、熱分解サイトQが解裂して、溶剤に可溶な線状高分子になる。
【0064】
【化4】

【0065】
上記の熱分解性を有する光重合(光架橋)可能なポリマー成分としては、光重合性を有する官能基と、熱分解性を有する結合基を有する官能基とを有するものが挙げられる。例えば、側鎖に架橋サイトを結合させたポリマーであって、架橋サイトとポリマー主鎖との間に熱分解性を有する結合基を有する官能基が挿入されたポリマーを用いることができる。
光重合性を有する官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
なお、熱分解性を有する結合基を有する官能基については、上記架橋剤の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
熱分解性を有する光重合(光架橋)可能なポリマー成分を含有する組成物には、光酸発生剤が含有されていることが好ましい。この組成物としては、光照射のみでは不溶化しないものがあるからである。なお、光酸発生剤については、上述したものと同様である。
また、上記の熱分解性を有する光重合(光架橋)可能なポリマー成分の具体例および合成方法については、特開2001-226430号公報、特開2006-235499号公報、未来材料 vol.2,no.9,2002,p.20‐25を参照するものとする。
【0066】
本発明においては、後述する着色層形成工程にて、所定の温度で加熱された際に、熱分解性を有する結合基のすべてが分解(切断)される必要はなく、透明樹脂部がアルカリ系剥離液によって剥離されうる程度に分解(切断)されればよい。
【0067】
本工程においては、撥液性を有する透明樹脂部を形成することが好ましい。後述する着色層形成工程において、透明樹脂部表面が露出するように着色層を形成するのが容易となるからである。
【0068】
撥液性を有する透明樹脂部を形成する方法としては、例えば、撥液剤を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用いる方法や、透明樹脂部に撥液化処理を施す方法等を挙げることができる。撥液剤を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用いる方法では、別途透明樹脂部に撥液化処理を施すことなく、撥液性の高い透明樹脂部を形成することができる。一方、透明樹脂部に撥液化処理を施す方法では、透明樹脂部のみに選択的にフッ素を導入することができるため、透明基板表面よりも撥液性の高い透明樹脂部を容易に形成することができる。
【0069】
なお、撥液剤および撥液化処理方法については、上記バンク形成工程に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、透明樹脂部の撥液性については、上記バンクの撥液性と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
本発明においてバンクおよび透明樹脂部に撥液化処理を施す場合、工程の簡略化のために、本工程においてバンクおよび透明樹脂部に同時に撥液化処理を施してもよい。
【0071】
また本工程においては、光散乱機能を有する透明樹脂部を形成してもよい。本発明において、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行わない場合には、光散乱機能を有する透明樹脂部を形成することにより、本発明により製造される半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの視認性を向上させることができるからである。
【0072】
光散乱機能を有する透明樹脂部を形成する方法としては、例えば、光散乱性微粒子を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用いる方法や、発泡剤を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用い、気泡形成処理を施して透明樹脂部の内部に気泡を形成する方法等を挙げることができる。前者の場合には、光散乱性微粒子の含有量を増やしたり、透明樹脂部自体の厚みを厚くしたりすることにより、光散乱効果を高めることができる。一方、後者の場合には、透明樹脂部の内部に形成される気泡の屈折率は約1.0であるので、透明樹脂部を構成する樹脂と気泡との屈折率に差を生じさせて、気泡内へ入射した光が気泡外へ出射する際に種々の方向へ屈折させることができ、光散乱効果を得ることができる。また、透明樹脂部の内部に形成される気泡の泡径や透明樹脂部の空隙率等を調整することにより、透明樹脂部の光散乱の度合いを変化させることができるため、着色層の色に応じて要求される好適な光の散乱の度合いに、各々調整することができる。
【0073】
光散乱性微粒子を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用いる場合、光散乱性微粒子としては、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物に含有される樹脂と異なる屈折率を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的に光散乱機能を得るために使用されているものを用いることができる。このような光散乱性微粒子としては、例えば、無機物からなる微粒子および有機ポリマーからなる微粒子等を挙げることができる。この光散乱性微粒子は、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物に含有される樹脂の屈折率に応じて適宜選択される。
【0074】
また、光散乱性微粒子の平均粒子径としては、0.7μm〜3.5μmの範囲内であることが好ましく、中でも1.0μm〜2.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0075】
光散乱性微粒子の形状としては、特に限定されるものではないが、一般的には球状であることが好ましい。
【0076】
一方、発泡剤を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用い、気泡形成処理を施して透明樹脂部の内部に気泡を形成する場合、発泡剤としては、所定の温度範囲内で分解し、光散乱効果を得るのに充分な気泡を形成することが可能なものであれば特に限定されるものではない。このような発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、N,N´−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0077】
また、発泡剤の粒径としては、0.01μm〜1μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.03μm〜0.1μmの範囲内であることが好ましい。発泡剤の粒径が上記範囲内であれば、発泡剤が分解した際に、所望の泡径を有する気泡を形成することができるからである。
【0078】
透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物中の発泡剤の含有量としては、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物に含有されている樹脂に対して、0.5重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましく、中でも1重量%〜50重量%の範囲内であることが好ましい。
【0079】
なお、発泡剤の種類および含有量等を変化させることにより、形成される気泡の泡径および気泡量が変化するが、好適な光散乱効果が得られる気泡の泡径および気泡量に調節するためには、予めシミュレーション等を行って、発泡剤の種類および含有量に応じた気泡量等の変化を計測し、そのような計測結果に基づいて、発泡剤の種類および含有量を適宜選択することが好ましい。
【0080】
透明樹脂部の内部に気泡を形成する方法としては、発泡剤を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を塗布して得られる透明樹脂部を加熱する方法が用いられる。透明樹脂部を所定の温度で加熱することにより、発泡剤を分解させ、透明樹脂部の内部に気泡を形成する。
この際の加熱の温度としては、用いる発泡剤により異なるが、180℃〜240℃の範囲内であることが好ましく、さらには200℃〜230℃の範囲内であることが好ましい。
【0081】
透明樹脂部の内部に気泡を形成する気泡形成処理は、透明樹脂部の内部に気泡を形成することが可能であれば、例えば、透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物の塗布後、現像後など、いつ行ってもよい。中でも、ポストベークとして気泡形成処理を行うことが好ましい。気泡形成処理をポストベークとして行う場合には、ある程度硬化が進んだ状態の透明樹脂部の内部に気泡を形成することになる。この場合、透明樹脂部の粘性が高いので、発泡剤が分解する際に発生する力により、気泡の泡径が所望の範囲以上に大きくなりにくく、所望の泡径を有する気泡を容易に形成することができるからである。
【0082】
透明樹脂部の内部に形成される気泡の泡径は、反射光用領域に入射した光を散乱させることが可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.5μm〜2.0μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.5μm〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。気泡の泡径が上記範囲よりも大きいと、透明樹脂部を所望の大きさに形成することが困難となり、一方、気泡の泡径が上記範囲よりも小さいと、光の波長によっては光散乱効果が得られない場合があるからである。
【0083】
また、内部に空隙を有する透明樹脂部の空隙率は、反射光用領域に入射した光を散乱させることが可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、5%〜42%の範囲内であることが好ましく、中でも10%〜21%の範囲内であることが好ましい。空隙率が上記範囲よりも大きいと、透明樹脂部を所望の大きさに形成することが困難となり、一方、空隙率が上記範囲よりも小さいと、光の波長によっては光散乱効果が得られない場合があるからである。
【0084】
なお、内部に気泡を有する透明樹脂部の空隙率および厚みは、相互に調整することにより、必要な光散乱効果を実現するものであるため、例えば、空隙率の範囲外であっても、厚みを調整することにより必要な光散乱効果が得られる場合もある。したがって、上記空隙率の範囲および厚みの範囲は、多少異なる場合がある。
【0085】
また、透明樹脂部の内部に形成される気泡と、透明樹脂部を構成する樹脂との屈折率差は、光散乱機能を得るのに充分な程度であれば特に限定されるものではないが、0.1以上であることが好ましく、中でも0.2以上、特に0.3以上であることが好ましい。屈折率差を上記範囲とすることにより、気泡内へ入射した光が気泡外へ出射する際に種々の方向へ屈折させることができ、充分な光散乱効果を得ることができるからである。気泡内部に存在する気体の屈折率を考慮すると、気泡の屈折率は約1.0であるため、容易に屈折率差を上記範囲とすることができる。
【0086】
透明基板上に塗布した透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物をパターン露光する方法および現像する方法としては、透明基板上に透明樹脂部をパターン状に形成することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なフォトリソグラフィー法におけるパターン露光および現像と同様とすることができる。
【0087】
本発明においては透明樹脂部表面が露出するように着色層を形成するので、透明樹脂部の厚みとしては、着色層の厚み以上であることが好ましく、通常は着色層の厚みと同程度とされる。また、光散乱性微粒子を含有する透明樹脂部形成用感光性樹脂組成物を用いる場合、および、透明樹脂部の内部に気泡を形成する場合には、透明樹脂部の厚みは、光散乱機能を得ることが可能な厚みとされる。具体的に、透明樹脂部の厚みは、1μm〜4μmの範囲内であることが好ましく、中でも1.5μm〜3μmの範囲内、特に2.0μm〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0088】
本工程においては、図7に例示するように透明樹脂部3の断面を逆テーパー状に形成する、あるいは、図1(c)に例示するように透明樹脂部3の断面を矩形状に形成することが好ましい。一般的に半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおいては、スルーホールの断面の形状を逆テーパー状または矩形状とするからである。露光条件および現像条件等を適宜調整することによって、透明樹脂部の断面を逆テーパー状または矩形状に形成することが可能である。本発明において、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行う場合には、図8に例示するようにスルーホール6の断面形状を逆テーパー状としたり、図5(d)に例示するようにスルーホール6の断面形状を矩形状としたりすることができる。
【0089】
また、透明樹脂部の形状としては、例えば、円柱状、角柱状等とすることができる。すなわち、透明樹脂部の平面形状としては、円形状、矩形状等とすることができる。具体的には、図9に示すような平面形状とすることができる。露光条件および現像条件等を適宜調整することによって、透明樹脂部の平面形状を種々の形状とすることが可能である。
【0090】
さらに、透明樹脂部の配列としては、特に限定されるものではなく、図9(a)および(b)に例示するように透明樹脂部3がドット状に設けられていてもよく、図9(c)に例示するように透明樹脂部3がストライプ状に設けられていてもよい。また、図9(a)〜(c)に例示するように透明樹脂部3が規則的に配列されていてもよく、図9(d)に例示するように透明樹脂部3がランダムに配列されていてもよい。
【0091】
また、バンクで仕切られた1つの領域内に形成される透明樹脂部の数としては、特に限定されるものではなく、1個であってもよく複数個であってもよい。
【0092】
本発明においては、透明基板上に透明樹脂部がパターン状に形成されている領域を反射光用領域として用いることから、透明樹脂部の面積を調整することによって反射光用領域における色特性を調整することができる。
透明樹脂部の面積は、バンクで仕切られた領域の面積や、目的とする反射光用領域の色特性等に応じて適宜選択されるものであるが、バンクで仕切られた1つの領域の面積を100%とすると、バンクで仕切られた1つの領域内に形成された透明樹脂部の面積の総和が5%〜35%程度であることが好ましい。
【0093】
3.着色層形成工程
本発明における着色層形成工程は、上記透明基板上の上記バンクで仕切られた領域内に、上記透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成する工程である。
【0094】
着色層形成用組成物としては、一般的なカラーフィルタの着色層の形成に用いられるものと同様とすることができ、例えば、顔料、バインダおよび添加剤等を含有するものが用いられる。
【0095】
透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出する方法としては、例えば、透明樹脂部の厚みを形成される着色層の厚みよりも高くする方法、撥液性を有する透明樹脂部を形成する方法、着色層形成用組成物の吐出量を調整する方法などを挙げることができる。
【0096】
着色層の形成方法としては、透明基板上のバンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成することができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0097】
着色層のパターンとしては特に限定されるものではなく、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三色の着色部が、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列に形成されたもの等とすることができ、着色面積は任意に設定することができる。
【0098】
本工程においては、着色層形成用組成物の吐出後に、着色層および透明樹脂部を加熱するポストベークを行ってもよい。本発明においては、透明樹脂部の形成に熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物を用いる場合であって、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行う場合には、着色層および透明樹脂部のポストベークを行うことが好ましい。透明樹脂部を加熱することにより、透明樹脂部をアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化させることができるからである。したがって、透明樹脂部剥離工程にて、アルカリ系剥離液を用いて透明樹脂部を容易に剥離することができる。
【0099】
着色層および透明樹脂部のポストベークを行う際の加熱条件等は、特に限定されるものではなく、一般的な半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法におけるポストベーク(焼成)の条件と同様とすることができる。
【0100】
本発明において、着色層形成工程後に透明樹脂部剥離工程を行う場合には、ポストベークの際の加熱温度は、透明樹脂部をアルカリ可溶性に変化させることができる温度であれば特に限定されるものではないが、具体的には150℃〜250℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは180℃〜230℃の範囲内、さらに好ましくは200℃〜230℃の範囲内である。
また、上記の場合、ポストベークの際の加熱時間は、透明樹脂部をアルカリ可溶性に変化させることが可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には10分以上であることが好ましく、より好ましくは20分〜1時間の範囲内、さらに好ましくは20分〜30分の範囲内である。
【0101】
着色層の厚みとしては、1.0μm〜6.0μmの範囲内であることが好ましく、中でも1.5μm〜5.0μmの範囲内、特に1.5μm〜3.0μmの範囲内であることが好ましい。
【0102】
4.透明樹脂部剥離工程
本発明においては、上記着色層形成工程後、アルカリ系剥離液を用いて上記透明樹脂部を剥離する透明樹脂部剥離工程を有することが好ましい。透明樹脂部剥離工程を行う場合には、着色層にスルーホールを形成することができる。これにより、反射光用領域の輝度をより高めることができる。
透明樹脂部剥離工程を行う場合には、上述したように、透明樹脂部形成工程にて、熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物を用いることが好ましい。熱分解性を有する光架橋性樹脂組成物を用いる場合には、光架橋性樹脂組成物を光架橋させて得られる光硬化物を加熱することによって分解させることができ、光硬化物をアルカリ系剥離液に対して膨潤しやすくすることができる。その結果、アルカリ系剥離液を用いて透明樹脂部を容易に剥離することが可能となる。着色層に影響を及ぼすことなく、透明樹脂部のみを剥離することができるのである。
【0103】
また、バンク形成工程にて、バンクとして透明樹脂部と同一の材料から構成される透明樹脂バンクを形成した場合には、本工程において、透明樹脂部と同時に透明樹脂バンクも剥離することができる。
【0104】
本工程にて用いられるアルカリ系剥離液としては、透明樹脂部を剥離することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。また、アルカリ性水溶液は、有機アミンや有機溶剤等を含有していてもよい。
【0105】
透明樹脂部の剥離方法としては、例えば、アルカリ系剥離液を用いた、浸漬法、スプレー法等が挙げられる。
【0106】
5.その他の工程
本発明の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法は、上述の工程以外にも、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタを製造する際に、通常行われる工程を有していてもよい。このような工程としては、例えば、着色層上に保護層を形成する保護層形成工程等を挙げることができる。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0108】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(撥液性のバンク・透明樹脂部の形成)
基材として、300mm×400mm、厚さ0.5mmの無アルカリガラス基板を準備した。このガラス基板を定法にしたがって洗浄し、ガラス基板の片側にスパッタ法によりクロム薄膜(厚み1600Å)を形成した。このクロム薄膜上にポジ型感光性レジスト(東京応化工業(株)製OFPR−800)を塗布し、所定のマスクを介して露光し、レジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとしてクロム薄膜をエッチングし、線幅20μmの遮光部を形成した。
【0109】
この基板上に感光性樹脂材料(JSR(株)製NN780)を塗布し、透明樹脂バンクと透明樹脂部の設計パターンを含むフォトマスクを介して露光、アルカリ現像、焼成硬化を実施した。これによりバンクおよび透明樹脂部の形成が完了した。
更に、透明樹脂バンクおよび透明樹脂部に下記の条件で大気圧プラズマを照射した。
<大気圧プラズマ照射条件>
・導入ガス:CF 15(l/min.)
・電極と基板の間隔:2mm
・電源出力:200V−5A
【0110】
(着色層形成工程)
<着色層形成用組成物の調製>
着色層形成用組成物として、顔料5重量部、溶剤20重量部、重合開始剤5重量部、UV硬化樹脂70重量部を含むRGB各色のUV硬化型多官能アクリレートモノマーインクを用いた。ここで、赤色、緑色、および青色の各インクについて、溶剤としてはポリエチレングリコールモノメチルエチルアセテート、重合開始剤としてはイルガキュア369(商品名、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)、UV硬化樹脂としてはDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)を用いた。また、顔料としては、赤色インクについてはC.I.Pigment Red 177、緑色インクについてはC.I.Pigment Green 36+C.I.Pigment Yellow 150、青色インクについてはC.I.Pigment Blue 15+C.I.Pigment Violet 23をそれぞれ用いた。
【0111】
<着色層の形成>
上記赤色着色層形成用組成物(上記赤色インク)をインクジェット装置を用いて、赤色画素部形成領域に塗布し、これにUV処理を行い硬化させて赤色着色層を形成した。
次に、上記緑色着色層形成用組成物(上記緑色インク)を、インクジェット装置を用いて、緑色画素部形成領域に塗布し、これにUV処理を行い硬化させて、緑色着色層を形成した。さらに、上記青色着色層形成用組成物(上記青色インク)を、インクジェット装置を用いて、青色画素部形成領域に塗布し、これにUV処理を行い硬化させて、青色着色層を形成した。
これによりバンク、透明樹脂部以外の部分に所望の着色層を形成することが出来た。
【符号の説明】
【0112】
1 … 透明基板
2 … バンク
3 … 透明樹脂部
4 … バンクで仕切られた領域
5 … 着色層
5R … 赤色着色部
5G … 緑色着色部
5B … 青色着色部
6 … スルーホール
r … 反射光用領域
t … 透過光用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に着色層のパターンを仕切るためのバンクを形成するバンク形成工程と、
前記透明基板上の前記バンクで仕切られた領域内に、透明樹脂部をパターン状に形成する透明樹脂部形成工程と、
前記透明基板上の前記バンクで仕切られた領域内に、前記透明樹脂部表面が露出するように、着色層形成用組成物をインクジェット法により吐出して着色層をパターン状に形成する着色層形成工程と
を有することを特徴とする半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記バンク形成工程にて、前記バンクとして遮光部を形成することを特徴とする請求項1に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記透明樹脂部形成工程にて、前記透明樹脂部の断面を逆テーパー状または矩形状に形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半透過型液晶表示装置用カラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−276970(P2010−276970A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130994(P2009−130994)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】