説明

単一エネルギガンマ線源による、同位体識別、分析およびイメージングのための二重同位体ノッチ観測機

【解決手段】単一エネルギガンマ線源による、同位体識別、分析およびイメージングのための二重同位体ノッチ観測機は、観測対象の下流に位置する3つの検出器からなる検出器構成を含む。後の検出器は、ビームモニタとして動作する積分型検出器であり、その表面に到達するトータルのビームパワーを監視する。先の検出器および中間の検出器はそれぞれ、ホイルを囲む積分型検出器を含む。これら2つの検出器のホイルは同じ原子の材料により形成されるが、各ホイルは異なる同位体である。例えば、第1ホイルはU235を含んでもよく、第2ホイルはU238を含んでもよい。これらのホイル片を囲む積分型検出器は、ホイルから散乱されるトータルのパワーを測定し、最終ビームモニタと同様な構成を有してもよい。較正後、非共鳴フォトンは両方のホイルから同等に散乱されるであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年9月26日に提出された米国特許出願第11/528182号の一部継続出願である。米国特許出願第11/528182号は参照により本明細書に組み込まれる。米国特許出願第11/528182号は、2005年9月26日に提出された米国仮出願第60/720965号の優先権の利益を享受する。
【0002】
米国政府は、米国エネルギ省とローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシーとの間の契約書番号DE−AC52−07NA27344に従い、本発明の権利を保有する。
【0003】
本発明は、単一エネルギガンマ線(MEGa−rays)を利用するアプリケーションに関し、特に同位体を特徴化するためにMEGa−raysを利用する技術に関する。
【背景技術】
【0004】
MEGa−ray源は、相対論的電子線(数百MeV)からの、高エネルギ(ジュールクラス)で持続時間の短い(数ピコ秒)レーザパルスの放出によって生成される。その結果得られる放出フォトンは細いビーム(典型的にはミリラジアン程度のビームの開き)で前方に向けられ、単一エネルギ的であり、調整可能であり、偏光されている。また、放出フォトンは、1MeVを超えるガンマ線エネルギにおいて、最良のシンクロトロンにより得られるピークフォトン輝度(単位面積当たり、単位帯域幅当たりのフォトン数/秒/単位立体角)を15桁以上上回るピークフォトン輝度を有する。そのようなビームは、特定の同位体の核内の陽子を効率的に励起することができる。これは核共鳴蛍光(NRF)と呼ばれる。NRF共鳴エネルギは核内の陽子および中性子の数の関数であり、したがって同位体ごとの一意なシグネチャとなる。特定の同位体を識別するためにNRFを使用できることが提案されている。MEGa−ray源はこのアプリケーションについて理想的であること、および、MEGa−ray源は同位体の識別を可能とするだけでなく、所与の対象における同位体の量および空間分布を決定するために使用されうること、がさらに提案されている(T−REX/FINDER)。これらのタスクを完遂するため、特定の対象を通過したMEGa−rayビームを解析する。NRF共鳴は狭く、典型的には共鳴エネルギに対して10E−6程度の幅である。例えば、1MeVの共鳴エネルギについて1eV程度の幅である。一方MEGa−ray源はそのキャリアエネルギに対して典型的には10E−3程度の幅である。例えば、1MeVのキャリアエネルギについて1keV程度の幅である。ベールの法則にしたがうと、所与の量(例えばグラム)の共鳴同位体は、MEGa−rayビームから対応する量の共鳴フォトンを取り除く。したがって、対象を通過したMEGa−rayビームにおける共鳴フォトンの欠落の検出または測定を使用することで、物質の存在を決定できるだけでなく、その位置およびその量をも決定することができる。そうするためには、MEGa−rayビームから所望の対象によって取り除かれた共鳴フォトンの数を決定することができる検出器が必要である。既知のガンマ線分光技術は、MeVスペクトル領域では10E−3よりも良い分解能を出すことができないので、そのタスクを完遂することができない。ベルトッティ他(ベルトッティ特許)によって提案されるひとつの方法は、知りたい対象の後に観測下の物質を用い、ビームからのNRF共鳴フォトンの除去を評価することを想像している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的な例を使用してベルトッティの提案をより詳しく考えてみる。例えば渡洋貿易のために使用されるような大きな容器の中に隠されたU235を見つける状況を考える。ベルトッティの提案は特に、制動放射源によって生成されるような多色ガンマ線ビームによる検査に適用される。図1Aを参照すると、ベルトッティの提案では、カーゴ容器12を通過したビーム10は2つの「検出器」に作用する。透過検出器14は、対象および第1検出器16を通過したトータルのガンマ線を測定するエネルギコレクタである。第1検出器16は容器内で探している物質/同位体の片(典型的にはホイル)からなる。すなわち、この例では、ホイルはU235のホイル18である。検出器16内のU235のホイルは、大面積ガンマ線分光計20によって囲まれる。大面積ガンマ線分光計20はU235ホイル18によって散乱されたフォトンのスペクトルを測定する。カーゴ容器の中に数グラムよりも多い量のU235が存在する場合、共鳴フォトンは検査ガンマ線ビームから取り除かれ、U235のホイルを囲むガンマ線分光計は共鳴フォトンを観測しないであろう。図1Bに示されるように、検査ホイルにより散乱される光は、コンプトン散乱されたフォトンやデルブリュックフォトンや種々のエネルギ粒子などの非NRFフォトンおよび粒子22からなるであろう。ビーム10が容器内のU235を伝播しない場合、非NRFフォトンおよび粒子に加えて、散乱光の分光はNRFフォトン24を示すであろう。図2Aは、U235物質32を含むカーゴ容器30を示す。U235物質32は多色ビーム34によって検査される。多色ビーム34はU235線と共鳴する光を含む。図2Bに示されるように、散乱光の分光は非NRFフォトンおよび粒子36のみを示し、したがってNRFフォトンがないことを示し、したがって容器内にU235物質が存在することを示すであろう。この方法は原理的には動作するものの、いくらかの重大な制約を有する。特に、その方法が有効となるためには、散乱されたフォトンのガンマ線分光が要求される。ガンマ線分光は困難であり、ほぼ全ての場合において一度にひとつのガンマ線を収集しそのフォトンのトータルエネルギを解析することによって実現される。時間的に均等に分布するフォトン、例えば制動放射源から来るフォトンを有するビームの場合には、これはうまくいく可能性がある。しかしながら、制動放射源は、その広い帯域幅およびビームの開きのために透過ベースのNRF検出スキームには適していないことが示されている。広い帯域幅およびビームの広がりの両方はNRF検出に要求される条件にはマッチしない(プルート他の論文)。MEGa−rayビームは、その狭い帯域幅および小さなビームの開き(制動放射よりも100倍小さい)のために透過検出に適している。しかしながら、これらの源はその性質上大きなフォトンバーストを生成する。例えば、1秒当たり10回から100回のレートで、パルス当たり10E10程度のフォトンバーストである。MEGa−ray源は単一フォトン計測ベースのガンマ線分光にはマッチしない。
【0006】
ベルトッティの方法の制約を除去する代替的な方法が望まれている。
【0007】
レーザベースの逆コンプトン散乱による単一エネルギガンマ線(MEGa−rays)源によって励起される核共鳴蛍光(NRF)を介した、同位体の効率的な検出、分析およびイメージングを可能にすることが、本発明のひとつの目的である。
【0008】
この目的および他の目的は、本明細書における開示に基づいて明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態によると、単一フォトン計数分光の必要性が、MEGa−rayベースの検出構成により軽減される。図3Aは、観測対象の下流に位置する2つではなく3つの検出器からなる検出器構成を含む本発明の実施の形態を示す。後の検出器はビームモニタとして動作する積分型検出器であり、その表面に到達するトータルのビームパワーを監視する。この透過型検出器は、例えば米国特許出願公開第2006/0188060号に記載されているベルトッティスキームにおける後の検出器と同等のものであってもよく、その出願は参照により本明細書に組み入れられる。先の検出器および中間検出器はそれぞれ、ホイルを囲む積分型検出器を含む。これら2つの検出器のホイルは同じ原子の材料により形成されるが、各ホイルは異なる同位体である。例えば、第1ホイルはU235を含んでもよく、第2ホイルはU238を含んでもよい。これらのホイル片を囲む積分型検出器は、ホイルから散乱されるトータルのパワーを測定し、最終ビームモニタと同様な構成を有してもよい。較正後、非共鳴フォトンは両方のホイルから同等に散乱されるであろう。すなわち、コンプトンやデルブリュックは1次近似では同位体の核子数に依存せず、原子の関数である。図3Bに示されるように、検査対象がU235を有さず検査MEGa−rayビームがU235共鳴遷移に合わされている場合、第1ホイルは非共鳴フォトンに加えて共鳴フォトンも生成して散乱し、したがって第1ホイルからは第2ホイルよりも多くのエネルギが生じるであろう。検査対象の内容を診断するための種々の方法が本明細書で提供され、それらは本発明の範囲内にある。例えば、各ホイルによって散乱されたエネルギの比や各ホイルによって散乱されたエネルギの差を使用して、検査対象内での物質の存在を決定するだけでなく、以下も行える。すなわち、正確な比や差は物質の存在量の関数であり、したがってこの検出構成は量的なアッセイ情報を提供することもできる。ホイルを小さなピクセルに配置することによって、MEGa−rayビームおよびNRFを使用して特定の同位体の位置を高い空間分解能(ミクロン)で決定することもできる。
【0010】
このジェネリックな構成は、10RE−3幅の透過MEGa−rayビームのなかで10E−6幅のノッチの深さを効果的に識別するので、二重同位体ノッチ観測機(DINO)と称される。MEGa−ray源は新しい(まだ数年しか経っていない)ので、だれもDINO的な検出器をどのように作るかについて考える必要はなかった。複数のDINO構成は本発明の範囲内にあり、そのような構成は以下を含むがそれに限定されない。
a)連なるホイル。ここでは、第1ホイルの減衰は較正され、測定の一部として取り入れられる。
b)回転ホイル構成。ここでは、2(またはそれ以上)のホイルが連続MEGa−rayパルスのビーム内に交互に配置される。
c)同位体の複数構成。この構成は、ひとつ以上の同位体を同時に検出し分析するために、二重または多色MEGa−rayビームと共に用いられる。
d)両方のホイルおよびビームモニタからの信号の比により決定される検出および分析。
e)両方のホイルおよびビームモニタからの信号の差により決定される検出および分析。
f)物質の存在および量を決定するために、ビームモニタを使用せず同位体からの散乱のみを使用すること。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は本開示に組み入れられ本開示の一部を形成する。添付の図面は本発明の実施の形態を説明し、詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を有する。
【0012】
【図1A】カーゴ容器を通過したビームが2つの検出器に作用する従来技術に係る構成を示す図である。
【0013】
【図1B】検査ホイルによって散乱された光を示す図である。
【0014】
【図2A】U235物質を含むカーゴ容器を示す図である。U235物質は多色ビームによって検査される。多色ビームはU235線と共鳴する光を含む。
【0015】
【図2B】非NRFフォトンおよび粒子のみを示す散乱光のスペクトルを示す図である。
【0016】
【図3A】ビーム経路上にU235を有さない容器の下流に位置する3つの検出器からなる検出器構成を含む本発明の実施の形態を示す図である。
【0017】
【図3B】検査対象がU235を有さず検査MEGa−rayビームがU235共鳴遷移に合わされている場合、ホイルは非共鳴フォトンに加えて共鳴フォトンも生成して散乱し、したがって第1ホイルからは第2ホイルよりも多くのエネルギが生じることを示す図である。
【0018】
【図4A】ビーム経路上にU235を有する容器の下流に位置する3つの検出器からなる検出器構成を含む本発明の実施の形態を示す図である。
【0019】
【図5】本発明の一例を示す図である。そこでは、テスト対象を出た後、プローブビームはビームモニタリング検出器に伝播する前に、U238ホイルを通過し、次にU235ホイルを通過する。
【0020】
【図6A】単一回転ホイルを使用する実施の形態を示す図である。
【0021】
【図6B】図6Aの回転ホイルの半分2つを示す図である。
【0022】
【図7】有限面積MEGa−rayビームの一部がU235ピースおよびU238を同時に通過する一例を示す図である。
【0023】
【図8】U238物質のピクセルと列になっているU235物質のピクセルを通過伝播する有限面積MEGa−rayビームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図3Aは、ビームの経路上にU235もU238もない本発明の実施の形態を示す。特に、MEGa−rayプローブビーム50はU235NRF線に合わせられている。ビーム50の経路は容器52を通過する際、U235物質ともU238物質とも交差しない。容器52を通過した後、ビーム50は第1ホイル54に伝播してそれを通過する。第1ホイル54は積分型検出器56によって囲まれている。ホイル54を通過した後、ビーム50は第2ホイル58に伝播してそれを通過する。第2ホイル58は積分型検出器60によって囲まれている。ホイル58を通過した後、ビーム50は積分型検出器62に伝播する。ビーム50はU235NRF線に合わせられている一方、容器52を通過する際U235に出会わないので、ビーム50内でU235共鳴フォトンの低減は発生しない。したがって、U235ホイル54は、仮にビーム50が容器52を通じた経路上でU235に出会ったとした場合のNRFよりも多量のNRFを生成する。もし仮にビーム50内の全ての共鳴フォトンが除去されてしまう程度に十分な量のU235が容器52内のビーム50の経路上に存在するとした場合、減衰ロスを考慮した各検出器での信号の規格化の後、ホイル54および58からの非共鳴フォトンおよび散乱の量は1次近似で同じになるであろう。図3Aの例では、容器を通じたビーム経路内にはU235(またはU238)は存在しない。したがって、非共鳴フォトンおよび散乱粒子に加えて、積分型検出器はプローブビーム50とホイル54のU235との相互作用により生成される共鳴を集める。図3Bは、図3Aの例における、積分型検出器56および58によって生成される信号を示す。図4Aの要素は、ビーム50が容器52を通過する際のそのビーム50の経路内にU235物質62が存在するという点を除いた全ての点で、図3Aの要素と同等である。この例では、ビーム50から全ての共鳴フォトンを除去できる程度に十分な量のU235が存在する。したがって、図4Bに示されるように、ホイル54からのU235NRFの生成はない。ホイル54によってU235NRFが全く生成されない場合、ビーム経路内のU235の量を推し量ることはできない。例えば出願番号11/528182(米国特許第7564241号)には、本発明で使用されるMEGa−ray源によって生成されるガンマ線エネルギ(1MeVを超える)の大きさが示されており、その出願は参照により本明細書に組み入れられる。そのガンマ線エネルギの大きさにより、本発明は、容器52を通じたビーム50の経路内にU235が存在しても、ホイル54においてU235NRFを生成することができる。したがって、ホイル54によって生成されるU235NRFの量が、ビーム50が容器54を通じた経路上でU235に出会わない場合に生成される量よりも少ない場合、生成されるU235の量はビーム50の経路におけるその物質の量を示す。さらに、ビーム50の経路を容器52に対して動かすことで、容器52内でのU235物質の2Dおよび3Dの両方のイメージが得られる。2Dおよび3Dイメージを得るための他の技術が以下に説明される。さらに他の技術は、本明細書における説明に基づき、当業者には自明であろう。本発明はU235の存在、アッセイおよびイメージを決定する例を使用するが、本発明は他の物質でのアプリケーションにおいて同じ目的で使用されうる。
【0025】
図5は別の例を示す。そこでは、テスト対象(不図示)を出た後、プローブビーム70はビームモニタリング検出器90に伝播する前に、U238ホイル72を通過し、次にU235ホイル82を通過する。積分型検出器74は断面で示されており、ホイル72の近くに配置されている。積分型検出器74は本例ではホイル82の近くに配置された検出器84と実質的に同様である。積分型検出器74はシンチレータ76および2つの光電子増倍管77および78から形成される。コンプトンシールド79はホイル72とシンチレータ76との間に配置される。
【0026】
図6Aは、上記の二重ホイルでなくむしろ単一回転ホイルを使用する実施の形態を示す。この例では、テスト対象を出た後、MEGa−rayビーム100は回転ホイル102を通過し、積分型検出器106に作用する。積分型検出器104は図5の検出器74および84と同様であり、回転ホイル102の近くに設けられる。図6Bは、回転ホイル102の正面図である。図6Bに示されるように、回転ホイルの半分102’はU235を含み、もう半分102’’はU238を含む。ビーム100は固定レートでパルス化されており、回転ホイル102は、ビーム100のパルスのレートの半分の固定レートで回転する。そのような回転レートでは、ビーム100はあるパルスにおいてU235部分を通過し、次のパルスにおいてビーム100はU238部分を通過するであろう。
【0027】
図7は、有限面積MEGa−rayビーム120の一部がU235ピース122およびU238ピース124を同時に通過する一例を示す図である。U235ピース122を通過するビーム120の部分は積分型検出器126に伝播し、U238ピース124を通過するビーム120の部分は積分型検出器128に伝播する。
【0028】
図8は、U238物質のピクセル151−156と列になっているU235物質のピクセル141−146を通過伝播する有限面積MEGa−rayビーム140を示す図である。このビームは、ビーム直径よりも小さな直径を有するU235物質を完全にカバーするであろう。例えば、ビーム直径140’が1cmでありU235ピース148が0.5cmの直径を有する場合、U235ピース148はビーム140によって完全にカバーされるであろう。U235物質のピクセル141−146およびU238物質のピクセル151−156のそれぞれについてU235NRFならびに非共鳴フォトンおよび粒子を測定するために、個別の積分型検出器(不図示)が配置される。本例では、複数の積分型検出器161−166の個々の積分型検出器は、各ピクセル対を通過するビーム部分を測定するよう配置される。したがって、ピクセル141を通過するビーム140の部分は次にピクセル151を通過し、積分型検出器161に伝播するであろう。ピクセル141−146およびピクセル151−156は2次元アレイとして示されているが、各ピクセルは紙面に垂直に伸びるピクセルアレイの一部であってもよく、その場合3次元ピクセルアレイが生成されることを注意しておく。この例示的な構成は、ビーム140の直径よりも小さなU235のピースの完全な2次元イメージを即座に提供する。そのようなビームをより大きなU235ピースに対して動かすことにより、そのようなピースのイメージを得ることができる。ビームとU235のピースとを相対的に動かすことで、U235の3次元イメージを得ることができる。ビームと、ピクセルアレイに対するそのビームのアライメントと、はひとつのユニットとして一定に保つことができ、ユニット全体を相対的に動かすことで、U235のピースのイメージを得ることができる。
【0029】
本発明の実施の形態において収集されるデータを解析する例示的な方法を理解するために、図3Aから4Bを考える。図3Aにおいて、MEGa−rayはU235NRF線に合わせられ、U235と出会うことなく容器を通過する。もし仮にビームがU235NRF線にもU238NRF線にも合わせられていないとした場合、各積分型検出器によって集められる信号の量はほぼ同じになるであろう。ビームが第1ホイルを伝播通過する際に、吸収や散乱によりいくらかのパワー低減が存在するであろう。したがって、2つの信号は規格化される。そしてビームがU235のNRF線に合わせられる場合、各検出器における信号レベル間の差は、第1ホイルのU235含有物からのNRFによって生成される。この差は容器全体が除去されても変化しない。これはある面では重要である。検出システムをセットアップし位置合わせを行い、それから搬送容器などのターゲットをビーム経路内に入れることができるからである。ビーム経路がU235を有する物質と交差する場合、信号の差はビームが通過するU235の量によって決定されるであろう。この差を対数目盛りに置くことによって、U235ホイルに隣接する積分型検出器によって集められた、U235NRF生成信号の量の小さな変化を明らかにすることができるであろう。これにより、さまざまな正確さの度合いによる、種々のデータ解析方法が可能となる。例えば、単にU235ターゲットとの相互作用の前および最中にU235検出器によって収集された共鳴信号の量を測定することによって、遭遇したU235の量に依存する信号の差が示される。別の例では、上記の通り、測定は、U235ターゲットとの相互作用の前および最中における、U235検出器およびU238検出器によって収集された共鳴信号の量により形成される。まず、信号を種々の方法により規格化することができる。これらの方法は、U238ホイルのU235ホイルへの代入を含み、また、MEGa−rayビームを共鳴から外れるよう調整することを含む。U235共鳴上の2つの信号の差は、遭遇したU235の量に依存する。別の方法では、(i)U235検出信号の第3検出器に対する比と(ii)U238検出信号の第3検出器に対する比との差が決定される。各方法において、結果を対数目盛りで示すことによって、線形目盛りの場合よりもかなり小さな変化を明らかにすることができる。他の信号解析方法はこれらの例に基づいて当業者には明らかとなるであろう。
【0030】
本発明の変形例および使用例は当業者には明らかであろう。例えば、本明細書で開示された技術は開示された物質以外の物質についても使用されうる。積分型検出器の他の構成もまた、本発明の範囲内で用いられうる。本発明の実施の形態は、移動するターゲットの同位体組成を素早く決定するために使用されうる。例えば、ローレンスリバーモアナショナルラボラトリにおけるレーザイナーシャルフュージョン−フィッションエネルギ(LIFE)プロジェクトで使用されてもよいし、ぺベルベッド(pebble bed)リアクタにおいて使用されてもよい。対象が動く場合、本発明の構成は、速度の決定のためにドップラーシフトを測定する際に使用されうる。
【0031】
本発明の上の説明は説明を目的として提示されたものであり、包括的であることを意図したものではなく、また本発明を開示の形態そのものに限定することを意図するものでもない。米国仮出願第60/720965号は参照により本明細書に組み入れられる。上記教示に照らして多くの変形例が可能である。開示された実施の形態は本発明の原理およびその実際への応用を説明することのみを意図しており、それによって、他の当業者は本発明を、特定の期待される使用に適した種々の実施の形態でおよび種々の変形例と共に最も良く使用することができる。本発明の範囲は以下の請求項によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構成と、
前記第1構成からの信号Aを検出するよう配置された第1積分型検出器と、
第2構成と、
前記第2構成からの信号Bを検出するよう配置された第2積分型検出器と、を備え、
前記第1構成および前記第2構成は同じ原子の材料を含み、
前記第1構成は主に第1同位体からなる部分Aを含み、
前記第2構成は主に第2同位体からなる部分Bを含み、
前記第1構成および前記第2構成は単一エネルギガンマ線(MEGa−ray)ビームの少なくともある部分と交差するよう構成される、装置。
【請求項2】
前記単一エネルギガンマ線(MEGa−ray)ビームの少なくともある部分と交差するよう構成された第3積分型検出器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビームを提供するためのMEGa−ray源をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記源は、前記第1同位体または前記第2同位体の一方の核共鳴蛍光(NRF)線で前記ビームを提供するよう構成可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記源は、前記第1構成および前記第2構成を通過して前記第3積分型検出器に入るよう前記ビームを方向付ける、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第1構成は第1ホイルを含み、前記第2構成は第2ホイルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1構成はディスクの第1部分として形成され、前記第2構成は前記ディスクの第2部分として形成され、
前記装置はさらに、前記ディスクを回転させる手段を備え、
前記ビームは、前記第1部分および前記第2部分を異なる時に通過することができる、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記第1同位体はU235からなり、前記第2同位体はU238からなる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記信号Aはフォトンおよび散乱からなる第1グループから選択され、前記信号Bはフォトンおよび散乱からなる第2グループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記源は、少なくとも1MeVのエネルギを有するMEGa−rayを生成することができる、請求項3に記載の装置。
【請求項11】
前記ビームと、前記第1構成または前記第2構成の少なくとも一方と、の間の相対運動を提供するための手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1積分型検出器および前記第2積分型検出器のそれぞれは、シンチレータと、少なくともひとつの光電子増倍管と、コンプトンシールドと、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1構成は、第1ピクセルグループとして配列された複数の第1構成のうちのひとつであり、前記第2構成は、第2ピクセルグループとして配列された複数の第2構成のうちのひとつであり、前記第3積分型検出器は、複数の第3積分型検出器のうちのひとつである、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
前記第1ピクセルグループ、前記第2ピクセルグループおよび前記複数の第3積分型検出器のそれぞれは、1次元アレイおよび2次元アレイからなるグループから選択されたアレイに構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1ピクセルグループ、前記第2ピクセルグループおよび前記複数の第3積分型検出器のそれぞれの少なくとも一部は、前記MEGa−rayビームの少なくともある部分と交差するよう構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
(i)同位体の存在、および
(ii)前記同位体の量
のうちの少なくともひとつを決定するために、前記信号A、前記信号Bおよび前記第3積分型検出器からの信号Cのうちの少なくともひとつを解析する手段をさらに備える、請求項2に記載の装置。
【請求項17】
2Dイメージおよび3Dイメージからなるグループから選択されたイメージを生成するために、前記信号A、前記信号Bおよび前記第3積分型検出器からの信号Cのうちの少なくともひとつを解析する手段をさらに備える、請求項2に記載の装置。
【請求項18】
単一エネルギガンマ線(MEGa−ray)ビームと、テスト対象、第1構成および第2構成と、を相互作用させることを含み、
前記第1構成および前記第2構成は同じ原子の材料を含み、
前記第1構成は主に第1同位体からなる部分Aを含み、
前記第2構成は主に第2同位体からなる部分Bを含み、
本方法はさらに、
前記MEGa−rayビームと前記第1構成との相互作用に起因する散乱およびフォトンの第1部分を検出し、信号Aを生成することと、
前記MEGa−rayビームと前記第2構成との相互作用に起因する散乱およびフォトンの第2部分を検出し、信号Bを生成することと、
前記テスト対象が前記第1同位体または前記第2同位体の一方を含むか否かを決定するために、前記信号Aと前記信号Bとを比較することと、を含む方法。
【請求項19】
前記テスト対象に存在する前記第1同位体または前記第2同位体の一方の量を決定するために前記信号Aと前記信号Bとを比較することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビームモニタにより前記ビームのエネルギを検出することをさらに含み、
前記検出ステップは、前記テスト対象、前記第1構成および前記第2構成と相互作用した後の前記ビームのエネルギを検出し、信号Cを生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記特定材料のアッセイを決定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記特定材料のアッセイを決定するステップは、
前記信号Aの前記信号Cに対する比Aを計算することと、
前記信号Bの前記信号Cに対する比Bを計算することと、
前記比Aと前記比Bとの差を計算することと、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記差を対数目盛りでプロットすることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記MEGa−rayは、少なくとも1MeVのエネルギを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記ビームと、前記第1構成または前記第2構成の少なくとも一方と、の間の相対運動を提供することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記第1構成は、第1ピクセルグループとして配列された複数の第1構成のうちのひとつであり、前記第2構成は、第2ピクセルグループとして配列された複数の第2構成のうちのひとつであり、前記ビームモニタは、複数のビームモニタのうちのひとつである、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記第1ピクセルグループ、前記第2ピクセルグループおよび前記複数のビームモニタのそれぞれは、1次元アレイおよび2次元アレイからなるグループから選択されたアレイに構成される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1ピクセルグループ、前記第2ピクセルグループおよび前記複数のビームモニタのそれぞれの少なくとも一部は、前記MEGa−rayビームの少なくともある部分と交差するよう構成される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
2Dイメージおよび3Dイメージからなるグループから選択されたイメージを生成するために、前記信号A、前記信号Bおよび信号Cのうちの少なくともひとつを解析することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
単一エネルギガンマ線(MEGa−ray)ビームと、テスト対象および第1構成と、を相互作用させることを含み、前記第1構成、
前記第1構成は主に第1同位体からなる部分Aを含み、
本方法はさらに、
前記MEGa−rayビームと前記第1構成との相互作用に起因する散乱およびフォトンの第1部分を検出し、信号Aを生成することと、
前記テスト対象が前記第1同位体を含むか否かを決定するために、前記信号Aを解析することと、を含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−511022(P2013−511022A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521682(P2012−521682)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042084
【国際公開番号】WO2011/071563
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512014500)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】