説明

印刷インキ及びそれを用いた印刷物

【課題】金属箔を印刷基材に箔押しするのと同等な輝度感を有する印刷物を得る事ができる印刷インキを提供する。
【解決手段】金属蒸着膜細片を含有する印刷インキにおいて、該金属蒸着膜細片がアクリル樹脂で表面処理されていることを特徴とする印刷インキ及びそれを用いた印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキに関し、特に、金属光沢を有する印刷物を提供し得る高輝度印刷インキに関する。更にそれを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、ペットボトル、ガラス瓶、金属缶等の容器が、清涼飲料水、乳飲料、ビール、ワイン、調味料、化粧品等の液体容器として広く使用されている。
通常、これらの液体容器の外表面に、装飾あるいは内容物表示等のために、文字、図形、記号、絵柄等の印刷を行ったラベルを、容器本体の外周に装着している。これらの印刷絵柄模様を施したラベルの意匠性は、清涼飲料水等の商品の持つコンセプトやイメージを表わすものであり、それは消費者の購入意欲を大きく左右する重要な因子である。
従来の金属光沢を模した印刷物は、アルミ貼合紙や金属蒸着紙に印刷したり、金属箔を印刷基材に箔押しすることにより意匠感を出していた。しかし、これらの仕様は高価であり、生産性も低く、経済的ではない。
【0003】
一方、通常の印刷により金色や銀色を表現するために、アルミペーストやブロンズパウダーを配合したインキを使用した印刷物があるが、アルミ貼合紙や金属蒸着紙に印刷した印刷物や、金属箔を印刷基材に箔押ししたものと比較して輝度感が劣っていた。
特許文献1では、この輝度感を向上すべく、セルロース誘導体で表面処理された金属蒸着膜細片を有する印刷インキを提案している。
しかしながら、更に印刷適性(密着性、重ね刷り適性)が良く、アルミ貼合紙や金属蒸着紙に印刷した印刷物や、金属箔を印刷基材に箔押しするのと同等な輝度感を有する印刷物を提供し得る印刷インキが要望されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−20668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、金属箔を印刷基材に箔押しするのと同等な輝度感を有する印刷物を得る事ができる印刷インキを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、金属蒸着膜細片の表面をアクリル樹脂で処理することにより、印刷インキ中における金属蒸着膜細片の分散性が飛躍的に向上すると共に、金属蒸着膜細片の表面反射性を大幅に高めることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、金属蒸着膜細片を含有する印刷インキにおいて、該金属蒸着膜細片がアクリル樹脂で表面処理されていることを特徴とする印刷インキ及びそれを用いた印刷物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属箔を印刷基材に箔押しするのと同等な輝度感を有する印刷物を得る事ができる印刷インキを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の印刷インキに含まれる金属蒸着膜細片の金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。これらの内、安価で蒸着温度が低いアルミニウムが好ましい。
金属蒸着膜細片、特にアルミニウム蒸着膜細片の平均径は、1〜50μmであることが好ましい。2〜30μmがより好ましく、5〜20μmが特に好ましい。平均径が1μm以上であれば、インキ塗膜の輝度が確保され、50μm以下であれば、印刷適性が良好である。また、スクリーンインキの場合は、スクリーンの目詰まりを避けることができる。
また、金属蒸着膜細片、特にアルミニウム蒸着膜細片の平均厚さが0.01〜1μmであることが好ましい。0.01〜0.5μmがより好ましく、0.02〜0.2μmが特に好ましい。平均厚さが0.01μm以上であれば、輝度・隠蔽性等が確保でき、1μm以下であれば、インキ製造時の分散性が良く、印刷時に目詰まり等の支障がないためである。
【0009】
金属蒸着膜細片の作成方法は特に限定されない。市販のアクリル樹脂で表面処理された金属蒸着膜細片を適宜用いれば良い。例えば、フォルステンホルム社製(Wolstenholme International LTD(英国))、商標「メタシーンVMPスラリー」シリーズ(蒸着アルミフレーク顔料)等が挙げられる。
金属蒸着膜細片の表面処理に用いられるアクリル樹脂は(メタ)アクリル酸エステルの重合体であり、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロへキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環式アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル等を挙げることができる。
このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0010】
本発明の印刷インキに用いられるバインダー樹脂は、従来のフレキソインキ、スクリーンインキ又はグラビアインキ等に通常使われているものを使用することができる。具体的には例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂(ポリビニルブチラール)、石油樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、セラック、アルキッド樹脂等を挙げることができる。
これらのバインダー樹脂には、通常のフレキソインキ、スクリーンインキ又はグラビアインキに使われている公知慣用の溶剤を使用することができる。具体的にはたとえば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、IPA等のアルコール類、アセトン、MEK等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0011】
本発明の印刷インキとしては、上述の溶剤使用型印刷インキでも良いが、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制の観点から、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーを含有し、活性エネルギー線硬化性である無溶剤型の印刷インキがより好ましい。
【0012】
重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を少なくとも2つ有する化合物が挙げられる。上記のエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2つ有する化合物としては、多官能(メタ)アクリレート、即ち、二官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
ここで、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートをいう。
【0013】
上記の内、二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
また、三官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
これらの多官能性(メタ)アクリレートモノマーのうち、三官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましく、特に、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、印刷層の強度及び表面平滑性に優れ、かつ未露光部の基板上及び遮光層上に地汚れ、膜残り等を発生し難い点で好ましい。
上記の重合性モノマーは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系等の各種(メタ)アクリレート系オリゴマーが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0017】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー等の上記以外の(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0018】
本発明においては、上記の重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーと共に、その粘度を低下させる等の目的で、必要に応じ、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
また、上記の重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーに加えて、必要に応じ、他の共重合性不飽和単量体を本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。
他の共重合性不飽和単量体としては、カルボキシル基含有不飽和単量体、芳香族ビニル化合物、脂肪族共役ジエン類、インデン類、上記以外の不飽和カルボン酸エステル類、不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類、カルボン酸ビニルエステル類、不飽和エーテル類、シアン化ビニル化合物、不飽和アミド類、脂肪族共役ジエン類、重合体分子鎖の末端にモノ(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー類等が挙げられる。これらの共重合性不飽和単量体は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
本発明の印刷インキは、好ましくは、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー等を含有することにより、活性エネルギー線の照射により硬化する。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が好ましい。紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
また、電子線を用いる場合には、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
本発明の印刷インキを用いて得られる印刷物の高輝度印刷層の厚さは、通常0.1〜10μm、好ましくは1〜5μmと薄いので、金属蒸着膜細片を含有していても紫外線照射により、好適に硬化することができる。
【0021】
本発明の印刷インキを紫外線照射により硬化する場合には、光重合開始剤を適宜添加する。この光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を使用することができ、好ましくはイミダゾール系、アセトフェノン系、オキシムエステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系、トリアジン系、ベンジル系、アントラキノン系、チオール系及びイオウ化合物系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種であり、とくに好ましくはイミダゾール系、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系及びチオキサントン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
上記のイミダゾール系光重合開始剤としては、ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物等が挙げられ、これらの化合物としては、例えば、2,2'−ビス(o−クロルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビスイミダゾリル、2,2'−ビス(o−クロルフェニル)−4,4',5,5'−テトラ−(p−メトキシフェニル)ビスイミダゾリル、2,2'−ビス(2クロロフェニル)−4,4'−5,5'テトラキスフェニル−1,2'ビイミダゾール等が挙げられる。
【0023】
また、上記のアセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標「IRGACURE 369」)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア379]、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標「IRGACURE 907」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
【0024】
そして、上記のベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、3,3',4,4'−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4'−ビス−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0025】
また、上記のチオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、2−及び4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等が挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0026】
本発明の印刷インキに配合される光重合開始剤量は、重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマー(他の共重合性不飽和単量体を含有する場合はそれも含む)の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜6質量部である。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
【0027】
本発明の印刷インキにおいては、本発明の目的を妨げない範囲において、所望により種々の添加剤を配合しても良い。これらの添加剤としては、顔料、染料、安定剤、溶剤、防腐剤、潤滑剤、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤等が挙げられる。
【0028】
本発明の印刷インキは、通常のフレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷等の一般的な印刷方式の他、塗布方式としては、グラビアコート方式、リバースコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式等の各方式が挙げられ、1回又は数回に分けても、また異なる方式を複数組み合わせて印刷又は塗布しても良い。
以上の印刷方法の内、フレキソ印刷により印刷物を得る事が、生産性、意匠性、後加工性により好ましい。
【0029】
本発明の印刷インキにより、高輝度の印刷層を有する種々の印刷物を得る事ができる。例えば、紙、樹脂フィルム等の原反の上に金属蒸着膜細片、特にアルミニウム蒸着膜細片を含有する印刷インキにより高輝度印刷層を形成すれば、銀色となり、銀箔押しと同等な輝度感が得られる。また、この高輝度印刷層の上に黄色印刷層を印刷すれば、金色となり、金箔押しと同等な輝度感が得られる。
【0030】
また、所望により、高輝度印刷層の上に、又は高輝度印刷層と並列に絵柄印刷層を積層しても良い。絵柄印刷層は、印刷物に所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。また、ベタ印刷層であっても良い。
【0031】
図1は、本発明の印刷インキを用いた印刷物の一実施態様を示す断面模式図であり、図2は、本発明の印刷インキを用いた印刷物の他の実施態様を示す断面模式図である。
図1において、本発明の印刷物1の一実施態様は、原反2の上に高輝度印刷層3がベタ印刷層として印刷され、高輝度印刷層3の上に絵柄印刷層4が積層されている。例えば、絵柄印刷層4として黄色印刷層を用いれば金色となり、高輝度印刷層3の銀色とで、金銀模様を構成することができる。
図2に示すように、本発明の印刷物1の別の実施態様は、原反2の上に高輝度印刷層3と絵柄印刷層4とが並列に積層されている。例えば、高輝度印刷層3の銀色の上に、絵柄印刷層4の色文字を浮き立たせようとする場合、高輝度印刷層3の印刷部分を削減でき、経済的である。勿論、高輝度印刷層3と絵柄印刷層4とは部分的に重なっても良く、その場合の積層の上下関係は、所望する意匠により適宜選択される。
【実施例】
【0032】
実施例1
アクリル樹脂で表面処理されたアルミニウム蒸着膜細片[フォルステンホルム社製(Wolstenholme International LTD(英国))、商標「メタシーンVMPスラリー」シリーズ(蒸着アルミフレーク顔料)]20質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート79.9質量部及びハイドロキノン0.1質量部を、ディスパーで分散し、アルミニウム蒸着膜細片の平均径を15μmとした。
次に、これにトリメチロールプロパントリアクリレート90質量部、光重合開始剤2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標「IRGACURE 907」)10質量部を加えて撹拌混合し、フレキソ印刷インキを作成した。
なお、アルミニウム蒸着膜細片の平均径(μm)は、電子顕微鏡で無作為に100個観察し、各々の細片の最大径及び最小径を読み取り、それら200の数値の相加平均値である。また、アルミニウム蒸着膜細片の平均厚さ(μm)は、上記の電子顕微鏡で無作為に100個観察したものの相加平均値である。
【0033】
実施例2
厚さ25μmのポリエステル樹脂フィルムの表面に実施例1で得られたフレキソ印刷インキをフレキソ印刷し、波長380nm近傍に照射強度のピークを有するメタルハライドランプ(オーク製作所製)を用いて空気中で紫外線照射することによりフレキソ印刷インキを硬化して、厚さ3μmの高輝度印刷層3を得た。次に、エポキシアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック社製、商標「EBECRYL 600」)20質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート60質量部、顔料(Pigment Ye110W 83)9質量部、分散剤(アビシア社製、商標「SOLSPERSE 24000」)4質量部、光重合開始剤2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標「IRGACURE 907」)6質量部からなる絵柄用黄色インキを高輝度印刷層3の上に、図1に示すようにフレキソ印刷し、絵柄印刷層4を得た。
【0034】
実施例3
厚さ25μmのポリエステル樹脂フィルムの表面に実施例1で得られたフレキソ印刷インキを図2に示すようにフレキソ印刷し、波長380nm近傍に照射強度のピークを有するメタルハライドランプ(オーク製作所製)を用いて空気中で紫外線照射することによりフレキソ印刷インキを硬化して、厚さ3μmの高輝度印刷層3を得た。次に、エポキシアクリレートオリゴマー(ダイセル・サイテック社製、商標「EBECRYL 600」)58質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート20質量部、顔料(Pigment Black 7)10質量部、ポリエチレンワックス2質量部、分散剤(アビシア社製、商標「SOLSPERSE 24000」)4質量部、光重合開始剤2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標「IRGACURE 907」)6質量部からなる絵柄用墨色インキを高輝度印刷層3とぴったり並列に、図2に示すように文字をフレキソ印刷し、絵柄印刷層4を得た。
【0035】
実施例1のフレキソ印刷インキは、金属蒸着膜細片がアクリル樹脂で表面処理されているので、印刷インキのバインダー樹脂、特に、多官能性(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリレート系オリゴマーへの分散性が非常に良好であり、金属蒸着膜細片がフレキソ印刷インキ内に均一に分散した。これにより、金属蒸着膜細片として用いたアルミニウム蒸着膜細片が高輝度を発揮し、実施例2及び3のいずれにおいても金属箔を印刷基材に箔押しするのと同等な輝度感を有する印刷物を得る事ができた。
また、実施例2においては、金箔及び銀箔をちりばめたような高級感のある意匠性を表出する印刷物を得ることができた。
更に、実施例3においては、銀箔と同等な輝度感を有する下地に墨色の文字を浮き立たせた高級感のある意匠性を表出する印刷物を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の印刷インキは各種多様な印刷物、例えば、パッケージ(包装材)、ラベル等の印刷物に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の印刷インキを用いた印刷物の一実施態様を示す断面模式図である。
【図2】本発明の印刷インキを用いた印刷物の他の実施態様を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0038】
1 印刷物
2 原反
3 高輝度印刷層
4 絵柄印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属蒸着膜細片を含有する印刷インキにおいて、該金属蒸着膜細片がアクリル樹脂で表面処理されていることを特徴とする印刷インキ。
【請求項2】
前記金属蒸着膜細片が、アルミニウム蒸着膜細片である請求項1に記載の印刷インキ。
【請求項3】
前記アルミニウム蒸着膜細片の平均径が1〜50μmである請求項2に記載の印刷インキ。
【請求項4】
前記アルミニウム蒸着膜細片の平均厚さが0.01〜1μmである請求項2又は3に記載の印刷インキ。
【請求項5】
重合性モノマー及び/又は重合性オリゴマーを含有し、活性エネルギー線硬化性である請求項1〜4のいずれかに記載の印刷インキ
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の印刷インキを用いた印刷物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−84496(P2009−84496A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257974(P2007−257974)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】