説明

印刷インキ及びプラスチックラベル

【課題】バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を含有する印刷インキにおいて、優れたインキ安定性を有すると共に、プラスチックラベルのフィルム基材との密着性が良好であって高い帯電防止性を発現する印刷層を形成可能な印刷インキ、及び当該印刷インキを用いて形成された印刷層を備えるプラスチックラベルを提供することである。
【解決手段】印刷インキは、少なくともアクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解する溶剤と、を含む印刷インキにおいて、帯電防止剤として、分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸をバインダー樹脂に対して2〜125重量%含むことを特徴とする。この印刷インキを用いれば、印刷層の表面固有抵抗値が1.0×1013Ω未満であるプラスチックラベルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキ及びプラスチックラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックラベルは、飲料やトイレタリー製品等を充填したプラスチック製容器や金属製容器などに広く使用されている。一般的に、プラスチックラベルには、商品名や商品イメージ、品質等を表す文字や模様など所望の色相に調整した印刷層がフィルム基材上に設けられている。印刷層の形成に用いられる印刷インキとしては、例えば、所望の顔料や染料と、アクリル系樹脂等のバインダー樹脂と、エステル系溶剤等の有機溶剤と、ワックスや可塑剤等の添加剤と、を配合したインキが使用されている。特に、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を用いた場合には、印刷層の塗膜硬度等の膜物性が良好であり、また、印刷加工性が良好であるため好ましい。
【0003】
上記のようなプラスチックラベルは、絶縁性が高いプラスチック(樹脂)製のフィルム基材から構成されるため静電気が帯電し易く、ラベル表面に埃が静電接着する、或いはラベル同士が静電接着する等の問題がある。また、筒状シュリンクラベルのように容器に外嵌装着されるラベルにおいては、いったん扁平に畳まれたラベルを開口して円筒状に広げる際に、静電気によりうまく開口できない開口不良となる等の、ラベルの容器装着適正が悪化する問題がある。そこで、プラスチックラベルの帯電を防止するために、例えば、帯電防止剤が表面に塗布されたフィルム基材が使用されている。しかし、プラスチックラベルは、フィルム基材の上に印刷層が設けられるので、両面印刷したラベル同士を重ねる場合等の印刷層同士が接するときには、帯電防止効果が発現されない場合があった。そのため、近年、印刷層にも帯電防止性を付与して、静電気トラブルをより高度に防止することが求められるようになってきた。
【0004】
このような状況に鑑みて、帯電防止成分を含む印刷インキが特許文献1、2に開示されている。具体的に、特許文献1には、高Tgと低Tgポリマーの混合組成物であるエステル系ポリウレタン樹脂に対して、帯電防止成分として、脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートとポリオキシエチレンアルキルエーテルとの混合組成物を添加した印刷インキが開示されている。また、特許文献2には、帯電防止性とハードコート性を同時に実現することを目的としたインキ組成物であって、帯電防止成分として、イミダゾリウム塩等であるイオン性液体を含むインキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−220275号公報
【特許文献2】特開2008−274266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、優れた塗膜物性を発現するアクリル系樹脂を含む印刷インキについて、上記特許文献に開示された帯電防止成分を適用しようとする場合には、幾つか問題点がある。具体的には、脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェートのようなイオン系界面活性剤(特許文献1)を用いると、添加量が少ないときには要求される帯電防止性能が発現せず、一方、添加量を多くすると、インキ組成物としてのバランスが崩れ、インキの相分離や印刷層の白化、基材への密着性等の悪化といった問題が生じる。また、イオン性液体(特許文献2)を用いた場合は、十分な帯電防止効果が得られず、イオン性液体が高価であるため、原料コストが大幅に上昇することになる。
【0007】
その他、金属酸化物系の物質を用いて帯電防止性能を付与する方法も知られているが、印刷層に要求される帯電防止性能を発現するためには多量の金属酸化物が必要であって、色目の変化やインキ安定性の悪化といった問題が発生する。また、導電性ポリマーを用いる方法も提案されているが、導電性ポリマーを印刷インキに適用した場合には、印刷層とフィルム基材との十分な密着性が確保できないことが想定される。
【0008】
本発明の目的は、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を含有する印刷インキにおいて、優れたインキ安定性を有すると共に、プラスチックラベルのフィルム基材との密着性が良好であって高い帯電防止性を発現する印刷層を形成可能な印刷インキ、及び当該印刷インキを用いて形成された印刷層を備えるプラスチックラベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を含有する印刷インキにおいて、バインダー樹脂に対して所定量の脂肪族ヒドロキシ酸、特に、分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸を添加することにより、プラスチックラベルのフィルム基材との密着性が良好であって高い帯電防止性を発現する印刷層を形成可能な印刷インキが得られることを初めて見出した。また、当該印刷インキは、優れたインキ安定性を有する。
【0010】
即ち、本発明に係る印刷インキは、少なくともアクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解する溶剤と、を含む印刷インキにおいて、帯電防止剤として、分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸をバインダー樹脂に対して2〜125重量%含むことを特徴とする。
【0011】
また、溶剤は、エステル系溶剤又はエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るプラスチックラベルは、本発明に係る印刷インキを用いて形成された印刷層であって、表面固有抵抗値が1.0×1013Ω未満である印刷層をフィルム基材の少なくとも片面に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る印刷インキによれば、少なくともアクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂に対して分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸を2〜125重量%含むので、優れたインキ安定性を有すると共に、プラスチックラベルのフィルム基材との密着性が良好であって高い帯電防止性を発現する印刷層を形成することができる。また、バインダー樹脂としてアクリル系樹脂を用いるので、印刷層の塗膜硬度等の膜物性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る印刷インキ及びプラスチックラベルの実施形態について、以下詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態における印刷インキは、少なくともアクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解する溶剤と、帯電防止成分として脂肪族ヒドロキシ酸と、を必須成分として含む。さらに、印刷インキは、必要に応じて、顔料や染料等の着色剤やワックスや可塑剤等の添加剤と、を含んでもよい。また、本発明の実施形態におけるプラスチックラベルは、フィルム基材の少なくとも片面に、当該印刷インキを用いて形成された印刷層を備えている。
【0016】
印刷インキの必須成分であるバインダー樹脂は、印刷層の塗膜となる成分である。即ち、詳しくは後述する印刷層は、バインダー樹脂からなる塗膜中に、脂肪族ヒドロキシ酸と、必要に応じて、着色剤、各種添加剤と、を含有(分散)した樹脂層である。バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂、又はアクリル系樹脂と、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂等との混合樹脂が用いられる。
【0017】
アクリル系樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1〜12アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1〜8アルキルエステル等]などが挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」という意味である。
【0018】
また、上記のほか、必要に応じて、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やジエン類などの重合性不飽和化合物を単量体成分として用いることもできる。
【0019】
アクリル系樹脂は、単独又は単量体組成の異なる2種以上の樹脂を組み合わせて用いることができる。例えば、アクリル系樹脂として、(i)カルボキシル基及びヒドロキシル基含有アクリル系重合体、(ii)カルボキシル基含有アクリル系重合体とヒドロキシル基含有アクリル系重合体との混合物、(iii)カルボキシル基及びヒドロキシル基非含有アクリル系重合体と、カルボキシル基含有アクリル系重合体と、ヒドロキシル基含有アクリル系重合体との混合物などを使用できる。
【0020】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜120000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)がこの範囲内であれば、フィルム基材との密着性に優れ、塗膜物性が良好な印刷層を形成できると共に、グラビア印刷等において適当な粘度となり良好な印刷適性を維持することができる。なお、アクリル系樹脂として単量体組成の異なる2種以上のポリマーをブレンドして使用する場合には、重量平均分子量(Mw)が上記範囲内のポリマー同士をブレンドすることが好ましい。アクリル系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール」、東亞合成(株)製「アルフォン」、BASF製「ジョンクリル」などを用いることができる。
【0021】
ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂であって、フィルム基材に対して密着力(接着力)を示すものであれば特に限定されず、該特性を有する慣用乃至公知のポリウレタン樹脂を使用できる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族及び脂環族の公知のジイソシアネート類の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。ジイソシアネート類の具体例として、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて3官能以上のポリイソシアネート類やポリイソシアネートアダクト体を上記ジイソシアネートと混合して用いることもできる。
【0023】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等)、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール−ポリカプロラクトン共重合体等のポリエーテルジオール;プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類とアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸などの2塩基酸類とから得られるポリエステルジオール;ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ラクトンブロック共重合ポリオールなどのラクトンジオールなどの公知のジオール類を使用できる。また、必要に応じて上記のジオール類と、3官能以上のポリオール化合物とを混合して用いることもできる。
【0024】
ウレタン系樹脂の重量平均分子量は、一般には5000〜100000程度、好ましくは10000〜70000程度である。重量平均分子量が5000未満では乾燥塗膜が強靱性に乏しく脆弱になり、また100000を超えると溶解性が低下し粘度が高くなりやすい。ポリウレタン樹脂は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。ウレタン系樹脂としては、三洋化成(株)製「サンプレン」、日本ポリウレタン工業(株)製「ニッポラン」などが市場で入手可能である。
【0025】
セルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂や、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のエステル化されたセルロース樹脂が好ましく例示される。
【0026】
ニトロセルロース樹脂としては、窒素分10〜14%が好ましく、より好ましくは10.0〜12.5%である。ニトロセルロースの平均重合度は、30〜100の範囲が好ましく、より好ましくは45〜95である。平均重合度が30未満では、ニトロセルロースの添加効果が小さく、平均重合度が100を超えると、インキの粘度が上昇し、グラビア印刷時に適当とされる粘度に調整する際により多量の希釈溶剤が必要となり、そのため印刷性が低下する傾向となる。
【0027】
エステル化セルロース樹脂としては、樹脂中のヒドロキシル基の中で0.5〜80%がエステル化されていることが好ましく、より好ましくは2〜70%である。エステル化セルロース樹脂の重量平均分子量は、12000〜75000の範囲が好ましく、より好ましくは12000〜65000である。重量平均分子量が12000未満では、エステル化セルロースの添加効果が小さく、75000を超えると、インキの粘度が上昇し、グラビア印刷時に適当とされる粘度に調整する際により多量の希釈溶剤が必要となり、そのため印刷性が低下する傾向となる。
【0028】
セルロース系樹脂は、アクリル系樹脂と混合することで、印刷層塗膜の硬度を向上させ、さらに、印刷層塗膜の強靱性や耐インキ割れ性、印刷層塗膜とフィルム基材との密着性などの諸物性を向上させる。したがって、バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂とセルロース系樹脂との混合樹脂を用いることが特に好ましい。アクリル系樹脂とセルロース系樹脂との混合比率は、アクリル系樹脂/セルロース系樹脂(重量比)=50/50〜99.5/0.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは60/40〜99/1の範囲である。混合比率がこの範囲内であれば、一般的なフィルム基材(例えば、ポリスチレン系フィルム)に対する良好な密着性を得ることができる。
【0029】
印刷インキの必須成分である溶剤は、上記バインダー樹脂を溶解することが可能な溶剤であって、適度な揮発性を有する有機溶剤であることが好ましい。好適な溶剤としては、バインダー樹脂の溶解性や印刷層のレベリング性等の観点から、エステル系溶剤、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤等が挙げられる。また、該混合溶剤中には、溶解力、蒸発速度などの調整のため、さらに、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤など、その他の溶剤を混合してもよい。
【0030】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステルなどが好適に用いられる。また、アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール)等の低級アルコールが好適に用いられる。これらのうち、特に好ましくは、2−プロピルアルコール(イソプロピルアルコール:IPA)である。
【0031】
溶剤としては、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤を用いることが特に好ましい。エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合比率は、エステル系溶剤/アルコール系溶剤(重量比)=10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、より好ましくは20/80〜80/20の範囲である。混合比率がこの範囲内であれば、アクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂の溶解性や印刷層のレベリング性が良好であって、一般的なフィルム基材(例えば、ポリスチレン系フィルム)に対する良好な密着性を得ることができる。
【0032】
印刷インキの必須成分である脂肪族ヒドロキシ酸は、印刷層の帯電防止成分として機能する。脂肪族ヒドロキシ酸は、上記のように、アクリル系樹脂、エステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤を含む印刷インキの安定性を損なうことなく、印刷層に高い帯電防止性を付与する。特に、分子量が300以下の脂肪族ヒドロキシ酸を添加した場合には、帯電防止効果が顕著に発現する。ここで、分子量とは、重量平均分子量を意味する。したがって、例えば、2種以上の混合物を用いた場合に、1種の脂肪族ヒドロキシ酸の分子量が300を超えていても重量平均分子量が300以下であれば、優れた帯電防止性等を発現する。
【0033】
具体的に、脂肪族ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、キナ酸等の脂環式ヒドロキシ酸などの炭素数が2〜18の脂肪族ヒドロキシ酸、及びこれら混合物などが挙げられる。なお、ヒドロキシル酸としては、サリチル酸、ピロカテク酸、マンデル酸などの芳香族のものがあるが、溶剤への溶解性の観点から該印刷インキには適さない。
【0034】
脂肪族ヒドロキシ酸は、インキ安定性、印刷層の帯電防止性、印刷層とフィルム基材との密着性等の観点から、分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸のうち少なくとも1種であることが好ましい。より具体的には、分子量が250以下の脂肪族ヒドロキシ酸であることが好ましく、分子量が200以下の脂肪族ヒドロキシ酸がより好ましく、分子量が150以下の脂肪族ヒドロキシ酸が特に好ましい。なお、脂肪族ヒドロキシ酸の分子量が300を超えると、帯電防止性能が大幅に低下する。
【0035】
脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、バインダー樹脂に対して2〜125重量%、即ち、バインダー樹脂100重量部に対して2〜125重量部であることが好ましい。インキ安定性、印刷層の帯電防止性や密着性等の観点から、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、バインダー樹脂に対して2〜53重量%であることがより好ましい。脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、バインダー樹脂に対して53重量%以下であれば、印刷層とフィルム基材との密着性が特に良好である。なお、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、バインダー樹脂に対して2重量%未満であれば、ほこりの静電付着やラベル同士の静電付着を防止するための十分な帯電防止性を発現することができない。一方、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、バインダー樹脂に対して125重量%を超える場合には、印刷層とフィルム基材との密着性が不良となる。
【0036】
印刷インキには、必要に応じて、着色剤として、印刷層を所望の色相に調整するために染料や顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、亜鉛華、鉛白、酸化チタン等の白色顔料、銅フタロシアニンブルー等の青色顔料、縮合アゾ系顔料などの赤色顔料、アゾレーキ系顔料等の黄色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、その他、アルミフレーク、雲母(マイカ)などを適宜用いることができる。また、顔料として、その他にも、光沢調製や塗膜の補強などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカなども使用できる。
【0037】
顔料の含有量は、顔料の種類や目的の色の濃度等により任意に設計できるが、印刷インキの総重量に対して、0.1〜60重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜40重量%である。
【0038】
例えば、印刷インキとして、白色に調整したものを用いるのであれば、顔料として、酸化チタンを用いるのが好ましく、酸化チタンの含有量は、隠蔽性と粗大突起形成抑制の観点から、印刷インキの総重量に対して、20〜60重量%が好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。
【0039】
印刷インキには、上記のバインダー樹脂、溶剤、脂肪族ヒドロキシ酸に加えて、滑剤や可塑剤等の各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、滑剤、可塑剤、顔料分散剤、消泡剤、表面調整剤、レオロジー付与剤、分散安定剤、つや消し剤、充填剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などが挙げられる。例えば、滑剤としては、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス、オレイン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系ワックス、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル系ワックス、カルナバワックス等の天然物系ワックスなど各種ワックス類を用いることができる。
【0040】
印刷インキは、上記のバインダー樹脂、溶剤、及び脂肪族ヒドロキシ酸と、必要に応じて、着色剤及び/又は各種添加剤を混合することにより製造される。混合方法としては、特に限定されることなく公知の方法を適用することができる。例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ペイントシェーカー、ニーダーなどの混合装置、分散装置が用いられる。
【0041】
印刷インキの粘度(23±2℃)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷により塗工される場合には、10〜2000mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜500mPa・sである。粘度が2000mPa・sを超える場合には、グラビア印刷性が低下し、「かすれ」などが生じて、加飾性が低下する場合がある。また、粘度が10mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下する場合がある。印刷インキの粘度は、バインダー樹脂の種類、添加量、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、E型粘度計(円錐平板形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転数50回転の条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
【0042】
本発明の実施形態におけるプラスチックラベルは、上記のように、フィルム基材の少なくとも片面に、上記印刷インキを用いて形成された印刷層を備えている。
【0043】
フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、及びポリ塩化ビニリデン系樹脂などから選択される1種単独、又は2種以上の混合物からなるプラスチックフィルムを用いることができる。また、2種以上のプラスチックフィルムを積層した積層フィルム、プラスチックフィルムと不織布、金属蒸着層、発泡層等との積層フィルム、一軸又は二軸延伸された熱収縮性プラスチックフィルムを用いることもできる。
【0044】
上記印刷インキを用いて形成された印刷層は、帯電防止機能を有する層であって、バインダー樹脂から構成される塗膜中に、帯電防止成分として脂肪族ヒドロキシ酸と、必要に応じて、着色剤や各種添加剤と、が含有されている(以下、この印刷層は、デザイン印刷層や背景印刷層と区別するため、帯電防止印刷層と称する)。帯電防止印刷層の形成方法としては、グラビア等の凹版印刷、フレキソレタープレス等の凸版印刷、平板印刷及び孔版印刷等の公知の方法を適用できる。具体的には、フィルム基材の表面上に上記印刷インキを塗布し、加熱・乾燥させて溶剤を蒸発除去することにより、帯電防止印刷層を備えたプラスチックラベルが得られる。なお、バインダー樹脂及び脂肪族ヒドロキシ酸は、帯電防止印刷層の形成工程において蒸発しないため、後述のように、バインダー樹脂に対する脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、印刷インキ及び帯電防止印刷層において変化しない。
【0045】
帯電防止印刷層は、より優れた帯電防止効果を得るため、プラスチックラベルの最外層を形成することが好ましい。上記のように、帯電防止印刷層は、さらに着色剤を含有してデザイン帯電防止印刷層(例えば、複数のカラー帯電防止印刷層で任意のデザインを形成したもの)や背景帯電防止印刷層(例えば、デザイン印刷の背景色として、白等の帯電防止印刷層を略ラベル全面に設けたもの)として用いられ、ラベルの最外層にこれらのデザイン帯電防止印刷層や背景帯電防止印刷層が配されることで優れた帯電防止効果を得ることができる。そのような構成は、例えば、フィルム基材のおもて面の最外層にデザイン帯電防止印刷層が形成された構成が挙げられる。また、透明フィルム基材の裏面側にデザイン印刷層が設けられ、そのさらに裏側にデザイン印刷全面を覆って最外層として背景印刷層が設けられた構成が挙げられる。このような構成のラベルにおいては、最外層(最裏層)の背景印刷層のみに帯電防止剤を含有させてもよい。この場合、ラベル最外層を形成しないデザイン印刷層には、帯電防止剤を使用しないので、帯電防止剤の節約ができ経済的である。
【0046】
帯電防止印刷層は、着色剤を含有しない透明な帯電防止印刷層としても用いることができ、当該透明帯電防止印刷層は、ラベルの最外層(最裏層及び/又は最おもて層)に形成されていることが好ましい。このような帯電防止印刷層が形成されたプラスチックラベルの具体的な構成としては、例えば、透明フィルム基材の裏面側に形成されたデザイン印刷層及び/又は背景印刷層の裏側全面を覆って、透明な帯電防止印刷層が形成された構成が挙げられる。この場合も、ラベルの最外層(最裏層)である透明な帯電防止印刷層のみに帯電防止剤が含有されていればよい。
【0047】
また、透明な帯電防止印刷層が最おもて層を形成されたプラスチックラベルの具体的構成としては、フィルム基材のおもて面にデザイン印刷層が設けられ、そのデザイン印刷層の全面を覆うように透明な帯電防止印刷層が形成されている構成が挙げられる。このように透明な帯電防止印刷層がラベルの最外層(最おもて層)を形成する構成であれば、おもて側からラベルを見たときにも、帯電防止印刷層が透明であるため、デザイン印刷層が見えなくなることがなく、且つ、良好な帯電防止性を有するラベルが得られる。
【0048】
タックラベルやインモールドラベルのように、ラベルの裏面側の最外層に感圧接着剤や感熱接着剤により接着層が設けられている構成であれば、ラベルのおもて面側の最外層として、透明な帯電防止印刷層や、デザイン帯電防止印刷層が設けられていることが好ましい。シュリンクラベルやストレッチラベルのように、筒状にして用いられる筒状ラベルにおいては、筒状の内面側の最外層に透明な帯電防止印刷層や背景帯電防止印刷層を設けることが好ましい。
【0049】
上記のように、帯電防止印刷層は、プラスチックラベルの最外層を形成するため、滑り性が良好であることが好ましい。したがって、帯電防止印刷層には、脂肪族ヒドロキシ酸に加えて、各種ワックス等の滑剤が含有されることが好ましい。
【0050】
帯電防止印刷層には、バインダー樹脂に対して2重量%〜125重量%の脂肪族ヒドロキシ酸が含有されているため、帯電防止印刷層の表面固有抵抗値は、1.0×1013Ω未満となる。上記のように、低分子量の脂肪族ヒドロキシ酸、具体的には、分子量が150以下の脂肪族ヒドロキシ酸を含む印刷インキを用いれば、表面固有抵抗値が1011オーダーの帯電防止性能を帯電防止印刷層に付与することが可能である。ここで、脂肪族ヒドロキシ酸が含有されないアクリル系樹脂からなる印刷層の表面固有抵抗値は、通常、1013Ω以上であるから、帯電防止印刷層が高い帯電防止性を有していることが良く解る。
【0051】
また、帯電防止印刷層は、フィルム基材との良好な密着性を有している。即ち、脂肪族ヒドロキシ酸の添加により、密着性が損なわれることがない。但し、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量が、バインダー樹脂に対して125重量%を超える場合には、帯電防止印刷層とフィルム基材との密着性が不良となるため、125重量%以下とする必要がある。
【0052】
なお、インキ安定性、印刷層の表面固有抵抗値、印刷層とフィルム基材との密着性の評価方法については、実施例において説明する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
バインダー樹脂(A)として、アクリル系樹脂(A1)(三菱レイヨン(株)製、「BR−116」)20重量部、セルロース系樹脂(A2)(イーストマンケミカル(株)製「CAB−381−0.5」)1重量部、脂肪族ヒドロキシ酸(B)として、重量平均分子量が192のクエン酸(脂肪族ヒドロキシ酸(B1))(和光純薬(株)製)0.5重量部、プロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸プロピルの混合溶剤(混合比率50/25/25)76.5重量部、ワックス(サゾール(株)製、「SPRAY105」)2重量部を配合し(表1参照)、ホモディスパーにて分散混合して印刷インキを得た。
そして、得られた印刷インキを使用して、ポリスチレン系シュリンクフィルム基材の表面に、印刷層が形成されたプラスチックラベルを得た。印刷層は、以下の条件にて形成した。
・印刷機:卓上グラビア印刷機((株)日商グラビア製「GRAVO PROOF MINI」)
・版仕様:70線/cm、版深さ22μmの彫刻グラビア版
・工程速度:50m/分
・印刷層の厚み:約3μm
得られた印刷インキについて、以下の方法により、インキ安定性の評価を行い、評価結果を表1に示した(以下の実施例、比較例についても同様)。また、プラスチックラベルについても、以下の方法により、印刷層の外観、印刷層の帯電防止性、印刷層とフィルム基材との接着性に関する評価を行い、評価結果を表1に示した(以下の実施例、比較例についても同様)。
【0055】
<インキ安定性の評価>
常温25℃で1週間静置した印刷インキについて、目視にて、その性状を観察し、不溶解分の析出、相分離、粘度変化の有無を確認した。不溶解分の析出、相分離、粘度変化が確認されないときには、インキ安定性は良好(○)とし、それらが確認されたときには、インキ安定性は不良(×)とした。
【0056】
<印刷層の外観評価>
目視にて印刷層の外観を観察し、白化、スジ、カスレの有無を確認した。白化、スジ、カスレが確認されないときには、外観は良好(○)とし、それらが確認されたときには、外観は不良(×)とした。
【0057】
<印刷層の表面固有抵抗値評価>
帯電防止性の指標として、プラスチックラベルの印刷層の表面固有抵抗値を測定した。表面固有抵抗値が小さな値であるほど帯電防止性が高いことを意味する。表面固有抵抗値は、表面高抵抗測定器(シシド静電気(株)製「メガレスタH0709(SSD−Aタイププローブ)」)を用いて、電圧:500V、測定レンジ:AUTOの条件で測定した。なお、測定レンジの上限値は、9.9×1012Ωであり、表1では、上限値を超えるものを、>9.9×1012Ωで示している。
【0058】
<印刷層の密着性評価>
プラスチックラベルをクロスカットしない以外は、JISK5600‐5‐6に準拠して、印刷層とフィルム基材との密着強度を測定した。テープ剥離時に、印刷層の残存率が90%以上である場合を、密着性良好(○)とし、80%以上である場合を、実用可能レベル(△)とし、残存率が80%未満の場合を、密着性不良・実用不可レベル(×)とした。
【0059】
<実施例2〜4>
各成分の配合量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0060】
<実施例5>
脂肪族ヒドロキシ酸(B)として、重量平均分子量が150のL−酒石酸(脂肪族ヒドロキシ酸(B2))(和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0061】
<実施例6>
脂肪族ヒドロキシ酸(B)として、重量平均分子量が90のDL−乳酸(脂肪族ヒドロキシ酸(B3))(和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0062】
<実施例7>
脂肪族ヒドロキシ酸(B)として、重量平均分子量が134のリンゴ酸(脂肪族ヒドロキシ酸(B4))(和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0063】
<実施例8>
脂肪族ヒドロキシ酸(B)として、重量平均分子量が298のリシノール酸(脂肪族ヒドロキシ酸(B5))(和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0064】
<比較例1、2>
各成分の配合量を表2に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0065】
<比較例3>
(B)の代わりに、シュウ酸(C1)(和光純薬(株)製)を使用した以外は、実施例2と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0066】
<比較例4>
(C1)の代わりに、マロン酸(C2)(和光純薬(株)製)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0067】
<比較例5>
(C1)の代わりに、安息香酸(C3)(和光純薬(株)製)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0068】
<比較例6>
(C1)の代わりに、塩酸(C4)(和光純薬(株)製)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0069】
<比較例7>
(C1)の代わりに、重量平均分子量が317の9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸(C5)(和光純薬(株)製)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0070】
<比較例8>
(C1)の代わりに、長鎖アルキルカチオン型帯電防止剤(C6)(旭電化工業(株)製、「アデカミン4MAC−30」)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0071】
<比較例9>
(C1)の代わりに、重量平均分子量が152のマンデル酸(芳香族ヒドロキシ酸(C7))(和光純薬(株)製)を使用した以外は、比較例3と同様にして、印刷インキ及びプラスチックラベルを得た。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
表1に示すように、アクリル系樹脂(A1)を主成分とするバインダー樹脂に対して2〜125重量%の分子量が300以下の脂肪族ヒドロキシ酸(B)を含む印刷インキは、いずれにおいても優れたインキ安定性を有する。そして、実施例の印刷インキを用いて形成した印刷層は、外観、フィルム基材との密着性が良好であって、表面固有抵抗値が5×1012Ω以下という高い帯電防止性を有している。
【0075】
特に、重量平均分子量が小さな脂肪族ヒドロキシ酸を含む印刷インキを用いると、表面固有抵抗値が小さく帯電防止性が高くなることが示された。また、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量をバインダー樹脂に対して53重量%以下に抑えることにより、高い帯電防止性を維持しながら、印刷層とフィルム基材との密着性が特に良好であることが示された。
【0076】
一方、表2の比較例に示すように、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量がバインダー樹脂に対して2重量%未満である場合(比較例1)、脂肪族ヒドロキシ酸の分子量が大きな場合(比較例7)では、十分な帯電防止性能を発現することができない。また、脂肪族ヒドロキシ酸の含有量がバインダー樹脂に対して125重量%を超える場合(比較例2)には、インキの増粘、印刷層のカスレ、密着性不良が発生した。また、ヒドロキシル基を有さないカルボン酸や塩酸を用いた場合(比較例3〜7)には、十分な帯電防止性能を発現できず、酸の種類によっては、溶剤に不溶であり、印刷層にスジや白化が発生した。また、芳香族ヒドロキシ酸を用いた場合(比較例9)にも、溶剤に不溶であって、十分な帯電防止性能を発現できず、インキ組成物として不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアクリル系樹脂を含有するバインダー樹脂と、バインダー樹脂を溶解する溶剤と、を含む印刷インキにおいて、
帯電防止剤として、分子量が300以下である脂肪族ヒドロキシ酸をバインダー樹脂に対して2〜125重量%含むことを特徴とする印刷インキ。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷インキにおいて、
溶剤は、エステル系溶剤又はエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤であることを特徴とする印刷インキ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷インキを用いて形成された印刷層であって、表面固有抵抗値が1.0×1013Ω未満である印刷層をフィルム基材の少なくとも片面に有することを特徴とするプラスチックラベル。