卓球用ラバー
【課題】打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は卓球用ラバーであって、スポンジ状シートと、スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体のスポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下であることを特徴とする。本発明の卓球用ラバーによれば、打球のエネルギーロスを抑えることができるので、スピード性能およびスピン性能を高めることができ、また、打球のコントロール性能も改善することができる。
【解決手段】本発明は卓球用ラバーであって、スポンジ状シートと、スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体のスポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下であることを特徴とする。本発明の卓球用ラバーによれば、打球のエネルギーロスを抑えることができるので、スピード性能およびスピン性能を高めることができ、また、打球のコントロール性能も改善することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓球用ラケット本体に貼着されて使用される卓球用ラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
卓球用ラバーは、一般に、スポンジ状シートと、このスポンジ状シートに接着されるラバーシートとから構成されている。卓球ラケットにおいて、卓球用ラバーは、その打球性能について大きなウェイトを占めている。
【0003】
具体的には、卓球用ラバーに対して、スピード性能(より速いスピードの打球をすることができる性能)、スピン性能(プレーヤーがボールに対しスピンをかけやすい性能)、およびコントロール性能(選手が意図した方向にボールをより確実に打つことができる性能)の向上が求められている。
そのため、これらの性能向上を図ることを目的として構成部材やその表面形状などが異なる複数種類のラバーが提案されており、その1つとして所謂裏ソフトラバーが知られている。
【0004】
裏ソフトラバーは、スポンジ状シートと、当該スポンジ状シートに積層されるラバーシートによって構成されており、ラバーシートのスポンジ状シートとの貼着面には複数の突起が形成されている。裏ソフトラバーにおいては、打球面を平面とすることでボールとの接地面積を大きくすることによりスピン性能を高めているとともに、突起をスポンジ状シートに食い込ませてラバー全体の圧縮剛性を下げることによりボールとの接地時間も長くして打球に対するコントロール性能を高めている。
【0005】
一方で、裏ソフトラバーにおいてはボール打撃時に突起がスポンジ状シートへ食い込むことにより反発性が低下し、ボールのエネルギーのロスが生じやすい傾向がある。当該エルギーロスはボールスピードの低下を招くため、好ましくない。
そのため、材料となるゴムの性質を調整することによりコントロール性能、スピン性能を高めるとともにスピード性能の改善も図った卓球用ラバーが提案されている。例えば、反発性能に優れている薬品を配合したり、ラバーシートに粘着物質を混ぜることによりスピン性能を向上させた卓球ラバーが従来提案されていた。
また、ラバーシートの突起形状を変更したりすることによりスピード性能を向上させた卓球ラバーも従来提案されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】TABLE TENNIS GOODS 2011 CATALOG、4〜11ページ、株式会社タマス 発行、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「スレイバー」、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「テナジー・05」、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「タキネス・C」、2011年3月
【0007】
しかし、このような技術を用いたラバーの性能向上は限界近くに達しており、さらには品質(製品歩留まり)との両立が難しく、新しい性能向上の技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、スポンジ状シートと、前記スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体の前記スポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下である卓球用ラバーである。当該ラバーシート本体の積層方向における厚さは、0.20〜0.60mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の卓球用ラバーが貼着された卓球ラケットの斜視図である。
【図2】本実施形態の卓球用ラバーの積層方向における断面図である。
【図3】本実施形態の卓球用ラバーに係るラバーシートの、積層方向における断面図である。
【図4】実施例1〜6および比較例1の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図5】実施例1〜6および比較例1の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図6】実施例7〜10および比較例2の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図7】実施例7〜10および比較例2の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図8】実施例11〜14および比較例3の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図9】実施例11〜14および比較例3の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図10】実施例15〜17および比較例4の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図11】実施例15〜17および比較例4の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図12】実施例18〜20および比較例5の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図13】実施例18〜20および比較例5の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図14】実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図15】実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図16】実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図17】実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図18】実施例27〜54の卓球用ラバーの、突起形状、ラバーシート配合、およびスポンジ状シートを示す表である。
【図19】実施例27〜54の卓球用ラバーの強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の1つについて、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る卓球ラケット100の斜視図である。図1に示すように、卓球ラケット100は、ブレード10(卓球ラケット本体)に卓球用ラバー20が貼着されて構成されている。
ブレード10は木製であり、当該ブレードの使用時における握持部分にはグリップ14が接着剤で固定されている。なお、本実施形態におけるブレードの形状は、両面打球用のシェークハンドタイプを示すものであるが、これに限定されるものではなく、ペンホルダータイプとしてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態の卓球用ラバー20の積層方向の断面図である。本実施形態の卓球用ラバー20は、所謂裏ソフトラバーであり、スポンジ状シート22と、ラバーシート24とを有する構成である。スポンジ状シート22とラバーシート24とは積層、貼着されて一体化されている。また、ラバーシート24のスポンジ状シート22との貼着面には所定の間隔を空けて配置された複数の突起26が形成されている。当該突起の頂部26Aはスポンジ状シート22と対向して接しており、当該突起の頂部26Aにおいてラバーシート24がスポンジ状シート22と接合されている。
なお、本明細書においては、ラバーシート24の突起26を除いた領域をラバーシート本体23と称す。
卓球用ラバー20は、スポンジ状シート22側の面33においてラケット本体10と貼り合わされる。また、ラバーシート24の側の面35がボールの打球面として使用される。
【0014】
スポンジ状シート22に加えられるゴムとしては、特に限定されず、通常の天然ゴムの他、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどを用いて製造することが好ましく、配合される薬品なども当業者が適宜選択できる。スポンジ状シートが有する性質は特に限定されないが、例えば密度0.1〜0.7g/cm、硬度10〜70(高分子計器株式会社製の「アスカーゴム硬度計E型」で測定)、気泡径0.03〜0.50mm、とすることができる。なお、密度は重量と体積を測定し、「重量÷体積」で算出した。硬度の測定方法は規格番号JIS K 6253に準拠する。
【0015】
また、ラバーシート24も同様に、加えられるゴムとしては、特に限定されず、通常の天然ゴムの他、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどを用いて製造することが好ましく、配合される薬品なども当業者が適宜選択できる。ラバーシート24が有する性質についても特に限定されないが、例えば密度0.6〜3.0g/cm(メトラー・トレド社製「Excellence XS分析天びん」を用いて重量を測定し、「重量÷体積」で算出)、硬度20〜65(ラバーシートを高分子計器株式会社製の「マイクロゴム硬度計MD−1 タイプA」で測定)、とすることができる。
この硬度計の荷重方法は片持ばり形板ばねを用いており、0〜100ポイントまで示すことができる。ばね荷重は0ポイント時で22mN、100ポイント時で332mNを表し、押針寸法は直径0.16mm、高さ0.5mmの円柱型をしている。本実施形態において例示される硬度20〜65との範囲は、例えば、ばね荷重で84.4mN〜224.8mNと表すこともできる。
【0016】
図3は、本実施形態の卓球用ラバー20に係るラバーシート24の、図2において破線mで囲む領域を示す図である。
ここで、本実施形態において、ラバーシート本体23の積層方向における厚さX(以下、単に厚さXと称す)は0.60mm以下(すなわち、0<X≦0.60(mm))である。ラバーの強度も考慮すると、厚さXは好ましくは0.20〜0.60mmであり、0.30〜0.60mmであることがより一層好ましい。
【0017】
本発明者は、鋭意研究の結果、厚さXを0.60mm以下とすることで、打球時のボールのエネルギーロスを小さくすることができることを明らかにした。
このようにエネルギーロスを小さくすることができることで、厚さXを0.60mmより大きくした場合よりもボールのスピードを高くすることができる。さらに、ボールのエネルギーロスが小さい方がスピン性能も高いため、厚さXを0.60mm以下とすることで、スピンがかけやすくなる。
加えて本発明者は、厚さXを0.60mm以下とすることで、同一の角度でラケットに当たったボールが同じ方向に飛ぶ可能性(飛球方向の安定性)が高くなることを明らかにした。これにより、厚さXが0.60mmより大きい場合よりも、コントロール性能も改善することができる。
【0018】
また、本実施形態においては、厚さXが0.20〜0.60mm(より好ましくは0.30〜0.60mm)であり、且つ厚さXのラバーシート全体の厚さTに占める割合(X/T)が0.15〜0.40(さらに好ましくは0.15〜0.38、よりさらに好ましくは0.15〜0.36である。また、0.15〜0.36の場合から一層好ましくは0.20〜0.36であり、さらに一層好ましくは0.24〜0.33である。)であることが好ましい。厚さXが0.2〜0.60mmであり、X/Tを0.15〜0.40の範囲内とすることで、強度を備え、さらにエネルギーロスを小さくでき、また、飛球方向の安定性もさらに高めることができる。 なお、ラバーシート全体の厚さTは特に限定されず当業者が適宜設定することができるが、例えば1.0〜1.9mmとすることができる。
【0019】
厚さXやラバーシート全体の厚さTを調整する方法は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、例えば、金型変更により行うことができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により、本実施形態の卓球用ラバーについてより詳細に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【0021】
(1)打球のスピード、スピン性能、およびコントロール性能に関する評価
表2に示す配合の材料を用いて、8インチミキシングロールおよび加硫プレスで成形することにより以下の表1に示す形状を有するラバーシートを製造した。作製は以下のようにして行った。
まず、金型を152℃に加熱し、材料を金型内部に仕込み、10MPaに加圧した。その後、471秒圧力をかけ続けた後、ラバーシートを金型から取り出し、ラバーシートを得た。
なお、後述する参考例18〜21においては加圧する時間を543秒とした他は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。また、同様に、後述する参考例22〜25についても、加圧する時間を389秒とした他は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。その他の参考例は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。
【0022】
なお、密度はメトラー・トレド社製「Excellence XS分析天びん」を用いて重量を測定し、「重量÷体積」で算出した。
また、硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1 タイプAを用いて測定した。当該マイクロゴム硬度計MD−1 タイプAの構成を以下に示す。
センサ部
荷重方式:片持ばり形板バネ、ばね荷重:0ポイント/2.24gf。100ポイント/33.85gf、ばね荷重誤差:±0.32gf、押針寸法:直径:0.16mm円柱形。 高さ0.5mm、変位検出方式:歪ゲージ式、加圧脚寸法:外径4mm 内径1.5mm
センサ駆動部
駆動方式:ステッピングモータによる上下駆動。エアダンパによる降下速度制御、上下動ストローク:12mm、降下速度:10〜30mm/sec、高さ調整範囲:0〜67mm(試料テーブルとセンサ加圧面の距離)
試料台
試料台寸法:直径 80mm、微動機構:XYテーブルおよびマイクロメータヘッドによる微動。ストローク:X軸、Y軸とも15mm、レベル調整器:レベル調整用本体脚および丸型水準器
ラバーシート硬度の測定方法は以下のようにして行った。
まず、両面テープを用いて、XYテーブルに突起を下にしたラバーシートを接着した。次に、押針のラバーシートへの接触位置がいずれかの突起の中心付近になるように、マイクロメータヘッドでラバーシートの位置を調整し、測定を行った。続いて、マイクロメータヘッドでラバーシートを左右前後に動かして押針のラバーシートへの接触位置を微調整した後、再度の測定を行った。一番高い結果が得られるまで、測定と微調整を繰り返し、一番高い測定値を、そのラバーシートの硬度とした。
また、測定は室温(23℃)で行った。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
参考例1〜7のラバーシートに天然ゴム由来のスポンジ状シート1を貼り合わせ、実施例1〜6、および比較例1の卓球用ラバーを製造した。当該卓球用ラバーを用いて、打球のスピード、スピン性能、およびコントロール性能について評価を行った。
【0026】
具体的には以下の手順に従い評価を行った。
まず、45度の傾斜を有するように傾けた台にラバーを両面テープを用いて貼り付けた。次いで、卓球用マシーンを用いて、ラバーに向かって卓球用ボール(メーカー:バタフライ 品名:スリースターボール40)を発射した。このとき、ボールの速度は7.5m/s、回転数は61rpmに設定した。そして、ボールがラバーに当たる直前から直後(具体的には、衝突前後10ms)まで、カメラ(メーカー:株式会社ナックイメージテクノロジー 品名:MEMRECAM fx K4)で撮影した。
撮影した映像を解析ソフト(メーカー:株式会社ナックイメージテクノロジー ソフト:LAA計測)を用いて、ラバーに当たる直前直後のボールの速度と回転数を計算した。さらに、得られた直前直後のボールの速度と回転数から、実施例、比較例の卓球用ラバーの打球の「エネルギー効率」、「打球方向」を計算した。結果を図4および図5に示す。なお、図4および図5においては、各実施例および比較例について3回の撮影結果からそれぞれ「エネルギー効率」、「打球方向」を算出し、その平均を示している。
【0027】
なお、測定されたエネルギー効率とは打球の威力を表す値であり、当該値が大きいほど打球の前後でボールのエネルギーロスが小さいことを意味している。
エネルギーロスが小さいとき、打球前のボールのスピードエネルギーや回転エネルギーを効率よく伝えられるので、打球のスピードが速くなる。その結果、例えば、速いドライブやスマッシュを打ちやすくなる。
また、エネルギーロスが小さいとき、打球前のボールのスピードや回転のエネルギーを効率よく伝えられるとなるので、スピン性能も向上する。その結果、例えば、回転のかかったドライブ・カット・サービスが打ちやすくなる。
エネルギー効率は、以下の式に基づき算出される。
【0028】
【0029】
また、打球方向については、卓球用ラバーのコントロール性能を示す値であり、その値が高くなるほど打球が同じ方向に飛んでいることを意味している。したがって、当該値が高くなるほど同一の角度でラケットに当たったボールが同じ方向に飛ぶ可能性が高くなり、プレーヤーがボールを意図する方向に安定して飛ばすことができることを意味する。その結果、例えば、弧線を描いた打球が打ちやすくなり、ラリー中のミスを減らすことができる。
打球方向については以下の式に基づき算出される。
【0030】
【0031】
図4および図5から、厚さXを0.60mm以下とすることで、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0032】
次に、参考例1のラバーシートと同じ材料を用いて以下の表3に示すような形状(参考例1とは突起の形状が異なる)を有するラバーシートを製造するとともに、当該参考例のラバーシートを天然ゴム由来のスポンジ状シート1に貼り合わせ、実施例および比較例の卓球用ラバーを製造した。
当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図6〜9に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
図6〜9から、ラバーシートに形成される突起の形状に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.60mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0035】
続いて、表4に示す配合の材料を用いて、参考例1のラバーシートと同様の方法で以下の表5に示す形状のラバーシートを製造した。なお、形状において、以下の表5に示す参考例と参考例1とではラバーシート本体の厚さXおよびラバーシート全体の厚さTのみ異なる。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
当該表5に示した参考例のラバーシートを天然ゴム由来のスポンジ状シート1に貼り合わせ、実施例および比較例の卓球用ラバーを製造した。当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図10および図11に示す。
【0039】
図10および図11から、ラバーシートの配合に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0040】
参考例1のラバーシートと同様の方法で以下の表6に示す形状のラバーシートを製造した。なお、形状において、以下の表6に示す参考例と参考例1とではラバーシート本体の厚さXおよびラバーシート全体の厚さTのみ異なる。
【0041】
【表6】
【0042】
当該表6に示した参考例26〜29のラバーシートをスポンジ状シート2に貼り合わせ、実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーを製造した。また、当該表6に示した参考例30〜33のラバーシートをスポンジ状シート3に貼り合わせ、実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーを製造した。
当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図14〜17に示す。
【0043】
【表7】
【0044】
図14〜17から、卓球用ラバー製造の際にラバーシートと貼り合わされるスポンジシートの性質に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0045】
(2)卓球用ラバーの強度に関する評価
続いて、本実施形態の卓球用ラバーについて、強度についての評価を行った。
【0046】
具体的には以下の手順に従い評価を行った。
まず、表面にゴムロールの付いたアルミ製のレールを、30度の傾斜を有するように配置した。当該レールの基部には鉄製の衝突板が設けられており、当該衝突板に実施例または比較例の卓球用ラバーを両面テープで貼り付けたアクリル板を配置した。
続いて、卓球用ラバーを基準にレール長さ95cmの位置から285gの鉄球(直径40mm)を落下させてラバーと衝突させた。当該操作を繰り返し、ラバー表面に異常(具体的には、ラバーシートの破れ)が出るまでの回数をカウントした。
【0047】
なお、強度の評価に用いた実施例のラバーシート形状、配合、およびスポンジ状シートを図18にまとめて示す。
図18において、形状1とは参考例1と同様の突起形状(突起高さA、突起間隔B、突起基部幅C、および突起高さH)を有することを意味している。また、形状2とは参考例8と同様の突起形状を、形状3とは参考例13と同様の突起形状を意味している。
また、配合1とは参考例1と同様の材料を用いて製造されていることを意味している。また、配合2とは参考例18と同様の材料を、配合3とは参考例22と同様の材料を意味している。
さらに、スポンジ1とは実施例1で用いられたものと同じスポンジ状シート1を意味している。同様に、スポンジ2とは実施例21で用いられたものと同じスポンジ状シート2を、スポンジ3とは実施例24で用いられたものと同じスポンジ状シート3を意味している。
【0048】
結果を図19に示す。なお、各実施例について当該試験を8枚ずつ行い、その衝突回数の平均値を各実施例の強度として表している。
通常使用の観点から、当該試験において衝突回数が5回以上となる程度の強度を有することで、破壊の恐れが少なくなるため、好ましい。また、当該試験における衝突回数が多いほど、破壊の恐れがさらに少なくなるため、より好ましい。図19から理解されるように、厚さXを0.3mm以上とすることで、いずれの構成においても衝突回数が5回以上となる強度を有することが確認できた。
【0049】
以上、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下(0<X≦0.6(mm))とすることで、打球のエネルギーロスを抑えることができ、また、同じ角度で当たったボールが同じ方向に飛びやすくなる。そのため、本実施形態によれば、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ブレード
20 卓球用ラバー
22 スポンジ状シート
23 ラバーシート本体
24 ラバーシート
26 突起
100 卓球ラケット
X 積層方向におけるラバーシート本体の厚さ
T 積層方向におけるラバーシート全体の厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、卓球用ラケット本体に貼着されて使用される卓球用ラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
卓球用ラバーは、一般に、スポンジ状シートと、このスポンジ状シートに接着されるラバーシートとから構成されている。卓球ラケットにおいて、卓球用ラバーは、その打球性能について大きなウェイトを占めている。
【0003】
具体的には、卓球用ラバーに対して、スピード性能(より速いスピードの打球をすることができる性能)、スピン性能(プレーヤーがボールに対しスピンをかけやすい性能)、およびコントロール性能(選手が意図した方向にボールをより確実に打つことができる性能)の向上が求められている。
そのため、これらの性能向上を図ることを目的として構成部材やその表面形状などが異なる複数種類のラバーが提案されており、その1つとして所謂裏ソフトラバーが知られている。
【0004】
裏ソフトラバーは、スポンジ状シートと、当該スポンジ状シートに積層されるラバーシートによって構成されており、ラバーシートのスポンジ状シートとの貼着面には複数の突起が形成されている。裏ソフトラバーにおいては、打球面を平面とすることでボールとの接地面積を大きくすることによりスピン性能を高めているとともに、突起をスポンジ状シートに食い込ませてラバー全体の圧縮剛性を下げることによりボールとの接地時間も長くして打球に対するコントロール性能を高めている。
【0005】
一方で、裏ソフトラバーにおいてはボール打撃時に突起がスポンジ状シートへ食い込むことにより反発性が低下し、ボールのエネルギーのロスが生じやすい傾向がある。当該エルギーロスはボールスピードの低下を招くため、好ましくない。
そのため、材料となるゴムの性質を調整することによりコントロール性能、スピン性能を高めるとともにスピード性能の改善も図った卓球用ラバーが提案されている。例えば、反発性能に優れている薬品を配合したり、ラバーシートに粘着物質を混ぜることによりスピン性能を向上させた卓球ラバーが従来提案されていた。
また、ラバーシートの突起形状を変更したりすることによりスピード性能を向上させた卓球ラバーも従来提案されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】TABLE TENNIS GOODS 2011 CATALOG、4〜11ページ、株式会社タマス 発行、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「スレイバー」、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「テナジー・05」、株式会社タマス製 卓球用ラバー 「タキネス・C」、2011年3月
【0007】
しかし、このような技術を用いたラバーの性能向上は限界近くに達しており、さらには品質(製品歩留まり)との両立が難しく、新しい性能向上の技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、スポンジ状シートと、前記スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体の前記スポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下である卓球用ラバーである。当該ラバーシート本体の積層方向における厚さは、0.20〜0.60mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の卓球用ラバーが貼着された卓球ラケットの斜視図である。
【図2】本実施形態の卓球用ラバーの積層方向における断面図である。
【図3】本実施形態の卓球用ラバーに係るラバーシートの、積層方向における断面図である。
【図4】実施例1〜6および比較例1の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図5】実施例1〜6および比較例1の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図6】実施例7〜10および比較例2の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図7】実施例7〜10および比較例2の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図8】実施例11〜14および比較例3の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図9】実施例11〜14および比較例3の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図10】実施例15〜17および比較例4の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図11】実施例15〜17および比較例4の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図12】実施例18〜20および比較例5の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図13】実施例18〜20および比較例5の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図14】実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図15】実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図16】実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーのエネルギー効率を示すグラフである。
【図17】実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーの打球方向を示すグラフである。
【図18】実施例27〜54の卓球用ラバーの、突起形状、ラバーシート配合、およびスポンジ状シートを示す表である。
【図19】実施例27〜54の卓球用ラバーの強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の1つについて、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る卓球ラケット100の斜視図である。図1に示すように、卓球ラケット100は、ブレード10(卓球ラケット本体)に卓球用ラバー20が貼着されて構成されている。
ブレード10は木製であり、当該ブレードの使用時における握持部分にはグリップ14が接着剤で固定されている。なお、本実施形態におけるブレードの形状は、両面打球用のシェークハンドタイプを示すものであるが、これに限定されるものではなく、ペンホルダータイプとしてもよい。
【0013】
図2は、本実施形態の卓球用ラバー20の積層方向の断面図である。本実施形態の卓球用ラバー20は、所謂裏ソフトラバーであり、スポンジ状シート22と、ラバーシート24とを有する構成である。スポンジ状シート22とラバーシート24とは積層、貼着されて一体化されている。また、ラバーシート24のスポンジ状シート22との貼着面には所定の間隔を空けて配置された複数の突起26が形成されている。当該突起の頂部26Aはスポンジ状シート22と対向して接しており、当該突起の頂部26Aにおいてラバーシート24がスポンジ状シート22と接合されている。
なお、本明細書においては、ラバーシート24の突起26を除いた領域をラバーシート本体23と称す。
卓球用ラバー20は、スポンジ状シート22側の面33においてラケット本体10と貼り合わされる。また、ラバーシート24の側の面35がボールの打球面として使用される。
【0014】
スポンジ状シート22に加えられるゴムとしては、特に限定されず、通常の天然ゴムの他、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどを用いて製造することが好ましく、配合される薬品なども当業者が適宜選択できる。スポンジ状シートが有する性質は特に限定されないが、例えば密度0.1〜0.7g/cm、硬度10〜70(高分子計器株式会社製の「アスカーゴム硬度計E型」で測定)、気泡径0.03〜0.50mm、とすることができる。なお、密度は重量と体積を測定し、「重量÷体積」で算出した。硬度の測定方法は規格番号JIS K 6253に準拠する。
【0015】
また、ラバーシート24も同様に、加えられるゴムとしては、特に限定されず、通常の天然ゴムの他、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーが例示される。特に、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどを用いて製造することが好ましく、配合される薬品なども当業者が適宜選択できる。ラバーシート24が有する性質についても特に限定されないが、例えば密度0.6〜3.0g/cm(メトラー・トレド社製「Excellence XS分析天びん」を用いて重量を測定し、「重量÷体積」で算出)、硬度20〜65(ラバーシートを高分子計器株式会社製の「マイクロゴム硬度計MD−1 タイプA」で測定)、とすることができる。
この硬度計の荷重方法は片持ばり形板ばねを用いており、0〜100ポイントまで示すことができる。ばね荷重は0ポイント時で22mN、100ポイント時で332mNを表し、押針寸法は直径0.16mm、高さ0.5mmの円柱型をしている。本実施形態において例示される硬度20〜65との範囲は、例えば、ばね荷重で84.4mN〜224.8mNと表すこともできる。
【0016】
図3は、本実施形態の卓球用ラバー20に係るラバーシート24の、図2において破線mで囲む領域を示す図である。
ここで、本実施形態において、ラバーシート本体23の積層方向における厚さX(以下、単に厚さXと称す)は0.60mm以下(すなわち、0<X≦0.60(mm))である。ラバーの強度も考慮すると、厚さXは好ましくは0.20〜0.60mmであり、0.30〜0.60mmであることがより一層好ましい。
【0017】
本発明者は、鋭意研究の結果、厚さXを0.60mm以下とすることで、打球時のボールのエネルギーロスを小さくすることができることを明らかにした。
このようにエネルギーロスを小さくすることができることで、厚さXを0.60mmより大きくした場合よりもボールのスピードを高くすることができる。さらに、ボールのエネルギーロスが小さい方がスピン性能も高いため、厚さXを0.60mm以下とすることで、スピンがかけやすくなる。
加えて本発明者は、厚さXを0.60mm以下とすることで、同一の角度でラケットに当たったボールが同じ方向に飛ぶ可能性(飛球方向の安定性)が高くなることを明らかにした。これにより、厚さXが0.60mmより大きい場合よりも、コントロール性能も改善することができる。
【0018】
また、本実施形態においては、厚さXが0.20〜0.60mm(より好ましくは0.30〜0.60mm)であり、且つ厚さXのラバーシート全体の厚さTに占める割合(X/T)が0.15〜0.40(さらに好ましくは0.15〜0.38、よりさらに好ましくは0.15〜0.36である。また、0.15〜0.36の場合から一層好ましくは0.20〜0.36であり、さらに一層好ましくは0.24〜0.33である。)であることが好ましい。厚さXが0.2〜0.60mmであり、X/Tを0.15〜0.40の範囲内とすることで、強度を備え、さらにエネルギーロスを小さくでき、また、飛球方向の安定性もさらに高めることができる。 なお、ラバーシート全体の厚さTは特に限定されず当業者が適宜設定することができるが、例えば1.0〜1.9mmとすることができる。
【0019】
厚さXやラバーシート全体の厚さTを調整する方法は特に限定されず、当業者が適宜設定することができるが、例えば、金型変更により行うことができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により、本実施形態の卓球用ラバーについてより詳細に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定されるものではない。
【0021】
(1)打球のスピード、スピン性能、およびコントロール性能に関する評価
表2に示す配合の材料を用いて、8インチミキシングロールおよび加硫プレスで成形することにより以下の表1に示す形状を有するラバーシートを製造した。作製は以下のようにして行った。
まず、金型を152℃に加熱し、材料を金型内部に仕込み、10MPaに加圧した。その後、471秒圧力をかけ続けた後、ラバーシートを金型から取り出し、ラバーシートを得た。
なお、後述する参考例18〜21においては加圧する時間を543秒とした他は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。また、同様に、後述する参考例22〜25についても、加圧する時間を389秒とした他は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。その他の参考例は参考例1〜7と同様の方法でラバーシートを製造した。
【0022】
なお、密度はメトラー・トレド社製「Excellence XS分析天びん」を用いて重量を測定し、「重量÷体積」で算出した。
また、硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1 タイプAを用いて測定した。当該マイクロゴム硬度計MD−1 タイプAの構成を以下に示す。
センサ部
荷重方式:片持ばり形板バネ、ばね荷重:0ポイント/2.24gf。100ポイント/33.85gf、ばね荷重誤差:±0.32gf、押針寸法:直径:0.16mm円柱形。 高さ0.5mm、変位検出方式:歪ゲージ式、加圧脚寸法:外径4mm 内径1.5mm
センサ駆動部
駆動方式:ステッピングモータによる上下駆動。エアダンパによる降下速度制御、上下動ストローク:12mm、降下速度:10〜30mm/sec、高さ調整範囲:0〜67mm(試料テーブルとセンサ加圧面の距離)
試料台
試料台寸法:直径 80mm、微動機構:XYテーブルおよびマイクロメータヘッドによる微動。ストローク:X軸、Y軸とも15mm、レベル調整器:レベル調整用本体脚および丸型水準器
ラバーシート硬度の測定方法は以下のようにして行った。
まず、両面テープを用いて、XYテーブルに突起を下にしたラバーシートを接着した。次に、押針のラバーシートへの接触位置がいずれかの突起の中心付近になるように、マイクロメータヘッドでラバーシートの位置を調整し、測定を行った。続いて、マイクロメータヘッドでラバーシートを左右前後に動かして押針のラバーシートへの接触位置を微調整した後、再度の測定を行った。一番高い結果が得られるまで、測定と微調整を繰り返し、一番高い測定値を、そのラバーシートの硬度とした。
また、測定は室温(23℃)で行った。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
参考例1〜7のラバーシートに天然ゴム由来のスポンジ状シート1を貼り合わせ、実施例1〜6、および比較例1の卓球用ラバーを製造した。当該卓球用ラバーを用いて、打球のスピード、スピン性能、およびコントロール性能について評価を行った。
【0026】
具体的には以下の手順に従い評価を行った。
まず、45度の傾斜を有するように傾けた台にラバーを両面テープを用いて貼り付けた。次いで、卓球用マシーンを用いて、ラバーに向かって卓球用ボール(メーカー:バタフライ 品名:スリースターボール40)を発射した。このとき、ボールの速度は7.5m/s、回転数は61rpmに設定した。そして、ボールがラバーに当たる直前から直後(具体的には、衝突前後10ms)まで、カメラ(メーカー:株式会社ナックイメージテクノロジー 品名:MEMRECAM fx K4)で撮影した。
撮影した映像を解析ソフト(メーカー:株式会社ナックイメージテクノロジー ソフト:LAA計測)を用いて、ラバーに当たる直前直後のボールの速度と回転数を計算した。さらに、得られた直前直後のボールの速度と回転数から、実施例、比較例の卓球用ラバーの打球の「エネルギー効率」、「打球方向」を計算した。結果を図4および図5に示す。なお、図4および図5においては、各実施例および比較例について3回の撮影結果からそれぞれ「エネルギー効率」、「打球方向」を算出し、その平均を示している。
【0027】
なお、測定されたエネルギー効率とは打球の威力を表す値であり、当該値が大きいほど打球の前後でボールのエネルギーロスが小さいことを意味している。
エネルギーロスが小さいとき、打球前のボールのスピードエネルギーや回転エネルギーを効率よく伝えられるので、打球のスピードが速くなる。その結果、例えば、速いドライブやスマッシュを打ちやすくなる。
また、エネルギーロスが小さいとき、打球前のボールのスピードや回転のエネルギーを効率よく伝えられるとなるので、スピン性能も向上する。その結果、例えば、回転のかかったドライブ・カット・サービスが打ちやすくなる。
エネルギー効率は、以下の式に基づき算出される。
【0028】
【0029】
また、打球方向については、卓球用ラバーのコントロール性能を示す値であり、その値が高くなるほど打球が同じ方向に飛んでいることを意味している。したがって、当該値が高くなるほど同一の角度でラケットに当たったボールが同じ方向に飛ぶ可能性が高くなり、プレーヤーがボールを意図する方向に安定して飛ばすことができることを意味する。その結果、例えば、弧線を描いた打球が打ちやすくなり、ラリー中のミスを減らすことができる。
打球方向については以下の式に基づき算出される。
【0030】
【0031】
図4および図5から、厚さXを0.60mm以下とすることで、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0032】
次に、参考例1のラバーシートと同じ材料を用いて以下の表3に示すような形状(参考例1とは突起の形状が異なる)を有するラバーシートを製造するとともに、当該参考例のラバーシートを天然ゴム由来のスポンジ状シート1に貼り合わせ、実施例および比較例の卓球用ラバーを製造した。
当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図6〜9に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
図6〜9から、ラバーシートに形成される突起の形状に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.60mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0035】
続いて、表4に示す配合の材料を用いて、参考例1のラバーシートと同様の方法で以下の表5に示す形状のラバーシートを製造した。なお、形状において、以下の表5に示す参考例と参考例1とではラバーシート本体の厚さXおよびラバーシート全体の厚さTのみ異なる。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
当該表5に示した参考例のラバーシートを天然ゴム由来のスポンジ状シート1に貼り合わせ、実施例および比較例の卓球用ラバーを製造した。当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図10および図11に示す。
【0039】
図10および図11から、ラバーシートの配合に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0040】
参考例1のラバーシートと同様の方法で以下の表6に示す形状のラバーシートを製造した。なお、形状において、以下の表6に示す参考例と参考例1とではラバーシート本体の厚さXおよびラバーシート全体の厚さTのみ異なる。
【0041】
【表6】
【0042】
当該表6に示した参考例26〜29のラバーシートをスポンジ状シート2に貼り合わせ、実施例21〜23および比較例6の卓球用ラバーを製造した。また、当該表6に示した参考例30〜33のラバーシートをスポンジ状シート3に貼り合わせ、実施例24〜26および比較例7の卓球用ラバーを製造した。
当該卓球用ラバーについても、同様にエネルギー効率および打球方向の評価を行った。結果を図14〜17に示す。
【0043】
【表7】
【0044】
図14〜17から、卓球用ラバー製造の際にラバーシートと貼り合わされるスポンジシートの性質に拠らず、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下とすることにより、エネルギー効率および打球方向についていずれも大きく向上していることが理解できる。
【0045】
(2)卓球用ラバーの強度に関する評価
続いて、本実施形態の卓球用ラバーについて、強度についての評価を行った。
【0046】
具体的には以下の手順に従い評価を行った。
まず、表面にゴムロールの付いたアルミ製のレールを、30度の傾斜を有するように配置した。当該レールの基部には鉄製の衝突板が設けられており、当該衝突板に実施例または比較例の卓球用ラバーを両面テープで貼り付けたアクリル板を配置した。
続いて、卓球用ラバーを基準にレール長さ95cmの位置から285gの鉄球(直径40mm)を落下させてラバーと衝突させた。当該操作を繰り返し、ラバー表面に異常(具体的には、ラバーシートの破れ)が出るまでの回数をカウントした。
【0047】
なお、強度の評価に用いた実施例のラバーシート形状、配合、およびスポンジ状シートを図18にまとめて示す。
図18において、形状1とは参考例1と同様の突起形状(突起高さA、突起間隔B、突起基部幅C、および突起高さH)を有することを意味している。また、形状2とは参考例8と同様の突起形状を、形状3とは参考例13と同様の突起形状を意味している。
また、配合1とは参考例1と同様の材料を用いて製造されていることを意味している。また、配合2とは参考例18と同様の材料を、配合3とは参考例22と同様の材料を意味している。
さらに、スポンジ1とは実施例1で用いられたものと同じスポンジ状シート1を意味している。同様に、スポンジ2とは実施例21で用いられたものと同じスポンジ状シート2を、スポンジ3とは実施例24で用いられたものと同じスポンジ状シート3を意味している。
【0048】
結果を図19に示す。なお、各実施例について当該試験を8枚ずつ行い、その衝突回数の平均値を各実施例の強度として表している。
通常使用の観点から、当該試験において衝突回数が5回以上となる程度の強度を有することで、破壊の恐れが少なくなるため、好ましい。また、当該試験における衝突回数が多いほど、破壊の恐れがさらに少なくなるため、より好ましい。図19から理解されるように、厚さXを0.3mm以上とすることで、いずれの構成においても衝突回数が5回以上となる強度を有することが確認できた。
【0049】
以上、ラバーシート本体の厚さXを0.6mm以下(0<X≦0.6(mm))とすることで、打球のエネルギーロスを抑えることができ、また、同じ角度で当たったボールが同じ方向に飛びやすくなる。そのため、本実施形態によれば、打球方向をよりコントロールしやすく、スピンをかけやすいとともに、打球のスピードをより高めることができる卓球用ラバーを提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ブレード
20 卓球用ラバー
22 スポンジ状シート
23 ラバーシート本体
24 ラバーシート
26 突起
100 卓球ラケット
X 積層方向におけるラバーシート本体の厚さ
T 積層方向におけるラバーシート全体の厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジ状シートと、
前記スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体の前記スポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下である卓球用ラバー。
【請求項2】
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.20〜0.60mmである請求項1に記載の卓球用ラバー。
【請求項3】
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.30〜0.60mmである請求項1または2に記載の卓球用ラバー。
【請求項4】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.4である請求項2または3に記載の卓球用ラバー。
【請求項5】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.38である請求項2または3に記載の卓球用ラバー。
【請求項6】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.36である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項7】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.20〜0.36である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項8】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.24〜0.33である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の卓球用ラバーがラケット本体に貼着されている卓球ラケット。
【請求項1】
スポンジ状シートと、
前記スポンジ状シートに積層して貼着されており、ラバーシート本体の前記スポンジ状シートとの貼着面に複数の突起が形成されているラバーシートとを備え、
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.60mm以下である卓球用ラバー。
【請求項2】
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.20〜0.60mmである請求項1に記載の卓球用ラバー。
【請求項3】
前記ラバーシート本体の積層方向における厚さが0.30〜0.60mmである請求項1または2に記載の卓球用ラバー。
【請求項4】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.4である請求項2または3に記載の卓球用ラバー。
【請求項5】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.38である請求項2または3に記載の卓球用ラバー。
【請求項6】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.15〜0.36である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項7】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.20〜0.36である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項8】
積層方向における前記ラバーシート本体の厚さの前記ラバーシート全体の厚さに占める割合が0.24〜0.33である請求項4に記載の卓球用ラバー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の卓球用ラバーがラケット本体に貼着されている卓球ラケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−17651(P2013−17651A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153348(P2011−153348)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(390028222)株式会社タマス (7)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(390028222)株式会社タマス (7)
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