説明

印刷用紙及びその製造方法

【課題】飲料残渣粉砕物を配合してあり、文字などがきれいに印刷でき、しかも芳香を有する印刷用紙を提供する。
【解決手段】本発明の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mの飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートを抄紙してなることを特徴とする。但し、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表される。上記飲料残渣粉砕物は、茶殻又はコーヒー粕とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶殻やコーヒー粕などの飲料残渣粉砕物を配合した印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、茶葉や茶殻などを紙に配合し、模様紙にすることや脱臭紙にすることが行われている。これらの一例としては、パルプスラリー中に、紅茶、緑茶、ウーロン茶などの茶葉もしくは茶粕を添加した模様紙(下記特許文献1参照)、緑茶製造工程の揉機による揉み工程において発生し上記揉機に付着した皮状物質を用い、これをパルプ原料に配合した脱臭紙(下記特許文献2参照)、紙繊維に茶葉を含有させた脱臭・芳香機能を有する紙シート(下記特許文献3参照)、茶殻と繊維状パルプとを絡み合わせて抄紙し、抗菌機能を有する茶殻配合紙(下記特許文献4参照)などがある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−235198号公報
【特許文献2】特開平9−122216号公報
【特許文献3】特開2002−242095号公報
【特許文献4】特開2004−143640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような茶葉や茶殻を配合した紙は、紙の表面上に茶葉あるいは茶殻が露出しているため、耐光性が劣り、長期間光にあてると茶葉あるいは茶殻が変色し、紙の色も変色してしまうことがあった。
文字などを印刷した場合、茶葉あるいは茶殻により表面に若干の凹凸があるため印刷文字などの欠け・かすれができ、また、茶葉あるいは茶殻などの色により文字が読みにくくなり、文字視認性が劣るという問題があった。
さらに、近年、茶飲料やコーヒー飲料などの売り上げが増加しており、これらの工場からは多量の茶殻やコーヒー粕などの飲料残渣が排出され、この飲料残渣を、多額の費用をかけて廃棄しなければならないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、飲料残渣粉砕物を配合しつつも文字などがきれいに印刷でき、しかも芳香を有する印刷用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mの飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートを抄紙してなることを特徴とする。但し、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表されるものである。
【0007】
上記印刷用紙は、飲料残渣を、茶殻又はコーヒー粕とすることができる。
【0008】
また、本発明の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙スラリーを抄紙して紙シートを作成し、この紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mとなるように紙スラリーを抄紙する工程を有する製造方法により製造することができる。但し、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mの飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートを抄紙してあり、Xを0<X≦25、Yを1.6X≦Y≦136の範囲内とすることにより、文字視認性に優れ、芳香のある印刷用紙とすることができる。また、飲料残渣を廃棄することなく有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mの飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートを抄紙してなるものであり、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表されるものである。
【0012】
飲料残渣粉砕物を配合した紙シートは、例えば、公知の紙パルプに飲料残渣粉砕物を配合して抄紙することにより製造することができる。
紙パルプは、例えば、針葉樹や広葉樹の木チップ、古紙から得られる化学パルプ、再生パルプ、機械パルプなどを用いることができる。
飲料残渣粉砕物は、緑茶、烏龍茶、紅茶、麦茶などの茶飲料の茶殻あるいはこれらの混合茶の茶殻などを粉砕したものやコーヒー飲料のコーヒー粕などを粉砕したものを用いることができる。なかでも、飲料業界から排出される茶飲料の茶殻やコーヒー飲料のコーヒー粕を粉砕したものを好ましく用いることができる。なお、飲料残渣は、粉砕する前に乾燥させず含水した状態で粉砕するのが好ましい。
飲料残渣粉砕物は、特に限定するものではないが、篩にかけ100μm以上1mm未満の粒径にしておくのが好ましく、この範囲であると抄紙しやすい。
飲料残渣粉砕物の配合率Xは、0<X≦25、好ましくは0<X≦20、さらに好ましくは5≦X≦20、最も好ましくは5≦X≦15の範囲とすることが好ましい。25重量%より大きいと抄紙時に紙繊維と飲料残渣粉砕物の繊維が絡み合わず抄造不良を起こしやすい。
この紙シートの坪量は、5〜144g/m、特に13〜136g/mとするのが好ましい。
【0013】
飲料残渣粉砕物を配合しない両面に用いる紙シートは、例えば、公知の紙パルプから抄紙することができ、紙パルプは、上記紙パルプと同様のものを用いることができる。
この紙シートの片面の坪量Yは、1.6X≦Y≦136(0<X≦25)の範囲とすることが好ましい。136g/mより大きいと印刷用紙から芳香がせず、1.6X(0<X≦25)より小さいと印刷用紙に印刷した場合、文字視認性が劣るものとなる。
また、両面の紙シートは、坪量が相違していてもよい。
【0014】
飲料残渣粉砕物を配合した紙シートと飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートとは、同じ紙パルプから抄紙しても相違する紙パルプから抄紙してもよい。
【0015】
以下に、本発明の印刷用紙の製造方法の一例を説明する。
茶殻、コーヒー粕などを粉砕して飲料残渣粉砕物とし、この飲料残渣粉砕物を、紙パルプ、水、添加剤を適宜割合で混合した紙スラリーに対して25重量%以下の割合で混合する。この混合物を網に流し込み、適宜坪数のシート状に形成し、プレス機にて脱水し、中間層を形成する。
これとは別に、紙パルプ、水、添加剤を適宜割合で混合した混合物を網上に流し込み、適宜坪数のシート状に形成し、これをプレス機にて脱水して表面層及び裏面層を形成する。
上記中間層の一面に表面層、他面に裏面層を積層し、プレス機にて脱水し、さらに乾燥させ残留水分を蒸発させ、印刷用紙を形成できる。
【0016】
表面層及び裏面層は、接着剤などを用いて中間層に貼り付けてもよい。
【0017】
本発明の印刷用紙は、飲料残渣粉砕物を配合してあっても良好に印刷でき、また、芳香もあるため使用感のよいものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明する。但し、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0019】
(茶殻サンプル)
茶殻の配合量と表面層及び裏面層の坪量を、下記表1に示すように設定し、下記製法により、種々の印刷用紙サンプルを作成した。
【0020】
緑茶葉を90℃、3分間抽出した後、その茶殻に蒸留水を加えて固形分5%濃度とし、これを粉砕機(ジューサーミキサー;東芝製JC−L80MR)にて粉砕した。
茶殻粉砕物を粒径が100μm以上1mm未満に篩分けし、これを、白色度70%古紙パルプの紙スラリーに対して表1に示す割合で混合した。この混合物を、網(目開き80メッシュ)に流し込み、上方から3kg/cmの圧力を加えて水分率が約75%になるまで脱水して坪量24g/mの茶殻粉砕物を配合した紙シートを形成した。
【0021】
また、これとは別に、白色度70%古紙パルプの紙スラリーを網(目開き80メッシュ)に流し込み、上方から3kg/cmの圧力を加えて水分率が約75%になるまで脱水して表1に示す適宜坪量の茶殻粉砕物無配合の紙シートを形成した。
【0022】
上記茶殻粉砕物を配合した紙シートを中間層とし、この両面に上記茶殻粉砕物無配合の紙シートを表面層及び裏面層として積層し、上方より3kg/mの圧力を加えて水分率が約70%になるまで脱水し、この積層シートを110℃、2時間乾燥させ、印刷用紙サンプルを形成した。
【0023】
(コーヒー粕サンプル)
コーヒー粕の配合量と表面層及び裏面層の坪量を、下記表2に示すように設定し、下記製法により、種々の印刷用紙サンプルを作成した。
【0024】
粒径1mm以上2mm未満に篩分けしたコーヒー豆を90度、3分間抽出した後、そのコーヒー粕に蒸留水を加えて固形分5%濃度とし、これを粉砕機(ジューサーミキサー;東芝製JC−L80MR)にて粉砕した。
コーヒー粕粉砕物を粒径が100μm以上1mm未満に篩分けし、これを、白色度70%古紙パルプの紙スラリーに対して表2に示す適宜割合で混合した。この混合物を、網(目開き80メッシュ)に流し込み、上方から3kg/cmの圧力を加えて水分率が約75%になるまで脱水して坪量24g/mのコーヒー粕粉砕物を配合した紙シートを形成した。
【0025】
また、これとは別に、白色度70%古紙パルプの混合した紙スラリーを網(目開き80メッシュ)に流し込み、上方から3kg/cmの圧力を加えて水分率が約75%になるまで脱水し、表2に示す適宜坪量のコーヒー粕無配合の紙シートを形成した。
【0026】
上記コーヒー粕を配合した紙シートを中間層とし、この両面に上記無配合の紙シートを表面層及び裏面層として積層し、上方より3kg/mの圧力を加えて水分率が約70%になるまで脱水し、この積層シートを110℃、2時間乾燥させ、印刷用紙サンプルを形成した。
【0027】
上記印刷用紙サンプルを用いて、香りテスト、文字視認性テストを行った。これらテスト結果を下記表1及び2に示す。
【0028】
(香りテスト)
各印刷用紙を5cm×5cmにカットし、20cm×30cmの袋に空気3Lとともに封入し、被験者10名に袋内の香りを嗅いでもらい、茶又はコーヒーの香りがするかを判定してもらった。10名全員が茶又はコーヒーの香りがすると判定した場合を「○」、1名でも茶又はコーヒーの香りがしないと判定した場合を「×」と評価した。
【0029】
(文字視認性テスト)
各印刷用紙をB5サイズにカットし、これに、文字サイズ8pt,9pt,10.5ptのいずれかの「あ」の文字を50字任意箇所に印刷し、文字のかすれ、消失、ズレを目視にて観察し、また、中間層に含まれる茶殻又はコーヒー粕により文字が見えづらくならないかを目視にて観察した。なお、プリンターは、セイコーエプソン社製PM−820Cを用い、文字カラーは「黒」とした。
いずれも問題がない場合を「○」、文字のかすれ、消失、ズレはないが、茶殻又はコーヒー粕により文字が見えづらい場合を「△」、文字のかすれ、消失、ズレが生じており、茶殻又はコーヒー粕により文字が見えづらい場合を「×」として評価した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
(結果)
香りテストより、表面層及び裏面層の紙坪量を136g/m以下とすれば、茶又はコーヒーの芳香のある印刷用紙になることが確認できた。
文字視認性テストより、茶殻又はコーヒー粕の配合量X重量%、表面層及び裏面層の紙坪量Yg/mとした場合、1.6X≦Yの関係を満たせば文字視認性が良好な印刷用紙になることが確認できた。
【0033】
(参考試験)
緑茶葉やコーヒー豆を粉砕したものを用いて、上記と同様に配合紙を作成してみたが、表面層及び裏面層の紙坪量を136g/mとしても表面層又は裏面層に緑茶葉又はコーヒー豆の色素が浸み出してしまい、文字などを印刷しても、文字が読みづらく文字視認性の劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mの飲料残渣粉砕物を配合しない紙シートを抄紙してなる印刷用紙。
(但し、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表される。)
【請求項2】
飲料残渣を、茶殻又はコーヒー粕とした請求項1に記載の印刷用紙。
【請求項3】
飲料残渣粉砕物をX重量%配合した紙スラリーを抄紙して紙シートを作成し、この紙シートの両面に、片面の坪量がYg/mとなるように紙スラリーを抄紙する工程を有する印刷用紙の製造方法。
(但し、Xは0<X≦25、Yは1.6X≦Y≦136を満たす式で表される。)

【公開番号】特開2009−167536(P2009−167536A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3630(P2008−3630)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591014972)株式会社 伊藤園 (213)
【Fターム(参考)】