説明

単一ポートによるアクセスのための装置

体組織に形成されたポートを通して1以上の医療器具をガイドして体腔へアクセスさせる機能を果たす医療用器具、装置、及び方法が開示されている。医療器具の一つの実施形態は、結合部材とレールと搬送部材とを備えている。前記結合部材は前記ポートに取り付けることができる構造とされている。前記のレールは、前記結合部材に取り付けられており且つ前記ポートの開口を通って遠位方向に延びている第一の部分と該第一の部分に対してある角度をなして延びている第二の部分とを備えている。前記の搬送部材は、前記レールの第一の部分に選択的に結合せしめられ且つ前記レールの前記第一の部分及び第二の部分に沿って摺動できる構造とされている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して腹腔鏡による処置において使用するための医療器具及び装置に関し、更に特定すると、このような処置の際に医療用器具をガイドするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な腹腔鏡処置は、皮膚及び関連する組織層を貫通して穿刺部位を形成して体腔内の内部組織へのアクセスを提供することを含んでいる。穿刺部位を形成する際に、組織本来の弾力性により穴が塞がれる傾向があり、従って、穿刺部位を開口状態に保持するためにポートが使用される。例えば、トロカール用のポートは、ポート開口を形成する管状の形状と、穿刺部位を開口状態に保持するために組織と係合する形状とを有している器具である。
【0003】
多数例えば3つ以上の穿刺部位が所望の領域に設けられて、多数の器具が特定の腹腔鏡処置のために並びに目標構造の三角測量を可能にするために使用できる。例えば、腹腔鏡又はその他の可視化装置は一つのポートを使用し、一方、鉗子又はその他の組織操作器具は第二のポートと共に使用され、これらの器具は第三のポートを介して使用される切断器具又は縫合器具と共に使用される。腹腔鏡による処置は伝統的な切開手術と比較すると侵襲性が低いけれども、これらの処置は依然として多数の瘢痕を残す。
【発明の概要】
【0004】
ポートを介して体腔へアクセスするための医療器具であって、多数の医療用器具が単一のポートを介して使用できるようにした医療器具の実施形態が提供されている。一般的に、該医療器具及び装置は、1以上の医療用器具をポート内及び体腔内をガイドする機能を果たす。本発明の教示に従って作られた医療器具の一つの実施形態は、概ね、結合部材とレールと搬送部材とからなる。結合部材はポートに取り付けられる構造とされている。レールは、前記の結合部材に取り付けられ且つポートの開口を通って遠位方向に延びる第一の部分と、該第一の部分に対してある角度で延びている第二の部分とを備えている。前記搬送部材は、前記レールの第一の部分に選択的に結合され且つ該レールの第一の部分と該レールの第二の部分とに沿って摺動できる構造とされている。
【0005】
更に詳細な特徴によると、レールは、前記搬送部材が前記レールに沿って前記第一の部分から第二の部分まで遠位方向に摺動できる構造とされている。前記搬送部材と前記レールの前記第二の部分とは、前記搬送部材が前記レールの第二の部分から外れない構造とされている。前記搬送部材は、前記レールを摺動可能な形態で収容できる大きさとされている側部が開口している溝を備えている。該搬送部材はリンク部材を備えており、前記レールは、前記搬送部材の前記リンク部材を摺動できる形態で収容できる大きさの側部が開口している溝を備えている。一つの実施形態においては、前記ルールはある幅の棒材によって作られており、前記第一の部分は、前記搬送部材が前記レールに選択的に結合されるのを可能にする構造とされている幅が狭い部分を備えている。前記レールの第二の部分は、前記第一の部分よりも長く且つ真直ぐか又は湾曲しているのが好ましく、前記レールの第一の部分に対して直角に延びているのが最も好ましい。
【0006】
体腔へアクセスするための医療用装置の一つの実施形態は、ポート、結合部材、レール、搬送部材、医療器具、及び細長い押し込み部材を備えている。ポートは、ポート開口を規定しており且つ体腔の近くの体壁に取り付けることができる構造とされている。結合部材はポートに取り付けることができる構造とされている。レールは、前記結合部材に取り付けられ且つ前記のポート開口を通されて体腔内へ延びる構造とされている。搬送部材は、レールに選択的に結合できる構造とされており且つ体腔へアクセスするためにレールに沿って摺動可能である。搬送部材はまた器具用コネクタをも備えている。該医療器具は、搬送部材の器具用結合部材に結合されている。細長い押し込み部材は、前記の搬送部材に結合された遠位端を備えている。更に詳細な特徴によると、押し込み部材は、前記器具用コネクタと医療用器具のうちの一方に結合された制御ワイヤーとを備えている。結合部材は、前記ポートの近位の周縁を伸長する構造とされているフック形状の本体を備えているのが好ましく且つ前記ポート上の前記結合部材の位置を選択的に固定できる構造とされているラッチ部を備えていることも好ましい。
【0007】
本発明の教示に従って、体腔へアクセスする方法の一つの実施形態もまた提供されている。該方法は、上記したもののような医療用装置を準備するステップを含んでいる。ポートは体腔の近くの体壁に取り付けられる。レールは、ポート開口を通されて体腔内へと遠位方向に通される。結合部材が前記のポートに取り付けられ、搬送部材はレールに取り付けられる。医療用器具及び搬送部材は、レールに沿って体腔内へ摺動せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の教示に従って作られた医療用装置及び医療器具の一つの実施形態を示している概略平面図である。
【0009】
【図2】図2は、図1に示されている医療用装置及び医療器具の概略側面図である。
【0010】
【図3】図3は図2の拡大図である。
【0011】
【図4】図4は、図1に示されている医療器具の一部分の拡大平面図である。
【0012】
【図5】図5は、図4における線5−5に沿って断面した断面図である。
【0013】
【図6】図6は図4の前面図である。
【0014】
【図7】図7は、図1に示されている医療器具の一部分の側面図である。
【0015】
【図8】図8は図7の前面図である。
【0016】
【図9】図9は、本発明の教示に従って作られた医療器具の別の実施形態の拡大平面図である。
【0017】
【図10】図10は、図9における線10−10に沿って断面した断面図である。
【0018】
【図11】図11は、図9に示されている医療器具の前面図である。
【0019】
【図12】図12は、図8に似た前面図であるが、図1に示されている医療器具の一部分の代替的な実施形態を示している。
【0020】
【図13】図13は、本発明による教示に従って作られた医療器具のもう一つ別の実施形態の拡大平面図である。
【0021】
【図14】図14は、本発明による教示に従って作られた医療用装置及び器具の代替的な実施形態の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において使用されている“近位”及び“遠位”という用語は、ユーザーに対する基準点とするように意図されている。特に本明細書を通して、“遠位”及び“遠位方向”という用語は、ユーザーから概ね離れる位置、方向、又は向きを指しており、“近位”及び“近位方向”という用語は、ユーザーに概ね近づく位置、方向、又は向きを指している。
【0023】
図面を参照すると、図1〜3は、患者10に対して腹腔鏡処置を行なうための医療器具40を採用している医療用装置20を示している。患者10は、ほ乳類の患者として示されており、腹腔12と、例えば胃14、小腸16等の種々の器官とを有している。医療用装置20及び医療器具40は、多くの異なる体腔及び体内構造に対して使用され且つここに示されたものに限定されないことが当業者には容易に明らかであろう。
【0024】
医療器具40に加えて、医療用装置20は概ね1以上の医療器具を備えている。図1〜3に示されているように、一つの医療用器具はカメラ26を備えており、カメラ26は、一般的に映像を医師に送るために、ケーブル28若しくはその他の信号搬送部材、光ファイバ、又は電線を使用している。医療器具40を介して、多くの器具を配備させることができることがわかる。該器具としては、カテーテル、スコープ、可視化装置(例えば、照明器具)、配置若しくは配向用器具、ガス注入器若しくは真空機器等がある。医療用装置20はまた、当業者に公知の方法を使用して穿刺部位において患者10に取り付けられるポート22をも備えている。図面には、簡素化されたポート22が示されており、ポート22は、ポート開口24を規定するために事実上概ね管状であり、該ポート開口24の中を医療器具40及び種々の医療器具を通すことができる。カメラ26は、ポート22を通して使用できるように、医療器具40に作動可能に結合されている。医療器具40は、概ね、カメラ26(又は、その他の選択された医療器具)を、追加の医療器具をポート22を介して使用することを依然として許容しつつ腹腔12内へ導くための案内装置として機能する。例として、腹腔鏡用鉗子30及び切断器具32が図1に示されており、該器具は、カメラ26及び医療器具40と共にポート22を介して配備される。
【0025】
図2及び3において最も良くわかるように、ポート22は周縁34を備えており、該周縁34は、患者10の体外に少なくとも部分的に配置されており且つ医療器具40がこれに取り付けられている。医療器具40は、結合部材42とレール44とを備えており、レール44は結合部材42に取り付けられており且つ該結合部材から突出している。レール44は、ポート開口24を貫通して延びている第一の部分46と、該第一の部分46に対して角度が付けられ且つ腹腔12内へと突出している第二の部分48とを備えている。搬送部材50は、レール44に選択的に取り付けられ且つ該レールに沿って摺動することができる構造とされている。図面に示されているように、カメラ26は、搬送部材50に選択的に取り付けられていて、医療器具40のレール44に沿ってガイドされるようになされている。
【0026】
以下、医療器具40の一つの実施形態を図4〜6を参照して更に説明する。医療器具40の結合部材42は、概して、側方が開口している溝52と締結部材54とを備えている。締結部材54は、手で回すことができる頭部すなわちノブ55を備えているねじ付きの締結部材として示されているけれども、溝52及び/又はレール44をポート22に取り付けるために使用することができる種々の他の締結部材、ラッチ、又は係止部材を使用することができることが当業者にわかるであろう。かかる締結部材としては、摩擦嵌合、タブ及び捩り止め、クランプなどがある。溝52は、上方の壁58が結合されている互いに対向している側壁56,57を備えている。締結部材54は、壁56に形成されている対応する穴によって外側の側壁56にねじ込まれている。側壁56,57は互いに隔置されて内側空間59を規定しており、内側空間59はポート22の周縁34を収容できる大きさとされている。締結部材54は、内側空間59内に向かって突出して周縁34と係合し且つ医療器具40をポート22に固定する。締結部材54は、そのノブ55によって調整して、医療器具40を容易に取り付けたり取り外したりでき、又は同様に医療器具40を周縁34の外周に沿って摺動させて医療器具40及び特にそのレール44の位置決めを行うことができる。図4において最も良くわかるように、溝52は、ポート22及びその上方縁34の弧形状に適合する大きさ及び構造の弧形状を有している。溝52は、特別なポート22の形状及び構造に応じて他の形状及び構造例えば直線状の溝又は押出し断面を有しても良いことが当業者はわかるであろう。
【0027】
図5及び6において最も良くわかるように、レール44の第一の部分46は、概ね紙面上の下方に向かって且つ好ましくはポート22の側壁に概して平行に又はポート開口24の軸線にほぼ平行に突出している。注目すべき点は、レールの第一の部分46は、ポートの開口24内で最小の空間を占め且つ好ましくは開口24の外周に沿って且つポート22の側壁に沿って延びている点である。レールの第二の部分48は第一の部分46に対して角度が付けられており、図面に示されているように第一の部分46に対して概ね直角である。レールの第二の部分48は、レールの第一の部分46に対して約45度〜約115度の角度が取り付けられているのが好ましい。本実施形態においては、レールの第二の部分48は概ね直線状の部材として示されているけれども、何らかの湾曲部を有していても良い。レール44は、金属、合金、又は硬質プラスチックのような比較的堅牢な材料によって作られるのが好ましい。レールの第二の部分48はレールの第一の部分46よりも著しく長く2倍〜20倍の長さであるのが好ましい。レール44は診査されている空洞に応じて、垂直方向に(図5及び6における紙面上を上下方向に)湾曲していても良いし、水平方向に(図4及び6において紙面上を左右方向に)湾曲していても良いし、又は両方向に湾曲していても良い。
【0028】
再び図2及び3を参照すると、レールの第二の部分48は、体腔12及び/又はその他の体の部分の外形に適合するように何らかの限られた可撓性を有しているのが望ましい。腹腔12を使用する場合には、レール44は、レールの第一の部分46はポート22の遠位端を若干越えて延びる大きさとされているのが好ましく、一方、レールの第二の部分48は腹腔組織層に沿って横断方向に突出しているのが好ましい。特定の体腔及び患者の解剖学的構造に応じて、レール44は種々の大きさであっても良いことが当業者はわかるであろう。一つの好ましい実施形態においては、レール44は、硬質プラスチックによって作られており且つ厚みが0.1〜1.0mmの範囲であり、レールの第一の部分46の長さは1mm〜10mmであり、レールの第二の部分48の長さは約5mm〜約50mmである。レールの第二の部分48の長さ、厚み、材料、及び形状に応じて、レールの近くを腹腔組織層に対して制御するために付加的な手段を使用しても良い。例えば、レールの第二の部分48の遠位端近くに縫合材を経皮的に配置するために(又は縫合器具、ワイヤ等を遠位端に結合させるために)針を使用しても良く、縫合材は、遠位端の位置を制御するために選択的に張力をかけることができる。レール44の傾きを制御する助けとするために、ポート22上に逆の圧力/力を配置することもでき、例えば、レールの第二の部分48が突出している方向と反対のポート22の側面に下向きの力をかけるか又はポート22の反対側の側部に支持部材/楔を配置しても良い。この逆圧力は、錘、シム(はさみ木)/楔、張力がかけられた紐/ワイヤ、及びその他の公知の構造及び装置によって、医療専門家によってかけられる。
【0029】
図6において最も良くわかるように、レールの第一の部分46は小径部分60すなわち幅が狭い部分60を備えているのが好ましく、この部分は、レール44を介する搬送部材50の選択的な取り付けを可能にする。図7及び8において最も良くわかるように、搬送部材50の図示されている実施形態は側方が開口している溝62を備えており、該溝はレール44を摺動可能に収容する大きさとされた内側空間64を形成している。側方が開口している溝は、内側空間64への入口68を規定している舌状部66を備えている。入口68の幅は、概ね内側空間64の幅より狭いが、幅が狭い部分60又はレールの第一の部分46の幅よりも広い。従って、搬送部材50の側方が開口している溝62は、レール44の狭幅部分60においてレール44に選択的に取り付けられたり取り外されたりできることがわかるであろう。レールの第二の部分48と搬送部分50とは、搬送部材50が該レールの第二の部分から取り外すことができない構造とされており、レールの第二の部分48は更にこの目的のためにストッパ49をその遠位端に備えている。
【0030】
搬送部材50は、レールに取り付けられると該レールに沿って摺動させることができる。従って、レールの第一の部分46からレールの第二の部分48への移行領域は、搬送部材50がそれらの間を容易に移動できるように概ね丸味が付けられている。内側空間64はレール44より大きなサイズとされていて、それらの間に、搬送部材50がレール44に沿って摺動せしめられるときにある程度の遊びを許容する隙間が残されている。搬送部材50はまたフランジ70を備えているのが好ましく、フランジ70は枢動ピン72を介して側方が開口している溝62に回転可能形態で取り付けられている。フランジ70は互いに対向しているアーム74,76を備えており、これらのアームは間にカメラ26を収容できる大きさとされている。ブラケット78がフランジ70に回転可能形態で取り付けられており、特に、該ブラケットは、カメラ26と係合できる大きさとされた2つのブラケットアーム80,82を備えている。ブラケット80,82の各々は、各々、枢動ピン84,86を介して互いに対向しているアーム74,76に回転可能形態で取り付けられている。
【0031】
従って、側方が開口している溝62はレール44に沿って近位方向及び遠位方向に摺動することができ、一方、カメラ26は溝62及びレール44に対して二次元内で回転できることがわかるであろう。ブラケット70は、矢印88(図8)によって示されるように枢動ピン72を介して垂直軸線(図7及び8において紙面の上下方向)を中心に回転することができ、一方、ブラケット78は枢動ピン84を中心として(すなわち、図8の紙面を左から右へ延びている水平軸線を中心として)上下方向に回転できる。制御ワイヤー92が、搬送部材50の構成要素のうちのいずれか1つ、例えば、ブラケット78、フランジ70、又は溝62、のうちのいずれかに取り付けられているのが好ましい。同様に、カメラ26はケーブル28を備えており、ケーブル28は、カメラ26をレール44に沿って並進させると共にカメラ50の構成部品の枢動によってカメラ26の回転を与えるために使用することができる。従って、制御ワイヤー92と伝達部材28とは、カメラ26を操作するために単独で又は組み合わせて使用することができ且つ相互に結合させるか又は共通の束内に組み込まれても良い。同様に、小さなモーター、原動機又はエフェクタ(作動体)を搬送部材50内に組み込んで、種々の構成部品の枢動及びカメラ26の回転が、レール、制御部材92、及び伝達部材28のいずれかによって電子的に且つ遠隔操作によって行われる。
【0032】
医療器具40特に結合部材及びレールの多くの変形態様が、なされている処置形式、患者のタイプ、医療用装置20及び器具40の意図されている使用方法に応じて可能であることが当業者にわかるであろう。一つの変形態様が図9〜11の実施形態に示されている。図9〜11は、同じく結合部材142とレール144とを備えている医療器具140が示されている。この実施形態においては、結合部材142は、同じくポート22の周縁34に結合させる構造とされた側方が開口している溝152を備えている。ここでは、締結部材154はねじ付きの締結部材ではなく、ノブ155と溝152の外方側壁156との間に延びているピン及び圧縮ばね153である。ばね153は、締結ピン154をポート22の周縁34と係合するように付勢している。
【0033】
図9〜11の実施形態においては、断面がT字形状のレール144が形成されていることもわかるであろう。特に、該レールは、径方向部分145とこの径方向部分145に結合されている横方向部分147とを備えている。径方向部分145は、溝152の内側側壁157に結合されている。図10において最も良くわかるように、レール144は同じく第一の部分146を備えており、該第一の部分146は、壁及びポート22の軸線に対して概ね平行に下方へ突出しており、次いで、第一の部分146に対して角度が付けられている第二の部分148へと移行している。以前の実施形態と同様に、レールの第一の部分146からレールの第二の部分148への移行領域147は、レール144に沿った搬送部材の滑らかな摺動を提供するように丸味が付けられている。
【0034】
本発明の教示に従って作られた医療用装置の更に別の実施形態220が図12〜13に示されている。この実施形態においては、レール244は、搬送部材250を収容できる大きさとされている内側空間246を形成するために、湾曲した又は半環形状を有しているものとして示されている。以前の実施形態におけるレール44の周囲を包囲している側方が開口している溝62の代わりに、ここでは、搬送部材250は、半球状の頭部264を備えたそれ自体のレール262を備えている。半球状の頭部264は、レール244の内側空間246内に摺動可能で且つ回転可能な形態で収容される大きさとされている。搬送部材250はフランジ270を備えており、フランジ270はカメラ26と係合する大きさとされている互いに対向しているフランジアーム274,276を備えている。カメラ26は、対応する枢軸278,280によってフランジアーム274,276に回転可能な形態で取り付けられている。この実施形態においては、レールを収容する部材を備えている搬送部材ではなく、レールが搬送部材の一部分を収容する構造とされていることがわかるであろう。ここに記載されている医療用装置及び器具の実施形態に対するこれらの及び多くの他の変形態様が当業者に容易に明らかであろう。図13においてはまた、周縁234を備えているポート222にポケット235を形成している厚みが薄い部分も形成されている。ポケット235は、レール244を完全に又は部分的に収容できる大きさとされている。結合部材242及びその溝252は、ポケット235内の縁234と係合する大きさとされており、レール244は溝252に取り付けられている。このようにして、ポートの開口224の大きさは、他の医療装置又は器具に対して最大化されている。
【0035】
該医療用装置及び器具の更に別の代替的な実施形態が図14に示されている。この図に示されている医療用装置及び器具は、以前の実施形態と概ね似ているが、レール344特にレールの第二の部分348は、それ自体の重量によって若干湾曲しているばかりでなく、特に体腔すなわち患者10の体内構造へのアクセスを補助するための湾曲部も形成されている。従って、該医療器具及び装置のレール部分は、特定の処置、患者、及び用途に応じて、多くの異なるサイズ、形状、及び構造を有することができることがわかるであろう。
【0036】
以下、体腔へアクセスするため例えば状態を診断し又は体腔内に医療処置を行なうために医療用装置20及び医療器具40を使用する方法を説明する。ポート22は、体腔の近くの体壁に取り付けられて患者の皮膚及び関連する組織層を貫通して形成された開口を維持している。器具40のレール44が、ポート開口24の中を通されて体腔内へと遠位方向に通過せしめられる。レール44は、ポート開口24を通過するときに角度が付けられて体腔を形成している組織に沿って摺動できるようになされているのが好ましい。該結合部材が、例えば上記したラッチ54を使用して前記のポートに取り付けられる。搬送部材50がレールに結合され、医療用機器(例えばカメラ26)が搬送部材50に結合される。医療用機器26と搬送部材50とが、レール44に沿って体腔内へ摺動せしめられる。次いで、図1に示されているように、付加的な器具がポート開口24を介して使用される。医師が医療用機器の使用を終了したときに、搬送部材50とカメラ26とはレールに沿って近位方向へ摺動せしめられる。次いで、カメラ26又はその他の医療用機器が搬送部材50から取り外される。別の方法として、搬送部材50が近位方向に摺動せしめられ、第二の医療用機器が搬送部材50上のカメラ26と置き換えられる。搬送部材50は、同時に且つ交互に多数の機器に接続できるようになすことができることもわかるであろう。
【0037】
従って、本発明の医療器具及び装置は、1以上の選択された医療器具を体腔内に導くための案内装置として機能することができる一方で依然としてポートを介して追加の医療器具を使用できることが当業者にわかるであろう。従って、唯一つの腹腔鏡用のポートが必要とされるだけであり、その結果、皮膚及び関連する組織層を貫通する穿孔及び穿刺による瘢痕及び潜在的な複雑さが最少化される。
【0038】
上記した方法は概ね組織を貫通して体内腔又は管腔内を通過するステップを含んでいるけれども、該装置、器具、及び方法は、人間又は動物の体及び体腔内に関連付けられた又は関連付けられているか関連付けられていない材料の層(例えば、繊維、布、高分子、エラストマ、プラスチック、及びラバー)に対して使用しても良いことがわかるであろう。例えば、該装置、器具、及び方法は、人間又は動物の体に対する用途を見出すことができるか見出すことができない1以上の材料の層を介して器具を配置するために、及び同様に体内組織ではない材料の層の穴又は穿孔を閉じるために、研究所及び工業的環境での使用方法を見出すことができる。幾つかの例としては、壁、プレート、床、岩石(例えば救助作業における)のような構造の背後を見ること、並びに、合成組織、高分子シート、動物の研究、獣医学用途、及び検死活動における作業がある。
【0039】
本発明の種々の実施形態の上記の説明は、例示及び説明の目的で提供されたものである。排他的とし且つ本発明をここに説明された実施形態そのものに限定することは意図されていない。上記の教示を参考にして多くの改造例又は変形例が可能である。ここに記載した実施形態は、本発明の原理及び実際の用途の最良の例示を提供して当業者が本発明を種々の実施形態で且つ考えられる特別な使用方法に達するように種々改造して使用できるようにするために選択され且つ記載されたものである。このような改造形態及び変形形態の全てが本発明の範囲に含まれる。本発明の範囲は、公正に且つ法律的に且つ公正に付与される広さに従って解釈される場合における添付の特許請求の範囲によって判断される。
【符号の説明】
【0040】
10 患者、 12 腹腔、
14 胃、 16 小腸、
20 医療用装置、 22 ポート、
24 ポート開口、 26 カメラ、
28 ケーブル、 30 鉗子、
32 切断器具、 34 周縁、
40 医療器具、 42 結合部材、
44 レール、 46 レールの第一の部分、
48 レールの第二の部分、 49 ストッパ、
50 搬送部材、 52 溝、
54 締結部材、 55 ノブ、
56 側壁、 57 側壁、
58 上方の壁、 59 内側空間、
60 幅が狭い部分、 62 溝、
64 内側空間、 66 舌状部、
68 入口、 70 フランジ、
72 枢動ピン、 74 アーム、
76 ブラケット、 78 ブラケット、
80 ブラケットアーム、 84 枢動ピン、
92 制御ワイヤー、 140 医療器具、
142 結合部材、 144 レール、
145 径方向部分、 146 レールの第一の部分、
147 移行領域、 148 レールの第二の部分、
152 溝、 153 圧縮ばね、
154 締結部材、 155 ノブ、
156 溝の外方側壁、 157 溝の内側側壁、
220 医療用装置、 222 ポート、
234 周縁、 235 ポケット、
240 医療用装置、 242 結合部材、
244 レール、 246 内側空間、
250 搬送部材、 252 溝、
262 レール、 264 頭部、
270 フランジ、 274 フランジアーム、
276 フランジアーム、 278 枢軸、
280 枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体壁に取り付けることができる構造とされ、ポート開口を形成しているポートを介して体腔へアクセスするための医療器具であり、
前記ポートに取り付けることができる構造とされている結合部材と、
前記結合部材に取り付けられ且つ前記ポート開口内を遠位方向へ延びている第一の部分と該第一の部分に対してある角度をなして延びている第二の部分とを備えているレールと、
前記レールの前記第一の部分に選択的に結合することができる構造とされ且つ前記レールの前記第一の部分と第二の部分とに沿って摺動可能な搬送部材と、を備えていることを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記レールが、前記搬送部材が前記レールに沿って遠位方向に該レールの前記第一の部分から前記第二の部分まで摺動できるようにした構造とされており、前記搬送部材と前記レールの第二の部分とが、前記搬送部材が前記レールの第二の部分から取り外すことができない構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記搬送部材が、前記レールを摺動可能に収容できる大きさとされている側方が開口している溝を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記搬送部材がリンク部材を備えており、前記レールが前記搬送部材の前記リンク部材を摺動可能に収容することができる大きさの側方が開口している溝を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項5】
前記レールがある幅の棒材によって形成されており、前記レールの第一の部分が、前記搬送部材を前記レールに選択的に結合させることができる構造とされている幅の狭い部分を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記レールの第二の部分が前記レールの第一の部分よりも長い、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項7】
前記レールの第二の部分が湾曲している、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項8】
前記レールの第二の部分が前記レールの第一の部分に対して直角に延びている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項9】
前記レールの第二の部分が前記レールの第一の部分に対して45度〜115度の範囲で角度が付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項10】
前記レールの第一の部分の長さが1mm〜10mmの範囲内であり、前記レールの第二の部分の長さが5mm〜50mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項11】
体腔へアクセスするための医療用装置であり、
ポート開口を形成しており且つ体腔の近接している体壁に取り付けることができる構造とされているポートと、
前記ポートに取り付けることができる構造とされている結合部材と、
前記結合部材に取り付けられ且つ前記ポート開口内を通って体腔内へと延びる構造とされているレールと、
前記レールに選択的に結合することができる構造とされ且つ前記レールに沿って摺動可能であり且つ医療機器用結合部材を備えている搬送部材と、
前記搬送部材の前記医療機器用結合部材に結合されている医療機器と、
遠位端が前記搬送部材に結合されている細長い押し込み部材と、を備えていることを特徴とする医療用装置。
【請求項12】
前記ポートが該ポートの軸線の周囲に延びている環状の側壁を備えており、該環状の側壁の一部分が該環状の側壁の隣接の部分よりも前記ポートの軸線から遠くに隔てられていてポケットを形成しており、前記レールが前記ポケット内に位置決めされている、ことを特徴とする請求項11に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記押し込み部材が、前記機器用結合部材と前記医療用機器とのうちの一つに結合されている制御ワイヤーを備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の医療用装置。
【請求項14】
前記結合部材が、前記ポートの周縁に沿って延びる構造とされているフック形状の本体を備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の医療用装置。
【請求項15】
前記結合部材が、前記ポート上の前記結合部材の位置を選択的に固定する構造とされているラッチを備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の医療用装置。
【請求項16】
体腔へアクセスする方法であり、
ポート開口を形成しているポートと、該ポートに取り付けることができる構造とされている結合部材と、該結合部材に取り付けられ且つ前記ポート開口内を通って体腔内へと延びる構造とされているレールと、該レールに選択的に結合することができる構造とされ且つ前記レールに沿って摺動して体腔へアクセスできるようになされ且つ医療機器に取り付けられる医療機器用結合部材を備えている搬送部材と、遠位端が前記搬送部材に結合されている細長い押し込み部材と、を備えている医療用装置を準備するステップと、
前記ポートを前記体腔の近くの体壁に取り付けるステップと、
前記レールを前記ポートを通して体腔内へと遠位方向に通過させるステップと、
前記結合部材を前記ポートに取り付けるステップと、
前記搬送部材を前記レールに結合させるステップと、
前記医療機器と前記搬送部材とを前記レールに沿って体腔内へと摺動させるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記医療機器及び前記搬送部材を前記レールに沿って近位方向へ摺動させるステップと、
前記医療機器を前記搬送部材から取り外すステップと、
第二の医療機器を前記レールに固定するステップと、
前記第二の医療機器を前記レールに沿って体腔内へと摺動させるステップと、を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−506506(P2013−506506A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532352(P2012−532352)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/051111
【国際公開番号】WO2011/041669
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】