説明

印刷用ブランケット

【課題】直線状でない(たとえば、ドーナツ状の外面等)である被印刷面に、良好で迅速な印刷をすることを可能にする印刷用ブランケットを提供する。
【解決手段】印刷用ブランケット10は、平面視で円環状であって、取付面1と、凸面である内面2および外面3と、内面2と外面とを滑らかに連結する断面略円弧状の稜線4とを有し、稜線4を連ねた円をピッチ円5と称し、その曲率半径をP5とすると、曲率半径P5と略同一の曲率半径P8であるピッチ円8を有するステアリングホイール20の印刷に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用ブランケット、特に、非直線状の被印刷面に印刷するのに好適な印刷用ブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等において、印刷制度を向上する工夫がなされてきた。たとえば、本発明の発明者は、印刷パッドに凸版印刷原版を組み合わせて、印刷精度を向上し、多色刷りのカラー印刷を可能にする発明を開示している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−239972号公報(第8−9頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された印刷に用いる印刷用ブランケット(以下、「ブランケット」と称す)は、特定の稜線(以下、「頂点」と称す)が滑らかに繋がり、該稜線を挟む側面が凸面である略三角柱ないし略五角柱状であって、該ブランケットを被印刷体の平面や直線状の曲面(以下、「被印刷面」と称す)に押し当てて、該ブランケットに乗せたインキを被印刷面に転写することによって印刷するものである。このとき、被印刷面(円筒等の外面または内面)の軸心とブランケットの長手方向とを平行にしている。
【0005】
しかしながら、たとえば、被印刷面の形状が直線状でない場合、たとえば、被印刷面がドーナツ状(車のステアリングホイール等)の外面の場合、円周上の所定位置における接線に平行(放射線に垂直に同じ)にブランケットの長手方向を一致させて押し付けた場合、該所定位置を離れた位置においてはブランケットの頂点と被印刷面の最上部とが放射方向において離れる。
すなわち、所定位置の近傍でブランケットの頂点と被印刷面の最上部(断面における北極の位置)とを略一致させた場合、該所定位置を離れた位置においてはブランケットの側面が被印刷面の外周側に、まず押し付けられ、その後除々に、ブランケットの側面が被印刷面の最上部を経由して被印刷面の内周側に押し付けられる。
このため、ブランケットと被印刷面との間から空気が押し出され難くなり、ブランケットと被印刷面との間に空気噛み込みが生じ、良好な印刷ができないという問題があった。
一方、良好な印刷をしようとすると、ブランケットの長さを短くして、円周方向で位置を変えながら、多数回の印刷(ブランケットの押し付け)をする必要が生じ、印刷作業が煩雑になり、印刷作業が遅延するという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題を解決するものであって、直線状でない(たとえば、ドーナツ状の外面等)である被印刷面に、良好で迅速な印刷をすることを可能にする印刷用ブランケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る印刷用ブランケットは、平面視において非直線状で、側面視において略V字状に配置された一対の側面が滑らかに繋がっている弾性体からなる。
(2)また、前記一対の側面が側方に突出する凸面であって、前記一対の側面が断面略円弧状の稜線によって繋がっていることを特徴とする。
(3)さらに、側面視において凸面または凹面から形成され、平面視において円環状または円弧状である被印刷面に印刷するものであって、
前記稜線の中心を結ぶピッチ線の曲率半径が、前記被印刷体の凸面の最下点を結ぶピッチ線または凹面の最下点を結ぶピッチ線の曲率半径と略同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(i)本発明に係る印刷用ブランケットは、平面視において非直線であるから、平面視において非直線である被印刷体に印刷する際、一対の側面が滑らかに繋がる位置である「稜線」が被印刷体に同時に押し付けられるから、印刷用ブランケットと被印刷面との間から空気が押し出され、印刷用ブランケットと被印刷面との間への空気の噛み込みが防止されるから、良好な印刷ができる。
(ii)また、前面が断面略円弧状の稜線によって繋がった「三角おむすび状」であるから、立体(凸面または凹面)に良好な印刷ができる。
(iii)さらに、ドーナツ状の印刷面(例えば、自動車のステアリングホイール)に印刷する際、印刷用ブランケットの稜線の中心を結ぶピッチ円の曲率半径が、ステアリングホイールの中心線(略円形の断面の中心を結ぶピッチ円に同じ)の曲率半径と略同一である。したがって、まず、ステアリングホイールの最上部の全周に、印刷用ブランケットの稜線の全周が同時に押し付けられ、その後、最上部から離れた位置に稜線から離れた位置が除々に押し付けられ、円周状の何れの位置においても略同様に印刷が進行する。
このため、印刷用ブランケットと被印刷面(ステアリングホイール)との間への空気の噛み込みが防止されるから、良好な印刷ができる。また、印刷用ブランケットを複数用意して、円周方向で複数回の印刷をする必要がなくなるから、印刷作業が簡素で、印刷作業が迅速になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る印刷用ブランケットを示す平面図と断面図。
【図2】図1に示す印刷用ブランケットを説明する被印刷体を示す断面図。
【図3】図1に示す印刷用ブランケットを説明するその他の形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る印刷用ブランケットを説明するものであって、図1の(a)は平面図、図1の(b)は側面視の断面図、図2は被印刷体を示す側面視の断面図である。なお、図1および図2は、模式的に示すものであって、本発明は、図示する形状(例えば、内径と外径の割合等)に限定するものではない。
【0011】
図1の(a)および(b)において、印刷用ブランケット(以下、「ブランケット」と称す)10は、平面視で円環状であって、図示しない印刷装置への設置に供する取付面1と、凸面である内面2および外面3と、内面2と外面3とを滑らかに連結する断面略円弧状の稜線4とを有している。なお、内面2は比較的曲率半径の大きな内面円弧部2aと、略平面の内面平面部2bとを有し、外面3は比較的曲率半径の大きな外面円弧部3aと、略平面の外面平面部3bとを有している。そして、内面円弧部2aと外面円弧部3aとが稜線4において接合され、内面平面部2bと外面平面部3bとは断面において略平行であるから、ブランケット10は断面略五角形(野球の本塁ベース状)を呈している。
ここで、稜線4を連ねた円をピッチ円5と称し、その曲率半径をP5とする。
図2において、ステアリングホイール(被印刷体に同じ)20は、平面視では円形であって、側面視の断面は略円形である。すなわち、断面において、略1/2円の上面6と、略1/2円の下面7を有している。ここで、円形の断面の中心を連ねた円をピッチ円8と称し、その曲率半径をP8とする。
【0012】
以上において、ブランケット10のピッチ円5の曲率半径P5は、ステアリングホイール20のピッチ円8の曲率半径をP8に略一致している。
したがって、ブランケット10を用いて、上面6に印刷する際、まず、ブランケット10の稜線4の全周が、ステアリングホイール20の上面6の最上点(北極に相当する)を連ねた全周に同時に押し付けられ、その後、上面6の最上部から離れた位置に内面円弧部2aおよび外面円弧部3aが、内面平面部2bおよび外面平面部3bに向かって当接面積を拡げながら除々に押し付けられ、円周状の何れの位置(ピッチ円8に垂直な何れの断面)においても略同様に印刷が進行する。
このため、ブランケット10の内面2および外面3とステアリングホイール20の上面6との間への空気の噛み込みが防止されるから、良好な印刷ができる。特に、内面円弧部2aと外面円弧部3aとがなす角度を、比較的大きく(鈍角)にしているため、内面2および外面3はステアリングホイール20の外面に馴染み易く、上半分を超えて下半分の一部にまで巻き付いている(北半球を覆った後、赤道を超えて、南半球の赤道近くに到達している)。なお、内面円弧部2aと外面円弧部3aとがなす角度を小さく(鋭角)にした場合には、ブランケット10の下降量が増大し、ブランケット10の体積が増大するため、印刷能率が低下し、ブランケットが高価になる。
そして、ステアリングホイール20の下面7についても、同様に印刷することができる。
【0013】
図3の(a)において、印刷用ブランケット(以下、「ブランケット」と称す)30は、平面視で1/2円環(半円)状であって、ブランケット10を略2分割したものに相当している。したがって、平面視において半円状の被印刷体を印刷するのに好適である。また、円環状のステアリングホイール20を印刷する際は、円周方向で同様の作業を2回実行する必要があるものの、前記と同様に良好な印刷をすることができる。
なお、ブランケット10を略2分割したものに替えて、略3分割や略4分割したものにしてもよい。
【0014】
図3の(b)において、印刷用ブランケット(以下、「ブランケット」と称す)40は、平面視で楕円形である。すなわち、平面視が楕円形である被印刷体を印刷するのに好適である。このとき、ブランケット40の稜線を(図示しない)連ねたピッチ線9は、被印刷体の印刷面の最上点または最下点を連ねたピッチ線(何れも図示しない)と略合同の形状をしている。
なお、本発明は、被印刷体の平面視の形状を円形や楕円形に限定するものではなく、何れの形状であってもよい。また、被印刷体の印刷面は凸面に限定するものではなく、凹面であってもよい。そして、被印刷面の凸面の最上点または凹面の最下点を連ねたピッチ線がブランケット40の稜線を連ねたピッチ線と略合同にする。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、直線状でない被印刷体に良好な印刷をすることが可能になるから、各種形態の被印刷体への印刷用ブランケットとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0016】
1 取付面
2 内面
3 外面
4 稜線
5 ピッチ円
6 上面
7 下面
8 ピッチ円
9 ピッチ線
10 ブランケット
20 ステアリングホイール
40 ブランケット
P5 曲率半径
P8 曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において非直線状で、側面視において略V字状に配置された一対の側面が滑らかに繋がっている弾性体からなる印刷用ブランケット。
【請求項2】
前記一対の側面が側方に突出する凸面であって、前記一対の側面が断面略円弧状の稜線によって繋がっていることを特徴とする請求項1記載の印刷用ブランケット。
【請求項3】
側面視において凸面または凹面から形成され、平面視において円環状または円弧状である被印刷面に印刷するものであって、
前記凸面の最下点を結ぶピッチ線または前記凹面の最下点を結ぶピッチ線の曲率半径が、前記稜線の中心を結ぶピッチ線の曲率半径と略同一であることを特徴とする請求項1または2記載の印刷用ブランケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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