説明

印刷用ブランケット

【課題】柔軟性(適度な剛軟性)を有してシリンダへの巻付け装着性が良好であり、高速で印刷を行った後においてもヘタリが少ない、耐久性に優れた印刷用ブランケットを提供する。
【解決手段】複数枚の織布11〜13を貼り合わせてなる基布層10と、圧縮層20と、支持体層30と、表面ゴム層40とを備えた印刷用ブランケット1であって、基布層10を構成する最下層の織布11の縦糸11Aが、アラミド繊維60〜70質量%と綿40〜30質量%との混撚糸からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷機に装着される印刷用ブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷機に装着される印刷用ブランケットは、複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、印刷面となる表面ゴム層とを備えてなり、前記基布層と、発泡ゴムからなる圧縮層と、織布からなる支持体層と、前記表面ゴム層とが積層されてなるものが多用されている。
【0003】
しかして、オフセット印刷機の高速化に伴い、ブランケットを構成する支持体層と表面ゴム層との間で剥離が生じるという問題がある。
このような問題に対して、合成繊維と綿とを特定の割合で含有する織布により支持体層を形成して、当該支持体層と表面ゴム層との間の接着力を強化する技術(特許文献1参照)、特定のビニロン紡績糸を縦糸とする織布により支持体層を形成して、当該支持体層と表面ゴム層との間の接着力を強化する技術(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
また、オフセット印刷機の高速化に伴って、ヘタリに起因するブランケットの耐久性の低下が問題となっている。
すなわち、ブランケットの使用(印刷)時には、圧縮と復元とが繰り返される。この結果、ブランケットの厚さが減少するヘタリ(ローリングダウン)が発生する。ブランケットにヘタリが生じると、印圧が低下して、転移不良延いては画像不良を招来し、当該ブランケットは交換を余儀なくされる。そして、オフセット印刷機の高速化に伴い、ブランケットにかかる繰り返しの圧縮の周波数が高くなることにより、ヘタリ(厚さ減少)の度合がより大きくなっている。
【0005】
このような問題に対して、基布層を形成する少なくとも1層の織布(例えば最上層)の縦糸を上述した特定のビニロン紡績糸により形成することにより、ブランケットのヘタリを少なくすることが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
特許文献3には、縦糸として特定のビニロン紡績糸を使用して形成される織布は、ゴムとの濡れ性が良好であり、そのような織布によって基布層を形成することにより、織布を貼り合わせる際に使用するゴム糊(接着ゴム層形成用組成物)を織布に十分含浸(空気と置換)させて、織布の潰れによるブランケットのヘタリを少なくすることが記載されている。
【0007】
しかしながら、ゴムとの濡れ性の良好な織布を使用すること(特許文献3記載の技術)によっても、ブランケットのヘタリを十分に小さくすることはできない。
【0008】
ブランケットを構成する層のうち、高速で印刷(圧縮と復元の繰り返し)を行った後に厚みが最も変化(減少)するのは、シリンダ(ブランケット胴)と直接接触する最下層の織布である。基布層を構成する最下層の織布は、シリンダの表面と常に接触し回転するという過酷な条件下において、徐々に組織が変化して潰される。
【0009】
これに対して、ゴムからなる圧縮層や表面ゴム層の厚みは殆ど変化しない。また、基布層を構成する織布のうち、接着ゴム層間、あるいは接着ゴム層と圧縮層との間に挟まれている中間層の織布(最下層以外の織布)も厚みの変化が少ない。これは、中間層の織布を挟むゴム層により、圧縮力が緩和されるからであると考えられる。
【0010】
従って、ブランケットのヘタリを少なくするためには、最下層の織布の潰れを抑制することが効果的である。
【0011】
然るに、特許文献3記載の技術は、織布へのゴム糊の浸透性を向上させるために、ゴムとの濡れ性が良好な織布を使用するものであって、この技術によっては、最下層の織布の潰れを十分に抑制することはできない。特許文献3に記載の教示に従い、ゴムとの濡れ性の良好な織布によって最下層を構成しても、接着ゴム層に挟まれていない最下層の織布にゴム糊を十分に含浸させることができず、当該織布の組織には、依然として潰れ代となる空隙(空気)が存在しているからである。
【特許文献1】特開2005− 22101号公報
【特許文献2】特開2001−310570号公報
【特許文献3】特開2001−347771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
基布層を構成する最下層の織布の潰れを抑制するために、最下層に配置される織布をカレンダロールなどで予め圧縮加工して、織布内の空気を排除することも考えられる。
【0013】
しかしながら、このような圧縮加工がなされた織布を最下層に配置してブランケットを製造すると、当該ブランケットの裏面(織布の加工面)が過度に平滑化されたものとなるために、シリンダ表面に対する摩擦力が極端に低下し、印刷中にブランケットが横滑りを起こすことがある。また、圧縮加工により、織布に存在する糸の繋ぎ目や織りムラなどの厚い部分が加圧(過圧)されることによって欠陥部(張力を与えたときの破断の起点)が発生することもある。
従って、最下層に配置される織布を予め圧縮加工することは好ましくない。
【0014】
ブランケットのヘタリを抑制するために、基布層を構成する織布(少なくとも最下層の織布)の強度、特に、ブランケットが装着されるシリンダの回転方向における織布の引張強度を高めることが考えられる。そして、引張強度を高めることにより、得られるブランケットにおいて、伸びに伴って生じるヘタリを抑制することができる。ここに、シリンダの回転方向における織布の引張強度を高めるためには、縦糸に高強度の糸を使用して織布を形成することが考えられる。
【0015】
しかしながら、強度の高い織布により得られるブランケットは柔軟性に劣り、シリンダの回転方向における織布の引張強度を高めることに伴い、得られるブランケットは、曲げにくくなり、シリンダへの巻付け装着性が損なわれるという問題が発生する。
【0016】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。本発明の目的は、柔軟性(適度な剛軟性)を有してシリンダへの巻付け装着性が良好であり、高速で印刷を行った後においてもヘタリが少ない、耐久性に優れた印刷用ブランケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、(1)ブランケットのヘタリを少なくするためには、基布層を構成する最下層の織布の潰れを抑制することが最も効果的であること、(2)最下層の織布の潰れを抑制するためには、当該織布の縦糸として高強度のアラミド繊維を一定以上の割合で含有する混撚糸を使用することが効果的であること、(3)柔軟性(適度な剛軟性)があってシリンダへの巻き付け装着性が良好なブランケットとするためには、最下層の織布の縦糸に、アラミド繊維とともに一定以上の割合で綿糸を含有する混撚糸を使用することが効果的であることを見出し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明の印刷用ブランケットは、複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布の縦糸が、アラミド繊維60〜70質量%と綿40〜30質量%との混撚糸(以下、「特定の混撚糸」ともいう。)からなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の印刷用ブランケットは、複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布が、特定の混撚糸からなる縦糸と、綿糸からなる横糸とから形成されていることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明の印刷用ブランケットは、複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布が、アラミド繊維63〜67質量%と綿37〜33質量%との特定の混撚糸からなる縦糸と、綿糸からなる横糸とから形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の印刷用ブランケットにおいて、下記の形態が好ましい。
(1)前記基布層を構成する最下層以外の織布が綿布であること。
(2)前記基布層と前記表面ゴム層との間に圧縮層を備えていること。
(3)前記圧縮層と前記表面ゴム層との間に織布からなる支持体層を備えていること。
【0022】
ここに、「縦糸」とは、本発明のブランケットが装着されるシリンダの回転方向に延びる糸をいい、「横糸」とは、当該シリンダの軸方向に延びる糸をいう。
【発明の効果】
【0023】
本発明のブランケットは、柔軟性(適度な剛軟性)を有して曲げやすく、シリンダへの巻き付け装着性に優れているとともに、高速で印刷(繰り返し圧縮)を行った後であってもヘタリが少なく、スマッシュ回復性も良好で、耐久性にきわめて優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のブランケットについて詳細に説明する。
図1は、本発明のブランケットの一実施形態における断面構成を模式的に示す説明図である。同図に示すブランケット1は、織布11、織布12、織布13を貼り合わせてなる基布層10と、発泡ゴムからなる圧縮層20と、織布からなる支持体層30と、ゴムからなる表面ゴム層40とを備えている。同図において、51、52、53、54および55は、それぞれ接着ゴム層である。
【0025】
<基布層>
基布層10は、最下層の織布11と、中間層の織布12と、中間層の織布13とを貼り合わせてなる。織布11と織布12とは接着ゴム層51により接着され、織布12と織布13とは接着ゴム層52により接着されている。
【0026】
ブランケット1の裏面を形成する最下層の織布11は、縦糸11Aと、横糸11Bとの平織布からなる。
【0027】
織布11の縦糸11Aは、アラミド繊維60〜70質量%と、綿40〜30質量%との混撚糸(特定の混撚糸)からなる。
【0028】
縦糸11A(特定の混撚糸)中におけるアラミド繊維の含有割合は60〜70質量%とされ、好ましくは63〜67質量%とされる。
【0029】
縦糸11A(特定の混撚糸)中にアラミド繊維が60質量%以上の割合で含有されていることにより、縦糸方向(ブランケット1が装着されるシリンダの回転方向)における織布11の引張強度を十分に高くすることができ、同方向における織布11の伸びが抑制されることにより、織布11の潰れが抑制され、この結果、ブランケット1のヘタリを十分に小さくすることができる。
【0030】
縦糸中おけるアラミド繊維の含有割合が60質量%未満である(綿の含有割合が40質量%を超える)場合には、形成される織布の潰れを十分に抑制することができず、得られるブランケットのヘタリを十分に小さくすることができない(後述する比較例1および2参照)。
【0031】
縦糸11A(特定の混撚糸)中における綿の含有割合は30〜40質量%とされ、好ましくは33〜37質量%とされる。
縦糸11A(特定の混撚糸)中に30質量%以上の割合で綿が含有されていることにより、ブランケット1は、柔軟性(適度な剛軟性)を有して曲げやすくなり、シリンダ表面(曲面)形状に容易に追従することができ、シリンダへの巻き付け装着性に優れたものとなる。
【0032】
縦糸中における綿の含有割合が30質量%未満である(アラミド繊維の含有割合が70質量%を超える)場合には、得られるブランケットが柔軟性を有するものとならず、かたくなって曲げにくくなり、シリンダに巻き付け装着することが困難となる(比較例3および4参照)。
【0033】
織布11の横糸11Bは、綿糸からなる。
織布11の潰れを抑制するためには、縦糸11A(特定の混撚糸)の強度が重要であり、横糸11Bが綿糸からなるものであっても、織布11の潰れ(延いては、ブランケット1のヘタリ)を確実に抑制することができる。
【0034】
中間層の織布12および織布13は、それぞれ、綿布(綿糸による平織布)よりなる。 ブランケット1のヘタリを少なくするためには、接着ゴム層に挟まれていない最下層の織布11の潰れを抑制することが効果的であり、縦糸11A(特定の混撚糸)により潰れにくい織布11が形成されているのであれば、中間層の織布(接着ゴム層51,52間に挟まれている織布12、および接着ゴム層52,54間に挟まれている織布13)が綿布であっても、ブランケット1のヘタリを確実に少なくすることができる。
また、中間層の織布12および織布13が綿布からなることにより、ブランケット1は、柔軟性に優れ、シリンダへの巻き付け装着性に特に優れたものとなる。
【0035】
接着ゴム層51および接着ゴム層52は、それぞれ、ゴム糊(接着ゴム層形成用組成物)を乾燥・硬化させることにより形成される。
ゴム糊を構成するゴム(原料ゴム)としては、特に限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)を使用することが好ましい。
【0036】
接着ゴム層51を形成するために使用したゴム糊(接着ゴム)は、織布11の表面領域における内部組織に浸透するとともに、織布12に含浸される。これにより、織布11と織布12とは、接着ゴム層51を介して強固に接着される。
【0037】
接着ゴム層52を形成するために使用したゴム糊(接着ゴム)は、織布12および織布13の各々に含浸される。これにより、織布12と織布13とは、接着ゴム層52を介して強固に接着される。
【0038】
<圧縮層>
基布層10(織布13)上に、接着ゴム層54を介して積層形成された圧縮層20は、ブランケット1に好適な圧縮特性を付与し、印圧を緩和して良好な印刷を可能にするための層である。かかる圧縮層20の構成材料としては、ニトリルゴムからなる発泡体(発泡ゴム)を例示することができる。発泡体は、連泡型であっても、独立気泡型であってもよい。接着ゴム層54は、ゴム糊(接着ゴム層形成用組成物)を乾燥・硬化させることにより形成される。ゴム糊を構成するゴム(原料ゴム)としては、特に限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)を使用することが好ましい。
【0039】
<支持体層>
圧縮層20上に、接着ゴム層55を介して積層形成された支持体層30は、ポリエステルからなる縦糸と、綿糸からなる横糸とから形成された平織布よりなる。接着ゴム層55は、ゴム糊(接着ゴム層形成用組成物)を乾燥・硬化させることにより形成される。ゴム糊を構成するゴム(原料ゴム)としては、特に限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)を使用することが好ましい。
【0040】
<表面ゴム層>
支持体層30上に形成された表面ゴム層40を構成するゴム(原料ゴム)としては、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM・EPDM)、ブチルゴム(IIR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
支持体層30と表面ゴム層40との間の接着ゴム層53は、ゴム糊(接着ゴム層形成用組成物)を乾燥・硬化させることにより形成される。ゴム糊を構成するゴム(原料ゴム)としては、特に限定されるものではないが、ニトリルゴム(NBR)を使用することが好ましい。接着ゴム層53を形成するために使用したゴム糊は、支持体層30を構成する織布に含浸される。これにより、支持体層30と表面ゴム層40とは、接着ゴム層53を介して強固に接着される。
【0042】
本実施形態のブランケット1によれば、基布層10を構成する最下層の織布11の縦糸11A(特定の混撚糸)が、アラミド繊維を60質量%以上の割合で含有するので、縦糸方向(シリンダの回転方向)における織布11の潰れが十分に抑制されるため、ヘタリを十分に小さくすることができる。しかも、縦糸11A(特定の混撚糸)中には30質量%以上の割合で綿が含有されているので、このブランケット1は、柔軟性(適度な剛軟性)を有して曲げやすく、シリンダへの巻き付け装着性に優れている。
【0043】
以上、本発明のブランケットの一実施形態(積層構成)について説明したが、本発明のブランケットはこれらに限定されるものではなく、下記に示すように種々の変更が可能である。
(1)最下層の織布11の横糸11Bとして、綿糸に代えて、合成繊維糸または合成繊維糸と綿糸との混撚糸(特定の混撚糸を含む)を使用してもよい。
(2)中間層の織布12および織布13として、綿布に代えて、合成繊維糸による織布、または綿と合成繊維との混紡糸による織布を使用してもよい。
(3)基布層を構成する織布の枚数は3枚に限定されず、2枚であっても、4枚以上であってもよい。
(4)織布13と圧縮層20とを接着ゴム層54を介さずに直接積層してもよい。
(5)圧縮層20と支持体層30とを接着ゴム層55を介さずに直接積層してもよい。
(6)支持体層30と表面ゴム層40とを接着ゴム層53を介さずに直接積層してもよい。
(7)支持体層30を設けることなく、圧縮層20上に表面ゴム層40を形成してもよい。
(8)圧縮層20を設けることなく、基布層10上に表面ゴム層40を形成してなるソリッドタイプであってもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 なお、以下の実施例および比較例において使用した織布はすべて平織布であり、各々の具体的構成は下記のとおりである。
【0045】
〔織布111(実施例1で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が60質量%である特定の混撚糸。破断強度=45N/mm、破断伸び=5%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0046】
〔織布112(実施例2で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が63質量%である特定の混撚糸。破断強度=45N/mm、破断伸び=5%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0047】
〔織布113(実施例3で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が65質量%である特定の混撚糸。破断強度=45N/mm、破断伸び=5%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0048】
〔織布114(実施例4で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が67質量%である特定の混撚糸。破断強度=50N/mm、破断伸び=5%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0049】
〔織布115(実施例5で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が70質量%である特定の混撚糸。破断強度=55N/mm、破断伸び=4.5%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0050】
〔織布116(比較例1で使用した平織布)〕
(A)縦糸:綿糸(20番手2本撚り)。破断強度=35N/mm、破断伸び=3.6%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0051】
〔織布117(比較例2で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が50質量%である特定の混撚糸。破断強度=40N/mm、破断伸び=5.0%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0052】
〔織布118(比較例3で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール1本撚り)と綿糸(40番手1本撚り)とを混撚りして得られた、アラミド繊維の含有率が80質量%である特定の混撚糸。破断強度=95N/mm、破断伸び=4.0%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0053】
〔織布119(比較例4で使用した平織布)〕
(A)縦糸:アラミド糸(220デニール2本撚り)。破断強度=120N/mm、破断伸び=4.0%、密度=118本/5cm。
(B)横糸:綿糸(40番手1本撚り)。密度=110本/5cm。
【0054】
〔織布12(実施例および比較例で使用した平織布)〕
綿布(綿糸による平織布)
【0055】
〔織布13(実施例および比較例で使用した平織布)〕
綿布(綿糸による平織布)
【0056】
〔支持体層30を構成する織布(実施例および比較例で使用した平織布)〕
(A)縦糸:ポリエステル糸
(B)横糸:綿糸
【0057】
<実施例1>
以下のような方法により、図1に示したような層構成を有する本発明のブランケットを製造した。
【0058】
先ず、織布13の表面に、ニトリルゴム系の接着剤(接着ゴム層54形成用の組成物)を塗布し、その後、ニトリルゴム系の発泡ゴム形成性組成物を重ね塗りして圧縮層形成用材料層を形成し、この圧縮層形成用材料層上に、ニトリルゴム系の接着剤(接着ゴム層55形成用の組成物)を塗布し、支持体層30となる織布を積層した後、これを連続加硫機により加熱して、圧縮層形成用材料層を硬化(ニトリルゴムを加硫)・発泡させることにより、織布13と接着ゴム層54と圧縮層20と接着ゴム層55と支持体層30との積層体を得た。
【0059】
次いで、得られた積層体を構成する織布13の裏面に、ニトリルゴム系の接着剤(接着ゴム層52形成用の組成物)により、織布12を貼り合わせた後、織布12の裏面に、ニトリルゴム系の接着剤(接着ゴム層51形成用の組成物)により、織布111(縦糸中のアラミド繊維の含有率=60質量%である最下層の織布11)を貼り合わせ、これを連続加硫機により加熱して、接着剤を硬化(ニトリルゴムを加硫)させることにより、織布111(織布11)と接着ゴム層51と織布12と接着ゴム層52と織布13と接着ゴム層54と圧縮層20と接着ゴム層55と支持体層30との積層体を得た。
【0060】
次いで、得られた積層体(支持体層30)の表面にニトリルゴム系の接着剤(接着ゴム層53形成用の組成物)を塗布し、その後ニトリルゴムを含有するゴム組成物を重ね塗りして表面ゴム層形成用材料層を形成し、これを連続加硫機により加熱して、接着剤および表面ゴム層形成用材料層を硬化(ニトリルゴムを加硫)させることにより、織布111(織布11)と接着ゴム層51と織布12と接着ゴム層52と織布13と接着ゴム層54と圧縮層20と接着ゴム層55と支持体層30と接着ゴム層53と表面ゴム層40との積層体を得、形成された表面ゴム層40を研磨加工することにより、図1に示した層構成を有する本発明のブランケットを得た。
【0061】
<実施例2>
織布111に代えて織布112(縦糸中のアラミド繊維の含有率=63質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する本発明のブランケットを得た。
【0062】
<実施例3>
織布111に代えて織布113(縦糸中のアラミド繊維の含有率=65質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する本発明のブランケットを得た。
【0063】
<実施例4>
織布111に代えて織布114(縦糸中のアラミド繊維の含有率=67質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する本発明のブランケットを得た。
【0064】
<実施例5>
織布111に代えて織布115(縦糸中のアラミド繊維の含有率=70質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する本発明のブランケットを得た。
【0065】
<比較例1>
織布111に代えて織布116(綿布)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する比較用のブランケットを得た。
【0066】
<比較例2>
織布111に代えて織布117(縦糸中のアラミド繊維の含有率=50質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する比較用のブランケットを得た。
【0067】
<比較例3>
織布111に代えて織布118(縦糸中のアラミド繊維の含有率=80質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する比較用のブランケットを得た。
【0068】
<比較例4>
織布111に代えて織布119(縦糸中のアラミド繊維の含有率=100質量%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、図1に示した層構成を有する比較用のブランケットを得た。
【0069】
<ブランケットの評価>
実施例1〜5および比較例1〜4で得られたブランケットの各々について、柔軟性(剛軟性)、耐ヘタリ性およびスマッシュ回復性を評価した。評価方法は下記のとおりである。結果を表1に示す。
【0070】
<評価方法>
(1)柔軟性(剛軟性):
ブランケットを裁断して、3cm(横糸方向)×15cm(縦糸方向)の試験片を作製し、一端を固定した状態で他端に20gの荷重をかけたときの撓み角度を測定した。
【0071】
(2)耐ヘタリ性:
ブランケット胴と圧胴とを備えた耐久試験機を用い、予め厚さを測定したブランケット(巾150mm、長さ852mm)をブランケット胴に20N・mのトルクで装着した。 次いで、ニップでの圧縮量が0.30mmとなるよう変形させて回転速度900rpmで1000回転させた。その後、20N・mのトルクで増し締めを行った。次いで、ニップでの圧縮量が0.30mmとなるように変形させた状態で、回転速度900rpmで10万回転させた。その後、ブランケット胴からブランケットを取外し、1時間後に厚さを測定して、試験(繰り返し圧縮)による厚さの減少量(ヘタリ量)を求めた。
なお、比較例3および比較例4に係るブランケットは、ブランケット胴への巻付け装着性にきわめて劣るものであった。
【0072】
(3)スマッシュ回復性:
ブランケットを裁断して、5cm×5cmの試験片を作製し、その中心(表面ゴム層)に、1cm×1cm×0.5mmの厚紙を載置し、次いで、試験片の全面をエアプレスにより、3kgf/cm2 の圧力で5秒間にわたりプレスし、30分放置した後、厚紙を載置した部分における試験片の厚さ(t)を測定し、プレスする前に測定した厚さ(t0 )から厚さの減少量(t0 −t)を求めた。
【0073】

【表1】

【0074】
表1に示す結果から、実施例1〜5に係るブランケットは、柔軟性、耐ヘタリ性およびスマッシュ回復性の各性能をバランスよく兼ね備えていることが理解される。
これに対して、最下層の織布の縦糸にアラミド繊維を含有しない比較例1に係るブランケット、最下層の織布の縦糸におけるアラミド繊維の含有割合が60質量%未満である比較例2に係るブランケットは、何れも、耐ヘタリ性およびスマッシュ回復性に劣るものである。
また、最下層の織布の縦糸にアラミド繊維の含有割合が70質量%を超える比較例3に係るブランケット、最下層の織布の縦糸がアラミド繊維糸からなる比較例4に係るブランケットは、何れも、柔軟性に劣るものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のブランケットの一実施形態における断面構成を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
10 基布層
11 織布(最下層)
12 織布(中間層)
13 織布(中間層)
20 圧縮層
30 支持体層
40 表面ゴム層
51 接着ゴム層
52 接着ゴム層
53 接着ゴム層
54 接着ゴム層
55 接着ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布の縦糸が、アラミド繊維60〜70質量%と綿40〜30質量%との混撚糸からなることを特徴とする印刷用ブランケット。
【請求項2】
複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布が、アラミド繊維60〜70質量%と綿40〜30質量%との混撚糸からなる縦糸と、綿糸からなる横糸とから形成されていることを特徴とする印刷用ブランケット。
【請求項3】
複数枚の織布を貼り合わせてなる基布層と、表面ゴム層とを備えた印刷用ブランケットであって、前記基布層を構成する最下層の織布が、アラミド繊維63〜67質量%と綿37〜33質量%との混撚糸からなる縦糸と、綿糸からなる横糸とから形成されていることを特徴とする印刷用ブランケット。
【請求項4】
前記基布層を構成する最下層以外の織布が綿布であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の印刷用ブランケット。
【請求項5】
前記基布層と前記表面ゴム層との間に圧縮層を備えた請求項1乃至請求項4の何れかに記載の印刷用ブランケット。
【請求項6】
前記圧縮層と前記表面ゴム層との間に、織布からなる支持体層を備えた請求項5記載の印刷用ブランケット。

【図1】
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