説明

印刷システム

【課題】プリンタドライバを不要とするロケーションフリー印刷を実現する。
【解決手段】PC100と複数のMFP200〜nとを含む印刷システム1である。PC100は、ユーザによる送信指示により、MFP200〜nの各々のアドレス情報(MFPリスト)に基づいて、すべてのMFP200〜nに汎用ファイルフォーマットのファイルを送信する送信手段101を有する。MFP200〜nの各々は、受信した前記ファイルを蓄積するファイル蓄積手段221と、前記汎用ファイルフォーマットを解釈して解釈結果に基づき印刷を実行する手段であって、ユーザによる印刷指示により、前記ファイル蓄積手段に蓄積されている前記ファイルの印刷を実行する印刷手段(プリンタエンジン230)と、を有する。汎用ファイルフォーマットは、例えば、XPSやPDFを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関し、特に、プリンタドライバを不要とするロケーションフリー印刷を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のモバイル・ビジネス環境では、ビジネスパーソンはさまざまな場所でドキュメントを印刷できることが必要である。しかしながら、外出先のプリンタで印刷をするには、外出先のプリンタ用のプリンタドライバを携帯したノートパソコン(以下、「PC」と呼ぶ)にインストールする必要があり、多くの手間がかかってしまっていた。また、PCの管理の仕方によっては、情報技術管理者(以下、「ITマネージャ」と呼ぶ)以外の者がプリンタドライバをPCにインストールする権限がないため、ユーザが自分でプリンタドライバをインストールすることができず、外出先で印刷ができないという場合もあった。
【0003】
このような課題を解決するため、プリントサーバとメールを用いることでクライアントPC側をプリンタドライバ不要にし、ロケーションフリー印刷(LF印刷)できるようにする技術が既に知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ロケーションフリー印刷は、ICカードやパスワード認証により認証ユニットを備えたプリンタや複合機ならどの機器からでも印刷できるような機能のことをいう場合もあるが、本明細書では、これに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のロケーションフリー印刷のためのプリンタドライバレスの印刷システムでは、プリントサーバが必要であり、且つ、プリントサーバにおいて「ソースデータに対応するプリントデータを生成する」ソフトウェア、つまりプリンタドライバ相当の機能を持ったソフトウェアプログラムがインストールされていることが必要条件になっていた。このため、クライアントPCはドライバレスであっても、ITマネージャにとってはドライバレスにならず、プリントサーバとプリンタドライバの管理作業が発生してしまう。
【0006】
なお、他のロケーションフリー印刷実現のアプローチとしては、例えば、特許文献2に記載のものがある。これは、ネットワーク上の印刷装置の存在をクライアント装置が検知し、その印刷装置と通信してその印刷能力を確認して、電子文書と設定情報をその印刷装置に送るものである。この場合は、クライアント装置と印刷装置との通信が必要になる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、プリンタドライバを不要とするロケーションフリー印刷が可能な印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、第1の態様として、情報処理装置と複数の印刷装置とを含む印刷システムであって、前記情報処理装置は、ユーザによる送信指示により、前記複数の印刷装置の各々のアドレス情報に基づいて、各印刷装置に汎用ファイルフォーマットのファイルを送信する送信手段を有し、前記複数の印刷装置の各々は、受信した前記ファイルを蓄積するファイル蓄積手段と、前記汎用ファイルフォーマットを解釈して解釈結果に基づき印刷を実行する手段であって、ユーザによる印刷指示により、前記ファイル蓄積手段に蓄積されている前記ファイルの印刷を実行する印刷手段と、を有することを特徴とする、印刷システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリンタドライバを不要とするロケーションフリー印刷が可能な印刷システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるMFPリストの具体例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の処理の手順を示すフローチャート図である。
【図4】本実施形態におけるMFPリストの作成画面例(その1)を示す図である。
【図5】本実施形態におけるMFPリストの作成画面例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本実施形態の印刷システムの構成を示す。
<印刷システムの構成>
図示のように、印刷システム1は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置(以下、「PC100」と呼ぶ)と複数の印刷装置(以下、「MFP200〜n」と呼ぶ)を含み、PC100とMFP200〜nは、ネットワーク300を介して通信可能に接続されている。
【0012】
<情報処理装置の構成>
PC100は、ユーザが使用するパーソナルコンピュータ、MFP200〜nは、ユーザが印刷する際に使用する可能性のある印刷装置ないし複合機である。ネットワーク300は、社内LANや、インターネットを介したVPN等、既知の技術を利用することができる。本実施形態では、印刷システム1は、複数の事業所に機器が分散して所在しており、PC100と同じ事業所にあるもの(MFP200)もあれば、離れた事業所にあるもの(MFP201、202等)もある。
【0013】
PC100には、本実施形態に係るロケーションフリー印刷用ソフトウェアプログラム(以下、「送信手段101」と呼ぶ)がインストールされている。一方、MFP200〜nは、各々、操作パネル210、コントローラ220、プリンタエンジン230を備える。
【0014】
送信手段101は、PC100のユーザによる操作指示により、ユーザが印刷しようとするファイルをすべてのMFP200〜nに送信する機能を備える。この際、送信手段101は、すべてのMFP200〜nのアドレス情報のリスト(以下、「MFPリスト」と呼ぶ)に基づいて送信処理をする。なお、アドレス情報とは、各MFPのネットワーク300上の位置を特定するための情報である。
【0015】
MFPリストは、PC100が印刷する際に使用する可能性のある印刷装置(すなわち、MFP200〜n)の、名称、アドレス情報、サポートファイルフォーマット、所在地情報が紐付けられて記憶されているリストである。図2に、具体例を示す。
【0016】
送信手段101による送信処理は、さらに具体的には、電子メールを利用するとよい。この場合、電子メールに、ユーザが印刷を所望するファイルを添付する。また、この場合、アドレス情報は、電子メールシステムにおけるメールアドレスを利用することができる。なお、図2に示す具体例は、送信処理として電子メールを利用する例である。
【0017】
また、送信するファイルのファイルフォーマットは、いわゆる汎用ファイルフォーマットが好ましく、中でも特に、XPS(XML Paper Specification)やPDF(Portable Document Format)が好適である。
【0018】
<印刷装置の構成>
MFP200〜nは、すべてのMFPが、図1で図示したMFP200の有する機能ブロックを備える。すなわち、すべてのMFPが、少なくとも、ユーザインタフェースとなる操作パネル210、制御手段として機能するコントローラ220、印刷手段として機能するプリンタエンジン230を有する。
【0019】
コントローラ220は、ファイル蓄積手段221と、削除指示情報送信手段222と、ファイル削除手段223を備える。ファイル蓄積手段221は、送信手段101から送信されたファイルを受信して、操作パネル210による印刷指示又はファイル削除手段223によるファイルの削除があるまで、磁気ディスク等の記録媒体に蓄積しておく機能を備える。
【0020】
削除指示情報送信手段222は、操作パネル210による印刷指示を受けてプリンタエンジン230により蓄積されたファイルが印刷された際に、そのファイルの削除を、他のMFPに指示する情報(以下、「削除指示情報」と呼ぶ)を、他のMFPに向けて送信する機能を備える。本実施形態では、削除指示情報の送信処理を、具体的には、印刷完了メールという電子メールにより行う。
【0021】
ファイル削除手段223は、削除指示情報を受信した場合に、ファイル蓄積手段221に蓄積されているファイルの中から削除を指示されているファイルを削除する機能を備える。本実施形態では、削除指示情報を印刷完了メールの送信により実現しているため、印刷完了メールを受信すると印刷の完了が通知されたファイルを削除する処理を行う。
【0022】
プリンタエンジン230は、図示しない作像手段等を備え画像形成を行う機能を備える。画像形成の具体的な方式については、例えば電子写真方式やインクジェット方式等が利用でき、特に限定しない。本実施形態においては、特に、プリンタエンジン230及びコントローラ220は、汎用ファイルフォーマットの印刷に対応する。
【0023】
<印刷システムの処理の手順>
図3に、本実施形態の処理の手順を示す。
本実施形態の処理は、大別してPC100側で行う処理(ステップS101〜S103)と、MFP200〜n側で行う処理(ステップS104〜S111)とに分かれる。
【0024】
PC100は、ユーザによる印刷指示を受け付けると(ステップS101)、ロケーションフリー印刷用ソフトウェア(送信手段101)が印刷する電子文書等から汎用ファイルフォーマットのファイルを生成する(ステップS102)。なお、生成するファイルは、印刷システム1が対応する汎用ファイルフォーマットの種類分、生成するとよい。本実施形態では、XPSとPDFに対応するので、XPSファイルとPDFファイルを生成する。
【0025】
次に、送信手段101は、あらかじめ保持しているMFPリスト中のアドレス情報に基づいて、MFPリストのすべてのMFPに対して、ステップS102で生成したファイルを添付したメールを送信する(ステップS103)。
ここまでがPC100側で行う処理である。
【0026】
次に、メールを受信したMFP(通常待機中である)は、まず、受信したメールがロケーションフリー印刷用のメールであるかを判断する(ステップS104、S105)。ロケーションフリー印刷用のメールである場合は、メールに添付されていたファイルを、ファイル蓄積手段221がMFP内に蓄積する(ステップS106)。
【0027】
好ましくは、蓄積後の待機中に、操作パネル210に蓄積済みのロケーションフリー印刷用のファイルのリストを表示しておく。このリストは、印刷ジョブのリストである。そして、操作パネル210からユーザによる印刷指示があるまで待機する(ステップS107)。
【0028】
印刷指示があると、プリンタエンジン230が印刷を実行する(ステップS108)。印刷実行後、削除指示情報送信手段222は、削除指示情報を含んだ印刷完了メールをMFPリストにあるすべてのMFPに送信する(ステップS109)。そして、待機状態に戻る(ステップS104)。
【0029】
印刷完了メールは、ステップS105の判断で「ロケーションフリー印刷用のメールではない」と判断され、コントローラ220により印刷完了メールか否かを判断される(ステップS110)。その結果、ファイル削除手段223が、ファイル蓄積手段221に蓄積されているファイルの中から、印刷完了メールが印刷完了を伝えるファイルを削除する。なお、同じファイルを何回もロケーションフリー印刷しようとする場合もあるため、ファイル削除手段223は、ジョブを削除してもよい。
【0030】
本実施形態は、上記のように構成され、また、動作するので、ドライバレスでロケーションフリー印刷が可能になる。すなわち、印刷するファイルを、出力する可能性のあるすべてのMFPに電子メールで送信しておくので、どこの場所にあるMFPでも同じファイル、ファイル印刷のジョブのリストを見ることができ、また、蓄積されているファイルの印刷が可能になる。また、印刷完了後、ファイルやジョブを削除する指示をすべてのMFPに送信し、受信したMFPを当該ファイルやジョブを削除するので、ファイルやジョブがたまり続けることがない。
【0031】
<MFPリストの作成>
PC100のロケーションフリー印刷用ソフトウェア(送信手段101)は、MFPリストを作成する機能も備える。ユーザは、本実施形態のロケーションフリー印刷指示の前に、PC100を用いてMFPリストを作成しておく必要がある。
【0032】
図4に、PC100におけるMFPリストの作成画面例を示す。
このダイアログは、MFPリストを作成/編集/削除するダイアログである。図4中の追加ボタンを押下すると、図5に示すような2つ目のダイアログが表示される。図5に示すような2つ目のダイアログを利用して、ユーザは、MFPの名称、メールアドレス、サポートファイルフォーマット、所在地情報などを設定することが可能になり、MFPリストにMFPを追加することが可能にある。なお、図4に示す「編集」ボタン押下により登録内容の修正、「削除」ボタン押下によりリストのMFPの消去が可能である。
【0033】
<変形実施形態>
上記実施形態は、以下のように変形しても実施できる。
例えば、PC100の送信手段101が、削除指示情報送信手段222が送信するものと同じ、削除指示情報をすべてのMFPに送信する構成とする。このように構成すると、すべてのMFPに削除指示情報送信手段222を備えるのと同じ効果が得られる。
【0034】
また、各MFPを所在地情報によってグループ分けしておき、削除指示情報送信手段222による削除指示情報の送信対象を、すべてのMFPでなく、印刷を実行したMFPと同じ事業所に属するすべてのMFPとする構成としてもよい。この場合、他の事業所のMFPのジョブは消去せず、他の事業所でも同じファイルを印刷可能となる。
【0035】
また、この場合、ジョブの削除をすべてのMFPで行うとするか、同じ事業所内のすべてのMFPで行うとするかの選択を、ユーザが選択可能とすると利便性が向上する。
また、なお、上記変形実施形態は、互いに組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 印刷システム
100 情報処理装置(PC)
101 ロケーションフリー印刷用ソフトウェア(送信手段)
200〜n 印刷装置(MFP)
210 操作パネル
220 コントローラ
221 ファイル蓄積手段
222 削除指示情報送信手段
223 ファイル削除手段
230 プリンタエンジン(印刷手段)
300 ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特許第4202272号公報
【特許文献2】特開2007−207237号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置と複数の印刷装置とを含む印刷システムであって、
前記情報処理装置は、
ユーザによる送信指示により、前記複数の印刷装置の各々のアドレス情報に基づいて、各印刷装置に汎用ファイルフォーマットのファイルを送信する送信手段を有し、
前記複数の印刷装置の各々は、
受信した前記ファイルを蓄積するファイル蓄積手段と、
前記汎用ファイルフォーマットを解釈して解釈結果に基づき印刷を実行する手段であって、ユーザによる印刷指示により、前記ファイル蓄積手段に蓄積されている前記ファイルの印刷を実行する印刷手段と、を有する
ことを特徴とする、印刷システム。
【請求項2】
前記複数の印刷装置の各々は、
前記印刷手段が印刷を実行したファイルの削除を指示する削除指示情報を、他の印刷装置に送信する削除指示情報送信手段と、
受信した前記削除指示情報が削除を指示するファイルを、前記ファイル蓄積手段が蓄積するファイルから削除するファイル削除手段と、を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
前記送信手段が、前記削除指示情報を、前記複数の印刷装置に送信することを特徴とする、請求項2記載の印刷システム。
【請求項4】
前記複数の印刷装置は、所在地情報によりグループ分けされており、
前記削除指示情報は、各グループに対して送信される
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の印刷システム。
【請求項5】
前記削除指示情報送信手段は、ユーザの指示により、前記削除指示情報をグループごとに送信するか、全グループに送信するかを決定することを特徴とする、請求項4記載の印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−137928(P2012−137928A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289749(P2010−289749)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】