説明

単糖構造式の学習用教材またはプログラム

【課題】異性体の構造式を把握できる単糖構造式の学習用教材またはプログラムの提供。
【解決手段】総数59の単糖について、構造式の骨格を縦または横に表示し、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部と、骨格を構成する不斉炭素について、該不斉炭素に結合するOH基と水素とを該不斉炭素を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する可動表示部とを有し、可動表示部は、不斉炭素毎に左または上にOH基、右または下に水素が配置される第一位置と、右または上にOH基、左または下に水素が配置される第二位置とを有し、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする単糖構造式の学習用教材またはプログラム。不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が表示される第三表示部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学教材に関し、特に、アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖について、単糖の構造式の学習用教材またはプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明者の何森健は、4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図を特許文献1で公表しその有用性を示している。すなわち、図9で示される生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数4から6の単糖全てをつないだ連携図が、イズモリング(Izumoring)の全体図である。すなわち、図9から理解できることは、単糖は、炭素数4、5、6全てがつながっているということである。全体図は、イズモリングC6の中でのつながりと、イズモリングC5の中でのつながりと、イズモリングC4の中でのつながりと、C4、C5、C6が全てつながっていることである。この考え方は重要である。炭素数を減少させるには主に発酵法を用いる。炭素数の異なる単糖全てをつなぐという大きな連携図であることも特徴である。炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリングは、図9の下段および図10、さらに図13に示すように、炭素数が6つの単糖(ヘキソース)は全部で34種類あり、アルドースが16種類、ケトースが8種類、糖アルコールが10種類ある。
【0003】
希少糖とは自然界に希にしか存在しない単糖(アルドース、ケトース)およびその誘導体(糖アルコール)と定義づけることができる。この定義は糖の構造や性質による定義ではないため、あいまいである。すなわち、一定量以下の存在量を希少糖というなどの量の定義はなされていないためである。しかし、一般に自然界に多量に存在するアルドースとしてはD- グルコース、D- ガラクトース、D- マンノース、D- リボース、D- キシロース、L- アラビノースの6種類あり、それ以外のアルドースは希少糖と定義される。ケトースとしては、D-フラクトースが存在しており、他のケトースは希少糖といえる。他のケトースとして、D- プシコース、D- タガトース、D- ソルボース、L- フラクトース、L- プシコース、L-タガトース、L- ソルボースが挙げられる。また糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD- ソルビトールが比較的多いがそれ以外のものは量的には少ないので、これらも希少糖といえる。
【0004】
これらの糖は、酸化還元酵素の反応、アルドース異性化酵素の反応、アルドース還元酵素の反応で変換できることは、本発明者らの研究を含めた研究で知られている。D- グルコース(ブドウ糖)やD- フラクトースは自然界に多量に存在する糖であり安価であるが、これらから希少糖を合成することができなかった。ところが、新規な酵素が発見された。それはガラクチトールからD-タガトースを合成する酵素を持つ菌の培養液中に、全く予期しなかったD- ソルボースが発見されたことに端を発する。その原因を調べた結果、この菌がD- タガトース3エピメラーゼ(DTE)という酵素を産生していることを発見した(特許文献2)。このDTEはこれまでつながらなかったD-タガトースとD- ソルボースの間をつなぐ酵素であることがわかる。そしてさらに驚くことに、このDTEは全てのケトースの3位をエピ化する酵素であり、これまで合成接続できなかったD-フラクトースとD- プシコース、L- ソルボースとL- タガトース、D- タガトースとD- ソルボース、L- プシコースとL- フラクトース、に作用するという非常に幅広い基質特異性を有する、すなわち非常に幅広く基質を選択できるというユニークな酵素であることが分かった。このDTEの発見によって、すべての単糖がリング状につながり、単糖の知識の構造化が完成し、イズモリング(Izumoring)と名付けた。
【0005】
この図10をよく見てみると、左側にL型、右側にD型、真ん中にDL型があり、しかもリングの中央(星印)を中心としてL型とD型が点対称になっていることもわかる。例えば、D- グルコースとL- グルコースは、中央の点を基準として点対称になっている。しかもイズモリング(Izumoring)の価値は、全ての単糖の生産の設計図にもなっていることである。先の例で、D- グルコースを出発点としてL- グルコースを生産しようと思えば、D- グルコースを異性化→エピ化→還元→酸化→エピ化→異性化するとL- グルコースが作れることを示している。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリング(Izumoring)を使って、自然界に多量に存在する糖と微量にしか存在しない希少糖との関係が示されている。D- グルコース、D- フラクトース、D- マンノースと、牛乳中の乳糖から生産できるD- ガラクトースは、自然界に多く存在し、それ以外のものは微量にしか存在しない希少糖と分類される。DTEの発見によって、D- グルコースからD- フラクトース、D- プシコースを製造し、さらにD- アロース、アリトール、D- タリトールを製造することができるようになった。希少糖D- プシコースは、これまで入手自体が困難であったが、自然界に多量に存在する単糖から希少糖を大量生産する方法が開発されつつあり、その技術を利用して製造することができる。
炭素数が6つの単糖(ヘキソース)のイズモリング(Izumoring)の意義をまとめると、生産過程と分子構造(D型、L型)により、すべての単糖が構造的に整理され(知識の構造化)、単糖の全体像が把握できること、研究の効果的、効率的なアプローチが選択できること、最適な生産経路が設計できること、欠落部分について予見できること、が挙げられる。
【0006】
炭素数が5つの単糖(ペントース)のイズモリングは、図9の中段および図11に示すように、炭素数6のイズモリングよりも小さいリングである。しかし、C6のイズモリングと同じようにアルドース8個、ケトース4個および糖アルコール4個全てを含むことに変わりは無く、全てが酵素反応で結ばれる。異なる点は、酸化還元反応、異性化反応のみでリング状に全てが連結できることである。一方、DTEを用いることによって、さらに効率のよい生産経路が設計できることがわかる。炭素数5のイズモリングの特徴は、特に図6から明らかなように、炭素数6のイズモリングが点対象に全単糖が配置されているのに対し、左右が対象に配置されていることが大きな特徴である。これら全ペントースは、酵素反応により連結されていることから、炭素数6のイズモリングの場合と全く同様に、すべてのペントースが構造的に整理され(知識の構造化)、全体像が把握できること、研究の効果的、効率的なアプローチが選択できること、最適な生産経路が設計できること、欠落部分について予見できる意義を持っている。
【0007】
炭素数が4つの単糖(テトロース)のイズモリングは、図9の上段および図12に示すように、テトロースの構造上の特性のため、リングが完成しないという特徴がある。炭素数5のイズモリング上部半分の構造を持っている。このリングの場合も、炭素数5,6の場合と同様の酸化還元および異性化反応によって連結されている。DTEが炭素数4のケトースに反応しないため、ケトース間の反応は現在のところ存在しない。しかし、新規のエピメラーゼの存在が予測され、この研究は現在研究途上である。
全体の配置は、炭素数5と同様に左右対称であり、アルドース4個、ケトース2個および糖アルコール3個全てを含んでいる。すなわち炭素数5,6のイズモリングと同様の意義が存在する。
【0008】
イズモリングC6のD- グルコースは、イズモリングC5のD- アラビトールおよびイズモリングC4のエリスリトールとつながっている。この線は、発酵法によってD- グルコースからD- アラビトールおよびエリスリトールを生産できることを示している。すなわち、イズモリングC6、イズモリングC5およびイズモリングC4は連結されている。この連結は、炭素数の減少という主に発酵法による反応であり、このD- アラビトールおよびエリスリトールへの転換反応の二つ以外の発酵法によるイズモリングC6とイズモリングC5,C4との連結は可能である。例えばD- グルコースからD- リボースの生産も可能である。
このように、3つのイズモリングにより全ての炭素数4、5、6の単糖(アルドース、ケトース、糖アルコール)が連結されたことで、それぞれの単糖が全単糖の中でその存在場所を明確に確認できる。最も有名なキシリトールは、未利用資源の木質から生産できるD- キシロースを還元することで容易に生産できることを明確に確認できる。
もしも特定の単糖が生物反応によって多量に得られた場合には、それを原料とした新たな単糖への変換の可能性が容易に見いだすことが可能である。すなわち、この全体像から全ての単糖の原料としての位置を確実につかむことができるため、有用な利用法を設計することができる。特に廃棄物や副産物から単糖が得られた場合の利用方法を容易に推定できるのである。
【0009】
単糖類を還元すると、アルデヒド基およびケトン基はアルコール基となり、炭素原子が同数の多価アルコール、すなわち糖アルコールとなる。還元糖は食品等の分野で有用なものが多く、例えばL- アラビノースは、五炭糖で、蔗糖に近い味質を持ち、難吸収性のノンカロリーな糖質である。また蔗糖やマルトースなどの二糖が体内に吸収される際に作用する二糖水解酵素を阻害することが知られており、ダイエット用甘味料や糖尿病患者用甘味料としての利用が期待されている。また、L- アラビノースは医薬品の合成原料としても有用な糖である。
還元糖を取得する場合、その由来を天然物に求めることが行われている。例えば、L- アラビノースを取得する手段として、最近では、コーンファイバーやアラビアガム、ビートパルプなどに酵素や酸を作用させるL- アラビノースの製造法が開発されている。原料となるアラビナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン等の粗繊維はペクチン質や不要な粗繊維等と混在して存在する場合が多く、これらを酵素分解や酸加水分解処理することによって得られる溶液の中にはL- アラビノース等の還元糖の他に、ペクチン質や粗繊維、またこれらの分解物が混在している。L- アラビノースを精製する方法に関しては、L- アラビノース含有糖液中のキシロースおよびオリゴ糖と目的のL- アラビノースをイオン交換樹脂によるクロマトグラフィーで分画する方法や、多糖、オリゴ糖や塩類との分離を目的としたイオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、膜処理等が提案されている。
一方、単糖のデオキシ体については、有効な製造法および物質として認知されているものが少なく、製造法についての確立が第一に要望されている。
【0010】
近年指摘されてきている高校生の科学離れに対応し、日本の最先端の科学技術に触れ、多くの実験体験を通じて科学への興味・関心を高めることをねらいとして種々の企画がなされているが、イズモリング(Izumoring)の全体図である生産過程と分子構造(D型、L型)により、炭素数4から6の単糖全てをつないだ連携図の理解のための教材は存在しない。
従来、化学教材で用いられているものとして、例えば分子模型が挙げられる。この分子模型には数種の種類があり、その1つは球−棒状の分子模型である。これは、適当な大きさの複数の球に、原子価角に合わせて連結孔をあけ、球の中心間の距離が原子間距離に対応するように棒の両端を上記の連結孔に挿し込んで、各球を連結したものである。他の1つは空間充填模型またはスチュアート型模型と称されている模型である。これは、分子を構成する原子のフアン・デル・ワールス半径に相当する部品を、結合半径および原子価角に合うように結合したものである。
改良した分子模型としては、例えば、プラトンの正多面体の角を切り落した、14面体、20面体、26面体、32面体、球などの多面体をその原子表現体とすることにより、原子や分子の軌道概念に立脚した標準的な原子価角を使用して、分かり易く簡潔にし、かつ対称性の高い多面体を使用したことにより、分子の持つ対称性を見てわかり易いものとした。また、2種の球−棒状模型および空間充填型模型の対応関係が容易に理解でき、分子構造に関する種々の事項が一度に学習できる分子模型が提言されている(特許文献3)。
【0011】
【特許文献1】再表2004/063369号公報
【特許文献2】特許3333969号公報
【特許文献3】特開2004−233900号公報
【非特許文献1】G.E. Edelman, Spektrum Wiss. 1964(6),62
【非特許文献2】V. Ginsburg, Adv. Enzymol. 36,(1972),131
【非特許文献3】G.M.W. Cook, E.W. Stoddart,“Surface Carbohydratesof the Eucaryotic Cell", Academic Press,London, 1973
【非特許文献4】P. Albersheim, A.G. Darvill, Spektrum Wiss. 1985(11), 86
【非特許文献5】T.W.Rademacher, R.B. Parekh, R.A. Dwek, Ann. Rev. Biochem., 57,(1988), 785
【非特許文献6】T. Reichstein, E. Weiss, Adv. Carbohydr. Chem. 17, (9162〔sic〕), 65
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
化学式とは、化学物質を元素の構成で表現する表記法である。分子からなる物質を表す化学式を分子式、イオン物質を表す化学式をイオン式と呼ぶことがある。時として化学式と呼ぶべき場面においても、分子式と言い回される場合も多いので注意が必要である。化学式が利用される場面としては、物質の属性情報としてそれに関連付けて利用される場合と、化学反応式の一部として物質を表すために利用される場合とがある。
分子式は同一だが構造が異なる分子、またはそのような分子からなる化合物を異性体と呼ぶ。分子A1と分子A2が同一分子式で構造が異なる場合、A1はA2の異性体であり、A2はA1の異性体である。また同一分子式の一群の化合物をAと総称した場合、A1もA2もAの異性体である。「L-グルコースはL-アロースの異性体である」というのが前者の使い方であり、「L-グルコースの構造異性体は24種類ある」というのが後者の使い方である。
【0013】
化学物質の立体的な構造は、その物性に極めて大きな影響を及ぼす。そのため、異性体を学習する際には、立体的な構造を把握することが必要である。特許文献1に示されているものは、分子構造を示すための分子模型の教材であり、異性体を学習するための教材は、発明者の知る限りにおいては存在しなかった。炭素数が6つの単糖(ヘキソース)は全部で34種類あり、アルドースが16種類、ケトースが8種類、糖アルコールが10種類ある。
物質の構造を示すための化学式を構造式とよぶ。通常は平面上に構造のトポロジー的な関係だけを維持して表現されるので、構造式は実際の構造を写実的に写したものではない点に注意が必要である。通常、構造式は二次元に展開された図表として表現されるが、特に結合を表す線分を使わずに、分岐部分を基として括弧で括って一連ながりの文字列で表した構造式は示性式と呼ばれる。
構造式を示すには次に示す2つの方法がある。
(1)個々の原子の間を化学結合を表す、一重線(単結合)、二重線(二重結合)あるいは三重線(三重結合)で連結して分子構造を表す方法。
(2)特性基や基を連結して分子構造を表す方法。
これらの一方ないしは両方を使って構造式は表される。言い換えると示性式は後者の方法のみを使用し、基を組み立てて作成される。
もともと構造式は透視図法のような立体を平面に射影した図表ではなく、トポロジー的な情報、すなわち個々の原子と連結した原子との相対的な位置関係以外は図表に表現され得ないが、立体的な構造を把握することへの近道である。なお、種々の立体表示方法と投影法が考案されている。
【0014】
単糖の優位性は、炭素に結合しているOH基の配位がそれぞれ特有の構造をもっており、キラルな構造を持つ医薬品等の有用な化合物の合成原料として大変重要であることである。その有用性は理解されているが、その生産法が確立されていないということが大きな障害となっている。有機化学的にはキラルな構造を持つことが優位であるが、有機化学的手法によって、特定のキラルな構造を持つものを合成することは極めて困難であるという関係にある。すなわち、有機化学的な医薬品等の合成には重要であるということは、有機化学的な手法ではキラルな特定の構造を持つ単糖を合成することが非常に困難であることを意味している。
これらの単糖の研究開発における現状を背景に、バイオテクノロジーの手法を駆使して図9のイズモリングの戦略によってD−プシコース、D−アロースをはじめとした希少糖の生産が可能となっている。これまで利用できなかった単糖の特定のキラル構造を、有機化学的な原料として利用可能となって来ている。
【0015】
そこで、本発明は、少なくとも炭素数が6つの単糖(ヘキソース)の34種類の異性体の構造式で視覚的に表示させ、イズモリング(Izumoring)の全体図である分子構造(D型、L型)により、炭素数4から6の単糖全てをつないだ連携図(アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数は59)への興味・関心を高めることをねらいとしている。
すなわち、本発明は、理科的に重要な体験を通して、それらの体験が忘れがたい記憶となり、自身の興味関心を膨らませ創造的に物事に取り組む動機となるような、異性体の構造式を把握することができる単糖構造式の学習用教材またはプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以下の(1)〜(4)に記載の単糖構造式の学習用教材を要旨としている
(1)アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖について、構造式の骨格を縦または横に表示し、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部と、骨格を構成する不斉炭素について、該炭素原子に結合するOH基と水素とを該炭素原子を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する可動表示部とを有し、可動表示部は、不斉炭素毎に左または上にOH基、右または下に水素が配置される第一位置と、右または上にOH基、左または下に水素が配置される第二位置とを有し、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする単糖構造式の学習用教材。
(2)不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が表示される第三表示部を備えることを特徴とする(1)の単糖構造式の学習用教材。
(3)第三表示部の炭素原子毎の識別記号の組合せに対応した化合物名が表示される化合物名表示部を備える(2)の単糖構造式の学習用教材。
(4)4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図が組み合わされることを特徴とする(1)、(2)または(3)の単糖構造式の学習用教材。
【0017】
また、本発明は、以下の(5)〜(8)に記載の単糖構造式の学習用プログラムを要旨としている。
(5)アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖について、化学式の骨格をコンピュータに表示させるためのプログラムであって、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部を表示させるための手段と、骨格を構成する不斉炭素について、該炭素原子に結合するOH基と水素とを該炭素原子を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する可動表示部を表示させるための手段と、を備え、可動表示部は、炭素原子毎に左または上にOH基、右または下に水素が配置される第一位置と、右または上にOH基、左または下に水素が配置される第二位置とを有し、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする単糖構造式の学習用プログラム。
(6)不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が順番に表示される第三表示部を表示させるための手段を備えることを特徴とする(5)の単糖構造式の学習用プログラム。
(7)第三表示部の不斉炭素毎の識別記号の組合せに対応した化合物名が表示される化合物名表示部表示させるための手段を備えることを特徴とする(6)の単糖構造式の学習用プログラム。
(8)4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図の該当する単糖にマークが表示されることを特徴とする(5)、(6)または(7)の単糖構造式の学習用プログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異性体の構造式を把握することができる単糖構造式の学習用教材またはプログラムを提供することができる。
異性体の構造を視覚的に表現することができるため、初学者に対しても分かりやすく提供することができる。
イズモリング(Izumoring)の全体図である分子構造(D型、L型)により、炭素数4から6の単糖全てをつないだ連携図(アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数は59)への興味・関心を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖]
本発明においては、図9(4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング連携図)に示される59種の単糖を対象としている。単糖は、図9で示されているように、アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数は59である。ただし、ポリオールの場合は、二種類の名前として表示しているが180度回転させると重なることからも同一物質である。
また、図9は、4炭糖、5炭糖、6炭糖が連携したイズモリングを製造する経路を示す。そのイズモリングの反応を以下に整理して示す。イズモリングの反応は、エピ化、酸化反応、異性化反応、還元反応を用いる反応を行うので、それぞれに関して説明する。
1)エピメラーゼ反応
この図9において示しているように、ケトースの炭素3位のOH基をエピ化することで新しい単糖をはじめて生産可能としたDTE(D−タガトース3−エピメラーゼ)を用いることで全59種の戦略を確立できた。
2)酸化反応
イズモリングをリングとして完成し、全単糖を生産するにはポリオールが大きな役割を果たす。すなわちポリオールを微生物によって、その2位を酸化することでケトースを生産する工程が必須である。この反応は微生物反応であるので、ポリオールが微生物の菌体内に入り、そこで主にポリオール脱水素酵素によって対応するデオキシケトースへと酸化反応が行われる必要である。この過程がイズモリングにおいて反応が進行することが必須である。すなわち、ポリオールを菌体内に取り込み、ポリオール脱水素酵素によって2位あるいは5位を特異的に酸化することで、ケトースを生産する経路が存在する。
3)異性化反応
イソメラーゼ反応はアルドースの炭素1と炭素2の間における、酸化還元反応であり、イソメラーゼ反応においてはケトースから各種のアルドースを生産することが可能である。
4)還元反応
ケトースをポリオールへ還元する反応は、イズモリングにおいては酵母を用いた方法および、水素を用いた有機化学的な反応が利用できる。工業的な利用および確実な反応としては、現在のところニッケル触媒を用いた水素を用いた方法を用いて、ケトースの還元が可能であれば有利である。このニッケル触媒を用いた還元反応について、本発明においては確認した。従来の方法による水素添加法によるケトースから、それぞれに対応する16種類の糖アルコールへと還元できる。
【0020】
この結果が示すように、DTEがケトースに反応すること、微生物がポリオールを目的とするケトースへ酸化できること、イソメラーゼがケトースを対応するアルドースへ異性化できること、還元反応がケトースの生産へ適用できる。これらの結果は、これまで有機化学的手法では非常に困難であった、単糖がイズモリングの手法によって生産することが可能であることを明確に示している。すなわち、これは多くのキラルな構造を持つ単糖をイズモリングという新たな生産戦略によって、これまで生産することも、また、性質さえも全く不明であった多くの糖を、体系的に全てを生産できる方法を確立できたことを示している。得られた成果は、食品産業のみならず、これに関連する食品、化粧品、医薬品産業における工業的意義が極めて大きい。
【0021】
[化学式の学習用教材・プログラム]
本発明の教材またはプログラムは、物質の構造を示すための化学式である構造式を、日本の最先端の科学技術であると言える異性体の関係にある単糖の構造式を通して、忘れがたい記憶となるような理科的に重要な体験をすることができる体系的な化学式の学習用教材である。中学高学年、高校生、大学生などの体験者は、自身の興味関心を膨らませることになり、広く化学一般の創造的に物事に取り組む動機となるように、異性体の構造式の把握に関する基礎的な知識の向上・充実に寄与する単糖構造式の学習用教材またはプログラムである。
【0022】
[化学式の学習用教材の構成]
本発明の単糖構造式の学習用教材は、固定表示部と、可動表示部とを有する、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする。
固定表示部は、単糖の構造式の少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する骨格の部分を縦または横に表示した、構造が変化しない部分である。
糖とは、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、アルデヒド基 (-CHO) またはケトン基 (>C=O) をひとつ持つ。アルデヒド基を持つ糖をアルドース、ケトン基を持つ糖をケトースと分類する。一般的には炭水化物(糖質)と同義とされることが多いが、厳密には糖は炭水化物より狭い概念である。糖質化学、分子生物学などでは炭水化物の代わりに糖質ないしは糖と呼ぶ場合が多い。一方、栄養学や生化学では炭水化物と呼ぶが、徐々に糖質と呼ぶようになりつつある。
糖は、炭素の数によっても分けられる。糖を構成する炭素の数が3つであれば三炭糖(トリオース)、4つであれば四炭糖(テトラオース)、5つであれば五炭糖(ペントース)、6つであれば六炭糖(ヘキソース)、7つであれば七炭糖(ヘプトース)となる。ただし、このような名称は専ら単糖にのみ用いる。
固定表示部は、六炭糖(ヘキソース)の場合、アルドースはCHO-C-C-C-C-CHOH、ケトースはCHOH-(C=O)-C-C-C-CHOHで表される構造が変化しない骨格の部分である。この固定表示部の中の、不斉炭素に結合するOHの位置によって、アルドースおよびケトースが全ての異性体が表示できる。すなわち、この不斉炭素に結合するOHの位置によって、それぞれの異性体の数が決まる。なお、不斉炭素とは、分子中の1つの炭素原子が異なる4つの原子および原子集団(置換基)に共有結合しているとき、その炭素原子を不斉炭素と呼ぶ。通常は原子を省略して不斉炭素とだけいうことが多く、本発明においてもその例に従うこととする。
不斉炭素数が4である六単糖のアルドースの場合は、2の4乗の16個の異性体が存在することとなる。不斉炭素数が3であるケトースの場合は、2の三乗の8個の異性体が存在する。数が多いため、これらの全ての異性体の違いを明確に認識できる方法が重要になる。そのために、固定した不斉炭素を含む炭素鎖を通常は縦に表示するが、場合によっては横に表示してもよい。
可動表示部は、各不斉炭素について、該不斉炭素に結合するOH基と水素とを該不斉炭素を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する部分である。不斉炭素、つまりこれに結合しているOHとHの位置を変化によって異なる糖になる炭素であるから、OHを移動するものは、不斉炭素に結合しているもののみを対象にしている。
可動表示部は、HOとOHが空欄をもって並んで表示されたスライド片(例、図1の第一可動部301〜第四可動部304)でできており、例えばアルドースにおいては鎖式の不斉炭素-C-C-C-C-の各炭素ごとに、ケトースについては不斉炭素-C-C-C-の各炭素ことに、鎖に直角になるようにその炭素の下にくぐらせて、一方のOと空欄を塞ぐことでH-C-OHまたはHO-C-Hを表示するようになっている。
可動表示部は、構造が変化しない骨格の部分を縦に表示した場合は、鎖式の不斉炭素の各炭素ごとに左にOH基、右に水素が配置される第一位置と、右にOH基、左に水素が配置される第二位置とを有する。可動表示部は、構造が変化しない骨格の部分を横に表示した場合は、不斉炭素毎に上にOH基、下に水素が配置される第一位置と、下にOH基、上に水素が配置される第二位置とを有する。
アルドースにおいては鎖式の不斉炭素-C-C-C-C-のすべての炭素、ケトースについては鎖式の不斉炭素-C-C-C-のすべての炭素について、H-C-OHまたはHO-C-Hを表示し終えると、固定表示部と可動表示部で全体で一の化合物の構造式が表示される。六炭糖(ヘキソース)については、アルドースの場合は16種類、ケトースの場合は8種類の構造式を表示することができる。
【0023】
[第三表示部]
上記の不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が表示される。この場合第一位置である場合の特定の記号は、第二位置の他の特定の記号と区別がつけばいいのであり、例えば、1と2、AとBあるいは、アとイ等でもよい。ただしDおよびLは、糖のDおよびLを意味しており、他の記号等では表示することはしない。
DとLは、-CHOあるいは-CH(C=O)から一番遠い不斉炭素に結合するOHが右側のものをD、左側をLと定義されている。従って第一位置をL、第二位置をDとすることで、糖のDおよびLを明確に認識できる。
本発明の以下の説明は、上記の不斉炭素毎に第一位置である場合は1またはLの識別記号が、第二位置である場合は2またはDの識別記号が表示される例について行う。
六炭糖(ヘキソース)を例に取ると、異性体の数はアルドースの場合は16、ケトースの場合は8であり、構造式だけから識別することは困難である。そこで可動表示部を構成する、HOとOHが空欄をもって並んで表示されたスライド片のそれぞれの端部に左には1、右には2の符号を付して、鎖に直角になるようにその炭素の下にくぐらせ、一方のOと空欄を塞いだ時、塞がれた側の符号は内枠体の下になり、塞がれないでOHを表示する側の符号が表示されるようにしてある。アルデヒド基 (-CHO) またはケトン基 (>C=O) から遠い不斉炭素に結合するOHの向きが、本構造で表示する場合すなわちフィッシャーの投影図によると、右側にOHがある場合をD、左側にある場合をLと定義されているので、それを表示し、明確に糖のDおよびLを認識する。
固定表示部と可動表示部で全体で一の化合物の構造式が表示されると同時に、第三表示部には、六炭糖(ヘキソース)については、アルドースの場合は111 L、112 L,121 L,122 L,211 L,212 L,221 L,222 L,111 D、112 D,121 D,122 D,211 D,212 D,221 D,222Dの16種類、ケトースの場合は11L,12L,21L,22L,11D,12D,21 D,22 Dの8種類の表示される。
【0024】
[化合物名表示部]
第三表示部の炭素原子毎の識別記号の組合せに対応した化合物名が表示される
固定表示部と可動表示部で全体で一の化合物の構造式が表示されると、直ちに化合物名がわかる場合でも、第三表示部に表示される識別記号を通して、容易に化合物名に到達できるようになっている。
本発明の化学式の学習用教材の好ましい態様においては、固定表示部と、可動表示部とを内枠体内に、第三表示部と化合物群表示部とを内枠体の外に備えている。全体は外枠体の中に納まっている。化合物名表示部は、可動表示部に表示された異性体の構造式に対応する単糖名が表示される部分である。化合物名表示部には、単糖名の一覧表を掲載してもよいし、可動表示部と関連付けられた単糖名が自動表示されるように構成してもよい。
化合物名表示部には、例えば六炭糖(ヘキソース)については、アルドースの場合は111 L-アロース、112 L-グロース,121 L-グルコース,122 L-ガラクトース,211 L-アルトロース,212 L-イドース,221 L-マンノース,222 L-タロース,111 D-タロース、112 D-マンノース,121 D-イドース,122 D-アルトロース,211 D-ガラクトース,212 D-グルコース,221 D-グロース,222D-アロースの16種類、ケトースの場合は11L-プシコース,12L-ソルボース,21L-フルクトース,22L-タガトース,11D-タガトース,12D-フルクトース,21 D-ソルボース,22 D-プシコースの8種類が表示される。
ポリオールの場合は、111 L-アリトール、112 L-グリトール,121 L-グルシトール,122 L-ガラクチトール,211 L-アリトール,212 L-イディトール,221 L-マンニトール,222 L-タリトール,111 D-タリトール、112 D-マンニトール,121 D-イディトール,122 D-アリトール,211 D-ガラクチトール,212 D--グルシトール,221 D-グリトール,222D-アリトールの16種類が表示される。
ただし、ポリオールの場合は、二種類の名前として表示しているが180度回転させると重なることからも同一物質である。
図13に示すように、D-グルシトールとL-グリトール、 L-タリトールとL-アルトリトール、D-グリトールとL-グルシトール、D-アルトリトールとD-タリトール、L-アリトールとD-アリトール、L-ガラクチトールとD-ガラクチトール同一物質である。
【0025】
本発明の化学式の学習用教材は、木製ボード、紙製ボード、繊維性ボードなどの板部材により製作することが例示されるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0026】
[単糖構造式の学習用プログラム]
コンピュータプログラムによる本発明の化学式の学習用教材は、画面に、外枠体及び内枠体と、固定表示部と、可動表示部と、第三表示部と、化合物名表示部とを表示させるための手段を有する。
画面外枠体内に、化学式の骨格であって、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部データを読み出して、例えば六炭糖(ヘキソース)の場合、アルドースはCHO-C-C-C-C-CHOH、ケトースはCHOH-(C=O)-C-C-C-CHOHで表される構造が変化しない骨格の部分を縦に表示させる。骨格を構成する不斉炭素について炭素原子毎に左右または上下に各一個の空欄を設けている。空欄はアルドースとケトースに共通の-C-C-結合の部分、すなわち、アルドースにおいては鎖式の不斉炭素-C-C-C-C-の各炭素の部分、ケトースについては不斉炭素-C-C-C-の各炭素の部分である。
固定表示部は、六炭糖(ヘキソース)の場合、アルドースはCHO-C-C-C-C-CHOH、ケトースはCHOH-(C=O)-C-C-C-CHOHで表される構造が変化しない骨格の部分である。
可動表示部は、複数の可動部から構成されており、各可動部が「第一位置」と「第二位置」を有することは上述のとおりである。ただし、コンピュータプログラムにおいては、各可動部の任意の空欄、あるいは第三表示部等をクリックすることにより、「第一位置」と「第二位置」とが切り替えられる。すなわち該一対の空欄にOH基またはH記号を書き入れて、該炭素原子に結合するOH基と水素とを該炭素原子を中心に左右に交互に入れ替えて配置でき、炭素原子毎に左にOH基、右に水素が配置される第一位置と、右にOH基、左に水素が配置される第二位置とする可動表示部が設けられており、すべての空欄を埋めた時に全体で一の化合物の化学式が完成する。該学習用プログラムは、炭素原子毎に第一位置である場合は1またはLの識別記号が、第二位置である場合は2またはDの識別記号が順番に表示される第三表示部を備える。
該学習用プログラムは、第三表示部の不斉炭素毎の識別記号の組合せに対応した化合物名がリストで表示される化合物名表示部を備えており、該当する化合物名がマークされることを特徴とする。すなわち、配置位置が変換された化合物(構造式)の構成に基づいて、対応する識別コードが画面上に強調されて表示される。
化合物名表示部には、異性体の一覧表が表示されており、可動表示部の表示内容に対応した物質名のみが強調表示される。この際、可動表示部の表示内容に対応した化合物名のみを画面上に表示されるように構成してもよい。なお、化合物名表示部の表示状態(ON)を、非表示状態(OFF)に切り換え可能に構成してもよい。
本発明の化学式の学習用プログラムを実施するための装置は、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM、補助記憶装置(HDD等)などからなる処理装置と、画面上の一点の位置情報を入力して各種データや動作命令等の入力を行なうためのポインティングデバイス(マウス等)と、各種データや動作命令等の入力のための文字情報入力デバイス(キーボード等)と、ディスプレイと、を備えており、いわゆるパーソナルコンピュータを用いることができる。OS(オペレーティングシステム)は特定のものに限定されず、市販のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)開発用プログラム(例えば、Visual Basic(登録商標))により、本発明の化学式の学習用プログラムを製作することができる。
【0027】
[4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図]
本発明の単糖構造式の学習用教材またはプログラムには、図9〜図13で示されるイズモリング(Izumoring)全体図あるいは部分図を付属させることができる。これは多くのキラルな構造を持つ単糖をイズモリングによって体系的に学習するのに役立つ。
【0028】
以下では、本発明の実施形態を、実施例により具体的に説明する。ただし、かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することは可能である。
【実施例1】
【0029】
[六炭糖(ヘキソース)におけるアルドース、異性体の数16]
図1〜図2は、実施例1の化学式の学習用教材「アルドース」を示している。図1は、本実施例における化学式の学習用教材の「第一位置」を説明するための図であり、図2は本実施例の学習用教材の「第二位置」を説明するための図である。
実施例1の化学式の学習用教材は、外枠体1内に、化合物群の上位概念の化合物名(アルドース、ケトース、ポリオール等)を表示する化合物群表示部2と、内枠体3と、第一表示部100と、第二表示部200と、第三表示部300と、化合物名表示部400とを主な構成要素として備えている。
【0030】
固定表示部は、構造式の骨格を縦に表示し、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない部分であり、六炭糖(ヘキソース)の場合、アルドースはCHO-C-C-C-C-CHOHである。図面では、第一表示部100、第二表示部200および第三表示部の一部分(第一行中央部321〜第四行中央部324)で構成されている。
アルドースの場合、第一表示部100は、第一の基つまりアルデヒド基(-CHO)を表示しており、表示内容は固定されている。
第二表示部200は、第二の末端の構造つまり(-CH OH)を表示しており、表示内容は固定されている。
第三表示部300は、第一表示部100と第二表示部200との間に設けられている。
また、第三表示部300は、左右可動に構成された第一可動部301〜第四可動部304と、各可動部に記載された化学式を表示する窓である第一行左側表示部311〜第四行左側表示部314および第一行右側表示部331〜第四行右側表示部334と、表示内容が固定されている第一行中央部321〜第四行中央部324と、から構成される。
また、第一行中央部321〜第四行中央部324には、第一表示部100と第二表示部200の炭素(C)に結合する炭素(C)が直鎖に結合した状態で表示されている。すなわち、第三表示部300において、固定されている部分は、アルドースにおいては鎖式の不斉炭素-C-C-C-C-の部分である。
また、第一行左側表示部311〜第四行左側表示部314および第一行右側表示部331〜第四行右側表示部334には、各可動部(301〜304)に記載されているヒドロキシル基(OH)または水素(H)が表示され、各中央部(321〜324)の不斉炭素(C)の左右に結合するようになっている。
【0031】
次に、「第一位置」および「第二位置」における第三表示部300の表示態様について説明する。
上述のとおり、第一可動部301〜第四可動部304は、左右に可動であり、各可動部(301〜304)が左側にスライドし、第一行左側表示部311〜第四行左側表示部314にヒドロキシル基(OH)が表示される状態が「第一位置」であり、各可動部(301〜304)が右側にスライドし、第一行右側表示部331〜第四行右側表示部334に水素(H)が表示される状態が「第二位置」である。具体例を挙げて説明すると次のとおりである。
【0032】
第一可動部301が「第一位置」に位置する際には、第一行左側表示部311にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第一行右側表示部331には水素(H)が表示される(図1参照)。この際、第一行左識別記号341には「1」が表示される。
一方、第一可動部301が「第二位置」に位置する際には、第一行左側表示部311には水素(H)が表示され、第一行右側表示部331にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図2参照)。この際、第一行右識別記号351には「2」が表示される。
【0033】
第二可動部302が「第一位置」に位置する際には、第二行左側表示部312にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第二行右側表示部332には水素(H)が表示される(図1参照)。この際、第二行左識別記号342には「1」が表示される。
一方、第二可動部302が「第二位置」に位置する際には、第二行左側表示部312には水素(H)が表示され、第二行右側表示部332にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図2参照)。この際、第二行右識別記号352には「2」が表示される。
【0034】
第三可動部303が「第一位置」に位置する際には、第三行左側表示部313にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第三行右側表示部333には水素(H)が表示される(図1参照)。この際、第三行左識別記号343には「1」が表示される。
一方、第三可動部303が「第二位置」に位置する際には、第三行左側表示部313には水素(H)が表示され、第三行右側表示部333にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図2参照)。この際、第三行右識別記号353には「2」が表示される。
【0035】
第四可動部304が「第一位置」に位置する際には、第四行左側表示部314にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第四行右側表示部334には水素(H)が表示される(図1参照)。この際、第四行左識別記号344には「L」が表示される。
一方、第四可動部304が「第二位置」に位置する際には、第四行左側表示部314には水素(H)が表示され、第四行右側表示部334にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図2参照)。この際、第四行右識別記号354には「D」が表示される。
【0036】
次に化合物名表示部400について説明する。
化合物名表示部400は、第一対応表401と、第二対応表402と、から構成される。第一対応表401は、一番下(第三表示部の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が左向きであるもの(以下、Lと省略する)を表示しているものである。また第二対応表402は、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が右向きであるもの(以下、Dと省略する)を表示しているものである。すなわち、アルデヒド基 (-CHO) またはケトン基 (>C=O) から遠い側の末端からひとつ目の炭素原子については1の代わりにL、2の代わりにDの符号を付している。
第一対応表401および第二対応表402には、各々8つの単糖名が記載されている。そして、単糖名の左側に記載された3桁の数字は、上述の、左右の第一行左識別記号341〜第三行左識別記号343および第一行右識別記号351〜第三行右識別記号353と関連付けられており、単糖名の最初の1文字が第四行左識別記号344および第四行右識別記号354と関連付けられている。
【0037】
化合物名表示部400と、識別記号との関連付けの手順について具体例を挙げて説明する。
図1の場合、第一行左識別番号341に「1」、第二行左識別番号342に「1」、第三行左識別番号に「1」、第四行左識別番号344に「L」と表示されているので、各識別記号をあわせた「識別コード」は「111L」となる。
「識別コード」の最後の1文字が「L」であることから、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が左向きであるものを表示していることが分かる。そこで、第一対応表401を見て、各識別記号をあわせた「識別コード」である「111L」を参照すると、「111L」に対応する単糖の構造式の名称は、「L- Allose」であることが分かる。
【0038】
また、図2の場合、第一行右識別番号351に「2」、第二行右識別番号352に「2」、第三行右識別番号353に「2」、第四行右識別番号354に「D」と表示されているので、各識別記号をあわせた「識別コード」は「222D」となる。
「識別コード」の最後の1文字が「D」であることから、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が右向きであるものを表示していることが分かる。そこで、第二対応表402を見て、各識別記号をあわせた「識別コード」である「222D」を参照すると、「222D」に対応する単糖の構造式の名称は、「D−Talose」であることが分かる。
同様の手順により、各識別記号をあわせた「識別コード」を参照することで、化合物名表示部400に表示される16種の単糖の構造式の名称を把握することができる。
【実施例2】
【0039】
[六炭糖(ヘキソース)におけるポリオール、異性体の数10]
図3〜図6は、実施例2の化学式の学習用教材「ポリオール」を示している。図3は、本実施例の化学式の学習用教材の「第一位置」を説明するための図であり、図4は本実施例の化学式の学習用教材の「第二位置」を説明するための図である。また、図5は、本実施例の図3に対して第三表示部300にあるヒドロキシル基(OH)の立体的な配置位置を明確にするための立体構造表示図500を付加した図であり、図6は、本実施例の図4に対して第三表示部300にあるヒドロキシル基(OH)の立体的な配置位置を明確にするための立体構造表示図500を付加した図である。
以下、本実施形態の化学式の学習用教材について、実施例1と異なる点を中心に説明し、実施例1と同様の構成とすることができる点については、適宜説明を省略する。
【0040】
第一表示部100は、第一の基つまり(-CH OH)を表示しており、表示内容は固定されている。
第二表示部200は、第二の末端の構造つまり(-CH OH)を表示しており、表示内容は固定されている。
第三表示部300の構成、第一表示部100、第二表示部200、各中央部(321〜324)、各可動部(301〜304)、各可動部(301〜304)に記載されている化学式の結合状態、「第一位置」および「第二位置」における第三表示部300の表示態様、については実施例1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0041】
次に、図5、図6についての表示態様について詳細に説明する。
まず、第一可動部301が「第一位置」に位置する際、第一可動部301の第一行左側表示部311に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第一可動部301の第一行表示部501に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第一行表示部501に実線が表示されるため、第一可動部301の第一行左側表示部311に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面から突き出している状態であることがわかる(図5参照)。一方、第一可動部301が「第二位置」に位置する際、第一可動部301の第一行右側表示部331に表示されているヒドロキシル基(OH)と、第一可動部301の第一行表示部501に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第一行表示部501に破線が表示されるため、第一可動部301の第一行右側表示部331に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面の裏面の方向へ向いている状態であることがわかる(図6参照)。
【0042】
第二可動部302が「第一位置」に位置する際、第二可動部302の第二行左側表示部312に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第二可動部302の第二行表示部502に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第二行表示部502に破線が表示されるため、第二可動部302の第二行左側表示部312に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面の裏面の方向へ向いている状態であることがわかる(図5参照)。一方、第二可動部302が「第二位置」に位置する際、第二可動部302の第二行右側表示部332に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第二可動部302の第二行表示部502に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第二行表示部502に実線が表示されるため、第二可動部302の第二行右側表示部332に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面から突き出している状態であることがわかる(図6参照)。
【0043】
第三可動部303が「第一位置」に位置する際、第三可動部303の第三行左側表示部313に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第三可動部303の第三行表示部503に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第三行表示部503に実線が表示されるため、第三可動部303の第三行左側表示部313に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面から突き出している状態であることがわかる(図5参照)。一方、第三可動部303が「第二位置」に位置する際、第三可動部303の第三行右側表示部333に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第三可動部303の第三行表示部503に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第三行表示部503に破線が表示されるため、第三可動部303の第三行右側表示部333に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面の裏面の方向へ向いている状態であることがわかる(図6参照)。
【0044】
第四可動部304が「第一位置」に位置する際、第四可動部304の第四行左側表示部314に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第四可動部304の第四行表示部504に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第四行表示部504に破線が表示されるため、第四可動部304の第四行左側表示部314に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面の裏面の方向へ向いている状態であることがわかる(図5参照)。一方、第四可動部304が「第二位置」に位置する際、第四可動部304の第四行右側表示部334に表示されているヒドロキシル基(OH)と、立体構造表示図500の第四可動部304の第四行表示部504に記載されているヒドロキシル基(OH)と、を比較する。すると、立体構造表示図500の第四行表示部504に実線が表示されるため、第四可動部304の第四行右側表示部334に表示されているヒドロキシル基(OH)は、本実施例が描かれている紙面から突き出している状態であることがわかる(図6参照)。
なお、本実施例には、化合物名表示部400は設けられてはいないが、追加することも可能である。
【実施例3】
【0045】
[六炭糖(ヘキソース)におけるケトース、異性体の数8]
図7〜図8は、実施例3の化学式の学習用教材「ケトース」を示している。図7は、本実施例における化学式の学習用教材の「第一位置」を説明するための図であり、図8は本実施例の学習用教材の「第二位置」を説明するための図である。図7、8中には見やすさの観点から、図1、2と共通する符号301〜303、311〜313、321〜323、331〜333については付すのを省略している。
実施例3の化学式の学習用教材は、外枠体1内に、「Ketose」と表示した化合物群名表示部2と、幅をもつ内枠体3と、第一表示部100と、第二表示部200と、第三表示部300と、ケトース異性体名8種類が表示された化合物名表示部400とを主な構成要素として備えている。
【0046】
固定表示部は、構造式の骨格を縦に表示し、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない部分であり、六炭糖(ヘキソース)の場合、ケトースはCHOH-(C=O)-C-C-C-CHOHである。図面では、第一表示部100、第二表示部200および第三表示部の一部分(第一行中央部〜第三行中央部)で構成されている。
ケトースの場合、第一表示部100は、第一の基つまりケトン基 (>C=O) を含むCH2OH-(C=O)-を表示しており、表示内容は固定されている。
第二表示部200は、第二の末端の構造つまり(-CH OH)を表示しており、表示内容は固定されている。
第三表示部300は、第一表示部100と第二表示部200との間に設けられている。
第三表示部300は、左右可動に構成された第一可動部301〜第三可動部303と、各可動部(301〜303)に記載された化学式を表示する窓である第一行左側表示部311〜第三行左側表示部313および第一行右側表示部331〜第三行右側表示部333と、表示内容が固定されている第一行中央部321〜第三行中央部323と、から構成される。
また、第一行中央部321〜第三行中央部323には、第一表示部100と第二表示部200の炭素(C)に結合する炭素(C)が直鎖に結合した状態で表示されている。すなわち、第三表示部300において、固定されている部分は、ケトースにおいては鎖式の不斉炭素-C-C-C-の部分である。
また、第一行左側表示部311〜第三行左側表示部313および第一行右側表示部331〜第三行右側表示部333には、各可動部(301〜303)に記載されているヒドロキシル基(OH)または水素(H)が表示され、各中央部の炭素(C)の左右に結合するようになっている。
【0047】
次に、「第一位置」および「第二位置」における第三表示部300の表示態様について説明する。
上述のとおり、第一可動部301〜第三可動部303は、左右に可動であり、各可動部(301〜303)が左側にスライドし、第一行左側表示部311〜第三行左側表示部313にヒドロキシル基(OH)が表示される状態が「第一位置」であり、各可動部(301〜303)が右側にスライドし、第一行右側表示部331〜第三行右側表示部333に水素(H)が表示される状態が「第二位置」である。具体例を挙げて説明すると次のとおりである。
【0048】
第一可動部301が「第一位置」に位置する際には、第一行左側表示部311にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第一行右側表示部331には水素(H)が表示される(図7参照)。この際、第一行左識別記号341には「1」が表示される。
一方、第一可動部301が「第二位置」に位置する際には、第一行左側表示部311には水素(H)が表示され、第一行右側表示部331にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図8参照)。この際、第一行右識別記号351には「2」が表示される。
【0049】
第二可動部302が「第一位置」に位置する際には、第二行左側表示部312にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第二行右側表示部332には水素(H)が表示される(図7参照)。この際、第二行左識別記号342には「1」が表示される。
一方、第二可動部302が「第二位置」に位置する際には、第二行左側表示部312には水素(H)が表示され、第二行右側表示部332にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図8参照)。この際、第二行右識別記号352には「2」が表示される。
【0050】
第三可動部303が「第一位置」に位置する際には、第三行左側表示部313にはヒドロキシル基(OH)が表示され、第三行右側表示部333には水素(H)が表示される(図7参照)。この際、第三行左識別記号343には「L」が表示される。
一方、第三可動部303が「第二位置」に位置する際には、第三行左側表示部313には水素(H)が表示され、第三行右側表示部333にはヒドロキシル基(OH)が表示される(図8参照)。この際、第三行右識別記号353には「D」が表示される。
【0051】
次に化合物名表示部400について説明する。
化合物名表示部400は、第一対応表401と、第二対応表402と、から構成される。第一対応表401は、一番下(第三表示部の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が左向きであるもの(以下、Lと省略する)を表示しているものである。また第二対応表402は、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が右向きであるもの(以下、Dと省略する)を表示しているものである。すなわち、ケトン基 (>C=O) から遠い側の末端からひとつ目の炭素原子については1の代わりにL、2の代わりにDの符号を付している。
第一対応表401および第二対応表402には、各々4つの単糖名が記載されている。そして、単糖名の左側に記載された3桁の数字は、上述の、左右の第一行左識別記号341〜第二行左識別記号342および第一行右識別記号351〜第二行右識別記号352と関連付けられており、単糖名の最初の1文字が第三行左識別記号343および第三行右識別記号353と関連付けられている。
【0052】
化合物名表示部400と、識別記号との関連付けの手順について具体例を挙げて説明する。
図7の場合、第一行左識別番号341に「1」、第二行左識別番号342に「1」、第三行左識別番号に「L」と表示されているので、各識別記号をあわせた「識別コード」は「11 L」となる。
「識別コード」の最後の1文字が「L」であることから、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラル中心におけるヒドロキシル基(OH)が左向きであるものを表示していることが分かる。そこで、第一対応表401を見て、各識別記号をあわせた「識別コード」である「11 L」を参照すると、「11 L」に対応する単糖の構造式の名称は、「L- Allose」であることが分かる。
【0053】
また、図8の場合、第一行右識別番号351に「2」、第二行右識別番号352に「2」、第三行右識別番号353に「D」と表示されているので、各識別記号をあわせた「識別コード」は「22 D」となる。
「識別コード」の最後の1文字が「D」であることから、一番下(第三対応表の最後尾の行における中央部の炭素)のキラルの中心におけるヒドロキシル基(OH)が右向きであるものを表示していることが分かる。そこで、第二対応表402を見て、各識別記号をあわせた「識別コード」である「22 D」を参照すると、「22 D」に対応する単糖の構造式の名称は、「D−Talose」であることが分かる。
同様の手順により、各識別記号をあわせた「識別コード」を参照することで、化合物名表示部400に表示される8つの単糖の構造式の名称を把握することができる。
【0054】
実施例1〜3の教材は、図9〜図13のイズモリング(Izumoring)を付属させることができる。
実施例1〜3の教材は、木製ボード、紙製ボード、繊維性ボードなどの板部材により製作したが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は単なる単糖の構造異性体の認識にとどまらない。すなわち、単糖の反応を明確に認識することにも使用することができる。例えば、ケトースの3位のOHを移動することによって、DTEに反応を直接的に理解することが可能である。これは固定した部分が存在し、DTEによって変化する部分のみを移動することができるという構造上の利点からくるものである。
【0056】
また単糖間の反応についての認識として、このモデル一つのみを利用するのではなく、数個あるいは多くのモデルを利用することで、イズモリングはもとより多くの単糖の反応の経過を容易に認識することが可能である。すなわち、一つのモデルのみではなく、複数のモデルを組み合わせることによった、異性体の構造学習のみならず糖の変換や代謝の理解に大いに役立つものとなる。これらの組み合わせる手法を用いて、イズモリングと組み合わせることによって、有効な効率的な単糖変換計画は、代謝の実験計画を議論あるいはアイディアの創出に役立つものである。
【0057】
株式会社 東レ経営研究所が発表したレポートは、日本がとるべき理科離れ対策で欠かせない点として、(1)すべての国民の科学技術リテラシー向上、(2)21世紀型の「科学する心」を芽生えさせること、(3)理数系教育の改革、科学を文化・教養の一部にすること、(4)「科学の演奏者」(科学の研究や発見の中から大切な仕事を探し出し、一般の人たちに分かりやすく伝える人)の育成、(5)リアルな実験体験、(6)理系の地位・待遇の向上、(7)科学技術と社会をつなぐ活動を国策として息の長い時間軸で推進すること、などが重要であると提言している。
本発明の教材またはプログラムは、物質の構造を示すための化学式である構造式を、日本の最先端の科学技術であると言える異性体の関係にある単糖の構造式を通して、忘れがたい記憶となるような理科的に重要な体験をすることができる体系的な化学式の学習用教材であり、中学高学年、高校生、大学生などの体験者は、自身の興味関心を膨らませることになり、広く化学一般の創造的に物事に取り組む動機となるように、異性体の構造式の把握に関する基礎的な知識の向上・充実に寄与するものであると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Aldose」の「第一位置」を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Aldose」の「第二位置」を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Polyol」の「第一位置」を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Polyol」の「第二位置」を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Polyol」の「第一位置」における立体構造を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Polyol」の「第二位置」における立体構造を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Ketose」の「第一位置」における立体構造を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる化学式の学習用教材「Ketose」の「第二位置」における立体構造を説明するための図である。
【図9】4糖、5糖、6糖が連携したイズモリングを製造する経路を示す。
【図10】6糖が連携したイズモリングを製造する経路を示す。
【図11】5糖が連携したイズモリングを製造する経路を示す。
【図12】4糖が連携したイズモリングを製造する経路を示す。
【図13】構造式とセットのイズモリングC6の説明図を示す。
【符号の説明】
【0059】
1 外枠体
2 化合物群表示部
3 内枠体
100 第一表示部
200 第二表示部
300 第三表示部
301 第一可動部
302 第二可動部
303 第三可動部
304 第四可動部
311 第一行左側表示部
312 第二行左側表示部
313 第三行左側表示部
314 第四行左側表示部
321 第一行中央部
322 第二行中央部
323 第三行中央部
324 第四行中央部
331 第一行右側表示部
332 第二行右側表示部
333 第三行右側表示部
334 第四行右側表示部
341 第一行左識別記号
342 第二行左識別記号
343 第三行左識別記号
344 第四行左識別記号
351 第一行右識別記号
352 第二行右識別記号
353 第三行右識別記号
354 第四行右識別記号
400 化合物名表示部
401 第一対応表
402 第二対応表
500 立体構造表示図
501 第一行表示図
502 第二行表示図
503 第三行表示図
504 第四行表示図



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖について、構造式の骨格を縦または横に表示し、少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部と、骨格を構成する不斉炭素について、該炭素原子に結合するOH基と水素とを該炭素原子を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する可動表示部とを有し、可動表示部は、不斉炭素毎に左または上にOH基、右または下に水素が配置される第一位置と、右または上にOH基、左または下に水素が配置される第二位置とを有し、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする単糖構造式の学習用教材。
【請求項2】
不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が表示される第三表示部を備える請求項1の単糖構造式の学習用教材。
【請求項3】
第三表示部の不斉炭素毎の識別記号の組合せに対応した化合物名が表示される化合物名表示部を備えることを特徴とする請求項2の単糖構造式の学習用教材。
【請求項4】
4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図が組み合わされることを特徴とする請求項1、2または3の単糖構造式の学習用教材。
【請求項5】
アルドース、ケトース、およびポリオールの全体の総数59の単糖について、化学式の骨格をコンピュータに表示させるためのプログラムであって、
少なくとも鎖式の炭素−炭素結合を有する構造が変化しない固定表示部を表示させるための手段と、
骨格を構成する不斉炭素について、該炭素原子に結合するOH基と水素とを該炭素原子を中心に左右または上下に交互に入れ替えて配置する可動表示部を表示させるための手段と、を備え、
可動表示部は、不斉炭素毎に左または上にOH基、右または下に水素が配置される第一位置と、右または上にOH基、左または下に水素が配置される第二位置とを有し、全体で一の化合物の構造式が表示されることを特徴とする単糖構造式の学習用プログラム。
【請求項6】
不斉炭素毎に第一位置である場合は特定の記号またはLの識別記号が、第二位置である場合は前記と区別できる他の特定の記号またはDの識別記号が順番に表示される第三表示部を表示させるための手段を備えることを特徴とする請求項5の単糖構造式の学習用プログラム。
【請求項7】
第三表示部の不斉炭素毎の識別記号の組合せに対応した化合物名が表示される化合物名表示部表示させるための手段を備えることを特徴とする請求項6の単糖構造式の学習用プログラム。
【請求項8】
4炭糖、5炭糖、6炭糖についてのイズモリング(Izumoring)連携図の該当する単糖にマークが表示されることを特徴とする請求項5、6または7の単糖構造式の学習用プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−151198(P2009−151198A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330501(P2007−330501)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506388060)合同会社希少糖生産技術研究所 (18)