説明

単相三線式の状態判定装置および方法

【課題】負荷投入や負荷開放時の瞬時電圧変動の原因を特定し、負荷状態またはコンセント所属系統を判定する。
【解決手段】単相三線式の電圧線に供給される全電力を全電力演算手段21で求め、また、一方の電圧線12Aと中性線13との間の第1系統電力と、他方の電圧線12Bと中性線13との間の第2系統電力との差である不平衡電力を不平衡電力演算手段22で求める。そして、全電力変動分を全電力変動分演算手段23で求め、不平衡電力変動分を不平衡電力変動分演算手段25で求め、判定手段24は、全電力変動分および不平衡電力変動分に基いて単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの電圧線と中性線とを有する単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統等を推定する単相三線式の状態判定装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単相三線式の配電系は2つの電圧線と中性線とを有し、各々の電圧線と中性線との間から100V系の配電線を引き出し、2つの電圧線間から200V系の配電線をそれぞれ引き出すようにしている。例えば、単相三線式の100V配電系では、200V系の配電線と2つの100V系の配電線とを引き出している。このような低圧配電系では電線が細く、負荷投入や負荷開放時に瞬時電圧変動など障害が発生する場合がある。その場合、障害を発生させた負荷が200V系の配電線に接続された負荷なのか、あるいは100V系に接続された負荷なのか、さらには、100V系の配電線のいずれに接続された負荷なのかを知ることは、瞬時電圧変動の対策を立てる上の基本となる。
【0003】
ここで、単相三線式の配電系の入力電圧の降下または上昇があった場合、自動的にこれを検出し、回路の切り替えによって、常に設定範囲内の電圧値を出力して負荷に影響を与えないように電圧を調整するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−191542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のものでは配電系の電圧を設定範囲内の電圧値に調整することができるが、負荷投入や負荷開放時の瞬時電圧変動の原因が200V系と2つの100V系のいずれなのかを特定できない。また、100V系での負荷分布を正確に把握できないとともに、各コンセントの属する100V系を特定できず対策の指針を得ることは困難である。
【0005】
一般に、2つの100V系の配電線に接続される負荷は不平衡であり、その不平衡の度合いが甚だしい場合には、配電線や屋内配線での損失増大や電圧アンバランスなどの問題が生じる。このため、不平衡負荷の状態を正確に把握し、その是正を可能にする手法が望まれているが、屋内配線で実際に負荷の接続されるコンセントが属する100V系の判定の困難さが不平衡是正でのネックとなる。このため任意のコンセントが属する100V系を判定する方法が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、負荷投入や負荷開放時の瞬時電圧変動の原因を特定でき、負荷状態またはコンセント所属系統を判定できる単相三線式の状態判定装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係わる単相三線式の状態判定装置は、単相三線式の2つの電圧線のうちの一方の電圧線と中性線との間および他方の電圧線と中性線との間にそれぞれ注入される電力を演算する系統毎電力演算手段と、前記系統毎電力演算手段で演算された両系統の電力の和を前記単相三線式に注入される全電力として演算する全電力演算手段と、前記系統毎電力演算手段で演算された両系統の電力の差を前記単相三線式の2つの電圧線の不平衡電力として演算する不平衡電力演算手段と、前記全電力演算手段で得られた全電力の変動分を演算する全電力変動分演算手段と、前記不平衡電力演算手段で得られた不平衡電力の変動分を演算する不平衡電力変動分演算手段と、前記全電力演算手段で得られた全電力、前記不平衡電力演算手段で得られた不平衡電力、前記全電力変動分演算手段で得られた全電力変動分および前記不平衡電力変動分演算手段で得られた不平衡電力変動分に基いて単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係わる単相三線式の状態判定装置は、請求項1の発明において、前記判定手段は、前記全電力変動分が負であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷開放であると判定し、前記全電力変動分が正であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷投入であると判定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係わる単相三線式の状態判定装置は、請求項1または2の発明において、前記判定手段は、全電力変動分の絶対値が不平衡電力変動分の絶対値より大きいときは、瞬時電圧変動の原因は2つの電圧線間の200V系の負荷変動であると判定し、全電力変動分の絶対値と不平衡電力変動分の絶対値とがほぼ等しいときは、瞬時電圧変動の原因は各々の電圧線と中性線との間の100V系の負荷変動であると判定することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係わる単相三線式の状態判定装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか一の発明において、前記判定手段は、各々の電圧線と中性線との間の100V系の負荷変動が発生したとき、全電力変動分の正負により変動原因が負荷投入か負荷開放かを判定するとともに、不平衡電力変動分の正負により変動負荷の属する100V系を特定することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明に係わる単相三線式の状態判定装置は、請求項1ないし4のいずれか一の発明において、前記判定手段は、コンセントに接続された負荷のオン/オフ時の不平衡電力変動分の正負に基いて、そのコンセントが属する所属系統を特定することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明に係わる単相三線式の状態判定方法は、単相三線式の2つの電圧線のうちの一方の電圧線と中性線との間および他方の電圧線と中性線との間にそれぞれ注入される電力を演算し、演算された両系統の電力の和を前記単相三線式に注入される全電力として求め、演算された両系統の電力の差を前記単相三線式の2つの電圧線の不平衡電力として求め、前記全電力の変動分と前記不平衡電力の変動分とに基いて前記単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、単相三線式に注入される全電力や2つの100V系の不平衡電力、それらの変動分を算出し、これらに基いて三相三線式の系統状態を判定するので、単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる単相三線式の状態判定装置11のブロック構成図である。
【0015】
まず、単相三線式の配電系統は、2つの電圧線12A、12Bと中性線13との3本の電線を有し、電圧線12Aをa相、中性線13をb相、電圧線12Bをc相とする。一方の電圧線12Aと中性線13とのab相間(以下、第1系統という)に単相電圧電源14Aが接続され、他方の電圧線12Bと中性線13とのbc相間(以下、第2系統という)に単相電圧電源14Bが接続されて100V系を形成し、一方の電圧線12Aと他方の電圧線12Bとのac相間で200V系を形成する。単相電圧電源14A、14Bにそれぞれ100V負荷Rab、Rbcが接続され、電圧線12A、12B間に200V負荷Racが接続される。
【0016】
通常、単相電圧電源14Aの電圧Vabおよび単相電源電圧14Bの電圧Vbcは同じ電圧値であり、例えば、一般家庭への配電の場合には100Vである。従って、その場合には、電圧線12A、12Bと中性線13との間に接続される負荷Rab、Rbcは100Vであり、電圧線12A、12B間に接続される負荷Racは200Vである。また、電圧Vab、Vbcが200Vである場合には、負荷Rab、Rbcは200Vであり、負荷Racは400Vである。
【0017】
このような単相三線式の配電系統では、100V(200V)系負荷Rab、Rbcおよび200V(400V)系負荷Racが接続されるので、これらに負荷変動が生じた場合には瞬時電圧変動が生じたり不平衡負荷状態となったりすることがある。そこで、このような単相三線式の配電線に対して、本発明の実施の形態における単相三線式の状態判定装置11を接続し、瞬時電圧変動の原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定する。
【0018】
電圧線12A、12Bに流れる電流Ia、Icはそれぞれ電流検出器15A、15Bで検出され、状態判定装置11のAD変換器17により所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換されて記憶装置18に記憶される。同様に、単相電圧電源14A、14Bの電圧Vab、Vbcはそれぞれ電圧検出器16A、16Bで検出され、状態判定装置11のAD変換器17により所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換されて記憶装置18に記憶される。
【0019】
演算制御装置19の系統毎電力演算手段20は、単相三線式の一方の電圧線12Aと中性線13との間に注入される電力Pab(以下、第1系統電力Pabという)、および他方の電圧線12Bと中性線13との間に注入される電力Pbc(以下、第2系統電力Pbcという)を演算するものである。第1系統電力Pabおよび第2系統電力Pbcは、記憶装置18に記憶された電圧線12A、12Bに流れる電流Ia、Icおよび単相電圧電源14A、14Bの電圧Vab、Vbcに基いて、(1)式および(2)式により演算される。なお、積分長Tは商用周波数fとしたとき(T=1/f)で与えられる。
【数1】

【数2】

【0020】
系統毎電力演算手段20で演算された第1系統電力Pabおよび第2系統電力Pbcは、全電力演算手段21および不平衡電力演算手段22に入力される。全電力演算手段21は、(3)式に示すように、系統毎電力演算手段20で演算された第1系統電力Pabおよび第2系統電力Pbcの和を単相三線式に注入される全電力Pとして演算する。また、不平衡電力演算手段22は、(4)式に示すように、系統毎電力演算手段20で演算された第1系統電力Pabと第2系統電力Pbcとの差を単相三線式の2つの電圧線の不平衡電力Pとして演算する。すなわち、第1系統電力Pabが第2系統電力Pbcより大の場合を正とする不平衡電力Pを求める。
【0021】
=Pab+Pbc …(3)
=Pab−Pbc …(4)
全電力演算手段21で演算された全電力Pは全電力変動分演算手段23に入力され、不平衡電力演算手段22で演算された不平衡電力Pは不平衡電力変動分演算手段25および判定手段24に入力される。
【0022】
全電力変動分演算手段23は全電力Pの変動分ΔPを演算するものであり、例えば、現時点の全電力P(i)と1サイクル前の全電力P(i−1)との差分を全電力変動分ΔPとして演算し、その全電力変動分ΔPを判定手段24に出力する。同様に、不平衡電力変動分演算手段25は、不平衡電力Pの変動分ΔPを演算するものであり、例えば、現時点の不平衡電力P(i)と1サイクル前の不平衡電力P(i−1)との差分を不平衡電力変動分ΔPとして演算し、その不平衡電力変動分ΔPを判定手段24に出力する。なお、1サイクル前のデータに代えて数サイクル前のデータを用いて全電力変動分ΔPや不平衡電力変動分ΔPを求めるようにしてもよい。
【0023】
瞬時電圧変動検出手段26は第1系統電圧Vabおよび第2系統電圧Vbcが瞬時電圧変動したことを検出するものであり、瞬時電圧変動検出手段26は第1系統電圧Vabまたは第2系統電圧Vbcの瞬時電圧変動を検出したときは、その旨を判定手段24に通知する。
【0024】
判定手段24は、瞬時電圧変動検出手段26が瞬時電圧変動を検出したときは、全電力変動分演算手段23で得られた全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分演算手段25で得られた不平衡電力変動分ΔPに基いて、単相三線式の電圧変動原因を判定する。また、不平衡電力演算手段22で得られた不平衡電力Pに基いて、定常時の負荷状態を判定する。さらには、全電力変動分演算手段23で得られた全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分演算手段25で得られた不平衡電力変動分ΔPに基いて、単相三線式のコンセント所属系統を判定する。そして、それらの判定結果を出力装置27に出力する。
【0025】
次に、判定手段24での電圧変動原因の判定、通常時の負荷状態の判定またはコンセント所属系統の判定について説明する。
【0026】
[1]電圧変動原因の判定
(a)負荷の開放/投入の判定
図2は、判定手段24での電圧変動原因の判定処理内容を示すフローチャートである。判定手段24は、瞬時電圧変動があったときは、図2に示すように、全電力変動分ΔPを入力し(S1)、全電力変動分ΔPが負であるか否かを判定する(S2)。全電力変動分ΔPが負であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷開放であると判定する(S3)。一方、ステップS2の判定で、全電力変動分ΔPが負でないときは、全電力変動分ΔPが正であるか否かを判定し(S4)、全電力変動分ΔPが正であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷投入であると判定する(S5)。
【0027】
このように、負荷変動があったときには瞬時電圧変動が生じるので、その場合の瞬時電圧変動の原因としては、全電力変動分ΔPが正であるときは負荷投入による瞬時電圧変動であり、全電力変動分ΔPが負であるときは負荷開放による瞬時電圧変動であると判定する。
【0028】
(b)200V系/100V系の判定
次に、負荷変動が生じた系統は200V系か100V系かの判定について説明する。図3は、判定手段24での電圧変動原因が200V系か100V系かの判定処理内容を示すフローチャートである。図3に示すように、全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分ΔPを入力し(S1)、それぞれの絶対値|ΔP|、|ΔP|を求める(S2)。そして、全電力変動分の絶対値|ΔP|が不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|より大きいか否かを判定する(S3)。そして、全電力変動分の絶対値|ΔP|が不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|より大きいときは、瞬時電圧変動の原因は2つの電圧線12A、12B間の200V系の負荷変動であると判定する(S4)。
【0029】
一方、ステップS3の判定で、全電力変動分の絶対値|ΔP|が不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|より大きくないときは、全電力変動分の絶対値|ΔP|と不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|とがほぼ等しいか否かを判定し、全電力変動分の絶対値|ΔP|と不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|とがほぼ等しいときは、瞬時電圧変動の原因は各々の電圧線12A、12Bと中性線13との間の100V系の負荷変動であると判定する(S6)。
【0030】
このように、不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|は、100V系の負荷変動の不平衡を示すので、負荷変動が生じた場合に、全電力変動分の絶対値|ΔP|が不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|より大きいときは、200V系の負荷変動であると判定できる。一方、全電力変動分の絶対値|ΔP|と不平衡電力変動分の絶対値|ΔP|とがほぼ等しいときは、全電力変動分がそのまま100V系の負荷変動分に反映されているので、100V系の負荷変動であると判定できる。
【0031】
(c)100V系の負荷の投入/開放の判定
次に、100V系の負荷の投入/開放の判定について説明する。図4は、判定手段24での100V系の負荷の投入/開放の判定処理内容を示すフローチャートである。図4に示すように、全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分ΔPを入力し(S1)、全電力変動分ΔPが正であるか否かを判定する(S2)。全電力変動分ΔPが正であるときは、不平衡電力変動分ΔPが正であるか否かを判定し(S3)、不平衡電力変動分ΔPが正であるときは、第1系統(ab相間)の負荷投入であると判定する(S4)。ステップS3の判定で、不平衡電力変動分ΔPが正でないときは、不平衡電力変動分ΔPが負であるか否かを判定する(S5)。不平衡電力変動分ΔPが負であるときは第2系統(bc相間)の負荷投入であると判定する(S6)。
【0032】
つまり、全電力変動分ΔPが正のときは負荷変動は投入であり、不平衡電力Pが正のときは第1系統電力Pabが第2系統電力Pbcより大きいときであるので、全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分ΔPの双方が正であるときは、第1系統(ab相間)の負荷投入であると判定する。同様に、全電力変動分ΔPが正で不平衡電力変動分ΔPが負であるときは、第2系統(bc相間)の負荷投入であると判定する。
【0033】
一方、ステップS2の判定で、全電力変動分ΔPが正でないときは、不平衡電力変動分ΔPが負であるか否かを判定する(S7)。不平衡電力変動分ΔPが負であるときは、第1系統(ab相間)の負荷開放であると判定する(S8)。ステップS7の判定で、不平衡電力変動分ΔPが負でないときは、不平衡電力変動分ΔPが正であるか否かを判定する(S9)。不平衡電力変動分ΔPが正であるときは第2系統(bc相間)の負荷開放であると判定する(S10)。
【0034】
つまり、全電力変動分ΔPが負のときは負荷変動は開放であり、不平衡電力Pが負のときは第1系統電力Pabが第2系統電力Pbcより小さいときであるので、全電力変動分ΔPが負で不平衡電力変動分ΔPが負であるときは、第1系統(ab相間)の負荷開放であると判定する。同様に、全電力変動分ΔPが負で不平衡電力変動分ΔPが正であるときは、第2系統(bc相間)の負荷開放であると判定する。
【0035】
このように、判定手段24は各々の電圧線12A、12Bと中性線13との間の100V系の負荷変動が発生したとき、全電力変動分ΔPの正負により変動原因が負荷投入か負荷開放かを判定するとともに、不平衡電力変動分ΔPの正負により変動負荷の属する100V系を特定する。
【0036】
[2]定常時の負荷状態の判定
判定手段24は、瞬時電圧変動検出手段26による瞬時電圧変動の検出がない状態で不平衡電力Pを監視する。図5は、判定手段24での定常時の負荷状態の判定処理内容を示すフローチャートである。図5に示すように、不平衡電力演算手段22で得られた不平衡電力Pを入力し(S1)、不平衡電力Pが正であるか否かを判定する(S2)。そして、不平衡電力Pが正である場合には、ab相間(第1系統)の負荷がbc相間(第2系統)の負荷より大であると判定する(S3)。一方、ステップS3の判定で、不平衡電力Pが正でない場合には、不平衡電力Pが負であるか否かを判定し(S4)、不平衡電力Pが負であるである場合には、bc相間(第2系統)の負荷がab相間(第1系統)の負荷より大であると判定する(S6)。これにより、定常時においても100V系である第1系統および第2系統の負荷の大小を検出できる。
【0037】
[3]コンセント所属系の特定
次に、判定手段24は、コンセントに接続された負荷のオン/オフ時の不平衡電力変動分ΔPの正負に基いて、そのコンセントが属する所属系統を特定する。図6は、判定手段24でのコンセントが属する所属系統を特定するための判定処理内容を示すフローチャートである。図6に示すように、第1系統か第2系統かが不明であるコンセントに負荷を接続する(S1)。そして、コンセントに接続した負荷をオンオフする(S2)。コンセントに接続された負荷のオンオフにより、全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分ΔPが変動するので、その変動を監視して、そのコンセントが属する所属系統を特定することになる。
【0038】
すなわち、全電力変動分ΔPおよび不平衡電力変動分ΔPを入力し(S3)、全電力変動分ΔPが正であるか否かを判定する(S4)。全電力変動分ΔPが正であるときは、さらに不平衡電力変動分ΔPが正であるか否かを判定し(S5)、不平衡電力変動分ΔPが正であるときは、負荷が接続されたコンセントは、ab相間(第1系統)に属すると判定する(S6)。一方、ステップS5の判定で、不平衡電力変動分ΔPが正でないときは、不平衡電力変動分ΔPが負であるか否かを判定し(S7)、不平衡電力変動分ΔPが負であるときは、負荷が接続されたコンセントは、bc相間(第2系統)に属すると判定する(S8)。
【0039】
このように、全電力変動分ΔPが正であることから負荷投入されたと判断でき、さらに第1系統電力Pabが第2系統電力Pbcより大きいときに不平衡電力Pが正となるように定めているので、不平衡電力変動分ΔPが正のときは第1系統に負荷投入されたと判定でき、不平衡電力変動分ΔPが負のときは第2系統に負荷投入されたと判定できる。
【0040】
次に、ステップS4の判定で、全電力変動分ΔPが正でないときは、不平衡電力変動分ΔPが負であるか否かを判定し(S9)、不平衡電力変動分ΔPが負であるときは、ab相間(第1系統)の負荷開放であると判定する(S10)。また、不平衡電力変動分ΔPが負でないときは、不平衡電力変動分ΔPが正であるか否かを判定し(S11)、不平衡電力変動分ΔPが正であるときは、bc相間(第2系統)の負荷開放であると判定する(S12)。
【0041】
この場合は、全電力変動分ΔPが負であることから負荷開放されたと判断でき、さらに第1系統電力Pabが第2系統電力Pbcより大きいときに不平衡電力Pが正となるように定めているので、不平衡電力変動分ΔPが負のときは第1系統で負荷開放されたと判定でき、不平衡電力変動分ΔPが正のときは第2系統で負荷開放されたと判定できる。
【0042】
従って、100V系の電源コンセントが第1系統(ab相間)なのか第2系統(bc相間)なのかを知ることができるので、実際の負荷不平衡状態の改善に役立つ。すなわち、当該コンセントに接続する負荷のオンオフによりいずれの系統に属するかを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係わる単相三線式の状態判定装置のブロック構成図。
【図2】本発明の実施の形態における判定手段での電圧変動原因の判定処理内容を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施の形態における判定手段での電圧変動原因が200V系か100V系かの判定処理内容を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態における判定手段での100V系の負荷の投入/開放の判定処理内容を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態における判定手段での定常時の負荷状態の判定処理内容を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施の形態における判定手段でのコンセントが属する所属系統を特定するための判定処理内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
11…状態判定装置、12…電圧線、13…中性線、14…単相電圧電源、15…電流検出器、16…電圧検出器、17…AD変換器、18…記憶装置、19…演算制御装置、20…系統毎電力演算手段、21…全電力演算手段、22…不平衡電力演算手段、23…全電力変動分演算手段、24…判定手段、25…不平衡電力変動分演算手段、26…瞬時電圧変動検出手段、27…出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相三線式の2つの電圧線のうちの一方の電圧線と中性線との間および他方の電圧線と中性線との間にそれぞれ注入される電力を演算する系統毎電力演算手段と、
前記系統毎電力演算手段で演算された両系統の電力の和を前記単相三線式に注入される全電力として演算する全電力演算手段と、
前記系統毎電力演算手段で演算された両系統の電力の差を前記単相三線式の2つの電圧線の不平衡電力として演算する不平衡電力演算手段と、
前記全電力演算手段で得られた全電力の変動分を演算する全電力変動分演算手段と、
前記不平衡電力演算手段で得られた不平衡電力の変動分を演算する不平衡電力変動分演算手段と、
前記全電力変動分演算手段で得られた全電力変動分および前記不平衡電力変動分演算手段で得られた不平衡電力変動分に基いて単相三線式の電圧変動原因を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする単相三線式の状態判定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記全電力変動分が負であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷開放であると判定し、前記全電力変動分が正であるときは瞬時電圧変動の原因は負荷投入であると判定することを特徴とする請求項1記載の単相三線式の状態判定装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記全電力変動分の絶対値が不平衡電力変動分の絶対値より大きいときは、瞬時電圧変動の原因は2つの電圧線間の200V系の負荷変動であると判定し、全電力変動分の絶対値と不平衡電力変動分の絶対値とがほぼ等しいときは、瞬時電圧変動の原因は各々の電圧線と中性線との間の100V系の負荷変動であると判定することを特徴とする請求項1または2記載の単相三線式の状態判定装置。
【請求項4】
前記判定手段は、各々の電圧線と中性線との間の100V系の負荷変動が発生したとき、全電力変動分の正負により変動原因が負荷投入か負荷開放かを判定するとともに、不平衡電力変動分の正負により変動負荷の属する100V系を特定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一記載の単相三線式の状態判定装置。
【請求項5】
前記判定手段は、コンセントに接続された負荷のオン/オフ時の不平衡電力変動分の正負に基いて、そのコンセントが属する所属系統を特定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の単相三線式の状態判定装置。
【請求項6】
単相三線式の2つの電圧線のうちの一方の電圧線と中性線との間および他方の電圧線と中性線との間にそれぞれ注入される電力を演算し、
演算された両系統の電力の和を前記単相三線式に注入される全電力として求め、
演算された両系統の電力の差を前記単相三線式の2つの電圧線の不平衡電力として求め、
前記全電力の変動分と前記不平衡電力の変動分とに基いて前記単相三線式の電圧変動原因、負荷状態またはコンセント所属系統を判定することを特徴とする単相三線式の状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−28813(P2007−28813A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208114(P2005−208114)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)
【Fターム(参考)】