印刷版折り曲げ装置
【課題】 設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができるとともに、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部から落下し難くなるようにした印刷版折り曲げ装置を提供する。
【解決手段】 この印刷版折り曲げ装置は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にある。
【解決手段】 この印刷版折り曲げ装置は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状印刷版材料の端縁部を折り曲げる印刷版折り曲げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂印刷版用折り曲げ装置では、印刷版をセットする印刷版セット部の角度は略水平となっている(下記特許文献1,2,3,4参照)。一部の機種では印刷版セット部が斜めに配置されているものもあるが角度は60度以上である。
【0003】
印刷版用折り曲げ装置の印刷版セット部が略水平となっている場合、装置の上面からの投影面積が増加し、設置スペースが余分に必要となる。更に、折り曲げ機構部が作業者から遠くなるため折り曲げ機構部への印刷版の挿入及び折り曲げ後の印刷版の取り出しが困難である。また、印刷版が作業者から遠くまで配置されるため、検版作業には向かない。
【0004】
一方、印刷版セット部の角度が急な場合、樹脂印刷版は材料メーカからロール状態で供給されるためカールがあり、印刷版セット部ヘの吸着固定前にカールにより印刷版が丸まり基準ピンから落下してしまうことがあった。折り曲げ機構に印刷版を挿入する作業性を確保するために印刷版セット部の高さは作業者の目線よりも低くする必要があるため、検版を行うには作業者が腰をかがめる等の無理な姿勢をとる必要があり作業性が悪い。
【特許文献1】特開平02−102049号公報
【特許文献2】特開平08−295008号公報
【特許文献3】特開2000−190456号公報
【特許文献4】特開2002−254601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができるとともに、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部から落下し難くなるようにした印刷版折り曲げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による印刷版折り曲げ装置は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、前記セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、前記印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にあることを特徴とする。
【0007】
この印刷版折り曲げ装置によれば、印刷版セット部が水平方向に対し30度以上の角度で傾斜しているので、装置の設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができ、また50度以下の角度で傾斜しているので、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部の基準ピン等から落下し難くなる。
【0008】
上記印刷版折り曲げ装置において前記印刷版セット部の角度が35乃至45度の範囲内にあることが更に好ましく、上記効果を更に奏することができる。
【0009】
前記印刷版セット部の角度が上記範囲内にあることで、印刷版セット部にセットされた印刷版材料が作業者から遠くなり過ぎないで配置されるため、前記印刷版セット部は検版台を兼ねることができ、検版作業に好適となる。
【0010】
前記印刷版セット部は前記印刷版材料の切欠きに係合する位置決め用基準ピンを有することで、印刷版材料を印刷版セット部に正確にセット可能となるが、印刷版セット部が上記角度範囲内にあることで、印刷版材料が印刷版セット部の基準ピンから落下し難くなる。
【0011】
また、前記プラスチック支持体は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、前記印刷版材料は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することが好ましい。
【0012】
また、前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることが更に好ましい。また、前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mm2の範囲内であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷版折り曲げ装置によれば、設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができるとともに、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部から落下し難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による印刷版折り曲げ装置で実行可能な印刷版折り曲げ工程(a)〜(c)を概略的に説明するための側断面図である。図2は本実施の形態による印刷版折り曲げ装置の全体外観を示す斜視図である。図11は図2の操作スイッチ部12を示す平面図である。図12は図2の印刷版折り曲げ装置の制御系を示すブロック図である。図18は図2の印刷版折り曲げ装置の左側面図である。
【0015】
最初に、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置で行う印刷版折り曲げ方法の概略的工程を図1(a)〜(c)を参照して説明する。
【0016】
図1(a)のように、好ましくはバネ鋼からなる折り曲げべース板3を台座2の先端2aから突き出るようにして台座2に固定し、プラスチック支持体で支持されたシート状の印刷版1を台座2及び折り曲げべース板3に載せ、印刷版1の側縁部1aが折り曲げべース板3の先端部3aから突き出るように位置決める。次に、図の破線のように上方に位置する版固定ブロック4及び折り曲げブロック5を下方向Vに下降させ、版固定ブロック4及び折り曲げブロック5で印刷版1の上面を押さえ付ける。
【0017】
次に、図1(b)のように、折り曲げべース板3の先端部3aを略回転中心として折り曲げブロック5を回転方向Rに図の破線のように回転させて略180°回転させると、版固定ブロック4と折り曲げブロック5との間に折り曲げべース板を挟み込んで印刷版1が側縁部1aで重ね折りの状態になり、この重ね折りの状態で版固定ブロック4と折り曲げブロック5とで印刷版1及び折り曲げべース板3を所定の保持時間で押圧する。
【0018】
次に、折り曲げブロック5を回転方向Rの逆方向に回転させ、図1(a)の位置に戻してから再度、図1(b)のように回転方向Rに略180°回転させ、所定の保持時間で押圧してから、かかる折り曲げを所定回数繰り返す。
【0019】
次に、図1(c)のように、版固定ブロック4と折り曲げブロック5とを一体に上方向V’に退避させてから印刷版1を取り出すと、印刷版1の重ね折られた側縁部1aがスプリングバックし、印刷版1に対し側縁部1aをほぼ直角に折り曲げることができる。
【0020】
以上のように、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置では、プラスチック支持体で支持されたシート状の印刷版材料の一方の面を版固定ブロック及び折り曲げブロックに対し前記折り曲げブロックが前記一方の面の側縁部側に位置するように接触させ、他方の面を折り曲げべース板に接触させ、前記折り曲げべース板の先端部を略回転中心として前記折り曲げブロックを略180°回転させ、前記折り曲げべース板を挟み込むように前記印刷版材料の側縁部を重ね折りしながら前記版固定ブロックと前記折り曲げブロックとで前記印刷版材料及び前記折り曲げべース板を押圧することにより前記印刷版材料の側縁部を折り曲げる。
【0021】
この印刷版折り曲げ装置によれば、版固定ブロックと折り曲げブロックとの間で折り曲げべース板を挟み込んで印刷版材料を側縁部で重ね折りし、この重ね折りの状態で印刷版及び折り曲げべース板を押圧するので、加熱せずに印刷版材料の側縁部を精度よく折り曲げることができ、加熱手段等が不要でありかつ折り曲げブロックの回転のときに折り曲げべース板を待避させる必要がないため、折り曲げ位置精度を向上でき、装置・機構の簡素化が可能となる。
【0022】
次に、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置全体を説明する。図2、図18に示すように、印刷版折り曲げ装置は、カバー部材11aで包囲されかつシート状の印刷版を折り曲げる折り曲げ機構部11と、折り曲げ回数や印刷版押圧の保持時間を設定しかつ折り曲げ開始スイッチのある操作スイッチ部12と、印刷版を載せてセット可能なように表面が平坦で傾斜して取り付けられた印刷版セット部13と、を備える。
【0023】
印刷版折り曲げ装置は、更に、引き上げると折り曲げ準備が完了しかつ引き下げると折り曲げ機構部11を解除し印刷版をセットしまた取り出すことのできる版押さえレバー14と、制御機器を収納し前面側に電源スイッチ20が配置された電装箱15と、設置面に置かれる設置台16と、設置台16から直立し印刷版セット部13及び折り曲げ機構部11を支持するように傾斜した支持フレーム17と、を備える。
【0024】
なお、印刷版セット部13は、印刷版を載せたときに吸着するための吸着機構を内蔵し、吸着機構は、吸着サイズの切替スイッチ18と、吸着をオン・オフするフットスイッチ19と、を有する。
【0025】
図18に示すように、印刷版セット部13は、支持フレーム17の傾斜部17aに取付部材17bを介して図の横方向の水平方向に対して傾斜して取り付けられており、折り曲げ機構部11側が高く装置前面(図18の右側)に向けて低くなるように傾斜している。印刷版セット部13の水平方向に対する傾斜角θは、図18では例えば40度であるが、30乃至50度の範囲内が好ましく、35乃至45度の範囲内が更に好ましい。
【0026】
上述のように、印刷版セット部13が水平方向に対し30度以上の角度で傾斜しているので、装置の設置スペースを減らすことができ、また、装置前面側が低くなるように傾斜するので、折り曲げ機構部11ヘの印刷版の挿入及び折り曲げ後の印刷版の取り出しを容易に行うことができるとともに、印刷版セット部13は適度に傾斜しているので、検版台を兼ねることができる。
【0027】
また、印刷版セット部13が50度以下の角度で傾斜しているので、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部13の基準ピン58,59から落下することは起き難くなる。
【0028】
図11に示すように、操作スイッチ部12は、印刷版押圧の保持時間を設定可能なタイマ46と、印刷版の折り曲げ回数を設定可能なカウンタ47と、ボタン部48aが点灯部62(図12)により点灯・点滅可能な押しボタンスイッチ48と、を有する。
【0029】
タイマ46は、例えば秒単位で、プラスキー46aで時間を増やし、マイナスキー46bで時間を減らすことで、任意の保持時間を例えば1乃至15秒の範囲内で設定でき、その設定した保持時間が経過すると、折り曲げ機構部11が次の動作に移る。また、カウンタ47は、プラスキー47aで回数を増やし、マイナスキー47bで回数を減らすことで、任意の折り曲げ回数を例えば1乃至9回の範囲内で設定でき、その設定した回数だけ折り曲げると、折り曲げ機構部11の動作を停止させる。押しボタンスイッチ48は、ボタン部48aを押すことで折り曲げの開始・停止・復帰の動作を行うことができる。
【0030】
図12に示すように、図2の印刷版折り曲げ装置の制御系は、図2の電装箱15内に中央演算処理装置(CPU)から構成される制御部60を有し、制御部60には、吸着サイズ切替スイッチ18,フットスイッチ19,タイマ46,カウンタ47,押しボタンスイッチ48等から各信号が入力する。これらの入力信号に基づいて制御部60は、折り曲げ機構部11において印刷版を折り曲げるために回転する折り曲げブロック25(図5)を回転駆動するための駆動源であるモータ61,押しボタンスイッチ48の点灯部62,図2の操作スイッチ部12の近傍に配置されたブザー63,図2の印刷版セット部13で印刷版を吸着するために吸引する真空ポンプ64等を制御する。
【0031】
次に、図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を図14乃至図17を参照して説明する。図14は図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を示す平面図である。図15は図14の印刷版セット部の基準ピン穴の近傍を示す要部断面図である。図16は図14のXV-XV線に沿って印刷版セット部を破断してみた要部断面図である。図17は図14の印刷版セット部に印刷版を位置決めてセットした状態を概略的に示す平面図である。
【0032】
図2のように、印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部13は、傾斜した下方側に基準ピン58,59が抜き挿し可能に構成され基準ピンを取り付けできる基準ピン取付プレート55を有する。印刷版に形成された位置決めのための切り欠きが基準ピン58,59に係合することで、印刷版が印刷版セット部13に位置決めされてセットされるようになっている。
【0033】
図14に示すように、基準ピン取付プレート55は、印刷版セット部13の図2,図14の横方向である幅方向Wに下端13bに沿って延び、両端において印刷版セット部13の上端13a側に突き出すように延びた突き出し部53,54を有する。
【0034】
基準ピン取付プレート55は、印刷版セット部13に形成された凹部内に収まるように板状に構成され、図14のように、突き出し部53,54に一対づつ形成された図の縦方向に長い長円穴でボルト53a、54aにより印刷版セット部13に取り付けられて固定されており、図16のように印刷版セット部13の表面と同一表面を構成している。このように、基準ピン取付プレート55は、長円穴でボルト53a、54aにより取り付けられているので、印刷版セット部13からメンテナンスや交換のために取り外し可能であり、また、ボルト53a、54aを弛めて後述の距離調整機構により図の縦方向位置を微調整可能である。
【0035】
図14のように、基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54にはそれぞれ多数の基準ピン穴58a、59aが各種印刷機仕様や印刷版サイズに対応して設けられており、各基準ピン穴58a、59aは、図15のように、基準ピン58が抜き挿し可能に構成されている。基準ピン58、59は印刷版の切り欠きの位置や形状が変わると、それに対応した位置の基準ピン穴58a、59aに差し込まれて取り付けられることで、印刷版の切欠きの位置や形状の変更に対応可能である。
【0036】
また、印刷版セット部13は、上端13aと基準ピン58との距離及び上端13aと基準ピン59との距離を調整するために基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13に対し移動させる偏心カム56、57から構成される距離調整機構を備える。図14のように、基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54に円形穴56a、57aが形成されており、円形穴56a、57a内に偏心カム56、57が回転可能に印刷版セット部13側に固定されている。ボルト53a、54aを弛めた状態で円形穴56a、57a内で偏心カム56、57を回転させることで、傾斜により重力成分が加わっている基準ピン取付プレート55を左右両端側でそれぞれ移動させその縦方向位置を微調整できる。
【0037】
上述のように、偏心カム56、57から構成される距離調整機構によれば、基準ピン取付プレート55の移動により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離を両端側において調整できるので、装置生産時の位置調整が容易である。
【0038】
また、基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13の凹部に嵌め込むようにして取り付けたとき、図16のように、基準ピン取付プレート55と印刷版セット部13との間に溝gができるが、上端13a側に向く基準ピン取付プレート55の各端部では溝gに印刷版のエッジが引っ掛かるおそれがあるので、各端部55a、55b、55cをスロープ状の傾斜面にしている。これにより、印刷版セット部13における印刷版のセットや取り外しのときに、印刷版のエッジが溝gに引っ掛からないので、印刷版のセットや取り外し作業に支障が生じない。
【0039】
また、基準ピン取付プレート55は鉄鋼から構成しているので、基準ピン58,59を頻繁に抜き挿ししても基準ピン穴58a、59aの削れが発生し難く、基準ピン58,59の位置精度を維持できる。また、基準ピン58,59はステンレス鋼から構成している。また、印刷版セット部13はアルミニウムから構成しているので、装置の重量低減、加工工数削減、コスト削減等が可能となる。
【0040】
以上のような印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部13に、図17のように、下端に位置決め用の切り欠きk1,k2の形成された印刷版1をセットするとき、印刷版1の切り欠きk1,k2の形状に対応した基準ピン58,59を対応した位置の基準ピン穴58a、59aに挿してから、印刷版1を基準ピン58,59に切り欠きk1,k2を係合させて位置決めすることで、印刷版1を印刷版セット部13に精度よく位置決めしてセットできる。この場合、予め距離調整機構により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離が基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54において調整されているので、印刷版1の位置決め精度がよい。
【0041】
上述のような印刷版セット部13と基準ピン取付プレート55との構成によれば、基準ピン58,59を頻繁に抜き挿しすると、基準ピン取付プレートの材質によっては基準ピン穴が削れてしまい、基準ピンの位置精度が悪化するおそれがあるが、基準ピン取付プレート55を鉄鋼で構成することで、基準ピンの位置精度を維持できる。また、基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13と別構成としたため、上述のように鉄鋼から製作することが可能となり、印刷版セット部13をアルミニウムで製作することで装置の重量低減、加工工数削減、コスト削減等が可能となる。
【0042】
また、基準ピン取付プレート55が印刷版セット部13から着脱可能であるため、印刷機の仕様変更等により基準ピンの位置や形状が変更になったとしても基準ピン取付プレート55を作り直すだけで印刷版折り曲げ装置はそのまま使用することができる。
【0043】
上述の図14の距離調整機構によれば、折り曲げ機構部11の部品精度や組立精度によっては折り曲げ機構部11が折り曲げの基準に対して若干斜めになっていることがあるが、上記偏芯カム56,57により左右独立して基準ピン取付プレート55と上端13a側の折り曲げ位置との距離を簡単に調整できるので、位置調整が容易となる。折り曲げ機構部11を移動して調整する方式では全体の距離調整は比較的容易に行えるようになっているが、左右で距離が異なる場合の調整は折り曲げ機構部11の組付け位置を調整しなけれぱならず、調整に時間を要していたのに対し、図14の距離調整機構では、簡単かつ正確に短時間で調整可能である。
【0044】
また、基準ピンから折り曲げ位置までの距離は印刷機の仕様により基準値が設定されているものの、実際の印刷機毎に寸法か微妙にずれていることがあるため、装置生産時の調整値から変更する可能性があるが、図14の距離調整機構によれば、大がかりな調整治具等を必要とせず容易に調整できる。
【0045】
次に、図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11を図3乃至図6を参照して説明する。
【0046】
図3は、図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11をカバー部材11aを取り外した状態で背面側から見た斜視図である。図4は、図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す要部斜視図である。図5は図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す側面図である。図6は図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が下降し印刷版を押さえた状態を示す側面図である。
【0047】
図3〜図6に示すように、折り曲げ機構部11は、図2の印刷版セット部13の上に載せられたシート状の印刷版1(図5)を折り曲げのとき固定する版固定ブロック24と、版固定ブロック24で固定した印刷版1を側縁部1aで折り畳むように回転軸32を回転中心として略180°回転する折り曲げブロック25と、回転軸32に連結した歯車31と、版固定ブロック24と折り曲げブロック25を支持しかつ回転軸32を回転可能に支持する支持部21と、を備える。
【0048】
図5,図6のように、版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げると、印刷版セット部13の下方に設けられた支点14aでてこ運動し、支持部21の下方の作用部21eに力が作用することで、支持部21は、支持部21の溝21a内のコロ21b及び支持部21の版押さえレバー14側の側面に接したコロ21c、21dでガイドされながら、図の略下方rに版固定ブロック24と折り曲げブロック25とともに移動する一方、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、支持部21は図の略上方r’に版固定ブロック24と折り曲げブロック25とともに移動するようになっている。
【0049】
図5のように、版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げ、支持部21が図の略下方rに下降すると、図3,図6のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13側に接近し、印刷版セット部13の上の印刷版1と接触し押さえ付けるとともに、回転軸32に連結した歯車31も下降し、歯車31が印刷版セット部13の下方に配置された別の歯車33と噛み合うようになっている。
【0050】
また、図6のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13の上の印刷版1と接触し押さえ付けた状態から、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、図4,図5のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13側から離間し上方に移動し、印刷版をセットしたり、取り外したりできるようになる。
【0051】
また、印刷版セット部13の下方に配置された歯車33は、図12の制御部60により制御されるモータ61(図12)により駆動される回転軸33aを介して回転駆動されると、図3,図6のように噛み合っている歯車31,回転軸32を介して折り曲げブロック25を回転方向Rに略180°回転させてから、この180°回転した状態を保持して版固定ブロック24に対し挟んだ印刷版1を押圧するようになっている。
【0052】
また、版固定ブロック24と折り曲げブロック25は、図2の印刷版セット部13の幅方向Wに沿って延びており、その両端に歯車31と回転軸32が設けられており、回転軸33aも幅方向Wに沿って延び、両端に歯車33が連結されている。
【0053】
また、図2の印刷版セット部13は、全体としてアルミニウム等の金属材料から略矩形平面状に構成され、その先端側(図2の背面側)には、図4〜図6のように、バネ鋼からなる折り曲げべース板23が幅方向Wに沿って延びるとともに、印刷版セット部13と折り曲げべース板23が同じ平面を形成するように固定されている。この折り曲げべース板23の固定は、図1のように印刷版セット部13側に埋め込んだマグネットにより行うことで、印刷版セット部13の平面に突起物が生じない。
【0054】
また、図4〜図6のように、印刷版セット部13に固定された折り曲げべース板23の先端部23aは、印刷版セット部13の端面13aから突き出ており、曲げブロック25が先端部23aに接触しないように突き出た位置関係となっている。また、折り曲げブロック25は回転軸32を中心にして回転するが、この回転軸32の中心軸は折り曲げべース板23の先端部23aと略一致しており、折り曲げブロック25は先端部23aを略回転中心として回転方向Rに回転する。
【0055】
なお、金属板からなる折り曲げべース板23は厚さが0.3乃至0.7mmの範囲内であることが好ましい。折り曲げべース板23の厚さが0.3mm未満となると、折り曲げべース板23が折り曲げブロック25の回転とともに折り曲がってしまい好ましくなく、0.7mmを超えると、印刷版1が折り曲げべース板23の先端部23aに倣ってしまい2段曲げのようになり易く好ましくない。折り曲げべース板23の厚さは0.4乃至0.5mmの範囲内であることが更に好ましい。また、折り曲げべース板23の材質はバネ鋼であることで、折り曲げべース板23の先端部23aを略回転中心として折り曲げブロック25が回転するとき、そのバネ鋼が撓むことで、印刷版1の折り曲げ部への集中荷重を吸収し、印刷版1の割れを防止できる。
【0056】
折り曲げブロック25の下部は、図2,図5,図6の印刷版セット部13の長手方向(奥行き方向)に、厚さの薄い薄肉部25aに構成され、薄肉部25aの厚さは、折り曲げべース板23の先端部23aの突き出し長さよりも小さくなっている。これにより、折り曲げブロック25が略180°回転したとき、折り曲げブロック25が印刷版セット部13の端面13aに当接せずに、薄肉部25aが折り曲げべース板23の先端部23aの下面に対向する(図9(f)参照)。
【0057】
次に、折り曲げブロック25を回転方向Rに略180°回転させてから薄肉部25aと版固定ブロック24との間で印刷版1を押圧するとき、その押圧力を調整する押圧力調整機構を図7を参照して説明する。図7は押圧力調整機構を設けた版固定ブロック24を図3,図4に示す背面側から見た背面図(a)及び部分拡大図(b)である。
【0058】
図7(a)に示すように、版固定ブロック24は、図2の印刷版セット部13の幅方向Wに延びているが、上部ブロック24aと下部ブロック24bとに分割されている。図7の押圧力調整機構は、上部ブロック24aと下部ブロック24bとが幅方向Wの複数箇所に設けられたねじ孔24cでねじ結合されるとともに、下部ブロック24bに幅方向Wの複数箇所にねじ孔24dを設けることで構成される。
【0059】
図7(a)、(b)のように、上部ブロック24aに形成された貫通孔からボルト24fを差し込んで下部ブロック24bのねじ孔24cにねじ込むことで、両ブロック24a、24bがねじ結合される。また、下部ブロック24bの下面から各ねじ孔24dにセットビス24gをねじ込んで、各セットビス24gについて両ブロック24a、24bの合わせ面24eからの突き出し量を調整することで、版固定ブロック24の全体高さhを幅方向Wにおいて調整する。このようにして、幅方向Wにおいて版固定ブロック24の全体高さhが変わるので、版固定ブロック24と折り曲げブロック25の薄肉部25aとの間で印刷版1を押圧するときの押圧力が変化し、押圧力を調整できる。
【0060】
次に、図5のように上方に移動した折り曲げ機構部11を上方の保持位置で保持し固定する落下防止機構について図8を参照して説明する。図8は折り曲げ機構部11の落下防止機構を示す模式図(a)及びその部分拡大図(b)である。
【0061】
図8(a)のように、折り曲げ機構部11の支持部21の下方にマグネット40が固定されており、折り曲げ機構部11が図8(a),図5のように略上方rに移動すると、マグネット40が印刷版セット部13側に固定された固定部41に吸着される。この落下防止機構により、折り曲げ機構部11が上方に待避したとき、保持位置で保持されて固定され、印刷版1のセットに両手を使用できるので、作業性の向上及び印刷版1の損傷防止が可能となるとともに、作業中の安全を確保できる。
【0062】
また、図8(a)、(b)のように、固定部41にはボールプランジャー41aが設けられており、マグネット40が固定部41に吸着される位置で、ボールプランジャー41a内のスプリング41cで外側に付勢された小球41bが支持部21の側面の半球状の凹部21fに入り込む。このボールプランジャー41aにより、折り曲げ機構部11が図5のように上方に移動しマグネット40が固定部41に吸着されて保持位置で固定されるときの位置決めが確実に行われる。
【0063】
次に、図2乃至図8、図11乃至図18の印刷版折り曲げ装置により、プラスチック支持体を有する印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程について図9(a)乃至(f)及び図13のフローチャートを参照して説明する。図9(a)乃至(f)は、図2乃至図8の印刷版折り曲げ装置により印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程(a)乃至(f)を説明するための要部側面図である。図13は図2乃至図18の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ動作を説明するためのフローチャートである。
【0064】
まず、図11の操作スイッチ部12で、タイマ46に押圧の保持時間を例えば5秒に設定し、カウンタ47に折り曲げの繰り返し回数を例えば2回と設定する(S01)。次に、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、版固定ブロック24と折り曲げブロック25等の折り曲げ機構部11が略上方r’に移動し、図5,図9(a)のように、解除状態になるが、このとき、折り曲げ機構部11は図8の落下防止機構により図9(a)の位置で固定状態である(S02)。
【0065】
次に、シート状の印刷版1を、図5の破線のように側縁部1aの先端が折り曲げべース板23の先端部23aから突き出るように、かつ、図17の破線のように印刷版1の切り欠きk1,k2を基準ピン58,59に係合させて位置決めして印刷版セット部13にセットする(S03)。
【0066】
上述のセットのとき、印刷版セット部13は例えば図18の傾斜角θが40度で傾斜し、適度に傾斜しているので、折り曲げ機構部11が作業者に近くなり、折り曲げ機構部11ヘの印刷版1の挿入及び折り曲げ後の印刷版1の取り出しが容易である。また、印刷版セット部13は大きく傾斜していないので、シート状の印刷版1にカールが生じていて切り欠きk1,k2が基準ピン58,59から外れても印刷版1は落下し難くなっている。また、印刷版セット部13にセットした印刷版1が作業者の目線に対し斜め下方となるため、作業者は自然な姿勢で検版を行うことができる。
【0067】
次に、図2のフットスイッチ19を操作することで吸引機構の真空ポンプ64(図12)を作動させて印刷版1を印刷版セット部13に吸着し固定する(S04)。
【0068】
次に、図5の状態から版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げると、図8のマグネット40による固定が解除され、折り曲げ機構部11が略下方rに移動し版固定ブロック24と折り曲げブロック25が下降し、図6,図9(b)のように版固定ブロック24が印刷版1と接触し、折り曲げブロック25の薄肉部25aが印刷版1の突き出た側縁部1aと接触する。このようにして、版押さえレバー14により折り曲げ機構部11をセットする(S05)。
【0069】
次に、図11の押しボタンスイッチ48を押しオンにすると、モータ61(図12)が回転することで折り曲げ動作が開始する(S06)。即ち、モータ61の回転により図3〜図6のように回転軸33a、歯車33,歯車31を介して回転軸32が回転することで、折り曲げブロック25が回転方向Rに折り曲げべース板23の先端部23aを略回転中心として回転を始め、図9(c)のように45°、図9(d)のように90°、図9(e)のように135°回転しながら、薄肉部25aが印刷版1の側縁部1aを折り曲げていく。
【0070】
そして、折り曲げブロック25が図9(f)のように180°回転すると、版固定ブロック24と対向するように下方に位置し、薄肉部25aと版固定ブロック24との間で印刷版1の側縁部1aが、折り曲げべース板23の先端部23aを間に挟んだ状態で折り畳む(図1(b)参照)ようにして折り曲げる(S07)。
【0071】
そして、図9(f)の印刷版1の折り畳み状態を保持することで、薄肉部25aで折り畳まれた印刷版1の側縁部1aを押圧する(S08)。この押圧をタイマ46で設定した保持時間だけ続け(S09)、折り曲げ回数がカウンタ47で設定した回数未満であるときは(S10)、モータ61(図12)を逆回転させることで(S11)、折り曲げブロック25を図9(f)の状態から図6,図9(b)の状態に戻してから、再び、上記ステップS07、S08と同じように折り曲げ工程・押圧工程を実行する。
【0072】
次に、折り曲げ回数がカウンタ47で設定した回数に達すると(S10)、折り曲げ動作が終了し(S12)、真空ポンプ64が自動的に止まり吸着機構が停止し(S13)、押しボタンスイッチ48のボタン部48aが点灯部62(図12)により点灯するとともにブザー63(図12)がなる(S14)。なお、上記折り曲げ動作開始S06から折り曲げ動作終了S12までの間、ボタン部48aが点灯部62(図12)により点滅する。これにより、図2の印刷版折り曲げ装置が折り曲げ動作中であることが分かる。
【0073】
次に、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、折り曲げ機構部11が図5,図9(a)のように、略上方rに移動し解除され、図8のマグネット40で固定され(S15)、印刷版1を印刷版セット部13から取り外す(S16)。印刷版1の重ね折られた側縁部1aがスプリングバックすることで、図1(c)のように印刷版1に対し側縁部1aをほぼ直角に折り曲げることができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態の印刷版折り曲げ装置によれば、印刷版セット部13の傾斜角θを水平方向に対し好ましくは30〜50度、更に好ましくは35〜45度の範囲内で最適化することで、略水平状態と比較して装置の設置スペースを減らすことができるとともに、折り曲げ機構部11が作業者に近いため、折り曲げ機構部11ヘの印刷版1の挿入及び折り曲げ後の印刷版1の取り出しが容易となり作業性が向上する。また、カールした印刷版をセットする際にも基準ピン58,59からの印刷版の落下を軽減できる。
【0075】
また、印刷版セット部13は適度に傾斜しているため検版台を兼ねることができるので、印刷版が作業者の目線に対し斜め下方となり、作業者自然な姿勢で検版を行うことが可能であるとともに、検版と印刷版折り曲げを時間的に連続して行うことができるので、検版用のスペースが不要となる。更に、検版後に折り曲げ装置まで印刷版の移動が不要となるので、移動に伴う印刷版への傷発生が皆無となる。
【0076】
また、版固定ブロック24と折り曲げブロック25との間で折り曲げべース板23を挟み込んで印刷版1を側縁部1aで重ね折りし、この重ね折りの状態で印刷版1及び折り曲げべース板23を所定の押圧時間押圧し、しかも、かかる折り曲げ動作を所定回数だけ繰り返すので、加熱せずに印刷版1の側縁部1aを精度よく折り曲げることができ、側縁部1aの折り曲げ角を精度よくほぼ直角にすることができ、加熱手段等が不要でありかつ折り曲げブロック25の回転のときに印刷版の折り曲げ内側の部材である折り曲げべース板23を待避させる必要がないため、折り曲げ位置精度を向上でき、装置・機構の簡素化が可能となる。
【0077】
また、図17のように、印刷版1を基準ピン58,59に切り欠きk1,k2を係合させて位置決めすることで、印刷版1を印刷版セット部13に精度よく位置決めしてセットできる。また、距離調整機構により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離が予め調整されているので、印刷版1の位置決め精度がよい。
【0078】
また、図7の押圧力調整機構により、押圧力を変化させることで折り曲げ角度の調整が可能となり、また、印刷版1の幅方向Wの任意位置で押圧力の調整が可能なため折り曲げ部の波打を解消できる。
【0079】
また、折り曲げべース板23の上面は印刷版1が常に接触しているため、突起物があると印刷版への傷の発生やセットのときの印刷版エッジ部の引っ掛かりが発生するが、折り曲げべース板23をマグネットにより保持し固定することで突起が無くなり、かかる傷の発生等を未然に防止できる。なお、折り曲げべース板23を接着材、両面テープ等により保持し固定するのは、組立時の作業性が悪化し、好ましくない。
【0080】
また、加熱手段が不要であるので、加熱制御機構等が不要であり、部品数増加やコストアップにならず、また温度を一定温度に上げておくスタンバイ状態が不要であるので、装置不使用のときの電力消費がなくエネルギーの無駄が生じなく、また、印刷版で熱により画像形成層が反応することはない。
【0081】
また、折り曲げ機構部11による印刷版1の押圧状態での保持時間及び折り曲げ機構部11による折り曲げ回数の少なくとも一方を変化させることで、従来のように印刷版へ熱量を加えることで折り曲げ角度を調整しなくとも、印刷版1の側縁部1aにおける折り曲げ角度の調整が可能となる。また、折り曲げ機構部11の折り曲げブロック25の駆動源(モータ61)を有するので、自動で印刷版の折り曲げ及び解除動作を行うことが可能となる。
【0082】
また、図11、図12のように、タイマ46、カウンタ47を備えることで、折り曲げ時間(押圧保持時間)、折り曲げ回数を正確に制御でき、安定した折り曲げ角度の再現が可能となる。
【0083】
また、折り曲げ完了時を通知する点灯部62とブザー63等から構成される通知手段により、折り曲げ動作完了をユーザが即時に認識可能となり、更に、点灯部62とブザー63を併用することで比較的騒音レべルの高い印刷作業現場においても装置の状態を認識できる。
【0084】
次に、図1の印刷版折り曲げ方法及び図2乃至図9、図11乃至図13、図18の印刷版折り曲げ装置に適用して好ましい印刷版について図10を参照して説明する。図10は本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【0085】
図10のように、シート状の印刷版1は、プラスチック支持体50上に少なくとも親水性層51及び感熱性画像形成層52を有する。印刷版1は、例えば印刷版の作製装置のドラムに巻き付けられ、そのドラムを回転させて光源により画像データを走査露光して画像記録された後に、上述のようにして、側縁部1aが図1(c)のように折り曲げられてから、印刷機の版胴にその折り曲げ部を用いて有効に装着される。
【0086】
印刷版1のプラスチック支持体50として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0087】
プラスチック支持体50は、特に、ポリエチレンテレフタレートが搬送性、取り扱い易さ等から好ましく、印刷版作製装置内では、プラスチック支持体の厚みが薄過ぎたり厚過ぎると、ロールにし難いし、搬送性に問題があり、また薄過ぎると次の工程の印刷機に持ち運ぶ時に強度がなく撓む等の問題があり、搬送性、取り扱い易さ等からプラスチック支持体50の厚さは100〜250μmが好ましく、特に好ましくは170〜180μmである。また、プラスチック支持体50は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であることが好ましく、5000乃至6000N/mm2の範囲内であることが更に好ましい。
【0088】
印刷版1の親水性層51とは、印刷時に印刷インキを着肉しない機能を有する層であり、この親水性層51を形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリクス構造体や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリクス構造体、金属酸化物等が好ましく用いられる。親水性層51は、特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナソル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0089】
また、印刷版1の感熱性画像形成層52は、加熱により画像を形成しうる層であり、熱溶融性微粒子及び/又は熱融着性微粒子を含有する。熱溶融性微粒子としては、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。また、熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。
【0090】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図7と同様の押圧力調整機構を折り曲げブロック25に設けてもよい。
【0091】
また、図13では、折り曲げ機構部11により印刷版1の押圧及び複数回の折り曲げの両方を行ったが、印刷版1の押圧及び複数回の折り曲げのいずれか一方を行うことで、印刷版1の側縁部1aを折り曲げるようにしてもよい。
【0092】
また、図13における印刷版1の押圧の保持時間及び折り曲げ回数は、上述のプラスチック支持体50の厚さや材料等が変わった場合には、適宜適切な保持時間・回数に変更することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による好ましい印刷版の折り曲げ工程(a)〜(c)を概略的に説明するための側断面図である。
【図2】本実施の形態による印刷版折り曲げ装置の全体外観を示す斜視図である。
【図3】図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11をカバー部材11aを取り外した状態で背面側から見た斜視図である。
【図4】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す要部斜視図である。
【図5】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す側面図である。
【図6】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が下降し印刷版を押さえた状態を示す側面図である。
【図7】押圧力調整機構を設けた版固定ブロック24を図3,図4に示す背面側から見た背面図(a)及び部分拡大図(b)である。
【図8】折り曲げ機構部11の落下防止機構を示す模式図(a)及びその部分拡大図(b)である。
【図9】図2乃至図8の印刷版折り曲げ装置により印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程(a)乃至(f)を説明するための要部側面図である。
【図10】本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図2の操作スイッチ部12を示す平面図である。
【図12】図2の印刷版折り曲げ装置の制御系を示すブロック図である。
【図13】図2乃至図9、図11及び図12の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を示す平面図である。
【図15】図14の印刷版セット部の基準ピン穴の近傍を示す要部断面図である。
【図16】図14のXV-XV線に沿って印刷版セット部を破断してみた要部断面図である。
【図17】図14の印刷版セット部に印刷版を位置決めてセットした状態を概略的に示す平面図である。
【図18】図2の印刷版折り曲げ装置の左側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 印刷版(シート状印刷版材料)
1a 側縁部
11 折り曲げ機構部
11a カバー部材
13 印刷版セット部
13a 上端、端面
13b 下端
14 レバー
17 支持フレーム
17a 傾斜部
17b 取付部材
50 プラスチック支持体
51 親水性層
52 感熱性画像形成層
58,59 基準ピン
θ 傾斜角
k1,k2 切り欠き
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状印刷版材料の端縁部を折り曲げる印刷版折り曲げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂印刷版用折り曲げ装置では、印刷版をセットする印刷版セット部の角度は略水平となっている(下記特許文献1,2,3,4参照)。一部の機種では印刷版セット部が斜めに配置されているものもあるが角度は60度以上である。
【0003】
印刷版用折り曲げ装置の印刷版セット部が略水平となっている場合、装置の上面からの投影面積が増加し、設置スペースが余分に必要となる。更に、折り曲げ機構部が作業者から遠くなるため折り曲げ機構部への印刷版の挿入及び折り曲げ後の印刷版の取り出しが困難である。また、印刷版が作業者から遠くまで配置されるため、検版作業には向かない。
【0004】
一方、印刷版セット部の角度が急な場合、樹脂印刷版は材料メーカからロール状態で供給されるためカールがあり、印刷版セット部ヘの吸着固定前にカールにより印刷版が丸まり基準ピンから落下してしまうことがあった。折り曲げ機構に印刷版を挿入する作業性を確保するために印刷版セット部の高さは作業者の目線よりも低くする必要があるため、検版を行うには作業者が腰をかがめる等の無理な姿勢をとる必要があり作業性が悪い。
【特許文献1】特開平02−102049号公報
【特許文献2】特開平08−295008号公報
【特許文献3】特開2000−190456号公報
【特許文献4】特開2002−254601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができるとともに、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部から落下し難くなるようにした印刷版折り曲げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による印刷版折り曲げ装置は、プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、前記セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、前記印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にあることを特徴とする。
【0007】
この印刷版折り曲げ装置によれば、印刷版セット部が水平方向に対し30度以上の角度で傾斜しているので、装置の設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができ、また50度以下の角度で傾斜しているので、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部の基準ピン等から落下し難くなる。
【0008】
上記印刷版折り曲げ装置において前記印刷版セット部の角度が35乃至45度の範囲内にあることが更に好ましく、上記効果を更に奏することができる。
【0009】
前記印刷版セット部の角度が上記範囲内にあることで、印刷版セット部にセットされた印刷版材料が作業者から遠くなり過ぎないで配置されるため、前記印刷版セット部は検版台を兼ねることができ、検版作業に好適となる。
【0010】
前記印刷版セット部は前記印刷版材料の切欠きに係合する位置決め用基準ピンを有することで、印刷版材料を印刷版セット部に正確にセット可能となるが、印刷版セット部が上記角度範囲内にあることで、印刷版材料が印刷版セット部の基準ピンから落下し難くなる。
【0011】
また、前記プラスチック支持体は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、前記印刷版材料は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することが好ましい。
【0012】
また、前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることが更に好ましい。また、前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mm2の範囲内であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷版折り曲げ装置によれば、設置スペースを減らすことができ、折り曲げ機構部ヘの印刷版材料の挿入及び折り曲げ後の印刷版材料の取り出しを容易に行うことができるとともに、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部から落下し難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による印刷版折り曲げ装置で実行可能な印刷版折り曲げ工程(a)〜(c)を概略的に説明するための側断面図である。図2は本実施の形態による印刷版折り曲げ装置の全体外観を示す斜視図である。図11は図2の操作スイッチ部12を示す平面図である。図12は図2の印刷版折り曲げ装置の制御系を示すブロック図である。図18は図2の印刷版折り曲げ装置の左側面図である。
【0015】
最初に、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置で行う印刷版折り曲げ方法の概略的工程を図1(a)〜(c)を参照して説明する。
【0016】
図1(a)のように、好ましくはバネ鋼からなる折り曲げべース板3を台座2の先端2aから突き出るようにして台座2に固定し、プラスチック支持体で支持されたシート状の印刷版1を台座2及び折り曲げべース板3に載せ、印刷版1の側縁部1aが折り曲げべース板3の先端部3aから突き出るように位置決める。次に、図の破線のように上方に位置する版固定ブロック4及び折り曲げブロック5を下方向Vに下降させ、版固定ブロック4及び折り曲げブロック5で印刷版1の上面を押さえ付ける。
【0017】
次に、図1(b)のように、折り曲げべース板3の先端部3aを略回転中心として折り曲げブロック5を回転方向Rに図の破線のように回転させて略180°回転させると、版固定ブロック4と折り曲げブロック5との間に折り曲げべース板を挟み込んで印刷版1が側縁部1aで重ね折りの状態になり、この重ね折りの状態で版固定ブロック4と折り曲げブロック5とで印刷版1及び折り曲げべース板3を所定の保持時間で押圧する。
【0018】
次に、折り曲げブロック5を回転方向Rの逆方向に回転させ、図1(a)の位置に戻してから再度、図1(b)のように回転方向Rに略180°回転させ、所定の保持時間で押圧してから、かかる折り曲げを所定回数繰り返す。
【0019】
次に、図1(c)のように、版固定ブロック4と折り曲げブロック5とを一体に上方向V’に退避させてから印刷版1を取り出すと、印刷版1の重ね折られた側縁部1aがスプリングバックし、印刷版1に対し側縁部1aをほぼ直角に折り曲げることができる。
【0020】
以上のように、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置では、プラスチック支持体で支持されたシート状の印刷版材料の一方の面を版固定ブロック及び折り曲げブロックに対し前記折り曲げブロックが前記一方の面の側縁部側に位置するように接触させ、他方の面を折り曲げべース板に接触させ、前記折り曲げべース板の先端部を略回転中心として前記折り曲げブロックを略180°回転させ、前記折り曲げべース板を挟み込むように前記印刷版材料の側縁部を重ね折りしながら前記版固定ブロックと前記折り曲げブロックとで前記印刷版材料及び前記折り曲げべース板を押圧することにより前記印刷版材料の側縁部を折り曲げる。
【0021】
この印刷版折り曲げ装置によれば、版固定ブロックと折り曲げブロックとの間で折り曲げべース板を挟み込んで印刷版材料を側縁部で重ね折りし、この重ね折りの状態で印刷版及び折り曲げべース板を押圧するので、加熱せずに印刷版材料の側縁部を精度よく折り曲げることができ、加熱手段等が不要でありかつ折り曲げブロックの回転のときに折り曲げべース板を待避させる必要がないため、折り曲げ位置精度を向上でき、装置・機構の簡素化が可能となる。
【0022】
次に、本実施の形態による印刷版折り曲げ装置全体を説明する。図2、図18に示すように、印刷版折り曲げ装置は、カバー部材11aで包囲されかつシート状の印刷版を折り曲げる折り曲げ機構部11と、折り曲げ回数や印刷版押圧の保持時間を設定しかつ折り曲げ開始スイッチのある操作スイッチ部12と、印刷版を載せてセット可能なように表面が平坦で傾斜して取り付けられた印刷版セット部13と、を備える。
【0023】
印刷版折り曲げ装置は、更に、引き上げると折り曲げ準備が完了しかつ引き下げると折り曲げ機構部11を解除し印刷版をセットしまた取り出すことのできる版押さえレバー14と、制御機器を収納し前面側に電源スイッチ20が配置された電装箱15と、設置面に置かれる設置台16と、設置台16から直立し印刷版セット部13及び折り曲げ機構部11を支持するように傾斜した支持フレーム17と、を備える。
【0024】
なお、印刷版セット部13は、印刷版を載せたときに吸着するための吸着機構を内蔵し、吸着機構は、吸着サイズの切替スイッチ18と、吸着をオン・オフするフットスイッチ19と、を有する。
【0025】
図18に示すように、印刷版セット部13は、支持フレーム17の傾斜部17aに取付部材17bを介して図の横方向の水平方向に対して傾斜して取り付けられており、折り曲げ機構部11側が高く装置前面(図18の右側)に向けて低くなるように傾斜している。印刷版セット部13の水平方向に対する傾斜角θは、図18では例えば40度であるが、30乃至50度の範囲内が好ましく、35乃至45度の範囲内が更に好ましい。
【0026】
上述のように、印刷版セット部13が水平方向に対し30度以上の角度で傾斜しているので、装置の設置スペースを減らすことができ、また、装置前面側が低くなるように傾斜するので、折り曲げ機構部11ヘの印刷版の挿入及び折り曲げ後の印刷版の取り出しを容易に行うことができるとともに、印刷版セット部13は適度に傾斜しているので、検版台を兼ねることができる。
【0027】
また、印刷版セット部13が50度以下の角度で傾斜しているので、カールの生じた印刷版材料をセットしても印刷版セット部13の基準ピン58,59から落下することは起き難くなる。
【0028】
図11に示すように、操作スイッチ部12は、印刷版押圧の保持時間を設定可能なタイマ46と、印刷版の折り曲げ回数を設定可能なカウンタ47と、ボタン部48aが点灯部62(図12)により点灯・点滅可能な押しボタンスイッチ48と、を有する。
【0029】
タイマ46は、例えば秒単位で、プラスキー46aで時間を増やし、マイナスキー46bで時間を減らすことで、任意の保持時間を例えば1乃至15秒の範囲内で設定でき、その設定した保持時間が経過すると、折り曲げ機構部11が次の動作に移る。また、カウンタ47は、プラスキー47aで回数を増やし、マイナスキー47bで回数を減らすことで、任意の折り曲げ回数を例えば1乃至9回の範囲内で設定でき、その設定した回数だけ折り曲げると、折り曲げ機構部11の動作を停止させる。押しボタンスイッチ48は、ボタン部48aを押すことで折り曲げの開始・停止・復帰の動作を行うことができる。
【0030】
図12に示すように、図2の印刷版折り曲げ装置の制御系は、図2の電装箱15内に中央演算処理装置(CPU)から構成される制御部60を有し、制御部60には、吸着サイズ切替スイッチ18,フットスイッチ19,タイマ46,カウンタ47,押しボタンスイッチ48等から各信号が入力する。これらの入力信号に基づいて制御部60は、折り曲げ機構部11において印刷版を折り曲げるために回転する折り曲げブロック25(図5)を回転駆動するための駆動源であるモータ61,押しボタンスイッチ48の点灯部62,図2の操作スイッチ部12の近傍に配置されたブザー63,図2の印刷版セット部13で印刷版を吸着するために吸引する真空ポンプ64等を制御する。
【0031】
次に、図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を図14乃至図17を参照して説明する。図14は図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を示す平面図である。図15は図14の印刷版セット部の基準ピン穴の近傍を示す要部断面図である。図16は図14のXV-XV線に沿って印刷版セット部を破断してみた要部断面図である。図17は図14の印刷版セット部に印刷版を位置決めてセットした状態を概略的に示す平面図である。
【0032】
図2のように、印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部13は、傾斜した下方側に基準ピン58,59が抜き挿し可能に構成され基準ピンを取り付けできる基準ピン取付プレート55を有する。印刷版に形成された位置決めのための切り欠きが基準ピン58,59に係合することで、印刷版が印刷版セット部13に位置決めされてセットされるようになっている。
【0033】
図14に示すように、基準ピン取付プレート55は、印刷版セット部13の図2,図14の横方向である幅方向Wに下端13bに沿って延び、両端において印刷版セット部13の上端13a側に突き出すように延びた突き出し部53,54を有する。
【0034】
基準ピン取付プレート55は、印刷版セット部13に形成された凹部内に収まるように板状に構成され、図14のように、突き出し部53,54に一対づつ形成された図の縦方向に長い長円穴でボルト53a、54aにより印刷版セット部13に取り付けられて固定されており、図16のように印刷版セット部13の表面と同一表面を構成している。このように、基準ピン取付プレート55は、長円穴でボルト53a、54aにより取り付けられているので、印刷版セット部13からメンテナンスや交換のために取り外し可能であり、また、ボルト53a、54aを弛めて後述の距離調整機構により図の縦方向位置を微調整可能である。
【0035】
図14のように、基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54にはそれぞれ多数の基準ピン穴58a、59aが各種印刷機仕様や印刷版サイズに対応して設けられており、各基準ピン穴58a、59aは、図15のように、基準ピン58が抜き挿し可能に構成されている。基準ピン58、59は印刷版の切り欠きの位置や形状が変わると、それに対応した位置の基準ピン穴58a、59aに差し込まれて取り付けられることで、印刷版の切欠きの位置や形状の変更に対応可能である。
【0036】
また、印刷版セット部13は、上端13aと基準ピン58との距離及び上端13aと基準ピン59との距離を調整するために基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13に対し移動させる偏心カム56、57から構成される距離調整機構を備える。図14のように、基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54に円形穴56a、57aが形成されており、円形穴56a、57a内に偏心カム56、57が回転可能に印刷版セット部13側に固定されている。ボルト53a、54aを弛めた状態で円形穴56a、57a内で偏心カム56、57を回転させることで、傾斜により重力成分が加わっている基準ピン取付プレート55を左右両端側でそれぞれ移動させその縦方向位置を微調整できる。
【0037】
上述のように、偏心カム56、57から構成される距離調整機構によれば、基準ピン取付プレート55の移動により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離を両端側において調整できるので、装置生産時の位置調整が容易である。
【0038】
また、基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13の凹部に嵌め込むようにして取り付けたとき、図16のように、基準ピン取付プレート55と印刷版セット部13との間に溝gができるが、上端13a側に向く基準ピン取付プレート55の各端部では溝gに印刷版のエッジが引っ掛かるおそれがあるので、各端部55a、55b、55cをスロープ状の傾斜面にしている。これにより、印刷版セット部13における印刷版のセットや取り外しのときに、印刷版のエッジが溝gに引っ掛からないので、印刷版のセットや取り外し作業に支障が生じない。
【0039】
また、基準ピン取付プレート55は鉄鋼から構成しているので、基準ピン58,59を頻繁に抜き挿ししても基準ピン穴58a、59aの削れが発生し難く、基準ピン58,59の位置精度を維持できる。また、基準ピン58,59はステンレス鋼から構成している。また、印刷版セット部13はアルミニウムから構成しているので、装置の重量低減、加工工数削減、コスト削減等が可能となる。
【0040】
以上のような印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部13に、図17のように、下端に位置決め用の切り欠きk1,k2の形成された印刷版1をセットするとき、印刷版1の切り欠きk1,k2の形状に対応した基準ピン58,59を対応した位置の基準ピン穴58a、59aに挿してから、印刷版1を基準ピン58,59に切り欠きk1,k2を係合させて位置決めすることで、印刷版1を印刷版セット部13に精度よく位置決めしてセットできる。この場合、予め距離調整機構により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離が基準ピン取付プレート55の左右両端側の突き出し部53,54において調整されているので、印刷版1の位置決め精度がよい。
【0041】
上述のような印刷版セット部13と基準ピン取付プレート55との構成によれば、基準ピン58,59を頻繁に抜き挿しすると、基準ピン取付プレートの材質によっては基準ピン穴が削れてしまい、基準ピンの位置精度が悪化するおそれがあるが、基準ピン取付プレート55を鉄鋼で構成することで、基準ピンの位置精度を維持できる。また、基準ピン取付プレート55を印刷版セット部13と別構成としたため、上述のように鉄鋼から製作することが可能となり、印刷版セット部13をアルミニウムで製作することで装置の重量低減、加工工数削減、コスト削減等が可能となる。
【0042】
また、基準ピン取付プレート55が印刷版セット部13から着脱可能であるため、印刷機の仕様変更等により基準ピンの位置や形状が変更になったとしても基準ピン取付プレート55を作り直すだけで印刷版折り曲げ装置はそのまま使用することができる。
【0043】
上述の図14の距離調整機構によれば、折り曲げ機構部11の部品精度や組立精度によっては折り曲げ機構部11が折り曲げの基準に対して若干斜めになっていることがあるが、上記偏芯カム56,57により左右独立して基準ピン取付プレート55と上端13a側の折り曲げ位置との距離を簡単に調整できるので、位置調整が容易となる。折り曲げ機構部11を移動して調整する方式では全体の距離調整は比較的容易に行えるようになっているが、左右で距離が異なる場合の調整は折り曲げ機構部11の組付け位置を調整しなけれぱならず、調整に時間を要していたのに対し、図14の距離調整機構では、簡単かつ正確に短時間で調整可能である。
【0044】
また、基準ピンから折り曲げ位置までの距離は印刷機の仕様により基準値が設定されているものの、実際の印刷機毎に寸法か微妙にずれていることがあるため、装置生産時の調整値から変更する可能性があるが、図14の距離調整機構によれば、大がかりな調整治具等を必要とせず容易に調整できる。
【0045】
次に、図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11を図3乃至図6を参照して説明する。
【0046】
図3は、図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11をカバー部材11aを取り外した状態で背面側から見た斜視図である。図4は、図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す要部斜視図である。図5は図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す側面図である。図6は図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が下降し印刷版を押さえた状態を示す側面図である。
【0047】
図3〜図6に示すように、折り曲げ機構部11は、図2の印刷版セット部13の上に載せられたシート状の印刷版1(図5)を折り曲げのとき固定する版固定ブロック24と、版固定ブロック24で固定した印刷版1を側縁部1aで折り畳むように回転軸32を回転中心として略180°回転する折り曲げブロック25と、回転軸32に連結した歯車31と、版固定ブロック24と折り曲げブロック25を支持しかつ回転軸32を回転可能に支持する支持部21と、を備える。
【0048】
図5,図6のように、版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げると、印刷版セット部13の下方に設けられた支点14aでてこ運動し、支持部21の下方の作用部21eに力が作用することで、支持部21は、支持部21の溝21a内のコロ21b及び支持部21の版押さえレバー14側の側面に接したコロ21c、21dでガイドされながら、図の略下方rに版固定ブロック24と折り曲げブロック25とともに移動する一方、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、支持部21は図の略上方r’に版固定ブロック24と折り曲げブロック25とともに移動するようになっている。
【0049】
図5のように、版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げ、支持部21が図の略下方rに下降すると、図3,図6のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13側に接近し、印刷版セット部13の上の印刷版1と接触し押さえ付けるとともに、回転軸32に連結した歯車31も下降し、歯車31が印刷版セット部13の下方に配置された別の歯車33と噛み合うようになっている。
【0050】
また、図6のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13の上の印刷版1と接触し押さえ付けた状態から、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、図4,図5のように、版固定ブロック24と折り曲げブロック25が印刷版セット部13側から離間し上方に移動し、印刷版をセットしたり、取り外したりできるようになる。
【0051】
また、印刷版セット部13の下方に配置された歯車33は、図12の制御部60により制御されるモータ61(図12)により駆動される回転軸33aを介して回転駆動されると、図3,図6のように噛み合っている歯車31,回転軸32を介して折り曲げブロック25を回転方向Rに略180°回転させてから、この180°回転した状態を保持して版固定ブロック24に対し挟んだ印刷版1を押圧するようになっている。
【0052】
また、版固定ブロック24と折り曲げブロック25は、図2の印刷版セット部13の幅方向Wに沿って延びており、その両端に歯車31と回転軸32が設けられており、回転軸33aも幅方向Wに沿って延び、両端に歯車33が連結されている。
【0053】
また、図2の印刷版セット部13は、全体としてアルミニウム等の金属材料から略矩形平面状に構成され、その先端側(図2の背面側)には、図4〜図6のように、バネ鋼からなる折り曲げべース板23が幅方向Wに沿って延びるとともに、印刷版セット部13と折り曲げべース板23が同じ平面を形成するように固定されている。この折り曲げべース板23の固定は、図1のように印刷版セット部13側に埋め込んだマグネットにより行うことで、印刷版セット部13の平面に突起物が生じない。
【0054】
また、図4〜図6のように、印刷版セット部13に固定された折り曲げべース板23の先端部23aは、印刷版セット部13の端面13aから突き出ており、曲げブロック25が先端部23aに接触しないように突き出た位置関係となっている。また、折り曲げブロック25は回転軸32を中心にして回転するが、この回転軸32の中心軸は折り曲げべース板23の先端部23aと略一致しており、折り曲げブロック25は先端部23aを略回転中心として回転方向Rに回転する。
【0055】
なお、金属板からなる折り曲げべース板23は厚さが0.3乃至0.7mmの範囲内であることが好ましい。折り曲げべース板23の厚さが0.3mm未満となると、折り曲げべース板23が折り曲げブロック25の回転とともに折り曲がってしまい好ましくなく、0.7mmを超えると、印刷版1が折り曲げべース板23の先端部23aに倣ってしまい2段曲げのようになり易く好ましくない。折り曲げべース板23の厚さは0.4乃至0.5mmの範囲内であることが更に好ましい。また、折り曲げべース板23の材質はバネ鋼であることで、折り曲げべース板23の先端部23aを略回転中心として折り曲げブロック25が回転するとき、そのバネ鋼が撓むことで、印刷版1の折り曲げ部への集中荷重を吸収し、印刷版1の割れを防止できる。
【0056】
折り曲げブロック25の下部は、図2,図5,図6の印刷版セット部13の長手方向(奥行き方向)に、厚さの薄い薄肉部25aに構成され、薄肉部25aの厚さは、折り曲げべース板23の先端部23aの突き出し長さよりも小さくなっている。これにより、折り曲げブロック25が略180°回転したとき、折り曲げブロック25が印刷版セット部13の端面13aに当接せずに、薄肉部25aが折り曲げべース板23の先端部23aの下面に対向する(図9(f)参照)。
【0057】
次に、折り曲げブロック25を回転方向Rに略180°回転させてから薄肉部25aと版固定ブロック24との間で印刷版1を押圧するとき、その押圧力を調整する押圧力調整機構を図7を参照して説明する。図7は押圧力調整機構を設けた版固定ブロック24を図3,図4に示す背面側から見た背面図(a)及び部分拡大図(b)である。
【0058】
図7(a)に示すように、版固定ブロック24は、図2の印刷版セット部13の幅方向Wに延びているが、上部ブロック24aと下部ブロック24bとに分割されている。図7の押圧力調整機構は、上部ブロック24aと下部ブロック24bとが幅方向Wの複数箇所に設けられたねじ孔24cでねじ結合されるとともに、下部ブロック24bに幅方向Wの複数箇所にねじ孔24dを設けることで構成される。
【0059】
図7(a)、(b)のように、上部ブロック24aに形成された貫通孔からボルト24fを差し込んで下部ブロック24bのねじ孔24cにねじ込むことで、両ブロック24a、24bがねじ結合される。また、下部ブロック24bの下面から各ねじ孔24dにセットビス24gをねじ込んで、各セットビス24gについて両ブロック24a、24bの合わせ面24eからの突き出し量を調整することで、版固定ブロック24の全体高さhを幅方向Wにおいて調整する。このようにして、幅方向Wにおいて版固定ブロック24の全体高さhが変わるので、版固定ブロック24と折り曲げブロック25の薄肉部25aとの間で印刷版1を押圧するときの押圧力が変化し、押圧力を調整できる。
【0060】
次に、図5のように上方に移動した折り曲げ機構部11を上方の保持位置で保持し固定する落下防止機構について図8を参照して説明する。図8は折り曲げ機構部11の落下防止機構を示す模式図(a)及びその部分拡大図(b)である。
【0061】
図8(a)のように、折り曲げ機構部11の支持部21の下方にマグネット40が固定されており、折り曲げ機構部11が図8(a),図5のように略上方rに移動すると、マグネット40が印刷版セット部13側に固定された固定部41に吸着される。この落下防止機構により、折り曲げ機構部11が上方に待避したとき、保持位置で保持されて固定され、印刷版1のセットに両手を使用できるので、作業性の向上及び印刷版1の損傷防止が可能となるとともに、作業中の安全を確保できる。
【0062】
また、図8(a)、(b)のように、固定部41にはボールプランジャー41aが設けられており、マグネット40が固定部41に吸着される位置で、ボールプランジャー41a内のスプリング41cで外側に付勢された小球41bが支持部21の側面の半球状の凹部21fに入り込む。このボールプランジャー41aにより、折り曲げ機構部11が図5のように上方に移動しマグネット40が固定部41に吸着されて保持位置で固定されるときの位置決めが確実に行われる。
【0063】
次に、図2乃至図8、図11乃至図18の印刷版折り曲げ装置により、プラスチック支持体を有する印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程について図9(a)乃至(f)及び図13のフローチャートを参照して説明する。図9(a)乃至(f)は、図2乃至図8の印刷版折り曲げ装置により印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程(a)乃至(f)を説明するための要部側面図である。図13は図2乃至図18の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ動作を説明するためのフローチャートである。
【0064】
まず、図11の操作スイッチ部12で、タイマ46に押圧の保持時間を例えば5秒に設定し、カウンタ47に折り曲げの繰り返し回数を例えば2回と設定する(S01)。次に、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、版固定ブロック24と折り曲げブロック25等の折り曲げ機構部11が略上方r’に移動し、図5,図9(a)のように、解除状態になるが、このとき、折り曲げ機構部11は図8の落下防止機構により図9(a)の位置で固定状態である(S02)。
【0065】
次に、シート状の印刷版1を、図5の破線のように側縁部1aの先端が折り曲げべース板23の先端部23aから突き出るように、かつ、図17の破線のように印刷版1の切り欠きk1,k2を基準ピン58,59に係合させて位置決めして印刷版セット部13にセットする(S03)。
【0066】
上述のセットのとき、印刷版セット部13は例えば図18の傾斜角θが40度で傾斜し、適度に傾斜しているので、折り曲げ機構部11が作業者に近くなり、折り曲げ機構部11ヘの印刷版1の挿入及び折り曲げ後の印刷版1の取り出しが容易である。また、印刷版セット部13は大きく傾斜していないので、シート状の印刷版1にカールが生じていて切り欠きk1,k2が基準ピン58,59から外れても印刷版1は落下し難くなっている。また、印刷版セット部13にセットした印刷版1が作業者の目線に対し斜め下方となるため、作業者は自然な姿勢で検版を行うことができる。
【0067】
次に、図2のフットスイッチ19を操作することで吸引機構の真空ポンプ64(図12)を作動させて印刷版1を印刷版セット部13に吸着し固定する(S04)。
【0068】
次に、図5の状態から版押さえレバー14を回動方向Sに引き上げると、図8のマグネット40による固定が解除され、折り曲げ機構部11が略下方rに移動し版固定ブロック24と折り曲げブロック25が下降し、図6,図9(b)のように版固定ブロック24が印刷版1と接触し、折り曲げブロック25の薄肉部25aが印刷版1の突き出た側縁部1aと接触する。このようにして、版押さえレバー14により折り曲げ機構部11をセットする(S05)。
【0069】
次に、図11の押しボタンスイッチ48を押しオンにすると、モータ61(図12)が回転することで折り曲げ動作が開始する(S06)。即ち、モータ61の回転により図3〜図6のように回転軸33a、歯車33,歯車31を介して回転軸32が回転することで、折り曲げブロック25が回転方向Rに折り曲げべース板23の先端部23aを略回転中心として回転を始め、図9(c)のように45°、図9(d)のように90°、図9(e)のように135°回転しながら、薄肉部25aが印刷版1の側縁部1aを折り曲げていく。
【0070】
そして、折り曲げブロック25が図9(f)のように180°回転すると、版固定ブロック24と対向するように下方に位置し、薄肉部25aと版固定ブロック24との間で印刷版1の側縁部1aが、折り曲げべース板23の先端部23aを間に挟んだ状態で折り畳む(図1(b)参照)ようにして折り曲げる(S07)。
【0071】
そして、図9(f)の印刷版1の折り畳み状態を保持することで、薄肉部25aで折り畳まれた印刷版1の側縁部1aを押圧する(S08)。この押圧をタイマ46で設定した保持時間だけ続け(S09)、折り曲げ回数がカウンタ47で設定した回数未満であるときは(S10)、モータ61(図12)を逆回転させることで(S11)、折り曲げブロック25を図9(f)の状態から図6,図9(b)の状態に戻してから、再び、上記ステップS07、S08と同じように折り曲げ工程・押圧工程を実行する。
【0072】
次に、折り曲げ回数がカウンタ47で設定した回数に達すると(S10)、折り曲げ動作が終了し(S12)、真空ポンプ64が自動的に止まり吸着機構が停止し(S13)、押しボタンスイッチ48のボタン部48aが点灯部62(図12)により点灯するとともにブザー63(図12)がなる(S14)。なお、上記折り曲げ動作開始S06から折り曲げ動作終了S12までの間、ボタン部48aが点灯部62(図12)により点滅する。これにより、図2の印刷版折り曲げ装置が折り曲げ動作中であることが分かる。
【0073】
次に、版押さえレバー14を回動方向S’に引き下げると、折り曲げ機構部11が図5,図9(a)のように、略上方rに移動し解除され、図8のマグネット40で固定され(S15)、印刷版1を印刷版セット部13から取り外す(S16)。印刷版1の重ね折られた側縁部1aがスプリングバックすることで、図1(c)のように印刷版1に対し側縁部1aをほぼ直角に折り曲げることができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態の印刷版折り曲げ装置によれば、印刷版セット部13の傾斜角θを水平方向に対し好ましくは30〜50度、更に好ましくは35〜45度の範囲内で最適化することで、略水平状態と比較して装置の設置スペースを減らすことができるとともに、折り曲げ機構部11が作業者に近いため、折り曲げ機構部11ヘの印刷版1の挿入及び折り曲げ後の印刷版1の取り出しが容易となり作業性が向上する。また、カールした印刷版をセットする際にも基準ピン58,59からの印刷版の落下を軽減できる。
【0075】
また、印刷版セット部13は適度に傾斜しているため検版台を兼ねることができるので、印刷版が作業者の目線に対し斜め下方となり、作業者自然な姿勢で検版を行うことが可能であるとともに、検版と印刷版折り曲げを時間的に連続して行うことができるので、検版用のスペースが不要となる。更に、検版後に折り曲げ装置まで印刷版の移動が不要となるので、移動に伴う印刷版への傷発生が皆無となる。
【0076】
また、版固定ブロック24と折り曲げブロック25との間で折り曲げべース板23を挟み込んで印刷版1を側縁部1aで重ね折りし、この重ね折りの状態で印刷版1及び折り曲げべース板23を所定の押圧時間押圧し、しかも、かかる折り曲げ動作を所定回数だけ繰り返すので、加熱せずに印刷版1の側縁部1aを精度よく折り曲げることができ、側縁部1aの折り曲げ角を精度よくほぼ直角にすることができ、加熱手段等が不要でありかつ折り曲げブロック25の回転のときに印刷版の折り曲げ内側の部材である折り曲げべース板23を待避させる必要がないため、折り曲げ位置精度を向上でき、装置・機構の簡素化が可能となる。
【0077】
また、図17のように、印刷版1を基準ピン58,59に切り欠きk1,k2を係合させて位置決めすることで、印刷版1を印刷版セット部13に精度よく位置決めしてセットできる。また、距離調整機構により各基準ピン58,59から上端13aの折り曲げ位置までの距離が予め調整されているので、印刷版1の位置決め精度がよい。
【0078】
また、図7の押圧力調整機構により、押圧力を変化させることで折り曲げ角度の調整が可能となり、また、印刷版1の幅方向Wの任意位置で押圧力の調整が可能なため折り曲げ部の波打を解消できる。
【0079】
また、折り曲げべース板23の上面は印刷版1が常に接触しているため、突起物があると印刷版への傷の発生やセットのときの印刷版エッジ部の引っ掛かりが発生するが、折り曲げべース板23をマグネットにより保持し固定することで突起が無くなり、かかる傷の発生等を未然に防止できる。なお、折り曲げべース板23を接着材、両面テープ等により保持し固定するのは、組立時の作業性が悪化し、好ましくない。
【0080】
また、加熱手段が不要であるので、加熱制御機構等が不要であり、部品数増加やコストアップにならず、また温度を一定温度に上げておくスタンバイ状態が不要であるので、装置不使用のときの電力消費がなくエネルギーの無駄が生じなく、また、印刷版で熱により画像形成層が反応することはない。
【0081】
また、折り曲げ機構部11による印刷版1の押圧状態での保持時間及び折り曲げ機構部11による折り曲げ回数の少なくとも一方を変化させることで、従来のように印刷版へ熱量を加えることで折り曲げ角度を調整しなくとも、印刷版1の側縁部1aにおける折り曲げ角度の調整が可能となる。また、折り曲げ機構部11の折り曲げブロック25の駆動源(モータ61)を有するので、自動で印刷版の折り曲げ及び解除動作を行うことが可能となる。
【0082】
また、図11、図12のように、タイマ46、カウンタ47を備えることで、折り曲げ時間(押圧保持時間)、折り曲げ回数を正確に制御でき、安定した折り曲げ角度の再現が可能となる。
【0083】
また、折り曲げ完了時を通知する点灯部62とブザー63等から構成される通知手段により、折り曲げ動作完了をユーザが即時に認識可能となり、更に、点灯部62とブザー63を併用することで比較的騒音レべルの高い印刷作業現場においても装置の状態を認識できる。
【0084】
次に、図1の印刷版折り曲げ方法及び図2乃至図9、図11乃至図13、図18の印刷版折り曲げ装置に適用して好ましい印刷版について図10を参照して説明する。図10は本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【0085】
図10のように、シート状の印刷版1は、プラスチック支持体50上に少なくとも親水性層51及び感熱性画像形成層52を有する。印刷版1は、例えば印刷版の作製装置のドラムに巻き付けられ、そのドラムを回転させて光源により画像データを走査露光して画像記録された後に、上述のようにして、側縁部1aが図1(c)のように折り曲げられてから、印刷機の版胴にその折り曲げ部を用いて有効に装着される。
【0086】
印刷版1のプラスチック支持体50として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0087】
プラスチック支持体50は、特に、ポリエチレンテレフタレートが搬送性、取り扱い易さ等から好ましく、印刷版作製装置内では、プラスチック支持体の厚みが薄過ぎたり厚過ぎると、ロールにし難いし、搬送性に問題があり、また薄過ぎると次の工程の印刷機に持ち運ぶ時に強度がなく撓む等の問題があり、搬送性、取り扱い易さ等からプラスチック支持体50の厚さは100〜250μmが好ましく、特に好ましくは170〜180μmである。また、プラスチック支持体50は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であることが好ましく、5000乃至6000N/mm2の範囲内であることが更に好ましい。
【0088】
印刷版1の親水性層51とは、印刷時に印刷インキを着肉しない機能を有する層であり、この親水性層51を形成する素材としては、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリクス構造体や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリクス構造体、金属酸化物等が好ましく用いられる。親水性層51は、特に金属酸化物微粒子を含むことが好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナソル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0089】
また、印刷版1の感熱性画像形成層52は、加熱により画像を形成しうる層であり、熱溶融性微粒子及び/又は熱融着性微粒子を含有する。熱溶融性微粒子としては、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。また、熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。
【0090】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図7と同様の押圧力調整機構を折り曲げブロック25に設けてもよい。
【0091】
また、図13では、折り曲げ機構部11により印刷版1の押圧及び複数回の折り曲げの両方を行ったが、印刷版1の押圧及び複数回の折り曲げのいずれか一方を行うことで、印刷版1の側縁部1aを折り曲げるようにしてもよい。
【0092】
また、図13における印刷版1の押圧の保持時間及び折り曲げ回数は、上述のプラスチック支持体50の厚さや材料等が変わった場合には、適宜適切な保持時間・回数に変更することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による好ましい印刷版の折り曲げ工程(a)〜(c)を概略的に説明するための側断面図である。
【図2】本実施の形態による印刷版折り曲げ装置の全体外観を示す斜視図である。
【図3】図2の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ機構部11をカバー部材11aを取り外した状態で背面側から見た斜視図である。
【図4】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す要部斜視図である。
【図5】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が上方に退避した状態を示す側面図である。
【図6】図3の折り曲げ機構部11の版固定ブロック24及び折り曲げブロック25が下降し印刷版を押さえた状態を示す側面図である。
【図7】押圧力調整機構を設けた版固定ブロック24を図3,図4に示す背面側から見た背面図(a)及び部分拡大図(b)である。
【図8】折り曲げ機構部11の落下防止機構を示す模式図(a)及びその部分拡大図(b)である。
【図9】図2乃至図8の印刷版折り曲げ装置により印刷板の側縁部を折り曲げる折り曲げ工程(a)乃至(f)を説明するための要部側面図である。
【図10】本実施の形態における印刷版の層構成を模式的に示す断面図である。
【図11】図2の操作スイッチ部12を示す平面図である。
【図12】図2の印刷版折り曲げ装置の制御系を示すブロック図である。
【図13】図2乃至図9、図11及び図12の印刷版折り曲げ装置の折り曲げ動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図2の印刷版折り曲げ装置の印刷版セット部を示す平面図である。
【図15】図14の印刷版セット部の基準ピン穴の近傍を示す要部断面図である。
【図16】図14のXV-XV線に沿って印刷版セット部を破断してみた要部断面図である。
【図17】図14の印刷版セット部に印刷版を位置決めてセットした状態を概略的に示す平面図である。
【図18】図2の印刷版折り曲げ装置の左側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 印刷版(シート状印刷版材料)
1a 側縁部
11 折り曲げ機構部
11a カバー部材
13 印刷版セット部
13a 上端、端面
13b 下端
14 レバー
17 支持フレーム
17a 傾斜部
17b 取付部材
50 プラスチック支持体
51 親水性層
52 感熱性画像形成層
58,59 基準ピン
θ 傾斜角
k1,k2 切り欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、前記セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、
前記印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にあることを特徴とする印刷版折り曲げ装置。
【請求項2】
前記印刷版セット部の角度が35乃至45度の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項3】
前記印刷版セット部は検版台を兼ねることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項4】
前記印刷版セット部は前記印刷版材料の切欠きに係合する位置決め用基準ピンを有することを特徴とする請求項1,2または3に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項5】
前記プラスチック支持体は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、
前記印刷版材料は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することを特徴とする1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項6】
前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項7】
前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項8】
前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mm2の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項1】
プラスチック支持体で支持されたシート状印刷版材料をセット可能な印刷版セット部と、前記セットされた印刷版材料の端縁部を折り曲げる折り曲げ機構部と、を備え、
前記印刷版セット部の角度が水平方向に対し30乃至50度の範囲内にあることを特徴とする印刷版折り曲げ装置。
【請求項2】
前記印刷版セット部の角度が35乃至45度の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項3】
前記印刷版セット部は検版台を兼ねることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項4】
前記印刷版セット部は前記印刷版材料の切欠きに係合する位置決め用基準ピンを有することを特徴とする請求項1,2または3に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項5】
前記プラスチック支持体は、ヤング率が4500乃至6500N/mm2の範囲内であり厚さが100乃至250μmの範囲内であり、
前記印刷版材料は前記プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び感熱性画像形成層を有することを特徴とする1乃至4のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項6】
前記プラスチック支持体の材質はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項7】
前記プラスチック支持体の厚さは170乃至180μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【請求項8】
前記プラスチック支持体のヤング率は5000乃至6000N/mm2の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印刷版折り曲げ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−35560(P2006−35560A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217137(P2004−217137)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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