説明

印刷機

【課題】印刷後の枚葉紙を傷つけたり汚したりすることなく搬送できる印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】第二排紙胴3は、その周面Sについて、グリッパG付近よりも、枚葉紙Pの紙尻側が当接する部分が、胴の径方向で径小となるように面取り加工されている。よって、二箇所の逃げ部19が形成される。印刷が行われた枚葉紙Pは図示しない圧胴から第一排紙胴1を介して第二排紙胴3へ受け渡され、さらにチェーングリッパ7へ受け渡されて排紙される。この時、第二排紙胴3には前述の面取り加工による逃げ部19が形成されているので、チェーングリッパ7で搬送される枚葉紙Pの紙尻が第二排紙胴3に接触して、枚葉紙が傷ついたり汚れたりすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の搬送胴に関するものであり、特に枚葉紙の汚れや傷つきを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給紙部から給紙される印刷用の枚葉紙に、印刷部にて印刷を行い、印刷された枚葉紙を排紙部に排紙する印刷機が公知である。このような印刷機には、特許文献1に示されるように、印刷後の枚葉紙が排紙胴からチェーングリッパ機構にて排紙されるものが多い。チェーングリッパ機構は、回転可能な2つのスプロケット間に懸架されたチェーンに複数のグリッパが装着されている。そして枚葉紙はグリッパに把持されて排紙されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−188662号公報
【特許文献2】特開2006−290472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この時、排紙胴からグリッパに渡された枚葉紙が搬送される時、枚葉紙の後端がフリーとなってばたつき、枚葉紙の紙尻下面が排紙胴の搬送方向下流側上部(特許文献1では第2排紙胴の左上部)に接触して傷がついたり、汚れたりする可能性があった。とりわけ、両面印刷がされた枚葉紙においては、枚葉紙両面の品質維持が要求されるので、この懸念が顕著となる。
【0005】
なお、特許文献2には、給紙胴を扁平形状にした技術の開示があるが、印刷後の枚葉紙を搬送する搬送胴についての技術ではない上、扁平形状にすると、その形状に沿って搬送される枚葉紙の胴に対向する面に少なからず傷つきや汚れの可能性があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、印刷後の枚葉紙を傷つけたり汚したりすることなく搬送できる印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、給紙された枚葉紙を印刷して排紙する印刷機であって、枚葉紙を把持可能な把持部を有する複数の胴を有し、該胴により枚葉紙を搬送する印刷機において、複数の該胴の少なくとも一つについて、該胴を側面視でほぼ円形状とし、該胴の周面に、該胴の該把持部よりも該胴の径方向で径小となる逃げ部を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、該胴は該把持部をその周面に少なくとも二箇所有し、該周面における一方の該把持部と他方の該把持部のとの間に、該逃げ部が面取り加工されることにより形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による印刷機によれば、複数の胴の少なくとも一つについて、胴を側面視でほぼ円形状とし、胴の周面に、胴の把持部よりも胴の径方向で径小となる逃げ部を設けたので、搬送される枚葉紙の紙尻が搬送方向上流側の胴に接触して枚葉紙を傷つけたり汚したりすることがなく、また、枚葉紙の胴に対向する面も傷つけたり汚したりすることのない印刷機を得ることが可能となる。
【0010】
また、本発明による印刷機によれば、少なくとも一つの胴は把持部をその周面に二箇所有し、周面における一方の把持部と他方の把持部のとの間に、逃げ部が面取り加工されることにより形成されているので、確実に胴と枚葉紙の紙尻との接触を防ぎ、枚葉紙を傷つけたり汚したりすることがなく、かつ、枚葉紙の胴に対向する面も傷つけたり汚したりすることのない印刷機を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の印刷機の一例を示す、一部を省略した概略断面側面図である。
【図2】第二排紙胴の拡大断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の印刷機の一例を示す、一部を省略した概略断面側面図である。図2は第二排紙胴の拡大断面側面図である。図1の概略側面図に示す通り、本実施形態に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための図示しない給紙部と、この給紙部からの枚葉紙Pに印刷を行うための図示しない印刷部と、枚葉紙Pを排紙するための排紙部Aとを備えている。なお、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示すものに限定されるものではない。
【0014】
前記印刷部にて印刷された枚葉紙Pは、図示しない印刷部の圧胴から第一排紙胴1に受け渡される。図示しないが、第一排紙胴1には、送り出されてきた用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の二箇所(一箇所又は三箇所以上でもよい)に備えている。なお、図示していないが、前記圧胴にも同様のグリッパが設けられている。
【0015】
第一排紙胴1から搬送される枚葉紙Pは、後で詳細を説明する第二排紙胴3に受け渡される。第二排紙胴3の図1中右上にはペーパーガイド5が設けられ、特に枚葉紙Pが厚紙の場合、その紙尻のばたつきを規制する。第二排紙胴3から搬送される枚葉紙Pはチェーングリッパ7に受け渡される。チェーングリッパ7は前スプロケット9と図示しない後スプロケット間に懸架されたチェーン11に複数設けられており、前述の爪台及び爪と同様のものが備えられ、枚葉紙Pを把持して搬送、排紙する。なお、チェーン11は一部のみ一点鎖線で示している。チェーングリッパ7で搬送される枚葉紙Pの下部にはコンタクトフリーボード13が設けられており、枚葉紙Pを非接触で搬送させる為にエアを吐出するよう構成される。
【0016】
図2に第二排紙胴3の拡大断面側面図を示す。第二排紙胴3には2箇所にグリッパGが設けられており、それぞれのグリッパGに爪15と爪台17が設けられている。第二排紙胴3は、その周面Sについて、グリッパG付近よりも、枚葉紙Pの紙尻側が当接する部分が、胴の径方向で径小となるように面取り加工されている。よって、二箇所の逃げ部19が形成される。第二排紙胴3の中心と、枚葉紙Pを把持する部分とを半径とする仮想円Vを図2中二点差線で示す。なお、グリッパG付近にも仮想円Vに対して周面Sが径小となっており、逃げ部のようなものが存在するが、これは、第二排紙胴3に巻回する金属製や樹脂製のシートをクランプする為の図示しないクランプ機構を設置する為のクリアランスである。
【0017】
具体的には、鋳物で形成される円筒形状の第二排紙胴3をMC加工にて面取りする。本実施例においては、一方のグリッパから他方のグリッパへの約180度の区間について、22面の面取り加工を行うことにより、逃げ部19を形成している。つまり、第二排紙胴3のある面を面取り加工した後、軸Oを中心に第二排紙胴3を約8度回転させて固定し、面取り加工することを繰り返す。そして、この面取り加工は、グリッパ付近から離れるほど加工代を多く、すなわち逃げ部19を大きくするように行われる。もう一方の180度の区間についても、第二排紙胴3の軸心に対して点対称に、同様の面取り加工が行われる。
【0018】
本実施形態の作用について説明する。印刷が行われた枚葉紙Pは図示しない圧胴から第一排紙胴1を介して第二排紙胴3へ受け渡され、さらにチェーングリッパ7へ受け渡されて排紙される。この時、第二排紙胴3には前述の面取り加工による逃げ部19が形成されているので、チェーングリッパ7で搬送される枚葉紙Pの紙尻が第二排紙胴3に接触して、枚葉紙が傷ついたり汚れたりすることがない。搬送される枚葉紙Pの紙尻と第二排紙胴3との関係は図1に示すとおりである。
【0019】
特に両面印刷がされた枚葉紙Pについては、第二排紙胴3へその印刷面が当接するが、前述のとおり面取り加工が施されてほぼ円形状に近いので、枚葉紙の印刷面は第二排紙胴3に滑らかに当接し、枚葉紙Pが傷ついたり汚れたりすることがない。さらに、その枚葉紙Pがチェーングリッパ7により搬送されるが、搬送された枚葉紙Pの紙尻には第二排紙胴3の逃げ部19が対向するので、接触による枚葉紙の傷つきや汚れが生じることがない。
【0020】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、第二排紙胴3をMC加工により面取りしていたが、これに限らず、旋盤加工等を用いてもよい。もちろん多角形面取りに限ることなく、連続曲線等でもよい。また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、枚葉紙を搬送する胴を有する印刷機であればグラビア印刷機やインクジェット印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る印刷機の搬送胴は、印刷後の枚葉紙を搬送する搬送胴を備えた印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0022】
1…第一排紙胴、3…第二排紙胴、5…ペーパーガイド、7…チェーングリッパ、9…前スプロケット、11…チェーン、13…コンタクトフリーボード、15…爪、17…爪台、19…逃げ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙された枚葉紙を印刷して排紙する印刷機であって、枚葉紙を把持可能な把持部を有する複数の胴を有し、該胴により枚葉紙を搬送する印刷機において、
複数の該胴の少なくとも一つについて、該胴を側面視でほぼ円形状とし、該胴の周面に、該胴の該把持部よりも該胴の径方向で径小となる逃げ部を設けたことを特徴とする印刷機。
【請求項2】
該胴は該把持部をその周面に少なくとも二箇所有し、該周面における一方の該把持部と他方の該把持部のとの間に、該逃げ部が面取り加工されることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の印刷機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−81597(P2012−81597A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227240(P2010−227240)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】