説明

印判

【課題】連続捺印のための手間が抑えられて、連続捺印を簡単、且つ、迅速に行うことができる印判を得る。
【解決手段】ベース筒1と、ベース筒1に上下移動自在に外嵌する外筒2と、外筒2に同行してベース筒1内を上下移動する内筒3と、内筒3内に固定する印字ユニット4と、外筒2を押し上げ付勢するばね5と、印字ユニット4の下面の印面8を覆う保護蓋6と、下降状態の外筒2を上昇移動不能にロックする係止手段9とを有する。保護蓋6は、ベース筒1の下端面1aより上側のカバー開口11からベース筒1内に入り込んで上昇状態の印字ユニット4の印面8の下側に位置する閉じ姿勢と、ベース筒1の外方へ退避する開放姿勢との間で揺動する。蓋開閉機構が、外筒2の下降に応じて保護蓋6を開放姿勢に揺動させるとともに、外筒2の上昇に応じて保護蓋6を閉じ姿勢に揺動させる。係止手段9は、保護蓋6が開放姿勢まで外筒2が下降したときに、外筒2をベース筒1に自動的に係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印面のインクが他物に付着したり印面に塵埃等が付着したりすることを防ぐために印面に保護蓋を臨ませてその印面を覆い隠し、捺印動作の際には保護蓋が印面から退避するように揺動して、印面を開放する印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜7には、捺印動作の際には保護蓋が印面から退避して印面を開放し、捺印終了後に保護蓋が印面に臨む位置に復帰する形態の印判が開示されている。また、特許文献3〜7には、保護蓋が印面から退避して印面を開放した状態でロックできる構成が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−7754号公報(図1−2)
【特許文献2】実開平6−24959号公報(図1−2)
【特許文献3】特開2002−29129号公報(図1−3)
【特許文献4】特開2000−238399号公報(図1−4)
【特許文献5】実用新案登録第2568412号公報(図1−6)
【特許文献6】実用新案登録第2552115号公報(第1−2図)
【特許文献7】実用新案登録第2570488号公報(図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献5〜7では、保護蓋を印面から退避させて印面を開放する操作を行ったのちでなければ、捺印操作を行うことができず、捺印操作を行うまでの手間が煩わしいことになる。特許文献3・4では、保護蓋が印面から退避して印面を開放した状態のまま操作部(特許文献3では外装キャップ48、特許文献4ではロック筒25)をロック位置に回動操作しなければならず、やはり捺印操作を行うまでの手間が煩わしいことになる。
【0005】
そこで本発明の目的は、連続捺印のための手間が抑えられて、連続捺印を簡単、且つ、迅速に行うことができる印判を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印判は、上下面が開口するベース筒1と、ベース筒1の外周面に対して上下スライド移動自在に外嵌する外筒2と、外筒2に固定してあって外筒2に同行してベース筒1内を上下スライド移動する内筒3と、内筒3内に固定する印字ユニット4と、ベース筒1と外筒2との間に介在してベース筒1に対して外筒2を押し上げ付勢するばね5と、印字ユニット4の下面に形成された印面8の下側を覆う保護蓋6と、ベース筒1に対して下降状態の外筒2を上昇移動不能にロックするための係止手段9とを有しており、ベース筒1は、保護蓋6をベース筒1の下端部内に出入りさせるためのカバー開口11を、ベース筒1の下端面1aより上側に形成してあり、保護蓋6は、ベース筒1に揺動自在に支持されていて、カバー開口11からベース筒1の下端部内に入り込んで上昇状態の印字ユニット4の印面8の下側に位置する閉じ姿勢と、ベース筒1の外方へ退避する開放姿勢との間で揺動可能になっており、外筒2の昇降動作に連動して保護蓋6を揺動操作する蓋開閉機構が設けられていて、蓋開閉機構は、外筒2の下降に応じて保護蓋6を開放姿勢に揺動操作し、外筒2の上昇に応じて保護蓋6を閉じ姿勢に揺動操作するようになっており、係止手段9は、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2が下降したときに、その外筒2をベース筒1に自動的に係止するように構成したことを第1の特徴とする(図1)。
【0007】
本発明に係る印判の第2の特徴は、前記第1の特徴に加えて、係止手段9は、外筒2またはベース筒1のうち、何れか一方の筒の外周面に設けた掛止部70と、他方の筒の外周面に設けた係合部71とを有しており、掛止部70は、上下方向に延びるレバー73と、レバー73の上下方向の両端部のうちの他方の筒側となる一端部に設けたフック77と、レバー73の上下中間に配置してあってレバー73を一方の筒の内外方向に揺動自在に支持する支持軸76と、レバー73のフック77側を一方の筒の内方へ向けて付勢する付勢体74とを有しており、係合部71は、掛止部70のフック77を引っ掛けるための係合角78を有しており、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2が下降したときに、レバー73のフック77が係合角78に引っ掛って係止されるとともに付勢体74の付勢力でレバー73のフック77の係止状態が保持され、付勢体74の付勢力に抗してレバー73を揺動させたときには、レバー73のフック77が係合角78から外れた状態になる点にある。
【0008】
本発明に係る印判の第3の特徴は、前記第1の特徴に加えて、係止手段9は、外筒2の外周面の下端部に設けた掛止部70と、ベース筒1の外周面の下端部に設けた係合部71とを有しており、掛止部70は、上下方向に延びるレバー73と、レバー73の下端部に設けたフック77と、レバー73の上下中間に配置してあってレバー73を外筒2の内外方向に揺動自在に支持する支持軸76と、レバー73の上端側を外筒2の外方へ向けて付勢する付勢体74とを有しており、係合部71は、掛止部70のフック77を引っ掛けるための係合角78を有しており、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2が下降したときに、レバー73のフック77が係合角78に引っ掛って係止されるとともに付勢体74の付勢力でレバー73のフック77の係止状態が保持され、付勢体74の付勢力に抗してレバー73の上部を外筒2側へ揺動させたときには、レバー73のフック77が係合角78から外れた状態になる点にある。
【0009】
本発明に係る印判の第4の特徴は、前記第1、第2および第3の何れかの特徴に加えて、保護蓋6は、印字ユニット4の印面8の下側を覆う印面カバー42と、印面カバー42の周縁から上方へ延びる揺動アーム41とを有しており、揺動アーム41の上部におけるベース筒1側の内面には、揺動軸44がベース筒1側へ向けて突出形成してあって、揺動軸44が、ベース筒1に設けた軸受穴10に入り込んで揺動自在に軸支されており、蓋開閉機構が、内筒3の周面に設けられる上下方向に長いリブ状のカム突起30と、保護蓋6の揺動軸44の軸端面に形成されていてカム突起30で回動操作される受動ピース55とを含み、カム突起30の下端と対向する内筒3の周面には、保護蓋6の受動ピース55に当接することで保護蓋6を強制的に閉じ操作するカム片31を設けてあり、内筒3の下降に連動して受動ピース55がカム突起30で回動操作されて、保護蓋6を閉じ姿勢から開放姿勢へ移行する点にある。
【0010】
本発明に係る印判の第5の特徴は、前記第1、第2、第3および第4の何れかの特徴に加えて、ベース筒1に対して上昇状態の外筒2を下降移動不能にロックするためのロック手段を有する点にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の印判は、不使用時には、保護蓋6が印字ユニット4の印面8の下側に位置する閉じ姿勢に位置しているので、その印面8が保護蓋6で覆われて、印面8のインクが他物に付着したり印面8に塵埃等が付着したりすること等を防止できる。そのうえで、ベース筒1の下端面1aを紙面等に当てた状態のまま外筒2を下降操作するだけで、保護蓋6が閉じ姿勢からベース筒1の外方へ退避する開放姿勢へ自動的に揺動して、印字ユニット4の印面8が開放されるとともに、印字ユニット4が下降してその印面8が紙面等に押し当てられて捺印されるので、外筒2を下降操作するだけで、保護蓋6に邪魔されることなく捺印を行うことができる。
【0012】
そして、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2を下降操作したときには、係止手段9で外筒2をベース筒1に自動的に係止できるので、外筒2の下降操作を1回行うだけで印字ユニット4の印面8を開放した状態がそのまま保持され、使用者は、例えば印判の外筒2を持って印判を次々と紙面等に押し当てていくだけで、連続して捺印を行うことができる。つまり、使用者は、連続捺印のための操作に煩わされることがなく、連続捺印を簡単、且つ、迅速に行うことができる。
【0013】
本発明では、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2が下降したときに、レバー73のフック77が係合角78に引っ掛って係止されるとともに付勢体74の付勢力でレバー73のフック77の係止状態が保持されるので、簡単な構成でありながら、係止手段9によって外筒2をベース筒1に確実に係止してその係止状態を保持できる。
【0014】
本発明では、レバー73を有する掛止部70を外筒2の外周面の下端部に設け、係合部71をベース筒1の外周面の下端部に設けて、外筒2が下降した状態でほとんど外筒2内に入り込むベース筒1には、上下に長いレバー73を設けていないので、係止手段9を設けたことによって外筒2の下降が制限されることが抑えられる。
【0015】
本発明では、受動ピース55を保護蓋6の揺動アーム41の揺動軸44の軸端面に設けてあるので、受動ピース55の小さい回動で保護蓋6を大きく回動操作できて、保護蓋6をより迅速に開閉操作できる。また、カム突起30の下降ストロークが少なくても保護蓋6を大きく回動操作でき、その分だけ外筒2の下降ストロークを小さくできて、印判の上下寸法を削減できる。カム突起30の下端と対向する内筒3の周面にカム片31を設けたので、外筒2が上昇するとき、カム片31で受動ピース55を回転操作して、保護蓋6を強制的に閉じ操作でき、不使用時の印面8の保護を確実に行えるうえ、保護蓋6の一部がベース筒1等に引っ掛っても保護蓋6を確実に閉じることができる。
【0016】
本発明では、ベース筒1に対して上昇状態の外筒2を下降移動不能にロックするためのロック手段を有するので、不使用時には、保護蓋6が印字ユニット4の印面8の下側に位置する閉じ姿勢を確実に維持できて、その印面8のインクが他物に付着したり印面8に塵埃等が付着したりすること等を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面は本発明に係る印判を示している。印判は、図1ないし図3に示すように、上下面が開口する円筒形状のベース筒1と、ベース筒1の外周面に対して上下スライド移動自在に外嵌する外筒2と、外筒2に固定してあって外筒2に同行してベース筒1内を上下スライド移動する円筒形状の内筒3と、内筒3内に固定する印字ユニット4と、ベース筒1と外筒2との間に介在してベース筒1に対して外筒2を押し上げ付勢する圧縮コイル形のばね5と、印字ユニット4の下面に形成された印面8の下側を覆う保護蓋6と、ベース筒1に対して上昇状態の外筒2を下降移動不能にロックするためのロック体7と、ベース筒1に対して下降状態の外筒2を上昇移動不能にロックするための係止手段9等を有している。保護蓋6は、ベース筒1に対して前後方向へ揺動自在に支持されている。
【0018】
ベース筒1は、図1および図3に示すように、その円筒形状の筒壁16において、保護蓋6の揺動方向(前後方向)と直交する左右方向の適所に、保護蓋6を軸支するための左右一対の軸受穴10・10を形成してある。保護蓋6は、印字ユニット4の印面8の下側を覆うための円板形状の印面カバー42と、印面カバー42の周縁の左右位置から上方へそれぞれ延びる左右一対の揺動アーム41・41とを有している。両揺動アーム41・41の上部におけるベース筒1側の内面には、それぞれ揺動軸44がベース筒1側へ向けて突出形成してあり、各揺動軸44が、各軸受穴10に入り込んで揺動自在に軸支されている。ベース筒1の各軸受穴10の中心軸、すなわち保護蓋6の各揺動軸44の中心軸は、ベース筒1の筒壁16の中心軸より僅かに前寄り(図1では左側)に位置する。
【0019】
ベース筒1の筒壁16の下端面1a近くの前側には、保護蓋6の印面カバー42をベース筒1の下端部内に出入りさせるためのカバー開口11を形成してある。そのカバー開口11は、ベース筒1の下端面1aより上側において、筒壁16の周方向に沿って円弧状に形成してある。筒壁16の上端の左右には、左右一対のばね保持片12・12をそれぞれ上向きに突出形成してある。保護蓋6の印面カバー42には、その周縁の前半部分に沿って円弧状に延びる蓋壁43を突出形成してあり、蓋壁43は、印面カバー42がベース筒1のカバー開口11を通ってベース筒1内に入り込んだときに、ベース筒1のカバー開口11を塞ぐようになっている(図1の状態)。ベース筒1において、筒壁16の上端の前側の内面には、図3に示すように、ロック体7を受け止めるためのストッパー壁15をベース筒1の内側へ張り出し形成してある。ストッパー壁15には、その左右中間に切り欠き14を形成してある。
【0020】
外筒2は、上下面が開口する円筒形状の主外筒17と、主外筒17の上端部に着脱可能に装着するキャップ18とを有しており、主外筒17の上端部には、キャップ18を外嵌係止する円筒形状の装着部19が形成されている。外筒2のキャップ18は、下向きに開口する有底円筒形状に形成されており(図2参照)、外筒2の装着部19は、キャップ18の内径に合わせて外筒2の筒壁33の外径よりも小さく形成してある。
【0021】
外筒2の装着部19の外周面には、図4および図5に示すように、周方向に環状に突出形成した凸条体39が形成されており、キャップ18の内周面には、周方向に環状に突出形成した凸条体40が形成されており、キャップ18を装着部19に装着する際に、キャップ18の凸条体40が、装着部19の凸条体39を乗り越えることで、その凸条体39に対して無理抜き可能に係止される。外筒2のキャップ18は、装着部19に装着した状態で装着部19の周方向へ回動可能になっている。外筒2の主外筒17は、その筒壁33の下半部の左右に逃げ溝20・20をそれぞれ形成してある(図3)。
【0022】
図1に示すように、外筒2の逃げ溝20・20より前側(図1では左側)の筒壁33の上下長さは、逃げ溝20・20より後ろ側(図1では右側)の筒壁33の上下長さに比べて短く形成してある。キャップ18は、図3および図8に示すように、その内部においてロック体7に外嵌して回動操作するための操作リブ24を設けてある。なお、外筒2の筒壁33の後ろ側には、ストラップ(不図示)等を結びつけるための紐通し部32が、筒壁33の外郭線より内側に凹む状態で形成してある(図4参照)。また、外筒2は、図2および図3に示すように、主外筒17の筒壁33の前面21およびキャップ18の前面45が平坦面に形成されている。
【0023】
内筒3は、図3に示すように、その大半を占める主筒壁25と、主筒壁25の上部に設けられて主筒壁25より径の小さい上筒壁26とを有しており、上筒壁26の上端の左右に係合爪27・27がそれぞれ上向きに突出形成してある。主筒壁25の左右周面には、平坦なガイド面29をそれぞれ形成してある。ロック体7は、平面視がC字形状のクリップ47と、クリップ47の上縁の前部に沿って円弧状に湾曲した状態で上向きに延びる操作片48と、クリップ47の下縁の前部に沿って円弧状に湾曲した状態で下向きに延びる縦長のストッパー爪49とを有する。ロック体7の操作片48の下部に、縦長のクリック溝50が形成される。
【0024】
外筒2の装着部19の上端部の内面には、図3および図5に示すように、係合壁22を内向きに張り出し形成してあり、係合壁22は、装着部19の内周面に沿って環状に形成されている。係合壁22の内周縁の左右には、内筒3の係合爪27・27がそれぞれ嵌合固定される左右一対の圧嵌部22a・22aが切り欠き形成され、係合壁22の内周縁の前部には、ロック体7の操作片48が外筒2の周方向に移動可能に嵌合する扇状の凹入部22bが切り欠き形成されている。係合壁22の凹入部22bの前縁には、図3および図8に示すように、クリック用の左右一対のリブ23・23を形成してあり、リブ23・23には、ロック体7の操作片48のクリック溝50が落ち込み係合可能になっている(図8(a)・(b)参照)。
【0025】
そして、ロック体7のクリップ47を、内筒3の上筒部26の外周側に嵌め込むことにより(図4参照)、ロック体7が、内筒3の上筒部26の周方向に回動自在な状態で内筒3に組み付けられる。この組付状態でロック体7のストッパー爪49が、内筒3の主筒壁25の前面を上筒壁26の周面に沿って凹ませた凹部28に入り込んでおり、凹部28の形成範囲内でロック体7が周方向に回動できる。ロック体7の操作片48は、図8(a)・(b)に示すように、キャップ18の操作リブ24に嵌合しており、ロック体7がキャップ18の周方向の回動に追従して回動する。そのキャップ18の回動に伴ってロック体7のクリック溝50が、図8(a)または図8(b)に示すように、リブ23・23の何れか一方に落ち込み係合することにより、クリック感が得られる。
【0026】
外筒2のキャップ18を回動操作することで、図9(a)に示すように、ロック体7のストッパー爪49がベース筒1のストッパー壁15の切り欠き14に臨んだときには、ベース筒1に対して外筒2を下降させた際にストッパー爪49がストッパー壁15の切り欠き14を通過して、外筒2が下降可能になる(アンロック状態)。外筒2を回動操作して、図9(b)に示すように、ロック体7のストッパー爪49がベース筒1のストッパー壁15に臨んだときには、ベース筒1に対して外筒2を下降させようとしてもロック体7のストッパー爪49の下端がベース筒1のストッパー壁15に当接して、外筒2が下降不能になる(ロック状態)。
【0027】
印字ユニット4は、図3および図4に示すように、上下方向に長いとともに上下に段差を形成した保持筒34と、保持筒34内の下端部に装着されてインクを含浸するインク含浸マット35と、保持筒34内の下端部に装着されて下面に印面8が形成されるゴム印字体36と、保持筒34の上端開口を塞ぐ筒栓37等を有するユニット部品から成り、そのユニット部品のみで販売可能になっている。ゴム印字体36は、ポーラス(多孔性)ゴム等で形成してあり、印面金具38で保持筒34の下端に抜け外れ不能に固定される。そして、保護蓋6は、印面カバー42がゴム印字体36の下面を覆い隠す閉じ姿勢(図2および図4の状態)と、印面カバー42がベース筒1の前面外方へ揺動して印字ユニット4の下降領域から退避する開放姿勢(図6および図7の状態)との間で揺動する。
【0028】
外筒2の昇降動作に連動して保護蓋6の揺動を操作するために、内筒3および保護蓋6には蓋開閉機構を設けてある。蓋開閉機構は、図3に示すように、内筒3の主筒壁25の周面の左右のガイド面29・29にそれぞれ設けられるカム突起30と、カム突起30の下端と対向する各ガイド面29の下方にそれぞれ設けられるカム片31と、保護蓋6の各揺動軸44の軸端面にそれぞれ突出形成されていてカム突起30およびカム片31で回動操作される受動ピース55・55とを含んでいる。
【0029】
内筒3の各カム突起30は、上下方向に長く延びるリブ状に形成してあり、図1および図6に示すように、各カム突起30の下端には、保護蓋6の各受動ピース55を回動操作する開き操作面56が斜めに形成してある。内筒3の各カム片31は、保護蓋6の各受動ピース55にそれぞれ当接することで、保護蓋6の各受動ピース55を回動操作して、保護蓋6を強制的に閉じ操作して閉じ姿勢へ復帰させるために設けてある。各カム片31の上面側には、逆ヘ字状に屈曲する閉じ操作面57と、保護蓋6の閉じ限界を規制するストッパー面58とをそれぞれ設けてある。保護蓋6の各受動ピース55が回動するときに、受動ピース55と、カム突起30又はカム片31とが干渉するのを避けるために、カム突起30とカム片31とは所定の間隔を隔てて配置してある。そして、保護蓋6の各揺動軸44をベース筒1の各軸受穴10にそれぞれ組み込んだ状態で、各揺動軸44の軸端面の受動ピース55が内筒3のカム突起30にそれぞれ対向する。
【0030】
保護蓋6の各受動ピース55は、4分割の円形状の基部61と、その基部61に連続して各揺動軸44の軸端面の周縁近傍まで延びる横臥L字状の受動片62とを有する。受動片62は、その揺動軸44の周縁側の先端上面に、内筒3のカム突起30の開き操作面56に当接して回動操作される第1接当面63を斜めに形成してある。受動片62は、その揺動軸44の周縁側の先端下面に、内筒3のカム片31の閉じ操作面57に当接して回動操作される第2接当面64を形成してある。各受動ピース55の基部61の上隅には、カム突起30の上下方向に延びる直線壁52に当接して保護蓋6の開放限界を規定する第3接当面65が斜めに形成してある。第1接当面63と第3接当面65との間は三角形状に切り欠いてあり、この切り欠きを設けたことによって、保護蓋6の受動ピース55がカム突起30で回動操作されるときに、受動ピース55とカム突起30とが干渉することが回避される。
【0031】
保護蓋6が閉じ状態にあるときには、保護蓋6の各受動ピース55の受動片62が、図1に示すように、内筒3のカム突起30とカム片31との間に挟まれており、受動片62の下面側がカム片31で受け止められている。この状態から外筒2を押し下げ操作すると、その外筒2に内筒3が同行して下方へ移動して、内筒3のカム突起30の開き操作面56が保護蓋6の受動片62の第1接当面63に当接し、保護蓋6の揺動軸44が図1の時計回りの方向(開放姿勢への方向)に回動し、保護蓋6が時計回りの方向に回動する。
【0032】
外筒2が更に押し下げ下降することで、保護蓋6の第1接当面63が、内筒3のカム突起30の開き操作面56から直線壁52へ移行して直線壁52に受け止められ、それに応じて保護蓋6の揺動軸44が更に回動する。この回動によって、保護蓋6の第3接当面65が、カム突起30の直線壁52で受け止められ、保護蓋6が開放姿勢で保持される(図6の状態)。このとき、図7に示すように、保護蓋6の印面カバー42がベース筒1の前面外方に退避しており、外筒2および内筒3が更に最下端まで下降することで、保護蓋6が開放姿勢のまま印字ユニット4のゴム印字体36の印面8がベース筒1の下側に位置しており、そのゴム印字体36の印面8が紙面等に押し付けられることで、印面8のインクが紙面等に転写されて捺印される。
【0033】
係止手段9は、図1に示すように、外筒2の主外筒17の外周面の下端部であって主外筒17の後面側(図1では右側)に設けた掛止部70と、ベース筒1の主筒壁25の外周面の下端部であって主筒壁25の後面側に設けた係合部71とを有する。係合部71は、主筒壁25から外方へ突出してあり、その突出先端側に横長の係止溝72を形成してある。掛止部70は、前後方向へ揺動可能な状態で外筒2に支持されるレバー73と、レバー73の上端側を外方へ付勢するコイルばね(付勢体)74と、レバー73を支持する支持部75とを有する。レバー73は、上下方向に延びるへ字状に形成されている。
【0034】
レバー73は、その下端部において外筒2側に折れ曲がるフック77が設けられており、そのフック77が、係合部71の係止溝72の上面側に形成された係合角78に引っ掛け可能になっている。コイルばね74は、レバー73の上端部73aとベース筒1の外周面との間に配置されている。支持部75は、レバー73の左右および上側を囲むようにして、ベース筒1の外周面から外方へ突出しており、支持部75の左右の側壁75a・75aにレバー73が支持軸76を介して揺動可能に支持されている。
【0035】
そして、外筒2が最下端位置まで押し下げ下降されたときには、レバー73のフック77が、係合部71の上壁に当たり(図6の状態)、コイルばね74の付勢力に抗してフック77が外方に押される。次いで、レバー73のフック77が、係合部71の上壁を外側から乗り越えて係止溝72内に入り込んで係合部71の係合角78に引っ掛って係止される(図7の状態)。これによって、保護蓋6が開放姿勢であって印字ユニット4のゴム印字体36の印面8がベース筒1の下側に位置した状態で保持される。したがって、そのゴム印字体36の印面8のインクを紙面等に連続して転写(捺印)することができる。
【0036】
なお、ベース筒1の下端面1aを紙面等に押し付けて外筒2を押し下げたときには、ベース筒1の下端面1aの下側に印字ユニット4の印面8が突出するので、その突出によって外筒2が最下端位置へ確実に下降できるとは限らず、レバー73のフック77が係合部71の係合角78に引っ掛り難いことがある。この場合、例えば本印判を斜めに傾けた姿勢で係止手段9の係合部71の下端を紙面等に押し付けることで、外筒2を最下端位置まで確実に下降させることができる。これに続けて、本印判を紙面等に対して垂直姿勢にすることで、ゴム印字体36の印面8のインクを紙面等に転写することができる。
【0037】
連続捺印の完了後に、レバー73の上端部73aを、コイルばね74の付勢力に抗して外筒2側に押すことで、レバー73のフック77が係合角78から外れ、ばね5の付勢力によって外筒2と内筒3と印字ユニット4とが一緒に押し上げられる。そして、印字ユニット4のゴム印字体36の印面8がカバー開口11を通過し終わるタイミングで、保護蓋6の第1接当面63がカム突起30の直線壁52から外れて、保護蓋6の揺動軸44が図7の反時計回りの方向(閉じ姿勢への方向)に回動する。外筒2と内筒3と印字ユニット4とが更に上昇することで、図7に示すように、保護蓋6が更に反時計回りに回動して、内筒3のカム片31の閉じ操作面57が、保護蓋6の受動片62の第2接当面64に当接したのち、受動片62の下面がカム片31のストッパー面58で受け止められて保護蓋6が閉じ状態に復帰し、その閉じ姿勢で保護蓋6が保持される。
【0038】
なお、ゴム印字体36の印面8のインクを紙面等に一回だけ転写(捺印)するときには、指等でレバー73の上端部73aを外筒2側に押した状態を維持したまま、外筒2を押し下げて印面8のインクを紙面等に転写したのち、外筒2の押し下げ力を開放し、または保護蓋6が開放姿勢になって印面8のインクが紙面等に転写可能になっているが、レバー73のフック77が係合部71の係合角78に引っ掛る手前の状態で、印面8のインクを紙面等に転写したのち、外筒2の押し下げ力を開放することになる。これらの場合、外筒2のレバー73のフック77がベース筒1の係合部71の係合角78に引っ掛けられていないので、外筒2と内筒3と印字ユニット4とが直ちに上昇するとともに、保護蓋6が閉じ状態に直ちに復帰する。
【0039】
印判を構成する各部品は次の手順で組み立てる。まず内筒3をベース筒1に下面側から差し込んで、ロック体7を内筒3に組み、保護蓋6の揺動軸44をベース筒1の軸受穴10に組み付けて、内筒3とベース筒1とを仮組みする。次いで、ベース筒1のばね保持片12の間にばね5を組み、両者1・5を外筒2に下面側から差し込むことにより、内筒3の左右の係合爪27を外筒2の係合壁22の圧嵌部22aにそれぞれ嵌合させて、内筒3を外筒2と一体化する。その後、外筒2のキャップ18を主外筒17に装着する。最後に、印字ユニット4を内筒3の下面側から差し込んで、内筒3と印字ユニット4とを圧嵌係合部51(図4)で圧嵌固定することにより、印判が完成する。なお、印字ユニット4は、内筒3に対して着脱自在になっている。
【0040】
係止手段9は、図10に示すように、掛止部70を外筒2の主外筒17の上下方向の中間部に設けるとともにその掛止部70の下端から主外筒17の下端まで縦長の逃げ溝79を形成し、また係合部71をベース筒1の上下方向の中間部に設けてもよい。この場合にも、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2を下降させたときには、ベース筒1の係合部71が逃げ溝79に入り込んだ状態で、掛止部70のレバー73のフック77が係合部71の係合角78に引っ掛って係止されるとともにばね74の付勢力でレバー73のフック77の係止状態が保持される。つまり、掛止部70を配置する位置は、外筒2の下端以外であってもよく、これに合わせて係合部71を配置する位置も、ベース筒1の下端以外であってもよい。
【0041】
コイルばね74は、レバー73の下端部とベース筒1の外周面との間に配置してもよい。この場合、コイルばね74は、引っ張りばねとしてレバー73のフック77を外筒2側に引っ張ることになる。また、コイルばね74に代えて、板ばねやゴム等の弾性体を配置してもよい。さらに、コイルばね74に代えて、例えばレバー73と一体成形したばねを設けてもよい。
【0042】
また、係止手段9は、掛止部70をベース筒1の下端部に設け、これに合わせて係合部71を外筒2の下端部に設けてもよい。この場合、掛止部70のレバー73のフック77が上側になっており、保護蓋6が開放姿勢になる位置まで外筒2が下降したときに、レバー73のフック77が係合部71の係合角78に引っ掛って係止されるとともにばね74の付勢力でレバー73のフック77の係止状態が保持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の印判の要部を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の印判の斜視図である。
【図3】本発明の印判の分解斜視図である。
【図4】本発明の印判全体の縦断側面図である。
【図5】本発明の印判全体の縦断正面図である。
【図6】本発明の印判の捺印状態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の印判の捺印状態を示す側面図である。
【図8】操作リブでのロック体の操作を示す図5のA−A線断面図である。
【図9】ストッパー爪とストッパー壁との関係を示す図5のB−B線断面図である。
【図10】本発明の他の実施例の印判全体の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース筒
1a 下端面
2 外筒
3 内筒
4 印字ユニット
5 ばね
6 保護蓋
7 ロック体
8 印面
9 係止手段
11 カバー開口
30 カム突起
31 カム片
41 揺動アーム
42 印面カバー
44 揺動軸
55 受動ピース
70 掛止部
71 係合部
72 係止溝
73 レバー
74 ばね
76 支持軸
77 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面が開口するベース筒(1)と、ベース筒(1)の外周面に対して上下スライド移動自在に外嵌する外筒(2)と、外筒(2)に固定してあって外筒(2)に同行してベース筒(1)内を上下スライド移動する内筒(3)と、内筒(3)内に固定する印字ユニット(4)と、ベース筒(1)と外筒(2)との間に介在してベース筒(1)に対して外筒(2)を押し上げ付勢するばね(5)と、印字ユニット(4)の下面に形成された印面(8)の下側を覆う保護蓋(6)と、ベース筒(1)に対して下降状態の外筒(2)を上昇移動不能にロックするための係止手段(9)とを有しており、
ベース筒(1)は、保護蓋(6)をベース筒(1)の下端部内に出入りさせるためのカバー開口(11)を、ベース筒(1)の下端面(1a)より上側に形成してあり、
保護蓋(6)は、ベース筒(1)に揺動自在に支持されていて、カバー開口(11)からベース筒(1)の下端部内に入り込んで上昇状態の印字ユニット(4)の印面(8)の下側に位置する閉じ姿勢と、ベース筒(1)の外方へ退避する開放姿勢との間で揺動可能になっており、
外筒(2)の昇降動作に連動して保護蓋(6)を揺動操作する蓋開閉機構が設けられていて、蓋開閉機構は、外筒(2)の下降に応じて保護蓋(6)を開放姿勢に揺動操作し、外筒(2)の上昇に応じて保護蓋(6)を閉じ姿勢に揺動操作するようになっており、
係止手段(9)は、保護蓋(6)が開放姿勢になる位置まで外筒(2)が下降したときに、その外筒(2)をベース筒(1)に自動的に係止するように構成したことを特徴とする印判。
【請求項2】
係止手段(9)は、外筒(2)またはベース筒(1)のうち、何れか一方の筒の外周面に設けた掛止部(70)と、他方の筒の外周面に設けた係合部(71)とを有しており、
掛止部(70)は、上下方向に延びるレバー(73)と、レバー(73)の上下方向の両端部のうちの他方の筒側となる一端部に設けたフック(77)と、レバー(73)の上下中間に配置してあってレバー(73)を一方の筒の内外方向に揺動自在に支持する支持軸(76)と、レバー(73)のフック(77)側を一方の筒の内方へ向けて付勢する付勢体(74)とを有しており、
係合部(71)は、掛止部(70)のフック(77)を引っ掛けるための係合角(78)を有しており、
保護蓋(6)が開放姿勢になる位置まで外筒(2)が下降したときに、レバー(73)のフック(77)が係合角(78)に引っ掛って係止されるとともに付勢体(74)の付勢力でレバー(73)のフック(77)の係止状態が保持され、付勢体(74)の付勢力に抗してレバー(73)を揺動させたときには、レバー(73)のフック(77)が係合角(78)から外れた状態になる請求項1に記載の印判。
【請求項3】
係止手段(9)は、外筒(2)の外周面の下端部に設けた掛止部(70)と、ベース筒(1)の外周面の下端部に設けた係合部(71)とを有しており、
掛止部(70)は、上下方向に延びるレバー(73)と、レバー(73)の下端部に設けたフック(77)と、レバー(73)の上下中間に配置してあってレバー(73)を外筒(2)の内外方向に揺動自在に支持する支持軸(76)と、レバー(73)の上端側を外筒(2)の外方へ向けて付勢する付勢体(74)とを有しており、
係合部(71)は、掛止部(70)のフック(77)を引っ掛けるための係合角(78)を有しており、
保護蓋(6)が開放姿勢になる位置まで外筒(2)が下降したときに、レバー(73)のフック(77)が係合角(78)に引っ掛って係止されるとともに付勢体(74)の付勢力でレバー(73)のフック(77)の係止状態が保持され、付勢体(74)の付勢力に抗してレバー(73)の上部を外筒(2)側へ揺動させたときには、レバー(73)のフック(77)が係合角(78)から外れた状態になる請求項1に記載の印判。
【請求項4】
保護蓋(6)は、印字ユニット(4)の印面(8)の下側を覆う印面カバー(42)と、印面カバー(42)の周縁から上方へ延びる揺動アーム(41)とを有しており、
揺動アーム(41)の上部におけるベース筒(1)側の内面には、揺動軸(44)がベース筒(1)側へ向けて突出形成してあって、揺動軸(44)が、ベース筒(1)に設けた軸受穴(10)に入り込んで揺動自在に軸支されており、
蓋開閉機構が、内筒(3)の周面に設けられる上下方向に長いリブ状のカム突起(30)と、保護蓋(6)の揺動軸(44)の軸端面に形成されていてカム突起(30)で回動操作される受動ピース(55)とを含み、
カム突起(30)の下端と対向する内筒(3)の周面には、保護蓋(6)の受動ピース(55)に当接することで保護蓋(6)を強制的に閉じ操作するカム片(31)を設けてあり、
内筒(3)の下降に連動して受動ピース(55)がカム突起(30)で回動操作されて、保護蓋(6)を閉じ姿勢から開放姿勢へ移行する請求項1と2と3の何れかに記載の印判。
【請求項5】
ベース筒(1)に対して上昇状態の外筒(2)を下降移動不能にロックするためのロック手段を有する請求項1と2と3と4の何れかに記載の印判。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−173919(P2008−173919A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11304(P2007−11304)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)